「シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる」ディエゴ・シメオネ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
それまでFCバルセロナやレアル・マドリートの影に甘んじていたアトレティコマドリートを強豪チームに作り替えたシメオネ。その考え方を語る。
最近サッカーから離れていために、あまり意識していなかったのだが、確かに最近のアトレティコ・マドリートの飛躍は驚くほどである。以前は数あるチームのなかの一つに過ぎなかったのが、昨年にはヨーロッパチャンピオンズリーグの決勝まで進んでいたのである。残念ながら選手としてのシメオネは、アルゼンチンの代表ではありながらも、特に僕にとって目立った印象を残すほどではなかったが、このような現在の成功を考えると、見えない部分でチームの重要な役割を担っていたのだろう。
本書ではシメオネがチームを導く際に、常に意識している信念などについて語る。その内容の多くは、ほかの成功物語やリーダーシップについて語られた本と共通する部分もあるが、ところどころでシメオネという人間の個性が見えてくる。

発言と行動が違ったら決して許してもらえない
強制されたことは必ず悪い結果に繋がる
名選手とは、長所を伸ばし短所を隠せる者
ボールではなくサッカーをプレーする選手を支持する

本書だけでなく、多国籍のチームを一つにまとめあげる監督の物語は、人を率いる立場の多くの人に読んで欲しい。
【楽天ブックス】「シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる」

「さようならオレンジ」岩城けい

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第29回太宰治賞受賞作品。
アフリカから日本に移り住んだサリマとその同じような境遇の外国人が、学び、働き、子供を育てながら新しい文化に溶け込もうとする様子を描く。
後半まで、物語の舞台がどこだかわからなかったが、最終的には日本なのだろうという結論に至った。というのも本書では何度もサリマや、その友人のハリネズミが英語を学んでいる様子が描かれるのである。英語を学んでいるのだからそこはアメリカなどの英語圏なのだろう、と思ってしまったのだ。本書はこの点について、つまりなぜ日本語ではなく英語を学んでいるのかという点には触れていないが、僕自身がこのような境遇の人々の生活の苦しさを普段意識していない事に気付かせてくれた。
言語の問題だけでなく、サリマたちは子供を育てるために劣悪な環境で働くことになる。それでも少しずつそんな生活に適応していくのだ。最初は自分を受け入れてくれない周囲の人々に不満を抱いていたサリマが、少しずつ勉強や仕事に生き甲斐を見いだして、周囲の人々の親切や温かさにも触れていく。そんな様子は心を和ませてくれるだろう。
今まで以上に異文化に目を向けようと思わせる温かい一冊。
【楽天ブックス】「さようならオレンジ」

「ダライ・ラマ こころの育て方」ハワード・C・カトラー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
精神科医であるカトラー博士が、ダライラマと対談を繰り返すなかで「人間の幸せ」について語り合う。
「あなたは幸福ですか?」という質問に迷う事なく「ええ、間違いなく」と答えるダライ・ラマに、カトラー博士は人間が幸福を求めて生きていくなかで遭遇するさまざまな障害について質問をぶつけていき、それぞれの質問に真剣にわかりやすくこたえようと努めるダライ・ラマの言葉から、読者自身も幸福になるための多くを学ぶ事ができるだろう。

例えば、誰かに対して怒りを感じた時、その人は100パーセント否定的な性質の人物だと考えがちです。それは、誰かに強くひかれた時、その人を100パーセント肯定的な性質をもつ人物だと考えたがるのと同じです。しかし、こういう認識のしかたは現実に即したものではないのです。
敵は忍耐を実践するために必要な条件です。敵の行動がなければ、忍耐や寛容が育まれる可能性もないことになります。

また、本書のなかでダライ・ラマとカトラー博士の話し合いの様子を知るなかでダライ・ラマ自身の人間性も見えてくる。その場にいるだけで人を引き寄せ、言葉をかわした人間に涙させるようなダライ・ラマという人間やその成長の過程にも興味を持った。
あまり読みやすい本ではなかったが、本書を読んだ後、きっと読者は少し幸福に近づくことだろう。
【楽天ブックス】「ダライ・ラマ こころの育て方」

「究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる」ジョフ・コルヴァン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
タイガーウッズもモーツァルトのように、世の中に「天才」として語られる人たちは決して生まれながらにして天才だった訳ではなく、それに見合う努力をしてきた。それではそんな「天才」を作りあげる方法、つまり「究極の鍛錬」はどのようにして成し遂げられるのだろうか。
生まれつきの才能というのが過大評価されるなかで、本書では「天才」と呼ばれるまでに一つの分野でたぐいまれなる能力を伸ばす方法についていくつかの例を交えながら説明する。その方法「究極の鍛錬」に必要な要素として以下の要素を挙げている。

(1)しばしば教師の手を借り、実績向上のため特別に考案されている。
(2)何度も繰り返すことができる。
(3)結果に関し継続的にフィードバックを受けることができる。
(4)精神的にはとてもつらい。
(5)あまりおもしろくもない。

基本的には「天才」は努力によって作られるという内容なので、「自分には才能がない」と諦めていた人にとっても希望を持てる内容と言えるだろう。また、身体能力に依存するスポーツや音楽の分野ではかなり若い時期に始める必要があるとはいえ、ビジネスなどの分野では年齢に関わらず一生能力を伸ばすことができるという点も僕らの将来を明るくしてくれる。
しかし、本書は興味深いことにこんな警告も与えている。「究極の鍛錬」によって「天才」と言われるほどの技術を身につけるためには、人間関係などの人生における多くのものを犠牲にし、しばしば周囲の怒りを買う事も多いのだという。そこまでしてそれほどの能力を身につける事が果たして幸せな人生と呼べるのだろうか。
また、忘れてはならないのが、本書は決して「生まれつきの才能」の存在を完全否定しているわけではないのだということ。例えば体格のように「究極の鍛錬」においてもどうしようもない要素が技術を左右することは往々にしてあるのだという。「究極の鍛錬」によってある分野における能力を伸ばすために多くの時間を費やそうとしても、その分野で「天才」になるために必要な「生まれつきの才能」が欠けているかもしれないという可能性は考慮する必要があり、もしかしたら、成し遂げる事のできないことのための「究極の鍛錬」によって人生を無駄に費やす事になるかもしれないのだ。そのリスクを冒してでも自分をひたすら信じて「究極の鍛錬」をすることができるのだろうか。
自分自身の仕事の時間や趣味の時間の過ごし方を改めて考えさせてくれる1冊。僕は常に「究極の鍛錬」ができる環境に身を置いているだろうか。
【楽天ブックス】「究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる」

「日本人のここがカッコイイ!」加藤恭子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本に滞在する36人の外国人に日本が日本について語る。
日本が賞賛されるようになったのはいつからだろう。本書では日本の文化や人や教育について日本に長く済む外国人が語る。日本の個性として僕らが簡単に思いつくものもあれば、考えもしなかったものまで外国人目線ゆえの驚きを与えてくれる。世界の常識を知るのにも、日本の文化を知るのにも役立つことだろう。
本書を通じて多くの外国人が語っているのが東日本大震災の後の日本人の様子である。混乱のなか暴動や略奪を起こす事もなく列を作って秩序を持って行動するところが外国の人にとっては驚きなのだという。また、日本人のおもてなしの心や物事に対するこだわりを賞賛する人も多い。
一方で、働き過ぎや、家族で過ごす時間の少なさ、妻が財布のひもを握っている点についての違和感についても語っており、生き方や家族との触れ合いかたを考え直すきっかけになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「日本人のここがカッコイイ!」

「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」大田英明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
IMFについて語る。
誰もが一度は耳にしたことがあるであろうIMFという組織。ところが実際その目的は何でどのような活動をしているかというとほとんどの人は知らないのではないだろうか。本書ではその発足の経緯と役割や実例について示している。簡単に書かれているとはされているが、僕も含めて外交や経済のある程度の知識がないとすべてを理解するのは難しいだろう。
個人的にはIMFや国際機関の役割の重要性を漠然と理解させてくれるとともに、経済的分野においてもっと知識を深めたいという良い刺激を与えてくれた。

外貨準備
中央銀行あるいは中央政府等の金融当局が外貨を保持すること。保持している外貨の量を外貨準備高(がいかじゅんびだか)という。(Wikipedia「外貨準備」
金融自由化
金融業において、金利、業務分野、金融商品、店舗などの、それまで政府によって制限されていた事柄の制限が廃止されて自由になることをいう。(Wikipedia「金融自由化」
資本自由化
国際資本取引に対する制限を緩和,撤廃することで,広義には資本の流入,流出の両面についての自由化をいうが,狭義には外国資本の流入,特に外国企業の進出を自由に認めることをいう。(コトバンク「資本自由化」
世界銀行
各国の中央政府または同政府から債務保証を受けた機関に対し融資を行う国際機関。当初は国際復興開発銀行を指したが、1960年に設立された国際開発協会とあわせて世界銀行と呼ぶ。(Wikipedia「世界銀行」

【楽天ブックス】「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」

「「やればできる!」の研究」キャロル・S・ドゥエック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
すべての人間の能力は持っている信念に大きく依存する。本書はそんな前提に立って能力を伸ばすための心の持ち方を語る。
子供たちを教室に集めてまずは易しい問題を解かせる。続いて難しい問題を解かせようとすると子供によってその反応は異なるのだと言う。すぐには解けない難しい問題を楽しむ子供もいれば、難しいとわかった瞬間に取り組む事をやめる子供もいる。本書では前者の子供が持っているような考えを「しなやかマインドセット」と呼び、「人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念」とする一方で、後者の子供たちの持つ信念を「こちこちマインドセット」と呼び、「自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらない」と信じているのだと言う。基本的には本書はその2つのタイプの信念の利点と欠点を実例を交えながら説明していく。
もちろん本書は「しなやかマインドセット」こそ成長するために必要な信念であるという立場をとっているが、本書が興味深いのは、どのような成長環境が「こちこちマインドセット」や「しなやかマインドセット」の信念を人の中に育むかという部分を示している点である。自分自身の生き方を向上させるだけでなく、部下や娘や息子たちの人生にも、本書の内容を知っているという事でいい影響を与えられるようになることだことだろう。
僕自身はどちらかといえば「しなやかマインドセット」の側にいると思っているが、本書では同じ人間の中にも分野によって、「しなやかマインドセット」と「こちこちマインドセット」が共存している事が多いという話は非常に面白く、夫婦関係も双方「しなやかマインドセット」を持っていてこそ長続きするという部分はぜひしっかり覚えておきたいと思った。
普段からプラス思考で、「しなやかマインドセット」の人にとってもいい刺激になる一冊。今自分自身をチャレンジしなければならない環境に置けているだろうか、本書を読めばきっと自分の人生を見直すことだろう。

今日は、私にとって、周囲の人たちにとって、どんな学習と成長のチャンスがあるだろうか。

【楽天ブックス】「「やればできる!」の研究」

「Messgenger of Truth」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
展覧会の準備中に組み立ててあった足場から落ちて亡くなった期待の芸術家Nick。双子の姉であるGeorginaがその死に他殺の疑いを抱いて、Maisieに調査を依頼する。
Maisie Dobbsシリーズの第4弾。探偵物語というだけではもはやありふれたものになってしまうだろう今、本シリーズは戦争の悲惨さをその物語のなかで常に訴える点が面白い。本作品はある芸術家Nickの死の謎を解くことが調査の目的であるが、彼は戦争から戻ってきた後にその悲惨な体験を絵に描くことで芸術家として開花する事となったし、依頼主でありNickの双子の姉であるGeorginaは文章を描くことに才能を持ち、戦争を描写することで評価をあげたのだった。また、NickとGeorginaの姉であるNollyも夫を戦争で失っているという過去を持つ。そして、Maisieが少しずつ真実に近づいていくに従って、各々が戦時中に受けたつらい経験や過去、知りたくなかった出来事が見えてくる事になる。
また、調査だけでなくMaisieのアシスタントのBillyの生活や、Maisieに想いを寄せる医者Andrew Deneとの関係にも変化が起きる。心に傷を抱えながらもそれぞれが少しずつ人生を歩んでいく様子が印象的である。また、一方で、ドイツでヒトラーが勢いを増しているという。今後どのように展開していくのだろうか。

「目標達成の技術」青木仁志

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目標達成に必要な考え方や心構えを語る。
著者は都内で繰り返しセミナーを開催しており、その内容の多くも含まれている。基本的には自身が元々もっていた考えに近い物だが、印象的だったのは人生において明確な目的を持つべきという点で、自分の人生にの目標についてもっと具体的にイメージしないといけないと思った。しかし、全体的には世の中には溢れ返っている自己啓発本とあまり変わらない印象を受けた。ベースとなっている「選択理論」の考え方自体は非常に好きなものではあるが、本として強い印象を残すほどではなかった。
【楽天ブックス】「目標達成の技術 」

「Indemnity Only」Sara Paretsky

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
有名銀行の幹部と名乗る男からその息子の恋人を探して欲しいという依頼を受ける。しかし、調査を始めたV.I. Warshwskiが最初に見つけたのはその息子の死体であった。
V.I. Warshwskiシリーズの第1弾。V.I. Warshwskiという名前から日本人の僕にはそれが男性だか女性だか判断できなかったのだが、女性である。
行方不明の若い女性の捜索という簡単な仕事のはずが、マフィアや巨大な組織犯罪と関わっていく事となる。シカゴを舞台としており、シカゴを本拠地とするメジャーリーグチームの動向など、アメリカ人の生活も伺える点が面白い。本書の事件はややありきたりではあるが今後どう物語が広がっていくのか、このシリーズをもう少し読んで善し悪しを判断してみたいと思った。

「断捨離 私らしい生き方のすすめ」川畑のぶこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ものを捨てる事による人生への効用を語る。
断捨離について書いた本の2冊目であるが、本書はどちらかというとすでに断捨離を始めた人向けである。断捨離の方法だけでなく、それによってぶつかろうであろう障壁や、それによって変わる考え方にまで触れている点が、1回目に読んだ断捨離の本とは異なる。最後の章のタイトルとなっている「モノより経験を」はまさに僕自身が思っているだ。むしろそういう考えを持てずにモノに執着している人が読むべき本なのかもしれない。
【楽天ブックス】「断捨離 私らしい生き方のすすめ」

「月は怒らない」垣根涼介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
借金の清算を請け負う仕事をする梶原(かじわら)。大学生の弘樹(ひろき)、警察官の和田(わだ)。お互いに接点のない3人はいずれも市役所で働く三谷恭子(みたにきょうこ)という女性と不思議な関係を持つ。1人の女性と3人の男性の不思議な関係を描く物語。
物語は25歳の三谷恭子(みたにきょうこ)を中心とした、それぞれの男性との関係と、その発端となったできごとを描く。三谷恭子(みたにきょうこ)自身、特に美人でもなければ派手な服装をすることもなく、男性に誘いをかけることもない。それでも3人の男性は彼女に惹かれて、繰り返し合ってくれる事を求めるのである。彼女の持つその魅力は一体何なのか、また、その年齢の割に、地味で目立たないように生きようとする三谷恭子(みたにきょうこ)の目的は何なのか。それが物語の面白さとなっている。
やがて、三谷恭子(みたにきょうこ)がたびたびある公園に訪れてそこで短期記憶しか持つ事のできない男性と話すことがわかる。毎回初対面を装ってその男性に話しかける三谷恭子(みたにきょうこ)は人生に何を求めているのだろう。次第にその形が明らかになっていく。
誰もが「満たされたい」と思いながら、異性やモノや権力でその隙間を埋めようとするが、永遠に「満たされない」。人によってはそれを知りその努力すらすることをしない。人間の生きる意味とは一体なんなんだろうか。そんなことを考えさせる作品。

本来ヒトは意味なく生まれ、意味なく死んでいく。そして、人間だけがその虚しさを知り、それに耐えていく動物と言えば、言えるのかもしれません。
止観(しかん)
仏教の瞑想のことである。サンスクリット語から「奢摩他(サマタ)・毘鉢舎那(ビバシャナ)」と音訳されることもある。禅観(ぜんかん)とも。(Wikipedia「止観(しかん)」)

【楽天ブックス】「月は怒らない」

「断捨離アンになろう! モノを捨てれば福が来る」鈴木淳子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「断捨離」という言葉はすでに5年ほど前から聞かれるようになったが、本書はそのブームを作ったなかの1冊。モノを捨てることの効用を語る。
もともと僕自身モノに執着する方ではないが、ここ数年その傾向に一段と拍車がかかった気がする。海外でも「ミニマリスト」「ミニマリズム」という言葉で語られることだが、「断捨離」とは単純に「モノを捨てる」行為ではなくて、自分の周囲にあるモノ、人、時間などを、「本当に自分に必要か?」と改めて問いかける行為であり、その結果として、必要のないと判断したものを捨てることになるのである。
本書に書かれていることは、基本的に僕自身が元々持っていた考え方に似ていて特に目新しい考え方はなかったのだが、いくつか元々の考え方の助けになりそうな表現に出会えた。

デパートや洋服屋さんは私のクローゼット
スーパーやコンビニは私の冷蔵庫
図書館や書店やインターネットは私の本棚

【楽天ブックス】「断捨離アンになろう! モノを捨てれば福が来る」

「ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」クリス・アンダーソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットの普及によって、ニッチ商品の集積が、メガヒットに匹敵する利益を上げる時代がやってきた。本書はそんな「ロングテール」について語る。
ロングテールという言葉を説明するときに必ずといっていいほど一緒に語られるのはオンラインショップamazonだろう。amazonは実際の店舗を持たないからこそ、限られたスペースに何の本を置くべきか、という一般の書店が常に考えなければならない問題に悩まされることがない。その結果amazonでしか販売されないニッチな商品は、それぞれは小さな売り上げでしかないが、全体ではヒット商品に匹敵するほどの利益になるのだ。
これは単にオンラインショップによって販売スペースを考える必要がなくなったからできることではなく、購入者側にもニッチな商品についての情報を得られる手段があってこそ実現できる。過去そのような情報は専門誌や知人からの紹介で得るしかなかったが、専門誌もある程度の専門性までしか扱わないし、ニッチな共通趣味を持つ知人を見つけるのも難しかった。しかし、この点でも、インターネットがSNSやブログなどを通じてその手段を提供してくれるのだ。
この「ロングテール」の減少はもちろん本の販売だけでなく様々な分野で起きているという。働き方や、時間の使い方、服装や住む場所など。ここ数年のCDの販売量やテレビの視聴率を過去と比較すればわかるように、インターネットが実現した多様化によって、「ヒットを狙う」という考え方がすでに機能しない世の中になっているのだ。
僕らは多様化を受け入れる方向に生き方を改めるべきなのだろう。世の中の多くの人や企業がロングテールに適応できていないことを毎日感じている僕の考えをより明確にしてくれる内容だった。
【楽天ブックス】「ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」

「変わる世界、立ち後れる日本」ビル・エモット

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界のなかで日本が向かうべき方向を示してくれる。
5年ほど前に書かれた本ということで、やや現状にそぐわない部分もあったが、日本を中心に現状と未来への提言を書いている。正直、なかなかすべてを理解したとは言い難く、読んでいるうちに自分の知識の乏しさを思い知ることになった。本書で触れられている言葉の意味をもっとしっかり理解しておきたいと思った。例えばGATT、IMF、WTOなどのそれぞれの発足の経緯やその活動内容。変動為替性と固定為替性のメリット、デメリットなどである。
個人的にはサービス業と製造業という分類に対して疑問を呈している著者の姿勢が印象的だった。

しかし実際のところ、この二つはお互いに深く関連している。つまり、製造業にとって不可欠なデザインや最先端の技術革新は、どちらもサービス業である。

もう少し経済についても知識を深めるべきだと思わされた。
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「世界でもっとも強力な9のアルゴリズム」ジョン・マコーミック

オススメ度 ★★★☆☆
世界的に有名なアルゴリズムについて説明する。
検索エンジンのインデックス方法、ページランクの付け方、公開鍵暗号法、ファイルの圧縮など、もはや人々の生活にとって欠かせないものとなってしまった、アルゴリズムの仕組みをわかりやすく説明してくれる。検索エンジンのインデックス方法やページランクは以前より興味を持っていた内容だったので非常に楽しむ事ができた。公開鍵暗号法はとても面白い内容でそれを扱っている本は本書だけではないのだが、残念ながら本書の説明の仕方がわかりやすいとは思えなかった。本書でいまいちわからなかった方にはサイモン・シンの「暗号解読」という本をお薦めしたい。
画像圧縮の話も面白かったが、終盤はややわかりにくい話になってしまったように思う。序盤がわかりやすく面白かっただけに本の完成度を落としてしまった感じで残念である。
【楽天ブックス】「世界でもっとも強力な9のアルゴリズム」

「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ポンペイウスと敵対したユリウス・カエサルがルビコン川を越える紀元前49年から、カエサルの暗殺の後の紀元前30年までを描く。
「ブルータス、お前もか」というセリフでカエサルがブルータスによって殺されるということを一般的な知識として持っている人は多いだろう。しかしカエサルやブルータスがどのような人物で、どのような経緯でそこに至ったかを知る人は少ないのではないだろうか。
本書を読み終わった時の率直な感想は、「カエサルは偉大な人間だった」ということである。先の時代を見る能力と、人を操る能力を見事に備えていて、それ故に戦いにも政治の能力にも長けていたのである。同時期の他の権力者と比較して抜きん出ているだけでなく、現代においてもこれほど能力のある人にはそうそう出会えるとは思えない。
本書で扱っているのはすべて紀元前の出来事である。僕らはなぜか、「紀元前」と聞くと大昔の印象を持つが、本書で描かれているローマの実情を見ると、すでに社会がある程度出来上がっていたことがわかる。「社会」という言葉は非常に曖昧だが、政治や裁判やコミュニティとするとわかりやすいかもしれない。ちなみに、現在の前の暦であるユリウス暦もカエサルの命によって作られ、その時代ですでに11分程度の誤差しかなく、ユリウス歴は1582年にグレゴリウス暦にとって変わられるまで1500年以上も使われたというから驚きである。
また、もう一人の誰もが聞いた事のある有名な人物としてクレオパトラも登場する。美人としては有名だが、彼女がどのような存在だったのか本書を読むまでまったく知らなかった。
このカエサルの時代はローマのもっとも面白い部分なのではないだろうか。カエサル自身が書いたという「ガリア戦記」もぜひ読んだみたい。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(上)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(中)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)」

「A Mind for Numbers」Barbara Oakley

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
効果的に勉強するためにはどうすればいいのか。著者自身も学生時代は数学の能力をまったく伸ばす事が出来なかったが、軍隊に入ってロシア語を学び数学の必要性を感じてその方法に気付く。多くの例とともに効果的に学ぶ方法を語る。

数学や試験や言語だけでなく、学ぶというのは運動や楽器演奏などすべてに適応されるもので人生を生きていくうえで欠かせないもの。しかし、勉強しているけれども成績が上がらない、練習しているけれど上達しない、ということはたびたびある。誰もが1度は、●時間勉強したけどこの時間に意味があったのだろうか。と疑問に思うような時間を経験した事があるだろう。上達しない練習に時間をさくのであればその時間を他の事に費やした方がいいだろう。そういう意味では、人生を豊かに効率に過ごすために方法を本書は教えてくれると言える。

まず印象的なのは、Diffuse ModeFocus Modeの使い分けである。僕らは勉強するときに「集中する」ことを良いこととしているが、本書では、Diffuse Mode、つまり集中していない状態も同じように効果的に学ぶためには大切だと語る。もちろん集中していない状態が進歩を助けるのは、集中している時間に積み重ねたものがあってこそであるが、それによって集中していない時間にも脳が無意識下で情報を処理し続けるのだという。集中している時間と集中していない時間を適切に配置することで効率的に学ぶことができるのである。

また、「勉強した気になってしまう行動」や、「無駄な勉強」というのにも触れているので、知っておくと非常に役に立つだろう。例えば僕自身も過去やったことがあるのだが、蛍光ペンで教科書の重要な部分を塗っていくという方法。これは手を動かした事によって学んだ気になってしまうが実際にはほとんど効果がないのだそうだ。また、教科書を読んだだけでわかった気になるのもしばしば陥りがちな無駄な勉強法である。多くの教科書はそれぞれの章末に問題をつけているが、多くの人はこの重要性に気付いていない。本書では、必ず自分で問題を解いて自分の理解をテストすることの重要性を強調している。

その他にも、勉強を先延ばししてしまう人がとるべき対策方法や、多くの勉強に適用できそうな記憶方法についても触れている。向上心のある人には多いに役立つ内容と言える。

「ビジョナリー・カンパニー(2)飛躍の法則」ジェームズ・C・コリンズ

オススメ度 ★★★★☆
前作「ビジョナリー・カンパニー」で取り上げられた企業の多くは最初から偉大だった。偉大な経営者に恵まれた、初期の段階で偉大な企業としての形を作り上げた。しかし、今偉大ではない企業が偉大になるためにはどうすればいいのか、本書はそんな問いに答えようとする。
第一弾の「ビジョナリー・カンパニー」はなかなかタイミングが合わなくてまだ読んでいない。それでもいろいろな本を読んでいるとこの「ビジョナリー・カンパニー(2)」こそ良書との声をよく聞くため、本書を先に読む事になった。冒頭にも書いた通り、本書は第一弾とは視点を変えて企業を分析している。つまり、偉大な企業ではなく、偉大になった企業を選別しその本質を分析していったのだ。
本書のなかで取り上げられている内容はどれも印象的だったが、なかでも第三章の「だれをバスにのせるか」の章は印象的であった。この章で言っているのは、偉大な企業は最初に人を選び、目的地は後から決める、というのである。個人的には偉大な企業というのは常に明確な目的地、つまりビジョンや哲学を持っていると思っていた。偉大になりきれない多くの企業は、才能豊かな人間がいても会社の向かい目的地がはっきりしていないせいでその能力を最大限に活かしきれていないのだと思っていた。しかし、本書では人の選択こそが重要で目的地はその選択した人との間で決めていけばいい、というのである。
また、もう一つの驚きとしては、良い企業として連想しがちな顧客重視や、品質重視の考え方などが、必ずしも偉大な企業になるためには必要ないとしている点である。

これだけは必要不可欠だと思える価値観でも、永続する偉大な企業のなかにかならず、その価値観をもたない企業がある。たとえば、顧客に対する情熱をもっていなくてもいい(ソニーはもっていない)。個人を尊重する価値観はなくてもいい(ディズニーにはない)。品質重視の価値観はなくてもいい(ウォルマートにはない)。社会への責任という価値観はなくてもいい(フォードにはない)。これらがなくても、永続する偉大な企業への道で障害にはならない。

噂に違わぬ良書。もしこれから僕が起業に関わることがあるならぜひいろいろ参考にしたい。
【楽天ブックス】「ビジョナリー・カンパニー(2)飛躍の法則」

「アルゴリズムが世界を支配する」クリストファー・スタイナー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アルゴリズムについて世の中の実例を交えて紹介する。
25年前証券取引所はディーラーで溢れ返っていた。ところが今では人はほとんどいない。コンピューター・プログラマーのピーターフィーが、プログラムを使って取引をすることを始めてからその方法は世界に広まり、今では世の中の多くの取引がコンピューターによって行われているのだ。
こんな冒頭の今日深い話に一気に引き込まれてしまった。僕らは確かにコンピューターがいろいろな事を行うのを受け入れている。しかし、どの程度のことまでがコンピューターにできて、どの程度の事から先が人間にしかできないのか、それを正確に把握しているだろうか。本書を読むとコンピューターの能力、(つまりアルゴリズム)の可能性を過小評価していたことに気付くだろう。
中盤ではコンピューターがクラシック音楽を作曲する話について触れている。今ではベートーベンやモーツァルトの曲のように人々を感動させる曲をコンピューターが作る事ができるのだという。そんなコンピュータの能力はもちろん興味深いが、むしろ面白いのは、人間はコンピュータが作った曲に感動するが、それはそれが「コンピューターが作った曲」だということを知らない場合なのだという。「これはコンピューターが作った曲」ということを知った途端に「何か情熱が感じられない」と言い出すのが面白い。
本書を読んで感じたのは、アルゴリズムにできないことはなくなるだろうが、アルゴリズムの社会への普及を阻んでいるのは技術ではなく、人々の意識なのだということだ。アルゴリズムやプログラムを深く理解することの必要性を感じた。

参考サイト
http://www.ycombinator.com
アルゴリズムの背後にある高度な数学な世界を議論する世界でもっとも影響力のあるサイト

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