オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダイヤモンドの産地として有名なシエラレオネ。著者はそこで少年兵士をしていた青年ムリアと出会う。
ムリアは父と母を殺され、そのまま誘拐されて少年兵として訓練され、多くの人を殺したのだという。被害者である彼は、多くの人を殺したがゆえに、多くの憎しみも向けられ、罪悪感を抱えながらも、現在多くの事を学んで国の平和に貢献使用している。
あまり馴染みのないシエラレオネという国の現状、未だ平和がほど遠い国があるということなど、改めて感じるのではないだろうか。
タイトルに惹かれて読んだのだが、思った以上に子供向けの内容で中身が薄かったのが残念である。ちなみに著者は先日シリアで犠牲になった後藤さんだということです。
【楽天ブックス】「ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白」
カテゴリー: 評価
「手足のないチアリーダー」佐野有美
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生まれつき手足のなかった著者、そんな著者が高校を卒業するまでを語る。
手足のない子供が生まれてきた時の両親の驚きや、障害を持った人の周囲で生きる人間の戸惑いが見えてくる。
印象的だったのは著者が小学校高学年だったときの話、障害にも関わらずその明るい性格から人気者になり、やがてそれが傲慢に変わってしまうという話。障害者とはいえ、友人の気持ちを考えずに行動すれば、結果として友人から孤立してしまうのである。僕らは障害者がイジメを受ける、と聞くとその障害が原因かと思うが、本書の場合は、むしろその障害が明るくクラスの人気者にして、それが結果として傲慢な態度を生み、その結果孤立したというのだから驚きである。
また、周囲の人々の温かさも本書を通じて感じることができる。障害を持った人に取っては、哀れみを受けるよりも、普通の人間として厳しく、優しく接してもらえる事が何よりも嬉しいのだということを改めて知る事が出来た。
【楽天ブックス】「手足のないチアリーダー」
「Among the Mad」Jacqueline Winspear
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
クリスマスの夜、足の不自由な一人の男性が、人通りの多い通りで爆弾を使って自殺した。同じ頃、脅迫の手紙が政府のもとに届き、Maisieは協力を求められる。
脅迫の手紙ではしきりに、国のために戦争に行って、大きな障害を負って働けなくなってしまった人々の救済を求める。実際、第一次大戦から数年経ったこの時代、多くの人が戦争の被害を抱えていたのである。Maisieはそんな犯人の正体を突き止めるために、多くの人と言葉を交わすなかで、自らの恵まれている状況を知るのである。
そんななか、部下のBobbyの妻Doreenは最愛の娘を失ってから行動に支障を来たし、入院することとなる。父や友人緒Prisilaなど、周囲の人と支え合いながら混沌とした時代を生きていく様子が見て取れる。
本書は、Masieが警察と協力して捜査にあたる初めての作品ではないだろうか。Misieは捜査の協力のために、意味がないと思いながらも指示された場所を捜査したりもするのである。しかし、やがてMasieの見つけた手がかりから、戦争中に毒ガスを扱った一人の男性が容疑者として浮かび上がってくるのである。
本書の舞台はイギリスであるが、世界のどこでも戦争が不幸しか生まないことを教えてくれる。
「成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール」ダグ・レモフ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
どんな分野でも能力を伸ばすためには、しっかりと考えた「練習」が必要である。本書はそんな効果的な練習方法について説明している。
本書で書かれているのははむしろ「練習方法」というよりも、「練習の指導方法」といった印象を受けた。具体的には次のような内容である。
漠然とした言葉から、具体的な言葉にすることによって周囲の人間の能力が大きく変わるということは、僕らはもっと言葉や振る舞いに気をつけなければならないという事である。しかし、どれほどの人がその指導する言葉の重要性を理解しているのだろうか。「頑張れ」「気合い入れろ」などのような漠然とした指示がどれほど意味がないのかをもっと意識すればより効果的な指導ができるようになるだろう。同じようにほめる時も「よくやった」とか「がんばった」ではなく、何が良かったのかをはっきり示すべきなのだそうだ。
本書で例としてとりあげる練習が、教師の指導方法についてであることが多いので、仕事にも応用できそうな状況が多く描かれていた。本書の内容を常に意識する事によって、組織を高いパフォーマンスの集団に変えることができるかもしれない。
【楽天ブックス】「成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール」
「ぼくはお金を使わずに生きることにした」マーク・ボイル
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金の存在の矛盾と世の中に存在する物の大切さを感じ、著者は1年間、お金を使わずに過ごす事を決意する。
無料でトレーラーハウスを手に入れ、住む場所も確保した著者だが、1年を通じていろいろな困難に出会う。何より大変なのが移動である。自転車のパンクに悩まされたり、ヒッチハイクを繰り返して長い時間をかけて移動する様子から、現代の交通の便利さを思い知ると同時に、それを無意識に受け入れていることに疑問を感じるだろう。
著者は現代社会の問題点をこのように指摘する。お金を使う事によって欲しい物は手に入る。それはとても便利で現代の生活には欠かせないシステムではあるが、物を作っている生活者やそれを育む自然からどんどん僕らを遠ざけているのだと。
本書の多くはお金を使わないことを自らに課した著者が四苦八苦する様子であるが、その合間に綴られている現代の社会の問題点はどれも心に響くものばかりだ。
また、無償で他人に親切するからこそ、自分も困ったときに誰かに親切にしてもらえるということを、自らの行動で示し、人と人との繋がりの重要性も語っている。
本書を読み終わってから、スーパーでレジ袋をもらうのを躊躇(ためら)ったり、お弁当屋さんで割り箸を付けてもらうかを一瞬悩むようになったのだから、著者の行動は人々に少なからず影響を与えているのだろう。生き方や社会のあり方について考えさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「ぼくはお金を使わずに生きることにした」
「クリエイティブ・シンキング入門」マイケル・マルハコ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
物事をクリエイティブに考える方法について語っている。
物事の見方や、考え方を変えれば今までとは異なったアイデアが生まれるという例を多く載せている。僕にとっては、正直あまり印象に残らなかったが、あまりアイデアを出すのが得意ではないと思っている人が読んだら、ひょっとしたら何か刺激になる内容があるかもしれない。
個人的には、本書のなかにいくつか出てきた絵が印象的だった。誰もが知っている有名な、見方によっておばあさんに見えたり、若い女性の後ろ顔に見えたりする絵や、ウサギに見えたり鳥に見えたりする絵。また、「Good」と「Evil」という相反する意味を同時に含んでいる絵など、本の内容よりも個人的には印象的だった。
【楽天ブックス】「クリエイティブ・シンキング入門」
「デザイン思考が世界を変える」ティム・ブラウン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインファームIDEOのCEOである著者がデザイン思考について語る。
デザイン思考という考えは最近いろんな場所で語られ、その重要性はこれからの時代においてますます強まっていくことだろう。本書では著者が自らの経験からデザインについて語る。
まず、デザインとは3つの制約を受け入れることだと言う。それは「技術的実現性(フィーザビリティ)」「経済的実現性(ヴァイアビリティ)」「有用性(デザイアビリティ)」であり、任天堂のWiiなどそれを実現した事による成功例をいくつかあげている。
そしてデザイン思考を、「収束的思考」と「発散的思考」に分けて考えている点も興味深い。判断を下す場合には「収束的思考」は重要だが、可能性を広げるためには「発散的思考」が必要だという。だからこを著者は、多くの会社がデザイナーなどの発散的思考の持ち主を組織の下部にしか配置していないことを嘆いているのだ、なぜなら組織の下部に降りてくる頃にはすでに会社の方針は決定しており、「収束的」に物事を進めなければならないからである。
考えてみれば当たり前のことなのかもしれないが、それでも刺激になる考え方にたくさん出会う事ができた。ぜひ時間を空けてもう一度読んでみたい。
【楽天ブックス】「デザイン思考が世界を変える」
「ちょっと今から仕事やめてくる」北川恵海
オススメ度 ★★★★☆ 3/5
ブラック企業で働き疲弊した隆(たかし)だったが、あるとき小学校時代の友人「ヤマモト」と出会って変わっていく。
昨今の「ブラック企業」という言葉の認知度や、働き過ぎと言われる日本の現状を考えると他人事とは思えない。本書で、隆(たかし)と「ヤマモト」の生き方を見る中で、人生のおいて本当に大切なものは何なのかを改めて考えさせれくれるだろう。終盤で隆(たかし)が、働きすぎに疲れて自殺してしまった人間の母親と放すシーンが印象的である。
この本を読んで欲しい人をたくさん知っている。放り出してもいい。逃げてもいい。もっと簡単にそう言えるようになって欲しいと思った。
【楽天ブックス】「ちょっと今から仕事やめてくる」
「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」ゲーリー・クライン
オススメ度 ★★★★☆ 3/5
優れた意思決定に関して調べ、その内容をまとめている。
本書では著者とその仲間達が多くの意思決定の現場に実際に行ってその場を観察するとともに、すぐれた意思決定者からも意見を求め、意思決定の法則をまとめている。
救急や戦場で行われた優れた意思決定は、その意思決定者さえも「直感」として、その決定の理由を説明できないことが多い。本書ではそんな直感によってされた意思決定がどのようにして導き出されたのかを探っていく、そんなエピソードはどれも興味深いと同時に、短時間で行われた本当にすぐれた意思決定のための技術は、経験によってしか得られない、と思わせる。
後半は意思決定を分析する話が多くて若干退屈だったが、困難にぶつかったときに、どのように考えればいいか、という参考にはなるだろう
【楽天ブックス】「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」
「非才」マシュー・サイド
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
この世には遺伝的に決まる「才能」なんてものはなく、すべては努力によって身につけられる。世の中にはびこる「才能神話」を否定しながら、効果的な努力の方法を説明する。
卓球のチャンピオンとなった著者が、自らの経験を振り返ってその理由を探るとともに、技術を習得するための方法を語る。同じように努力や効果的な練習方法に着いて語った「天才!成功する人々の法則」「Talent Code」などと同じような内容を含む部分もあるが、本書では自らの経験談として語られている点が大きく異なる。
著者は自分が卓球のチャンピオンになった理由を、才能のおかげなどと言ったりはしない。卓球台を買ってくれた両親と、同じように卓球にのめり込んで常に練習相手となってくれた兄の存在があったからだと言うのだ。つまり、たまたま効果的な練習を何時間もできる環境に育ったということである。
同じように、タイガーウッズやチェスのチャンピオンなど多くの偉大な「才能を持っている」と呼ばれる人たちの努力を説明していく。本書の努力の説明とは、つまり才能の否定である。面白いのは著者が、プロテニス選手のサーブレシーブに挑戦する場面だろう、高速のサーブを打ち返すことのできる人間はそれに見合う反射神経という才能を持っているから、と言われるが、では同じように反射神経を持っていると言われる卓球チャンピオンは、テニスのサーブに反応できるのか。
また、後半では、大舞台で起きた「あがる」という現象について説明する。トッププレイヤーは並外れた練習量によってスポーツに必要な動作を「自動化」する。しかしわずかな狂いによって「直そう」と意識してしまうことで、ますます悪化していくのである。
毎日の努力に磨きをかけたくなる一冊。
【楽天ブックス】「非才」
「Life in Motion: An Unlikely Ballerina」Misty Copeland
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
バレエダンサーであるミスティ・コープランドのこれまでの人生を描く。
バレエというと、裕福な家庭の女の子達がするものというイメージがあるが、著者であるミスティはどちらかというとかなり貧しい家庭の生まれである。それどころかMistyの母は何度も結婚と離婚を繰り返したため、強大も別々の父親を持ち、たびたび引っ越しを繰り返し、モーテルに住む事まであり、自分の部屋どころか自分の寝床を確保することさえ難しいような子供時代を過ごしたというから驚きである。
しかし、才能のある人間は才能を見つけて育てる人間を呼び寄せるのか、それともそんな人間に恵まれたから才能が開花したのか、いずれにしても、成功者の周囲には必ず鍵となる人物がいるものだ。バレエ教室を経営するCindyがまさにMistyにとってそんな人間となる。遅くにバレエを始めたMistyの才能に早くから注目し、教室まで遠くて通う事ができないMistyの送り迎えをするだけでなく、Copeland家がモーテルに住み始めたのを機に、Mistyを引き取って一緒に生活する事になる。そしてバレエを教えるだけでなく、その家庭事情ゆえに引っ込み思案で自らの意見を言うことをあまりしなかったMistyに繰り返し質問をして、本人の自我を育む事となったのである。
また、才能あふれるMistyだが、黒人ということで、未だにアメリカのバレエ界に根付く人種差別に何度も遭遇する事となる。しかし、過去の黒人バレリーナ達が自分に道を開いてくれたという信念と、自らも次の世代の同じような境遇の人々へバレエの世界を開くという姿勢で少しずつバレリーナとして成功していく。Mistyのバレエに対する姿勢はとても刺激となる。彼女の姿勢はまさに完璧主義者であり、目の前にあるモノを突き詰め、毎日時間を費やすことによって、人を感動させるような技術身に付くということを改めて教えられた気がする。
「樹海」鈴木光司
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
富士の樹海に絡んだ6つの物語。
印象的だったのは最初の物語である。人生に絶望して樹海で命を断った男性は、死んでからも意識を失う事なく、自らが首を吊った木に憑依し、自らの肉体が月日の流れとともに腐敗し、やがて骨となる様子を見ることとなる。死んだ後の世界が実際どのようなものなのかわからないが、一カ所で何もできずに固定され、意識だけ永遠に持ち続ける以上に苦痛な状態などあるだろうか。そんな今までにない恐怖を味わえるのは鈴木光司らしく、僕が彼の作品が出るたびに読む理由でもある。
本書はそれ以外にも5つの短編が含まれており、それおれが微妙に関連している。世代を超えた不幸の連鎖や希望が感じられるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「樹海」
「盲目的な恋と友情」辻村深月
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京の大学の管弦楽団に参加する学生達の物語。大学が指揮者として迎えたプロ、茂実(しげみ)とバイオリン奏者として参加していた蘭花(らんか)は恋愛関係になる。
前半は蘭花(らんか)目線で物語が進む。将来を有望視される指揮者の茂実(しげみ)と付き合い始め、茂実(しげみ)の元彼女や、周囲の女性との関係に嫉妬する様子などとともに、同じオケの友人である留利絵(るりえ)や美波(みなみ)との人間関係を描く。美人な蘭花(らんか)の学生生活は少女マンガのようだが、やがて茂実(しげみ)との関係は悪化していく。
後半は蘭花(らんか)の友人である留利絵(るりえ)目線で進む。幼い頃から誰もがうらやむような美人の姉を持ち、自分自身はニキビを気にしてコンプレックスを抱えて生きる。やがて、留利絵(るりえ)は友人である蘭花(らんか)に固執していく。
個人的には前半の蘭花(らんか)の物語よりも、嫉妬やコンプレックスに苦しみながらも自分の存在意義を見いだそうとする留利絵(るりえ)目線の方が印象に残った。若くて未熟な心の動きを描くという意味では辻村深月作品らしいといえるが、いい作品の印象が強いため、少し物足りなさを感じてしまった。
【楽天ブックス】「盲目的な恋と友情」
「世界で一番いのちの短い国」山本敏晴
オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
アフリカのシエラレオネで、国境なき医師団の一員として働く著者がその日々の生活の様子を語る。
シエラレオネとはどんな国なのか。日本人にとっては、エジプトと南アフリカ以外のアフリカの国はどこも貧しいというイメージで同じなのかもしれない。しかし、本書によると、そのタイトルにもあるように、平均寿命最短、乳児死亡率最悪、妊産婦死亡率最悪など世界一悪い医療統計記録を多数保持しているという。
そんな貧しい国で、毎日人々を救っていると聞くと、ものすごくかっこいい話のようにも聞こえるが、本書で描かれる著者の日常の様子は本当に命がけである。HIV感染者や多くの伝染病が蔓延しているにも関わらず、手を洗うための水さえ手に入れることが難しいのである。
中途半端な気持ちで、「いつか発展途上国で医者として活躍したい」などと思っている人は、実際に行動を起こす前に本書を読んで観た方がいいかもしれない。
【楽天ブックス】「世界で一番いのちの短い国」
「国をつくるという仕事」西水美恵子
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元世界銀行副総裁である著者が貧困と戦った日々を語る。
僕らは貧困という言葉を聞いたときどのようなイメージを持つだろうか。もちろん貧困がなくなるといいと思うし、ただお金を分け与えるだけではそれは解決しない事も分かっているし、世界から貧困を無くすためには多くの超えなければならない生涯があることも知っているだろう。しかし、僕らが知っているのはそれだけである。多くの人が貧困がなくなればいいとは思いながらも自分の人生に大きな影響を与えるほどの行動はできない。または行動力のある人でも実際に現地に行って数年の支援活動に参加する程度なのであろう。
本書の西水美恵子はそのどちらでもない、その立場多くの国の政策に影響を与える権力者達と貧困解決の方法を探り、時には彼らの態度を叱咤し、大きなレベルで貧困を解決しようとする世界を走り回る一方で、常に現地の人たちと交流しその実情を知ろう努力するのである。
そんな彼女が常に立ち返る思い出がある。
本書のなかに登場する多くの権力者たちは、西水美恵子の視点によって、また報道などで見聞きするのとは違った印象を与えてくれる。真実には多方面の視点から物事を見つめる事によってのみ近づく事ができる、ということは改めて感じる。
世界をよくするために何ができるか。本書では、そんな理想を、理想として終わらせない生き方が見えてくる。きっと何か行動を起こしたくなるだろう。
【楽天ブックス】「国をつくるという仕事」
「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の起業で、著者が世の中に必要と思う企業を取り上げる。
著者は多くの企業は被害使者意識に凝り固まっていると言う。そんな企業は5つの言い訳「景気や政策が悪い」「業種・業態が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「大企業・大型店が悪い」を繰り返して、変わろうとしないのだそうだ。それに対して、いい企業があるべき次のように表現する。
顧客が3番目に来ている点に多くの人は驚くかもしれない。しかし、今世の中の多くの会社が「経営者」や「顧客」を一番上に持ってきているために、人々の幸せを損なっているように見える。社員が仕合せになることで、顧客や地域にその幸せを共有しようとするのが本来のあるべき流れなのだろう。
中盤以降はそんな著者の目に止まったすばらしい企業を5つ紹介する。紹介される企業は例外なく、顧客よりもまず社員を大切にする点に注目すべきだろう。読者はこんな会社で働いてみたい、と思うのではないだろうか。素敵な会社を作りたいと感じさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「日本でいちばん大切にしたい会社」
「ワールド・カフェをやろう! 会話がつながり、世界がつながる」香取一昭、大川恒
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ワールド・カフェの効用とその方法について説明する。
ワールド・カフェという言葉を知ったのは本当に最近のことである。会社で毎日繰り返されるミーティングのように、人々が協力して物事の解決策や新しいアイデアを生み出すというのは多くの場所で行われていることではあるが、残念ながらそれはなかなか旨く機能しない。多くの場合、上司や部下がいて、立場を気にしたり、同じ職場やコミュニティの人間が集まっていて最初から考え方に偏りがあったりするからである。ワールド・カフェというシステムはそれにたいする一つの解決策とも言える。
本書はそんなワールド・カフェの手法とそれぞれの参加者が意識すべき考え方が説明されている。ワールドカフェで行うべきなのは「ディスカッション」ではなく「ダイアログ」である、とする点が印象的である。この考え方は、世の中の多くの企業で行われているミーティングなどでも取り入れられるべきだと感じた。「ディスカッション」と「ダイアログ」の違いのいくつかを挙げると次のようなものだ。
ワールド・カフェそのもの運営に興味がなくても、本書は話し合いに対する考え方に新たな視点をもたらせてくれるだろう。
【楽天ブックス】「ワールド・カフェをやろう! 会話がつながり、世界がつながる」
「ブータンの笑顔」関健作
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者はあるテレビ番組を見てブータンに魅せられた。それから必死で勉強し、青年海外協力隊としてブータンで3年間体育を教えることになった。そんな著者がブータンでの出来事を彼自身が撮った写真を交えて語る。
体育の授業の重要性が認識されていないブータンで、体育の楽しさを教えようとするのだが、多くの困難にぶつかる。例えば、体育着はもちろんないし、生徒によっては運動用の服を買うお金もない。また、低学年はそもそも英語を話せない。そして時間に対する感覚も日本人とは大きく異なるのだ。それでも時間をかけて著者は少しずつ、現地の言葉を学び、体育の楽しさを生徒達に伝えていく。
授業や学校の話だけでなく、著者がブータンで体験した驚きのエピソードもたくさん語っている。しかし、そんなエピソードだけでなく本書の半分ほどを占める写真も素敵である。きっと写真を見ただけでも何か感じ入るものがあるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「ブータンの笑顔」
「Naked Statistics: Stripping the Dread from the Data」Charles Wheelan
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計が世の中に役立てられる箇所が溢れているかを語る。
情報をしっかりと正確に把握するためには、その情報の裏に潜む意図を見抜く能力も磨かなければならない。本書では多くの例をあげているが、なかでも印象的だったのがとある2つの携帯電話会社AT&TとVerisonの広告である。AT&Tが「アメリカ人口の97%をカバーしている」とそのネットワークの広さをアピールしたのに対して、VersionはAT&Tの地域カバー率の低さを示して対抗したのである。確かに数字だけ見ると97%というのは高い数字に見えるが、携帯電話という商品を考えると、人が集中している大都市だけで使えても便利とは言えないだろう。数字以外のものを見る目を養う事が大切なのだ。
著者は多くの例を交えながら、統計の基本的なことから語っていく。例えば標準偏差やばらつきなど、言葉だけは知っていた言葉についても、それらの言葉の実際に示す意味が理解できるようにだろう。インターネットを経由して多くの情報にアクセスできる今、標準偏差やばらつきな、平均値や中央値などは、すぐに計算できるようにしておきたい。
本書を読んで感じるのは、物事の真偽を統計的に判断することは本当に難しいということだ。素人がその辺の数値から出してきたグラフにはまず疑いを持ってみるようにしたほうがいいかもしれない。素人どころか専門家が過去何度もそのような大きな統計的誤解を招いている例を本書ではいくつも紹介している。
サンプリング一つとっても、偏りのないサンプリング手法がどれほど大切で、それがどれほど難しいかがわかるだろう。例えば、無作為な電話によるアンケートを行うとしても、何も考えずに行えば回答者は電話に出やすい人間や家にいる時間の長い人間に偏ってしまう。著者が言うには、携帯電話の出現がさらにそれを難しくしたのだそうだ。
また、警官の人数と犯罪数の因果関係を証明しようとしても、犯罪が多いから警官を増やした、という事実もあるため、僕らが思っているほど数値だけで簡単に証明できるわけではないのである。
冗長に感じる部分もいくつかあったが統計に関しては間違いなく理解を深められる。本書を読めば、世の中のデータの裏側や、落とし穴が見えてくるだろう。
「ダライ・ラマ自伝」ダライ・ラマ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
5歳のときにダライ・ラマとして即位しその後中国の侵略によってインドに亡命しながらも祖国チベットの平和のために尽くすダライ・ラマ14世がこれまでの生涯を語る。
インドに亡命してから、多くの国の著名人達と出会って、祖国の平和のために尽くすダライ・ラマの姿からは、僕ら日本人が普段意識しない何か大切なものの存在を感じられるのではないだろうか。本書を読もうと思ったきっかけは、チベットを扱った映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のなかの、神の化身ように人々から扱われているダライ・ラマと、最近メディアで見かける人のいいおじさんのようなダライ・ラマの間の隔たりに興味を持ったからである。本書を読んでその隔たりがすべて埋まったわけではないが、ダライ・ラマが仏教やチベットの伝統を変えてまでそこくに尽くそうとした結果なのだろう。僕らは、仏教に限らず、宗教における地位の高い人の人柄を想像するとき、考え方の偏った人間を想像してしまうが、少なくともダライ・ラマ14世に関しては、新しい考え方を偏見なく受け入れようという姿勢を持っているように見える。
また本書では繰り返し、中国のチベットに対する行いの非道な行いについて触れられている。近隣の国で起こったことにも関わらず、あまり自分が知らなかった事にも驚かされた。
そして、ダライ・ラマのこんな言葉に未来への希望を感じた。
あまりページを先へ先へとめくりたくなるような文章ではなく、多少読み進めるのに根気がいるが、ダライ・ラマという人間を知るのには大いに役立つだろう。
【楽天ブックス】「ダライ・ラマ自伝」