「同時通訳者の頭の中 あなたの英語勉強法がガラリと変わる」関谷英里子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
同時通訳者が英語の勉強方法を語る。
著者自身、主に日本でその英語力を身につけたゆえに、その勉強方法はとても参考になる。著者が特に強調するのは「イメージ力」と「レスポンス力」である。そして、その能力の向上のための方法として、パラフレージング、シャドーイングを挙げており、その理由とその方法を解説している。
シャドーイングについてはすでに多くの本で触れられていて、実際やっているひとも多いのでその効果は疑う理由もないが、パラフレージングについては今まであまり取り組んでこなかった。本書を読んで改めてその効果を実感したのでぜひ自分の勉強のなかに取り入れたいと思った。
もっとも印象的だったのが、著者がお気に入りの映画「ビフォア・サンライズ」を見ていたときの話。そのなかで、著者は、主人公のセリーヌのフランス訛りの英語を素敵だと思ったと書いているのである。僕らはいつも、英語らしい英語を話そうとし、日本語っぽいカタカナ英語を恥ずかしいと思う傾向がある。しかし、見方を変えれば日本語訛りの英語を誇らしく思う、という方向もあるのではないかと思った。
全体的には、ページ増しのための内容のように思える部分や、まとまりや内容の流れに違和感を感じる部分もあった。そこらじゅうの英語教材に書いてあるような学習方法や学習教材、言葉の意味にページを割かずに、著者自身の考え方や勉強方法に絞ったらさらに濃い内容になったのではないだろうか。それでも、英語学習者にとっては参考になる内容が多く書かれていると感じた。
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「赤穂浪士」大佛次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

「赤穂浪士」や「忠臣蔵」というタイトルは聞き慣れており、47人の武士が復讐を果たす物語は知っていながらも、ここまで語り継がれている物語に一度も触れたことがないことに疑問を感じて本書を手に取った。そもそもどうして、ただそれだけの単純な物語が上下巻含めて1200ページを超える物語になり得るのかという点も興味深かった。
実際には単純に復讐しようとしてすぐにそれを成し遂げるのではなく、発端となる出来事から実際にその復讐を成就するまで思っていた以上に長い月日が流れていることに驚いた。また、そんななかで、大将である内蔵助(くらのすけ)が行った根回しや、ともに行動する同志、単純なその場の怒りや苛立ちから立ち上がったものを含まぬように、言葉を変え、行動を変えて、本当に強い意思を持った者だけに絞っていく様子が印象的である。また、命を狙われる吉良上野介(きらこうずのすけ)の周囲の人間の思惑もおもしろく、どれも歴史上の事実だからこそある現実味にあふれている。
残念なのは、歴史上の事実だからこそなのか、登場人物が多く、またすでに100年近くも前に書かれた本ということで、理解しづらい部分も多かったということ。全体の内容を考えると、もう少し短くまとめられそうな気もする。
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「夏美のホタル」森沢明夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロの写真家を目指す相羽慎吾(あいばしんご)は恋人の夏美とともに年老いた母と離婚してその息子の暮らす店を見つけ、そこを拠点に写真を撮ることになる。
序盤は、慎吾と夏美、そのお店のヤスばあちゃんと、息子の地蔵さん(笑顔からそう呼ばれる)によるほのぼのとした田舎生活が描かれている。ホタルやオイカワなど、慎吾と夏美が田舎町で遊ぶシーンは懐かしい子供時代を思い起こしてくれるだろう。
物語のなかでやや異質な存在なのが同じ村に住んでいる仏師雲月(うんげつ)の存在である。雲月(うんげつ)の彫る仏像は、まるで生きているかのような躍動感があるのだという。天才と呼ばれる雲月(うんげつ)であるが、妻と別れて村に移り住み、慎吾や夏美と出会うことになる。職業柄ぶっきらぼうな態度をとりながらも、少しずつ打ち解けていく様子が微笑ましい。
やがて、地蔵さんの過去が少しずつ明らかになっていく。時間をともにすることで2人に家族のような親しみを感じる慎吾と夏美はできるかぎり力になろうとするのである。
夏の匂いが漂ってくる物語。
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「昨夜のカレー、明日のパン」木皿泉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7年前夫に先立たれたテツコは亡くなった夫の父ギフと今も暮らし続けている。微妙なバランスで保たれている2人の関係に、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんが入り込んでいく。
不思議でなんか暖かい物語。夫の父親と2人で暮らし続けているテツコも不思議だが、その夫の父親、ギフ(「義父」がそのまま呼び名になったらしい)も、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんも不思議な性格だけどとてもやさしくて、そんな3人のやりとりが、読者の心を和ませてくれるだろう。
何かを学べるわけではないが、今まで読んだ事がないような不思議な作品。人間関係のあり方に正解はなく、それぞれが心地よい関係がその人にとっての正解なんだと感じた。
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「シューマンの指」奥泉光

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
語り手「私」は、古い友人から指を失ったはずの天才ピアニストの長嶺修人(ながみねまさと)が復活したことを聞く。信じられない思いから、長嶺修人(ながみねまさと)が指を失うまでの出来事を振り返る。
物語は、音楽に青春をかけた3人の男子高校生、語り手である「私」、長嶺修人(ながみねまさと)と鹿内堅一郎(しかうちけんいちろう)を中心に進む。圧倒的に音楽的能力の高い長嶺修人(ながみねまさと)が2人に持論を語るなかで、音楽には僕ら一般の人間が理解できないような、音楽家だけがわかる世界があることが伝わって来る。シューマンを中心に作曲家のことを語るシーンが多く、音楽の知識が少ないことを残念に思う一方で、実際に作曲家やその音楽について知識を持っている人ならどの程度本書で長嶺修人(ながみねまさと)が語っていることに共感するのだろうかと興味を持った。
そして、ある春休みの夜、3人が目撃した殺人事件を機に物語は動き出すこととなる。
音楽という要素を多く含む点は新しく、いろんなクラシック音楽を聴いてみたいと思わせてくれたが、結末はありがちな展開に感じてしまった。
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「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて 」クレイトン・クリステンセン/マイケル・レイナー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
企業が破壊的イノベーションへ対抗するための方法を語る。
まず、持続的イノベーションと破壊的イノベーションという言葉を用い、ソニーやアップルが行ってきたイノベーションを説明し、相互依存型アーキテクチャとモジュール型アーキテクチャという言葉で、企業が作る商品を説明している。世の中の多くの企業の栄枯盛衰が、この考え方で説明できる点が面白いが、実際にはこのあたりの内容は「イノベーションのジレンマ」に含まれる部分なのだろう。
中盤以降は、そんな今までわかってても避け方のわからなかった、破壊的イノベーションを避けるために、持続的イノベーションの状態にある企業はどのような取り組みをすべきなのかを語っている。
とてもすべてが理解できたとは言い難いが、世の中の流れについて新たな視点をもたらしてくれる。
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「教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に改革する」クレイトン・クリステンセン/マイケル・ホーン/カーティス・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
破壊的イノベーションの説明を用いて、教育がいつまでたっても進歩しない理由と、教育の今後の進化すべき方向性を語る。
印象的だったのは教育のモジュール化という考え方である。現在の教育はすべて、それ以前の学んだことが理解できていないと、その次の内容を理解できない仕組みになっており、それが問題だというのである。例えば、足し算、掛け算を理解していないとその先にある、分数の計算が理解できないために、すべての生徒が同じ順番で学んでいかなければならないために教育を非効率にしているのだという。つまり、教育のプログラムは相互依存性が強いのだ。
そんななか解決策として本書が主張しているのは、教育をモジュール化し、1人1人が独立したコースを自由に履修し、必要な時間をかけて理解するという方法である。それによって全員が同じ授業を受ける必要もなく、全員が同じ内容に同じだけ時間をかける必要もないというのである。確かに、以前であればそもそも「先生の数が足りなくて実現できない。」で終わっていしまったであろう話が、現在であればインターネットを使うことで実現できそうな気がする。
教育の発展だけでなく、経済的なイノベーションの考え方を用いて教育界を語っている点が面白い。
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「彼が通る不思議なコースを私も」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霧子(きりこ)がある日出会った死神のような男性、椿林太郎(つばきりんたろう)は教育に情熱を注ぐ男だった。やがて2人は結婚しともに生きることとなる。

白石一文は人生を描くのが非常にうまい。本作もそんな作品を期待して手に取った。実は霧子(きりこ)が出会った椿林太郎(つばきりんたろう)は人の人生の長さがわかるという。そんな彼が結婚相手として霧子を選んだ理由はなんだったのだろう。彼の能力が霧子との結婚にどのような結末をもたらすのかが、物語の焦点となる。

貶すほどの内容ではないが、期待に応えてくれるような印象的な内容ではなかった。人の残りの人生の長さが見えるというのは、最近読んだ百田尚輝の「フォルトゥナの瞳」と重なる部分が多いからなのかもしれない。
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「My Sister’s Grave」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Tracyの妹のSarahは行方不明になり、自供と証拠をもとに同じ町に住む男が有罪となった。その裁判に疑問を持つTracyは一度は教師を志すも、真実を知るために刑事になる。20年後、妹の遺体の発見をきっかけに自ら集めた証拠を元にTracy再び裁判を起こして真実を暴きだそうとする。
前半の多くは、妹の失踪という出来事に苦しむTracyと、TracyとSarahの当時の様子が交互に展開していく。過去を描いたシーンでは、自由奔放に行動するSarahと、その面倒を見なければいけない姉のTracyと見えていたが、物語が進むにつれて、Sarahは町の誰からも好かれるような存在で、Sarahの失踪が町の空気さえも変えてしまったことがわかる。姉のTracyだけでなく、町に住む多くの人がその事件による苦い記憶を抱えて生きているのである。
現在を描くシーンでは、Sarahの発見をきっかけとして、裁判のやり直しへ動くTracyとその友人の弁護士Dan。20年間Sarahを殺害したとされて刑務所で過ごしていたEdmund Houseに会うなどして、当時偽の証拠を捏造したとされる警察のRoy Callowayらを追い詰めていくのだ。
衝動買いだったが、Tracyやその周囲の人々の心情描写が深く、予想以上に楽しむことができた。続編も出ているので読み続けてみたい。

「Leaving Everything Most Loved」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドから家庭教師としてイギリスに移住してきた女性が狙撃された。誰もが羨むような美しい女性だったのも関わらず、なぜ殺されなければならなかったのか。Maisieはその女性の兄の依頼によってその真実を調査する。
調査の過程でMaisieはその女性Ushaが誰からも好かれるような女性だったことを知る。誰からも好かれるような女性なら、殺人の動機は一体どんなものだろう。と思うところだが、本書では「誰もが羨むような眩しい女性は、いるだけで妬みを買う」という視点にも触れている。人間の醜い部分を見せてくれるようで興味深い。
また、事件の解決へと調査をすすめるなかで、Maisieの大きな決断をする。結婚を求めている交際相手Jamesとの関係に区切りをつけるため、またメンターであり亡くなったMauriceの教えに習って、Maisie1人で旅に出ることを決意するのである。事件の解決と同じぐらい、Maisieのこの決断が本書の焦点だと感じた。そして、そのために事務所を閉めて、Maisieと共に働いていたSandraとBillyもそれぞれの道を進むこととなるのである。
最終回のような一冊だが、まだ続編はあるようだ。

「Steal like an Artist」Austin Kleon

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートを作る上での心構えを著者の経験から語る。
タイトルにもあるようにアートを作りたければ「アイデアを盗め」と堂々と語っている。確かに僕自身もデザインに関わってきて思うことだが、上達の近道はいいデザインを真似ることである。「それは盗作ではないのか?」と思う人もいるだろう。そんな問いに本書はこんな風に答えてくれる。

すぐれたアーティストは何もないところからは何も生まれないことを知っている。すべてのアートは以前もあったものの上に作られるのだ。完全にオリジナルなものなど存在しない。

アートに限らず、スポーツでも音楽でも、いいものを真似ようとして努力する中で、それでもその人の体格や能力でどうしても真似できない部分に出会う。そこを自分なりに工夫した結果、オリジナルが生まれるのだという。

ちなみに良い盗み方と悪い盗み方をこう書いている。良い盗み方は多くのものを盗むこと、悪い盗み方は一つのものを盗むこと。納得がいく部分があるのではないだろうか。
また、著者は仕事以外に趣味を持つことを推奨している。一見関係ないように見えることでも、趣味を持つことは何かしらいい影響を与えてくれるのだと。たしかに、いい仕事をする人は何かしらの趣味にも打ち込んでいるような気がする。

何か新しいものを創り出すことを考えた時、人の真似をするのはどこか後ろめたいもの。でも世の中の創造的なものはみんなそういうステップを踏んで生み出されたのだと、堂々と語ってくれる点がなんとも清々しい。

「大事なことに集中する 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」カル・ニューポート

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ディープワークをするための方法について語る。
本書ではディープワークを「あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。」と定義し、その時間を多く作り出すことこそ質の高い仕事に繋がるとしている。
きっと誰もが、仕事に「没頭」してしまったことがあるのではないだろうか。本書でいう「ディープワーク」とはまさにそんな仕事への「没頭」状態のことである。しかし、誰もが経験から知っている通り、残念ながらそんな「没頭」状態は頻繁に起きることではないし、起きたとしても長く続くものではない。どのような環境が整えばそのような状態になるのかを、本書はいろいろな例を交えて説明している。
多くの人がディープワークの真逆であるシャローワークに多くの時間を奪われているのは誰もが経験的に知っていることだろう。シャローワークの代表的な例はもちろんメールのチェックである。インターネットの普及により、大量のメールが毎日送信されるのが日常的なこととなり、毎日すべてのメールをチェックするだけでもかなりの時間がかかってしまうのである。
本書が語っている興味深いことの1つは、過去に行われた実験によると、シャローワークは世間一般に人々が思っているほど重要ではないということである。シャローワークを減らすことで、労働時間を減らしながらもディープワークの時間を増やして成果を出している企業の例は非常に興味深い。
全体的には、僕自身が普段仕事の質を上げるために行っていることや、経験から感じていることを裏付ける内容であった。
読者にとって仕事の質をあげるためのヒントになるのではないだろうか。
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「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」グレッグ・マキューン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

エッセンシャル思考とは、仕事における断捨離やミニマリズムと言えるかもしれない。依頼される仕事をすべて引き受けるから、常に忙しく、集中すべき仕事に集中できず、自分の能力も上がらない。重要なのは自分にしかできない仕事を優先し、それ以外の依頼に対して「No」と言う能力を身につけることである。
本書で印象的だったのは90点ルールというもの。仕事を選ぶときでも、服を選ぶときでも、自分で点数をつけて90点に満たないものはすべて0点と扱うというものだ。「迷ったら捨てる」「迷ったら行かない」「迷ったら買わない」「迷ったら受けない」という感覚が正しいのだろう。
「エッセンシャル思考」とは仕事に忙殺され、朝から晩まで働きながらも満足のいく人生が送れていない多くの人にとって、そんな生活から抜け出す鍵となるのではないだろうか。本書は仕事について書かれているが、実際エッセンシャル思考が役に立つのは仕事に限った話ではない。友人も、趣味も、部屋に置く家具も、エッセンシャル思考で選び取ることで豊かな人生が開けるのではないだろうか。
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「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」田中優

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなNGO活動に長年関わってきた著者がボランティアについて語る。

「ボランティア」=「善い行い」とすぐに結論づけてはいないだろうか。実際僕自身もいくつかのボランティアを経験するまで、ボランティア活動に参加する人が多ければ多いほど世の中はよくなると信じていた。しかし最近では、本当に世の中の役に立つことであれば、その「善い行い」に従事する人にお金が支払われる仕組みができるはずだし、それができてこそその「善い行い」は継続できる、と信じるようになった。それでは実際ボランティアの現状とは、そこに長年関わってきた人から見るとどのように見えるのだろうか。そんな思いが本書に導いた。

ボランティアのいろんな側面について触れられているが、印象的だったのは「生活できない人を増やす仕組み」という考え方である。

「図書館ボランティア」で図書館を運営するようになると、その分だけ司書の人が正規の職員として雇われなくなることが多い。

無料で何かに従事することは、そのことに有料で従事していた人の生活の手段を奪ってしまうというのである。その他にも、ボランティアによって依存心の強い人を生み出す可能性があることも覚えておくべきだろう。災害ボランティアなどでは、被災者が、あとは自分でなんとかできる程度まで手伝ったら、適度なタイミングで撤収することこそ必要なの。つまり、ボランティアをすることを目的にするのではなく、本当に相手の未来まで考えて行動すべきなのである。

また、末尾にはいくつかのボランティア活動が「取り組みやすい活動ガイド」としてまとめられているので、今後の参考にしたい。これからいろんな活動に関わりたいと考えるなかで、役立つ視点を提供してくれた一冊。

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「The Day of Jackal」Frederick Forsyth

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1963年フランス、「アルジェリアは永遠にフランス」をモットーに活動する秘密軍組織OASは大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺を企てる。すでに多くの幹部が警察に目をつけられている中、暗殺を実現するための唯一の方法が、外国人の殺し屋を雇うことだった。その殺し屋のコードネームこそジャッカルなのである。

空港の名前にもなっているシャルル・ド・ゴールだが、実際にはその在任中にどのような政策を行ったのかをほとんど知らなかった。また、アルジェリアがもともとはフランス領だったことは漠然とした知識としては持っていながらも、どのように独立したかをこれまで気にかけたこともなかった。

本書は暗殺を依頼されたジャッカルが暗殺のために入念な準備をする様子と、その暗殺を防ぐ任務を課せられたClaude Labelが、わずかな手がかりを元にすこじずつジャッカルを追い詰めていく様子が描かれている。いくつものパスポートを用意し、いくつもの変装を用意して厳重に警戒されているであろうド・ゴールに近づくための準備をするジャッカルも、また、外見的な特徴しかわからないじょうたいで、海外の警察のつながりをもとに暗殺者を絞り込んでいくLabelも、まるで本当に起こった真実を描写しているようで、とても1971年に書かれた小説とは思えない。

概要として語ってしまうと、「暗殺者とそれを捕まえる刑事」となってしまうが、その描写の緻密さは一読の価値ありである。

アルジェリア戦争
1954年から1962年にかけて行われたフランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争。(Wikipedia「アルジェリア戦争」

「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」マルティ・パラルナウ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
グアルディオラはFCバルセロナで選手として活躍し、その後FCバルセロナを監督として率いて黄金時代を気付いた監督。本書はグアルディオラが2013年に、それまでドイツのブンデスリーガで優勝の常連であったバイエルン・ミュンヘンの監督に就任してからの様子を、間近で取材して描いている。
僕自身がサッカーから離れて久しいが、個性豊かな20人近い選手をまとめげて一つの強力に機能するチームを作り上げる優れた監督の物語はいつだって非常の面白い。監督はどのようにチームを機能させるのか、どのようにメンバーのモチベーションを上げるのか、どのように長く成長する環境を作るのか、といった問題を突き詰めて優れたチームを作っていく。そのスタンスはサッカー以外にも応用できるだろう。
2013年時点で、グアルディオラはすでにFCバロセロナでの輝かしい経歴の持ち主で、さらに就任先のバルセロナはその時すでに優勝の常連国。おそらく周囲の人間は成功よりも失敗を予想したのではないだろうか。しかし、もはや改善しようがないようなチームをさらに強く安定したチームに改善していく様子は、「すべては永遠に改善できる」と改めて認識させてくれる。スペインのパスサッカーの文化をバイエルンに取り入れる様子も印象的だが、一方で「バイエルンにメッシはいない」と、完全にバルセロナのパスサッカーを取り入れるのではなく、ドイツの文化や身長など選手の個性に応じてバイエルンのサッカーを発展させていくグアルディオラのスタンスも刺激的である。
最も印象的だったのは選手の希望に折れて戦術を決め、レアルマドリードに0-4で大敗する場面である。グアルディオラほどの完璧主義者も失敗なしには前進しないのだ。そんな失敗の後のグアルディオラの失敗の受け止め方こそもっとも見習うべき点かもしれない。
ここしばらくサッカーを1試合通じて見る機会がなくなってしまったが、本書によってサッカーの戦術はまだまだ進歩していること、そして、以前よりも高く洗練されたチームが対戦している様子が本書から伝わってきて、またサッカーが見たくなった。本書で触れられている多くの重要な試合をYouTubeで見ながら読み進めてみれば、サッカーファンじゃなくても十分に楽しめるのではないだろうか。
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「人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣」金澤悦子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
僕自身人見知りだとは思っていないが、アルコールが苦手なので飲み会に参加する回数が一般的な人に比べて少なく、それによって人脈作りが不利だと感じている。何かその不利な部分を補う秘訣のようなものが見つかればと思って本書を手に取った。
すでにやっていることから、大事だとは思っていてもできてないことから、考えたことすらなかったようなことまで様々な手法、心がけが書かれている。
印象的だったのは、パーティなどで困った時。そんなときは、人に話しかけられなくて孤立している人を束ねる役割をするというもの。確かにこの方法だと、無理に話の輪のなかに入る必要もないし、孤立している人にとっては救世主として印象づけられることになるだろう。
またSNSでのイベントの誘いが増えた昨今、断りのメッセージもどうしてもさらっとしたものになりがち。しかし、単純に断るだけでなく、断っても別の人間にシェアすることによって自分の価値をあげられるのだとか。
いずれも普段の心がけしだいだが、人との接点を持っていろいろ試してみたいと思わせてくれる一冊。
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「A Win Without Pitching Manifesto」Blair Enns

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。
本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。
しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。

We Will Specialize
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High

印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。
読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。

「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
川田幸代(かわたゆきよ)は社史編纂室に勤務する29歳。社史をまとめることが仕事なため、年配の社員や、退社した社員から話を聞いて情報を集めようとするが、過去のある時期に関して、関係者は頑なに口を閉ざす。一体その時代に何があったのか。
社史をめぐる業務が、やがて商社の海外進出の際の闇の歴史を暴き出すこととなる。すべてがフィクションとはいえ、同じようなことが実際にあったのではないかと考えさせられる。
ただ、残念ながら他の三浦しおんの作品のように読者を強烈に引き込むような面白いさは感じられず、また、なぜこのようなテーマで物語を描いたのかも感じられない中途半端な仕上がりだと感じた。
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「Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書」Steve Mulder,Ziv Yaar

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Webサイト設計のためのペルソナの作り方についてまとめている。
ペルソナ設計という考え方は昨今多くの企業で認識されるようになってはきたが、その設計の仕方となるとよくわからない。本書はそんな人のためにペルソナの作り方を丁寧に説明している。
まず、ペルソナを作成するためのユーザー調査の油断として、定性的なアプローチ、定性的なアプローチと定量的な検証、定量的なアプローチという3つのアプローチがあり、それぞれの長所と短所を理解すべきだろう。またもう一つの軸として本書ではユーザーの発話とユーザーの行動という指標を用いている。定性的な調査は「なぜ」を明らかにし定量的な調査は「何が」を明らかにする、という言い方もしているがこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
本書はそんな考え方の大枠だけでなく、調査の方法、質問の作り方、そして調査結果をもとにどのようにしてどれだけのペルソナを作ったらいいかまで、非常にわかりやすく解説している。実際にペルソナ設計の際に、常に手元に置いておきたいと思える内容である。
後半では作ったペルソナをどのようにプロジェクトに組み込んでいくかの方法が書かれている。ペルソナは作って終わりではなく、プロジェクトに関わる人が常にペロソナの存在を意識するようになってこそ成功なのである。
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