「28歳で政治家になる方法」田村亮

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
選挙戦術研究科と名乗る著者が政治家になる方法を語る。

最近残りの人生を考えて、もう少し人生を楽しむために何をしようかと考えたときに、政治家も面白そうと思っている。そんなわけでより現実的に政治家ってどんなものだろうと知りたくなって、本書に辿り着いた。

序盤は、政治家のメリットや面白さ、そして、誰もが政治に関わっているということを説いている。限られた人しかなれないという印象の政治家という職業も、実際には全ての人に開けているという意味では他の職業よりもずっと公平で、また、全ての人が少なからず政治に関わっているという意味では身近な職業だと気づくだろう。

序盤では現実の数値とともに政治家の実態を見せてくれるので、政治家という職業も結構面白そうだと感じるだろう。

中盤以降はより具体的なプランを語っている。本書では繰り返し市議会議員を狙うことを勧めている。そして市議会議員のなかでも当選しやすい選挙区の探し方を具体的に説明している。つまり出馬する地域を選べば、当選するのは一般的に思われているほど難しくないということである。もちろん、本書では当選をより確実にするために心がけることやるべきことを書いている。

興味深いのは落選する人としてあげている次の4つのタイプである。

  • 選挙と政治を区別していない人
  • すぐにブレる人
  • 高齢者層をあなどっている人
  • 頭のいい人

一つ目の「選挙と政治を区別していない人」というのは、いろんな分野で似たようなことが言えるが非常に面白い。つまり、選挙は当選するためのベストを尽くし、政治は当選してから考えろ、ということなのだろう。

後半からは実際に立候補した後にやるべき行動を、さらに具体的に説明している。実際にやるべきことがより具体的にイメージできることだろう。

本書を読んで、政治家になることは難しくないし、面白そうだと思った。とはいえすぐに次のステップとして市議会議員に立候補は飛躍しすぎだが、選挙の手伝いなど、もう少し深く関わって近くで政治というものを感じてみたいと思った。

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「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」リリー・フランキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2006年本屋大賞受賞作品。子供の頃わずか3年だけ一緒に住んだオトンとオカンとボクの3人の人生を描く。

著者自身の家族の物語、ボクの幼い頃から、やりたいことが見つからずにダラダラと過ごす学生時代など、その成長を描く。そんななか繰り返し描かれるのは、父と母、つまりオトンとオカンとの関係である。早いうちからオトンとオカンは別居することとなり、ボクはオトンとの連絡はとり続けながらもオカンとともに生活する。

やりたいことが定まらないまま、東京に出て美大に進むことを選び、なかなか勉学に集中できないにも関わらず友人に囲まれて日々を過ごす様子が描かれる。ボクを中心とした出来事だけではなく、当時起こった記憶に残る出来事が描かれているので世代が重なっている人は楽しめることだろう。

先日読んだ「錨を上げよ」に似ているなと感じた。この高度経済成長期に子供時代を過ごした人々が40代、50代になってあくせく働く時代を過ぎて、経済的に安定期に突入して、ちょっと人生を振り返って自分の体験を物語にしてみよう、と思うタイミングなのかもしれない。したがって、似たような本を読んだばかりのせいかあまり本屋大賞受賞作品というほど強い印象は感じなかった。読むタイミングが異なればまた違った印象を受けたかもしれない。ダラダラ生きてきた人生もつまらなくはないが、むしろしっかり生きてきた人の人生にもっと触れてみたいと感じた。

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「El libro negro de las horas」Eva García Sáenz de Urturi

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40年前に死んだはずの母親を、ある本と引き換えに返すという電話を受けたKrakenは、母と言われる人を救うためにその本を探すこととなる。

物語は、本と真実の追求に奔走する現代のKrakenが様子と、1970年代に孤児として育てられたItacaという女の子が成長していく様子を描く。

現代の物語では、Krakenの周囲に、古本屋を営んでいた人々の周りで不審死の報告が届く。Karakenは自らの出自を確認するために、祖父と共に亡き父の遺品を確認し始める。一方で70年代のItacaは捨てられたベラクルス学校でその美術の才能を発揮し始め、教師であるAquilinaにその才能を見出されて古書の複製の世界へと入り込んでいく。

なんといっても古書の複製という世界に引き入れてくれる点が面白い。世の中には本のコレクターという人々が存在し、本に大金を払う人がいるから、価値のある本を複製しようとする人たちもいるのである。しかし、そこにはさまざまなジレンマも同時に存在する。真実を知るためにKrakenは古書についての知識も得ていく。

そんななか古本屋から通常の本屋に転向したAlistairの言葉が深い。

¿Por qué lo dejó?
Porque amo los libros, pero los amo por su contenido, por las letras, por las palabras, por las historias que cuentan, por la que hacen sentir a un lector. Esa es la ecencia de los libros.
なぜ古本屋をやめたんですか?
なぜなら僕は本が好きだから、でもその内容が好きだからです。文字や言葉や本が語る物語や、本が読者に伝える感情が好きだからです。それこそが本の本質です。

En cuanto un coleccionista me dice que tiene más de cinco mil ejemplares en su bibliotecas, le perdo el respeto. Sé que es un fraude como lector un impostor un simple acumulador, un poseedor.
コレクターが本棚に5,000冊以上の本を持っていると聞いた途端にその人への敬意を失ってしまう。その人は偽の読書家で、詐欺師か、収集家か提供者です。

やがて現代ではKrakenは自らの実の母に近づいて行き、70年代のÍtacaは古書の複製の世界にどっぷりつかりながらも、愛する人と出会って、自らの人生を見つけようと動き出すのである。古書を扱った物語なだけにそこでさまざまな美しい言葉が登場する点が印象的である。

Hogar no es donde naciste, hogar es el lugar donde tus intentos de escapar cesan.
我が家とは生まれた場所ではない、我が家とは、逃れようという思いが消えた場所である。
Ese es el poder de la historias: advertirnos.Todo está en libros. Todo está ya escrito.
それが物語の力です。すべては本の中にあります。すべてはすでに書かれています。

Krakenシリーズの中途半端な作品から読み始めてしまったようだ。物語を楽しめるだけではなくまざまなスペインの文化を知ることができるので今後もこの著者の本を読んでみたいと思った。

スペイン語慣用句
a lo sumo 多くても
de bruces 腹這いに
hacer tiempo 時間を潰す

「精神科医が教える 幸せの授業 お金・仕事・人間関係・健康 すべてうまくいく」樺沢紫苑


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
精神科医である著者が幸せについて語る。

僕自身、幸せを感じていないわけではないが、さらに幸せの純度を上げたいと思い、本書を読むことにした。

本書では、脳内の幸せを感じる幸福物質として、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンの3つを挙げ、それぞれ、成功、健康、つながりに強く関連づいていると説明している。そして、この3つの幸せをもたらす要素は必ずしも並列ではなく、健康、つながり、成功の順に積み上げるべきとしている。

そんななか印象的だったのは、ドーパミン的幸福は長くは続かないとしている点である。つまり成功は幸福には繋がるもの、持続的な幸せを求めるなら、健康とつながりをもっと重視すべきだということである。成功を追い求めた結果虚しさを感じる男性にありがちな人生がしっかりと説明されていると感じる。

後半は、それぞれの幸せの要素を手に入れるためのアドバイスを語っている。どの説明も自分の体験と一致しており、今まで漠然と感じていたものを言語化してもらったという印象である。人生で迷った時に読み直すといいだろう。

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「汝、星のごとく」凪良ゆう

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2023年(第20回)本屋大賞受賞作品。瀬戸内海の島で生まれ育った井上暁海(いのうえあきみ)と、都会から母と共に島に移り住んだ青埜櫂(あおのかい)の二人の高校生男女の物語である。

序盤は高校生時代の暁海(あきみ)と櫂(かい)の出会いから始まる。櫂(かい)は恋愛に依存した母親に、暁海(あきみ)は浮気をして家を出た父親に悩み、そんな共通する悩によって少しずつ暁海(あきみ)と櫂(かい)は近づいていくのである。

中盤以降は、高校を卒業して漫画のシナリオライターとして東京での生活に染まっていく櫂(かい)と、島に残って男女差別の色濃く残る企業で退屈な毎日を送る暁海(あきみ)を描く。生活の違いから少しずつ二人の心は離れていくのである。

一見、これまでにもよくある恋愛小説のようにも見えるが、ところどころに現代の新しい考え方が入っている。特に存在感を放っているのが、暁海(あきみ)の父の浮気相手である瞳子(とうこ)と、暁海(あきみ)と櫂(かい)の高校の化学教師である北原(きたはら)先生の言葉や考え方である。

瞳子(とうこ)は暁海(あきみ)の母から夫を奪ったにもかかわらず、自分の生き方を恥じることもせず、やがて暁海(あきみ)の仕事の指導者であり助言者となっていく。

いつになったら、あなたは自分の人生を生きるの?

高校の化学教師である北原(きたはら)先生もまた、島の閉鎖的な空気の中で、革新的な考え方を暁海(あきみ)にもたらしてくれる。

ぼくが言っているのは、自分がなにに属するかを決める自由で明日。自分を縛る鎖は自分で選ぶ。

そして、東京で生活する櫂(かい)の周囲にも、絵を担当するゲイの尚人(なおと)や、二人の漫画を愛する担当編集者の植木(うえき)さんや小説を書くことを勧める二階堂絵里(にかいどうえり)など、魅力的な登場人物で溢れている。

物語は、東京で生活する櫂(かい)と島で生活する暁海(あきみ)の視点を交互に物語が行き来することで、島の閉鎖的な空気と生きにくさが伝わってくる。

その年で恋人と別れてどうするの?

書籍に限らず映画や漫画なども含めて、著名な賞の受賞作品はその受賞理由も含めて考えるとより鑑賞の深みが増す。高校生の恋愛という使い古された展開にもかかわらず本屋大賞という評価を受けた理由は、瞳子(とうこ)や北原(きたはら)先生が発する、世間体よりも自分の気持ちを大事にする生き方、過去の結婚の概念に縛られる必要がない新しい結婚の考え方なのではないかと感じた。

本屋大賞受賞も納得の一冊である。

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「正欲」朝井リョウ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第34回柴田錬三郎賞受賞作品。水に魅力を感じる人々、自分の性癖がおかしいと知りながらも悩みながら生きていく様子を描く。

さまざまな性癖を持つ人物を並行して描いていく。水に魅力を感じる桐生夏月(きりゅうなつき)男性に恐怖心を抱く八重子(やえこ)を中心に、物語が進むに従って、同じように水に魅力を感じる人たちが描かれる。そんななか唯一、一般人の目線として描かれる検事寺井啓喜(てらいひろき)は、本書では理解力のない頑固な父親として描かれている部分もあるが、非常に論理的でありわかりやすいと感じた。

どんなに満たされない欲求を抱えていたって、法律が定めたラインを越えたのならば、それは、罰せられなければならない。

子となる性癖や価値観の存在を理解しようと努めることは大事だし、ネットによる晒しの私刑など社会的制裁は否定されるべきである。しかし法治国家として機能するためには結局これが許容範囲と犯罪を分ける境界線なのだろう。世の中はそれができているだろうか。不必要に非難したりしていないだろうか。

僕自身LGBTQの人々に理解がある方だと感じているが、では児童性愛者に対してはどうかというと自信を持って答えられない。しかし、好みは人の自由であり、法律を逸脱しない限り尊重されて良いのだと感じた。

凪良ゆう本屋大賞受賞作品「流浪の月」が児童性愛者を描いていて評価されたときに驚かされたが、本書も性癖の特殊性を物語にした点が似ているなと感じた。世の中が、このようなテーマを受け入れて世の中に出そうという風潮がになってきたのだろう。

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「運動脳」アンデュ・ハンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
身体を動かすことによる脳への好影響を語る。

運動が脳に与える効果を、さまざまな科学的論拠や実話とともに説明している。すでにタイトルから明らかなので、簡単に結論を言ってしまうと、薬を飲むよりも運動した方が脳には良いということである。具体的に本書で語っているのは、記憶力向上うつを防ぐモチベーションアップ学力向上などである。

少し前に読んだ「脳を鍛えるには運動しかない」と、言っていることは大部分同じではある。すでに体験的にわかっている人にとってどれほど新しい情報かというと疑問だが、「脳を鍛えるには運動しかない」では、ジョギングなどの単純な運動よりも、ダンスや格闘技などの適度に複雑さを伴う運動の方が良いとしていた。しかし、本書では徹底的にジョギングを勧めている。

週7回(ジョギング4回、スカッシュ2回、ダンス1回)の運動をする僕にとって、本書を読んで何か学びがあったかというと、ジョギングした直後に勉強をしたほうが記憶への定着の効果が高いらしい。つまり、現在は朝勉強して、夜ジョギングしている部分のルーティンはさらに最適化でるということである。

上にも語ったように、内容としては「脳を鍛えるには運動しかない」とあまり大差ない。しかし、こういう本は繰り返し読んですでにある運動に対する意識を強める必要があるのだろう。改めて、家族にも運動習慣を強く勧めたくなった

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「The Body Farm」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノースカロライナで11歳の女の子Emily Steinerが教会の帰りに遺体となって見つかった。逃亡中のシリアルキラーと手口が似ていることからFBIとKay Scarpettaは事件の捜査に関わることとなる。

Kay Scarpettaのシリーズ第5弾である。序盤からGaultというシリアルキラーが捕まっていない状態という設定なのでシリーズ前の作品を飛ばしてしまったか、展開を忘れてしまったのでは、と思ったが、そんなことはなく本書が急展開の設定らしい。

物語はEmily Steinerの死の真相を突き止めるために、地方警察とFBIが協力して捜査を進めていく。しかし、Kayの周囲では事件以外にもさまざまな問題が生じる。一つ目は長年の相棒であるMarinoが、離婚をしたことを機に少しずつ自暴自棄になって、それが捜査にも悪影響を与え始めたこと。2つ目は、同僚であるWesleyとの仲である。妻がいるWesleyに惹かれる自分に戸惑い罪悪感を抱えるのである。

そして3つ目は、姪であるLucyとの関係である。大学を卒業してKayと同じくFBIで働き始めたLucyではあるが、FBIでは働いてほしくないKayの想いで干渉するKayとの心の距離は次第に広がっていくのである。そんななかLucyがFBI情報に不正にアクセスしたという疑惑が持ち上がるのである。

そんな多くの問題に悩まされながらも、事件は少しずつ解決に近づいていく。Emily Steinerを殺害したのは本当にシリアルキラーGaultの仕業なのか。シリーズ作品というのは少しずつマンネリ化していくものだが、続きも楽しみになった。

英語慣用句
as a crow flies 最短距離で
crib death 幼児突然死症候群
heat exhaustion 熱中症

「14歳からのニュートン超絵解本 対数」ニュートン編集部

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
対数について例を交えながらわかりやすくまとめている。

物理を知った後の三角関数など、数学の数式は使い方を知るとより深く理解できる。そんななか対数についての自分の知識が、対数の使い方を知っているといえるのかを確認したくて本書にたどり着いた。

本書は対数の基本的な考え方から、世の中に対数に関連したものが見られる場所、対数の問題など、対数について包括的に説明している。

全体て的に非常にわかりやすい。また数学の問題としての対数にも触れており「14歳から」とタイトルにあるが大人でも普通に楽しめるだろう。グランドピアノの形が対数だというのは初めて知ったし、その他にもちょっとした小話に使えそうな対数の題材が多数あった。

このシリーズには他にも「超ひも理論」「微分積分」「素数」などがあり、いずれも読んでみたいと思った。

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「麦の海に沈む果実」恩田陸

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
生徒の間に、二月入学する生徒は災いをもたらすという噂がある全寮制の学園に、二月に転入した理瀬(りせ)と生徒たちの学園生活を描く。

女性にも男性にもなる校長に運営される学園にはさまざまな生徒たちが集まる。しかし、そんな生徒たちの間では、いなくなった生徒は、実は親元へ帰ったのではなく殺されたのだという噂が繰り返し流れるのである。

そんな学園生活の中で、少しずつ真実が明らかになっていく様子が描かれる。正直、綺麗な挿絵以外に良いところが思いつかない。恩田陸の他の作品「三月は深き紅の淵を」が登場する。物語のなかに繋がりがあるようだ。実際「三月は深き紅の淵を」ももう20年ほど前に読んでいるのだが、そのときもがっかりした記憶があるので、何かこのシリーズには僕には気付けていない面白さがあるのかもしれない。

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「風間八宏の戦術バイブル サッカーを「フォーメーションで語るな」」風間八宏

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
川崎フロンターレや名古屋グランパスを監督として率いた著者が、サッカーの戦術について語る。

サッカーについてもっと深く理解したいと思っている中で、著者風間八宏氏のボールを止めることの重要性に出会い、著者の考え方に興味を持った。

序盤ではチームとしてセンターバックを攻撃することの重要性について語っている。そして次の4つの攻撃方法をそれぞれ例を交えて説明している。

  • 裏へ飛び出す
  • センターバックの背中側に立つ
  • センターバックに向かって突っかけ、突然方向を変える
  • 動きすぎない、それでいて背中をとり続ける

フォワードの動きを考えた時に、ボールをもらう動きの重要性を強調しがちだが、無駄に動かないことの重要性を、メッシなどの世界的有名な選手の動きと共に説明しているので説得力があってわかりやすい。

中盤以降は実際の選手の動きや、著者自身の監督経験から選手の性格や改善点などを語る。そのなかで大久保嘉人や小林悠の選手としての性格や進歩についても語っている、実際に成績が伸びていることを知っているからこそその裏のエピソードが面白い

最終章では日本サッカーの育成ための提言を書いている。日本のサッカーは早い段階で才能のある子供たちを一つの場所に集めすぎで、上手な人と一緒にプレーして刺激を受ける機会を大事にしつつも、それぞれのチームでチームの中心である状況を大事にすることも必要だという。実際にスペインのセビージャや昔の清水のサッカーでも似たようなことをやっていたという。この野球に例えると「将来の四番候補」をいろんなチームに分散させると方法は納得できるる部分もあり新鮮な考え方である。

サッカーの見方をまた一段階レベルアップしてくれる内容だった。

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「One Plus One」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
母親一人で2人の子供を育てるJessは数学が得意な娘Tanzieの入学金のため、数学オリンピック出場を目指しスコットランドまで旅することを決意するのである

以前読んだJojo Moyesの「The Girl You Left Behind」が素晴らしくて、同じような過去の歴史事実と現代をそれぞれの時代に生きてきた人たちの視点とともにつなぐような作品を期待して本書にたどり着いた。

本書は、夫が実家に帰ってしまった結果、一人で子供を育てることとなったJessと女性関係のもつれからインサイダー取引の容疑がかかり、自ら立ち上げた会社を追われたEdの二人の出会いを中心に描いている。Jessはクリーニングの仕事でEdの家を訪れ、その後、EdがJessの働いているバーで酔い潰れたことで、JessはEdを認識する。

そして、数学オリンピック出場のための旅で困っていたJessたちに、Edが酔い潰れた時に送ってもらったお礼として運転手を買って出たことで大きく関係が変わっていく。狭い車内でぎこちない会話を続けるうちに、少しずつお互いを理解していくのである。

Rich is paying every single bill on time without thinking about it. Rich is being able to have a holiday or get through Christmas without having to borrow against January and February.
お金持ちは考えずに毎月の請求書を支払える人のこと。お金持ちとは祝日やクリスマスを1月や2月分の給料を前借りしなくて過ごせる人のこと

家族や人間関係を描いた優しい物語である。ギリギリの生活をしながらも、二人の子供に対して良い母、良い見本であろうとするJessは言うまでもないが、自らがインサイダー取引の裁判を控えていることで、余命短い父親に会う決断をすることができないEdの生き方もまた家族に対する優しさに溢れている。

旅のなかで2人の子供TanzieとNickyと仲良くなっていくEdがNickyに伝える言葉もそんな優しい振る舞いの一つである。

Everyone I've met who waw worth knowing was a bit different at school.
知り合いになってよかったと思った人はみんな、学校では少し変わり者だったよ。

終盤は、Jessとの関係に悩むEdに対して、Edの姉Gemmaが諭すシーンが印象的である。

I'm not saying she wasn't wrong to do it. I'm just saying maybe that one moment shouldn't be the whole thing that defines her. Or your relationship with her.
彼女が間違ってなかったとは言わない。ただ、その出来事だけで彼女のすべてや彼女との関係を決めつけるべきではないと言っているのよ。

期待していた物語をは少し違ったが、十分楽しむことができた。

英語慣用句
crap at maths 数学が苦手である
form tutor 担任の先生
borrow against お金を借りする
have the grace to … するだけの礼儀はわきまえている

「メンタル弱いままたのしく生きてく」木村好珠

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
精神科医の著者がメンタルの弱さとの付き合い方を語る。

比較的メンタル強めな自分は、本書のターゲットとは異なるので参考にならないかもしれないが、メンタルの弱い人への助言のヒントになる言葉や表現が見つかることを期待して本書を手に取った。

本書でいいたいのは結局のところ

  • 感情を言語化しよう
  • 日記を書こう
  • メンタルの弱さを認めていい

である。本書を通じて一貫して伝わってくるメッセージとしては、他人に合わせようとしすぎるな、ということであり、その点は納得である。正直行間や余白も多く内容の薄さは否めないが、メンタルの弱さに悩んでいる人が読めば、もっと響く点があるのかもしれない。

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「2030年すべてが加速する未来に備える投資法」方波見寧

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2030年に備えるべき考え方を語る。

タイトルにある「2030年すべてが加速する未来」とはにエクスポネンシャルテクノロジーの進歩によって世界が一気に加速することを指しており、本書でもエクスポ年シャル企業への投資を勧めている。そして、エクスポネンシャル・テクノロジーファンドの11の産業分野についてそれぞれ現状を語っている。11の産業分野とは

1.コンピューター・ネットワーク(IOT・ARとVRとMRを含む)
2.ビッグデータ(AIを含む)
3.ロボティクス(家庭用ロボット・自動運転車・空飛ぶ自動運転・ドローン)
4.ナノテクノロジーと材料科学(原子レベル操作とグラフェン等)
5.3Dプリンティング(テクノロジーとロボットの融合)
6.医学と神経科学(遺伝子操作による治療・新食品製造)
7.エネルギーと環境システム(太陽光発電・汚水処理・水耕栽培)
8.教育イノベーション(遠隔教育システム)
9.余暇と娯楽(ビデオゲーム・eスポーツ)
10.金融システム(スマホ決済機能・ブロックチェーン)
11.安全とセキュリティ(GPS・画像解析・ブリッド)
12.宇宙開発(宇宙旅行・低空人工衛星)

もっとも新鮮だったのはナノテクノロジー分野である。また、中国の技術の進歩を強調しており、デジタル人民元の脅威を繰り返し語っている点も印象的だった。

投資法とは書いてあるが、投資について書いているのは最初と最後のみで、それ以外は今後どのように世界が変わっていくかを中心に語っている。本書で書いてあることをそのまま鵜呑みにするのは危険だが、少なくともそれぞれの言葉が何を指すのかは覚えておきたい。また、エクスポネンシャルテクノロジー関連のETFも探して少し投資をしてみたいと思った。

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「5A73」詠坂雄二

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
体にある文字のある自殺遺体が都内で数件発生し、刑事部の山本(やまもと)と早川(はやかわ)は事件を追う。その文字は「暃」という読みも意味もない幽霊文字と呼ばれるものだった。

刑事室別室の女性警部山本(やまもと)と警部補早川(はやかわ)が、不思議な文字のついた自殺事件を追うのと並行して、時間を遡って自殺者たちが幽霊文字「暃」と出会う様子が描かれる。そして、その過程で幽霊文字「暃」に対してさまざまな考察がされる点が面白い。

この暃(もじ)は手足をばたつかせている人に見えるから、暃(くるしむひと)と読むのではないか、とか
日(うえ)の部分は貝を省略した形、非(した)の部分は甲殻類で、全体としてはやどかりを象ったものかも

たった12画の漢字に対してこれほど多くの解釈ができることに驚いた。また、漢字の発祥の地である中国と、それに平仮名という文化を加えた日本の漢字に対する意識の違いについても新たな視点を与えてくれた。物語の結末自体に納得できたわけではないが、特に漢字の起源や意味、解釈などについて新しい考え方を運んできてくれる内容である。

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「推し、燃ゆ」宇佐美りん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第164回芥川賞受賞作品。推し活にを唯一の楽しみとして生きている高校生のあかりの様子を描く。

アイドル上野真幸(うえのまさき)を「推し」と呼んで、コンサートに行ったり、バイトの給料をつぎ込んでグッズを購入したり、ブログに書いてファン同士で交流するあかりの「推し活」の様子を描いている。

「推し活」に一生懸命になる一方で、少しずつ実際の生活では学生生活でも家庭でもアルバイトでもうまくいかず、出来の良い姉にコンプレックスを抱きながら生きていく様子が描かれる。

推し活という楽しみ方を知らなかったので、その世界を垣間見せてもらった。時間をかけた下調べや詳細な情景や感情描写はほとんどないが、新しい文化を運んできてくれるという点で、芥川賞らしい作品である。

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「ユルゲン・クロップ 選手、クラブ、サポーターすべてに愛される名将の哲学」エルマー・ネーヴェリング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツのマインツ、ドルトムント、イングランドのリヴァプールを率いた名将ユルゲン・クロップについて語る。

クロップについては最近知ったのだが、モウリーニョやグアウディオラとは異なるスタイルでチームを率いながらも、結果を出し、そしてかつクラブに愛されているという点に興味を持った。

序盤はクロップが選手から監督になるまでの経緯を描いている。多くの選手が引退してから監督になるのに対して、クロップの場合は、チームから選手兼監督を打診されたにもかかわらず、選手として限界を感じていたクロップが監督専任という道を選んだという点が他の監督の経歴と大きく異なる点で印象的である。

以降は、マインツ、ボルシア・ドルトムントとそれぞれ7年の監督期間を経てチームを一定の成功と呼べる地位に引き上げるまでの様子が描かれている。7年は、監督の1つのクラブへの在籍期間としては長いという印象である。クラブチームという大きな組織を試合結果だけでなく若手の育成や経営面も含めて改善するためには、経営側も短期の成績に振り回されるのではなく、監督という人間にある程度の期間信頼して委ねることが必要なんだと感じた。

後半は、リバプールでチャンピオンズリーグ優勝を勝ち取るまでの物語である。クロップのサッカーのスタイルはゲーゲンプレスと呼ばれており、守備時に強くプレスをかける戦術で、選手には高い走力が求められるのだという。実際本書でもリバプールの監督に就任した際、過酷なプレミアムリーグの日程とその戦術ゆえに多くの選手が肉離れで離脱する様子が描かれている。

その点で、ゲーゲンプレスはまさに若手主体というチームの強みを活かした戦術とも言えるが、リーグの特徴に合わせて戦術を変えなければならない点も監督業の面白いところだろう。また、グァルディオラであればボールポゼッション、というようにチームの色だけでなく監督の色が最近際立ってきた点が面白い。日本のサッカーにもクラブの文化、サポーターの文化、監督の文化が根付きくまではまだ時間がかかるのだろう。

また、サッカーのスタイルだけでなく、長期視点で若手を時間をかけて育てるというクロップの監督のスタイルがどんなクラブに向いているか、という点について語っている点も興味深い。例えばレアル・マドリードは監督交代が頻繁に行われるのでクロップ向きではないが、「ノーマルワン」と一般人であることを主張するクロップは労働者階級にサポーターの基盤があるリヴァプールのようなチーム向きだと説明している。

監督の色、サポーターの色、サッカーのスタイルの色、など様々な要素が絡み合ってプロのチームのサッカーという文化が出来上がるということを改めて感じた。改めてサッカーについての視点を広げてもらった。

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「サッカーシステム大全」岩政大樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元日本代表の岩政大樹がサッカーのシステムについて解説する。

昨今4バックや3バックなど、サッカーの議論のなかでシステムが頻繁に語られるようになったが、それぞれの長所や短所などもあわせて深く理解したくて本書に辿り着いた。

本書は基本的なシステムと共に、どのような長所と短所があるのか、また、最近流行りの可変システムなど、日本だけでなく世界のサッカーでよく見られるシステムを解説しており、まさに知りたかったことに答えてくれる内容である。

4バックでは「5人目の守備をどういれるのか」をチームとして定めなければいけません。もし5人目を下げない場合は、失点のリスクが増えるデメリットを承知の上で、逆にカウンターに出る人数を増やすなど、リスクを上回るメリットが必要になります。

もちろん、システムの長所や短所が試合中に現れるには、長所を活かした、または弱点をついた素早いプレーをチームとして実現できてこそ可能である。つまり個人としてすぐに実践できるわけではないし、少年サッカーやひょっとしたらJ2、J3レベルでもすぐに役立つ知識なのかはわからない。しかし、間違いなくサッカーを見る視点は広がるだろう。

サッカーを見るときに常に手元に持っておきたい一冊である。

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「琥珀の夏」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
<ミライの学校>の敷地から白骨死体が見つかった。小学校時代<ミライの学校>で過ごした経験のある弁護士の法子(のりこ)は真実を突き止めようとする。

序盤は法子(のりこ)の、小学校時代の<ミライの学校>での様子が描かれる。友達を作るのが苦手だった法子(のりこ)が、<ミライの学校>での出会いによって甘い記憶を作っていく様子が描かれる。

<ミライの学校>ではただ単に正しいことを教えるのではなく、子供たちに問いかける「問答」という時間を大切にしている。そんな<ミライの学校>の理念の中に理想の教育が見える一方で、結局社会で生きるためには社会から離れた場所で教育を行なっても意味がないという意見もあり、教育のあるべき姿についても考えさせられる。

中盤以降は、現代に戻り、娘が<ミライの学校>に関わったという両親からの依頼により法子(のりこ)は発見された白骨死体の身元を知ろうとする。

そんななか、世間では白骨肢体の発見によって<ミライの学校>自体の存在を貶める発言が溢れていく。1つの不幸な出来事や犯罪によって、組織や団体の全てが悪い捉え方をし始めるのは実際にありそうな話だと感じた。

<ミライの学校>をカルト教団のように危険な宗教団体として描く側面もあれば、そこで楽しい時を過ごした人々の意見として、優しい思い出として描く場面もあり、多くの意見を描いている点に著者の優しさを感じた。きっと、世の中で物議を醸した多くの宗教団体も、信者にとってはとても大切で暖かい場所なのだろう。改めて、世間の評判に振り回されて物事を断じるべきではないと感じた。

最近、著者辻村深月作品が少し丸くなった印象を持っているが、久しぶりに初期の作品、たとえば「冷たい校舎の時は止まる」「子どもたちは夜と遊ぶ」のような鋭さを感じた。

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「ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」マルティ・パラルナウ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
FCバルセロナで最強のチームを作った監督グアルディオラがドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンの監督に就任した後の様子を描く。

リーダーシップやマネジメントのヒントがあることを期待して、個性の強い選手たちをまとめるサッカーの監督の本を読み漁っている。本書もその流れでたどり着いた。

グアルディオラ(以下ペップ)についてはサッカー選手としてよりも監督としての印象が強い。2000年代前半成績が低迷していたバルセロナが、ライカールと監督の元で、ロナウジーニョやエトーとともに強豪チームへと変貌し、その後を引き継いだペップ時代には手のつけられない無敵なチームとなったことは記憶に新しい。ただ、その後、ペップがバイエルンやマンチェスターシティそ指揮していることは知っていたが、その成績やサッカーのスタイルについてはほとんど着いていってなかった。本書はペップのバイエルン時代の1年目を詳細に描いている。

興味深いのは、すでに前の年に三冠を獲得しているバイエルンをさらに良いチームにするという挑戦である。すでに三冠を獲得しているチームをさらに良くするとはどのようなチームを言うのか、その達成にどのように挑むのか。そんな無謀とも思える挑戦に対するペップを、選手、周囲の関係者の視点も含めて描かれている。

シーズンが始まると、試行錯誤を繰り返しながら、ペップはバイエルンのサッカーを作り上げていく。バルセロナのサッカーをバイエルンに持ち込むのではなく、バイエルンの文化、ドイツ、ミュンヘンの文化のなかで、バイエルンの選手に合わせた新しいバイエルンのサッカーを作り上げていく過程が面白い。

また、自らがバイエルンに持ち込むサッカーを、カウンターカルチャーと言い続けている点も印象的である。つまりドイツ国民、ミュンヘン市民に受け入れてもらえるサッカーの範囲で、これまでやってきたことと異なることをする。ということなのだろう。

全体的に、もっとも印象的だったのは、選手たちの声を聞いて戦術を決めた結果ホームで0-4で惨敗したチャンピオンズリーグのレアルマドリード戦である。

メアクルパなんだ。自分のアイデアで行かず、代わりに選手たちのアイデアでいった。そこに自分のアイデアはなかった。私は間違いを犯した。

周囲の声に自分の信念を曲げそうになるのは誰しも身に覚えがあるだろう。そうすることによって周りの納得感が簡単に得られるし言い訳が簡単に言えるのだ。しかし、リーダーたるものはそれをやってはならない。それをやっていたら新しいものは生み出せないのである。改めて周囲の意見と闘い自分のアイデアを通すことの重要性を感じた。

また、周囲の信頼を勝ち取るためには、間違ったことを認めること、他人のせいにしないことが重要だと改めて感じた。

改めていろいろリーダーという役割について感じるところがあった。引き続きペップのその後のサッカーを追っていきたいと思った。

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