「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」クリスティーナ・ウォドキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目標を達成する方法として最近よく聞くようになったOKRという手法が、どんなものでどのように取り入れるかを語る。
序盤は、上質なお茶を届けることをミッションとした架空のスタートアップを題材として、スタートアップ企業が陥りやすい状況を説明し、中盤以降ではOKRをその解決策として物語と絡めながら紹介している。
OKRの個人的な印象としては、もっと複雑なシステムなのかと思っていたが、むしろ拍子抜けするほど単純なものだということだ。特に「目標を50%の確率で達成できそうなものにする」というところは、なぜこの考えが今まで広まっていなかったのだろう、というぐらい単純で誰でも思いつきそうな内容である。とはいえOKRの手法自体を軽んじているわけではない。単純なものほど機能するというのはよくあることだ。また、単純な手法であるからこそ、組織や状況に応じてカスタマイズする必要があり、多くの試行錯誤が必要なんだと感じた。
OKRのもっとも注目すべき点は、本書でも書いているように

ゴールを、「パフォーマンスを評価するしくみ」から、「人を鼓舞し、能力を高めるしくみ」に切り替えよう。

という点だろう。今まで世の中にあった多くの評価システムが、結果的に会社の目的と結びつかなかったのは、その社員の評価につながっていたからである。評価と目標を分離することではじめて目標らしい目標を立てることが現実的になるのである。
一方で本書は一切評価方法については触れていない。OKRを採用するにあたって、企業は社員の評価方法は別に考え出さなければならないのである。
【楽天ブックス】「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」

「沈まぬ太陽」山崎豊子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の航空会社に務める恩地元(おんちはじめ)は入社後、労働組合の委員長として賃上げ交渉やストライキを指導したことから、パキスタン、エジプト、ケニアへと左遷されていく。
日本航空をモデルにして描かれた作品。10年にも及び海外に左遷された主人公恩地元(おんちはじめ)も実在の人物をモデルにしており、企業名、人物名こそフィクションであるが、1970年代、80年代の日本航空を描いている。
物語のクライマックスはやはり、日航機墜落事故を扱った「御巣鷹山編」だろう。経費削減、利益優先の追求や、社内政治の横行によって、安全管理を怠った結果がついに、500人以上の犠牲者へとつながるのである。日航機墜落事故を扱った物語としては横山秀夫の「クライマーズハイ」も名作ではあるが、本作品では物語全体5章のうちの1章を墜落事故と犠牲者の遺体回収等に割いており、当時の報道からは知ることのできなかった事実を知ることができる。
そして、後半は新たに会長として送り込まれた人物によって、少しずつ会社が改善していく様子が描かれている。汚職や脱税、社内政治の様子はなかなか複雑で理解するのも難しいが、余裕がある人は勉強して知識とするのもいいのではないだろうか。
30年という月日が経っているために現代とのギャップも楽しめるかもしれない。全体的に非常に読み応えがあり、今まで読んでいなかったのが不思議なほどである。著者の魂が感じられる貴重な物語と言えよう。
【楽天ブックス】「沈まぬ太陽(1)」「沈まぬ太陽(2)」「沈まぬ太陽(3)」「沈まぬ太陽(4)」「沈まぬ太陽(5)」

「Fifty Quick Ideas To Improve Your User Stories」Gojko Adzic, David Evans

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルにおける開発の速度は、ユーザーストーリーをどのように作り出すかによって大きく変わってくる。本書はそんなユーザーストーリーを効果的に作り出す50の方法を解説している。
それぞれの手法に対して「採用することによる主なメリット」と「どのように採用するか」を箇条書きにわかりやすくまとめていて非常に読みやすい。それぞれの手法は、組織の大きさや形態によって、適応できそうなものや難しそうなものもあるが、開発を効果的かつ効率的に発展させるための重要な考え方で溢れており、プロダクトオーナーやスクラムマスターだけでなく、開発にかかわる全ての人に役立つだろう。
個人的に印象的だったのがユーザーの行動を変えるフェーズとして頭文字をとったCREATEである。

Cue
Reaction
Evaluation
Ability
Timing

僕らがユーザーの行動を変えようとした時、上記のどの行動に変化をもたらそうとしてのかを明確にすると、より具体的な施策へとつながるだろう。
また、Storyの優先順位を決める上で指標となる考え方で、書籍「Stand Back And Deliver」のなかでNiel Nickolaisenが語っている考え方である。その考え方で重要なのは目の前のStoryに対して次の2つの問いかけをすることである。

それはミッションにとって不可欠か
(ビジネスはそれなしに進められるか?)
それはマーケットで差別化するものか
(ユーザーに大きな利益をもたらすか?)

そのあとの決断の仕方等は詳しくはぜひ本書を読んでいただきたい。
なかなか一度読んだだけで、実際の開発に適用することは難しいだろう。繰り返し読んで実践することで組織に浸透していく内容だと感じた。

「お金の神様に可愛がられる方法」藤本さきこ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
月収1400万を稼ぐ実業家の著者がお金を呼び込むための考え方を語る。
呼び込むための方法というよりも、考え方である。したがって実用的な話を求めている人には本書はあまり役に立たないだろう。ネガティブにものを考えがちで、お金が欲しいという希望を口にしながらも特に行動をしない、そんな人をターゲットにしている。
もともとポジティブなものの考え方をしている人にとってはあまり得るものはないだろう。
【楽天ブックス】「お金の神様に可愛がられる方法」

「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」西野亮廣

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
絵本「えんとつ町のプペル」を絵本としては珍しい分業制で作成し、絵本としては記録的な発行部数を実現した、キングコングの西野亮廣が、その成功までの過程で行ったことやその考え方を書く。
具体的に言うと、クラウドファンディングでお金を集める方法や、自分に対するアンチの存在を利用する方法などであるが、どれも非常に的を得ていると感じた。
そんななかでも発売前の絵本をネット上で公開したことについては、多くのページを割いて説明している。著者は言う、「無料にすることは実力を可視化すること」と。インターネットでさまざまな人が発信できるようになた今、個人や企業の実力は可視化され、それを秘密にしていたり、「お金を払わないと何も使えません」では誰も利用してくれないでただただ機会を失っていくんだと感じた。
そのほかにも

お客さんはお金がないわけではなく、お金を払うきっかけがない。
本は本屋さんで売るよりも、スナックで売った方が売れる

などの話が面白かった。
言っていることはどれも非常に共感できる部分があるが、表現の仕方が、若干反感を買いそうな点も感じた。その一方で、その反感を買うような言い方も狙ってやっているのだろうとも思わせる。せっかくなのでこのスタイルを突き進んで欲しいと思った。
【楽天ブックス】「革命のファンファーレ 現代のお金と広告」

「ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち」マーゴット・リーシェタリー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
黒人に対する差別が根強く残っていた頃にNASAのために計算手として尽くした黒人女性たちについて語っている。
戦時中にNASAの前身となる組織で戦闘機の開発に貢献した黒人女性たちは、戦争の終了とともに宇宙開発に従事することなり、その貢献はやがてアポロ計画へとつながっていく。
ドキュメンタリー形式で描かれているため、登場人物が多く、なかなか一人一人をしっかり把握はできないが、数学を得意としていた女性たちの活躍は感じられる。また、その一方で、彼女たちの有能さだけでなく当時の黒人に対する差別の大きさも見えてくる。そしてそんな逆境のなか、黒人の評価をあげようと尽くした彼女たちがなんともかっこいいのだ。
女性は数学が苦手などという固定概念は一体誰が生み出したものなのだろう。本書を読めばそんな考えはなんの根拠もないことがわかるだろう。
映画化もされているのでぜひそれも見てみたいと思った。

「Camino Island」John Grisham

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プリンストン大学の図書館から盗まれた5つの有名作家のオリジナル原稿は、Camino islandにある本屋のオーナーが所持しているとの疑いを持った保険会社は、Camino島で生まれ育った女性作家Mercerに本屋のオーナーBruce Cableに近づいて調査をすることを依頼するのである。
Mercerが執筆作業という名目でCamino等に滞在し、本屋のオーナーであるBruceや、Camino島にいるたくさんの作家と知り合いになるなかで、本屋や多くの作家事情が描かれている点が面白い。また、有名作家の初版本やサイン本、オリジナル原稿などが取引される闇マーケットについても描かれており、作家である著者の専門分野だけに真実に近い部分も多く含まれていることだろう。
普段あまり関わりのない世界に触れさせてもらえたという意味では新しいが、物語の内容としては特に驚くような展開もなく特別進めるような部分はない。
本書が初めて読んだJohn Grisham作品だが、他にも映画化された名作がたくさんなるので、少しずつ読んでいきたい。

「Don’t Tell a Soul」D. K. Hood

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
田舎町に赴任した警察官のKaneはその街の保安官代理
Jennaとともに、街で行方不明になった人々の捜索を続ける。真実に少しずつその町の大きな犯罪が明らかになっていく
よくあるアメリカ警察物語という印象。シリーズのなかでこれから面白くなるのかもしれないが、本作品に関しては特に驚くようなことはなかった。暗い過去を持っているらしいKaneとJennaの関係が今後どのように発展していくのかが唯一気になる部分である。
DeputyやSherifなど、アメリカにおける保安官と警察官の役割の違いなどを自分がよくわかってないことを知った。
シリーズの続編を読むことはしばらくないと感じた。

「どこへ行く!?介護難民」稲葉敬子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フィリピン人の日本の介護事情について語る。
知り合いにフィリピン人の介護師がいるので、その仕事の状況や日本におけるフィリピン人介護師の立場を知りたくて本書にたどり着いた。
序盤は、フィリピン人を介護してとして受け入れるまでの、日本とフィリピン外交的経緯から日本で介護士として働くまでのフィリピン人が受けなければいけない教育過程など、現在の介護の状況を説明している。フィリピン人というと風俗などのイメージが付きまとってしまうが、本書を読んでフィリピン人が介護士としては非常に優秀であることがわかった。中盤からは現在日本で介護士として働くフィリピン女性たちの生活やそれぞれの持つ悩みについて書いている。彼女たちにとって介護士として働くために問題なのは、漢字の読み書きや職場の人間関係なのだという。
人材不足の日本の介護事情を解決するための手段として期待されるフィリピン人介護士ではあるが、僕らの持つ印象とは違って、問題となるのは彼女たちの教育よりもむしろ、受け入れる側の環境の問題なのだとわかった。日本人介護士に起こりがちな職場問題が、南の国で育った彼女たちには受け入れがたいのだろう。
後半はフィリピンで老後を過ごす日本人たちを紹介している。彼らの日本を出るという決断までの経緯と、現在の状況を読むと、フィリピンで過ごすのも悪くない気がしてきた。
本書は現在のフィリピン人による介護状況の概要を知りたいとう要求にはしっかり答えてくれた。
【楽天ブックス】「どこへ行く!?介護難民」

「毎朝、服に迷わない」山本あきこ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スタイリストの著者が服のコーディネートについて語る。
まず重要なのは、

センスのいいコーディネートにとっていちばん必要なのは、本当はセンスではなく、まずアイテムです。

ということだ。そのコンセプトにのっとって、本書ではさまざまな「使いまわしのきくアイテム」を紹介している。基本的に女性向けのコーディネートを扱っているが、男性にも採用できるアイテムや考え方が含まれている。個人的に「さっそく買ってこよう」と思ったのがストライプシャツ、ジージャン、白のトートバッグである。
毎日私服で働いている人にとってはファッションは印象を大きく左右するもの。不必要に労力やお金をかけたくはないが、考え方ひとつで大きく改善できるならぜひしたい。早速本書の考え方を取り入れていきたいと思った。
【楽天ブックス】「毎朝、服に迷わない」

「Extreme Programming Pocket Guide: Team-Based Software Development」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
効率の用意プログラミング業務の進め方を「Extreme Programming」として紹介する。
XPは次の4つのことを重視している

コミュニケーション
フィードバック
シンプルであること
勇敢さ

である。最初の3つに多くの人は異論ないだろう。しかし最後の「勇敢さ」は普段意識指定なのではないだろうか。Exreme Programmingが重視する「勇敢さ」とは「ミスを認める勇気」である。ミスを認めるのが遅ければ遅いほど、そこからフックするのに時間がかかるのである。
後半で書いてあった

機能するもっとも単純な実装をする

は、エンジニアではなくPOやCOに知ってほしいと思った。デザインやコードをシンプルに実装することでどれほど将来的な柔軟性があがるかを組織においてどれほどの人が理解しているかどうかが大きな鍵だと感じた。

将来的に必要かもしれない機能に時間をかけることは、今必要な機能にかける時間を削るリスクを伴う。

シンプルであるために、デザイナーやエンジニアはもっとPOや顧客に対して声を上げることが、組織を効率的に動かすための近道なのだと感じた。エンジニア向けの本ではあるが、組織を動かす立場の人には誰にでも役立つ内容と言えるだろう。

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」山田真哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
誰も買っているところを見たことないにもかかわらず、定期的に街をまわってくるさおだけ屋や、ベッドタウンにあるフランス料理店など、身近に存在する不思議な例で好奇心を刺激して、その流れで会計を説明する。
非常に有名な本ではあるが、今まで読んだことがなく、今回妻との会話のなかから「そういえばさおだけ屋ってなんで潰れないんだっけ?」という会話の流れで読むことになった。全体的には楽しく読むことができたし、雑談に使えそうなネタがいくつか増えたきがする。
もちろん会計について理解するには本書だけでは不十分で、そこは本書で著者も述べているように、他の専門書に譲っているということだ。そんな著者の狙い通り、会計学についてもっと詳細を勉強したいと思った。そういう意味では「難しくない会計学」という、本書が目指していた目的は達成できたのではないだろうか。
【楽天ブックス】「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」

「僕は君たちに武器を配りたいエッセンシャル版」瀧本哲史

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
これからの時代の生き方について語る。
どちらかというと、これから社会に出て行く若い人向けに書かれた内容だが、僕のような社会人10年以上の人間が読んでも学ぶ部分はある。
物と同じように、人も同じ能力を持った人間がたくさんいれば、価格競争になってしまう。つまりコモディティ化が進んでしまうのだ。賃金を下げたくなければコモディティにならない生き方をすることが重要なのである。
著者はコモディティ化しないための生き方として4つの生き方をあげている。

マーケター
イノベーター
リーダー
インベスター

である。今後の生き方を改めて考えさせられた。
【楽天ブックス】「僕は君たちに武器を配りたいエッセンシャル版」

「Mapping Experiences: A Guide to Creating Value Through Journeys, Blueprints, and Diagrams」Jim Kalbach

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの企業が様々な局面で非効率な業務フローを採用していたり、不必要なものを生産していたりする。その多くは視覚化することによって解決が容易になるのだ。本書はそんな視覚化の手法を「Alignment Diagram」として紹介している。
カスタマージャーニーマップやエクスペリエンスマップなどのUXデザインにおいて有名なものから、サービスブループリントやメンタルモデルダイアグラムとあまり知られていないものまでを、企業が陥りそうな状況を例としてその使い方を説明している。
本書ではたくさんの視覚化の手法をその名前とともに紹介しているが、実際には名前は重要ではない。状況に従って、紹介された手法を組み合わせることも必要である。大切なのは、状況に応じて的確な視覚化を行うことなのだ。
読むだけで身につくということはないので、必要なときに何度も読み直したいと思った。各章の末尾に掲載されているオススメの書籍、記事も少しずつ読んでいきたいと思った。

「Vanishing Girls」Lisa Regan

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性警察官Josieはなかなか進まない女性の行方不明者の捜査にいらだち、謹慎処分中にも拘らず自ら捜査に動き出す。
Josieは謹慎中という身にもかかわらず、被害者や生存者が口にする「Ramona」という謎の言葉の正体を追って、真実に迫っていく。そんななかJosieの人としての葛藤や人間関係も多く描かれている。離婚届に判を押さない前の夫のRayや、現在の恋人のLukeは、物語のなかでも重要な役割を果たす。また報道者として第一線に戻ろうとするあまりJosieとたびたび衝突するTrinity Payneの存在も面白い。
暇つぶしには悪くないが、よくある警察小説の範囲を出ていない。この本でなければ知ることのできない何かを教えてくれることはなかった。

「Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー」山本琢磨

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マイクロコピーの重要性を、過去の著者の経験と実例をもとに語る。

マイクロコピーとは、トップページにあるような大きな文言ではなく、Webサイトやアプリケーションの各所に散らばるコピーのことである。本書はマイクロコピーの重要性を謳う理由は次のように語っている。

トップページの修正ではひどい時には2週間以上かかり、いったんサイトの稼働を止めなければならないほどだったのに、奥のページにいけばいくほど修正箇所は小さくなる。修正にかかる時間も短くなり・・・なのに売り上げは大きく上がる。
興味深いのは、たくさんの例を本書で示しているにもかかわらず、結局のところどんなサイトでも通用するような正解のコピーの書き方はないということである。あるサイトで成功したコピーが他のサイトでは逆効果になることもあり、そのサイトのユーザー層によって傾向は変わるのだという。結局、何度もABテスト等を繰り返して探っていくしかないのだという。
実際にコピーを見直す時にもう一度読み直したいと思った。
【楽天ブックス】「Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー」

「去就 隠蔽捜査6」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「隠蔽捜査」に始まる竜崎伸也(りゅうざきしんや)のシリーズの第6弾である。
大森署署長を務める竜崎のもとに 大森署管内で連れ去り事件が発生する。このシリーズの面白い点は、毎回事件解決と同じぐらい警察組織内の政治が描かれている点である。今回もその点では同様で、組織内の立場や面子を気にして行動する人々の中で、ひたすら論理的に行動して正義を貫く竜崎の生き方が爽快である。
今回は、竜崎の娘の美紀(みき)の恋人との問題を仲介したり、署内の女性警察官、根岸紅美(ねぎしくみ)の業務改善をする過程でストーカー問題に焦点があたっている。
読み終えて気づいたのだが、このシリーズの面白さは竜崎伸也(りゅうざきしんや)の真っ直ぐさだけで、他に特に学ぶ部分はないのである。にもかかわらずこうやって第6弾まで読み続けている点が面白い。きっと同じように竜崎の生き方だけに魅力を感じてこのシリーズを読み続けている読者は多いのだろう。
【楽天ブックス】「去就 隠蔽捜査6」

「Speak Human: Outmarket the Big Guys by Getting Personal」Eric Karjaluoto

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インンターネットが発展した今、小さい会社でも大きな会社と対等に渡り合える。本書はそんなテーマでブランド戦略、マーケティング戦略について書いている。序盤では「小さいことは悪いことではない」ということを繰り返し強調した後、それの実現方法について次の順番で例と筆者自身の経験を交えながら語る。

  • 自分のブランドを定義する
  • 自分のブランドに合った人との関係を築く
  • 自分のブランドに合って人との繋がりと会話を維持する
  • 行動し、修正する

印象的だったのは最後の「行動して、修正する」で語られている次の4つのレイヤーである。

  • Direction 方向
  • Strategy 戦略
  • Messaging メッセージ
  • Delivery 伝え方

著者はこのように語っている「マーケットの問題に直面していると感じている多くの会社が、実は方向性の問題に直面していることが多い」。つまり、多くの会社が自分たちがどのような方向に進むべきかを考えもしないで、目の前の仕事に忙殺されているのだ。

あなたは何で、あなたは何がしたいのか?

何よりもまずこれを定義せずに、周囲の企業の真似ばかりしていてはいつまでたっても方向が定まらない。その結果、その先にあるはずの戦略も、メッセージも伝え方も決まらないまま時間ばかりが経ってしまうのだ。

本書は中小企業のための本であるが、人間関係においてもそのまま適応できると感じた。当面起業する予定はないがしっかり頭に刻んでおきたいと思った。

「なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。」筒井美希

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
誰にでもわかりやすくデザインについて書いた本。
正直このようなデザインの「良い」「悪い」を語った本は多く、あまり内容が深いとは言えないので今まで敬遠してきた。しかし、本書は友人のデザイナーたちも持っているので、以前より気になっていたのである。デザインを仕事にしている僕に取ってもいくつか新しいことを知ることができた。

文字を加工して丸みをつける
タイトルに「止め」を作る

なかなかデザイナーとして長く仕事をしていると、少しずつ別のデザイナーの視点に触れる機会が少なくなってくる。たとえ新しく知ることのできることが1割程度だったとしても、このような本にもっと触れるべきかもしれないと思った。
【楽天ブックス】「なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの本。」

「Close to Home」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
12歳の黒人男性がバスケットの試合の帰り道に車にはねられて死亡した。犯人の車はすぐに特定され、海軍の運送担当の男性と判明するが、その男性は犯行を否認し続けるのである。
女性刑事Tracy Crosswhiteシリーズの第5弾である。シリーズの他の作品と同様に物語の中心はTracyだが、同じチームのDelの妹の娘がドラッグの過剰摂取で亡くなったばかりなため、Delの違法ドラッグ密売の捜査も多く描かれている。また、ひき逃げ事件の裁判の過程で、海軍の専門の弁護士としてLeah Battlesという女性弁護士が登場し、Leah Battlesの知り合いの検事との因縁や、趣味のクラブマガの様子など、本作品はTracy以外の描写が多かった。
Tracyの私生活の方は、結婚したばかりのDanとのあいだに子供を授かるために奮闘する様子が描かれる。仕事や家庭などさまざまな場所で悩みながら生きていくTracyの様子が非常にリアルである。Tracyがどのように家庭と向かっていくのかは今後もきになるところである。