「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」アダム・グラント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
オリジナルな人間になるための考え方を説明している。

メガネのネット販売でメガネ業界に大きな変革を起こしたワービー・パーカーの創業者たちの話をきっかけに、どのようにして大きなことを成し遂げるかを説明していく。

著者が繰り返し強調しているのは、世の中に大きな変化を起こすのは誰にでもできることで、人生の大きな決断など必要ないということである。例えば、スティーブ・ジョブスやビルゲイツは必ずしも若い時に人生の賭けに出たからその後の成功があるわけではない。同じようにマーチン・ルーサー・キングやイブラハム・リンカーンも僕らが思っているほど、人生において誰もまねできないような大胆な行動をとった結果、幸世に語り継がれる存在になったのではないのだという。偉大な人たちも人生のリスクヘッジをしながら自分の持つ新しいアイデアを少しずつ実行に移してきたのである。

では、どのようなことを日々意識して生きていけばそんな偉大なことを成し遂げられるのか。本書はそのために次のことを説明している。

  • アイデアの出し方
  • まわりの巻き込み方
  • 情熱の育み方
  • タイミングの撮り方
  • 誰と手を組むか
  • 組織のつくりかた
  • 困難への立ち向かい方

多くの人が思っていることと実際の成功者や成功しげ企業にはかなり乖離があると感じた。例えば、何事も先にやった人や企業が成功する可能性が高い印象があるが、必ずしもそんなことはない。またベートーベンは偉大な作曲家として有名だが、実際に評価されている曲は彼が作曲した650曲以上の曲のなかの一部でしかない。つまり、質の高いものは数が多ければ自然と生まれてくるのである。

ポラロイドの凋落や、公民権運動、婦人参政権運動、セグウェイの失敗など過去のさまざまな事象を例にとって説明する。本書が言おうとしている内容だけでなく引用されたそれぞれの出来事が興味深く、新たな好奇心を刺激してくれる。序盤で出たオンライン販売のワービー・パーカーだけでなく「となりのサインフェルド」などについても今回新しく知った。

良い刺激を与えてくれる非常に中身の濃い一冊である。

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「I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝」ズラタン・イブラヒモビッチ/ダビド・ラーゲルクランツ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スウェーデン代表のサッカー選手ズラタン・イブラヒモビッチがそのサッカー人生を語る。

アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、ミランなどの強豪チームで活躍し、母国スウェーデンでは英雄といえるほどの地位に上り詰めた著者のこれまでのサッカー人生を描いている。どちらかというと熱い選手なので、嫌いなサッカーファンも多いのではないだろうか。僕自身もどちらかというと冷静にプレーする選手に魅力を感じるほうで、試合中に熱くなりレッドカードをもらうような選手は好きではない。そんな見方もあって、今回こういうタイプの選手はどのように選手人生を歩んでいるんだろう、と興味を持った。

さて、本書ではサッカー選手として頭角を表すまでと、その後いくつかの有名サッカーチームで活躍する様子を描いている。なんといっても興味深いのは、どちらかというと著者にとっては失敗と言える移籍と言えるスペインのFCバルセロナ時代についての話である。監督グアルディオラとは著者をベンチに置いたまま使おうとしないで、しかおその理由を説明しようともしない。そんなグアルディオラに苛立ち、やがてクラブを去るという決断をするまでを著者目線で説明している。

FCバルセロナのしかもグアルディオラの時代はまさに黄金時代だったので、さぞかし選手の心を掴むのがうまい監督なんだと思っていたのだが、1選手からはここまで無能な監督として捕らえられている点が面白かった。

そのほかにもサッカー選手としてだけでなく、妻との出会いなどの人生の大きなイベントについている書いている。全体を通して読んでみると、世の中が思っているほど傲慢で独りよがりな人間ではなく、様々なプレッシャーや葛藤を力に変えて成功した人物だと言うことがわかる。

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「オムニバス」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトに始まる姫川玲子(ひめかわれいこ)のシリーズで7つの短編から構成される。

本書の面白いところは姫川玲子(ひめかわれいこ)やその姫川の近くにいるその同僚の視線で様々な事件とそれに対応するの様子が描かれることである。

姫川(ひめかわ)は直感的に事件に向き合い、時に姫川自身も理由を説明できない直感によって、捜査をする。それが結果として事件解決に結びつくことも多いため、警察のなかでも姫川(ひめかわ)を高く評価したり、憧れを抱いたりする人がいる一方、論理的な捜査をこのむ刑事のなかにはその存在を疎ましく思うものいるのである。

7つの物語はどれも犯人が早い段階で拘束されるが動機がわからないというもの。事件が解決される流れを見る中で、様々な境遇で生きている人々の生き方が見えてくるだろう。

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「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」グラント・サバティエ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
FIREつまりFinancial Independence, Retire Early(経済的自立)を実現するために著者やそのブログの読者たちが実現した方法とその考え方を説明する。

Retire Earlyと言うとさっさと仕事をやめて悠々自適な人生を満喫することを思い浮かべるかもしれない。しかし、本書で言っているリタイアとは、必ずも仕事をしない状態を言っているのではない。著者自身も「仕事をする必要がなくても仕事をするだろう」と言っているように、仕事をしなければいけない状態から脱し、給料を気にせずに仕事を選べる状態としている。

本書ではそこに到達するまでのステップを次の7段階で説明している。

  • ステップ1 自分の目標とする数字を把握せよ。
  • ステップ2 いま持っている金額を計算せよ。
  • ステップ3 お金に対する考え方を根本的に改めよ。
  • ステップ4 予算を立てず、あなたの貯蓄に最も大きな影響を与えるものだけに集中せよ。
  • ステップ5 9時5時の仕事をハック(工夫、効率化)せよ。
  • ステップ6 儲かる副業を始め、収入源を複数持とう。
  • ステップ7 できるだけ多くのお金をできるだけ早く、できるだけ頻繁に投資せよ。

簡単にいうと、目的をはっきりさせ、そのために、余計な出費を減らし、収入を増やし、投資するという流れを効率よく行うと言うことである。前半の節約の方法では、ハウス・シッティング、ハウス・ハッキング、バータリングなどの手法を知ることができた。

驚いたのはリタイアは歳を取ってからするよりも若いうちにする方が効果的だという考え方である。それは投資による複利の効果を理解し、利用するからこそ可能になるのである。また、僕自身、お金を貯めるためにはお金は借りないで、全てキャッシュで支払った方がいいという考え方をしていた。しかし、複利の効果を考えると必ずしもそれが真実ではないことにも気付かされた。

そのほかにも人生で迷った際に問いかけたい言葉であふれていた。

この買い物はどれほど私を幸せにしてくれるのか?

これを買えるようになるために、人生の何時間を差し出しているのか?

毎年、もしくは亡くなるまでに、これにかかる費用はいくらか?

他人はあなたほどあなたの時間を大切にしない

今一度、自分が人生で本当に求めているものを見つめ直し、またそこに至るまでどれほどのお金が必要なのかを把握したいと思った。

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「メモの魔力」前田裕二

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
メモをとることを繰り返してきた著者が、そのメモの取り方とその効果について語る。

僕らがメモと聞くと、見たり聞いたりしたことを書き残すことのように考えるが、著者はメモの目的を「記録」ではなく「知的生産」としており、次の3つの要素で構成している。

  • ファクト
  • 抽象化
  • 転用

実際に起きたことをファクトとし、それを他のことに適用できるように抽象化する。そして、最後は転用として、自分にアクションを書くのである。そして、抽象化については、What型、How型、Why型の3つの型を説明している。

世の中で見聞きしたすべての出来事に対して、このサイクルを繰り返しているのだとしたら、著者の言うように、知的生産力が向上するのは納得である。

また、夢を書き出すことでそれが叶いやすくなるというRAS(網様体賦活系)の働きについても説明している。RASについては最近読んだ「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」の方で同じようなことより具体的に書かれているので、興味がある人はそちらも読むといいだろう。

後半では自己分析の重要性について書いている。確かに自分が何が好きで、何を大切にしているかを理解している人の方が、人生を脇道に逸れる可能性は低いだろう。

もちろん、ここまでメモに時間をかけることは時間がかかることだし、その執着的とも言える行為によって遠ざける人間関係もあるかもしれないが、早速できる範囲で始めてみたいと思った。

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「フーガはユーガ」伊坂幸太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
不思議な力を身につけた双子の兄弟の優我(ゆうが)は弟の風我(ふうが)との物語を語る。

正直伊坂幸太郎の作品は、その人気のわりにあまり面白いと思える作品がなく、自分には合わないと感じていたので敬遠していた。にもかかわらず今回は本屋大賞ノミネート作品ということとその魅力的なタイトルに惹かれて読むに至った。

物語は優我(ゆうが)が、とあるフリーのディレクターにその不思議な力とこれまでの出来事を語る形で進んでいく。なんと優我(ゆうが)と双子の弟風我(ふうが)は毎年誕生日になると2時間おきにお互いが入れ替わるというのである。その力を持った故に起こった学生時代のエピソードを語る中で、また同時に近所で続いていた幼い子を狙った殺人事件にも触れていく。

そしてやがて優我(ゆうが)と(ふうが)は少しずつその殺人事件に関わっていくこととなる。

作家として良いことなのかはわからないが、伊坂幸太郎の他の作品に比べてずいぶん読みやすく感じた。ただ、物語として特別何か新しさや学ぶ点があったかというとそんなことはない。空いた時間に適度に楽しむには悪くないかもしれない。

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「アレックス・ファーガソン自伝」アレックス・ファーガソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界最高峰のサッカーチームであるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドで27年間監督を務めた著者がその人生を振り返る。

アレックス・ファーガソンといえば、僕らサッカーファンのなかでは知らないもののいない名将中の名将である。単純に大きなタイトルを手にしただけでなく、デイヴィッド・ベッカムなどの若手の育成にも定評があり、むしろそここそがファーガソンの成功の大きな礎なのだろう。テレビの画面越しではどちらかというと怖い印象を持つ著者が、どのようなことを考えながら監督という仕事をしてきたのかを知りたくて本書を手に取った。

本書は多くの自伝とは異なり、時系列にはなっていない。著者の人生にとって印象に残っている人、出来事などをそれぞれの章で語っているのだ。

本書を読んで初めて知ったのは、著者はスコットランド人でありイングランド人ではないということと(日本から見るとどちらもイギリスだが、サッカー界では区別される)、チームを統率するために監督が最大権力を握ることを非常に重視しているという点である。

監督が支配力を失ったら、その瞬間にクラブはおしまいだ。選手がチームを牛耳るようになり、深刻な問題が起きる。

この辺は監督のスタイルには賛否両論あるだろうが、確かに絶対的な支配者として選手に接するか、友達のように接するかはどちらも一長一短あり、改めて監督業というのは難しいものだと感じた。

マンチェスター・ユナイテッドの躍進の大きな原動力となった92年組(つまりデイヴィッド・ベッカムやポール・スコールズ・ライアンギグスなどの世代)のなかでは、サッカーに集中しそのほかのことに気を散らさなかったライアン・ギグスやポール・スコールズを評価しているという点も興味深かった。どちらかというとベッカムは、元々は守備にも手を抜かない点が大きな長所だったのに、海外やセレブの世界に触れる中で少しずつサッカー選手として本来あるべき姿から外れていったと残念がっているのだ。

ベッカムの他にも、選手なら、ウェイン・ルーニー、ルート・ファン・ニステルローイ、クリスティアーノ・ロナウド、ロイ・キーン、リオ・ファーディナンド、監督ならジョゼ・モウリーニョ、アーセン・ベンゲルについて語っている。なかなか画面越しには見えない人間関係が見えてくるので、サッカーファンにはたまらないだろう。

人物や過去の有名な試合などがたびたび引用されるので、サッカーファンには間違いなく楽しめるが、サッカーを知らない人にはちょっと難しいかもしれない。サッカーの監督の物語はリーダーシップのすばらしい教本もなるので今後もどんどん触れていきたい。

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「韓国人のボクが「反日洗脳」から解放された理由」ウォーク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本語で韓国に関することを語るYouTuberの著者が日本と韓国について語る。

僕自身日本人の父と韓国人の母の家庭で育ったために、普通の日本人より多く日韓の問題に触れてきた。そんななか著者のYouTubeチャネルで語られている、どちらかというと日本寄りの韓国人(現在は帰化申請が通って日本人。)の意見に惹かれて本書を手に取った。

若い人はそうでなくなったというが、一般的には韓国人の日本嫌いはまだ多く存在し、義務教育の中でもそのような考えを植え付ける教育が今も行われているというのが僕ら日本人が持っている印象だろう。本書によると、最近では年配の人の中にもそのような考えや教育に不満を持っている人が多いのだという。しかし、法律や世間の目があってなかなかそれを公に言えないのだという。実際著者自身も韓国人からこれまでなんども脅迫を受けたことを告白している。

面白かったのは本当に著者が日本を好きで、日本のことを普通の日本人の何倍も調べて理解しているという点である。そんななか韓国について語る点からは、日本から見ると韓国も、ドラマや音楽の影響で、同じように発展した国に見えるが、まだまだ日本に比べると遅れている点が多いということである。

著者は過去の韓国と日本の間の出来事に触れながら、日本の政府はもっと韓国に対する自分たちの正当性を世界に強く伝えるべきである。と繰り返す。確かに、日本の慎ましい外交が日本を応援したいという著者にとってはもどかしいのかもしれないし、実際に外交という側面から見ると控えめでいることは正しくないのかもしれない。

日韓の関係に対して今まで知らなかったことまで教えてくれて、日本と韓国という国に対して新たな視点をもたらしてくれた。

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「The President is Missing」James Patterson, Bill Clinton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカ合衆国大統領Duncanがイスラム組織Sons of Jihadの脅威や様々な問題に刺さされながらも国民や国を守るために奮闘する様子を描く。

元大統領ビル・クリントンが共著者に名前を連ねていることから興味を持って本書を手に取った。

物語はあるDark Agesというウィルスが政府のコンピューターに現れたことから始まる。イスラム過激派組織Sons of Jihadの仕業なのか、それともロシアなどアメリカの転覆をもくろむ国によって行われたのか。そんな脅威を取り除こうとするなかで、多くの命が関わる中でそんな決断を繰り返す大統領の様子が見て取れる。側近達は意見は言いつつも、すべての決断は大統領によって行われ、テロリストの命も国民の命もその決断1つで救われたり失われたりするのである。自らの職務を全うしようとする大統領はもちろん、Carolyn Brockなどの側近達の仕事ぶりがなんともかっこいい。

やがて、2人の男女が大統領に接してきたことから物語は国を滅ぼしかねないサイバーテロへと発展していくのである。

全体的にはコンピューターウィルスを題材としたパニック物語という印象で、展開自体に特に目新しさは感じないが、大統領をとても忠実に(と思われる)描いているところが本書の魅力だろう。

アメリカの大統領や政府は日本のそれほどくだらないことに時間を費やさない印象を持っていたが、どこの国にも国や国民の利益よりも自分の立場を優先する人はいるもので、本書でもそんな様子が垣間見えた。

「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ジョン J. レイティ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
運動がどれだけより良い人生を送るために重要か、実験などの結果を交えながら説明する。

スポーツを日常的にしている人は感覚的にスポーツが心にも良いことはわかっているだろう。本書はそんななんとなくな良さをさまざまな研究結果を交えてわかりやすく解説している。

簡単に言うと運動は健康だけでなく、成績の向上、不安やストレスの解消、うつや加齢による認知症棟にも効果があるのだと言う。きになるのはどれぐらいの運動をするのがいいのかということだが、本書によると、心拍数が最大心拍数(220から年齢を引いた数が理論上の最大心拍数)の60%から70%を保ってを30分程度運動を行うのが良いとしている。それを週に5日というのが最低ラインということである。

どちらかというと、体育の授業などのこれまでの運動の機会にのなかで、自分は運動神経が鈍いと認識して運動を習慣化しなかった人こそ読むべきなのだろう。運動が得意不得意に関係なく、運動をするということは人生を豊かにするのである。

僕自身も現在はスカッシュや競技ダンス(社交ダンスの本気版)をできている。しかし、この先怪我や機会の喪失などでそれらのスポーツが習慣的にできなくなったときに、最低限良い人生を維持するために、本書で書いてあったことを考えて再び習慣にする運動を選びたいと思った。

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「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ

オススメ度 ★★★★★ 5/5
夢を叶える方法を語る。

目標は紙に書くといい。というのはよく聞く話ではあるが、なぜそれがいいかということまで本書は説明している。それは脳のRASという仕組みによって、紙に目標を書くと、その情報に敏感になるのだという。本書ではこんな自己啓発本にありがちな夢を叶える方法を、多くの実例を交えて説明している。

簡単にいうと自分の目標を小さなものから大きなのまで思いつく限り書き出し、それをAリスト、Bリスト、Cリストに分類するのである。

Aリスト…今の自分にとってもっとも大事だと思えること
Bリスト…今の自分にとって大事だが、決断前にもう少し考える時間が欲しいもの
Cリスト…挑戦してみたいがまだわからない、できたら達成したいこと

重要なのはどうすれば達成できるのかは一切考えないということと、肯定的な表現をするということである。例えば「タバコをやめる」ではなく「健康的な生活をする」というように、否定文やタバコを吸うのをやめるというような表現だと「タバコを吸う」方のイメージがついてしまうのでうまく行かないのだという。

そして、Aリスト、Bリストには期限や、細かい達成目標を記入し、そのリストを常に自分が目にする場所に置いておくのだ(携帯の待ち受け画面など)

手法だけを聞くと、ありがちな自己啓発本の一つのように聞こえるかしれないが、本書は説得力のある説明が満載である。加えて、目標達成のための考え方や人生を前向きに生きるための様々な手法も共有してくれている。そして、なんといっても著者夫婦のマインドの強さに驚かされる。

何より面白かったのは著者自身も載せるか迷ったという最後の章である。家やお金を失った著者夫婦が再び裕福な生活を手に入れるまでに行ったのが、まさに本書で説明されている方法なのである。このような人生をよくする系の本で泣きそうになったのは初めてである。早速自分の目標を書き出して、見える位置に貼っておきたい。

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「きみはだれかのどうでもいい人」伊藤朱里

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
税金の滞納者からお金を回収する県税事務所。そこで働く人々を描く。

税金滞納者に日々対応するため、働く人々も悶々とした日々を送っている。本物語では、本庁から移動してきた中沢環(なかざわたまき)、中沢と同期でありながらも出世コースから外れた染川裕未(そめかわゆみ)、そして、四十代の田邊(たなべ)と掘(ほり)の4人の目線で進む。そしてギスギスした職場の近郊は須藤深雪(すとうみゆき)がアルバイトとして働き始めたことで少しずつ崩れ始めるのである。

公務員という大きな目標もなく、仕方なく働いている人々を描いた物語であり、登場人物が女性ばかりなところもまた物語を面白くしている。こういう一度いそう。と思わせる。決してこんな職場で働きたいとは思わないが、このように一見人生の目的もなく行きているように見える人々も、それぞれ複雑な事情を抱えているんだと気づかされる。

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「世界の果てのこどもたち」中脇初枝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
戦時中の満州で3人の少女、珠子(たまこ)、茉莉(まり)、美子(よしこ)が出会う。戦争に翻弄された3人の人生を描く。

珠子(たまこ)と茉莉(まり)は日本人、美子(よしこ)はミジャという名の朝鮮人だったが、満州にきたことで日本語を覚え、日本の名前を名乗るようになる。やがて、3人は戦争の終結とともに、日本と中国で別々の人生を歩んでいくのである。

珠子(たまこ)はそのまま中国に止まり、やがて中国の家族とともに生きることとなる。また、茉莉(まり)と美子(よしこ)はやがて日本に行きそこで終戦を経験する。家族を失ったり、兄弟と離れ離れになったりしながらも苦難の時代を生き抜く3人を描いている。

戦時中に中国人の家族の一因として育てらた日本人は山崎豊子の「大地の子」でも描かれていたが、本書はそんな珠子(たまこ)だけでなく、茉莉(まり)と美子(よしこ)による、日本の終戦後の様子も描いている。すでに終戦から80年だが、今後もなんども形を変えた物語として伝えられていくのだろうと感じた。

【楽天ブックス】「世界の果てのこどもたち」

「The Sentence is Death」Anthony Horowitz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年このミステリーがすごい!海外編第1位作品。離婚調停を専門とする弁護士Richard Pryceが殺され、殺人現場には182の文字が描かれていた。今回も前回と同様にHawthorneの事件解決を本にするためにAnthonyは事件に関わっていく。

前作「The Word is Murder」の続編で、物語としてもHawthorneとAnthonyのコンビで事件の真相に近づいていくのである。調べるうちに殺害されたRichardは数年前に洞窟探検の最中に友人Chalieを亡くしているという。また、Richardの離婚裁判によって被害を被ったAkira Annoという作家に脅迫されているのをレストランで多数の人が目的している。犯人はAkira Annoなのか、それとも洞窟探検で亡くなった友人の関係者の復讐なのか。

そんななか、警察のGrunshawはHawthorneに犯人逮捕の先を超されまいと、Hawthorneの動きを逐一報告するようにAnthonyを脅迫する。また、同時に、本を書くためには事件の経緯だけでなく主人公となるべくHawthorneの人柄を知らなければならないというAnthonyの努力は、今回も続いていくのである。

Anthony Horowitz作品は本作品で3作目だが、やはり「Magpie Murder」の印象が強くて、本作も物足りなさを感じてしまった。

「罪の声」塩田武士

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
服屋を経営する曽根俊也(そねとしや)は、ある日父親の遺品のなかに不思議なテープを発見する、それは自分の子供の時の声が録音されたテープであり、30年前に世の中を騒がした犯罪に使われてものだった。テープの謎を解明するために父親の過去を調べ始める。

物語は2人の視点を交互に行き来する。一人は父親の遺品のなかに不思議なテープを発見した曽根俊也(そねとしや)、そしてもう一人は、上司から30年前の未解決事件を取材するように命じられた阿久津英士(あくつえいじ)である。本書では「ギン萬事件」という30年前の未解決事件の真相に近づこうとする2人を描いているが、実際の題材はグリコ森永事件である。

曽根俊也(そねとしや)は父の知り合いの協力をあおぎ少しずつ真相に近づくいっぽいで、阿久津英士(あくつえいじ)は各方面の関係者に取材していく。当時は口が硬かった人も、30年経って事件が時効を迎えたために、新たな真実が見えてくる。

本書では犯人の描写まで描かれておりその点はもちろんフィクションであるが、それに至る経緯は実際のグリコ森永事件に忠実に描いている。僕自身小学生でうっすらとした記憶しかないグリコ森永事件に改めて関心を抱かせてくれた。小説というフィクションでありながらも、一つの時代を作った大きな出来事を新たな視点で教えてくれるまさに優れたフィクションと言える。

【楽天ブックス】「罪の声」

「さくら」西加奈子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
父親が久しぶりに家に帰ってくるということで、薫(かおる)は実家に帰り飼い犬のさくらや妹のミキと再会する。そして、20歳で亡くなった兄や、破天荒なミキの行動のことを思い出す。

学校のヒーローだった兄と、美人だが凶暴な妹の出来事、そして過去の恋人たちとのエピソードなどを順を追って語っていく。世の中なんでも思い通りになりそうな幼い頃の思いと、それがだんだん少しずつ、勢いが失われて平凡な人生に飲み込まれていく様子を独特なテンポで語る。

本書で西加奈子の著作は二作目であるが、本作品も直木賞受賞作品である「サラバ」と似たような独特な雰囲気を持つ。もし著者の作品がみんなこの雰囲気であればしばらく読まなくてもいいかなと思った。悪い作品ではないが何冊も読むものでもないかもしれない。

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「キラキラ共和国」小川糸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
鎌倉で文具店を営みながら、代書を行うポッポちゃんのその後の様子を描く。

「ツバキ文具店」の続編である。知らずに手に取ったので意図せずあの穏やかな鎌倉の世界観に触れることとなった。そして、なんと序盤からポッポちゃんが子持ちの男性ミツローさんと結婚したことが明らかになる。ポッポちゃんは代筆屋、文房具屋を営みながら、また、お相手のミツローさんは喫茶店を営みながら、少しずつ一つの家に移り住み、書類上だけでなく見た目においても、家族としての生活へ移っていく、その過程を本書では描いている。

興味深いのはミツローさんは前の奥さんと死別していると言う点である。そのためミツローさんやその家族のなかでも前妻の話題を出さないように気遣ったりする面があり、そんな気遣いがポッポちゃんを苦しめるのである。また、そんななか、ポッポちゃんの母親を名乗る人まで現れ、ポッポちゃんの悩みが増えていくのである。

相変わらず代筆への依頼は対応しており、そのそれぞれに一生懸命考えて作った手紙は前作同様魅力的である。ただ、今回はポッポちゃんの結婚生活への悩みや葛藤も多々含まれており、どちらかというとそれはよくある恋愛物語の一つという感じで、代書という仕事の面白さや難しさを焦点にあてた前作のほうが個性を感じた。

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「死ぬ前の5つの後悔」ブロニー・ウェア

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
多くの人の人生の最期に立ち会った経験を持つ著者が、人々が死の前に感じる後悔について語る。

5つの後悔とあるが、本書で扱っているのは5人の死だけでなく、死を目の前にした人々の様子や家族の様子も合わせて伝えており、その後悔をまとめるとだいたい5つのパターンに収まるということである。著者ははつぎの5つをよくある後悔としている。

  • 1.自分に正直な人生を生きればよかった
  • 2.働きすぎなければよかった
  • 3.思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
  • 4.友人と連絡を取り続ければよかった
  • 5.幸せをあきらめなければよかった

特にこうして並べてみると特にそれほど大きな驚きはない。ああ、こういう人いるよな、と思う部分もある一方、自分のまわりではあまりこのような後悔をしそうな人が少ないのは、時代が多くの生き方を尊重する方向に変わってきたからかもしれない。

上に挙げた5つの後悔以外にも、人生の最期を迎えた人々の様子を本書を通じて知ることで、考えさせられる部分が多くあった。印象的だったのは周囲の人に酷い言葉を投げかけられた時の考え方である。

「誰かがあなたに贈り物をし、あなたがそれを受け取らなかった場合、その贈り物は誰のものですか?」…そもそも幸せな人の口からそういう言葉は出ない。

死の床で人生を振り返って、もっと物がほしかったとか、なにかを買えばよかったと言った人を私は一人も知らない。

また、死に直面した人の様子を描くのとあわせて、いろんな悩みを抱えながら生きている著者自身の破天荒な生き方も見せてくれるのが面白い。そして、様々な自らの死や、家族の死に直面して戸惑う人々をみて思うこととしての感想ももっともだと感じた。

これは我々の社会が死を人々の目から隠しているために怒る明らかな弊害の一つだ。死に直面すると、人は様々な疑問を持つ。自分もいつかか死ぬのを認識していたら、こうなるずっと前に納得のいく答えを見つけられるだろう。

さて、このように人生の後悔の代表例を知った僕たちは、これを避ける努力をすることができる。僕自身の人生は、今は比較的うまく行っているように思えるが、時々自分を振り返って、後悔をする生き方をしていないか確認するようにしたい。

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「The Word is Murder」Anthony Horowitz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2020年このミステリーがすごい!海外編第1位作品。ある女性が自分の葬儀の手配をしたその日に殺害された。そんな興味深い事件を教えてもらったAnthonyは元刑事のHawthorneとともに事件を本にすることを前提として事件の捜査に参加する。

小説と実際の作者の世界が交わるという点では、「Magpie Murders」と似ている点もある。また本書は著者自身を主人公としており、スピルバーグ等実際に存在する人物も何人か登場することからどこからが小説でどこからが現実の話なのかわからなくなる点も魅力と言えるだろう。

自らの葬儀を手配した当日に絞殺されたDiana Cowperだったが、調査を重ねるうちに、10年ほど前に自らが運転する車の交通事故である少年が命を落としていることがわかってくる。Dianaの死はその少年の死に関係があるのか。AnthonyとHawthorneは捜査を続けていく。

そんな真実を追求する動きのなかで、Anthonyはなかなか自分のことを語らないHawthorne人間性に疑問をもち、やがて自分一人で真実を見つけようとするのである。

本書もこのミステリーはすごい!海外編第1位を獲った作品ということで期待値が高かったが、前作「Magpie Murders」の衝撃が大きかったのでそれに比べるとやや物足りない感じを受けた。

「All the Light We Cannot See」Anthony Doerr

「All the Light We Cannot See」Anthony Doerr
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第二次世界大戦下、フランスで生きる目の見えない少女Marie-Laureと、ドイツで妹とともに生きる少年Werner Pfenningを描く。

パリの美術館で働く父のもとで過ごす、目の見えない少女と、ドイツで妹ともに貧しい生活を送りながら、ある日見つけたラジオに魅了される少年を交互に描く。過去と今を行ったり来たりしながら物語は進む。

Marie-Laureの父は目の見えない娘のために、自分たちが住んでいる地域の詳細な模型を作って娘に覚えさせる。やがてそれによってMarie-Laureは外に出歩くことができるようになる。やがて戦争が始まり、パリから海岸近くの街に住むk親戚のもとへと避難する。その際、父親は一つの宝石を預かるのである。持っているものは死なない代わりに、その周囲の人が不幸になるという宝石である。父親はその宝石が本物かどうかを疑問に思いながらも託されたものとして大切に扱う。

一方でWernerは妹のJuttaとともに他の孤児たちとともに生活するなか、ラジオに魅了され、分解、組み立てを繰り返しながらその技術を伸ばし、やがてその技術を必要とするドイツ軍の前線へと派遣される。ドイツ軍の行いを知らずに自らの技術が評価されたことを喜ぶWernerと、禁止されているラジオでドイツ軍の行いを知って疑問に思う妹Juttaは少しずつ距離を置いていく。

Is it right to do something only because everyone else is doing it?
みんながやっているかという理由だけでするのは正しいの?

また、ドイツ人将校Von Rumlpelは少しずつ体に不調をきたすなか、戦乱に乗じて噂を聞いた命を永らえさせるその宝石を見つけようと務める。やがて、少しずつMarie-Laureへと近づいていく。宝石の奇跡を信じるVon Rumlpelは父の教えに従って行動するのである。

See obstacles as inspirations.
障害を良い刺激として見るようにしなさい。

不可思議な宝石Sea of Flames、目の見えない少女、ラジオの好きな少年、やがてそれぞれの人生が近づいていく。

第二次世界大戦のヨーロッパの様子を描いた作品は、どちらかというとアメリカ視点のものに出会う機会が多いので、本書のように、ドイツ人、フランス人目線で描かれたものは新鮮である。戦時下の情報統制の中必死で生きる少年少女を描いた優しい物語。