「恋文」連城三紀彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第91回直木賞受賞作品。中年の男女を描いた5つの家族の物語である。

ドラマ化された最初の物語「恋文」なかなかいい話だったと聞き、本書を読みたくなった。

発行がすでに30年以上前なので、時代の古さは感じるが、その深さは今読んでも遜色ない。いずれの物語も30代、40代の男女を主人公に据えており、すでに若い頃の華やかな生き方を通り過ぎ、人によっては家族を持ち、もはや人生は流れに任せて少しずつ年齢を重ねていくだけ。そんな風に思えるなかで訪れた人生の決断を、成熟した人間の悩みや葛藤とともに描いている。

表題作「恋文」は、夫が、病気で余命わずかな元恋人である郷子(きょうこ)と最期の時間を一緒に過ごすために家を出る話である。妻の江津子(えつこ)は、夫の想いや、郷子(きょうこ)の最期の望みを叶えてあげたいという思いをもちながらも、また同時に、年上女房として弱みを見せない自分や、夫に戻ってきてほしいという素直な気持ちの間で揺れ動くのである。

表題作「恋文」だけでなく、どれも甲乙つけがたい魅力的な作品。一般的にはおじさん、おばさんと呼ばれる人たちが、それぞれのかっこよさを感じさせるところがまた印象的である。ぜひ、もはや人生にはなんのドラマも起きないと諦めている30代、40代の人に読んでほしい。

【楽天ブックス】「恋文」

「The Girl You Left Behind」Jojo Moyes

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
戦時のフランスで生きる姉妹SophieとHélène、それぞれ夫が出兵し不在の中、子供達の面倒を見ながらレストランを経営する。

1916年、第一次世界大戦のドイツの占領下のフランスで、SophieとHélèneはレストランを営み続ける。そして、そこにはSophieの夫であるÉdouardの描いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。そして、かつては地元で有名なホテルだったこを聞きつけたドイツ人将校は、2人、食材を提供するのでドイツ兵のために夕食を用意することを依頼されるのである。

一方で、並行して描かれるのは、2006年のロンドンに住む30代女性Livであり、彼女は建築家の夫と死別したのち、1人で夫が遺したマンションの部屋に住み続けている。そしてそこには、人の手を渡り歩いてたどり着いたSophieの肖像画が飾ってあるのである。

物語は、Édouardの描いた作品の価値が高まり、Édouardの子孫がその作品を子孫の元へと返すように訴えることで大きく動き出すのである。彼らの主張は、戦時にドイツ軍によって略奪されたものだから元の持ち主に返すべきということである。一方、早くに亡くなった夫からのプレゼントであり、その肖像画に愛着を持つLivは、お金のためだけに絵を取り戻そうとするそのÉdouardの子孫たちに返すのを避けるために、略奪によって絵がうばされたわけではないという証拠を見つけ出そうとする。

戦時中と21世紀という大きくへだたる時代のなかで、ドイツ兵、フランス、どちらの内側にも、善と悪が描かれている点が印象的である。誰もが戦争という大きな流れのなかの犠牲者でしかなく、そんな過酷な状況ではどんな人も強くいられず、潔癖でもいられず、時には、弱さをさらけ出し、人を傷つける言動をせざるを得ない。その場を経験した人間にしかわからないようなその空気感を見事に表現し、それを物語のなかに組み込んでいる。

今年最高に涙した作品。

「amazon 世界最先端の戦略がわかる」成毛眞

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな業界の勢力図を塗り替えて巨大な帝国を築きつつあるアマゾンのすごさとその戦略を語る。

GAFAとして、アップル、フェイスブック、グーグルと比較されることはあるが、そんななかでもアマゾンのすごいところは、業務の範囲を限定せずに手当たり次第に拡大している点だろう。そして不利と判断するとすぐに撤退し、有利と見ると資金力を活かして容赦無く拡大していくことが、本書を読むとよくわかる。

なかでも面白かったのは、楽天とアマゾンを比較する点である。企業の世界的なサイズは大きく違えと、日本では似た印象を持つこの二者であるが、著者はそのコンセプトには大きな違いがあるという。楽天のビジネスモデルは場所貸しなので、お客さんは出店してくれる企業だが、アマゾンにとってはお客さんはあくまでも消費者なのだという。そのため、初期は楽天が拡大しやすい一方、アマゾンは在庫管理や物流を整備しなければならない分時間がかかったというのである。言い換えれば、在庫管理と物流が整備されたら、楽天に勝ち目はないということだ。海外の本だとなかなか楽天とアマゾンを比較することはと思うだけに、この日本人目線の考察はありがたい。

知っていると思っている以上にアマゾンについて知ることができた。また、アマゾンの未来はそのまま世の中の未来になる点がおそろしくもあり、また楽しみである。全体的にアマゾンが今後つくっていく近い未来にさらに期待を抱かせる内容だった。特にAmazon Goの普及は楽しみである。

【楽天ブックス】「amazon 世界最先端の戦略がわかる」

「たのしごとデザイン論」カイシトモヤ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
アートディレクターである著者がデザインの仕事の仕方について語る。

少しでもデザイン力を向上させるてがかりになればと本書を読むに至った。

おそらく長年デザインをやっている人は同じような考え方にたどり着くのだろう。言語化の重要性とか、揃えるところとあえて崩すところを考えるなど、言っていることはどれももっともで、僕自身激しく同意することばかりで、今まさにデザイナーとしての道を歩き始めた人にとっては学ぶところがあるかもしれない。

ただ、残念ながら、書き方がダラダラと言いたいことをただ書き連ねるので読みにくい。デザイナーであるなら、無駄をそぎ落とすことの重要性をわかっているはずなのに、書籍においてそれをやらないというのがなんとも残念である。

ページ数を増やすという出版社側の意図かもしれないが、文字も大きく、ひょっとしたら「完全版」ではない前作の方がコアとなる部分だけにしぼった良い本なのかもしれない。

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「一九八四年」ジョージ・オーウェル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビッグブラザーの支配下で生きるウィンストン・スミスを描く。

ビッグブラザーの支配のもと、過去はビッグブラザーに都合よく書き換えられ、それ以外の記録を残すことは禁止されている。そして言葉も最低限の情報交換に必要なものだけに単純化されていく。そんななか、自分の心だけは豊かなままでいたいと努めるウィンストン・スミスを描く。

マッキントッシュの有名なCMに代表されるように、様々な箇所で引用されており、一度は読んでおかなければならないと思い、今回読むに至った。

ビッグブラザーの支配のもとで生きるウィンストン・スミスが、ジュリアという女性と恋に落ち、少しずつ思想的にも行動的にも大胆になっていくなかで、ビッグブラザーに対抗する組織と近づいていく様子を描く。

つまらないというわけでも、新鮮さがまったくないというわけでもないが、正直、現在の様々な物語が溢れる時代に生きた人々が本書を読んで、その面白さを享受できるかと問われれば、そんなことはない。古い物語を読むときは、その時代背景も考えながら楽しむべきだろう。

物語の舞台は1984年だが、発表は1949年と第二次世界大戦が終結して間もない時だというから驚きである。発表からも描こうとしていた未来からも遠い未来である現在から本書を読むと、当然、発表当時本書を読んでいた人々とは受ける印象がまったくことなることだろう。それでも、なぜこの物語が当時多くの人々に読まれ、80年近く経った今でも共通言語として語られる存在になったのかと考えた。

本書のあとがきでも触れられているが、単純な物語の斬新さだけではなく、発表当時もしくは発表後数十年のソビエト連邦の脅威に重なる部分が本書の認知を拡大に大きく寄与したのだろう。その流行は、メディアか政府によって意図して起こされたのか、人々の間で自然に起こったのかはわからないが、その結果、アメリカを代表する西洋諸国の間で、避けるべき未来を語る上での共通認識となっていったのではないだろうか。

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「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある」山口真由

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
東大卒の著者がその学習方法を語る。

学習メソッド系の書的の多くに言えることで、読者として気をつけなければいけないのは、単にある程度成功した地位をたどり着いた著者が、自分がやってきた方法を紹介しているだけで、必ずしも、他のさまざまな方法と比較して確かにこの方法が効果があることを検証した結果、採用しているわけではないということである。

本書でも、著者がとってきた様々な方法を紹介しているが、紹介されているのは、効率を考えずにひたすら時間を費やす方法で、方法もサボらないための工夫といった感じである。著者は運動が苦手だとのことだが、確かにこの努力の仕方では、体力的に費やす時間の限られる(そうしないと怪我をする)運動はうまくならないだろうなと感じた。

一般的な人から見て、「並外れた努力」と見えるものも、実際に本人にとっては日々の考え抜かれたルーティンに従っているだけ、つまり方法論があるというのは同意である。ただ、その根本にある考え方はかなり僕自身とは異なると感じた。

特に自分とは大きく異なると思ったのは、著者のつぎの方法である。

「自分との戦い」に持っていかない
努力はまわりに見せること!

つまり、著者は常に周囲の目を意識しており、それを原動力にしてきたのだと感じる。本書全体から伝わってくる著者の努力が、結構つらそうで、楽しそうな感じをあまり感じられなかった。僕は、人と比較せずに昨日の自分とだけ比較し、そのもの自体を楽しむことを毎日繰り返せば、時間の経過とともに自然と技術や能力は向上できる、と考えており、かなり考えが異なると感じた。

また、この著者の例がすべてではないだろうが、勉強量だけ増やして、効率や楽しさを考えない人が、東大行ったり弁護士になって世の中を動かしていて、日本は大丈夫なんだろうか、と思ったりもしてしまった。もし、努力できずに困って本書を読むのであれば、あまり鵜呑みにせずに一つの考え方として受け取ってもらえればいいなと思った。

正直「方法論」と語りながらも、効率の悪さの目立つ根性論が多かった。いくつかアイデアとして面白いと思えるものもあったが、後半に進むに従って内容が薄くなりで、必死で本の厚みを増やそうとしているのが伝わってきた。

【楽天ブックス】「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある」

「スタンフォード式疲れない体」山田知生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スタンフォード大学のトレーナーである著者が疲れない体づくりを語る。

スタンフォード大学は学業で有名な印象があったが、本書によるとスポーツでも長年目覚ましい成績をあげているという。本書はそんなスタンフォード大学で実践されている疲れの予防法について語っており、僕自身最近マッサージやストレッチなどコンディションづくりや体のケアに対して関心が高まっており、本書にたどり着いた。

まず、自らのコンディションを知ることの重要性を説いている。脈拍を定期的に測ることに「疲れ」を具体的な数値として計測できるようになるというのである。

そして、本書でもっとも印象的だったのはIAP呼吸法である。それはIntra Abdominal Pressureの略で「腹圧呼吸」とも書いており、簡単に言うと

息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法

である。つまり、腹式呼吸とも異なり、これによって体幹が安定し正しい姿勢になり、無駄な動きがなくなるというのである。どちらかというと腹式呼吸が理想の呼吸という印象を持っていたためIAP呼吸法の考え方は新鮮だった。

ダメージ療法として「アイス・ヒート」メソッドも紹介している。簡単にいうと怪我をして24時間までは冷やし、24時間以降は温めるという方法で、注意しなければならないのは、怪我をした翌日だろうと24時間経つまでは冷やすということである。

終盤d根は睡眠と食事の重要性について語っている。睡眠は最低でも7時間、週末も平日も同じ時間に寝ることを勧めている。食事については、他の書籍でも触れていることと特に大きな違いはなく、日本人は炭水化物を摂りすぎなので、タンパク質の割合を増やすことを意識しなければならないという。ただ、本書でも言っているように、食事は厳しくしすぎると続かないので、できる範囲で徐々に習慣づけていきたい。

呼吸法、脈拍の定期的な測定、アイス・ヒートメソッドは早速取り入れていきたいと思った。

【楽天ブックス】「スタンフォード式疲れない体」

「花まんま」朱川湊人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第133回直木賞受賞作品。大人になった人々が子供時代の不思議な体験を思い起こす。そんな6つの物語である。

ずっと心の奥にとどまっている、心残り、引っ掛かり、解決しないままの気がかりなど、すでに記憶に残るぐらいの年齢ではあるが、世の中のすべてを知っているとは言い切れない、そんな年代である小学生の頃の不思議な記憶を、それぞれの男女が吐き出していく。6つの物語に触れる中で、当時の情景が思い起こされ、当まだまだ貧富の差や、差別などがそこら中にあふれていたのだと感じるとともに、過去の生活の進歩を改めて感じる。

また、本書にふくまれる6つの物語のように、人の人生とは必ずしも、優しい人が幸せになるわけでもなく、悪い人が罰せられるわけでもなく、いつか完全にすべての謎が解けるような作られた映画のような物語でもなく、はっきりしないまま、何年経っても結末を知り得ない、やるせない部分を抱えているものなのだろう。

どれも同じ40代、50代の主人公が小学校の頃を思い起こす物語だから、どの物語からも昭和の懐かしい香りが漂ってくる。描ききらない微妙な空白が、40代の僕に当時の埃まみれの校庭や道端の匂いを感じさせてくれる。他の世代の人はどう思うかわかららないが、同年代の人には間違いなくおすすめできる作品。

【楽天ブックス】「花まんま」

「55歳からのハローライフ」村上龍

55歳からのハローライフ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
50代のどこにでもいそうな男女を主人公にした5つの物語。50代になって人生の転機を迎え、新しい人生の物語である。

夫と離婚して婚活を始めた女性の話、定年後妻とキャンピングカーで全国を回ることを楽しみにしていた男性の話、本で出会った女性に恋をするトラックドライバーの話など、どれも魅力的な物語である。

個人的にはキャンピングカーの物語が印象的である。同じように喜んでくれると思った妻が、キャンピングカーの話に思っていたほど乗ってこないのである。そして少しずつ、妻や娘にもそれぞれ長い間育んできた楽しみの時間があることを知る。また、自分自身も仕事という時間の過ごし方がなくなった今、新たな生き方を改めて考え始め、多くのことに気付き始めるのである。

年齢を重ねて、人生が生きる価値のないものになっていく、などと考えている人がいるのなら本書はまさにおすすめである。何歳になっても人生は青春であり、ドラマであり、自分自身は主人公なのだ。どんな人の人生にもじっくり語ることのできる物語があることを再認識させてくれるだろう。

【楽天ブックス】「55歳からのハローライフ」

「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノートルダム清心学園理事長の著者が生き方を語る。

前向きな人生を送るための考え方を語った本は、昨今世の中にあふれており、本書もそんななかの一つである。したがって、読むことに意味はないとは言わないが、この手の本をたくさん読む人にとってはそれほど印象的な言葉はないかもしれない。ただ、すでに出版時点で80歳を超えていることから、人間の晩年になってこそ見える考え方が伝わってくる。

老いるということにおいて、一番大切な仕事は、ふがいなくなった自分を受け入れて、いつくしむということだと気付きました。
一生の終わりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ

ときどきその職業的背景ゆえか、キリスト教や神を引用して語ることで、無心論者には受け入れがたく感じるかもしれない。

【楽天ブックス】「置かれた場所で咲きなさい」

「カラフル」森絵都

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
死んだ「ぼく」は天使によって人生の再挑戦の機会が与えられ、小林真(こばやしまこと)という中学3年生の人生を期間限定で引き受けることになる。

「ぼく」は小林真(こばやしまこと)を手探りをするように探りながら、その家族や友人とその関係を把握していく。そして、小林真(こばやしまこと)という人間が、絵は得意でありながらも、家族や友人との関係にいくつかの問題を抱えていることに気づいていく。

死んだ人間に再挑戦の機会が与えられる。この物語の流れはすでに多くの作家が使っている。すぐに思い浮かぶところだと「幽霊人命救助隊」「ミッドナイトライブラリー」で、どちらも自信を持って勧められる作品で、ある意味、この流れで描かれた物語にそうそうハズレはない。本書も例外ではない、他の作品にない点を挙げるなら、感受性豊かだが、人生思い通りに行動するほど時間もお金もない中学生を主人公に据えている点だろう。

それでも小林真(こばやしまこと)の人生を引受けることとなった「ぼく」は、できる範囲で友人や家族に自分の考えを伝えていく。知らないまま、伝えないままでいることよりも、事実と向き合うことを選んでいくのである。それによってこれまで見えてなかった、家族や友人たちの新たな側面が見えてくるのである。

ありがちな設定の物語とは読む意味がない物語という意味ではない。この手の物語は何度でも読むべきで、何度でも人生を前向きに補正してくれる作品である。

【楽天ブックス】「カラフル」

「華麗なる一族」山崎豊子

華麗なる一族

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
阪神銀行の頭取である万俵大介(まんびょうだいすけ)とその家族を描く。

長男の鉄平(てっぺい)は関連会社である阪神特殊鋼の専務を務め、次男の銀平(ぎんぺい)は大介(だいすけ)と同じ阪神銀行で働く。面白いのは、家庭教師である相子(あいこ)の存在である。相子(あいこ)は家庭教師として万俵家と関わることになったにも関わらず、今では、万俵家の権力を広げるために、息子や娘たちの縁組みに奔走するのである。そして大介(だいすけ)は相子(あいこ)と妻の寧子(やすこ)と交互に夜を共にするのだ。

そんな複雑に入り組んだ銀行一家を率いる大介(だいすけ)だが、年銀行再編の流れのなかで、業界ランクと10位として、他行に吸収されず、その地位を守ったまま阪神銀行を大きくする方法を模索していく。その過程で銀行間や政治家との駆け引きが詳細に描かれる点が面白い。

山崎豊子の物語は、現実の出来事に対して緻密に調査しそれをフィクションとして作り上げるだけに、本作品も実際に起こったことがベースになっているだろうと考えると面白い。航空業界、報道、医療などについて書いているので次回は医療業界を描いた名作「白い巨塔」を読みたいと思った。

【楽天ブックス】「華麗なる一族(上)」「華麗なる一族(中)」「華麗なる一族(下)」

「Building a storybrand」Donald Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングの手法について語る。

映画に必要な要素とブランディングに必要な要素は基本的には同じで、次の7つの要素だという。

1.登場人物 Character
2.問題 Problem
3.案内役 Guide
4.計画 Plan
5.行動 Calls Them to Action
6.失敗 Failure
7.成功 Success

次の3つの質問に答えられるだろうか。

1.What does the hero want? ヒーローは何を求めているのか
2.Who or what is opposing the hero getting what she wants? 誰がまたは何がヒーローがそれを手にすることを妨げているのか
3.What will the hero’s life look like if she does(or does not)get what she wants? ヒーローがそれを手にした時、ヒーローの人生はどうなるべきか

そしてユーザーが疑問に思うであろう、次の点が明確だろうか。

1.What do you offer? あなたは何を提供しているのか?
2.How will it make my life better? 私の人生をどのようによくするのか
3.What do I need to do to buy it. それを買うために私は何をする必要があるのか

改めて、本書に書いてあることを考えながら、僕が仕事で取り組んでいるサービスを考えた時に、ユーザーへのその成功をはっきりと見せられていないと感じた。

ヒーローの問題を外面的、内面的、哲学的と3つの領域に分けている点も印象的である。それぞれをよりわかりやすくすると次のようになる。

外面的… 目の前にある問題を解決したい
内面的… こんな人間になりたい
哲学的… 世の中に貢献したい

僕自身が関わっている仕事やサービスなど、様々なものについて、改めてその価値をうまく見せられているか考え直すきっかけとなった。

「ドローイングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

先日読んだ、「ペインティングレッスン」の同じシリーズのドローイング版である。「ペインティングレッスン」が新たな視点をもたらしてくれたので、本作にも期待して手に取った。

本書はデザイン、ライン、明度、フォルムの4つの視点でドローイングを解説する。その過程で、さまざまな歴史的な美術の背景や、作品を紹介している。デザインの章では黄金比について多くの例を交えて解説しており、改めて黄金比の重要性を感じた。ちなみにフォルムとは3次元の錯覚を作り出すことで、写実主義の芸術家がたちが没頭した、絵に説得力を持たせるためには不可欠な技術なのだという。

測定法についても3つの測定法、サイトサイズ法、関係法、比較法を語っており、度々出てくるブロックインという手法ともに、長所と短所に、軽く触れているだけで、正確な解説には至ってないので、別の書籍などで理解できるまで調べてみたいと思った。

ペインティングレッスンと同様に明度の重要性を改めて感じるとともに、絵画とはいえ、不要なものを削ぎ落とし、意図した通りの再構成することが良い作品を作るためには重要で、ただみたものを写し取るだけではなくデザインと非常に似たものだと感じた。

「ペインティングレッスン」と同様に、人生をすべて費やしても足りないのではないかと思わせるぐらい、絵画の深さを感じさせてくれる一冊である。

【楽天ブックス】「ドローイングレッスン」

「ネオ・ヒューマン 究極の自由を得る未来」ピーター・スコット・モーガン

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
2017年に運動ニューロン疾患(ALS)と診断された著者は自らを実験台として少しずつ自分の体を機械に置き換えていく。

読みはじめてそういえばどこかで聞いたことある話だと気付いた。本書に限らずさまざまなメディアに取り上げられているという。

本書では、著者の人生の転機となった出来事や、大きな決断の過程を描いている。問題の多くはは、正常な器官を手術するために医師を説得することや、保険の適用だったりと、著者自身よりも周囲の人間に起因する点が面白い。本書でも行っていることではあるが、体の大部分を置き換えてまで生き続けることは、すでに技術的な問題ではなく人間の心理的な抵抗感による問題なのだろう。ちなみに著者はイギリスの最初の合法的なゲイカップルという点も興味深い。ゲイカップルやALSに限らず、先駆者は後続の人々に勇気や希望を与えることを改めて感じた。

著者のやっていることはものすごく斬新で、しかもそれは病気で少しずつ自由を失っていく人に希望を与えるものである。著者の試みに対しては人類の新たな一歩として賞賛しかない。

ただ、残念ながら本書は本としてはかなりつまらない。おそらくALSと戦う様子の間に、自身のゲイとしての人生も伝えようとしている点にあるのだろう。間に学生時代や病気になる前のエピソードを挟み込むから、章が変わるたびに文脈を把握するのに時間がかかるなど、読みにくくてたまらなく、なんども途中で本を置こうと思ってしまった。

【楽天ブックス】「ネオ・ヒューマン」

「直感と論理をつなぐ思考」佐宗邦威

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
PDCAによる改善の流れは今後ますます自動化され、正解がないものに取り組む直感的な発想法がより必要になるという。本書では直感的な考え方の必要性とそれを生み出す手法を語る。

本書ではこれから社会が向き合う2つの危機をオートメーションの波とVUCAの霧としている。VUCAとはVolattility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)である。そしてそんななか、論理的、戦略的思考ではいずれ限界がくると説いている。つまり、ゲームに勝つことよりも、ゲームを作り出すことこそた重要なのだという。「自分モード」から「他人モード」、「1→∞」から「0→1」、「Vision-Driven」とから「Issue-Driven」など様々な言い回しを使っているが言っていることは基本的に同じである。

「いかに答えを探すか」ではなく、「そもそも答えなどない」という前提で動くことが、大半の人・組織に求められるようになったわけだ。

そして、後半では「0→1で発想する様々な手法を紹介している。プロトタイピングメソッドによって早く作って早めに失敗することの重要性や、広く全体を見る鳥の目と狭く集中して物事を見つめる虫の目を使い分ける方法や、「画像」と「言葉」を往復する思考法を紹介している。

なかでも手書きと絵の重要性を説いている点が印象的である。どんなにアプリなどのデジタルツールが進歩したとしてもアプリの立ち上げまでの時間を考えると、すぐに開けてかけるノートとペンにはかなわないと著者は主張するのである。

僕自身もすでにコンセプトが出来上がっているものを作り上げるよりも、コンセプト自体を創造することに価値があると考えているので、本書で行っていることには共感する。アイデアの出し方についても、僕自身デザイナーとして、デザイン案を構築する中で、言葉とイメージを往復しながらアイデアを少しずつ固めていく手法をよく使う。本書で書かれている内容は、その手法の効果を裏付ける形となった。

ツールについては、iPadのApplePencilの登場でかなりアナログの感覚をデジテルツールでも再現できるようになったと感じているが、確かにアクセスや、アプリを開くまでの時間を考えると、本書で言っているようなこともあるのかもしれないと感じた。ノートを一冊常に持ち歩くように習慣づけることは間違い無く良いことだろう。さっそく素敵なノートを一冊購入しようと思った。

【楽天ブックス】「直感と論理をつなぐ思考」

「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「The House in the Cerulean Sea」TJ Klune

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
孤児院の監査を仕事にしているLinusはその徹底した仕事からMarsyas島の孤児院の調査を依頼され、飼い猫CalliopeとともにMarsyas島に向かう。

Linusすぐにその孤児院には多くのいわくつきの子供たちがいることを知る。特に大きな問題は反キリストであるLucyである。しかし、やがて子供たちと触れ合う中で少しずつLinusの心は変わっていき、彼らも世の中のすべての子供達と同じように、守られるべき存在だと気づいていく。そして、それまで味気ない生活をしてきたLinus自身の人生も豊かな感覚が蘇ってくるのである。

一方、その孤児院を閉鎖しようとするExtremely Upper Managementは、Linusからその孤児院の問題を指摘する報告を待っている。やがてLinusは自らの仕事を守るために行動すべきか、それとも、暖かい孤児院の人や子供達を守るために行動すべきか葛藤するようになるのである。

なんといってもLucyを中心に、その孤児院にいる子供たちの様子がかわいい。彼らの異質な見た目が小説からだとなかなか伝わってこないのが残念だが、その振る舞いの愛らしさは伝わってくる。

見た目や生まれにかかわらず、人には生きる権利があり、特に、守られるべきだということを、このような形にすることで強く訴えてくるようだ。

「配色の設計 色の知識と相互作用」ジョセフ・アルバース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
少しずつでも色彩や形に対しての感覚を向上し、またそれを説明する言葉を積み重ねたいと考えており、本書もそんな過程の中でたどり着いた。

書籍自体比較的新しいのだが、海外で初版が発行されたのは1963年と約50年前ということだから驚きである。本書には色の感覚や相互作用について理解を深めるためのさまざまな学習法が掲載されており、なかなか読んだだけではわからず、しっかり理解するためには手を動かしたり、カラーペーパーをつかったりしないとならないだろう。

それでも、図を見たり説明を読んだりするだけでいくつか新しい考え方を身につけることができた。例えば、グラデーションスケールはある色に比率1234の濃さの黒を加えるよりも、1248の比率で加える方が自然になることや、正三角形を9等分したカラーシステムなど、いずれも実践に使用していきたいと思った。

現段階ですべての学習法を試す気にはなれないが、このような本があることを知り必要な時にまた手に取れるようにしておくだけでも大きいと感じた。デザイナーコミュニティなどの演習として取り入れるのも面白いかもしれない。

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「ペインティングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
有名な絵画の解説とともに、著者がその生徒たちに実践させている練習方法を紹介する。

上手なアーティストと自分の絵を比べると、今更ながらに技術にかなりの差があるのと感じ、その差を埋めるためにどのようなことをすればいいのかを知りたくて本書にたどり着いた。

本書では、構図、明度、色について説明しながら、有名な美術作品を紹介している、また、それとあわせて7つの練習の手法と実際の生徒たちのその練習の様子を紹介している。

  • モノクロの模写
  • モノクロのキャストペインティング
  • 明度を基調にした静物画
  • 暖色と寒色によるキャストペインティング
  • カラーの模写
  • カラーの静物画
  • 人物画

1つの絵を白黒に変換するときに、明暗をどのように解釈するかにも何通りものパターンがある。そのパターンを検討した上でベストなものを選択するという考えを今まで持っていなかったことに気づかされた。美大等でデッサンにかける時間を考えると当たり前なことかもしれないが、改めて、実際のものを見てそれを白黒に変化するデッサンの重要さを知ったので早速毎日の習慣に取り入れたい。

また、拭き取り技法、キャストペインティング、サイトサイズ法など、わからない用語がいくつかあった。おそらく美術を専門的に学んだ人にとっては常識だと思うので、しっかり調べて理解したいと思った。同じ著者の作品に「ドローイングレッスン」というのもあるので本書に続いて読んでみたい。

【楽天ブックス】「ペインティングレッスン」