「ローマ人の物語 終わりの始まり」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
紀元160年から210年頃のローマ帝国の様子を描く、ハドリアヌスの後、アントニヌス・ピウスからマルクス・アウレリウスに始まり、セヴェルスまでの時代である。

今回は「終わりの始まり」ということで、すでにローマ帝国の滅亡を知っている著者の立場から、それを予感させる動きに目を向けさせている。

マルクスの死の誤報に、皇帝を名乗って謀反を起こしたアヴィディウス・カシウスの言葉が特に印象的である。

哀れなローマ帝国よ。すでに持っている資産の保持しか頭にない者どもと、新たに資産家になることしか考えない者どもに苦しまされているのだ。哀れなマルクスよ。偉大なる徳の持ち主ではあるが、寛容な指導者という評判を欲するあまりに、貪欲な者どもが闊歩するのを許している。

指導者は常に寛容さと厳しさの間で揺れ動き、どの立場を取っても非難されることになるのだろう。

マルクス・アウレリウスにだけでなく、セヴェルスも含めて、皇帝たちの苦悩を見る中で、改めて国とは大きな組織でしかないことを認識させられる。つまり、会社やチームなどの運営のあらゆる面にも同じ問題が起こる可能性があり、彼らの苦悩の中に現代に活かせることはたくさんなるのだ。

時に指導者は、市民や後継者に理解されない政略でも、未来を考えて遂行しなければならないのである。そしてそのためには、その有効性を確信していなければならない。

どの皇帝の行動も理解できる部分があり、改めて大きな人を束ねることの難しさを感じた。

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「影響力の武器[第三飯]」ロバート・B・チャルディーニ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
社会心理学者の著者が、人から承諾を引き出すテクニックにはどんなものがあるのかを語る。

人が承諾をしやすいパターンを6つの章に分けて解説している。次の6つである。

  • 返報性
  • コミットメントと一貫性
  • 社会的証明
  • 好意
  • 権威
  • 希少性

いずれの例についても、それに関連するエピソード、研究結果だけでなく、防衛法についても語っている。つまり、本書を読むことによって、このパターンを利用するだけでなく、このパターンで利用されないようにすることもできるのである。

どのエピソードも面白かったが、個人的に印象的だったのは、玩具メーカーがクリスマス後の売上の落ち込みを防ぐためにたどり着いた戦略である。コミットメントと一貫性を利用したその戦略には感心するしかない。

ある意味、最後の章で紹介されていた次の読者からのエピソードに、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性の全ての要素が含まれている気がする。

スーパーマーケットにちょっとした試飲コーナーがありました。感じのいい女の子が飲み物を差し出してくれました。飲んでみると悪くありません。それからその飲み物の感想を聞かれました。「美味しい」と答えたら、四缶パックの購入を勧められました。… 購入は断りました。けれども、そのセールスウーマンは諦めませんでした。「一缶だけでもいかがでしょう?」と言いました。でも私も諦めませんでした。
そうしたら彼女は、その飲み物がブラジルからの輸入品で、今後のこのスーパーマーケットで手に入るかどうかはわからないと言いました。

さっそく自分の仕事や趣味や、毎日の人間関係のなかに取り入れられないか、考えてみようと思った。

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「SIMPLE RULES「仕事が早い人」はここまでシンプルに考える」ドナルド・サル/キャスリーン・アイゼンハート

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
単純なルールによって成功したさまざまな事例を紹介し、シンプルなルールの力とその方法を説明する。

イエズス会やミツバチの行動など、あらゆる組織の例をあげて、シンプルなルールが機能することを説明していく。中盤ではビジネスシーンを中心に成功した例を紹介しており、後半ではうつ病や婚活などプライベートでの例を紹介している。

そんななかでシンプルなルールを3つのカテゴリに分けている。

  • 境界線ルール
  • 優先順位ルール
  • 停止ルール

である。

シンプルなルール=簡単にできるルール

ではないということである。シンプルなルールだからこそ、外部から押し付けるのではなく、現場の経験や長い時間をかけて発展や試行錯誤が重要なのである。シンプルなルールをつくる基本として4つ挙げている

  • 「自分の経験」をとことん利用する
  • 「他社の経験」をうまく拝借する
  • 「科学的証拠」で巧みに補強する
  • 「話しあい」でレベルを上げる

である。

改めてシンプルなルールはを作ることで行動を起こしやすくなると気づいた。今までも無意識に作っているものなどあったが、さっそく意識して会社やチームのコミュニケーション指標や毎日の趣味にとりいれてみたいと思った。

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「四十九日のレシピ」伊吹有喜

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
亡くなった妻乙美(おとみ)は夫に四十九日までのタスクを与えていた。夫と別れて実家に戻ってきた娘の百合子(ゆりこ)と、妻の愉快な友人たちと共に熱田良平(あつたりょうへい)は四十九日の準備を始める。

失意の熱田良平(あつたりょうへい)の元に、井本(いもと)と名乗る19歳の女性が訪れることから物語は始まる。乙美(おとみ)が生前関わっていた互助活動で知り合った井本(いもと)に、自分が死んだ後にやるべきことを頼んでいたのだという。良平(りょうへい)へ井本(いもと)に促されて49日の準備を始め、そこに娘の百合子(ゆりこ)やお手伝いのハルミが加わることで少しずつ賑やかになっていくのである。

楽しい雰囲気の展開のなかに、人生の深みを感じさせてくれる。特に新鮮さを感じるのは乙美(おとみ)は良平(りょうへい)の後妻であり、娘の百合子(ゆりこ)も子供がいないということである。

子供を持つ人生だけがあるべき姿でない、そんな生き方の多様性を教えてくれる。結局人をうらやむのではなく自分の人生のなかでできることに楽しみを見出すことが、幸せになる近道なのだと改めて感じた。

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「The Song of Achilles」Madeline Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Patroclusは親の期待に応えることができず、知り合いの息子を誤って殺害したことで追放され、そこでAchillesと出会うのである。

PatroclusとAchillesが出会い、PatroclusはAchillesの美しさと強さに惹かれていく。やがて、スパルタの王Menelausの妻で絶世の美女であるHelenがトロイの王子パリスに連れ去られたことによりギリシャ軍とトロイ軍の間でトロイア戦争が始まる。AchillesとPatroclusはどちらもAchillesの母Thetisによって、トロイア戦争で自分達が死ぬと知らされながらも、栄誉のために参加を決意するのである。

常に強い存在感を示すのがAchillesの母で神に近い存在のThetisである。人間であるPatroclusを嫌うThetisは一方で息子であるAchillesの人生を常に見守り、その人生を良い方向に導こうとするのである。子離れできない母が神に近い存在だからなんともタチが悪い。

やがて、トロイア戦争はAgamemnonとAchillesの衝突によって、少しずつトロイア軍が優勢になっていく。Patroclusは自らのプライドを優先しようとしないAchillesのせいで多くの戦友が戦死していく様子に苛立ちを感じ始めるのである。

トロイア戦争の流れはの大きな流れは変わらない。しかし、AchillesとPatroclusの心の葛藤を中心に描かれている点が新しい。その一方で、それぞれの重要な戦いはなんともあっさり進む。たとえばAchillesとHectorとの戦いも例外ではない。

トロイア戦争という、神話の中でも有名な出来事で、結末も分かりきっている物語である。それにもかかわらず視点を変えるだけでここまで新鮮に面白く描けることに改めて驚かされた。

「銀行とデザイン デザインを企業文化に浸透させるために」金沢洋/金子直樹/堀佑子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
三井住友銀行(以下SMBC)のインハウスデザイナーが社内の文化を変えてデザインの強い組織にする過程を描く。

他の会社でインハウスデザイナーがどのようにデザインの文化を組織に広めていくのかを知りたくて本書にたどりついた。

世の中の変化に危機感を感じたSMBCは2016年にようやくインハウスデザイナーの採用を開始する。2017年までに入社した3人のデザイナーが本書の著者であり、「デザイナーは見た目を整える人」という考えを持っていた組織にデザインの文化を広げていく過程を説明している。

面白かったのはSMBCのデザインチームはデザイナーズミッションを掲げていることである。

  • 高いプレゼンス
  • デザイン経営の中心
  • 一流の人材、一流の品質
  • 力を発揮する環境は自ら創る

組織が大きくなればなるほど、単に会社やサービスのミッションやビジョンや中期目標だけだはなく、チームや部署などのミドルサイズのユニットにもミッションや目標、原則を掲げることが重要である。それによって毎日の作業に忙殺されるだけでなくチームとしてのまとまりを持って動けるのである。

デザインシステムの5原則として次のように定義している。

  • 一貫性
  • わかりやすさ
  • インタラクション
  • 社会的責任
  • クラフツマンシップ

一般的ではあるし、インタラクションという言葉がここに含まれるのは疑問ではあるが、その辺は組織次第である。人まねではなく組織にあった原則を考え抜くことが必要なのだろう

最後の章の「デザイナーとして意識していること」はどれも共感することばかりである。

  • インハウスデザイナーの強み
  • 本質的なデザインの成果
  • バランス感覚
  • あきらめない姿勢
  • マネジメント層への定期報告
  • デザイナー以外にデザインの価値を伝える
  • 考えが保守的な人にはユーザーの声を伝える
  • 「ふわっとした考え」はすぐに可視化

改めて単に上流から下流までのデザイン業務をこなすだけでなく、社内に文化を浸透させていくことの難しさと重要さを感じた。

また、本書の執筆に関わったSMBCのデザイナーたちがみんな、HCD-Net人間中心設計専門家資格を保持していることも印象的だった。資格自体を取得したとしても、知識や技術が極端に変わるわけではないが、それによって意気込みや安心感が周囲に伝わるなら、メリットはあるのだと感じた。

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「みんなではじめるデザイン批評」アーロン・イリザリー/アダム・コナー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長年デザイン批評に関わってきた著者がデザイン批評を機能させるための方法を語る。

デザインレビューを導入しようとしても、自己防衛に走る人が多くなかなかうまくいかないことが多い。そんな状態の解決策があるのではないかと思い本書に辿り着いた。

本書では、レビューで起こりがちな反応を次の3つに分類しており、必要なのは批評だけだと語る。

  • 反応型
  • 指示型
  • 批評

批評のベストプラクティスとして次の6つを挙げており、それぞれについて詳細に語る。

  • 質問で始める
  • フィルターを通す
  • 思い込みをしない
  • 押し付けない
  • 長所について話す
  • 視点について話す

繰り返し触れているのは、批評とは常に目的に対しての分析であるべきだということと、目的とは次の四つの要素から構成されるということである

  • ペルソナ
  • シナリオ
  • 目標
  • 原則

全体的に翻訳よくなかったのでわかりにくいが、目標は目的、原則は仮説デザインコンセプトという言葉のほうが日本のデザイン文化にしっくりくると感じた。

その他、批評でやってはいけないことなどについても触れている。

  • フィードバックを依頼したのに、聴かない
  • 賞賛や承認が欲しくてフィードバックを求める
  • フィードバックをまったく求めない

批評をする側のベストプラクティス

  • 目的を忘れない
  • 聴いて、考えてから反応する
  • 基本に戻る
  • 参加する

シャレットデザインスタジオなどの発想手法についても触れていたのでしっかり覚えておきたい。

全体的に、改めて批評を文化として取り入れるためには、良いファシリテーションが重要だと感じた。ファシリターターが覚えておくべき批評の4つのルールを挙げている。

  • 誰もが平等
  • 誰もが批評家
  • 問題解決を避ける
  • 変更についての決定を急がない

なかでも特に難しいのは、「問題解決を避ける」である。人間の脳は分析的思考と創造的思考を同時には行わないために、解決策を考え始めると分析的思考ができなくなるというのである。

デザイン・レビューに時間かける人は多く、デザイン・レビューは往々にして批評と同じと考えられている。だが、デザイン・レビューは批評ではない。デザイン・レビューはしばしば、プロセスを先に進める、あるいは実際に稼働させることを目指して、何らかの承認得るために計画される。

本書ではデザイン・レビューとデザイン批評を別物と考えており、どのように定義して分けて考えているのか曖昧だった。個人的には日本語で使われているデザイン・レビューとは必ずしも承認を求めるための場ではなく、本書の考え方はデザイン・レビューでも使えると感じた。ただ、建設的に批評の場と承認の場を混在すべきでないという考えは間違いないので、この辺を解決していきたい。

どの考えもさっそく実践に取り入れていきたい。また最後の章に扱いにくい人の対処方法があるので、必要になった時に戻ってきたい。

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「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ローマ帝国の道路、下水、医療、教育について語る。

ローマ帝国をここまで歴史に沿って説明してきたが、本書ではインフラに焦点をあてて解説している。本書のサブタイトルである「すべての道はローマに通ず」という言葉は、歴史に興味がない人でも聞いたことがあるぐらい有名な言葉で、それ自体がどれほどローマ帝国のインフラが優れていたかを語っていることだろう。

明らかになっているローマ帝国のインフラと著者の考察が、国に限らず、組織やコミュニティなど、多くの人が共同で活動する団体をどのように整備していくべきかを考える上で、新鮮な視点を提供してくれる。

自国の防衛という最も重要な目的を、異民族との往来を断つことによって実現するか、それとも、自国内の人々の往来を促進することによって実現するか。

同じ時代に東方で万里の長城という壁を作った人々がいる一方、人々のつながりをつくる道路と橋を作ることにこだわったローマ人の考え方が面白い。

インフラとは、経済力があるからやるのではなく、インフラを重要と考えるからやるのだ…

これまでローマ帝国の歴史を見てきて、リーダーのあるべき姿など様々なことを知った。そんななか、これまでの戦いの歴史と比較すると退屈に聞こえがちな「インフラ」という本書のテーマだが、予想以上に多くの学びがあった。

さて、ここまでしっかりとしたインフラを備えた国がどうやって滅びてしまったのか、そのきっかけは何だったのか。シリーズは次からローマ帝国の滅亡へと進んでいくので、さらに続きを読み進めるのが楽しみになった。

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「だれでもデザイン 未来をつくる教室」山中俊治

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインエンジニアの著者が中高生向けに開いたデザインの教室の様子を記録している。

著者自身プロダクトデザインを多く手がけていることもあってか、序盤はスケッチをすることの重要性を説明している。

MacbookAirのネジの向きや、初代マッキントッシュの形の話は興味深く、製造過程を意識するということの重要性を教えてもらった。また、アメリカと日本の食文化の違いで、スプーンの理想の形が変わるという話も、文化の違いを考えることが良いデザインを生み出すためには必要だと改めて教えてもらった。

全体的に学生多態に向けたデザインの授業であるが、そのなかでアイデアを発展させる方法を、デザインという作業に初めて触れる学生たちに教えているところが興味深い。僕自身仕事で、デザイン初心者に接する機会は多々あるので、その際にデザインを説明する言葉として、本書で出てくるいくつかの言葉を覚えておきたいと思った。

アイデアって時間がかかる。今日体験したように短時間で頭を活性化することも効果的ではありますが、ちょっと間をおいたりすることも大切です。
自分に自信がないと、どうしても「誰からも文句を言われないもの」を作ろうとしちゃうんだよね。でもそれは無難でつまらないものに至る道でしかない。
誰もが知っているようなかっこいい車は、大体ひとり、または2,3人でデザインしています。
完成前のデザインはいいところも悪いところもあるのが当たり前なんだけど、悪いところは目につきやすいからそればっかり集中していいところを殺してしまうんです。その結果、悪くはないけど、なんか普通だねってものになったり、なにがしたかったのかわからなくなっちゃう。

合間にいくつか著者が手がけたプロダクトの話が挿入されている。そんななか紹介されている、義足の女の子の走る姿が美しい。ただ単に役に立つものを作るだけではなく、使いたいと思えるもの、そして、ファッションのように仲間内で話題に上ったり、選ぶことを楽しめるものへと発展させるのがデザインの進化だと感じた。

なかなかWebやアプリなどのスクリーン上のデザインの世界にいると気づかない、デザインの視点を与えてくれた。

「アイデアの作り方」ジェームス・W・ヤング

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「インターセックス」帚木蓬生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
泌尿生殖器科を専門とする医師、秋野翔子(あきのしょうこ)はサンビーチ病院に転勤し、インターセックスの患者たちの診療をすることとなる。

読み終わるまで気づかなかったが2011年に続いて2回目の読了である。医師、秋野翔子の活動を通じて、男とも女とも言えないその中間の存在であるインターセックスの存在に目を向けさせてくれる。

そんななか、一括りにインターセックスという言葉でまとめられる存在のなかにも、男に寄った人、女に寄った人などさまざまな存在があることがわかる。興味深いのはインターセックスの治療方針に関するサンビーチ病院の院長である岸川(きしかわ)の考え方と翔子(しょうこ)の考え方の違いである。

岸川(きしかわ)は性器があいまいだと人格も曖昧なままになるので、幼い頃に手術によって男か女に近づけるべきという考えである一方、翔子(しょうこ)は男女の間で曖昧な存在も人間として受け入れて、命の危険がない限り本人の意思を尊重すべきというのである。

また思っていた以上に多くのインターセックスが世の中に存在するという事実にも驚かされた。

インターセックスの新生児は、千五百人にひとり、広義のインターセックス、つまり性器が曖昧な新生児は百人にひとり半と言われている。

多くの人が、ほとんど誰にもそれを知られずに生きていくのだろう。2011年に読んだ時も似たようなことを感じたということは、世の中があまり進歩していないという事なのかもしれないが、それでも最近LGBTなどの言葉が世間に認知され始め、少しずつ世の中は多様性を受け入れる方向へ動いていると感じている。やがてインターセックスの人々がもっとオープンに自由に生きられる日が来ればいいと感じた。

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「Quiet: The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking」Susan Cain


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
学校や企業は過渡に外交的な人向けに作られている。本書では自身も内向的という著者が、内向的な人の生き方、内向的な人との付き合い方などについて語る。

世の中には内向的な人と外交的な人がいるのに、現在、学校や会社は外交的な人向けに合うように作れられている。しかし、アメリカの公民権運動やGoogleの創業やニュートンやアインシュタインなどを例に、世の中の多くの転機になった出来事は、内向的な人によって作られたと語り、過渡に外交的な人にあった学校や会社の作り方に警鐘を鳴らす

そんななか、アップルの創業者でもあるスティーブ・ウォズニアックの言葉が印象的である。

And artists work best alone where they can control an invention's design without a lot of other people designing it for marketing or some other committee.
芸術家は、発明の設計に集中できる環境で1人で働いてこそ最高の仕事をする。どうやって売るかばかり考えている人や会議があってはそれができないのである。

組織などで生きる人は、声の大きくて中身のない意見に知らず知らずに振り回されることをどのように避けるべきか、そろそろ真剣に考えるべきだろう。

また、ローザ・パークスの行動がマーティン・ルーサー・キング・ジュニアによって公民権運動となったことや、アップルのスティーブ・ウォズニアックがスティーブ・ジョブズと一緒になったことによってパソコンの歴史を変えたことなどを挙げ、内向的な人は外交的な人とタッグを組むことで大きな力が発揮されると主張している。

そして、地理的な傾向についても触れ、中国、韓国、日本などのアジアの国はより内向的な人を育てる文化が出来上がっているという。

本書は、学生時代など外交的な人をもてはやす文化のなかで居場所を見出せなかった多くの人に勇気を与えるだろう。僕自身も、基本的に表面的な会話が嫌いで、内容の薄い大人数の会話がほとんど楽しめず、むしろ1対1の深い会話を楽しむところなど、読めば読むほど、外交的なふりのできる内向的な人間だということに気付かされた。

また、子育てという面においても多くの人が知るべきだと感じた。特に、親は自分の考えを子供に押し付けがちである。外交的な親が、内向的な親にその生き方を知らず知らずのうちに押し付けてしまうほど不幸なことはないだろう。

子供を育てる親、会社の環境を作る経営者など、多くの人に必須の本と言える。

和訳版はこちら。

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「赤と青とエスキース」青山美智子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
メルボルンに交換留学生として訪れたレイは、同じくメルボルンに滞在していた日本人ブーは期間限定の恋に落ちる。

先日読んだ「お探し物は図書室まで」の物語のやさしさと深みのバランスの見事さに魅了されて、著者の作品をすべて読んでみたいと思い本書にたどり着いた。

5編から成る短編集という形をとっているが、少しずつ物語に繋がりがあり、常に物語中の画家が描いたエスキースが存在している。そして、アートに関心を持ちながら生きていく人々の人生の様子が見える。

そんななかでも印象的だったのが、額縁工房の青年を扱った第二章である。額縁という絵画においてはサポート役の存在の大きさに目を向けてくれる。額縁を作る人たちが、絵に対して合う額を選ぶことを結婚と表現するところが面白い。

心を込めて取り組ませていただくよ完璧な結婚となるように

必ずしも若い男女だけに焦点をあてているわけでもなく、中年や晩年の人たちの迷いながらも信念を持った生き方を見せてくれる。そして、合わせて美術のすばらしさと言葉の美しさを感じられるだろう。

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「「辞める人、ぶら下がる人、潰れる人」さて、どうする?」上村紀夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
産業医の著者が組織の病を取り除く方法を解説する。

過去所属していた会社で、最初はみんな楽しげに働いていたのに、数年経つとほとんどすべての人がギスギスしているという状態があった、そんな組織の雰囲気改善のヒントがあるのではないかと思い本書に辿り着いた。

本書では会社が取り組むべき個人活性を次の3つの要素で捉えている。

  • 働きがい
  • 働きやすさ
  • 心身コンディション

そして、離職を次の3につに分類して、必ずしもすべての離職が悪いわけではないと強調している。

  • 積極的離職
  • 消極的離職
  • 離脱

そもそも離職よりも深刻な状態として、「消極的定着」の存在を挙げている。つまり転職するほどの能力がないので転職できないが、会社の不満を言い続けて会社に留まる人間のことである。

また、本書では会社の人材を5つのカテゴリーに分けて考えている。

  • ハイポテンシャル人材
  • 立ち上がり人材
  • 優秀人材
  • 普通人材
  • ぶら下がり人材

印象的だったのは、優秀人材の扱いである。優秀人材はどちらにせよ転職していくのは避けられないので、優秀人材の離職を防ぐためにコストを無闇にかけることは薦めていない。会社として優先すべきはハイポテンシャルな人材なのである。

最後に、定着スコアと従業員満足度を指標として、組織の状態を4つに分けて説明している。

  • パラダイス 定着スコアも従業員満足度も高い
  • ステップ 定着スコアは低いが、従業員満足度は高い
  • ぶらさがり 定着スコアは高いが、従業員満足度は低い
  • 荒野 定着スコアも従業員満足度も低い

必ずしもパラダイスだけが正解というわけではなく、組織によってはステップ型を目指すという方向性もありだろう。

組織を作りかたを、人材や離職のパターンなどの指標をともに体系的にまとめているので、組織づくりの指標となるだろう。

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「November 9」Colleen Hoover

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2年前の11月9日に父の家に滞在中に、大やけどを負って女優のキャリアを失ったFallonは今まさに新たな人生に踏み出そうとしていた。そんなとき、Benという火傷の跡のの残る顔を気にしないで好きになってくれる男性と出会う。

出会った瞬間に恋に落ちたFallonとBenだったが、Fallonがブロードウェイを目指して翌日からニューヨークに引っ越すこととなっていた。Fallonの母の助言、23歳になるまでは他人に振り回されずに自分を見つける、という信念から、お互いが23歳になるまで、毎年11月9日に同じ場所で1度だけ会うことを約束するのである。物語は1年おきの11月9日の二人の様子を描くことで展開していく。

FallonとBenの視点で交互に描かれていく。序盤は出会いを中心に描かれる。火傷を負って女優としてのキャリアを諦めざるを得なかったにも関わらず、新しい道を踏み出そうとしているFallonと、またそれを後押ししようとするBenのそれぞれの人生を語る言葉に印象的である。

You'll never be able to find yourself, if you're lost in someone else.
人に夢中になっているうちは、自分を理解することはできない。
If people are laughing at you, it means you're putting yourself out there to be laugh about. Not enough people have the courage to even take that step.
人があなたを笑っているということは、自ら笑われる場所に立っていることで、そんな勇気を持った人は多くはない。
Loving someone means accepting all the things and people that person loves, too.
人を愛するということは、その人が愛するすべてを受け入れることです。

後半は、よりBenの視点から二人の出会いが描かれ、前半に散りばめられた伏線が回収されていく。少しずつBen自身のそれまでの苦悩の人生が明らかになっていく。

She knew I would be the one to find her. She knew what this would do to me and still do it…
俺が見つけるってわかっていただろう。それが俺にとってどういうことか、それを知っててなお決行したんだ…

なんといっても20代ですでに一生抱えていかなければならない傷を抱えた二人の物語なので、前向きに生きるための強さを与えてくれる。常にFallonとBenの視点で交互に物語を展開させながらも、感情表現の重点がFallonから少しずつBenに移っていくという物語展開の美しさも感じられる。軽く読み始められるが後半に進むにしたがって深みや生きる強さなどを感じさせてくれる作品である。

「独裁力」川淵三郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

Jリーグの創設に関わっただけでなく、日本バスケットボール界の問題まで解決した著者が、その考え方を語る。

先日読んだ「日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由」で、その「リーダーは独裁者でいい」という考え方に惹かれ、組織を動かすためのヒントが得られることを期待して手に取った。

前半は、日本バスケットボール界の問題やそれに関わり始めた過程と、そのなかでやったことなどが描かれている。正直バスケットボール界にはあまり関心がなかったが、どのスポーツでも同じようなことが起こっているのだと感じた。つまり、みんなそのスポーツを盛り上げようとしているのだが、その指向性の違いから混乱が生じたり諍いが生じて結果的にそのスポーツの発展を阻害しているのだ。

そして後半の「リーダーは独裁者たれ」という章で、リーダーたる考え方や、影響を与えた出来事、もしくはお手本となる人物やその行動を語っている。そのなかで、ハンス・オフトジーコイビチャ・オシム岡田武史など、数々の日本代表監督についても語っている。著者も最初からリーダーシップを持っていたわけではなく、たくさんの人との出会いから学んで身につけていったものだということがわかる。

印象的だったのは次の項目である。

  • リーダーには理論武装が必要
  • インパクトのある言葉で「発信力」を持たせる
  • リーダーは人に好かれなくていい
  • ノイジー・マイノリティーに引きずられるな
  • 私利私欲がない独裁者であれ

特に発信力については、あまり今まで意識して取り組んでこなかったことなので、ぜひ今後の活動として考えてみたいと思った。改めてリーダー像というものを考え直すきっかけとなった。

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「日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由」葦原一正

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スポーツビジネスコンサルタントの著者が日本のスポーツビジネスを成功させるための考えを語る。

サッカーなどのスポーツを眼にする機会が多い中で、スポーツという、人間の生存に必要不可欠とはいえない分野をビジネスにするのは想像以上に難しいだろう。そこにビジネスを軌道に乗せるヒントがあるのではないかと思って手に取った。

本書ではスポーツビジネスに必要なものを次の5つに分けて解説している。

  • Governance
  • Professional
  • Arena
  • Global
  • Engagement

である。

興味深いのはGovernanceの章である。Governanceとはつまり意思決定のプロセスのことで、それを明確にすることが重要性を説いている。そして、スポーツなだけに強いチームを作ることに捉われがちだが、著者は「勝利と経営は別物」と語る。

動員数は大事な要素の1つではあるが、それがすべてではなく、もっと大事なものが存在する。

次のProfessionalの章ではプロの定義や著者が出会ってきたプロとしてのお手本のような振る舞いを挙げている。プロリーグの定義という基本的なことすら自分がわかってないことに気づかされた。

Arenaの章ではチームの専用のアリーナやスタジアムを保有することのメリットを語っている。スタジアムもそのスポーツ専用のスタジアムと、維持費の回収を考えて、他の用途にも使えるようにしたスタジアムでは、ビジネスとしてスポーツを展開する上ではいろいろ異なることがあることがわかった。スタジアムやアリーナの構造や席の配置も、何を目的に応じて考え抜かれたデザインであることを感じた。

全体的に著者はバスケットボールリーグに大きく関わってきたが、Jリーグやプロ野球など、より認知されている例を交えて解説している点がありがたい。その過程で、必ずしもJリーグのように昇降格がある開放型モデルが必ずしも良いとはいえないことも知った。開放型は年俸の高騰化を招き経営に負担を与える。つまりプロ野球のような閉鎖型モデルにもリーグ運営目線で考えるとメリットがあるのである。

普段、なにげなく見ているスポーツの裏に、多くの知らない事情が溢れていることに気づかされた。そんななか特に印象的だったのは、Jリーグの創設だけでなくBリーグにも関わった川淵三郎の言葉である。

リーダーは時に独裁者でいい。自らが率いる組織を正しく発展させるための理念を持ち、そのための手段が私利私欲によるものでなければ、独裁的に権限を発動させてもいい。

これは僕自身、スポーツに限らず、組織などを見て感じる悩みに見事に答えている。合意ばかりを重視してスピードが遅くなったり当たり障りのない決断しかできない組織は決して大きなことを成し遂げることはできない。独裁的な権限を与えることも考えてみるべきだろう。

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「ブランディングデザインの教科書」西澤明洋

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングデザイナーの著者がブランディングデザインについて語る。

最近BXデザイナーという言葉が広がりを見せている。BXとはブランドエクスペリエンスのことで、つまりブランド体験をデザインする事である。これまでデザイナーが包括してきた領域が、より専門性を持って捉えられるようになったのである。これは世の中がその分野により高いレベルを求めるようになった証拠でもある。僕自身もデザイナーとしてこの分野の知識や経験を積み上げる一つの流れとして本書にたどり着いた。

多くのブランディング関連の書籍や授業と同じように、本書もブランディングとは何か、という説明から入っている。本書では

ブランディング=差異化

としている。正直これは、僕の思うブランディングの本質の捉え方とは若干異なっていたのだが、その次のマーケティングと比較して説明した表現のほうがしっくりきた。それは、

マーケティング ≒ 売るゲーム
ブランディング ≒ 伝言ゲーム

というものである。これこそまさにブランディングの重要な側面を表していると言える。人の心にどのような印象を刷り込むか、そしてそれによってどうやって人の間を浸透させるか、その部分をデザインすることこそブランディングなのだろう。

また、本書ではブランディングに必要なものとして次の3つを挙げている点である。

トップの熱い思い
良いモノ(サービス)
コミュニケーションチーム

特に一つ目は常々感じる事で、どれほど必要性を訴えても、トップの熱い思いがなければブランディングは進まないのである。

また本書では、ブランディングデザインを3つの階層で実施することの重要性を説いている。

マネジメントのデザイン
コミュニケーションのデザイン
コンテンツのデザイン

コミュニケーションとコンテンツの重要性は誰でも思いつくが、マネジメントも含めて考えている点が新鮮である。つまり、ブランディングの成功には、販路変更やビジネス戦略の刷新なども含めて考える必要があるのだ。

また、後半ではフォーカスRPCDという独自の手法で、実際にブランディングデザインの進め方を語っている。Resarch, Plan, Check, Doであり広義のデザインを日常的に行なっている人にとっては、新鮮な内容ではないかもしれないが、改めて、ブランディングデザインの流れを整理するよい機会となるだろう。

全体的には、僕自身が思うブランディングの考えと若干異なるところはあれど、良いところや伝えやすい表現などはぜひ使わせてもらおうと思った。

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「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」原田曜平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Z世代について解説する。

Z世代とは年齢でいうと現在(本書の出版は2020年)25歳より下の世代のことである。混同しやすいのがゆとり世代であるが、ゆとり世代はガラケー第一世代、つまり思春期に携帯電話を持ち始めた最初の世代である。一方Z世代は、スマホ第一世代である。

mixiなどのSNSに振り回されたゆとり世代は「mixi八分」「KY」などの言葉からも想像できるように、出る杭にならないように同調圧力を強く感じているのだそうだ。一方で、LINEやインスタグラム、ブロック機能など、より洗練されたSNS時代に育ったZ世代は、限られた人とだけ繋がって、そのなかで自分をアピールする、同調思考、発信意識が強いという。

インスタグラムのストーリーズなどのように一定時間で消えてしまうものが普及したのはゆとり世代からZ世代に移るに当たって当然の流れと言えるだろう。また、ゆとり世代の少子化からさらに少子化が進んでいるので、大事に育てられ、その結果自意識が強く、いじりが通用しない傾向があるというから上の世代は気をつけなければいけない。

上の世代の僕らから見て、結局どうい風に接すればいいのか、どのようなサービスや商品を提供すればZ世代に受けるのか、というところが気になるところだろうが、その他の傾向として印象的だったのはは、ジェンダーレス意識の高さ、やらせに敏感という2点だろう。

LGBTQへの意識や美しい男性グループなどを見ながら育ったためにジェンダーレスの考え方が進んでいるのだ。「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」などという発言をしてしまえば一気に信頼を失うかもしれない。

またSNS時代に育ったためにやらせに非常に敏感で、美しすぎる写真や構図はやらせと認識し、むしろどこかにミスや崩れがあったほうが真実として認識する傾向があるという。

Z世代だけでなくゆとり世代についても把握するよい機会となった。さっそく下の世代に接するときの行動を見直したいと思った。

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「シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語」ジェリー・カプラン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

シリコンバレー・アドベンチャー ザ・起業物語


ペン型のコンピューターのアイデアを思いついた、起業して実際に製品を作ることを決意する。

先日読んだ「社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由」でその著者が、失敗したことを本に遺すきっかけとなったのが本書ということで、たどり着いた。

著者はペン・コンピューターを実現するためにGOという会社を立ち上げる。しかしすぐにIBM、アップルやマイクロソフト、AT&Tなどの名だたるIT起業が探りを入れたり、そのアイデアから利益を得ようと近づいてくるのである。

登場人物が多く、法律的な話も多く入ってくるのでなかなか細かいやりとりまではわからないが、当時のIT業界の勢力図はわかるだろう。IBMはすでに動きの鈍い大企業になっていたことが読み取れる。アップルは残念ながらスティーブ・ジョブズのいない期間なので、ジョン・スカリーの記述が多いが、それでもアップルは、当時から良いものを良いとする企業だということがわかる。また、ビル・ゲイツのマイクロソフトは、当時から、著作権に引っかからない範囲で良いものを模倣し、強い企業を作っていくというスタイルだったことが伝わってくる。

中盤からは「1兆ドルコーチ」の本でも有名なビル・キャンベルがやがてペン・コンピューターのCEOになる。本書から垣間見えるわずかなその言動からも、ビル・キャンベルが情熱的で熱いリーダーだったことがわかる。

資金調達だけでなく、契約書の細かい一字一句のすり合わせなど、経営者はこんなにも多くの事柄に対応しなければならないのかと改めて驚かされた。それでも、こんな風にすべてを捧げても惜しくないと思えるような、情熱を注げる仕事に人生を費やすことを幸せだろうと感じた。

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「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」坪田信貴

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

学年ビリのさやかが慶應大学に合格するまでを描く。

ビリギャルとして映画にもなった有名な本書だが、あれだけ有名になるにはそれなりに学ぶものがあるのだろうと思い手に取った

物語は偏差値30以下、学年ビリだったさやかが、塾にやってきて塾講師の著者と出会ったことから始まる。塾講師である著者が、さやかと真摯に向き合った結果、さやかは学びの面白さに気づき慶應大学を目指し始めるのである。そして、以降はさやかの成績が少しずつ上がっていく様子を描いていく。その過程で学びのテクニックや、暖かい友達や家族なども紹介している

印象的だったのは塾の先生という存在である。僕自身は学習塾というものを利用したことがなく、どちらかというと問題数をこなす習慣をつけるためのものだと思っていた。しかし、子供と向き合って、そのやる気を引き出す優れた先生もいるのだと知った。

全体的には、周囲の人間の暖かさが際立つ物語である。先生の受験に対する技術や、教えることに向き合う真摯な姿勢はもちろんだが、もっとも印象的だったのは母親の子供を信じる姿勢である。子供を信じて向き合うことがどれほど大切か、改めて感じさせられた。

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