「不祥事」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
花咲舞と相馬は事務管理部ループ調査役。問題を抱える支店を訪問し指導することで、解決に導くのが仕事である。本作品はそんな2人の仕事の様子を描いている。
本作品も「オレたちバブル入行組」と同様に銀行を舞台とした物語。多少、問題の発生する頻度には誇張があるだろうが、著者の経歴を考慮するとかなり現実の銀行内の出来事を忠実に描いているのであろう。
そして、本作品では相馬と花咲舞が指導役として支店を巡ることから、それぞれの支店にそれぞれの物語が描かれる。雰囲気のいい支店、悪い支店。土地柄忙しい支店とそうでない支店。物語はもちろん取引先や窓口を訪れる顧客との間でも起きる。融資をめぐった取引先との人間物語。そして銀行という組織の中に蔓延する出世競争と派閥間の内部闘争などである。

ここには人を動かし、時に狂わせるいくつかの物差しが同時に存在してる。銀行の利益という物差し、そして派閥や個人的な私利私欲という物差し、だけど私たち個人が幸せになれるか、本当にやりたい仕事ができるかという物差しはいつだって後回し

銀行という古い体質の組織に嫌気を感じながらも、その正義感とその歯に衣着せぬ花咲舞(はなさきまい)の物言いが最終的には物語に痛快な空気を漂わせている。実際に勤めなければわからないであろう、一つの業種の中を読者にわかりやすくリアルに描いたという点だけでなく、物語のテンポも含めて読みやすくほどよくスリリングで非常にバランスの取れた作品だと感じた。
ちなみに本作品の主人公的役割を担う花咲舞(はなさきまい)のような、気が強くても、賢くそして優しい女性はなんと魅力的に映ることだろう。彼女の登場が本作品だけに限らないことを望む。


引当金(ひきあてきん)
引当金とは、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合に、貸借対照表上に積み立てられる金額。(exBuzzwords用語解説「引当金とは」
債務者区分
金融機関が融資先を債務の返済状態に応じて分類している区分で、正常先、要注意先、破たん懸念先、実質破たん先、破たん先の5段階ある。(用語集:マネー・経済「債務者区分」

【楽天ブックス】「不祥事」

「子どもたちは夜と遊ぶ」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
始まりは論文コンクールでもっとも高い評価を受けた匿名の応募i(アイ)の登場だった。最優秀賞を逃した、狐塚(こづか)、浅葱(あさぎ)とその友人たちの間で起こった出来事を描く。
昨年衝撃を受けた作品の一つである「冷たい校舎の時は止まる」の作者であることから、同じような強いインパクトを求めて本作品を手にとった。本作品も数人の学生たちとそこに関わる大人たちを描いた物語であり、人間関係を形成する引力である、人の気持ちについて非常にシビアな描写がいくつも見られる。その悲しいほどに客観的な人間関係の表現が、辻村深月作品に独特な雰囲気を持たせているような気がする。

それを見たら、駄目でした。ああ、この人は本当はこんなに弱くてかっこ悪いんだ。そう思ったら駄目でした。私、彼を好きになってしまった。そばにいたいと思ってしまった。
彼女が泣けば泣くほど、気持ちはどんどん頑なになっていく。所詮、俺と真剣に関わる気持ちなんかない癖に。その必死な声の裏側には、帰ることのできる居場所を用意しているくせに。

そんな中、指導役である秋山教授の言葉はどれも非常に印象的である。

恋と愛の違いはなんでしょう。昔「恋は落ちるもので、愛は陥るものだ」と答えた女性がいました。彼女が言っていたのは、どういう意味だったのかと…。
目の届く範囲の人々の幸せしか、僕には関心がない。難民の飢餓、傷ましい動物実験、世界のどこかで起こる戦争。僕はそれらを率先して見ることは絶対にしない。

序盤から感じ続けていた不思議な違和感。それは終盤になって一つの事実になる。そしてその事実は大きな惨劇を生む。

どうして誰も、最悪の状態を考えてそれに向けて準備しないのだろう。今からそれを考えなければ、到底耐えられないのに…

物語の面白さを損なわない範囲で計算尽くされた驚きの展開。この衝撃は癖になる。また間にちりばめられたこばなしも魅力的。特に寄生蜂の話と、「かごめかごめ」の解釈にはぞっとさせられた。
どうやらしばらく辻村作品のチェックを怠ることはできなくなったようだ。


野口雨情(のぐちうじょう)
詩人、童謡・民謡作詞家。「赤い靴」「しゃぼん玉」「七つの子」などが有名。(Wikipedia「野口雨情」
参考サイト
Herend ヘレンド
寄生バチ

【楽天ブックス】「子どもたちは夜と遊ぶ(上)」「子どもたちは夜と遊ぶ(下)」

「さまよう刃」東野圭吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長峰(ながみね)の娘、絵摩(えま)は若者3人組に誘拐され殺された。長峰(ながみね)はタレコミによって知ることができた犯人のうちの一人の部屋で、娘が強姦されている映像を映したビデオを見つけ強い怒りを覚える。
読みはじめてすぐに違和感を覚える。なんという東野圭吾らしからぬストーリーなのだろうか、と。東野圭吾作品は往々にして、物語が物語だけに完結してしまい、人生に生かせそうなテーマや教訓含んでいることはほとんどない。それが僕の東野作品に対する不満だったのだが、本作品は序盤から社会派ミステリーの雰囲気をかもし出しており、、その一方で、少年法に守られた極悪非道な犯罪者に復讐するという、そこらじゅうで使い古された物語である。「社会派ミステリー」という点も「使い古された」という点も僕の中の東野圭吾イメージとかけ離れているのだ。
さて、物語の大半は、長峰(ながみね)が逃亡した主犯格の少年を探すという段階で展開する。そして警察は復讐を阻止するために、長峰(ながみね)と逃亡している少年を探す。長峰(ながみね)の行動に理解を示しながらもその復讐を阻止するための捜査に加わざるを得ない警察関係者、そして、人を殺すことはよくないとわかっていながらも、警察に素直に協力できない峰崎(みねざき)の周囲の人たちの心情がよく描かれている。

自分たちは一体なんなのだろう。法を犯したものたちを捕まえることが仕事ではある。それによって悪を滅ぼしていける、という建前になっている。だがこんなことで悪は滅びるのか。彼らは知っているのではないか。罪を犯したところで、何からも報復されないことを。国家が彼らを守ってくれることを。

少年法がどうあるべきか、などという著者なりの答えは残念ながら示されていない。僕らに問題を投げかけているだけだ。

警察ってのは法律を犯した人間を捕まえているだけだ。市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとするのは法律のほうだ。

「さまよう刃(やいば)」という本作品のタイトル。それは最初、銃を持って主犯格の少年を探して放浪する長峰(ながみね)を指す言葉だと思っていたが終盤になってその本当の意味がわかる…。
さて、全体的な感想はというと上でも書いたように、東野作品に対する予想は裏切られたが、とても意義の有る時間だったと思う。ただやはり、社会派ミステリーを描くならやはり現実の事件なども引用してその問題の深刻さ、フィクションの中のノンフィクションをもっと読者に訴えて欲しかったと感じた。
とはいえ、せっかく著者によって問題を投げかけてもらったのだから少し考えてみた。
このように少年法の問題点を扱った物語は世の中に多々存在するし、多くの人が少年法に関する議論を一度は耳にしたことだあるだろう。しかし、少年法によって守られた犯罪者たちがその後更生したのか、ということを世の中のいったいどれほどの人が知っているのだろうか。それを知らずして少年法についての考えをまとめることなどできない…しかし、少年法で守られているがゆえにそれさえ僕らには知ることができないのだ。
少年法の是非を議論するための素材を手に入れることを、少年法が許していないのである。実名報道は許されるはずもないが、せめて、彼らがその後どんな人生を送ったのかだけでももっとオープンにすべきなのではないだろうか。

【楽天ブックス】「さまよう刃」

「モビィ・ドール」熊谷達也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
太平洋に浮かぶ巌倉島ではイルカウォッチングを観光の目玉として成り立っていた。ところがシャチの出現を期に、島の周囲にいるイルカが奇妙な行動を見せる。動物行動学者の比嘉涼子(ひがりょうこ)は問題の解決に動き始める。
太平洋の小さな島で起こった問題を島民が一丸となって解決する物語、と一言で言ってしまえばそれまでだが、その過程で描かれるイルカやシャチの生態に対する説明に好感が持てる。島で起こった謎のイルカの行動を解決するために奔走する比嘉涼子を描くとともに、イルカなどの人気のある動物を観光の目玉として扱う人間の身勝手さにも当然のように触れている。

人間と一緒に遊べてイルカも楽しそうだなんて、それって、人間側の勝手な思い込みじゃないですか。もしかしたら、イルカたちにとってはすごく迷惑なことなのかもしれない。

そして、しだいに話の中心はイルカからシャチへと移っていく。イルカの捕食者として序盤ではその獰猛なイメージで描かれたシャチは、終盤へ向かうに従い、その知的で人間と同じように複雑な感情を持った面をさらけ出していく。そして、そんな物語の流れの中で、世界を騒がせている環境保護団体とそれに対する主張などもしっかりとストーリーの中に取り込んでおり、非常にバランスの取れた作品である。
熊谷達也という作家は最初に読んだ「迎え火の山」という作品で少々失望し、今年になって「邂逅の森」と本作品を読んで少し見方が変わった。描きたい物語に対する徹底的な下調べにこの作者の姿勢が見える。
とりあえず本作品を読んで、御蔵島へイルカウォッチングに行きたくなった。ジョンストン海峡へオルカウォッチングにも。

ジョンストン海峡
カナダで200頭以上のシャチが住み着いている場所。
ヤナムン
琉球用語で「悪霊」の
参考サイト
イルカセラピーと野生イルカの保護
「Wikipedia「シャチ」
御蔵島村公式ホームページ
ジョンストン海峡・オルカの海
クジラ14頭座礁〜座礁から海へ帰すまでの11日間〜
Wikipedia「トド」

【楽天ブックス】「モビィ・ドール」

「楽園」宮部みゆき

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前畑滋子(まえはたしげこ)のもとに、息子を交通事故で亡くした女性が訪ねてくる。その息子がスケッチブックに残した稚拙な絵は、本来その息子、等(ひとし)が知るはずのない事件を描いたものだった。
読み始めてすぐに、これは「当たり」だと思った。「蒲生邸事件」「魔術はささやく」「龍は眠る」など、<宮部みゆきが超能力者を扱った作品にハズレはないからである。 本作品の大部分で目線の主を務める前畑滋子は「模倣犯」で活躍したジャーナリストである。そのため、本作品でもしばしば「模倣犯」の連続殺人事件に触れており、その事件が関係者の心に作った傷の深さが伝えられる。そういう意味ではもちろん「模倣犯」を読んでこそ本作品は最大限に楽しめる作品といえるだろう。 滋子は遺された絵の謎を解くため、絵に描かれた事件の真相を追い始める。その絵に描かれた事件とは、両親が娘を殺して家の床下に埋めたまま16年の月日を過ごして時効を迎えるというものである。なぜ両親は娘を殺したのか、どうして永遠に心の中に封印せずに、自白せずにいられなかたのしたのか、そして、等(ひとし)はなぜその事実を絵に描くことができたのか。 そして前畑滋子(まえはたしげこ)の想像力の豊かさは本作品でも健在。その想像力の鋭さ(もちろんそれは実際には著者である宮部みゆきの想像力なのだが)は読者に冷気でで包み込まれたような錯覚を与えるかもしれない。事実僕は、何度も気温が下がるような背筋の寒さを感じた。

あたしはこの家にいるの。この家で、ずっと死んでいるのよ、あたし。

途中、等(ひとし)の美術の先生の語る話が印象的である。。小学生には母親の絵を客観的に描くことができず、中学生は客観的に描きすぎるという内容である。「模倣犯」でも、家の設計からその家主の心理を分析する専門家がいて、その内容は今でも強烈に心に残っている、人の作り出すもの一つ一つにその人の心理が色濃く反映されるのだと認識する瞬間である。
真実が明らかになるにつれ、別の問いかけを突きつけられる。ではどうすればよかったのだろう?、悲劇を避ける方法があったのだろうか?と。

家族はどうすればよろしいのです?そんな出来損ないなど放っておけ。切り捨ててしまえ。そうおっしゃるのですか?

そこに答えはない。宮部みゆきも答えを用意していない。僕らは受け入れるしかないのだ。「これが現実だ」と。それはつまり、誰かが幸せになるためには、誰かがその周囲で犠牲になっているということだ。現実に失望しながらも心の奥の理想を捨てきれない僕らに突きつけてくる。「現実というのはそういうものなのだ、みんな幸せになどなれないのだ」と。

誰かを切り捨てなければ、排除しなければ、得ることのできない幸福がある。

宮部みゆきの刃(やいば)は錆びてはいなかった。彼女がつきつけてくるそんな現実に久しぶりに興奮すら覚えた。僕らが見ていない現実。僕らが理想という言葉で覆い隠そうとしている現実。僕らが必死で目をそらそうとする現実。そういうものをしっかりと突きつけてくるのだ。知らないほうが幸せに生きられるのかもしれないことまで。これこそが宮部みゆきの世界と言えるだろう。
最終的に等(ひとし)の描いた絵についていくつか解決されていない部分があるような気がするが、その辺は別の読者の解説を待ちたいところである。
こうして感想を書いている今僕は、中学生の女の子の視線を背中に感じている。トイレに行くのさえ怖く感じたのは何年ぶりだろう。

真実は、必ずしも人を癒さない。

大宅文庫
ジャーナリスト大宅壮一が亡くなった翌年の1971年、膨大な雑誌のコレクションを基礎として作られた私立図書館。(Wikipedia「大宅壮一文庫」

【楽天ブックス】「楽園(上)」「楽園(下)」

「鎮火報」日明恩

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
新米消防士の大山雄大(おおやまたけひろ)を描いた作品。
まずは雄大の仕事に対する情熱のなさにどこか共感する。「人を救うことが俺の使命だ」などと昔の英雄のような台詞を言わないどころか、消防署を見学に来る小学生たちに説明するのも面倒だし、愛想笑いを浮かべるのもつらい、と言い切ってしまうところが
火事の現場を見て「あ〜行きたくね〜」と素直に考えるところも素敵である。なぜそれが素敵に思えるのかというと、雄大(たけひろ)のそんな非情熱的な台詞の数々の裏にひそむ正義が匂いが漂ってくるからだろう。この類の人間が「根性」とか「情熱」という言葉や、かいた汗の量でその人の気持ちの大きさを計ることを嫌うのは、それが結果に直結しないことを知っているからなのだ。「いまどきの若いやつら」と一言で片付けて理解しようとしない人たちにはぜひこの物語はいいかもしれない。
さて、そんな少し現代向きな消防士の幾多の救出劇を描いた物語になるかと思いきや、最初に雄大が出動した現場で一気に話は深いテーマへと掘り下げられていく。不法滞在をする外国人たちを狙った連続放火事件を中心に展開し、入国管理局と、不法滞在者を利用する日本の企業や暴力団の関係が描かれるからだ。

間違いなく違法に日本にいる外国人は悪い。だとしても、違法でも真面目に働いて金を貰っている連中まで罪人扱いできるか?だいたい、雇う日本人がいるから、奴らはいるんだろう?悪いのは奴らだけなのか?

「善」と「悪」。世の中の出来事はそんなわずか2つのカテゴリーに簡単に分類できる物事ばかりではない。だからこそ世の中には争いごとが耐えないのだろう。
そして後半に進むにしたがって、雄大(たけひろ)の周囲にいるつらい過去を背負って生きている人たちに物語の焦点が移っていく。自分の体を痛めつけるようにして働く元消防士の仁藤(にとう)もそんな一人である。仁藤(にとう)が雄大(たけひろ)に言ったこんな言葉が心に残る。

過度な正義には理由がある。

誰しも心の中に良心を持っている(そう僕は思いたい)。そしてそれは時に正義の心へと変わる。しかし、正義に対する異常な執着は、悲惨な過去なくしては形成され得ないということだ。そして押さないときに母親を失った、雄大(たけひろ)の親友の裕二(ゆうじ)の言葉も強烈だった。

既存の常識や知識を基に自分で考えて自分で物事を決める。そうできるように学ばされていると俺は思っている。だから死だって、その人に決める権利があると思う。もしも生きろというのなら、言った奴は責任を取るべきじゃないのか?人間には生きる権利がある。ならば死ぬ権利もあるはずだ。尊厳ある死って、俺はあると思う。

間違いなく今年ここまで読んだ三十数冊の中で最高の作品である。


カルバドス
フランス・ノルマンディー地方のカルバドスで作られる、リンゴ酒を蒸留したアップルブランデーのこと。

【楽天ブックス】「鎮火報」

「オレたちバブル入行組」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本が好景気に沸いていた1988年。大手銀行への入社という狭き門を突破した半沢(はんざわ)。それから十数年、融資課長となった半沢(はんざわ)の支店では、とある企業に5億円の融資をした承認した矢先にその企業が倒産した。銀行内部の軋轢と債権回収の裏側を描く。
冒頭の内定確定までのエピソードは、バブル期という時代と大不況といわれる現在との違いを強く印象付ける。当時、銀行とは入社することができたらその家族も含めて一生安泰といわれた時代である。それが、バブルの崩壊を経て大きく変わる、半沢(はんざわ)はその大きな変化に翻弄されたバブル期入社のエリートの一人である。

銀行不倒神話は過去のものとなり、赤字になれば銀行もまた淘汰される時代になったのである。銀行はもはや特別な組織ではなく、もう儲からなければ当然のように潰れるフツーの会社になった。

銀行の内部が詳細に描かれている。融資の決定、債権の回収。そして極めつけは社内の人間関係である。国に守られている企業という過去ゆえに、その内部は効率や実力主義とは無縁で、人脈や人事権を持っている人間が社内のもっとも恐れられる存在である。この辺は警察組織と非常に似た印象を受ける。
世間では憧れの存在であったエリートである半沢(はんざわ)とその社内の友人たちはも、銀行という融通の効かない組織の中で、次第に理想と現実のギャップに打ちひしがれていく。

ピラミッド構造をなすための当然の結果として勝者があり敗者があるのはわかる。だが、その敗因が、無能な上司の差配にあり、ほおかむりした組織の無責任にあるのなら、これはひとりの人生に対する冒涜といっていいのではないか。

銀行という後ろ盾を一度失えば、不必要なほどの高いプライドを持った無能な人間になりさがる。だからこそ、家族の生活や家のローンに苦しむとともに、社内の人間関係に振り回される。その生き方にうらやむような部分は一つもないように今の僕には感じられるが、バブル期という時代はそんな影の部分を見せないくらい光輝いていたのだろう。
夢と現実に折り合いをつけつつ必死に自分の生き方をまっとうしようとする人々の人生がしっかりと描かれているうえに、経済小説としてもオススメできる濃密な作品であった。

参考サイト
イトマン事件

【楽天ブックス】「オレたちバブル入行組」

「虚像の砦」真山仁

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
風見敏生(かざみとしお)は民放テレビ局に勤めるディレクター。報道の使命を「権力の監視」と考え、誰よりも先に真実を報道しようと努める。そんな中、中東で日本人3人が誘拐された。
物語はもちろんフィクションであるが、イスラム共和国、バグリード、メソポタミア放送、大無辜(おおむこ)教、秋月弁護士という言葉が出てくる、それらはもちろん、イラク、バグダッド、アルジャジーラ、オウム真理教、坂本弁護士を題材にしているのだと容易に推測できる。そのため、それらの事件に対する今までの自分の認識と、物語中の展開のズレが、再び僕の中の事件に対する興味を喚起することとなった。
物語中ではテレビの力とそれによる危うさを語るとともに、テレビ局と総務省そして政治家の関係をわかりやすく描いている。その関係の鍵となるのは、憲法二十一条の言論の自由と、放送法の公平中立条項、そして、5年に1回再取得が必要なテレビ局の免許制度である。

放送事業に関して言うと、政官民は三すくみ状態にあります。放送局にとって総務省は監督官庁ですから、頭が上がらない。総務省は、放送局には強面で臨めても、政治家の先生たちには弱い。ところが政治家の先生たちは、放送局にはめっぽう弱い。

物語の多くは風見(かざみ)周辺のテレビ局の報道の様子を描いているが、お笑いに命をかけるプロデューサーの黒磐(くろいわ)にもしばしば視点が移る。

バラエティと呼ばれている番組で、やっている事は何かね。自分より弱い人を血祭りに上げて笑い飛ばす。一番ゲスな笑いだ。しかも視聴者には、今日が幸せだったらいいじゃないかという諦めを刷り込み続けている

「報道」も「笑い」も世の中に必要なもの、と位置づけられながらも、テレビという強い影響力を持つがゆえの危うさと、視聴率至上主義に毒されてしだいに信念から遠ざかっていく制作者の歯がゆさも描かれている。

俺たちは今、我が身の驕りのツケを払わされているだけなのかもしれない。いや、もっと言えば、大衆を躍らせた罰を受けているのかもしれない。テレビの向こうの視聴者を小馬鹿にしていた俺たちだって、彼らと大差ないほどの愚か者だった事を思い知らされているんだ。

世の中のすべての物事を実体験するなど不可能だから、僕らは、新聞や本、テレビなどから情報を集めて世の中を知るための努力をするしかない。しかしそれらの情報媒体は人が作るものだから多少なりとも主観が入るのは避けようのないこと。そんな中で優れた情報媒体とは一つの出来事に対して複数の視点から情報を伝えているもののことを言うのだろう。例えば最近話題の高齢者医療制度であれば、その悪いところだけでなく、そのいいところを伝えてこそ、優れた情報媒体と言えるのだ。しかし今のテレビの報道で、これができている番組は一体どれほどあるのだろう。僕だけだろうか、多くの番組に視聴者の気持ちを意図的にどこかに向けようとしている作意を感じるのは。

情報とは、情に報いることだ。しかし、報道とは、道に報いて初めてそう呼ぶことができる。なのに、そのキャスターは道に報いるどころか、情に報いることすらせず臆面もなく嘘のニュースを流した。…

野沢尚の「破線のマリス」や「砦なき者」を読んだとき以上に、メディアを通して真実を知ることの難しさを考えさせる作品であった。

【楽天ブックス】「虚像の砦」

「マグマ」真山仁

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
外資系ファンドに勤める野村妙子(のむらたえこ)が休暇から戻ると、同じ部署の社員は解雇されていた。不可解な空気を感じながらも、託された地熱発電を業務とする会社の再生へ取り組む。
なによりもまず、企業買収で利益を上げる買収ファンドという業務形態が新鮮である。妙子(たえこ)自身、この業種の魅力として、「企業の地獄から天国までのすべての過程に責任を持つこと」と述べているように、いろんな業種のビジネスモデルを知ることができるという点で非常に魅力的な仕事なのだろう。
そして本作品で妙子(たえこ)が再生を請け負った会社は、地熱発電を主な事業とする会社である。エネルギーを扱うので当然のように日本のエネルギーの大部分をまかなっている原発問題についても触れられていて、その危険性や政治的な問題にまで話は広げられている。
妙子(たえこ)は再生請負人として弱みを見せられない立場にある。それでも、純粋に地熱発電が日本の環境にやさしいエネルギーであって有意義に活用すべきという考えや、研究者たちの努力や熱い思いに答えたいという考え、そして、企業再生のためには情けをかけてはならないという考えの間で葛藤しながら、自分の与えられた責任を果たすために突き進む。彼女の存在はこの物語の大きな魅力である。
物語は妙子(たえこ)の目線だけでなく、地熱発電の第一人者の御室耕冶朗(おむろこうじろう)にもたびたび移る。地熱発電に情熱を燃やすその強い気持ちをつくっている過去や思いもまた読む人の心に残るだろう。
新しい知識と、現実の社会問題、そして詳細な心情描写。面白い物語に必要不可欠な三要素がしっかり詰まっている作品である。


自然公園法
優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図り、国民の保健、休養及び教化に資することを目的として定められた法律。国立公園・国定公園・都道府県立自然公園からなる自然公園を指定し、自然環境の保護と、快適な利用を推進する。(Wikipedia「自然公園法」
ガイア仮説
地球は様々なシステムが融合して出来上がった、1つの生命有機体であるとする仮説。(はてなダイアリー「ガイア仮説」
参考サイト
Wikipedia「地熱発電」
地熱発電の基礎知識

【楽天ブックス】「マグマ」

「クレイジーヘヴン」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
旅行会社に勤める坂脇恭一(さかわききょういち)は日々の生活に疑問を感じながらも自分の生きる意味を考えながら生きている。一方、田所圭子(たどころけいこ)は、OLを辞めてから金を作るために売春に手を染め、今はヤクザの悪事を手伝わされていた。そんな2人が出会う。
恭一(きょういち)と行動を共にすることになった圭子(けいこ)の考え方は、恭一の考え方に間近で触れるうちに少しずつ変化していく。
自分の考えに自信が持てないからこそ、周囲の顔色をうかがって行動を選択し、その結果、誰からも必要とされなくなり、自分の存在価値が信じられなくなる。そんな圭子(けいこ)のような生き方をする人間は、自分の能力を知ってしまった20代中盤から後半の女性には意外と多く存在するのかもしれない。男女平等が叫ばれながらも、未だ、女性は男ほど簡単に一人で生きる決心などできないのだから、それも仕方がないことなのかもしれない。
自分に自信がなく、一人で生きていくことができないと思うからこそ、必死で相手のために尽くして見捨てられないようにする圭子(けいこ)の行動は痛々しくさえある。それでも、内なる変化を気づいたときに、圭子(けいこ)がかみ締める言葉の数々が妙に心に残る。

弱いのは恥じゃない。恐がって逃げることこそ、みっともない。
被害者面のままうずくまっているのは、気持ちがいいし、簡単だ。あたしは悪くない。運が悪かったのだ。取り巻きも悪かったのだ──そう思っているだけでいい。楽なやり方だ。でも、卑怯だ。

この言葉を聞かせてあげたい人が僕の交友関係のなかにも何人か思い浮かぶ、きっと世の中にはもっと多くの割合で存在する自分に自信が持てない人たち。そんなひとたちこそこの本を読めば何かがかわるかもしれない。もちろん僕自身にとってもいつまでも記憶に残しておきたい言葉である。
相変わらずの読みやすさとスピード感。そして、心に染み入るエピソードや台詞の数々。今や垣根涼介は大好きな作家の一人である。


参考サイト
犯罪人引渡し条約

【楽天ブックス】「クレイジーヘヴン 」

「千里眼 シンガポール・フライヤー」松岡圭祐

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
千里眼第2シリーズの第8作。「千里眼 美由紀の正体」で自分の過去を知った岬美由紀(みさきみゆき)は精神疾患に悩まされていた。そん中、世の中は新種の鳥インフルエンザの猛威に晒されていた。
本作品で岬美由紀(みさきみゆき)は今まで以上に人間味を出す。人の心を読めることで、人の悪意を瞬時に察しながらもそれを証明することができないために周囲に協力を求めることができない。そして、どんな人でも少なからず悪意を持っているため、目に入る全ての人の表情が気になる。そんな悪循環に悩まされる。

わたしには世の中が見えすぎた。知りたくないことまで知ってしまい、真実の重さを心が支えきれない。

例によって、多く現実の出来事を物語に盛り込んでいる。ルネサンス佐世保の猟銃発砲事件、富士スピードウェイで開催されたフォーミュラ1での交通問題。時事ネタが素早く取り込まれることが松岡圭祐の指示される理由だろう。
本作品では「クオリア」という言葉がキーワードになる。

クオリアとは、僕ら人間が何かに注意を向けたとき、そこに感じる独特な質感。たとえばビールののどごし、チョコレートの味わいの深さ。夜空に瞬く星の美しさ。

新種の鳥インフルエンザ、ヴェルガ・ウィルスの日本への拡大を防ごうとする美由紀(みゆき)と、クオリアを否定する組織「ノン=クオリア」が対峙することになる。

この世は物質がすべてじゃない。クオリアというものがあると、確かに信じているから

人間が生きる喜びを感じる多くの要素を説明しうるクオリア。しかし、成長過程によってはそれを理解できない人もいることを、理解できるからこそ物語の結末に興味を掻き立てられる。
小学館から発行されていた千里眼第1シリーズに比べて、この角川文庫の第2シリーズは物足りなさを覚えることが多かったのだが、本作品はそんな中でも心に残るものがあった。


ドリトル現象
動物や物がしゃべっているように感じる精神病。
不思議の国のアリス症候群
知覚された外界のものの大きさや自分の体の大きさが通常とは異なって感じられる主観的なイメージの変容した状態。(Wikipedia「不思議の国のアリス症候群」
スンガイ・ブロー
シンガポールの北西に位置するマングローブや渡り鳥を観察できる、自然保護区。
ポルフィリオ・ディアス
1876年から1911年までメキシコを支配した独裁者。(Wikipedia「ポルフィリオ・ディアス」
エビングハウスの忘却曲線
長期記憶の忘却を表す曲線である。心理学者のヘルマン・エビングハウスによって導かれた。(Wikipedia「忘却曲線」
参考サイト
Wikipedia「マリーの部屋」

【楽天ブックス】「千里眼 シンガポール・フライヤー(上) 」「千里眼 シンガポール・フライヤー(下) 」

「震度0」横山秀夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1995年1月、阪神大震災と同じとき、N県警で1人の警察幹部が失踪した。県警幹部達は各々、自分の地位や体裁を守るために、その対応に追われることになる。
本作品で描かれているのは警察のもっとも醜い一面だろう。本部長、刑務部長、刑事部長、N県警という地方警察で、権力をもった幹部達が各々、自分の経歴に傷をつけないため、今の地位を守るため、天下り先を確保するために、1人の警察幹部の失踪事件を操作しようとする。
時には利害の一致したほかの警察職員と協力し、「真実を追究する」という建て前をちらつかせて、相手の持っている情報を出させる。その一方で、情報を早めに仕入れては、都合の悪い事実を隠蔽しようとする。そこにはもはや正義も真実も大した意味を持たない。多少誇張されているのだろうが、これが警察の実態なのだろう。
それでも本作品を読みながら、そんな警察幹部達の目線で事件を見つめるうちに、地位やキャリアアップにこだわっている彼等の気持ちが理解できたような気がしてしまうからページをめくる手は加速するばかり。家族を養いながら警察という縦社会の中で生きてきた人間は、警察以外で生きる能力がないのだから立場にこだわるのは当然なのかもしれない。
そして、そんな彼等だが、元々は正義感が強いからこそ警察になった男たち。だからこそ、事実の隠蔽や虚偽の記者会見に強い良心の呵責を覚え、それがまた印象的なのだ。

見て見ぬふりをする人間にだけはなるな──。
昔からそうだった。人の心をいじくるのが好きだった。いじくり回して遊ぶのが楽しくてならなかった。だが──
とうとう、人の死までいじくった。

警察内部の権力闘争にページの大部分が費やされてはいるが、ラスト20,30ページで大きく動く。一人の人間の告白が、人間の感情の複雑さを再認識させてくれることだろう。人が人に対して抱く感情は一つではない。愛しみ、蔑み、憎しみ、羨み、敬い、・・時には多くの感情を複雑な割合で併せ持つ。この物語の中で一体いくつの感情が描かれていることだろう。
「ルパンの消息」「半落ち」と同様に、最後の数ページで一気に読者を納得させて読後の心地よさに導いてくれた。


博徒(ばくと)
(江戸〜明治までの)賭博を生業とする者、博打打ち。テキ屋とともに、ヤクザの源流とされる。(はてなダイアリー「博徒」

【楽天ブックス】「震度0 」

「再生巨流」楡周平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
大手運送会社の第一営業部に勤める吉野公啓(よしのまさひろ)は新規事業開発部の部長に昇進となった。3名しかいない部署の部長。それは実質左遷人事だった。しかし吉野(よしの)は起死回生のための巨大プロジェクトを考え始める。
この物語の中心となっている巨大プロジェクトは、文具通販をヒントに吉野(よしの)が思いつくという設定である。物語中では文具通販社の社名は架空の名前となっているが、もちろんモデルはアスクルだろう。序盤は吉野(よしの)が考えを構築するヒントとして、文具通販のビジネスモデルがわかりやすく説明されている。
そして吉野の思いついた案についても、考えを構築する過程、ビジネスパートナーである業界第3位の文具メーカーへの説明、そして上司に承認をもらうための説明、と複雑なビジネスモデルを言葉を変えて物語中で3回説明している。幅広い読者にこの物語の肝となる経済の一部分を理解してもらい、面白く読み進めてもらうための配慮なのだろう。
そして、そのビジネスモデルは、周囲の多くの人の助けを借りながら少しずつ障害を乗り越え、形作ってくる。その過程で、高齢化社会、オンラインショッピング、価格比較サイトなどのにもしっかりと話が絡んでくるあたりに著者の周到な計画が見える。
そしてまた吉野(よしの)の周囲の人間たちの成長も見所の一つだろう。部下のモチベーションを上げさせることが、部下の能力を上げる一番手っ取り早い方法なのかもしれない。
藤原伊織の「シリウスの道」、垣根涼介の「君たちに明日はない」と同じように、業種は違えど自分の仕事に誇りを持った人間を描いた作品。億の単位のお金が動く仕事など僕にとっては無縁だが、どんな仕事でも面白い否かは、携わる人次第なのかもしれないと感じた。経済に興味がない人でもきっと面白く読むことができるだろう。ひょっとしたらこの本をきっかけに経済に興味を持つ読者もいるのかもしれない。


ドライグローサリー
冷蔵を要しない食品(一般食品)、雑貨のこと。
レコメンデーション
ユーザの好みを分析し、各ユーザごとに興味のありそうな情報を選択して表示するサービス(IT用語辞典「レコメンデーション」
フィージビリティ・スタディ
新製品や新サービス、新制度に関する実行可能性や実現可能性を検証する作業のこと。
ステルス・マーケティング
消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。
参考サイト
@IT:勝ち組アスクル、ビジネスモデルの本質
顧客のために進化するアスクルビジネス

【楽天ブックス】「再生巨流」

「隠蔽捜査」今野敏

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
吉川英治文学新人賞受賞作品。
警察庁長官官房でマスコミ対策を担う竜崎伸也(りゅうざきしんや)と警視庁刑事部長の伊丹俊太郎(いたみしゅんたろう)という2人の警察官僚が1つの事件をきっかけに自らの立場や警察組織を守るために奔走する様子を描いている。
まず興味を引くのは、「出世がすべて」「東大以外は大学ではない」と考えている竜崎(りゅうざき)のほうが、警察内部の怠慢や汚職を許さず、逆に、私大卒で周囲から警察官僚の中でもっとも人間味の有る人と評価される伊丹の方が、警察内の不祥事をもみ消そうとする点である。
おそらく一般的には、警察官僚とか、警察の縦社会という考えに縛られた竜崎のような人間こそが、警察組織内の不祥事を助長し、伊丹のような警察官が正義を貫くと考えられているのだろう。にもかかわらず、そんな先入観を早々と砕く人物設定によって瞬く間に物語に引き込まれていった。
物語の目線となっている、竜崎(りゅうざき)の家族を顧みない考え方や、警察組織として人生を貫こうとする姿勢、その価値観は決して共感できるものではないが、一方で彼の感情に左右されない論理的なものの考え方は個人的にとても理解できる。そして、彼の考え方に触れるうちに、事件を解決することだけが警察組織の人間の役割ではないことがわかるだろう。

組織というのは、あらゆるレベルの思惑の集合体だ。下のものがいいかげんだったら、いくら上が立派な戦略を立てても伝わらないのだ。常にうまく部下を使う方法を考え、同時に、いかにして上司を動かすかを考えなければならない。

物語は最後まで、事件を大して大きく扱わない。あくまでも事件は警察組織の中の対立関係や駆け引きを描くための素材に過ぎない。警察を扱った物語は世の中に数え切れないほどあるが、これほど事件に焦点を当てないで最後まで展開する物語も珍しいだろう。
とはいえ、少年犯罪者の社会復帰を支援するような日本の少年法への疑問もしっかり投げかけている。私刑を許してしまったら法治国家ではなくなる、という警察組織に身をおくものとしての建前と、過去に凶悪犯罪をしながらも、今は普通に世の中で生活している彼らが許せないという気持ちも併せ持つ。私刑や復讐を扱った物語の中では必ずといっていいほど見られる葛藤であるが、それでも人によって意見の分かれる問題であるから面白い。私刑を扱った他の作品として思い浮かぶのは宮部みゆきの「クロスファイア」などがそうだろうか。
ページが残り少なくなるころには、序盤にあれほど忌み嫌った竜崎(りゅうざき)の生き方が好きになっているのだから、見事に著者の思惑にはまってしまったということなのだろう。


KGB
ソ連国家保安委員会の略称。1954年からソ連崩壊まで存在したソビエト社会主義共和国連邦の情報機関・秘密警察。
参考サイト
Wikipedia「警察庁長官狙撃事件」

【楽天ブックス】「隠蔽捜査」

「午前三時のルースター」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
サントリーミステリー大賞、読者賞受賞作品。
旅行代理店に勤務する長瀬(ながせ)は得意先の社長から、その孫の慎一郎(しんいちろう)のベトナム旅行への付き添いを依頼される。しかし、実際には慎一郎(しんいちろう)の本当の目的は5年前にベトナムで失踪した父を探すことだった。
物語の大部分はベトナムを舞台にしている。この作品とあわせて、真保裕一の「黄金の島」を読めばかなりベトナムの文化が理解できることだろう。常々言っていることであるが、自分の知らない世界や知らない考え方に触れられるのが度読書の至福の時である。そして、それは日本以外を扱った作品には特にそういう傾向が強い。
そして本作品では、慎太郎(しんたろう)がベトナムという普段触れているものとは違った文化に触れ、たくさんの刺激を受ける役割を担っている。印象的なのはベトナムで案内役として雇われた女性、メイが実は娼婦であると知ってショックを受けるシーンだろうか。慎太郎(しんたろう)はメイの行動に行為を持ちながらも、「娼婦」という存在に近寄りがたいものを感じるのである。

この国じゃ誰も好き好んで娼婦になる奴なんていやしない
結局は、感じること、気持ちとして残る部分がすべてに優先するんだと思った。どんな過去があろうがどんな仕事をしてようが、それでも相手のことを嫌いになれないのなら、最後にはそれがすべてなんだと思う。

豊かな国ではないから生き方も限られてくる。それでも日本という豊かな環境の中で育まれた考え方や常識に慎太郎(しんたろう)はとらわれる。これは慎太郎(しんたろう)が思春期の少年という未熟さゆえの考えではない。世の中の大部分の人間に当てはまることである。触りもせず話しもせず、人や物を「邪悪」と判断して自分の世界との接触を許さない人のなんと多いことか。
物語の目線は長瀬(ながせ)から動くことはないが、この物語は慎一郎(しんいちろう)の大人への変化の過程を見せようとしている。そこに込められた大人になるための大切な経験、大切な考え方。著者がもっとも訴えたいのはそれなのだと感じた。間接的な訴え方ではあるが多くの読者にきっと伝わるだろう。


ドイモイ
1986年のベトナム共産党・第6回大会で提起されたスローガン。日本語で「刷新」を意味する。市場経済導入や対外開放政策などを行った。(はてなダイアリー「ドイモイ」
パクチー
セリ科。インド、ベトナム、タイなど東南アジア料理によく使われる。消化を助け食中毒や二日酔いの予防に効果があるといわれてる。(はてなダイアリー「パクチー」
コロニアル様式
17〜18世紀に、ヨーロッパ諸国の植民地で発達した建築やインテリアの様式のこと。
参考サイト
ベトナムビジネス開拓サポート

【楽天ブックス】「午前三時のルースター」

「リカ」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第2回ホラーサスペンス大賞受賞作品。
妻と子どもを持つ42際の会社員の本間(ほんま)は、部下の奨めによって出会い系サイトにはまりだす。そして、そこで「リカ」と名乗る女性と知り合う。
序盤は、本間(ほんま)が出会い系サイトで、毎日大量のメールを受け取る女性に、読んでもらうためのメールの書き方などを少しずつ学んでいく様が描かれている。

私が書き送ったことは、別に特殊なことでも何でもない。自分のことが好きになれない、というような女性は、実際にはその正反対で自己愛が強すぎるタイプが多い。彼女達が真に恐れているのは、自分自身が周りの人たちから嫌われること、だから、どうしても他人との係わりを避けてしまう。他人と係わってしまえば、どうしても軋轢が生まれ、感情的になり、好き嫌いが出てしまうだろう。

出会い系サイトは「悪」と、世間一般で言われているような単純な分類をせずに、都会に生きている孤独や不安に苛まれている人が、それを解消するための一つの手段として描く点に好感が持てる。

しかし、そんな視点に感心してられるのも序盤だけで、本間(ほんま)がリカという女性とインターネット上で出会うことによって、物語は一気にホラーの様相を呈してくる。

他人との関わりをあまりせずに来た人は、自分の中に自分だけのルールを蓄積していく。そういう人たちは時に、被害妄想の強く、一般的な考え方が通用しない。そして、法による刑罰を恐れずに、自分自身以外に守るものが一切ないからこそ心の抑止作用はまったく期待できない。そんな人間と関わってしまったときの恐怖が本間の様子から伝わってくる。

わたしはね、最近こう思うんです。無意識の悪意、無作為の悪意ほど、恐ろしいものはないと...

久しぶりに恐い本を読んだ。一時期流行ったホラーのようなただひたすら恐いシーンを並べるだけではなく、本当に恐い物語は必ずどこか真実味を帯びているのだ。
【楽天ブックス】「リカ」

「君たちに明日はない」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第18回山本周五郎賞受賞作品
リストラ請負会社に勤める村上真介(むらかみしんすけ)はクライアント企業の要望に従って候補者の中からリストラの対象者を決めて、退職を促すことを仕事としている。
終身雇用という制度が崩れたとはいえ、世の中にはまだまだ一生今の会社に勤めていえると信じている人は多いのだろう。そして、そんな人たちに退職を勧める立場だからこそ見える、多くの人間の生き方がこの作品の面白さである。
個人的に驚いたのは、物語中で退職を促された多くの人間が面接官である真介(しんすけ)に尋ねる言葉。「私が何か会社に不利益なことをしたのでしょうか」。日本の一般的なサラリーマンはマイナス評価がなければ会社にいつまでもいられると思っているのかもしれない。もらっている給料を補ってあまりあるだけのプラスがなければ会社にとってなんの得も無い、つまりクビにされてもまったく不思議ではないというのが、僕にとって普通の考え方だっただけに、少し面白い。
きっと安定した企業に勤めている人の方が、この本を読んで僕以上に多くのことを感じるのかもしれない。

リストラ最有力候補になる社員にかぎって、仕事と作業との区分けが明確に出来ていない。たとえば営業マンなら、自分が担当した商品の売値と仕入れ値の差額粗利から、自らの給料、厚生年金への掛け金、一人割りのフロア維持費、接待費、営業者代、交通費などを差っ引いた純益として考えたことなどないのだろう。

そして、物語の目線は退職を促す側だけでなく、退職を勧められる側にも移る。そこには多くの人生が描かれている。どんな人間も最初は熱意を持って仕事に取り組んでいたのだろう。それでもそんな気持ちを維持できないような、気持ちや能力だけではどうしようもないことが、社会という複雑な人間関係の中ではあるのだ。

人材能力開発室という窓も電話もない地下二階の部署に送り込まれ、朝から晩まで『自分は能無しです。銀行には不要な人間です』と、ノートに書付けることを命じられている元支店長もいる。
それに比べれば、自分などはるかに恵まれていると思う。分かってはいる。だが、それでも腐ってゆく自分をどうすることも出来ない。

物語中に登場するリストラ候補者の言い分や考えに目を通せば、そんな世の中の悲しい現実がはっきりと目に見えることだろう。
そんな物語であるが、個人的には最後に真介}(しんすけ)のアシスタントを勤める女性が言う言葉が好きだ。

わたし、この仕事、なんとなく好きです。コーヒーかけられそうになったり、罵倒されたりもしますけど、いろんなことを感じたり見れたりしますから。

この言葉は、この女性アシスタントの仕事に対する感想であると共に、この作品の面白さを表した表現でもある。
最初のわずか数ページで読者を物語中にひきこみ、そしてページを軽くさせる垣根涼介の技術の高さはもはや疑いようもない。とりあえず、次回本屋に立ち寄ったときには本作品の続編である「借金取りの王子」を忘れずに購入したい。
【楽天ブックス】「君たちに明日はない」

「ヒートアイランド」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
汚れた金だけを狙う裏金強奪団3人組の1人はヤクザの非合法カジノから金を盗み出した帰路、渋谷ストリートギャングを束ねるグループ雅(みやび)の一員と遭遇する。大金を巡って、ヤクザと裏金強奪団と渋谷のストリートギャングが繰り広げる物語。
渋谷のストリートギャングを束ねるグループ雅(みやび)その中心メンバーであるアキとカオルは、どちらも十代でありながら世の中の失望した若者である。

ほとんどの人間が戦後何十年も続いてきた右肩上がりの社会を信じていた。バブル前夜にはとっくに破綻寸前だったそのシステムに、何の疑問も持たずに乗っかってきた。知らなかったから仕方がないだろうという人もいる。しかし気づいていなかったことこそが、罪なのだ。

真面目に働いている人間は永遠に幸せを手にすることが出来ない。彼等はそんな世の中の不平等をを悟って、生き方を模索している途中である。
その一方で、汚れたお金をターゲットとする裏金強奪団の三人組、柿沢(かきざわ)、桃井(ももい)、折田(おりた)もまた世の中に失望した人間である。彼等はすてに世の中の枠に捕らわれずに自分達の生き方を全うしている。時として法律を破ることも躊躇しないが自分の中の信念に背くことだけは許さない。そんな生き方である。
世の中の多くの人間は社会の不平等に気づきながらも敷かれたレールの上から大きく外れるほどの勇気がない。だからこそ多くの読者はこの作品の登場人物達に魅力を感じるのだろう。
本作品の面白いところは、アキとカオルを中心としたグループ雅(みやび)と、窃盗集団がヤクザを交えながら、大金を巡って対立するところである。「魅力的な登場人物は簡単には死なない」というどんな物語にも共通する暗黙の了解の元、魅力的なグループ達が行き着く結末への期待感がページをめくる手を加速させる。
ストリートギャングの雅(みやび)、裏金強奪団3人組のほかにも、物語の視点は多くの人に移っていく。中でも、豊かな生活に憧れながらも、ケンカの強さしか誇れるものがなく、それを活かすためにヤクザの一員になったリュウイチや、破格の金額で非合法カジノのオーナーにスカウトされた井草(いぐさ)の生き方などは、周囲に流されて抜け出せない底なし沼にはまる世の中の多くの人を象徴しているようだ。
全体的には非常に読みやすい作品。政治とか国際問題とか複雑なことを考えずに読み進めることが出来るだろう。それは言い換えるなら、読者の好みによっては物足りなさを覚える作品と言えるのかもしれない。


女衒(ぜげん)
女の売買を生業(なりわい)とするブローカーのことである。「衒」は売るの意味。

【楽天ブックス】「ヒートアイランド」

「ワイルド・ソウル」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

第25回吉川英治文学新人賞受賞作品。第57回日本推理作家協会賞受賞作品。第6回大藪春彦受賞作品。
1960年代の日本政府が行った移民政策によって、南米の奥地の未開のジャングル、クロノイテに送り込まれた日本人の多くは病気で死亡したり絶望の中で生涯を終えた。わずかな生き残りである衛藤(えとう)とケイはある時、日本政府に対する復讐を思い立つ。
棄民問題という経済発展の裏で国が犯した大きな罪を扱っていて、同時にそれは、日本とその裏の南米という大きなスケールの物語となっている。本作でそのメインの移民先はとブラジルアマゾンの奥地であるクロノイテという未開の地である。そこに放り出された衛藤(えとう)という人物の眼を通して描かれた序盤で、その政策の悲惨な実態を知ることが出来る。

文明から離れて未開のジャングルだ。医者もいない。薬もない。かといってどこにも手紙は出せない。ちょっとした町に出るにも船に乗って何日もかかる。入植者の中には絶望のあまり発狂する奴もいたな。だが、こいつらなんてまだ幸せなほうだ。マラリアやアメーバ赤痢で苦しむことなく、あっけなく狂っちまったんだからな。

そして、ブラジル人と日本人である衛藤のふれあいが見られる。そんな中で、日本とブラジルの双方の国民の長所や短所、それぞれの立場からそれぞれの国を観た感想が何度も描かれる。

餓死寸前なのに物盗りになる度胸もない。かといって乞食にまで落ちぶれるにはちっぽけなプライドが許さない……中国人とも韓国人とも違う。馬鹿正直に生きるだけが撮り得の黄色人種だ。

日本人には日本人のよさがあり、ブラジル人にはブラジル人のよさがある。この二国に限らず、異文化で育ってきた人達が向かい合ったときにその性質から多少の不都合は生じるのかもしれないが、それぞれの良い部分を見つめる眼を持つべきなのだろう。
中盤から物語は日本に舞台を移し、衛藤やケイの復讐がいよいよ始まる。復讐というテーマでは在りながらも、物語の視点のメインは、日本人でありながらジャングルと陽気なブラジル社会で育ってケイに移るっており、ケイの性格がこの重いテーマを陽気な物語に変えている。
そして、日本に舞台を移したことで、ジャーナリストの貴子(たかこ)や警察の岩永(いわなが)の視点も加わってスピード感のある展開に変わる。僕等読者が、日々生活の中で触れている世界に物語がリンクしたことで、すでに30年以上前に収束した移民政策が、当事者にとっては決して過ぎ去った過去ではないことが伝わるだろう。
後半、移民政策に関わった役人達の心境も描かれる。彼等もまた組織の歯車であり、保身のためにそのような選択をするしかなかった。結局、未開の地に送り込まれて絶望して死んでいった人たちも、そのような政策を取らざるを得なかった人も、すべてのが、戦後の不安定な日本の政情の中で生まれた犠牲者であり、簡単に解決することの出来ない深い問題であることがわかる。
移民という日本の経済発展の犠牲を日本から地球の裏の南米までそのスケールの大きさ、そしてそのテーマを個々のキャラクターでカバーするそのバランスが見事である。ラブストーリーから刑事事件まで、あらゆる物語の要素が無理なく無駄なく詰まったこの一冊を読むだけで垣根涼介という作家の技術の高さがわかる。とりあえず僕にとっては、「垣根涼介作品をすべて読んでみよう」と思わせるのに充分な作品であった。


コロンビア革命軍(FARC)
1964年、伝説の指導者マヌエル・マルランダらにより結成された反政府左翼ゲリラ組織。
礎石
礎石とは、礎(いしづえ)となる石のことで、定礎石は建物の土台となる石をさだめること。中には、建物の設計図面や氏神のお札、さらにその時の新聞や雑誌、社史、流通貨幣などが入っている。
パーキンソン病
脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加とを病態とし、錐体外路系徴候を示す疾患。マイケル・J・フォックスなど。
参考サイト
ドミニカの日本移民

【楽天ブックス】「ワイルド・ソウル(上)」「ワイルド・ソウル(下)」

「ミッドナイトイーグル」高嶋哲夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
報道カメラマンの西崎勇次(にしざきゆうじ)は夜の空に火の玉を目撃し、真実を知るために墜落地点と見られる冬の山に友人の落合(おちあい)と共に入る。一方で、別居中の妻でジャーナリストの松永慶子(まつながけいこ)は米軍横田基地で起こった銃撃事件の真相を調べ始める。そして2人は大きな波に飲み込まれていく。
物語は西崎(にしざき)と慶子(けいこ)の目線を交互に切り替えながら進んでいく。その手法によって、時間を読者の読むスピードに委ねなければならない小説という物語の伝達方法においても、短い時間の中に数多くの出来事が凝縮されている様子が、見事に伝わってくる。
序盤の西崎(にしざき)のシーンは、その友人の落合(おちあい)と冬山を歩く様子に終始する。それは冬の山の恐ろしさと大自然の前の人間の無力さをしっかりと描いているように感じる。

一時間前まではときおりお互いに声をかけあっていたが、今はその気力もない。このまま眠ってしまいたい。そうなればもう目覚めることはないだろう。…

そして、物語は、真相に近づくにつれて、北朝鮮、アメリカ、自衛隊をも絡めた大きすぎる動きが次第に輪郭をあらわにしていく。個人ではどうしようもないくらい大きな動きの前では何が正しくて何が間違っているのかさえわからなくなる気がする。国民の「知る権利」を主張する慶子(けいこ)と、国を守るために事実を隠蔽しようとする総理大臣が向かい合うシーンはこの物語の印象的なシーンの一つである。
また、西崎(にしざき)は報道カメラマンという職業ゆえに世界中で起こっている紛争を間近で見てきた。その口から発せられる言葉は重く、心に残る。

命令で動いているだけというわけか。俺はそう言って人殺しを楽しんでいる奴らを反吐が出るほど見てきた。動けない兵士、女子供、老人を奴らは殺しまくった。上からの命令だといってね
俺は報道という大義にかこつけて、心の奥底で常に悲劇を待ち望んでいたんじゃないか。カメラを捨てれば助けることのできた命もあったんじゃないか

また、北朝鮮工作員から見た日本に対する言葉も印象的である

日本人を憎むことだけを教わって育ってきたけど、日本に住んで考え方が変わったと言ってた。こんなに自由な国があったのかって。嫌な人もいっぱいいるけど、いい人の方が多いって。美しい国だって言ってた。

確かに日本は戦時中朝鮮に対して容易に許されるべきではないことをしたのだろう。そして、それによって彼等が日本や日本人に対して憎しみを長く抱きつづけるのも仕方の無いことなのかもしれない。多くの人は過去の過ちを忘れず、それを未来に生かすべきだと教わるだろう。しかし、過去があることによって平和が訪れないのであれば、むしろ、そんな過去を忘れることの方が解決への近道なのかもしれない。そんな、以前より僕の中にある考えを再確認させられた。
全体的には、読者を飽きさせることのない展開力が秀逸である。そして登場人物達が語った個々の使命とその近くにある葛藤の表現が非常に印象的であった。ただ、スケールを大きくしすぎたツケだろうか、最後は「アルマゲドン」や「ディープインパクト」など、多くの映画で使い古された読者の涙を誘うための安易な展開に頼るしかなかったようだ。その点だけがやや尻すぼみしてしまった感があって残念である


アイゼン
主に雪山登山、氷瀑や冬の岩壁登攀に使われる滑り止めのこと。登山靴やスキーブーツの靴底に留める2〜12本程度の金属製の爪であり、古くは鋼で作られていたが、近年ではジュラルミンなどの軽金属も用いられる。(はてなダイアリー「アイゼン」
ラッセル
登山で、深雪の中を雪を踏み固めて道を作りながら進むこと。
民団
在日本大韓民国民団の略称。在日韓国人が法的地位確立と民生安定や文化の向上、国際親善と祖国の発展と南北の平和統一を掲げて作られた団体。(はてなダイアリー「民団」
F117ナイトホーク
主に夜間に作戦遂行が行われ機体も黒いことから、ナイトホークと名付けられた。また、ステルス機である事からメディアに採り上げられる際には「ステルス」と呼ばれる事もある。(Wikipedia「F-117 (攻撃機)」
参考サイト
Wikipedia「オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件」
mindan
在日朝鮮総聯合会

【楽天ブックス】「ミッドナイトイーグル」