「In the Dream House」Carmen Maria Machado

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性同性愛者である著者の、恋人との出会いとその後の同棲の様子を語る。

著者自身が、ある女性と恋に落ち、ともに生活を始め、やがてその女性から振り回されるまでの様子や心のうちをを描いている。その過程で恋人に対する感情たけでなく、社会や家族のレズビアンに対する考え方も吐露していく。同時に、女性の同性愛者間で起きた数々の事件などに触れ、思うことを語っていく。

回想録ということで、物語の展開自体が面白いということは特にないし、有名人の伝記のように、自らの生き方に対して、良い刺激になることもない。

おそらく、この本がベストセラーとなった理由は、内容の面白さよりも、そのレズビアン視点のカップル間の暴力という、斬新さゆえなのだろう。今までに考えたこともなかった、同性愛者視点の社会の見方を知ることができた。世の中が同性愛者を理解していないことに対する、著者のストレスを行間から感じた。そして、さまざまな映画やMVなどのシーンが語られるので、アメリカの文化を知る上では面白いだろう。

一方で、日本ではあまり有名ではない出来事やアーティストや映画の話題にもたびたび触れられているので、アメリカの文化にかなり詳しくないと楽しめないだろう。徹底的に引用される出来事を調べるつもりで読むぐらいが面白いかもしれない。また、スラングがかなり多く登場する。こちらも普通に読んでいくよりも、アメリカ英語を徹底的に学ぶつもりで調べながら読むと面白いかもしれない。

面白かったとか刺激になったとかではないが、間違いなく新しい世界観や視点をもたらしてくれる。

「Fluent forever」Gabriel Wyner

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多言語話者であり音楽家でもある著者が、語学学習の効率的な方法を語る。

著者の学習方法は

発音→単語→文法→その他

という優先順位で行われ、発音が最初に来る点が面白い。音楽家であることから音から入るのかもしれないが、五感を多く使った方が記憶に刻まれるという点で、読み方を先に知っておかないと記憶するのに時間がかかるという点には間違いないだろう。

そして、本書で何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

何よりもページ数を割いて説明しているのがフラッシュカードの使い方である。誰もが学生時代に単語帳は使った経験があるだろう。フラッシュカードとは単語帳のことでインターネットやアルゴリズムによって現在はさらに効率的に利用できるのである。

本書ではそんなフラッシュカードを利用して、効果的に学ぶコツをいくつも説明している。興味深かったのは、言語によって必要な、男性名詞、女性名詞、中性名詞をどのように覚えていくかということである。著者の方法は新しい言葉を、自分の言語に変換して覚えるのではなく、常にイメージと結びつけることと重視しており、男性名詞はそれが爆発している状態で記憶し、女性名詞は燃えている状態で覚える、など印象的なシーンにして記憶に刻み込ませるためのさまざまな工夫が見られる。必ずしも著者の進める方法に従う必要はないが、効率的に記憶するためのさまざまなヒントが詰まっている。

僕自身もう10年ほど前になるが、フラッシュカードでかつ少しずつ間隔を開けて繰り返す機能を備えたAnkiというアプリを以前使っていた。結局、単語や表現は文脈とともに覚えていかないと使えるようにはならないと悟ってやめたのだが、本書によって考え直すきっかけになった。

「点と線」松本清張

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

松本清張作品はこれまで読んだことがなかったが、本作「点と線」や「ゼロの焦点」など、タイトルだけは知っているほどの名作が多々あり、もはや知っておかなければならない常識なのかもしれない、と感じ今回読むことにした。

昭和33年初版ということで、携帯電話どころか普通の電話も普及していないようで、電報が出てくる点や、旅行に飛行機を使うことに対する認識の違いや、搭乗のシステムの違いなどから、残念ながら初版当時の時代感覚で楽しむことはできない。むしろ、本書を読んで考えるのは、なぜこの作品がここまで長く読まれる有名作品となったかということである。

改めて思うのは、作品を有名にするのに、「点と線」というタイトルが大きく貢献しているということである。本書の内容の濃さは、50年以上経った今としては評価できないが、「点と線」というタイトルが適切かと聞かれると疑問である。「〇〇殺人事件」というようなタイトルをつけることもできたなかで、多少の違和感を感じながらも「点と線」というタイトルをつけた点が50年経った今でも読まれる大きな要因と言えよう。

考えてみると確かに、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「君の膵臓を食べたい」など、内容がありきたりでもタイトルの印象深さから有名になったであろう作品がこれまでにも多々あるなと思い至り、タイトルの重要性を改めて感じた。

【楽天ブックス】「点と線」

「Design is Storytelling」Ellen Lupton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインは「問題解決」と言われてきたが、現代のデザインはすでにそれだけに止まらない。本書は「問題解決」であると同時にStorytellingとしてのデザインを語る。

次の3つの章に分けてStorytellingとしてのデザインの考え方を語る。

  • Action
  • Emotion
  • Sensation

つまり問題解決だけではなく、行動、感情、感動に働きかせてこそStorytellingなデザインと言えるだろう。そして、それぞれの章では、それを実現するための細かい手法を説明している。例えば、Actionの章では次の手法に触れている。

  • Narrative Arc
  • Hero’s Journey
  • Storyboard
  • Rule of Threes
  • Scenario
  • Planning
  • Design Fiction

同様にEmotionの章では次の手法を説明している。

  • Experience Economy
  • Emotional Journey
  • Co-creation
  • Persona
  • Emoji
  • Color and Emotion

ペルソナやCo-creationはすでにデザインスプリントやリーンスタートアップの考え方にも取り入れられており、どれもすでに一般的で特に驚きはなかったが、Emotional Jorneyで説明されている、ピーク・エンドの法則はデザインにも適用できると感じた。特に、全体のUXを改善しようとすると時間もコストもかかりすぎる場合はピーク・エンドの法則と照らし合わせて優先順位を決めるという考えは有効だと感じた。

後半は一般的なデザインに含まれる内容が多かった。むしろ、おまけとして書かれていた最後の、文章ライティングの考え方は参考になった。

As you write, focus on being clear, not clever.

比較的他のデザイン書籍にも書かれている内容ばかりだったのでものすごいおすすめの書籍ではないが、同じような内容でも定期的に触れることに意味があるのだろう。

「一九八四年」ジョージ・オーウェル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビッグブラザーの支配下で生きるウィンストン・スミスを描く。

ビッグブラザーの支配のもと、過去はビッグブラザーに都合よく書き換えられ、それ以外の記録を残すことは禁止されている。そして言葉も最低限の情報交換に必要なものだけに単純化されていく。そんななか、自分の心だけは豊かなままでいたいと努めるウィンストン・スミスを描く。

マッキントッシュの有名なCMに代表されるように、様々な箇所で引用されており、一度は読んでおかなければならないと思い、今回読むに至った。

ビッグブラザーの支配のもとで生きるウィンストン・スミスが、ジュリアという女性と恋に落ち、少しずつ思想的にも行動的にも大胆になっていくなかで、ビッグブラザーに対抗する組織と近づいていく様子を描く。

つまらないというわけでも、新鮮さがまったくないというわけでもないが、正直、現在の様々な物語が溢れる時代に生きた人々が本書を読んで、その面白さを享受できるかと問われれば、そんなことはない。古い物語を読むときは、その時代背景も考えながら楽しむべきだろう。

物語の舞台は1984年だが、発表は1949年と第二次世界大戦が終結して間もない時だというから驚きである。発表からも描こうとしていた未来からも遠い未来である現在から本書を読むと、当然、発表当時本書を読んでいた人々とは受ける印象がまったくことなることだろう。それでも、なぜこの物語が当時多くの人々に読まれ、80年近く経った今でも共通言語として語られる存在になったのかと考えた。

本書のあとがきでも触れられているが、単純な物語の斬新さだけではなく、発表当時もしくは発表後数十年のソビエト連邦の脅威に重なる部分が本書の認知を拡大に大きく寄与したのだろう。その流行は、メディアか政府によって意図して起こされたのか、人々の間で自然に起こったのかはわからないが、その結果、アメリカを代表する西洋諸国の間で、避けるべき未来を語る上での共通認識となっていったのではないだろうか。

【楽天ブックス】「一九八四年」

「スタンフォード式疲れない体」山田知生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スタンフォード大学のトレーナーである著者が疲れない体づくりを語る。

スタンフォード大学は学業で有名な印象があったが、本書によるとスポーツでも長年目覚ましい成績をあげているという。本書はそんなスタンフォード大学で実践されている疲れの予防法について語っており、僕自身最近マッサージやストレッチなどコンディションづくりや体のケアに対して関心が高まっており、本書にたどり着いた。

まず、自らのコンディションを知ることの重要性を説いている。脈拍を定期的に測ることに「疲れ」を具体的な数値として計測できるようになるというのである。

そして、本書でもっとも印象的だったのはIAP呼吸法である。それはIntra Abdominal Pressureの略で「腹圧呼吸」とも書いており、簡単に言うと

息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法

である。つまり、腹式呼吸とも異なり、これによって体幹が安定し正しい姿勢になり、無駄な動きがなくなるというのである。どちらかというと腹式呼吸が理想の呼吸という印象を持っていたためIAP呼吸法の考え方は新鮮だった。

ダメージ療法として「アイス・ヒート」メソッドも紹介している。簡単にいうと怪我をして24時間までは冷やし、24時間以降は温めるという方法で、注意しなければならないのは、怪我をした翌日だろうと24時間経つまでは冷やすということである。

終盤では睡眠と食事の重要性について語っている。睡眠は最低でも7時間、週末も平日も同じ時間に寝ることを勧めている。食事については、他の書籍でも触れていることと特に大きな違いはなく、日本人は炭水化物を摂りすぎなので、タンパク質の割合を増やすことを意識しなければならないという。ただ、本書でも言っているように、食事は厳しくしすぎると続かないので、できる範囲で徐々に習慣づけていきたい。

呼吸法、脈拍の定期的な測定、アイス・ヒートメソッドは早速取り入れていきたいと思った。

【楽天ブックス】「スタンフォード式疲れない体」

「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノートルダム清心学園理事長の著者が生き方を語る。

前向きな人生を送るための考え方を語った本は、昨今世の中にあふれており、本書もそんななかの一つである。したがって、読むことに意味はないとは言わないが、この手の本をたくさん読む人にとってはそれほど印象的な言葉はないかもしれない。ただ、すでに出版時点で80歳を超えていることから、人間の晩年になってこそ見える考え方が伝わってくる。

老いるということにおいて、一番大切な仕事は、ふがいなくなった自分を受け入れて、いつくしむということだと気付きました。
一生の終わりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ

ときどきその職業的背景ゆえか、キリスト教や神を引用して語ることで、無心論者には受け入れがたく感じるかもしれない。

【楽天ブックス】「置かれた場所で咲きなさい」

「華麗なる一族」山崎豊子

華麗なる一族

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
阪神銀行の頭取である万俵大介(まんびょうだいすけ)とその家族を描く。

長男の鉄平(てっぺい)は関連会社である阪神特殊鋼の専務を務め、次男の銀平(ぎんぺい)は大介(だいすけ)と同じ阪神銀行で働く。面白いのは、家庭教師である相子(あいこ)の存在である。相子(あいこ)は家庭教師として万俵家と関わることになったにも関わらず、今では、万俵家の権力を広げるために、息子や娘たちの縁組みに奔走するのである。そして大介(だいすけ)は相子(あいこ)と妻の寧子(やすこ)と交互に夜を共にするのだ。

そんな複雑に入り組んだ銀行一家を率いる大介(だいすけ)だが、年銀行再編の流れのなかで、業界ランクと10位として、他行に吸収されず、その地位を守ったまま阪神銀行を大きくする方法を模索していく。その過程で銀行間や政治家との駆け引きが詳細に描かれる点が面白い。

山崎豊子の物語は、現実の出来事に対して緻密に調査しそれをフィクションとして作り上げるだけに、本作品も実際に起こったことがベースになっているだろうと考えると面白い。航空業界、報道、医療などについて書いているので次回は医療業界を描いた名作「白い巨塔」を読みたいと思った。

【楽天ブックス】「華麗なる一族(上)」「華麗なる一族(中)」「華麗なる一族(下)」

「ドローイングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

先日読んだ、「ペインティングレッスン」の同じシリーズのドローイング版である。「ペインティングレッスン」が新たな視点をもたらしてくれたので、本作にも期待して手に取った。

本書はデザイン、ライン、明度、フォルムの4つの視点でドローイングを解説する。その過程で、さまざまな歴史的な美術の背景や、作品を紹介している。デザインの章では黄金比について多くの例を交えて解説しており、改めて黄金比の重要性を感じた。ちなみにフォルムとは3次元の錯覚を作り出すことで、写実主義の芸術家がたちが没頭した、絵に説得力を持たせるためには不可欠な技術なのだという。

測定法についても3つの測定法、サイトサイズ法、関係法、比較法を語っており、度々出てくるブロックインという手法ともに、長所と短所に、軽く触れているだけで、正確な解説には至ってないので、別の書籍などで理解できるまで調べてみたいと思った。

ペインティングレッスンと同様に明度の重要性を改めて感じるとともに、絵画とはいえ、不要なものを削ぎ落とし、意図した通りの再構成することが良い作品を作るためには重要で、ただみたものを写し取るだけではなくデザインと非常に似たものだと感じた。

「ペインティングレッスン」と同様に、人生をすべて費やしても足りないのではないかと思わせるぐらい、絵画の深さを感じさせてくれる一冊である。

【楽天ブックス】「ドローイングレッスン」

「The Seven Husbands of Evelyn Hugo」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その人生のなかで7回の結婚をしたことで知られる大女優Evelyn Hugoに、伝記を書くように名指しで指名されたMoniqueはその理由に不信を抱きながらもその仕事を請けることとなる。そして、伝記を書くためのインタビュー取材を通じて少しずつEvelyn Hugoの人生が明らかになっていく。

もちろんフィクションではあるが、Evelyn Hugoの語るその人生を通じて、結婚や離婚が有名になるための一つの手段でしかないことを思い知らされる。また、映画のチケット販売を伸ばすために情報をコントロールすることを日常的にやっているんだろうと改めて思った。

やがて、取材からEvelyn Hugoが人生を通じて本当に愛していた人間が明らかになっていく。また、取材を通じてMonique自身にもその心や振る舞いに変化が生じていく。自らも夫と別居状態のMoniqueは自分自身の結婚生活にも区切りをつける決意をする。そして、最後には、なぜ、Moniqueをその担当者として指名したのかも明らかになるのである。

女性がこの著者を勧めることが多いので、本書も、ひょっとしたら女性の方がもっと感じる部分が多いのではないだろうか。特にEvelyn Hugoがスターとして活躍した60年代、70年代は、今以上に人種間差別は根強かっただろうし、またLGBTに対する理解も進んでいなかったことだろう。そんななか自らの本来の姿と、キャリアとの間で悩み生きていく女性の様子は、ひょっとしたら現代にも通じる部分があり、多くの女性の心を打つのかもしれない。

Taylor Jenkins Reidの本は本作が2作目である。前回読んだ「After I do」は比較的軽い印象を受けたので、本作とはかなり雰囲気が異なるのを感じた。他の有名作品もぜひ読んでみたいと感じた。

「配色の設計 色の知識と相互作用」ジョセフ・アルバース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
少しずつでも色彩や形に対しての感覚を向上し、またそれを説明する言葉を積み重ねたいと考えており、本書もそんな過程の中でたどり着いた。

書籍自体比較的新しいのだが、海外で初版が発行されたのは1963年と約50年前ということだから驚きである。本書には色の感覚や相互作用について理解を深めるためのさまざまな学習法が掲載されており、なかなか読んだだけではわからず、しっかり理解するためには手を動かしたり、カラーペーパーをつかったりしないとならないだろう。

それでも、図を見たり説明を読んだりするだけでいくつか新しい考え方を身につけることができた。例えば、グラデーションスケールはある色に比率1234の濃さの黒を加えるよりも、1248の比率で加える方が自然になることや、正三角形を9等分したカラーシステムなど、いずれも実践に使用していきたいと思った。

現段階ですべての学習法を試す気にはなれないが、このような本があることを知り必要な時にまた手に取れるようにしておくだけでも大きいと感じた。デザイナーコミュニティなどの演習として取り入れるのも面白いかもしれない。

【楽天ブックス】「配色の設計」

「The Push」Ashley Audrain

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
BlytheはFoxと結婚して娘が生まれるが、やがて娘と打ち解けられない自分に気づいていく。

Blytheの母としての苦悩を描く。興味深いのは、並行して時代を遡ってBlytheの母Ceciliaとその母Ettaの、親子の様子や、Blytheの子供時代、つまりBlytheとCeciliaの親子の様子も明らかになっていく点だろう。Ceciliaを愛することができないEttaはやがて別の人生を選ぶし、母から愛されなかったCeciliaもBlytheに対して良い母でいることができないのである。

そして現代に戻り、Violetとの仲がうまくいかないと感じるBlytheだったが、2人目のSamが生まれたことで人生が好転していくのである。

正直、なかなか受け取り方が難しい内容である。親から愛されなかった子供は、親になった時に子供をうまく愛することができない、とはたびたび聞く話ではあるが、必ずそう言う悪循環が続くわけでもないだろう。また、Blytheは娘のVioletとは難しい時期もあったが、息子のSamに対しては最初から愛情を持っており、性別によって感じる行動が異なることもあるのかもしれないと感じた。

むしろ母を経験した女性の意見を聞いてみたいと思った。男性にはなかなか面白さがわからないかもしれない。

「税金を払うやつはバカ!」大村大次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国税局で10年間働いてきた著者が税金について語る。

昨今、自身の収入が少しずつではあるが増えてきたせいか、税金を意識する機会が多くなった。そんななか少しでも節税ができればと本書にたどり着いた。

面白いのは、国税局で働いてきた経歴を持ちながらも、税金をできるかぎり払わないことを推奨している点である。本書では個人事業主から会社員まで、支払う税金を少なくするための様々な方法を説明している。また、あわせて、日本の税金の制度のよくない点も説明している。

残念ながら会社員の僕がすぐに適用で起用できそうな方法は、せいぜい医療費控除に適用できる出費を知っただけで大きなものはなかった。むしろ節税の方法よりも、税金の制度について新たな視点をもたらしてくれた。例えば、消費税が公平な制度ではない、というのはよく耳にするが、消費税が格差社会を作るとまでは思っておらず、本書を読むまでしっかり理解していなかった。また、同様に消費税が非正規雇用を増やすことに貢献しているという視点も新鮮だった。

節税対策としてすぐに行動できる内容は少なかったが、税制度に対して新たな視点をもたらしてくれた。

【楽天ブックス】「税金を払うやつはバカ!」

「三体」劉慈欣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
各地で科学者たちの自殺が相次いでいる知った、ナノテク素材の研究者である汪森(ワン・ミャオ)だが、ある日自身も目の前にカウントダウンの数字が見えるようになる。

汪森(ワン・ミャオ)のカウントダウンから逃れようとする現代の様子に先んじて、文化大革命で科学者の父を亡くした葉文潔(イエ・ウェンジエ)が描かれ、時代を超えた大きな陰謀が陰謀が少しずつ形になっていくことを感じさせる。そんななか、汪森(ワン・ミャオ)は「三体」という仮想空間を舞台にしたゲームに魅せられていく。そこでは太陽が3つ存在し、その太陽の動きによって文明は何度も滅亡を繰り返すのである。

やがて、謎のカウントダウンから逃れようと奮闘する汪森(ワン・ミャオ)は、文潔(イエ・ウェンジエ)の存在を知り、そ少しずつ中国の田舎にある秘密の施設で過ごした文潔(ウェンジエ)の日々が明らかになっていく。

印象としては、本作品はまだ序章といった感じで、大きな展開はほとんどない。評価があまりにも高いためにちょっと拍子抜けした感じである。もちろん続編を読まなければ「三体」という作品自体の評価はできないが、長ければ良いと言うものでもなく、どの程度描きどの程度を読者に委ねるかと言うバランスが重要で、もう少しコンパクトに書けるのではないかと感じてしまった。

もし「三体」こそ最高のSFと思っているなら、個人的には鈴木光司の「ループ」をオススメしたい。「リング」「らせん」があまりにもホラーとして一人歩きしてしまったが、その完結編の「ループ」こそ日本の最高のSFである。

【楽天ブックス】「三体」

「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホモ・サピエンス、つまり人類の進化の歴史を詳細に説明する。

人類の進化の歴史を詳細に説明するなかで、ホモ・サピエンスが現代のように地球の支配者となった主な要因について説明している。

例えば初期の大きな変化は農業革命である。農業革命によって、狩猟から農耕へと移ったことにより、人々は定住化し、住居を持ち、その住居や土地に愛着を持つようになったという。著者は本当にそれが良かったかどうかについては疑問を投げかけているが、種としての進歩の過程で、その中の一個体、または特定の集団が、狩猟と農耕の生活の違いを比較して良い方を選択するということができないと結論づけている点が面白い。

もっとも興味深かったのは、ホモ・サピエンスの想像上の秩序によって一緒に行動することができるという特性であり、その特性によって、ホモ・サピエンスは他の種を圧倒することができたという主張である。例えば、チンパンジーやクジラなどの哺乳類も、どこに天敵がいるなどの簡単な会話はかわすことができるが、一般的なコミュニケーションで行動を共にできるのはせいぜい150個体程度の集団であり、それ以上の個体数、1万、10万という個体が共通の目的を持って行動するためには、宗教や神話など想像上の秩序を共通認識として持つ必要があるというのである。

キリスト教やアメリカの独立宣言など例をあげればきりがないほどさまざまな形でホモ・サピエンスはそれをこれまでにやってきて、今この時点でも様々な想像上の秩序に依存した関係のなかで生きていることは間違いのない事実である。

悲しいことに、多くの絶滅が、ホモ・サピエンスがその大陸に到達した時期と重なっているという。これはホモ・サピエンスの一個体として真実として受け入れるしか無いだろう。

学生時代に歴史の授業で学んだより時から、20年以上経って、現在はるかに多くのホモ・サピエンスの歴史が判明されていることに驚かされた。このような本でも読まない限りなかなか目を向ける機会のない分野なので、新たに知ったことがたくさんあった。ただ、前回読んだ「21Lesson」でも感じたことだが、若干冗長な語りが多く全体的に読みにくい。読もうと思った時にはある程度の覚悟が必要である。まだ未読の「ホモデウス」も名前はよく聞く作品なのでぜひ読みたいとは思っているが、しばらく間を置きたいと思った。

【楽天ブックス】「サピエンス全史(上)」「サピエンス全史(下)」

「ひと」小野寺史宣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の柏木聖輔(かしわぎせいすけ)は、親が急死したために、大学を辞めて、偶然立ち寄った惣菜屋で働き始める。そんな聖輔(せいすけ)を描く。

聖輔(せいすけ)は高校生のときに交通事故で父親を失い、大学生になって母を突然死で失ったことで人生を大きく考え直さなければならなくなる。正直僕自身、両親に早くに先立たれる人の苦労を知らずにいた。しかし、実際にはそれほど珍しくない話で今回はそんな人生に触れることができた。

やがて聖輔(せいすけ)は親切な惣菜屋の店主や店員の助けを借りて、独り立ちしていく。物語を通じて感じるのは、なによりも聖輔(せいすけ)自身の真面目さが、多くの人の信用を集めているということである。

この惣菜屋の店主などのように、困っている人に機会を差し出せる人間になりたいと思った。また、本書の聖輔(せいすけ)のような、若い人間目線としては、約束を守ること、誠実でいることで多くの人の優しさを引き寄せるのだと感じた。子供達にはそのことを伝えていきたいと思った。

物語を読み終わってもう一度タイトルを見ると、そこに深い意味が感じられる。

【楽天ブックス】「ひと」

「世界一やさしい問題解決の授業」渡辺健介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
経営コンサルティング会社マッキンゼーで活用している問題解決の手法を子供向けに語る。

本書では、小学生や中学生の日常生活で起こりそうな問題を例にとってその解決の手順を一つ一つ説明している。具体的には次の方法である。

  • 目標を設置する
  • 目標と現状のギャップを明確にする
  • 仮説を立てる
  • 情報を集める
  • アイデアを出す
  • 最適な打ち手を選択する
  • 実行する
一方で、よくある3つのタイプをよくない例として出している

  • どうせどうせ子ちゃん
  • 評論家くん
  • 気合いでゴーくん

ここまで子供向けの内容とは思っていなかったが、たしかに、これが自然とできる人とそうでない人がいて、できない人にはこうやって教えて、人生の早い段階で学ぶことができれば大きく人生を好転させることができるだろう。子供のために一冊あってもいいのかもしれない。

【楽天ブックス】「世界一やさしい問題解決の授業」

「マーケット感覚を身につけよう」ちきりん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーケット感覚の重要性を語る。

インターネットの発展によって距離や文化の垣根が少しずつ取り払われ、すべての物やサービスが自由に取引されるようになった。そんな時代だからこそ売れるものを見つけ、売れる値段で売る、というマーケット感覚が重要なのである。本書はそれをいくつかの章に分けて説明している。

本書では、そんなインターネットによる変化を、相対取引から市場取引と語り、物の販売だけでなく、就職活動や婚活も以前は相対取引だったが今では市場取引になってきているとしている。

そんな時代に生き残るためには、価値をみつけることがなにより重要である。そのためには人が何に価値を感じるのかに敏感になる必要がある。本を選ぶサービス、骨董品の目利きサービス、服を選ぶサービス、不満を買い取るサービスなど、本書では、今までは価値としてみなされなかったものが、最近になって価値として認識され始めた例、つまり非伝統的価値について例をあげている。

そして、見つけた価値を売るために、つぎの5つの能力の重要性を説いている。

  • 1 プライシング能力を身につける
  • 2 インセンティブシステムを理解する
  • 3 市場に評価される方法を学ぶ
  • 4 失敗と成功の関係を理解する
  • 5 市場性の高い環境に身を置く

コスト意識ではなく、マーケット意識で物事を考えることの重要性は、言われてみればもっともだが、僕も含めコスト意識が先行してしまう人は多いはず。この辺は少しずつマーケット意識で考える癖をつけていきたいと思った。

【楽天ブックス】「マーケット感覚を身につけよう」

「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界各国からの乗客が集まるオリエント急行で殺人が起こり、偶然乗り合わせた名探偵ポアロは真実の解明を依頼される。

アガサ・クリスティーの作品を読むのは大学生の時以来20年ぶりである。本作品はそもそも物語の展開自体がすでに知ってないと話が通じない人というぐらいまで多くの場所で引用されているのを眼にする。これは読んでおかなければ、と思いようやく今回読むに至った。

1933年に書かれた作品ということで、やはり稚拙さや心情描写の浅さを感じなくはない。小さな驚きではあるが、1930年代にすでにアメリカやイスタンブールという国を超えた行き来がここまで一般的だったことに驚かされた。海外旅行はここ20年ぐらいで一般的になってきたものという認識なのだ、それはあくまでも飛行機による旅の話で、電車や船による移動、特に大陸間ではもっとずっと前から一般的だったのだろう。

感想としては、確かに予想外といった印象で、当時としては新鮮だっただろうと感じた。他にも「アクロイド殺し」も名作とよく聞くのでどこかのタイミングで読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「オリエント急行の殺人」

「ユダヤ人大富豪の教え」本田健

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1年間アメリカに滞在した著者はそこでユダヤ人の大富豪であるゲラー氏と出会う。その後の著者の人生に大きく影響を与えたゲラー氏の教えを描く。

さまざまな場所で本書の名前を耳にしながらも読んだことがなかったので今回手に取った。

ゲラー氏は著者に、世の中で生きる人を自由人と不自由人という2つの種類に分けて説明している。自由人になるためには、目の前にあることを好きになるべきで、好きであれば、どれだけ時間を費やしても楽しく、その楽しさは人に伝染すると語っている。

またお金の原則としてつぎの5つを語っている。

  • 1.たくさん稼ぐ
  • 2.賢く使う
  • 3.がっちり守る
  • 4.投資する
  • 5.分かち合う

好きなことに時間を費やすことの力や、投資の話に特に驚きはなかった。本書を読んで改めて思ったこととしては、僕自身人脈への意識が薄いということである。本書の「多くの人に気持ちよく助けてもらう」「人脈を使いこなす」に書かれていることは少しでも実践していきたいと思った。

偉い人には、あたかも彼がえらくないかのように接しなさい。そして、えらくない人には、あたかもその人が偉い人のように接しなさい。
もし自分でできたとしても、できるだけ多くの人を巻き込んで助けてもらうことだ。そしてその人たちに感謝して喜んでもらうことが君の成功のスピードを速めるのだよ。

人脈の大切さやお金の投資の重要性はそこら中で語られているので、本書で書かれていることは特に新鮮というわけではない。例えば「夢をかなえるゾウ」なども同じようなことを言っている。しかし、このような生きる上での大事なことは、繰り返し触れてなんども思い出し自分の人生の軌道修正をするのに必要であり、そういう意味では本書もまた有益なのだと感じた。

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