「むかし僕が死んだ家」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本にもいろんなタイプがあって、感動する本、悲しい本、笑える本などである。この本を「どんな本か?」と聞かれたら「作者のセンスを感じる本」とでも答えるだろうか。この設定、ストーリーそして、この読ませ方を思い付く作者のセンスがすごいのである。
小学校の入学式以前の記憶のない女性と、その友人がてがかりがあるであろう一軒の家を訪れ、その家にあるものを調べ行く内に徐々に真実が明らかになっていくという話である。要所要所にたくさんの伏線がしいてあるので、これから読む人は油断しないで読んでいただきたい。
ストーリーを楽しむだけで特にこの本から得た知識や刺激はほどんどなかったが、相変わらず東野圭吾作品らしくは、複雑なことを考えずに一気に読める。青春18きっぷの鈍行旅行の最中に読んだのだが、そんなシチュエーションにぴったりだった。
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「パラレルワールド・ラブストーリー」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
主人公が自分の記憶に違和感を覚えることから物語は始まる。記憶の操作をテーマとした作品は昔からたくさん出ているが、この作品は日常的な恋愛がその中に絡んでくる。さすが東野圭吾と思わせるぐらい最初から最後まで一気に読める。
主人公たちが、記憶を書き換えるための研究を行っていることから起きるストーリーであるが、その内容は意外と興味をそそられる。考えてみると、小さな記憶の書き換えは誰の記憶にでも起きていることだ。幼いころの思い出を映像として思い浮かべると、自分の視点で見ていた出来事なのに、その映像の中に自分がいる。なんてことはよくあることで、それも些細な記憶の書き換えの一種なのかもしれない。
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「秘密」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第52回日本推理作家協会賞受賞作品。
広末涼子主演で映画化されたのが1999年。もう5年も前の話である。そのような理由から、「交通事故によって死んだ母親の直子が娘の藻奈美の体の中に蘇る・・」というプロローグぐらいは知ったうえで読みはじめることになった。
僕がもう一度人生をやりなおせるとしたらどんな生き方をするのだろう・・?後悔しない人生を送ることをこころがけているとはいえ、やり直したいところはたくさんある。そう考えると、この本の中で藻奈美の体を借りて人生をやり直すことになった直子が選んだ生き方は非常に共感できる部分があるのだ。
何か一つのことを目指してひたすら突き進む人生、いろんなことを楽しむ人生。どちらがいい人生かはわからない。誰にとっても人生は一度きりなのだから。だからこそこの本を読んで思った。人生をやり直すということは、もっとも贅沢な願いであり、誰しも心の奥で抱いている願いではないだろうか・・昔話で良く出てくる「永遠の命」なんて、それに比べたらなんて小さなモノだ。
これから、「もし願いが一つ叶うとしたらどうする?」、そう聞かれたら、「人生をやり直す」そう答えることにしよう・・・いや、しかし、これもまたずいぶん後ろ向きだな。
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「世界の中心で、愛をさけぶ」片山恭一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
基本的にはハードカバーの本は買わない。文庫の方が持ち運びにもいいし、値段も安いからだ。それでも、映画化、ドラマ化が進み、「本を読んでから映画を見る」という自分のポリシーに反するので遅ればせながら読むことにした。
2時間程で一気に読める。感想は?というと、とりあえず「狡い(ずるい)」と言いたい。もちろん泣けるのだが、一人の元気だった女性が少しづつ死に近付いて行くのを見れば誰だって涙が込み上げてくるだろう。それが活き活きと生きている人であればなおさらである。せっかくだから、インターネットという広い世界の片隅で僕も叫ばせてもらう。「泣ける話=いい話、では決してない!」と。
しかし、泣くことも、笑うことと同様に今の単調な世の中に生活している人にとってはいいことだ。そういう意味ではオススメする。ちなみに、TBSでドラマ化された「世界の中心で、愛をさけぶ」を見ているが・・たぶん毎週号泣するだろう。一人暮らしのメリットを生かして。
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「川の深さは」福井晴敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
福井晴敏の本はいつだって強い意志も持ち主が出てくる。彼等が大好きだ。
「平和が決して無償で与えられる恩恵ではないことを知る必要が有る」そんなメッセージが胸に響く。日本という国に生まれた以上、知らず知らずのうちに「平和は当然」。そう感じてしまっているのだ。
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「一瞬の光」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本を代表する企業の人事課に勤める橋田。幼い頃から母親と兄から虐待を受けて来て、誰にも心を許すことの出来ない20才の女性、香折(かおり)。社長の姪ということで何不自由なく育てられた琉衣(るい)。
登場人物は嫌味なぐらい完璧な人が多い。中でも主人公である橋田は美男子であり、お金も地位も女も持っているのでなかなか共感しにくい。それでも橋田のような、わき目もふらず会社のために生きている生き方は、日本の社会の中では多いのかもしれない。会社の組織の上に行くにしたがって、同僚などを蹴落として行かなければならない現実は感じさせてくれた。
全体的には男1人女2人の三角関係を描いたストーリーなのだが、裏には深いのテーマがちりばめられている。生まれつき困難を背負う人のわずかな愛情と、暗然な立場にいる人の豊富な愛情では、後者の方が分があるかもしれないが、しかしそれがそのままその人の人間の価値と比例するとは言えるだろうか。僕の心に残ったのはそんな問いかけだ。
そしてラストは涙なしには読めないだろう。満足させてくれた内容ではあったが、「本の雑誌が選ぶ2003年度<文庫>第2位」という評価には少々首をひねらざるを得ない。
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「砦なき者」野沢尚

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1994年、松本サリン事件のとき河野義行(こうのよしゆき)さんが容疑者として扱われたことがあった。テレビでニュースを見ていた僕は「こいつが犯人だろう」みたいに思っていた記憶がある。僕は、履歴書の「長所」の欄に「周囲には流されない性格である」と書くことが多い。それでもメディアの報道には知らず知らずのうちに流されているのだと思う。なぜなら情報化社会の現代において、インターネット、新聞、テレビを通じた情報を得ないでは生活できないからだ。
「砦なき者」ではニュース番組「ナイン・トゥ・テン」のディレクターの赤松を主人公としている。「テレビはこんなこともできてしまうのか」そう思わせる。個人的には物語の序章に当たる、第一章が印象的である。ニュースは真実を報道しなければならないのか、正義のためには偽りの報道をしても許されるのか、そんな疑問が生まれてくる。前作「破線のマリス」の続編に当たるが、もちろん前作を読んでいなくても99%この作品を楽しむことができる。
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「すべてがFになる」森博嗣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
森博嗣の本を始めて手にとった。密室で起こった殺人事件の謎が少しづつ明らかになって行くというストーリーはある意味ありがちともいえるが、その中で数学的な考えがたくさん出てくる。文系の人にはどのように受け取られるかわからないが、好きな人は好きな本だろう。主人公である犀川先生の考え方にときおりうなずかされることがある。

「深紅」野沢尚

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第22回吉川英治文学新人賞受賞作品。
凶悪犯罪が起きてもあまり驚かないようになった。1年も経てばワイドショーをにぎわせた犯罪も記憶の片隅に追いやられてしまう。「深紅」は一家残殺という事件で唯一生き残った少女を主人公としている物語である。

「破線のマリス」野沢尚

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第43回江戸川乱歩賞受賞作品。
テレビというメディアには力がある。ほんの数十秒の映像で世の中を味方にも敵にもできるのだ。「破線のマリス」の中では、編集によって真実とは別の意図を持った映像が電波に乗って流れて行くシーンがある。実際、現代でも世間の思いをある方向に導こうとする、おおげさな表現や映像は使われていると聞く、そんな中この作品の中で作者が必死になって伝えようとしているのは、今見ている映像が真実かどうか、それを疑い、それを判断する力をつけろということだ。幸いなことに僕らはインターネットという道具を手にしている。真実を探すことができるではないか。
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「奪取」真保裕一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第10回山本周五郎賞受賞作品。第50回日本推理作家協会賞受賞作品。
真保裕一の本が好きなのは、物語を楽しむと同時に、幅広い知識が身に付くからだ。そういう意味でこの「奪取」はお金、特にお札に関する知識がたくさん付いた。ただ、物語よりもお札の印刷技術、そこに重点を置き過ぎた感が有るのが残念。僕の評価では真保裕一の作品の中ではあまり高いとは言えないが、「この本が一番」という友人もいるので、好き嫌いが別れる本なのかもしれない。
とりあえず偽札づくりの知識は付くかも知れないです。それと同時に偽札づくりなんて無理。そう思います。