「チームバチスタの栄光」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。
バチスタ手術の天才外科チームで原因不明の術中死が立て続けに起こった。田口(たぐち)医師は真相の究明に挑むこととなる。
病院という舞台を扱ったミステリーである。昨今のよくある病院内の物語と同様に、本作品でも医者の上下関係や立場を重視する姿や、その閉鎖的な世界の現状が描かれている。本来、人の話を聞くことを得意とする田口がチームバチスタのメンバーから話を聞くことで真相をつかもうと努める。よくあるミそして、人の話を聞くことを仕事としている田口であるがゆえの目線が、個人的に本作品で印象に残った。

人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。

同時に日本の医療の問題点も随所に散りばめられている。

文化人や倫理学者に発言させ、子供の臓器移植を倫理的、あるいは感情的に問題視させる。日本で子供の臓器移植を推進しようとすると足を引っ張る。米国で行われる手術は美談として支援し、日本では問題視する。同じ小児心臓移植なのに、おかしいと思いませんか

中盤から白鳥(しらとり)という真相救命の鍵を握る人物の登場以降、既にそこまでにも頻出していた専門用語やカタカナ言葉が一気に増える、その一方でいつまで経っても話の展開にスピードが感じられなかったのが残念である。「このミス」大賞の評価には疑問が残る。


拡張型心筋症
心筋の細胞の性質が変わって、特にに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気。

【楽天ブックス】「チームバチスタの栄光(上)」「チームバチスタの栄光(下)」

「明日の記憶」荻原浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第18回山本周五郎賞受賞作品。
広告代理店営業部長の佐伯(さえき)は、若年性アルツハイマーと診断された。仕事や日常生活が少しずつ出来なくなって行く中で悩み、生き方や人間関係を考えていく。
昨年やっていた、2時間ドラマの原作だと気づいたのは読み始めてからである。今回は萩原浩という最近よくみる作家の代表作に触れるという意図しかなく、アルツハイマーを扱った作品だと知らなかったので少し後悔した。「世界の中心で愛を叫ぶ」などと同様に、一人の元気だった人間が病気によって次第に衰えていく様子を描く作品は、涙腺を刺激することはあっても内容の濃いものであることは少ない。この作品もまた、人を涙させるためのもっとも安易な手法を採ってしまっただけで、とりててて大きなテーマもない作品ではないか、と。
物語は最初から最後までアルツハイマーに犯された佐伯(さえき)本人の目線で進む。生き方に悩んだり次第に物事を忘れていくことで、数ヵ月後の自分を想像して恐怖する姿は描かれているのだが、その心情描写がリアルだとは残念ながら言い難い。見所はむしろ妻である枝美子(えみこ)の夫を支える姿なのではないだろうか。また、アルツハイマーと診断されてから、佐伯(さえき)は「備忘録」と名付けた日記を書くことを習慣づける。その日記が作品の中の要所要所に登場するのだが、次第に同じことを繰り返し書かれたり、間違った漢字を使い始めたり平仮名が多くなったりする。それによって次第に病状が進行していくことを表現しているのだが、そんな手法も本作品の個性と言える。

記憶が消えても、私が過ごしてきた日々が消えるわけじゃない。私が失った記憶は、私と同じ日々を過ごしてきた人たちの中に残っている。

読み進めるに従い懸念したことが現実となる。徐々に記憶を失っていくその姿は悲しく、アルツハイマーという病気の恐ろしさは伝わってくるが、内容自体にあまり密度を感じない。それでも最後の2ページは著者の思惑通り涙が溢れ出た。このラストシーンを描きたくて著者はこのテーマを選んだのだろう。そう思った。


たたらづくり
板状に伸ばした粘土を型紙に合わせて切り取り、石膏型などにかぶせて成型する陶器の技法の1つ。

【楽天ブックス】「明日の記憶」

「スピカ 原発占拠」高嶋哲夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本海沿岸に建設され、稼動間近となった原子力発電所がテロ集団に占拠された。原発の建設に一役買った日野佑介(ひのゆうすけ)、ジャーナリストの中川仁美(なかがわひとみ)。それぞれが信念に従って奔走する。
「ミッドナイトイーグル」で興味を持った高嶋哲夫作品の、僕にとっては二作目である。タイトルからイメージされるように、テロ集団による下視力発電所の占拠という事件と絡めて、原発の利点とその脅威を訴える物語である。物語は何人かの視点の間を行き来するが、それぞれの原発に対する考え方が異なっていて、そのいずれかが読者の考え方と重なるだろう。原発制御プログラムの開発者である日野佑介(ひのゆうすけ)はもちろん、「原発とは絶対安全なもので過去の原発事故はすべて研究者の怠慢、もしくは犯罪行為によって生じたもの」と考える。

あれは事故ではなく犯罪ですよ。我々をあのレベルで見られてはたまりませんよ。いまロシアでは子供や老人が寒さに震え、工業が崩壊している。それを救うのは原子力しかない。

そして、環境保護団体に所属する中川仁美(なかがわひとみ)は穏健派でありながらも原発反対の意見を口にする。

会社と政府の最終目的はこの巨大プラントを世界に売り出すこと。地球を原発で埋め尽くそうとしているの。コンピュータで管理された絶対に安全な巨大原子力発電所という商品をね。

また、日野(ひの)の娘である由香里(ゆかり)の主張は、深く物事を知りもしないで「私は立派なことを言っている」という気持ちに浸りたがる多くの人間を代表しているようだ。

原子炉や廃棄物から出る放射能で地球は汚染されて、癌がたくさん発生したり、障害児が生まれるんでしょう。いま、地球は死にかけているのよ。ゴルフ場から出る農薬で水は汚染されて、田や池の魚は死んでいるし、チョウチョやトンボも10分の1に減っているの。

どれも一部正しく一部簡単には解決することのない理想論である。物語はそんな原発に対する大きなテーマを抱えたまま、テロ集団と自衛隊との戦闘シーン、そしてその背景にある大きな陰謀へと広がっていく。最後にロシアの科学者のサリウスが語る台詞は決して答えのない先進諸国に対する問いかけで、個人的には本作品で最も印象に残った言葉である。

世界に科学者という愚かな者がいなかったら、人類はもっと幸福になれたのではないか。進歩という名目で、科学者はその知的興味だけを追っていたのではないか。いま、その科学が地球をも破壊しようとしている。

しかし、知識人たちが何を訴えたところで、他国を蹴落とすことばかりを考える国際社会は、両刃の剣を研ぎ続けることを各国の科学者達に強いるのだろう。この流れはきっと、世界が一度滅びない限り変わらないのだ。
本作品で感じたのは、どうやら高嶋哲夫という作者は銃撃戦などの戦闘シーンを好むようだ、ということ。それは映像化にあたっては非常に面白いのかもしれないが、状況を視覚的に訴えにくい小説においてはあまり推奨されるものではないかもしれない。戦闘シーンにページ数を作なら、小説ならではの詳細な心情描写でテーマをもっと深く掘り下げてほしいと感じた。
さて、僕自身は原発に対しては肯定派でも否定派でもない。残念ながら現時点では原発に対する自分の意見を堂々と主張できるほどの知識を持ち合わせていないのである。ただ、何の代替案もしめさずにだた「原発反対」と訴える人々の行動には違和感を感じる。火力発電に頼れば二酸化炭素が排出されるし、水力発電、風力発電に頼れば電気料金は高騰する。結局原発廃絶には電力の消費を抑えるか、高額な電気料金を国民が受け入れるしかないのである。にもかかわらず代替案を提示せずに「原発反対」と訴え続ける市民団体や、安易にそれを支持する人々は浅はかとしか思えない。個人的にも原発の仕組みをもう少ししっかり理解し、その可否に対する考えを時間をとってしっかりまとめておきたいものだ。
こういう風に思ってしまうこと自体、著者の思惑にはまっているのかもしれない。


スーパーフェニックス
フランスの高速増殖炉。本格的に稼働を開始したのは1986年であるが、その後燃料漏れや冷却システムの故障が相次ぎ、1990年7月に一旦稼働を停止した。最終的にフランス政府は1998年2月に閉鎖を正式決定し、同年12月に運転を終了した。(Wikipedia「スーパーフェニックス」
松川事件
1949年に福島県で起こった鉄道のレール外しによる意図的な列車往来妨害事件。
参考サイト
Wikipedia「スリーマイル島原子力発電所事故」
Wikipedia「チェルノブイリ原子力発電所事故」
「もんじゅ」がひらく未来

【楽天ブックス】「スピカ 原発占拠」

「硝子のハンマー」貴志祐介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第58回日本推理作家協会賞受賞作品。
介護サービス会社の社長が社長室で撲殺死体として発見された。弁護士の青砥純子(あおとじゅんこ)は防犯コンサルタントという肩書きを持つ榎本径(えのもとけい)の協力を得て真実を解明しようとする。
「青の炎」以来しばらく文庫化作品のなかった貴志祐介の久々の文庫化作品。「ISOLA」「黒い家」でホラー作家というイメージを世間に与えているようだが、僕の中ではそこまではっきりとした個性は確立されていない。本作品も、彼の中の王道作品というよりも実験的な色合いが濃いようだ。
前半部分は青砥純子(あおとじゅんこ)と榎本径(えのもとけい)の犯罪の行われた密室の謎を解くために奔走するシーンで終始する。防犯コンサルタントである榎本(えのもと)は、トリックの可能性への言及の際、セキュリティに関することを多く語る。物語の中に、展開以外に新しい知識へのきっかけを求める僕にとっては、専門分野への詳細な描写は嫌いではないのだが、それは時に、読者を飽きさせ物語のスピード感を損ねてしまうという諸刃の剣である。本作品ではその執拗な説明は僕にとってもややうんざりさせるものであった。
ひたすら犯行の可能性を潰していくという、この前半部分は、ずいぶん長いこと読んでいなかったよくある推理小説を思わせる。最新技術を用いて徹底的にトリックを検証する展開は、森博嗣の犀川創平・西野園萌絵シリーズと似た雰囲気を感じた。
そして、そのままトリックを終盤に解明して終わればなんてことないただの推理小説として終わってしまっただろう。ところが中盤に差し掛かったところで一転、物語は数年前の犯人の目線に切り替わる。
親の不幸からヤクザに追われる身となり逃亡を決意する。わずかな期間で別人の名前の免許証を手に入れ、逃亡するその手口は非常にリアルで、管理の行き届いた日本の社会といえども、身分を偽って生きることがそれほど難しくないことを知るだろう。逼迫したその「殺らなければ殺られる」という犯罪の布石となる考え方が犯人の心の中に形成されたことを無理なく受け入れさせるだろう。
最後には、日本の犯罪者に対する再教育体制の問題にも触れている。

懲役や禁固というのは、受刑者を、一定期間、世間から隔離する処置にすぎませんし、刑務所側が腐心しているのは、その間、問題を起こさせないようにすることだけです。極端に言えば、出所後、何をしようと知ったことではない。当然ながら誰一人。責任は取りません。だからこそ、これだけ、再犯率が高いんじゃないですか?

全体的には物語のテーマがぶれている印象を受けた。作者がこの物語で見せたかったものは何なのか、前半のような謎解きのミステリーなのか、最後の犯罪を犯した若者が構成されずに一時的に社会から隔離されるだけの日本の犯罪者に対する更正体制の怠慢なのか。もちろん双方なのだろうが、もう少し一貫したテーマでコンパクトにまとめるべきだったのではないだろうか。


ブルディガラ
ラテン語で「ボルドー」の意味。仏・ボルドーのシャトーから直輸入のワインを中心に、パスタや備長炭を使った料理などヨーロッパを主体とした各国のエッセンスをプラスしたフレンチレストラン。
ディンプルキー
鍵の表面に深さや大きさの異なるくぼみがいくつかあり、このくぼみの深さや大きさを変えることによって、約2935億通りの鍵のパターンができるとされるので、鍵の複製が非常に難しい。シリンダー内に6本のピンが一列に並んだものが上下左右、さらには斜めにもディンプル穴があるのでその角度まで合わせるのはほとんど不可能とされており、ピッキング対策に優れている。ディンプルキーにはシリアルナンバーが打ってあり「完全登録システム」が採用されているので、シリアルナンバーと登録者が一致しないと合鍵も作れません。また、鍵がリバーシブルタイプなので、鍵の上下を気にすることなくスムーズな開錠が可能。
ドリリング
ドリルなどを使用し、家屋を破壊し侵入する手口。
ジルコン
花崗岩の中に普通に見られる石の中でも、比較的稀な性質を持った宝石で磨くとダイヤモンドに迫る美しい宝石となる。ジルコンとはアラビア語で“金色”を意味する“zargoon”からきている。通常ジルコンは無色透明のものが知られているが、含有物により、黄色、オレンジ、青、赤、褐色、緑などの色がある。
ルビコン川
イタリア北部を流れる川で、アペニン山脈より東へ流れ、アドリア海に注ぐ。共和政末期の古代ローマにおいては、本土である「イタリア」と属州の境界線をなしていた。紀元前49年1月10日、ガイウス・ユリウス・カエサルが「賽は投げられた」(Alea iacta est)の言葉とともにこの川を渡ったことはよく知られている。「ルビコン川を渡る」は以後の運命を決め後戻りのできないような重大な決断と行動をすることの例えとして使われる。(Wikipedia「ルビコン川」
クレセント錠
窓などに取り付ける錠でほとんどの窓がこのタイプの錠を使っている。2つの金具からなり、1方はフック型の部分をもつ外側の扉に固定された金具で、もう1方は、把手の付いた半円状の盤に突起を設けた金具で内側の扉に固定される。
ガンザー症候群
ヒステリー性心因反応による退行状態である。的外れ応答をなす偽痴呆であり、拘禁反応として生じやすい。
捲土重来(けんどちょうらい)
敗れた者が、いったん引き下がって勢いを盛り返し、意気込んで来ること。
体感機
パチンコ・パチスロなどの遊技台の攻略に用いられる器具の一種。大当りなどのタイミングを振動によって打ち手に知らせる機能を持つ。(Wikipedia「体感機」
モース硬度
主に鉱物に対する硬さの尺度のこと。硬さの尺度として、1から10までの整数値を考え、それぞれに対応する標準物質を設定する。ここでいわれている「硬さ」とは「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」であり、「叩いて壊れるかどうか」の堅牢さではない。ダイヤモンドは砕けないというのは誤りであり、ハンマーで叩くなどによって容易に砕けることもある。(Wikipedia「モース硬度」
向精神薬
精神に働きかける作用を持ち、精神科などで使用される薬剤のこと。向精神薬には第1種から第3種まであり、いずれも医師の処方箋が必要な処方薬であり、中枢神経に作用して、精神機能に影響を及ぼす物質(医薬品としては抗不安薬、催眠鎮静薬、鎮痛薬等が該当)であって、麻薬及び向精神薬取締法及び政令で定めるものを言う。(はてなダイアリー「向精神薬」
ドレープカーテン
厚手のカーテン・室内側のカーテンのことを指す。日本では、厚手の室内装飾用の布地の意で使われている。
参考サイト
鍵と錠前の知識

【楽天ブックス】「硝子のハンマー」

「K・Nの悲劇」高野和明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
妊娠した夏樹果波(かなみ)と夫の修平(しゅうへい)は経済的な理由から中絶を決意する。しかし果波(かなみ)の中に突如別の女性の人格が現れ、子供を中絶から必死で守ろうとする。
物語は夫である修平(しゅうへい)と産婦人科出身の精神科医である磯貝(いそがい)の視点で進む。磯貝の視点はもちろん医者であるがゆえに専門的知識を持ち合わせ、果波(かなみ)の別人格の不可思議な言動を医学的に説明していく。その一方で、夫の修平(しゅうへい)は一般的な男を代表しているようだ。
修平(しゅうへい)は、人口妊娠中絶という決意をしたことで、落胆した果波の姿を見てようやく、ただ一瞬の快楽のためだけに性行為に走り、その結果できた人の命を法律的な咎めもなく処理することの重大さと、女性に与えた精神的な苦痛の大きさを知る。これは本作品を通して著者が、世の中の若い男女に向けて訴えかける一貫したメッセージであり、同時にそれは、性行為を煽るような昨今のメディアなどにも向けられている。そして、そんなテーマであるがゆえに、生命の重さに対する訴えも当然のように散りばめられている。

日本では一年間に百五十万人の女性が妊娠し、そのうちの三十四万人が中絶手術を受けるんです。中絶胎児が人間だと認められれば、日本人の死亡原因のトップはガンではなく、人口妊娠中絶ということになります

さらに磯貝(いそがい)の産婦人科医時代の経験が、そのテーマの重要性を読者の中にさらに強く印象付けていく。

どうしてぼくをこんなに早く外に出したの?

嬰児がそう言って抗議しているように見えた。法律では、妊娠二十一週以内の胎児は人間ではない。したがって中絶は殺人ではない。だがそんんな法律上の区分けは意味がないと思った。この子は生きたいのではないか…

中盤から、果波(かなみ)の中に現れた人格の行動は次第にエスカレートしていく。それによって憑依という霊の存在を信じかける修平(しゅうへい)と、解離性同一性障害という見解を最後まで貫き通し、知るはずのないことまで知っている果波(かなみ)の言動をこじつけとしか思えない説明で片付けていく磯貝(いそがい)の対比が面白い。そこには、どんな事象に対しても症例名を当て嵌めることの出来る現代の医学の矛盾と危うさが見える。

精神医学は科学であろうとするあまり、不可解な現象にも強引に説明をつけようとする嫌いはあります。現代の精神科医をタイムマシンに乗せて、イエス・キリストに会わせれば、目の前の青年は妄想性障害だと診断するでしょう。

言葉で説明できない出来事を何度も目にして、それによって、霊の存在へ傾倒しはじめる修平(しゅうへい)の姿は、特異でもなんでもなく、誰しもが持っている心の弱さだろう。そんな弱さに対して「情けないヤツ」と思わせない辺りが、病院の入院患者の間に起こった幽霊の話など、世の中で起きている不可思議な出来事にもしっかり触れている著者の構成の見事さなのだろう。
「生命の尊さ」という使い古されたテーマに、SF的ともオカルト的とも取れる不可解な要素と科学的見地からの要素を加えて、見事にまとめている。他の今までの高野和明作品にも共通して言えることであるが、その主張は世の中で言われていることと大きく隔たるものではない。本作品中で訴えられていることも結局は「命は大切」というよく言われることである。ただ、その伝え方に説教臭さは微塵も感じられない。読者は読み終えたあとには自らそのテーマについて深く考えようとするだろう。そこに高野和明の技術と個性が見える。


HLA
「ヒト白血球型:Human Leukocyte Antigen」で、その頭文字からHLAと呼ばれる。
群発自殺
ある自殺がセンセーショナルに報道されることにより、他の自殺が誘発され、流行的に自殺者が増えること。
希死念慮
死にたいと思うこと。自殺願望とは異なり、他人からはわかりづらい理由によるもの。

【楽天ブックス】「K・Nの悲劇」

「千里眼 美由紀の正体」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
政治的立場を利用して、女性に淫らな行為を働いた男性に対して、強烈な怒りと共に制裁に走った岬美由紀(みさきみゆき)。普段は冷静にもかかわらず時に暴走するその理由は一体なんなのか。美由紀(みゆき)の幼少期の真実が明らかになる。
起こるはずもないと思われる出来事で読者をひきこみ、物語中でその出来事についてはさりげなく解決してみせる、そしてそのころには物語中にどっぷり浸かっている。松岡圭祐がよくやる手法がこの物語でも健在である。
人の心を読むことができながら、恋愛経験が乏しいばかりに人の恋愛に関する意識だけは読むことが出来ない。「千里眼」シリーズでは過去何度もそういうシーンがあり、そこが非のうちどころのない主人公である美由紀(みゆき)に読者が親しみを覚える理由なのだろう。今回は、なぜ美由紀が恋愛経験が乏しいのか、という点に深く踏み込むことになる。
第2シリーズに入って展開がやや大人しくなっていたが、今回は自衛隊時代の美由紀の恋人で、第1シリーズの「ヘーメラーの千里眼」で重要な役どころを演じた、伊吹直哉(いぶきなおや)が多くのシーンに登場したのがこの作品をより常識はずれで、面白くしているのだろう。そうでなくとも、自衛隊という組織が絡むといつだって千里眼シリーズは面白くなる。なぜなら、自衛隊は日本でもっとも矛盾を孕んだ組織だからだ。今回はそんな自衛官、伊吹が語る言葉がもっとも印象的だ。

自衛官ってようするに、人殺しの候補ですからね。自衛隊は、幹部候補生だろうが一般学生だろうが、人型の的の眉間を撃ち抜く練習を積むし、突進していって人形の胸を銃剣でぐさりと刺す。自衛隊という組織で優秀だと認められたことはすなわち、侵略してきた外国人を殺すにあたり、極めて秀でているという国家のお墨付きを得たということです
目的は手段を正当化するんだよ。外国人が侵略してきたらその時点で戦争だから、殺してもいい。俺たちは自衛隊でそう教わっている。じゃなきゃ、俺たちはなんで十八歳から人殺しの訓練を受けてたってんだ?

物語は、人身売買などの問題も絡んで進んでいく。貧富の差がある限り、地球上から永久になくなることのない人身売買問題に改めて興味を持った。
物語中で、珍しく自信を失う美由紀は終始自分の孤独感に苛まされる。しかし、美由紀(みゆき)のように物事の大部分を自分で解決することができる人間は往々にして孤独なことが多い。これは仕方が無いことである。なぜなら、人は人間関係の中にいつだってギブアンドテイクを求めている。頼られてこそ、その人を頼っていいと誰もが思うのだ。つまり、人に頼ることのない人間は、人から頼られることも少ない。そうすると美由紀(みゆき)のような人間に頼ってくる人はいつだって本当に無力な人ばかり。それでは対等な人間関係は築けないのだ。そんなことが何故か物凄く理解できてしまう。


ヴェイロン
ブガッティ オトモビル SASが製造・販売するスーパーカー。(bugatti.com
トゥール・ダルジャン
1582年、パリ・セーヌの岸辺から始まり、各国の王侯貴族が集う美食の館としてフランス料理の歴史と伝統を育んできた店。パリに本店を持つ。世界唯一の支店である「トゥールダルジャン東京店」はホテルニューオータニの中にある。
ガンザー症候群
人格障害と関連性のある症状。曖昧な受け答えや前後の文脈と関係のない的外れな話をしたりする。

【楽天ブックス】「千里眼 美由紀の正体(上)」「千里眼 美由紀の正体(下)」

「水の迷宮」石持浅海

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
羽田国際環境水族館発展のために尽くしていた職員がある日、不慮の死を遂げた。そして3年後のその日、水族館宛てに脅迫メールが届く。古賀孝三(こがこうぞう)と深澤康明(ふかざわやすあき)を含む十数名の職員、関係者達は、水族館の未来を守ることを最優先事項としながら事態の解決を試みる。
物語は水族館と言うあまり馴染みのない場所で展開する。そのため物語を通じて普段知ることのできない世界の舞台裏を知ることができる。それは小説という媒体に限らず、物語に触れる中で得られる楽しみの一つであるが、同時に、想像しにくい舞台で物語が展開されるために、その臨場感が伝わりにくいというデメリットも孕(はら)んでいる。特にそれは、視覚に訴えることの出来ない小説という伝達方法で顕著に現れる。
さて、この物語において、一連の謎の解明にもっとも貢献するのは深澤康明(ふかざわやすあき)である。探偵モノのミステリーと同様に、彼の分析力と論理的なものの考え方、伝達力はこの物語の大きな見所と言えるだろう。ただ、他にも数名状況に応じて的確な考えを述べる登場人物がおり、深澤(ふかざわ)を含めた彼等の言動があまりにも的確すぎて、物語を意図的にある方向へ導いているような印象さえ受ける。(もちろん著者によって作られた登場人物が著者の意図した方向に物語を進めようとするのは当たり前なのだが)。その不自然さが登場人物の人間味を薄れさせているような気がする。
物語は終盤まで、犯人の脅迫メールに応じて職員が対応するという展開で進む。そのミステリーの中では非常にありがちな展開は読者をやや飽きさせることだろう。上でも述べたようにメインの数名以外の登場人物にあまり人間味が感じられないこともまた、物語の吸引力を弱めている要因の一つなのかもしれない。
このまま深沢(ふかさわ)が格好よく真相を解明して終わるのだろう、と思いながら読み進めていたが、終盤にきて、ぞくりとするような展開や台詞が待ち受けていた。ラストのわずか数ページが、この作品をどこにでもある退屈なミステリーとは一線を画す存在に変えているといっても過言ではない。それは前回読んだ石持作品の「月の扉」にも共通して言えることであり、これが石持浅海の個性なのかもしれない、と、二作目にして著者の輪郭が見えたような気がする。

夢を語ることは誰にでもできる。けれどそれを実現に導くのは周到な準備と、それに続く労力だ。実際にはなにもせずに、夢だけを語る人間のなんと多いことか。

ホーロー
金属(鉄)の表面にガラス質のうわ薬を塗り高温で焼き付けたもののこと。鉄のサビやすさ、ガラスのもろさというそれぞれの欠点を補う効果がある。
リーフィーシードラゴン
海水魚の一種。タツノオトシゴに似ている。(Wikipedia「リーフィーシードラゴン」)

【楽天ブックス】「水の迷宮」

「月の扉」石持浅海

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
柿崎修(かきざきおさむ)、真壁陽介(まかべようすけ)、村上聡美(むらかみさとみ)の3人は、那覇空港で離陸直前の航空機をハイジャックした。沖縄のキャンプ仲間で不思議な力を持ちながら、警察幹部の陰謀によって不当逮捕された石嶺孝志(いしみねたかし)を奪還するためである。
ハイジャックを実行した3人がいずれもどこにでもいるような善良に市民であり、だからこそ殺人や一般市民を脅威に晒すことに対して人並みの罪悪感を抱く。ハイジャックされた航空機の中の描写は、そんな犯人の一人である聡美(さとみ)の視点で展開するからこそ、テロリストのハイジャックを扱ったような良くある作品にはない、この作品独自の面白さが際立つのだろう。
そして、この物語の中で何より魅力的なのは、偶然ハイジャック機に乗り合わせ、重要な役どころを担うことになった若い男性、通称「座間味くん」である。(むしろ彼が主人公のようにも感じる)。もちろん本作品がフィクションであるがゆえに容易に作り出せるキャラクターではあるだろうが、彼のようにどんな状況においても冷静に先入観を持たず、状況に応じて的確な決断が下せるような人間になりたいものだ。
物語は目的を同じくしながらも各々の採る手法の違いから、思わぬ方向へと進んでいく。そんな展開の中で通称「座間味くん」のつぶやいた言葉が印象的である。

思い出してほしい。他人からの悪意に耐えられるということは、他人への悪意を持つことができるということなんだ

また、本作品中ではあまりその人柄の描かれることのなかったカリスマ、石嶺孝志(いしみねたかし)の存在も読者を惹き付ける要素の一つだろう。一緒にいるだけでその人の心を少しずつ変えてしまう人間。そんな人に今まで僕は会ったこともないが、存在を否定するつもりもない。科学では説明できないなにかの力。それはいつだって僕の好奇心を強く刺激するのだ。
今回、石持浅海(いしもちあさみ)の作品に始めて触れた。題材のせいか、著者のポリシーのせいかはわからないが、本作品には、世間の見方を変える様な印象的なエピソードも、新たな物事を知るためのきっかけもほんのわずかしか含まれていなかったが、始めから終わりまで一気に読ませるその展開力は秀逸である。さらなる傑作を期待して、しばらく石持浅海の作品を注目していこうと思った。


泡盛
今から約500年以上前の琉球王国時代から作られている沖縄だけの特産酒のこと。
シェラカップ
キャンプ用品。食べ物にも飲み物にも使用できて軽量カップ代わりのも使えるもの。

【楽天ブックス】「月の扉」

「霊柩車No.4」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霊柩車の運転手を務める怜座彰光(れいざあきみつ)。その特異な職業とその周囲で起こった事件を物語にしている。
霊柩車の職業という普段接することのない人間を主人公にしているためにその周囲で起こる一般の人にとっては非日常的である日常的なことの描写のすべてが非常に新鮮で面白い。途中、やや現実離れした展開も見せるが、それはあとがきで作者も言及している通り、意図的なもののようだ。物語中で、死に近い場所で毎日生活しているからこそ至ったであろう考え方がしばしば出てきて、それがとても面白い。

私やきみは死と向きあって日々過ごしているが、世間の人々はちがう。ふだん、死というものを忘れている。すなわち、生というものすら意識しないんだ。

千里眼シリーズ、催眠シリーズ、マジシャンシリーズなど、終わり方を見るとこの怜座彰光(れいざあきみつ)の物語も続編へと続きそうな気配を持っていた。今回は第1作ということで、その特異な環境やその職業の社会との関わりだけに触れるだけで、とりたててしっかりとした筋や世の中を風刺した内容を伴っていなくても、ある程度読者を満足させることができたであろうが、自作からはしっかりとしたテーマが必要になってくるだろう。次作はその辺に注目して読んでみたい。


クリープ現象
アクセルを踏まなくても勝手に動き出す現象のこと。這い出し現象。オートマチック車にのみ起こる。これを防ぐためにはフットブレーキを踏んでおくか、サイドブレーキを引く必要がある。

【楽天ブックス】「霊柩車No.4」

「重力ピエロ」伊坂幸太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
主人公の泉水(いずみ)と父親の違う弟、春(はる)。あるとき放火事件が立て続けに起こり、春(はる)が次の放火場所を予測した。闘病中の父親と、すでに亡くなっている母親。少し変わった家族の物語。
物語自体に大きな流れがあるわけでもなく、取り上げているのは探せば世の中のどこかにありそうで目立たぬ人間関係である。ただ、そんな物語の中に散りばめられた、泉水(いずみ)と春(はる)の計算されつくした言葉のやり取り。それこそがこの物語の見所なのだろう。随所に溢れる、世の中を見透かしたような台詞の数々を読者は楽しむべきなのかもしれない。

政治がわからぬ。けれども邪悪に対しては人一倍に敏感であった。

個人的には僕の好みの作品ではないが、これはもはや好みの問題である。世間的な評価は非常に高い作品であるので手にとって各自が自分で評価してみるのも面白いだろう。


p53遺伝子
RB遺伝子とともに最もよく知られている癌抑制遺伝子。
テロメア
真核生物の染色体の末端部にある構造。染色体末端を保護する役目をもつ。
ローランド・カーク
1950〜1970年代に活躍したアメリカ合衆国のサックス奏者。
ボノボ
チンパンジーと同じPan属に分類される類人猿である。別名を、ピグミーチンパンジーともいう。

【楽天ブックス】「重力ピエロ」

「真夜中の神話」真保裕一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
主人公の栂原晃子(つがはらあきこ)は研究のためインドネシアに赴くが、その途中で飛行機の墜落事故に遭う。カリマンタンの山奥で瀕死の彼女を救ってくれたのは、文明から距離を置いて生活する人々と、歌声でコウモリを操る少女であった。
国内の問題や、発展途上国との格差からくる国際問題などを鋭く描く、真保裕一であるが、今回の作品はは吸血鬼伝説に始まり、他の作品とはやや異なる印象を受けた。
それでも、魔女狩りや世界各地にある伝説や逸話を、過去の歴史や宗教科学的な根拠と結びつけて説明していく展開は非常に面白い。吸血鬼がなぜ、人の血を好み、太陽の光に弱いとされるのか、など、多くの伝説は人々の不安が作り出した必然的産物だったのではないかと考えさせてくれる。

迷信の中には、よく真実がまぶされている。のろいの山には近づくな。そう言われてきた山には、まず毒蛇の巣があったり、有毒な火山ガスが噴出していたりする。昔の人は、経験則から、仲間を戒めるために迷信をつくり上げていったわけです。

インドネシアを舞台としているため、真保裕一の他の作品で、ベトナムを舞台とした「黄金の島」やフィリピンを舞台とした「取引」のように、発展途上国からみる先進国への妬みや、自国の未熟な社会秩序への諦めなどがリアルに描かれることを期待したが、本作品ではわずかな描写にとどまっていた。

彼等はGDPの差が、そのまま国民の優劣につながると信じて疑わない選民思想に縛られた人種なのだ。国際援助という金のばらまきによって得られる日本人への特別扱いに慣れきっている。

そして、各地に広まる宗教と、宗教によっておきる紛争や社会問題に触れる。

貧しいから人は信仰心を抱いて神にすがりたがり、その宗教が人の痛みを踏みつけにして勢いを増し、国家と人種に亀裂をつくって貧困の輪をさらに広げていく。
神は我とともにある。祈りは願望を実現させるための行為ではなく、願望に近づけるように自分を戒め、勇気を得るためにある、と理解はしている。だが、国民の多くが、ただ涙を堪えて祈るしかない現実がある。不平不満を抑えるためにのみ、宗教が機能しているかのようだ。国の貧しさが、人の心をさらに蝕み、宗教がその行為に手を貸している。

見方を変えれば、宗教を必要としない日本人は恵まれているともいえるのだろう。
物語自体は、最後までカリマンタン島の少女の不思議な力とそれに関わる人々に焦点をあてて進められていった。
真保裕一らしく、しっかりとした下調べの上で物語を展開していることはわかるのだが、やはり、彼の長所は社会問題や国際問題を独自の視点で物語にと取り入れる手法であり、そういう意味では、本作品は最終的にどこにでもありそうな物語という形でまとまっており、物足りなさを覚えた。


バレッタ
髪の毛をはさんで留めるヘアアクセサリーのこと。
死蝋
死体が何らかの理由で腐敗菌が繁殖しない条件の下に置かれ、かつ外気と長期間遮断された結果、腐敗を免れ、死体内部の脂肪が変性し死体全体が蝋状・チーズ状になったもの。(Wikipedia「死蝋」)
エコーロケーション
超音波を発し跳ね返ってくる超音波を受信することによって、周囲の餌や障害物などを認識する能力のこと。

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「千里眼 堕天使のメモリー」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第6作。ハローワークに職探しに現れた女性は「千里眼の水晶体」で自殺を図り行方不明となっていた西之原夕子(にしのはらゆうこ)であった。岬美由紀(みさきみゆき)は自己愛性人格障害と見られる夕子(ゆうこ)を救うべく奔走する
この物語の中では、基本的に「千里眼の水晶体」で、人格障害とみなされながらも犯罪に走り、結局、美由紀(みゆき)が救うことのできなかった夕子(ゆうこ)を中心として物語が進む。
第2シリーズも6作目になるが、第1シリーズのような深いテーマが未だに感じられない。個人個人の小さな精神的な苦痛を軽んじていいとは言わないが、社会に巣食った問題や矛盾に興味を覚える僕にとっては、やはり全体的に物足りなさを感じる。


フォールス・コンセンサス効果
自分の意見を根拠無く多数派だと思い込んでしまう心理的作用。
反動形成
好きなものを嫌いと言ってしまう心理的作用。
ブリッグ症候群
自分は汚くても他人の汚さは許せない心理。

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「ランドマーク」吉田修一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大宮の地に建設中の高層ビルO-miyaスパイラルに関わる建築士の犬飼(いぬかい)と建設作業員、隼人(はやと)の生活を描く。
基本的に吉田修一の作品は、読者に解釈を委ねる部分が多く、僕が小説に求めるものとは異なるという認識を持っている。それでも、大宮という、僕が生まれ育った街を舞台にしていることや、「パレード」で受けたような奇妙かつ、強烈な衝撃をもう一度味わいたいと思って久しぶりに手に取った。
本作品も、ほかの吉田修一作品と同様に、吉田修一らしい視点を物語の中に断片的に散りばめ、最終的な解釈は読者にお任せ、というスタンスである。一つ一つの小さなエピソードや台詞は物語の本筋とは一切関係ないようで、それでいて何か重要なものを訴えているようにも感じられる。これぞまさに吉田修一ワールドといった感じである。

与えられた場所に満足できないのが人間の本性だろうか。それとも与えられた場所に、愚痴をこぼしながらも満足してしまうのが人間の本性なのだろうか。満足できないから生きていくのか。それとも、満足してしまうから生きられるのか。

「東京」でもなければ「地方」でもない大宮という地。その位置的な中途半端さを、なかなか自分の気持ちにに正直に生きることの出来ない男たちの生き方と対比させているようである。
そしてまた、物語のタイトルにもなっているランドマーク、O-miyaスパイラル。超高層ビルという物理的には最も目立つ存在でありながら、冷たく存在感がない。それはまさに、豊かな日本のなかで、大きな目標も生き甲斐も無く生きている、世の中の多くの人々を象徴しているようだ。
著者が物語の中に埋め込んだテーマをそれなりに斟酌したつもりでも、やはり物足りなさが残る。これはもはや好みの問題だろう。


ヘルツォーク&ド・ムーロン
スイス出身の建築家。スイスのバーゼル出身のジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロンの2人からなるユニットで、日本ではプラダ青山店などを手がけた。
丹下建三(たんげけんぞう)
日本の建築家。新宿パークタワー、フジテレビ本社、東京都庁舎、代々木体育館、ほか多数をてがけた。

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「Fake」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
興信所の調査員であり主人公の宮本と東大生の加奈は、芸術の才能はあるものの学力は最低レベルの昌史を東京芸術大学に合格させるため、最先端の技術を駆使してカンニングの手助けをする。しかしその先には大きな罠が待ち構えていた。
前回読んだ五十嵐貴久作品である「交渉人」が物語の展開とともに世の中の問題点をうまく描いていたので、今回もそれを期待して手にとったのだが、今回は少し趣が違った。
最終的に宮本らは、10億円をかけて、自分たちを罠に嵌めたカジノのオーナーとポーカーで勝負することになる。そのポーカーのシーンで描かれるブラフ(はったり)による駆け引きやカードチェンジの枚数によってよそうされる相手の役など、ポーカーを知っている人には非常に面白いだろう。
上でも述べたように、僕が物語に求めているような、世の中の矛盾や問題点を見事に描く。というような内容ではなかったが、1ヶ月ほど前に読んだ同名の作品、楡周平の「フェイク」と同様に、多くのお金を持っている人からお金を奪おうという内容が共通している点が非常に興味を惹いた。
格差社会と呼ばれる今、どんなに努力しても豊かな生活を得ることはできず、才能を発揮して誰もやったことのない事業に手を出しても、いずれ法律に阻まれる。今、ジャパニーズドリームとされるのは、弱者を蹴落として大金を稼いでいる人からお金を騙し取ることなのかもしれない。


ジャンフランコ・フェレ
自身のコレクションを手がける一方、1989年から1996年までクリスチャン・ディオールのチーフデザイナーを務めた。
ハリー・ウィンストン
アメリカの宝飾デザイナー、宝石商、またそのブランドである。父親のヤコブ・ウィンストンも宝石商。

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「フェイク」楡周平

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
銀座の高級クラブの新米ボーイである主人公の岩崎陽一(いわさきよういち)は常にお金に困った生活を送っている。ところが年収1億の雇われママ、上条麻耶(かみじょうまや)と出会って人生は大きく動き出す。
銀座の高級クラブを舞台としているため、ホステスという僕の生活の中ではまったく縁のない世界について、物語を通じていくらか理解することができる。永久指名や同伴、ホステスが店を頻繁に移る理由など、ホステス同士が売り上げを競いながらもクラブのイメージを崩さないためにその長い歴史の中で考え出された仕組みだとわかる。
そして、物語中盤から、陽一(よういち)は麻耶(まや)と組んで、は高級クラブ通いのお金に無頓着な人々を相手に一儲け企む。100万単位でお金が動く展開はどこか現実離れしたものを感じながらも、格差の広がった現代、こんな人たちもいるのだろう、と納得のできるものではある。そして終盤にかけては、競輪というギャンブルとそれを利用するノミ屋なども関わってきて、またいくつか、今まで知らなかった社会の仕組みに強く興味を喚起させられた。
物語全体を通じた感想を言うと、非常に読みやすい作品であった。ただ、物語を通じて一貫して主人公の岩崎陽一(いわさきよういち)の一人称で進んだのが少し残念である。高級クラブに勤めているという以外はどこにでもいそうな青年の陽一(よういち)だけでなく、複雑な事情を抱えてホステスという世界に踏み込んだ上条麻耶(かみじょうまや)などの心情表現にももっと深く踏み込んで欲しかったと感じた。


ポプリ
花に、ハーブやスパイス、香料を混ぜ合わせ、さらにそれを瓶やポットのなかで熟成させた香りのこと
リトグラフ
リトグラフとは石版画のこと。リトグラフの「リト」とはギリシア語で「石」、「グラフ」とは「図版」です。水と油が反発しあうことを応用したもの。
デカンタージュ
ワインを飲む際に、「おり(滓)」と呼ばれる酵母の残りを取り除くために、清潔な別の容器に1度ワインを移す作業のこと。
ヘネシー
Hennessy。世界的に有名なブランデーメーカー。

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「千里眼の教室」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
千里眼第2シリーズ第5作。氏神高校の体育館で爆発が起こった。そして爆発の後、生徒達は突然氏神高校国の設立を政府に向かって宣言する。
例によってやや現実離れしたストーリーである。学校という小さな面積と少ない人数で独立した国を作ろうとする生徒達の行動は、小さな国の成り立ちを見ているようだ。
インターネットを利用することで、土地が無くても頭脳で外貨を稼ぐことができ、国に役立つ情報や技術にはそれ相応の通貨を支払うなど、国民のモチベーションを上手く国へ還元させようとする。その一方で医療技術の進歩が遅れていれば、国民の生命を守るために、医療技術の進んだ他国に頼らざるを得ない。小国であるが故の長所と短所をこの題材の中でうまく表現している。
生徒達の知識が、高校生という設定にしては豊富すぎる印象もあるがこのへんの非現実感は千里眼シリーズだから描けるものなのだろう。そんな非現実なストーリーの中で発せられる疑問や台詞には現代の真実を的確に言い表したものもある。

実力行使こそが子供たちにとって唯一の対話法だったのよ。いつものらりくらりと問題から目をそむけてばかりの大人たちに対し、子供たしは発言の自由など感じてはいなかった。それで、どうあってもわたしたちが逃れられない状況をつくりだしてきた。

どんなに学のない大人であっても、中学生や高校生と比較すれば多くの知識を持っているのは当然である。それであるがゆえにその行動が正しくなかったり子供にとって納得の行かないものであったとしても言い争えば大人が勝ったり上手くはぐらかすことができるものである。それだけの理由で、大人には「自分たちのほうが正しい」という思い込み、子供には「大人は話しても無駄」という思い込みが生まれ、双方の溝は深まっていく。
いつか大人の立場になったとき、子供達の間に、そんな不都合な溝の生じない関係をつくれる大人になりたいものだ。


適応規制
私たちの心が、緊張や不安などの不快な感情をやわらげ、心理的な安定を保とうとする働き。
適応規制 合理化
一見もっともらしい理由をつけて、自分を正当化しようとする機制
適応規制 退行
たえがたい事態に直面したとき、発達の未熟な段階にあともどりして自分を守ろうとする機制
村八分
十分の交際のうち、葬式と火事の際の消火活動の二分以外は付き合わないという意味からとされ、のけ者にすることを「八分する」とも言われていた。十分のうちの八分は、「冠・婚礼・出産・病気・建築・水害・年忌・旅行」である。

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「千里眼 メフィストの逆襲」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第5作である。「千里眼 ミドリの猿」と「千里眼 運命の暗示」では中国と日本の問題を題材に取り上げていたが、本作品では北朝鮮問題を題材に取り入れている。「千里眼 岬美由紀」と2冊で一つの物語を構成する。
物語冒頭では岬美由紀(みさきみゆき)の自衛隊時代のエピソードが描かれている。自衛隊という矛盾した存在を現場の目線で語っている。

軍人と同様の責務を求められながら、軍人であることを公に否定され、公務員であることを自覚せねばならない立場。そんな自衛隊員のアイデンティティの矛盾が、やがては有事の際にとりかえしのつかない失策につながるのではないか。
われわれはいったいなんのために存在するというのだ。自衛隊に先制攻撃が許されないのはわかる。が、防御のための応戦さえできないというのでは、存在意義がないではないか。自衛隊は文字通り、憲法上あいまいにされてきた解釈の泥沼にはまってしまっている。

物語途中から李秀卿(リ・スギョン)という北朝鮮工作員と疑われる女性が大きく関わってくる。李秀卿(リ・スギョン)と美由紀(みゆき)の議論は双方とも祖国の正当性を主張するもので、育った環境によってお互い理解することの難しさを見せてくれる。

日本人は、外国人がたどたどしい日本語でしゃべるというだけで、まるで知性が同等でないかのような錯覚を抱きやすい

拉致問題など、北朝鮮問題に興味を抱かずにはいられない作品である。
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「千里眼 洗脳試験」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第4作である。奥多摩の山中で行われていた自己啓発セミナーの参加者4,000人が人質に取られた。「千里眼」で凶悪なテロを画策し、「千里眼 運命の暗示」で死んだとされた友里佐知子(ゆうりさちこ)が企てた陰謀である。
世間で認識されているような、人を思いのまま操る”洗脳”は現実にはあり得ない。という立場に立ちながらも、4,000人ものセミナー参加者が抵抗も見せずに施設の中に人質として留まってしまった状況に、「洗脳」の存在を信じる世間に対して、美由紀(みゆき)や嵯峨敏哉(さがとしや)は心理学的立場から真実を探ろうとする。
世にはびこる凶悪事件について、その犯人を「異常」とか「洗脳された」という一言で片付け、それ以上理解しようとしない現在の世の中にに疑問を投げかけているのがこの物語のテーマと言えるだろう。

意識の変調を、異常とかおかしいのひとことで切り捨てていたんじゃ、進歩も発展もない。あの参加者のようなひとたちと理解しあえるときは、永遠にやってこない

どんな凶悪な犯罪者だろうと、そのような行為を働く過程、育った環境にその心を育む土壌があったはず。そんな考え方は普段の人間関係にも当てはめることができる。理解し難い行動に走る人、仲良くなることはできないかもしれないがその気持ちを理解することはできるかもしれない。
物語終盤では友里佐知子(ゆうりさちこ)と岬美由紀(みさきみゆき)が向き合って言い争う場面がある。決して知ることのできな人間の本質、生きる意味。お互いの信念を言葉にしてぶつけ合う、その台詞の数々はどれも心に響く。結局その人生に悲観するか希望を見出すかは本人次第なのである。そこに、間違っているとか正しいとかいうものはない。


ダッチロール
機体の傾きと機首の方向が左右に変化を繰り返し、進行方向が安定しなくなる現象。
メソッド演技
せりふを抑揚で意味づけしたり、外見の動きで演技を説明したりせず、内面的な心を大切にする演技技法。
レム睡眠
浅い眠りを指す。体の骨格筋は弛緩状態だが、脳は覚醒に近い状態で活動し、まぶたの下で目がキョロキョロと動き、「体は眠っているのに脳は起きている」という状態。一般的には、入眠してから最初のレム睡眠出現までは60〜120分。その後、ノンレム睡眠とレム睡眠をおよそ90分周期で繰り返す。ちなみに、夢を見るのはたいていこのレム睡眠のときが多い。
ノンレム睡眠
いわゆる深い眠りを指す。脳の温度は下がり、体は弛緩して心拍のテンポも遅くなり、眼球は上転してほとんど動かない、「脳も体も休んでいる」状態。さらにノンレム睡眠にも深い時期と浅い時期がある。このノンレム睡眠の深さは睡眠の質とも関係しており、熟睡感に影響すると考えられている。
ブランチ・ダビディアン事件
1993年、アメリカ・テキサス州ウェイコで起きた、宗教団体ブランチ・ダビディアン(Branch Davidian)による武装立て籠もり、および集団自殺事件。ただし、『自殺』という見方には異議・疑問も呈されている。
人民寺院
牧師ジム・ジョーンズが創設した宗教団体。もともとはアメリカ合衆国インディアナ州に存在した団体であったが、反社会的なカルト宗教として急成長。南米・ガイアナのジョーンズタウンに自給自足のコミュニティを作ったが、1978年11月18日、ジム・ジョーンズを含む900人以上が集団自殺。そのうちの300人以上が他殺だった。
参考サイト
日本航空350便墜落事故(Wikipedia)
羽田沖日航機墜落事故体験記
人民寺院事件/信者900人の集団自殺事件人民寺院事件/信者900人の集団自殺事件
御船千鶴子(Wikipedia)

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「千里眼 ミドリの猿」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4年ぶり2回目の読了。「千里眼」第1シリーズ第2作である。岬美由紀(みさきみゆき)がODA査察中に戦火に巻き込まれているアフリカの子供を救ったことが、中国の対日感情を悪化させ、開戦の気運を高める。追われる身となった美由紀は、同様に追われている立場で優秀なカウンセラーの嵯峨敏也(さがとしや)と出会う。
第1シリーズ第2作である本作品は、第3作の「千里眼 運命の暗示」とあわせて一つの話を形成している。本作品は「催眠」シリーズと「千里眼」シリーズの世界が交わる作品である。この作品では、美由紀(みゆき)と嵯峨(さが)の周囲の奇妙な出来事の謎を、倉石勝正(くらいしかつまさ)というベテランのカウンセラーを加えた3人で解いていく。
読み進めていくうちに「催眠」というものに対する世間一般的な誤解と、正しい解釈をわずかであるが知ることができるだろう。人を意のままに操るなど不可能ということを繰り返しながら、それを可能にしている陰謀の真相に迫っていく。本作品は次作「千里眼 運命の暗示」の序章といった感じである。


クロム
原子番号24の元素。元素記号はCr。金属としての利用は、光沢があること、固いこと、耐食性があることを利用するクロムめっきとしての用途が大きい。また、鉄とニッケルと10.5%以上のクロムを含む合金(フェロクロム)はステンレス鋼と呼ぶ。
アンチモン
原子番号51の元素。元素記号はSb。アンチモン化合物は古代より顔料(化粧品)として利用され、最古のものでは有史前のアフリカで利用されていた痕跡が残っている。
公安調査庁
破壊活動防止法や無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、日本に対する治安・安全保障上の脅威に関する情報収集(諜報活動)を行う組織。
ガムラン
東南アジア・インドネシア・ジャワ島中部の伝統芸能であるカラウィタンで使われる楽器の総称。
ナルコレプシー
日中において場所や状況を選ばず起きる強い眠気の発作を主な症状とする精神疾患(睡眠障害)である。笑う、怒るなどの感情変化が誘因となる情動脱力発作(カタプレキシー)を伴う人が多い。入眠時もしくは起床時の金縛り・幻覚・幻聴の経験がある人も多い。夜間は頻回の中途覚醒や、幻覚や金縛りを体験するなど、むしろ不眠となる。1日の睡眠時間の合計は健常者とほとんど変わらない。
ヒエロニムス・ボス
ルネサンス期のネーデルラント(フランドル)の画家。

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「千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自衛隊の航空祭で最新ヘリが盗まれた。六本木にそびえるミッドタウンタワーには毎晩侵入者が現れる。中国大使館の敷地で企てられた陰謀に岬美由紀(みさきみゆき)が挑む。
今回も話題のオープン間近のミッドタウンを舞台に設定しており、最近の話題や社会問題を物語に取り入れようとしている姿勢が松岡圭祐らしい。山場の一つとなるギャンブルのカードゲーム「愛新覚羅」は物語を盛り上げ、同時に中国の歴史にまで興味を向けさせてくれる。また、そんな知識欲を刺激する内容以外で、本作品の中で印象的だったのが、岬美由紀(みさきみゆき)、雪村藍(ゆきむらあい)、高遠由愛香(たかとおゆめか)という、一見どこにでもいるような女性の仲良し三人組の人間関係についての描写である。

「友人同士らしい、由愛香(ゆめか)はいつも、藍(あい)を見下した態度でからかっている。」
ふたりの関係はその指摘とは逆に見えた。からかっているのはむしろ藍(あい)のほうだ。由愛香(ゆめか)のセレブ気取りを内心で嘲笑している。藍はときおり、その態度をあからさまにちらつかせるが、由愛香(ゆめか)のほうはそれを皮肉と気付かず、ますますのぼせあがるといった図式だ。

高遠由愛香(たかとおゆめか)は精神的に追い詰められて、美由紀(みゆき)に本音をぶつける。

そもそもあなたと付き合っていること時代、わたしにとっちゃ高級車を持ってるのと同じことだったの。クルマなんて走りゃいいけど、だからといって軽自動車じゃ世の中になめられるでしょ。岬美由紀(みさきみゆき)と友人だってうそぶいて、ずいぶん社交や取引で役に立ったわ。でも本心ではあなたって人、嫌い。

人間関係は必ず双方によってなんらかのメリットがあってこそ成り立つもの。それは僕自身が常々思っていることであるが、世間の人は「無償の愛」が存在すると考えたがり(もちろん「無償」が「金銭的のやり取りのない」を意味するのであればそれは存在するのだが)、この事実を認めたがらないようだ。本作品では美由紀(みゆき)の友人である高遠由愛香(たかとおゆめか)がそれをはっきりと表現しており、もちろんそれは世間一般的には受け入れられ難い行動なのだろうが、僕はその潔さは逆に良い印象を受けた。


光岡自動車
富山県に本拠地を持つ、日本第10番目の自動車メーカー。
ウィーン条約
ウィーン条約と呼ばれているものは多いが、国際法上最も重要かつ基本的なものが「外交関係に関するウィーン条約」である。1961年にウィーンで開かれた外交関係会議で採択された多国間条約で、53条から成り、外交関係の開設、外交使節団の派遣と接受、外交特権や免除など外交に関する諸問題を規定。外交特権では公館や公文書の不可侵や、外交官がいかなる方法でも抑留、拘禁されないことなどを定めている。
セルフ・ハンディキャッピング
失敗したときにその原因が自分の能力や意欲にあることがはっきりすると自尊心が傷ついてしまう。それを避けるために、あらかじめ自分自身にハンディキャップをつけて自尊心を守ること。

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