「食堂かたつむり」小川糸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
失恋して故郷に帰った倫子(りんこ)はレストランを開くことにする。

「ツバキ文具店」の小川糸のデビュー作品である。

倫子(りんこ)失恋して声を失い、母親の元に帰る。空いている物置小屋を見て、そこを利用してレストランを開くことを決意し、少しずつその料理の腕前から人を幸せにする道を見出していく様子を描く。

そして、故郷でそこの人々や、母ともう一度向き合うことにより、いろんなものに気づいていくのである。

故郷や田舎の暖かさを感じさせる物語である。悪くはないが、最近このような物語が比較的多く、あまり新鮮さを感じなかった。

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「エクストリームプログラミング」Kent Beck/Cynthia Andres

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
エクストリームプログラミング(以下XP)について説明する。

XPでは次の5つの価値を重視している。

  • コミュニケーション
  • シンプリシティ
  • フィードバック
  • 勇気
  • リスペクト

良いことを書いているような感じはするのだが、正直読みづらい。スクラムや基本的なアジャイルの考えと何が異なるのかというと、ペアプログラミングや自動テストによって品質を担保しようとしている点だろう。

正直、本書を読んだだけだとなかなか理解できた気がしないので、他の人の解釈なども聞いてみたいと思った。

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「ただいま神様当番」青山美智子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ある朝目を覚ますと腕に「神様当番」という文字が現れ、神様を名乗る老人が現れる。そんな奇妙な体験をした男女5人の物語である。

突如神様当番となった、OL、小学生、男子高校生、イギリス人の大学非常勤講師、零細企業社長の5人を描く。それぞれが、自分の日々の人生に悶々とした思いを抱えながらも、神様と出会うことによって新たな視野が開くまでを描いている。

青山美智子さんの作品には常に、今あるものに目を向けて、前向きに生きようという温かいメッセージが詰まっている気がする。

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「A Clash of Kings(A Song of Ice and Fire)」George R. R. Martin

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
A Song of Ice and Fireの第二弾である。Stark家とLannister家の関係が緊張状態に入り、一方Targaryen家のDaenerysはついに竜を手に入れた、その後の物語を描く。

第一弾を読んでからずいぶん間が空いてしまったが、久しぶりに壮大なファンタジーの世界に浸りたくなって続きを読むことにした。

Lannister家のCerceiが、出自に疑問がある我が子Joffreyを王したことによって、各地から大きな反対の動きが起こる。自らこそ真の王であると自負するBaratheon家の兄弟、Renly BaratheonとStannis Baratheonが動き出し、一方夫をLannister家に裏切り者として殺されたStark家のCatelynはRenlyとStannisに協力してLannister家を討つことを提案するのである。

そんななか少しずつStannis Baratheonが持つ不思議な力が明らかになっていき、そんななかやがてLannister家とStannis率いるBaratheon家は対決の時を迎える。

Jon Snowを中心とした北の動きや、Targaryen家の生き残りであるDaenerysの旅など、謎は深まるばかりである。

登場人物が多くて、逐一、前に戻って復習しながら読み進めていった。竜や魔法というファンタジーの要素のみに物語を依存するのでなく、あまくでも人間同士のプライドや地位を中心に描いている点が、面白さの所以だろう。

日本のファンタジーは物語の壮大さにおいてまったく敵わないと感じてしまう。

「UXライティングの教科書」キネレット・イフラ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UXライティングについて語る。

全体で3つの章に分かれており、重要なのはPart1のボイス&トーンとPart3のユーザビリティである。Part2のエクスペリエンスとエンゲージメントはさまざまな会社の解決策を紹介しており、参考程度に見るのがいいだろう。

ボイス&トーンでは、会話体ライティングの重要性について語っている。ヒントとおさえるべき原則は次の項目である。

  • 思い浮かんだままの言葉を使う
  • 音読する
  • 味気ない定型文は避ける
  • 質問をする

会話体ライティングの6原則

  • ユーザーに直接語りかける
  • あくまでも自然に
  • 短くまとめ、ポイントを押さえる
  • 耳慣れた、いつもどおりの言葉を使う
  • 能動態を使う
  • 流れを作る

また、ライティングによってモチベーションを高める考え方も次のように説明している。

1.行動の方法ではなく、行動することの価値を伝える
2.ニコニコ効果、ワクワク効果
3.ユーザーに敬意を払う
4.ソーシャルプルーフ(社会的証明)

全体的に特に新しいと思える内容はなく、今まで持っていたライティングの知識の再確認の機会となった。ちなみに、本書が英語圏の文化によって書かれた書籍であることを意識しなければならない。例えば、日本語圏では、会話で「あなた」を使うことはかなり稀である。普通は相手の名前を呼ぶか、そもそも動作の主体を文章に含めない。その点で「You」を多用する言語のライティングと同じに考えてはならないだろう。

同様に、日本語圏では顧客対応においてしばしば過剰に尊敬語、丁寧語、謙譲語を織り交ぜる傾向があり、これを「会話体」と認識してしまうとライティングは悲惨なものになってしまうだろう。

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「獣の奏者II 王獣編」上橋菜穂子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
傷ついた王獣の子リランの世話をすることとなったエリンは、少しずつリランと会話をしようと試みる。

獣の奏者I 闘蛇編」を読んだのはすでに10年以上前で、物語の流れをほとんど覚えていなかったが、ファンタジー熱が再燃したので続きを読みたくなった。

物語は王獣リランと竪琴の音色を通じて少しずつ会話ができるようになるリランと、王獣を制御する力をみにつけたことによって政治の中に巻き込まれていく様子を描いている。

自らの権力を中心に考える者もいれば、人間や動物の種としての存続を優先に考えるものもいて、そんな考え方の違いから争いごとが起きるのは、現実も幻想世界も同じである。

闘蛇と王獣という2つの想像の動物を中心に作られるファンタジーであり、単純化されすぎているという批判はあるかもしれない。「十二国記」と並んで、知名度の高い数少ない日本初のファンタジーの一つであることを考えると、物語の面白さに関係なく読んでおくべきなのだろう。

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「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
児童精神科医の著者が、少年院の少年たちのなかに認知力が弱い少年たちがいる事実を語る。

まず驚かされたのはある非行少年が写した図である。Rey複雑図形の模写という課題で、単純な図形の集まりで、小学生低学年でさえ綺麗にできそうな図である。しかし、少年院のある少年にとっては満足に認識できていないのである。実際それが、著者の関心を、少年たちの認知能力へ向けさせた出来事となる。

見る力がこれだけ弱いとおそらく聞く力もかなり弱くて、我々大人の言うことが殆ど聞き取れないか、聞き取れても歪んで聞こえている可能性があるのであるのです。

著者は非行少年の特徴を5つ+1の要素として、次のように分類している。

認知機能の弱さ
感情統制の弱さ
融通の利かなさ
不適切な自己評価
対人スキルの乏しさ
一身体的不器用さ

一般的な人間が持っている機能を持たないというだけで、犯罪者になってしまう少年たちの存在を著者は嘆く。そして、中盤以降、このような少年たちが犯罪を犯して少年院に入るまで、誰からも気づかれない理由など、さまざまな問題を挙げて説明していくのである。

こういう少年たちが存在していると認識することが、社会を良くしていく最初のステップなのだろう。社会とはまず多数派のために作られ、その後少しずつ障害者などの少数派に向けた環境が整っていくものである。最近はバリアフリーも進み、社会もある程度成熟したように感じていたが、本書を読んで、まだまだ変えなければならない部分があると感じた。

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「The Martian」Andy Weir

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
火星探索中の事故で火星にただ一人取り残されたMark Watneyは、次の火星探査機がやってくるまでの生き残る手段を考え始める。

Project Hail Mary」が面白かったので同じ著者のデビュー作である本書にたどり着いた。マット・デイモン主演で映画になった「オデッセイ」の原作でもある。

物語はMark Watneyが生き残ろうと火星で1人で試行錯誤する様子、そして地球からWatneyが生きていることをを知って見守るNASAの様子、また、Watneyを火星に置いてきて、仲間を失って後悔に苛まれれながらも地球に向かう火星探査者たちの3つの視点からを描いている。

Watneyの火星の様子の大部分はWatneyが残す日記形式で描かれており、その中で、どれだけ僕らが地球の環境を当たり前として生きているかを改めて思い知る。例えばその日記のタイトルは「SOL1」などとなっており「1日目」ではないのである。当たり前のことであるが、火星の1日は地球に1日とは長さが異なるのである。そんなことすら本書を読むまで意識することがなかったことが驚きである。

特に面白いと思ったのは、食糧を増やすためにじゃがいもの栽培を試みるシーンである。植物学者でもあるWatneyだからこそ思いつくアイデアがたくさん登場するし、地球と異なる環境の火星ゆえの制約がまた印象的である。また、Watneyの試行錯誤の過程で過去の火星探査や、火星の地名が登場するので、火星の地形もかなり判明していることを知った。

正直「Project Hail Mary」の印象で本書に入ると、物語にあまり大きな動きがないので期待はずれかもしれない。個人的には、水を作る過程や、生きていくために二酸化炭素を減らす方法などを試行錯誤する様子から、化学を勉強したくなった。

和訳版はこちら。

「ローザ・パークス自伝」ローザパークス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
公民権運動の母と言われるローザ・パークスがその人生を語る。

ローザ・パークスとは、1955年に白人にバスの席を譲ることを拒否して逮捕された黒人女性で、その後大きな公民権運動のきっかけとなった人物である。先日読んだ「Quiet」のなかで、内向的な人が歴史を変えた例としてローザ・パークスの名前が挙がっていたので本書にたどり着いた。

本書では、ローザ・パークスの幼い頃からの家族や親戚との様子を時系列で語っていく。その中で奴隷解放のあとも引き続きたくさんの黒人に対する差別が行われてきたことがわかる。正直、自由の国を謳うアメリカという国でなぜつい最近までこんなことが平然と起こっていたのか不思議である。

やがて、物語は1955年のローザ・パークス逮捕とその後の出来事について語るのである

初めてこの物語を聴いた時、ローザ・パークスのとった行動は、日常の中で一般的な黒人女性に起こったことのように見えた。しかし、実際には彼女の夫は早くから黒人の権利を勝ち取る運動に関わっていて、ローザ・パークス自身にも、公民権に関する強い意志があったのだということを知った。

また、それまでにも白人とのトラブルから大きな運動に発展させられる出来事がないかを、常に黒人の権利を求める行動をしていた人々が探していたことも初めて知った。つまり、素行不良の黒人が白人とトラブルを起こしても大きな運動のきっかけにはならないが、ローザ・パークスのような前科も素行不良もなく真面目な女性であることが多くの人々の心に触れると考えて、黒人の権利を求める人々が利用したのである。

公民権運動を扱った物語に触れると毎回思うことだが、むしろ、自分達の権利のために行動した黒人たちより、そのままの状態のほうが自分達の権利が守られるのに、他の白人たちからの敵意を恐れずに黒人の権利拡大に手を貸した一部の白人たちの行動に心を動かされる。こういう白人たちの行動はそれほど多くは語られないが、本書でも描かれているし、映画にもなった物語「The Help」でも語られている。そのような、自分の利益よりも正しいと感じることに従って生きられる人間でありたいと改めて思った。

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「店長がバカすぎて」早見和真

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内の書店で働く谷原京子(たにはらきょうこ)を描く。

タイトルのとおり、谷原京子(たにはらきょうこ)は店長の突飛な鼓動に悩まされ続ける。ただ、タイトルは「店長がバカすぎて」だが、内容はさらに「営業がバカすぎて」や「小説家がバカすぎて」と続き、つまり毎日周囲の言動に悩まされる書店員を描いているのである。

もはやインターネットによる販売によって、本屋の存在意義は薄れていくばかり。そんな本屋さんの悩みや葛藤が、谷原京子(たにはらきょうこ)の毎日を通じて伝わってくるだろう。

本書が本屋大賞にノミネートされた理由は、本書が本屋さんの日常を描いており、その描き方が、本屋で働く人々の共感を勝ち取ったからなのだろう。そういう意味では、本屋の日常を比較的リアルに描けているかもしれないが、一般の人の心に刺さるかはなんとも言えないところである。

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「黙ってられるか」川淵三郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Jリーグの創設し日本のサッカーのレベルを大きく向上させた著者がその考え方を語る。

先日読んだ「独裁力」に続いて引き続きもっと深く著者のリーダーシップの考え方を知りたいと思い読み始めた。

独裁力」と重なる話も多かったが、本書ではJリーグ時代のエピソードがより多く描かれている。ただのリーダーシップについてだけでなく、どのように政治家と繋がりを持ち、そのなかでJリーグを大きくするという目的の前の障害を乗り越えていったのかなどを語っている。

そんななか、興味深いのはマスコミの力を前向きに捉えている点である。必ずしもマスコミに評価されることではなく、マスコミにたたかれることすら、大きな視点ではやりたいことの達成を後押ししたというのである。改めて、何かを達成するためには、実行だけでなく周知の動きが大事なのだと感じた。

また、巻末に巨人軍オーナーの渡邊恒雄氏との対談の様子が描かれている。正直、渡邊氏については、野球のことになったときにだけ登場するえらそうな老人、という否定的な印象しかなかった。しかし、本書を読むと、渡邊恒雄氏も今ではJリーグや著者川淵三郎氏の功績を認めていて、自らの間違いを認め成長できる人なんだと感じ、渡邊恒雄氏の見方が少し変わった。

川淵三郎氏はすでに80歳を超えているという。改めて、仕事に一生を通じて全力投球することの清々しさを感じた。

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「The Alchemist」Paulo Coelho

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

スペインのアンダルシアで羊飼いをして過ごしていたSantiagoは、ある日夢に出てきたエジプトに宝を探しに旅に出かける。

Santiagoはある日不思議な夢をみる、夢を読む占い師の言葉によればエジプトに行けば宝物が手に入るという。Santiagoは迷いながらもその夢を追うことを決意する。

そして、エジプトを目指す中でSantiagoはさまざまな障害や人との出会いを体験するのである。その過程で人生の本質をついたような言葉が散りばめられている。

At a certain point in our lives, we lose control of what's happening to us and our lives become controlled by fate. That's the world's greatest lie.
人生のある地点で、私たちは人生のコントロールを失い、運命にコントロールされるようになる。これは世の中でもっとも大きな嘘だ。
When someone makes a decision, he is really diving into a strong current that will carry him to places he had never dreamed of when he first made the decision.
人は決断をした時、その時には夢にも思ってもみなかった場所へたどり着く流れのなかに飛び込んでいるのだ。
There is only one thing that makes dream impossible to achieve: the fear of failure.
夢を不可能にしているの唯一のことは失敗への恐れである。

深みを感じさせる物語、人生に迷った時、夢を諦めそうな時に読むといいかもしれない。

和訳版はこちら


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「The Room on the Roof 」Ruskin Bond

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドのDehraで養父の元で立派な英国人になるために厳しく育てられたRustyはある日耐えかねて家を飛び出す。そんなRustyを描く。

家を飛び出したRustyはわずかなつながりと英語の能力を頼りに、英語の家庭教師の立場と食事と部屋を確保する。Rustyはさらにその生徒Kishenの母親Meenaに恋をしてしまう。

インドのイギリス人コミュニティで生きるRustyの様子を描いているので、インドのバザールや食事の様子も面白いが、その地域で生活しながらも地域の人を下に見ているイギリス人のものの見方も新鮮である。インドでは、青い目と金髪のRustyは目立つ存在で、さらに家出したことで、外見も立場も所属のないことによるRustyは悩むのである。また、Dehraというインドの都市にイギリス人コミュニティがあったことは初めて知った。

正直、高い評価の印象が先行しすぎたせいか、若干期待はずれ感は否めないが、深みを感じる作品ではある。タイミングが異なればまたもう少し違った感じ方ができたかもしれない。

「The Sun Is Also a Star」Nicola Yoon

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカの移民2世韓国人青年のDanielと不法滞在中のジャマイカ人女性のNatasha出会いを描く。

Natashaは、アメリカで俳優になる夢を追いかける父についてきて、観光ビザでそのままアメリカに不法滞在で生活していた。しかし、父が飲酒運転でつかまったことからジャマイカへ帰国をしなければならなくなる。Natashaは弁護士をあたってアメリカに留まる方法を探し続ける。一方で、Danielは両親の勧めで医者になるために、イェール大学の面接を受けようとしている。なりたくもない医者になるという葛藤を抱えながら面接に向かう際、Natashaに一目惚れするのである。

DanielとNatashaの出会いの1日を描く。Danielは運命を信じる一方で、Natashaはどちらかというと現実主義者であり、そんな二人の考え方の違いと、それを反映するように、少しずつ二人の家族の人間関係や歴史が見えてくるのが面白い。その過程で、韓国とジャマイカという国と、その家族がアメリカで生活することの現実が見えてくる。

アメリカ移民の話は本書に限らずよく耳にする。移民一世は子供の将来のためにと、母国を離れ慣れない土地に移り住み、その結果、人がやりたがらない仕事をやって生計を立てなければならない。一方、その子供の移民二世は、親が自分たちのために苦労して生きてきたことを見ているため、親の期待を裏切る生き方ができない。それが子供の心に葛藤をうむのである。

Natashaの不法滞在者という形は今回初めて触れたので印象的だった。見つかったら即強制送還というわけではないという点も、今回初めて知った。確かに、子供から見れば親についてくるしか選択肢がなかったなかでアメリカに留まる選択肢を与えたくなる心情も理解できるが、一方で、そんなことをしていたらアメリカは人口が増え続け、治安をまもるのも大変だろうと感じた。

全体的には、1日で恋に落ちる若者2人を描いているので、非現実的すぎるという批判もありそうである。映画化されたようなので心情描写が表現しにくい映像の方はなおさらただの非現実な恋愛物語になっている可能性が高いだろう。ただ、個人的には、上に挙げたように、移民二世、不法滞在者という普段触れることのない人生を体験できたのが新鮮で楽しめた。

「史上最強の人生戦略マニュアル」フィリップ・マグロー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生を好転させる方法を体系的に説明している。

序盤で本書が多くのページを割いて説明しているのは次の3点である。

  • 不平や愚痴で時間を無駄に費やさない
  • 行動を変えれば人生は変わる
  • 自分の求めるものがわからなければ、求める人生にはたどり着けない

こうやって書き連ねてみれば当たり前のことばかりなのだが、確かに世の中にはこれができてない人がなんと多いことか、逆にできている人にとっては、行動を起こさない人が不思議で仕方がないだろう。

あなたが手に入れるのは、最高でも自分が求めるものなのである。

最後の章では、より詳細に自分の求めるものを見極め、行動を起こす方法を説明している。普段、現状に愚痴や不平ばかり言って何もしない人でも、本書のとおり行動すれば間違いなく人生は好転するだろう。(ただ、そういう人はおそらく行動しない…)

僕自身は行動をさっさと起こすほうだと認識しているが、それでも改めて自分の現状を振り返る機会となった。不便だと思いながらも受け入れているものがないだろうか、実はもっと改善したいと無意識に感じているものはないだろうか、そんなことを改めて考えてみたい。

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「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
一度習えば、二度と散らからないという整理収納法について語る。

こんまりとして日本だけでなく海外でも有名な著者であるが、その著書に触れたことがなかったのでこれを機に読んでみようと思った。

端的に言えば本書を通じて著者が言っているのは

ときめかないものは捨てる

である。僕自身比較的ものはさっさと捨てるほうではあるが、それでも捨てるのが難しいと感じるのは、人からもらったものである。特にその人の手書きのメッセージなど書いてあると、どんなに小さな紙切れだろうと捨てるのが難しい。しかし、それについても本書のこんなアドバイスが効きそうである。

プレゼントはそのものより、気持ちを届けるモノです。
だから、「受け取った瞬間のときめきをくれて、ありがとう」といって捨ててあげればよいのです。

また、僕自身は服をたたむことは無駄な時間だと考える人間だが、本書では感謝の言葉をかけながらたたんで重ねるのではなくたてることを推奨している。正直、感謝の言葉をかけることの意味はよくわからないが、服をたてることの意味はわかったので、さっそく実践していこうと思った。

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「自分探しと楽しさについて」森博嗣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
作家であり工学博士である著者が自分探しについて思うところを語る。

著者森博嗣は「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」など、むしろ理系作家としての印象が強かったのだが、そんな人がどんなことを書いているのだろうと気になって本書を読むに至った。

著者自身数時間で本書を書き上げた、と言っているように、特に計画もなく独り言を書き連ねたような印象である。

印象的だったのは、抽象化の重要性を説いている点である。人生を楽しめない人は、誰かがあるものを楽しんでいるのを見るとそれとまったく同じことをしようとする。その結果、その対象は競争率が上がり、他人を蹴落とさないと手に入れることのできないものになる。一方で抽象化が得意な人は、何かが楽しかった時に、どの要素を自分が楽しんでいるのかを見極めて、その要素を備えていて自分にアクセスがしやすいもので楽しみを感じることができるというのである。

内容が濃いとは言えないが、もし人生が退屈で悩んでいるなら読んでみるといいかもしれない。僕自身はむしろ合間合間で触れる著者自身の趣味が楽しそうだなと思った。

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「Velvet was the Night」Silvia Moreno-Garcia

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1971年のメキシコでHawksの一員として働くElvisと秘書として週刊誌を読むことだけが楽しみの女性Maiteの2人の男女の人生を描く。

ElvisはEl Magoという男に拾われ、Hawksの一員として学生運動を鎮圧することを仕事としている。しかし、仲のいい同僚のGazpachoが銃弾に倒れて組織から抜けたことでグループのリーダーとなり今まで知らなかった様々な事柄に触れ、少しずつ自分の行動や立場を考えるようになる。そんななかある女性の張り込みを任される。

一方Maiteは秘書として働きながら、政治情勢の話題で盛り上がる同僚たちをは距離を起きながら、過去の恋愛を引きずって週刊誌の恋愛漫画だけを楽しみに生きている。Maiteは小遣い稼ぎのために週末ペットシッターをしていたが、客の一人が猫の餌やりとMaiteに任せたまま失踪してしまってから、その退屈な人生が少しずつ変化が起きる。

そんなメキシコの学生運動が盛んな時代に、異なる世界で生きていたElvisとMaiteの世界は少しずつ近づいていくのである。やがてElvisは話したこともないMaiteにどこか親近感を覚えていく。

物語展開としてものすごい斬新というわけではなかったが、やはりメキシコの学生運動、特にDirty War(汚い戦争)など、その動乱の時代を描写している点が新鮮である。メキシコの歴史などほとんど触れたことがなかったので、キューバ革命の後にこのような動乱の時代があったことを初めて知った。手の届く範囲でもう少し調べてみたいと思った。また、ElvisもMaiteも音楽が好きなため、当時のメキシコの音楽が何度も登場するのが面白い。こちらもいくつかさっそく聞いて当時の雰囲気を味わってみたいと思った。

メキシコにも学生運動の発端は、アメリカの共産主義運動を封じ込める動きから起こっていたことを知った。やはり日本にいて普通に生活していると、アメリカの悪い歴史部分が見えにくいのかもしれないと感じた。英語はどちらかというと欧米文化を伝える一方、南米文化には弱いので、もっとスペイン語の本なども読むべきかもしれないと感じた。

「解きたくなる数学」佐藤雅彦/大島遼/廣瀬隼也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いくつかの数学の問題を写真とともに提示し、解説していく。

数学の問題を興味深い写真とともに解説している。それぞれが特別難しい問題ということはないが、普通の数学の問題を解くのと、実際の場面を見せられて数学を応用して答えを導き出さなければならないのとでは、少し考え方が異なると感じた。「数学的帰納法」など久しぶりに触れる考え方もあれば、「鳩の巣原理」など、新しい発見もあった。

面白いのは著者が末尾でも語っているように、同じ問題でも写真とともに示すと興味深く見えるということである。興味をそそる見せ方をするという考え方は他のことにも応用できそうだと思った。

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「白い巨塔」山崎豊子

白い巨塔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国立大学医学部助教授の財前五郎(ざいぜんごろう)が、医者としてのキャリアを築いていく様子を描く。

前半は大学内の教授選、後半は財前五郎(ざいぜんごろう)が巻き込まれた医療訴訟を中心に展開する。

自身が教授に選ばれるため、またその周囲の人間は財前(ざいぜん)を教授にするために、それぞれが様々な人脈を駆使して票を集める様子は、醜くもあるが、学ぶところもあると感じた。どんな人でも、お金や地位や家族の豊かな人生を約束されれば小さな信念など簡単に譲ってしまうのだ。

後半の医療訴訟では、一人の医師が証言している言葉が印象的だった。医師に厳しすぎる判決は、逆に医療の発展を損ねる結果となり、どこまでを誤診と定義するかは、医療の発展に影響する判決なだけに、常に難しさがあると感じた。

全体的に、貧しい家庭に生まれた財前(ざいぜん)が、助教授から教授へと少しずつ医者としての地位を登っていく過程で忙しさも増す中で、傲慢になっていくところが痛々しい。その一方で、自らの信念を全うしたことで医者としての立場を追われた里見(さとみ)教授や、立場に関係なく事実しか証言しない大河内(おおかわうち)教授など、尊敬できる生き方にも触れることができた。

本書の舞台となっているのは昭和30年代とかなり昔だが、技術的にはもちろん、本書で描かれているような、医療の発展を阻みかねない封建制も改善されていると期待したい。

「白い巨塔」といえば過去豪華キャストでドラマ化されており、山崎豊子の最高傑作という印象を持っていたが、おうして実際に読んでみると、一人の傲慢な医者の周囲で起こった出来事に閉じており、「大地の子」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」に比べると、登場人物の浮き沈みや、世界の大きな変化など、物語の壮大さはあまり感じなかった。

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