「グラフィックの天才たち。」ペン編集部

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去の代表的なグラフィックデザインを紹介している。

亀倉雄策(かめくらゆうさく)やポール・ランドなどの有名なグラフィックデザイナーとその作品を、原研哉や佐藤可士和など現代のアートディレクターたちが言葉とともに紹介していく

亀倉雄策(かめくらゆうさく)は実は名前しか知らなかったのだが彼がTDKやNTTのロゴデザインをしたというのは本書を通じて初めて知った。パソコンが世に出ていない時代にどのようにデザインをするのか、インターネットがなかった時代にどのようにアイデアを生み出すか、それだけで想像を超えている。そしてそのロゴが今も変わらずに使われているというのが驚きである。

そんななか、もっとも印象的だったのがランス・ワイマンのメキシコオリンピックのロゴである。オリンピックの五輪と開催年の68を組み合わせたデザインは見事である。

デザインに関して大いに刺激をくれる一冊である。

【楽天ブックス】「グラフィックデザインの天才たち。」

「二つの祖国」山崎豊子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
真珠湾攻撃によって日本とアメリカの戦争が始まった。アメリカに住む日系人たちは収容所への移動を強いられる。日本とアメリカの間で翻弄される日系アメリカ人たちを描く。

日系二世の天羽賢治(あもうけんじ)はロサンゼルスにある日本人向けの新聞社で働いていたが、開戦をきっかけに家族とともに強制収容所に収容される。末の弟の勇(いさむ)はそんななか日系人の地位の向上を目指してアメリカ兵として戦争に参加することを決意する。もう一人の弟の忠(ただし)は開戦当時日本で学んでいたために、やがて日本兵としてせんそうにさんかすることになる。そして、賢治(けんじ)自身も自らの日本語能力を活かして戦争に参加し、前線へと送られていく。

戦争中のアメリカに滞在する日系人の複雑な心のうちを描く。あるものは日本に帰国し、またあるものはアメリカへ忠誠を誓うために戦争への参加を志願する。本書のように兄弟で別々の国から戦争に参加したケースが実際にあったかはわからないが、単純に日本とアメリカという国だけでは割り切れない複雑な人間関係があったことは間違いないだろう。

物語の前半はそのように真珠湾攻撃からポツダム宣言および原爆投下の戦争の終結までを描く。そして、後半2冊、日本の敗戦後の東京裁判に費やされる。東條英機を中心とする日本の責任者たちが連合国に裁かれる様子が細かく描かれるのである。

日本語と英語に明るい賢治(けんじ)はその東京裁判に翻訳の正誤をチェックするモニターとして参加する。人の人生にかかわる裁判の過程で、英語と翻訳された日本の微妙なニュアンスの違いに神経をすり減らす賢治(けんじ)の様子に、東京裁判の歴史的重要性だけでなく、むしろ言葉の奥深さを感じさせられる。

只今、肝をmind(精神)と表現しましたが、この場合はもっと強い意味で、will(意思)、intention(意図)、conviction(確信)の方が適役です。

また、真珠湾攻撃にあたって宣戦布告をしないで行った奇襲攻撃である、ということがアメリカ側が戦意向上のために使った話で実際には日本側は真珠湾攻撃に間に合うように最後通告を行っていたこと、11月26日のハルノート自体が実質的な宣戦布告という捉え方があるということなど今回初めて知った。

最後の山場は最終論告と最終弁論である。

被告らは、彼らが自衛のために行動したのであることをしばしば弁明したが、誰一人として日本を攻撃したり、侵略するという脅しを他国から受けたと主張した者はいなかった。

最終論告が自衛のための戦争という主張を否定するのに対して、最終弁論は自衛のための戦争の定義の曖昧さや、その法律の存在に疑問を投げかけるのである。

戦争を犯罪とせず、侵略戦争だけを犯罪として、その計画、準備、開始、実行の行為を犯罪とした場合、それが国際刑法上の原則として容認されるとすれば、侵略戦争と、戦争との限界が明確に示されねばならぬ。

法は共通の義務意識である。刑法はこれを無視すれば罰を受ける義務を伴う共通の義務意識である。政治家はこれまで国際法上の義務に違反すれば、軍法上の刑罰を科せられるという共通の義務意識の下には、その任務を行っていなかったのである。

やがて東京裁判は数人の戦争責任者への判決で幕を閉じる。東條英機を含む戦争の責任者たちが死刑になったことは知識としては知っていたが、このような過程を経て判決が出たことを知って、その問題の複雑さを改めて認識することができた。そもそも裁判とはなんのために行われるべきなのだろう。そんなことを考えさせられた。

これまでも山崎豊子の作品にはいくつか触れており、いずれも膨大な取材に裏打ちされた物語ですばらしいものだったが、本書こそその作家人生の集大成だと感じた。本書はアメリカと日本語という二つの国の間で翻弄される人々を描いているが、日系人をジャップと呼びながらその活躍を感謝したり、勝ったアメリカの人でありながらもアメリカの正義に疑問を投げかける人がいたりと、改めて人は多様なのだと気付かされた。決して所属や国籍から人を判断することはできないのだ。

もっと早く読んでおくべけばよかった。教科書で学んだだけの太平洋戦争のイメージが大きく変わるだろう。

【楽天ブックス】「二つの祖国(一)」「「二つの祖国(二)」「「二つの祖国(三)」「「二つの祖国(四)」

「Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」ロルフ・ドベリ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
よりよい人生を送るための51の思考法を紹介する。

よりよい人生を送るための考え方を紹介している本は世の中にたくさんあり、本書もそのうちの一つでいくつか他の本にも共通することが含まれていたが、このような本は、似たようなことでも繰り返し触れることで自らの生き方の精度を上げるために役立てるべきなのだろう。

本書では51の章に別れていてぞれぞれの章で1つの思考法とその考え方や例について語っている。51のなかで印象に残ったのが次の4つの思考法である。

大事な決断をするときは十分な選択肢を検討しよう

天職を追い求めるのはやめよう

世界で起きている出来事に責任を感じるのはやめよう

世界を変えるという幻想を捨てよう

1つめは選択肢の中からベストな答えを選び出す秘訣を書いている。秘書問題という100人の秘書を順番に面接していって次の候補者と面接するまでに前の候補者に回答を出さなければいけないとしたときに、100を数学定数e(約2.718)で割った数、つまりこの場合は37人を不採用にしつつ優秀な人間のレベルを把握し、残りの53名の面接で最初に同程度優秀な人を採用するのがもっとも効率が良いのだという。恐らく、だれもが、感覚的にやっていることを数値的に示してくれた点が興味深い。

後半の3つは自分の人生を過大評価し過ぎるのをやめようということである。決して自己批判的になるわけではないが、1人の人間ができることは限られているので、むやみに仕事や人生に大きな意味を求めすぎず、今ある環境で楽しんで生きることこそより良い人生を送るのに大切なのだろう。

【楽天ブックス】「Think clearly」

「壬生義士伝」浅田次郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
南部藩を脱藩して新撰組に入隊した吉村貫一郎(よしむらかんいちろう)は大坂・南部藩にやってくる。その人生はどんなものだったのか、新撰組で吉村(よしむら)と同じときを過ごした人々がその人がらを語る。

先日読んだ司馬遼太郎の「燃えよ剣」に続いて新撰組を描いた物語に触れたくなった本書にたどり着いた。

面白いのは新撰組に在籍し生き残った隊士たちの証言によって物語が構成されているところだろう。また、どちらかというと新撰組は土方歳三(ひじかたとしぞう)を中心に最後まで戦い抜いた英雄のような扱いを受けているにも関わらず、本書では、武士になりきれなかった百姓たちが見栄と面子の芝居をしている、と切り捨てている。描く人が異なればまた解釈も異なる。そんなことを改めて感じた。

やがて、様々な生き残りの隊士の証言から少しずつ、吉村貫一郎(よしむらかんいちろう)の生き方が見えてくる。新撰組の物語では土方歳三(ひじかたとしぞう)、沖田総士(おきたそうし)、近藤勇(こんどういさみ)に焦点が当てられることが多いが、そんな時代の影にいきた1人の男の信念に沿った生き方を描いた物語。

それにしても浅田次郎の作品は、史実をベースに見事に物語に仕上げた作品と、そうでない軽めの物語の出来、不出来の差が大きいと常々感じているが、本書は良い方の作品と言えるだろう。

【楽天ブックス】「壬生義士伝(上)」「壬生義士伝(下)」

「After I Do」Taylor Jenkins Reid

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
学生時代に出会いそのまま結婚し数年が経ったLaurenとRyanは結婚生活がうまくいかないことに気づき1年間別々に過ごすことを決意する。

LaurenにはRachelという妹とCharlieという弟がおり、Laurenの良き家族として、その結婚生活を修復しようと努めるのである。やがて、LaurenはRyanのいない寂しさを乗り越え、新たな生き方を初めていく。そして、そんななか、自分たちは本当に結婚生活を続ける意味があるのか考え始めるのである。

そしてそんななか、弟のCharlieなどLaurenの家族にも大きな変化が訪れる。すでに夫を失って長いLaurenの祖母が語る言葉が重い。

Just because you can live without someone doesn’t mean you want to.
誰かがいなくても生きられるからといって、一人で生きたいわけではないのよ。

最初は軽いラブコメディかと思ったが、読み進めるうちに人間関係を続ける上での学びが詰まっていることに気づかされる。

Why is it only the verge of losing something that we se how much we need it?
どうして失う間際まで私たちは大切なものの重要性に気づかないのだろう?

It’s OK to hurt my feelings. It’s OK to embarrass me. As long as you do it from love.
僕を傷つけても大丈夫。僕を辱めても大丈夫。それが愛からくるものであれば。

All the matters in this life is that you try. All that matters is that you open your heart, give everything you have, and keep trying.
人生に大事なのは挑戦すること。心を開いて、全力で努力し続けること。

著者の有名な本は他にもたくさんあるようなのでぜひ読んでみたい。

英語の難易度としてはかなり簡単な域に入ると思う。結婚式の表現(best manやbaby shower)など、知らなかった表現をいくつか学ぶことができた。

「マチネの終わりに」平野啓一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
クラシックギタリスト蒔野聡史(まきのさとし)とジャーナリスト小峰洋子(こみねようこ)はあるコンサートをきかっけに出会い恋に落ちていく。そんな40代の恋愛を描く。

40代の男女を描くと言う恋愛物語としてはやや年配の人間を主人公としているが、恋愛の始まりの初期に起こりがちなすれ違いや、相手の想いを想像して悩む葛藤が起きることに年齢による違いはないようで、本書でもそんな蒔野(まきの)と洋子(ようこ)の思い悩む様子がそれぞれの視点から描かれている。

また、蒔野(まきの)がクラシックのギタリストであることから、さまざまな曲名や作曲者名が登場するのとあわせて、音楽で生計を立てていく人々の悩みもみて取れる。同じように洋子(ようこ)もバグダッドに赴任する国際ジャーナリストであることから、厳しい戦場の様子が描かれる。

お互いを想いつつ、自らのキャリアや仕事の都合などのさまざまな要因がからんでなかなか会ったり想いを伝えることができない、そんなすれ違いが続いていくのである。そんななか物語の根底には「未来だけでなく過去も変えられる」というテーマがある。

人は、変えらえるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。

印象的なのは洋子(ようこ)が幼い頃一緒に住むことのできなかった父親と再開し別々に生きた理由を訪ねるシーンである。

だから、今よ、間違ってなかったって言えるのは。…今、この瞬間。私の過去を変えてくれた今。…

音楽や戦争に関する描写だけでなく感情表現の細かさなど、ありがちな恋愛小説を、深いテーマを込めてを大きくレベルアップさせた一冊。

【楽天ブックス】「マチネの終わりに」

「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
月面で宇宙服をきた死体が発見された。
その人物は5万年前に死亡しているという。あらゆる分野の専門家達が集まってその真実を解明しようとする。

本書はハントというイギリス人の研究者を中心に物語が進む。理由もわからずアメリカに呼び出されたハントはやがて、チャーリーと呼ばれた種族の死体が発見されたことを知るのである。月で発見されたということからルナニアンと名付けられ、ハントを含む多くの専門家達の知識を結集して、その体や持ち物を分析することで少しずつ今までわからなかった真実が見えてくるのである。

物語はもちろんフィクションであるが、SFというどこか遠い世界の非現実的になりがちな物語を、月という身近な星を舞台で展開する物語で、身近に感じさせてくれる。さらに、科学的な説明や描写によって現実感を伴って描かれており、実際にこのようなことが本当に起こりえるかも、と思わせる面白さがある。

すでに発行は40年以上前の本だが、今でも十分に楽しむことができる。

【楽天ブックス】「星を継ぐもの」

「燃えよ剣」司馬遼太郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
新撰組副長土方歳三を中心に幕末の新撰組の様子を描く。

新撰組や副長の土方歳三、沖田総司など、名前と最後の函館の様子や沖田総司が病気で亡くなったことだけは知っていたが、どのようにして新撰組が発足し、どのような動きをしていたかはほどんと知らなかったため、今回ようやく名作である本書に至った。

世の中は、攘夷、倒幕、という考え方で時代が大きく動く中、攘夷を目的とした団体として立ち上がる。幕府の管理下の団体として発足したために、倒幕を目的として動く長州藩と敵対していく。新撰組を大きくしたいという野望と、攘夷、つまり外国人を退けることを目的として立ち上がった親善組なので、少しずつ世の中の流れが幕府から、長州藩、薩摩藩へと移行する中で、幕府の下で動くことが、賊として名を歴史に残すことに繋がりかねないとして葛藤したり離脱したりする隊士たちの様子が面白い。

やがて、近藤勇や沖田総司を失い、土方歳三は北へ北へと戦いの場所を求めて移動し、やがて函館にたどり着き最後の戦いを迎えるのである。

賊名を残したくない。私はお前と違って大義名分を知っている。

土方歳三の生き方に感銘を受けながらも、わずか150年程度前の時代に、離脱をしようとする隊士たちに切腹を命じたり、隊の存続に邪魔になりそうな人々を暗殺したりする、そんな新撰組の秩序維持の方法に時代の移り変わりの速さを感じる。残念ながら薩長同盟や坂本龍馬についての記述はほとんどないので、今度はもう一つの名作「龍馬を行く」などにも触れてみたいと思った。

【楽天ブックス】「燃えよ剣(上)」「燃えよ剣(下)」

「この英語、訳せない!」越前敏弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
数々の著名作品を翻訳している翻訳家の著者が、訳すのが難しい英語を解説する。

著者越前敏弥さんの本は本書で3冊目になるが、毎回意味をつかむのが難しい文章を紹介してくれて勉強になる。本書でも日本人には難しかったり、間違えがちな様々な英語表現を紹介している。teenagerは十代ではないなど、知っていることも多々あったが、改めて学んだこともたくさんあった。例えば次の表現。

The room was badly heated.

その部屋は暑すぎるのか寒すぎるのか、なんとネイティブに質問しても意見が分かれるのだという。確かにbadlyの意味の撮り方でどちらにも取れる。このように実際日常的に使われていながら、実際には人によって意味のとり方が異なる単語は日本語にも多くあるような気がしてきた。本書でも紹介されている「カーキ色」などはその代表例だろう。文脈上重要じゃないから誰も意味が正しく取れているかどうかを確認しないのである。

また、Hopefullyの使い方については、僕がときどき英会話で使っている方法は誤用ということを初めて知った。今後は気をつけたい。

いつものように翻訳の難しさと、言語の奥深さを改めて教えてもらった。

【楽天ブックス】「この英語、訳せない!」

「絵でわかる英文法」波瀬篤雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人には捉えづらい英単語のイメージを絵でわかりやすく伝えている。

英単語のほとんどは日本語の単語と1対1で対応されるものではない。例えばonなどは「〜の上に」と訳されることが多いが、その理解だけだとどうしてもうまく訳せない時がある。そんな日本語に置き換えることができない英単語をイメージで説明している斬新な内容である。

僕自身すでに大学を卒業してからだけでも15年以上は英語を勉強している身だったが、それでも新鮮な考え方にいくつか出会えた。面白かったのはスイッチをつける意味のturn onという表現。onの流れでの説明だったが、なぜturn onというのかがスイッチの構造をイメージするとすっきりした。

また、日本人が混乱しがちなcomeとgoの使い分けの考え方も新鮮だった。

comeは手に負える
goは手に負えない

としていて、例として挙がっている

  • Where has my eraser gone?
  • Winter has gone.
  • come true
  • come off
  • go hungry
  • go mad

などをみると納得できる。

いままで特に疑問に思わずにただ暗記していたことに気付かされる部分もあった。イメージとして持っておくとより自然に英語の意味を捉えられるようになるかもしれない。どちらかというと手元に置いておいてなんども読み返すべき本なのだろうと思った。

【楽天ブックス】「絵でわかる英文法」

「The Good Daughter」Karin Slaughter

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
CharlieとSamの姉妹は父親の弁護士RustyとかつてNASAに勤めていたこともある賢い母親Gammaと暮らしていた。そんななか、ある日現れた2人の男によって母親を殺され、姉妹は命からがら生き延びる。本書ではそれから26年後の姉妹を描く。

最初の惨劇の印象がすごいが、物語の中心はその惨劇から26年後、再び妹のCharieが事件に巻き込まれたことから始まる。構内の発砲事件により男性と少女が亡くなり、中学生の女の子が拘束されたのである。その弁護を担当することになった父Rustyにより、26年前の事件により深刻な後遺症を持ったまま生きているSamもNewYorkから故郷に戻ることとなる。

一方、父Rustyを手伝いながら故郷で生活していたCharlieは夫のBenとの関係がうまくいかず、浮気をしたりなど不安定な生活を送っている。後遺症に悩むSamは、26年前に自らが犠牲になったせいでCharlieが生き延びたこと、幸せに生きていることを救いとして自らの人生に向き合ってきた。にも関わらず、なかなか幸せな結婚生活をCharlieに苛立つのである。やがて、CharlieとSamは26年前には話すことのできなかった心のうちをぶつけあうこととなる。 Everybody thinks I blame myself for running away. No, blame myself for not running faster. みんな私が逃げた自分自身責めていると思っているけど違うの。早く走れなかった自分を責めているの。

CharlieやSamと接するときに父Rustyの語る言葉が印象的である。

It is a father’s job to love his daughter in the way that she needs to be loved.
娘に合わせて愛するのが父親の務めなんだよ。

There is value in forgiveness.
許すことには価値がある。

やがて物語は26年前の知られざる真実へとつながっていく。

物語全体としては、ChrlieとSamの悲劇によって生み出された悲しい生き方も印象的だが、そんな2人を支えた父と母の異なるタイプの人間像がなによりも印象的である。死んだあともこんな風に思われる親になりたいと思った。悲しい物語ではあるが、同時に地位ちゃ母のありかた、姉妹のありかたを考えさせられる作品。

「新参者」東野圭吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2010年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

日本橋で女性が殺された事件の捜査で着任したばかりの加賀恭一郎(かがきょういちろう)は、地域の人々の話を聴きながら少しずつ真実に近づいていく。

日本橋で生活するさまざまな人々の視点に移り変わりながら進んでいく。そして、刑事の加賀(かが)は鋭い観察眼で真実に近づいていくのだが、事件の解決だけでなく、そこで出会う人々に対して人間味を持って接していく点が印象的である。日本橋にある多くの伝統的なお店が登場する点も面白い。

そんな加賀(かが)の尽力によって少しずつ真実が明らかになっていく。被害者である母、離婚して新たな人生を歩み始めた父、そして自らの夢をおって家を出た息子、それぞれ悩みながら生きていることがわかる家族の物語である。

頭の中だけで物語を作り出し、特に現実世界の下調べなどに時間を割かない東野圭吾の作風に物足りなさを感じてしばらく遠ざかっていた。しかし、どんな作家も時間が経つとともに作風に変化があり、本書はそんなことを改めて感じさせてくれる1冊だった。評価の高いものからもう一度読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「新参者」

「「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考」末永 幸歩

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートの楽しみ方を中学生にもわかるように説明している。

絵画はカメラという技術が登場したことによって大きくその存在価値が変化していった。本書ではカメラ登場以降の芸術家たちの試行錯誤する様子を、マティス、カンディンスキー、ポロック、デュシャンなどを題材に説明し、それぞれの作品が美術にもたらした大きな考え方の変化を説明している。

僕自身過去それなりに美術にも触れてきたつもりでいたし多くの書籍を読んでもきたので、登場した画家やその作品は本書を読む前から知ってはいたが、本書では解説されているような美術史における意味を知らなかった。もちろん、本書の解説は数ある一つの解釈でしかないが、自分自身でアートの背景を想像して楽しんでいるだけではなく、人の意見や解釈を聞いてそれをもとにさらに考え方を発展させるというのは非常におもしろいことだと感じた。

また、美術を見るとき、どうしても僕らは自分たちが生きている現代の常識にとらわれてしまうが、その作品が作られた時代背景をしっかり理解することが重要なんだと改めて感じた。

今後美術作品に触れる際は、もっと他の人の意見を聞いて見るということもしてみたいと思うとともに、機会があればそういう場にも参加してみたいと思った。自分の感覚でしかないが、海外に比べると日本は一般の人が美術に触れる機会は少ないように思う。本書はそんな日本の一般の人が感じる、美術への近づきがたさを多少なりとも緩和できるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考」

「流浪の月」凪良ゆう

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2020年本屋大賞の受賞作品。

9歳の更紗(さらさ)両親が亡くなって親戚の家に引き取られることとなる。自らの居場所に悩むなか、あるとき公園で大学生の文(ふみ)と出会う。

9歳の更紗(さらさ)と大学生の(ふみ)の物語である。大学生の男と小学生の女の子なので、大学生の(ふみ)を見る世間の目は厳しい。そんな危険な関係がどのように展開していくかという点が緊迫感があって面白い。そんな2人はやがて離れ離れになり、15年の時を経て再び近づいていくのである。

周囲の人間の持つ先入観に振り回されながらも強く生きる更紗(さらさ)と(ふみ)の生き方が印象的である。幼い女性しか愛せないという、どちらかといえば世の中から敵意を持って見つめられがちな嗜好性を持つ人間を、物語の中心に据えている点に新鮮さを感じる。普通の人間として生きることのできない人間の、強く切ない物語である。

この感覚を言葉にするのは難しいが、こんな辛い生き方をしている人も世の中に入ることを理解し、、そんな人間が周囲にいるのだとしたら、応援できる人間でありたいと感じた。

【楽天ブックス】「流浪の月」

「大地の子」山崎豊子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ソ連国境近くの日本人開拓村で8歳だった勝男(かつお)は日本の敗戦とともに両親を失い、やがて中国の家庭にもらわれ、陸一心(ルーイーシン)として生きていくこととなる。そんな中国と日本という2つの国の間で生きた男の人生を描く。

序盤は、勝男(かつお)が陸一心(ルーイーシン)として中国の家庭に受け入れるまでを描く。しかし、日本人の血を引いているという事実と、文化大革命という歴史的な動きによって、さまざまな障害となって陸一心(ルーイーシン)の未来を阻む、陸一心(ルーイーシン)はスパイの容疑で15年の実刑を宣告されるのである。

中盤からは、陸一心(ルーイーシン)は、育ての親や友人の努力の末に名誉を回復し、日本語を話せるという能力ゆえに、中国の国家をあげての一大プロジェクトである製鉄所建設で重要な役割を担うのである。日本と中国は文化の違いに戸惑いながらも少しずつ製鉄所建設を進めていくのである。

文化大革命という大きな歴史的出来事ではあるが、あまり日本では触れられることが少なく、僕自身も「ワイルド・スワン」という物語で軽く知っている程度であった。本書の序盤はそんな文化大革命の様子を詳細に伝えてくれる。そして、その後の日中合同プロジェクトである製鉄所建設の様子からは、文化大革命という出来事が、中国人の考え方に大きく影響を及ぼしていることがわかる。

2つの国の間で翻弄された人間の様子を描くとなかで、日本と中国の戦後の様子を描き、また日本人と中国人の考え方の違いなども描写している。全体的に、この物語を描くために、多くのことを取材して著者の情熱が伝わってくる。

【楽天ブックス】「大地の子(一)」「大地の子(二)」「大地の子(三)」「大地の子(四)」

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」相沢沙呼

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2020年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

香月史郎(こうげつしろう)は友人の相談に乗ったきっかけで霊媒師の城塚翡翠(じょうづかひすい)と出会い、その霊媒師という得意な能力を利用して2人で事件を解決していくこととなる。

天然の美人で霊媒師という城塚翡翠(じょうづかひすい)と冷静沈着で論理的に物事を考える香月(こうげつ)のコンビで事件を解決していく物語である。冷媒の力で犯人がわかったとしても、その犯人を捕まえるためには証拠が必要ということで、犯人の情報を元に香月(こうげつ)の論理的な考え方で逆説的に証拠を集めていくところが面白い。

とはいえ、ここまでならば、今まででよくある刑事物語の、ちょっとした焼き直しのように聞こえるかもしれないが、後半の大きな展開によって、本書を一層際立った、一読の価値ありの作品に仕上げている。

【楽天ブックス】「medium 霊媒探偵城塚翡翠」

「The Four Agreements: A Practical Guide to Personal Freedom」Don Miguel Ruiz


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人は親や社会や周囲の人々との多くの合意の中で生きており、多くの悩みや悲しみはその同意によって生まれるのだという。本書ではほかの多くの合意を忘れて、たった4つの合意だけ意識して生きることを勧めるている。

オススメ書籍としてそこら中で名前が挙がる作品で、またそのタイトルにあるFour Agreementも調べようと思えば簡単に調べることができるが、そのFour Agreementの背景にある考え方まで知りたいと思って本書にたどり着いた。4つのAgreementは次の4つである。

1.Be Impeccable With Your Word
2.Don’t Take Anything Personally
3.Don’t Make Assumptions
4.Always Do Your Best

本書を読む前は2のDon’t Take Anything Personallyや3のDon’t Make Assumptionsに共感したのだが、本書を読むと1のBe Impeccable With Your Wordの持つ力の大きさに気づかされる。だからこそこの合意が最初にくるのだろう。

人は使う言葉によって、悪い言葉なら呪いをかけ、良い言葉ならプラスの魔法をかけるのだという。使う言葉一つ一つがそれを聞く人、使う人に影響を与えると言うことを意識する。それこそがBe Impeccable With Your Wordであり、元気が出る魔法を、周囲の人にかけられるような、もしくは悪い呪いを解くような、人をプラスの方向に導ける言葉遣いをしていきたいと思った。

わずか数100ページと非常に短いわりに、とても有名な本なのでぜひ一度読んでおくべきだろう。ただし、1度読むだけでなく何度も人生の中で立ち止まっては自分に言い聞かせてこそ役立つ内容なんだと感じだ。

「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」ランダル・ストロス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
生まれて間もないスタートアップの創業者たちを支援するベンチャーファンド、Yコンビネーターのその日々の様子を描く。

Yコンビネーターという言葉は、エアビーアンドビーなどこれまでいくつかの企業の成功物語の中で目にしてきたが、実際にどのようなことをやっているのかを知りたくて本書を手に取った。

Yコンビネーターの主な活動は、創業者たちを集めて行う3ヶ月のブートキャンプである。本書はそんなブートキャンプの様子に焦点を当てている。その過程で多くの生まれて間もない企業を紹介している。

スタートアップを始める人というのは、やりたいことや、世の中の改善したいことがあったうえで、それを実現するためにスタートアップを始めるのだと思っていたが、実際に本書において、3ヶ月のブートキャンプの創業者たちの様子を知ると、実際にはただスタートアップを始めたくて始めている人の方が多く、何をやるかはあとから出てくることの方が多いことを知った。そんな創業者たちは、利益を上げそうなことや、自分たちの知識を活かせそうなことは手当たり次第手をつけていく印象を受けた。

最後に印象に残ったのはYコンビネーターの創業者、ポール・グレアムがシリコンバレーについて語る言葉である。

ヨーロッパやその他の場所では、人々が大胆さに欠けるということではなく、手本に欠けていることが問題なのだ。

すでにアメリカではYコンビネーター以外にも、スタートアップを支援する企業が多く立ち上がっているというし、アメリカ以外の国の中にも同じような動きはおきているという。日本にもこのような動きがあってもいいのではないかと感じた。また、同時に、スタートアップを始めたくなった。

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「月の満ち欠け」佐藤正午

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第167回直木賞受賞作品。妻と娘の瑠璃の3人家族で生活していた小山内(おさない)だったが、瑠璃(るり)が7歳になった時、妻の梢か(こずえ)から瑠璃(るり)が教えたこともない言葉や古い歌を歌っていると知らされる。生まれ変わっても人は前世の記憶を持っているのか、そんな小山内(おさない)が遭遇する瑠璃(るり)との物語。

前世からの生まれ変わり、というテーマで描いたミステリーということで、特に素材時代新鮮というわけではないが、瑠璃(るり)という共通の名前を持つ女性たちと、その周囲で不思議な体験をした人を中心に物語を展開する点が新しい。ありきたりな素材でも、調理方法でいくらでも面白くなることの好例と言えるだろう。

物語を読みながら、実際自分がこのような不可思議な体験をしたらどのように行動するだろうか。そんなことを考えてしまうだろう。

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「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する企業になる為にはプロダクトではなくユーザーが解決しようとするジョブにフォーカスすべきだとして、その考え方を説明する。

まず、ジョブを見極める方法として次の5つの項目を挙げている

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。
2.苦心している状況は何か。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、そん解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

そして、未解決なジョブを見つけるための方法として次の5つを挙げている。

1.生活に身近なジョブを探す
2.無消費と競争する
3.間に合わせの対処術
4.できれば避けたいこと
5.意外な使われ方

これから何か新しい製品やサービスを考えようとしている人は参考にするといいだろう。ここまでがジョブの見つけ方や見極め方であるが、本書ではそれに加えて前後の文脈や、感情面へも配慮を怠らないことが大切としている。

また、ジョブについて説明する過程で、ジョブを解決した実例をいくつか紹介している。ウーバーやP&Gなど、すでに知っている企業の例もあれば、アメリカンガールや、マイヨークリニックなど本書を通じて初めて知った企業もあり、どれも興味深かった。アメリカンガールや、マイヨークリニックなどは日本で実現しても同じようにこれまで未解決のジョブを解決し成功を収めるのではないかと感じた。

ジョブを中心に製品を開発し企業も、その多くが一度製品を世の中に送り出すと、ジョブ中心の考え方からプロダクト中心の考え方に陥っていくのだという。後半では、その理由を大きく3つに分けて説明している

1.能動的データと受動的データの誤謬
2.見かけ上の成長の誤謬
3.確証データの誤謬

どれも言葉だけでは伝わりづらいが、能動的データと受動的データの誤謬とは、最初はジョブにフォーカスするという受動的なデータ、つまり今見えているデータをみてそれを解決する為に製品を考え始めたのに、製品を世の中に出すと、売り上げやユーザー数やユーザー属性など、製品を世の中に出したことによって得ることができた能動的なデータを改善することに意識を取られてしまうということである。見かけ上の成長の誤謬とは、既存顧客に製品をもっと売ろうとしてジョブへのフォーカスを失うことである。そして、確証データの誤謬とは、人間は自分がみたいと思うデータ以外を無視する傾向によって発生する事実誤認のことである。

どれも身に覚えのあることだけにしっかり意識して今後製品開発やサービスローンチに携わっていきたいと思った。そのほかにも、セオドア・レビットやピーター・ドラッカーの有名な言葉をたびたび引用している

人は刃の直径が4分の1のドリルが欲しいのではない。4分の1の穴が欲しいのだ。
企業が売れると思ったものを顧客が購入することはめったにない。

また、最後でジョブを嗜好やほかのものと混在しないように指摘をしている。

同種のプロダクトでしか解決できないのならそれはジョブではない。

「理論」というだけあって、様々な状況に適用できるように考えて構成していることがわかる。本書に書かれている内容をしっかり理解して、実戦で活かせるように身につけておきたいと思った。

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