「Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us」Daniel H. Pink

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
あらゆる組織において重要な、社員のモチベーションをあげるための方法を書いている。
人間は初期には食欲や性欲によって行動をしていた。そして1900年代は罰と報酬によって行動していた。そして、世の中の仕事の単純作業の多くはコンピューターによって行われるようになった今、人々は今までにないほど創造性を求められるようになったのである。本書ではこれまでの報酬によるモチベーションを「モチベーション2.0」と呼び、好奇心による内なるモチベーションを「モチベーション3.0」と読んでいる。
著者は最初に、一つの実験の結果を見せてくれる。2つのグループがあるパズルを解くための時間を計測する実験である。報酬を約束されたグループは報酬をもらわなかったグループよりも早くパズルを解決するが、次の実験として、2つのグループともに報酬をもらえないということになると、前の実験で報酬をもらったグループのほうが、最初から最後まで報讐をもらえなかったグループよりも作業が遅くなる、という面白い結果である。つまり、報讐は短期的には効果があるが、長期的に見ると作業者のモチベーションを落としているのである。
また、報酬を目ざす作業者はショートカットを求める方向に向かうため、創造性を発揮する事が少なくなるという。だからこそ、より創造性が求められる現代において、「モチベーション3.0」を生み出せるかどうかが企業の生き残りの鍵となるだろう。本書ではいくつかの例をあげて、「モチベーション3.0」を育むための人への接し方や声の掛け方、褒め方を説明している。
しかし、著者は報酬を与えるということをすべて否定しているわけではない。創造性を必要としない単純作業の場合にはむしろ報酬は効果的に機能するというのである。報酬が役に立ちそうな状況についても説明しているので非常にわかりやすい。
会社に限らず、チームやコミュニティなど、組織を構成する多くの人に取って、効果的に機能を果たす組織をつくるために役に立ちそうな内容が詰まっている。会社の人間にもぜひ読んで欲しいと思った。

「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」ジョシュア・フォア

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人間の記憶の構造について興味を持った著者は、自らも記憶術を使って全米記憶力選手権に挑戦することとなる。
現代では記憶力は必要ないと言われている。僕らはいつでもスマートフォンを持ち歩いていて、情報を検索する事ができるからだ。しかし、歴史を遡れば、文字や書物が登場した時代にも、人間の記憶の必要性は大きく減ったと言われている。しかし、それ以前は情報の多くは記憶にだけとどめられ、口頭で飲み伝承されていたのである。本書によってそんな話を聞くと、今の人々はその記憶力の可能性をほとんど活かしていないことに気付くだろう。
さて、本書では著者の体験だけでなく多くの記憶力選手権出場者はさまざまな記憶術を利用して、困難と思われる情報を短時間で記憶しようとする。代表的な記憶術は「場所法」と呼ばれる物で、覚えるものを自分のよく知る建物や場所の中に心のなかで配置していくものである。人間は元々、人や場所を覚えるのが得意なのだそうだ。その性質を利用して、数値や言葉を場所や人に絡めて記憶するのである。そして、記憶するためには、その内容は突飛であればあるほど記憶に長く残るのだという。
本書を読みながら自分でもいくつかの数字を人や場所など、突飛な状況をあわせて覚えようと試してみると確かに効果があることがわかる。記憶することに多くの時間を費やすことが今の時代にどこまで有用性があるかという疑問はあるが、記憶術を知る事は決して無駄ではないだろう。
また、記憶術だけではなく、まだ本が少なかった時代の人々との本の読み方と、現代の本が溢れた時代に置ける本の読み方の比較など、印象的な話にもいくつか出会うことができた。タイトルから想像されるよりもずっと内容の深い本である。
【楽天ブックス】「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」

「スイッチ!「変われない」を変える方法」チップ・ハース&ダン・ハース

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人間は正論をぶつけても動かない。なぜなら人間は「感情」で動く人間だから。そんな視点から組織や人を変えるための方法を語る。
冒頭で本書は述べている。人や組織が変われないのは、私たちのなかで「像(感情)」と『像使い(理性)」が戦っているからだと。怠け者で気まぐれな「像」と計画的な「象使い」が協力し合う事で初めて人間は変化を起こすことができるのだ。
例えば、やせたい人間に、「運動をしろ、食事を減らせ」というのは簡単だし、そんなことができればやせる事は本人にもわかっている。でも理性ではわかっていてもできないのが、「感情」を持つ人間なのである。それでは像(感情)に訴える方法とはどんなものなのだろうか。本書はそんな、像(感情)に訴えて成功した例をいくつも挙げている。どの例も興味深く、次第に像(感情)に訴える方法がわかってくるだろう。
そのうちの一つは、「1から始めなければならない」と思う場合と、「すでに途中まで達成している」と感じる場合とでは人の行動は異なるというもの。例えばすべてのスタンプ押したら特典が得られるポイントカードで、10個のうち2個すでに押してあるカードを渡された客と、1個もスタンプの押されていない8個で満杯のポイントカードを渡された客とでは、貯めなければならないスタンプの数は同じ8個でも達成する可能性は大きく異なるという。また、普段の仕事で多くのカロリーを消費していると教えられた家政婦とそうでない家政婦とではその後の体重の増減に明らかな違いがあるという。
職場の部下や子供の教育、会社のポリシーへの影響、ビジネスにおけるユーザーへの対応など、さまざまな場所に応用できそうな内容で詰まっている。
【楽天ブックス】「スイッチ!「変われない」を変える方法」

「なぜこの店で買ってしまうのか新版 ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな店舗において、客がどのように行動するかを分析した著者がその経験から学んだ事を語る。
例えば、人間は鏡がある場所で歩く速度を落とす、女性は男連れだと買い物時間が短くなる、など、言われてみれば納得のいくものもあれば、今まで考えてもみなかったようなことが買い物に大きく影響を与えていることもある。
試用や試着をしてから物を買おうとする女性と、試着したがらず、試着したら買わなければならないと思う男性というように、男女の違いの大きさも面白い。しかし、物を売る側にとって常に意識しなければならないのは、買い物の時間を減らすこと、買い物客の持てる荷物の量を考慮する事だろう。
本書は実店舗の話を主に扱っているが、これがインターネット上での買い物にどの程度提供されるかという点は非常に興味がある。本書は「新版」としており、インターネットについても触れているが、実店舗の分析に比べるとまだまだ内容が薄い。しかし、全体的には店舗という空間に新たな視点をもたらせてくらる一冊である。
【楽天ブックス】「なぜこの店で買ってしまうのか新版 ショッピングの科学」

「成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール」ダグ・レモフ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
どんな分野でも能力を伸ばすためには、しっかりと考えた「練習」が必要である。本書はそんな効果的な練習方法について説明している。
本書で書かれているのははむしろ「練習方法」というよりも、「練習の指導方法」といった印象を受けた。具体的には次のような内容である。

批評ではなく、正しい方法を指示する。
漠然とではなく具体的に。
フィードバックをすぐに与える。
成功を計測する。

漠然とした言葉から、具体的な言葉にすることによって周囲の人間の能力が大きく変わるということは、僕らはもっと言葉や振る舞いに気をつけなければならないという事である。しかし、どれほどの人がその指導する言葉の重要性を理解しているのだろうか。「頑張れ」「気合い入れろ」などのような漠然とした指示がどれほど意味がないのかをもっと意識すればより効果的な指導ができるようになるだろう。同じようにほめる時も「よくやった」とか「がんばった」ではなく、何が良かったのかをはっきり示すべきなのだそうだ。
本書で例としてとりあげる練習が、教師の指導方法についてであることが多いので、仕事にも応用できそうな状況が多く描かれていた。本書の内容を常に意識する事によって、組織を高いパフォーマンスの集団に変えることができるかもしれない。
【楽天ブックス】「成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール」

「デザイン思考が世界を変える」ティム・ブラウン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインファームIDEOのCEOである著者がデザイン思考について語る。
デザイン思考という考えは最近いろんな場所で語られ、その重要性はこれからの時代においてますます強まっていくことだろう。本書では著者が自らの経験からデザインについて語る。
まず、デザインとは3つの制約を受け入れることだと言う。それは「技術的実現性(フィーザビリティ)」「経済的実現性(ヴァイアビリティ)」「有用性(デザイアビリティ)」であり、任天堂のWiiなどそれを実現した事による成功例をいくつかあげている。
そしてデザイン思考を、「収束的思考」と「発散的思考」に分けて考えている点も興味深い。判断を下す場合には「収束的思考」は重要だが、可能性を広げるためには「発散的思考」が必要だという。だからこを著者は、多くの会社がデザイナーなどの発散的思考の持ち主を組織の下部にしか配置していないことを嘆いているのだ、なぜなら組織の下部に降りてくる頃にはすでに会社の方針は決定しており、「収束的」に物事を進めなければならないからである。
考えてみれば当たり前のことなのかもしれないが、それでも刺激になる考え方にたくさん出会う事ができた。ぜひ時間を空けてもう一度読んでみたい。
【楽天ブックス】「デザイン思考が世界を変える」

「非才」マシュー・サイド

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
この世には遺伝的に決まる「才能」なんてものはなく、すべては努力によって身につけられる。世の中にはびこる「才能神話」を否定しながら、効果的な努力の方法を説明する。
卓球のチャンピオンとなった著者が、自らの経験を振り返ってその理由を探るとともに、技術を習得するための方法を語る。同じように努力や効果的な練習方法に着いて語った「天才!成功する人々の法則」「Talent Code」などと同じような内容を含む部分もあるが、本書では自らの経験談として語られている点が大きく異なる。
著者は自分が卓球のチャンピオンになった理由を、才能のおかげなどと言ったりはしない。卓球台を買ってくれた両親と、同じように卓球にのめり込んで常に練習相手となってくれた兄の存在があったからだと言うのだ。つまり、たまたま効果的な練習を何時間もできる環境に育ったということである。
同じように、タイガーウッズやチェスのチャンピオンなど多くの偉大な「才能を持っている」と呼ばれる人たちの努力を説明していく。本書の努力の説明とは、つまり才能の否定である。面白いのは著者が、プロテニス選手のサーブレシーブに挑戦する場面だろう、高速のサーブを打ち返すことのできる人間はそれに見合う反射神経という才能を持っているから、と言われるが、では同じように反射神経を持っていると言われる卓球チャンピオンは、テニスのサーブに反応できるのか。
また、後半では、大舞台で起きた「あがる」という現象について説明する。トッププレイヤーは並外れた練習量によってスポーツに必要な動作を「自動化」する。しかしわずかな狂いによって「直そう」と意識してしまうことで、ますます悪化していくのである。
毎日の努力に磨きをかけたくなる一冊。
【楽天ブックス】「非才」

「Life in Motion: An Unlikely Ballerina」Misty Copeland

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
バレエダンサーであるミスティ・コープランドのこれまでの人生を描く。
バレエというと、裕福な家庭の女の子達がするものというイメージがあるが、著者であるミスティはどちらかというとかなり貧しい家庭の生まれである。それどころかMistyの母は何度も結婚と離婚を繰り返したため、強大も別々の父親を持ち、たびたび引っ越しを繰り返し、モーテルに住む事まであり、自分の部屋どころか自分の寝床を確保することさえ難しいような子供時代を過ごしたというから驚きである。
しかし、才能のある人間は才能を見つけて育てる人間を呼び寄せるのか、それともそんな人間に恵まれたから才能が開花したのか、いずれにしても、成功者の周囲には必ず鍵となる人物がいるものだ。バレエ教室を経営するCindyがまさにMistyにとってそんな人間となる。遅くにバレエを始めたMistyの才能に早くから注目し、教室まで遠くて通う事ができないMistyの送り迎えをするだけでなく、Copeland家がモーテルに住み始めたのを機に、Mistyを引き取って一緒に生活する事になる。そしてバレエを教えるだけでなく、その家庭事情ゆえに引っ込み思案で自らの意見を言うことをあまりしなかったMistyに繰り返し質問をして、本人の自我を育む事となったのである。
また、才能あふれるMistyだが、黒人ということで、未だにアメリカのバレエ界に根付く人種差別に何度も遭遇する事となる。しかし、過去の黒人バレリーナ達が自分に道を開いてくれたという信念と、自らも次の世代の同じような境遇の人々へバレエの世界を開くという姿勢で少しずつバレリーナとして成功していく。Mistyのバレエに対する姿勢はとても刺激となる。彼女の姿勢はまさに完璧主義者であり、目の前にあるモノを突き詰め、毎日時間を費やすことによって、人を感動させるような技術身に付くということを改めて教えられた気がする。

ステージでは照明がバランスと重心に影響を及ぼし、空気を暖め、それがトゥシューズを少し柔らかくする。衣装の重さや動きにくさはダンサーの動きに影響を与える。

「国をつくるという仕事」西水美恵子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元世界銀行副総裁である著者が貧困と戦った日々を語る。
僕らは貧困という言葉を聞いたときどのようなイメージを持つだろうか。もちろん貧困がなくなるといいと思うし、ただお金を分け与えるだけではそれは解決しない事も分かっているし、世界から貧困を無くすためには多くの超えなければならない生涯があることも知っているだろう。しかし、僕らが知っているのはそれだけである。多くの人が貧困がなくなればいいとは思いながらも自分の人生に大きな影響を与えるほどの行動はできない。または行動力のある人でも実際に現地に行って数年の支援活動に参加する程度なのであろう。
本書の西水美恵子はそのどちらでもない、その立場多くの国の政策に影響を与える権力者達と貧困解決の方法を探り、時には彼らの態度を叱咤し、大きなレベルで貧困を解決しようとする世界を走り回る一方で、常に現地の人たちと交流しその実情を知ろう努力するのである。
そんな彼女が常に立ち返る思い出がある。

カイロ郊外の路地で、ひとりの幼女に出会った。ナディアという名のその子を、看護に疲れきった母親から抱きとったとたん羽毛のような軽さにどきっとした。ナディアは、私に抱かれたまま、静かに息をひきとった…。誰の神様でもいいから、ぶん殴りたかった。天を仰いで、まわりを見回した途端、ナディアを殺した化け物を見た。きらびやかな都会がそこにある。最先端をいく技術と、優秀な才能と、膨大な富が溢れる都会がある。
自然にナディアが仕事の尺度になった。何をしてもナディアに問うのが習慣になった。「生きていたら喜んでくれるかしら。あなたを幸せにできるかしら…」

本書のなかに登場する多くの権力者たちは、西水美恵子の視点によって、また報道などで見聞きするのとは違った印象を与えてくれる。真実には多方面の視点から物事を見つめる事によってのみ近づく事ができる、ということは改めて感じる。
世界をよくするために何ができるか。本書では、そんな理想を、理想として終わらせない生き方が見えてくる。きっと何か行動を起こしたくなるだろう。
【楽天ブックス】「国をつくるという仕事」

「あなたの中のリーダーへ」西水美恵子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界銀行副総裁として途上国の貧困と闘う著者が、これまでの経験を語る。
著者の人生を変えた瞬間を語った冒頭の章がもっとも印象的である。パキスタンの離村にホームステイに行った時の経験だそうだ。

「くる日もくる日も、同じことの繰り返し。気が狂ってしまうかと思う時さえある。

これは人間が営む生活ではない。動物のように、ただ体を動かしているだけ……

夢はただひとつ。

子供達が教育を受けて、こんな生活を繰り返さないように。けれど、それさえかなわない。

自分が病気になったら皆飢え死にする。

それが恐ろしい……」



あのとき、本気にスイッチが入ったのだと思う。自分という洋服を、それまで裏返しに着ていたようなあの感触は、今でも体に残っている。

人の人生を変えるきっかけはいろんな世界を見る努力を続けなていないと訪れないのだと改めて思った。その他にも、日本という枠にとらわれることなく活動する著者の視点からの新鮮な言葉や経験で溢れている。また、本書では何度もブータンについて触れられており、著者自身ブータンという国に非常に魅力を感じているのが伝わってくる。

何をすべきかではなく、すべきことをどう捉えるか。この違いが、組織を動かし、社会を変え、人の命さえをも救う……

自分の使命をしっかり意識してそれに向かって生きる姿が羨ましい。引き続き著者西水美恵子氏の他の本も読んでみたいと思った。

読みたくなった本

・「日本でいちばん大切にしたい会社」

【楽天ブックス】「あなたの中のリーダーへ」

「強いチームはオフィスを捨てる」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネット上に様々なツールが出そろった今、僕らが働いているオフィスは本当に必要だろうか。確かに、実際に顔を合わせた方がインターネットを利用してチャットやビデオ会議をするよりもいいことはあるだろう、しかしそのメリットは、毎日満員電車に揺られて同じ場所に来るという労力に見合うものだろうか。また、僕らは同じ場所で働くことのデメリットをしっかり認識しているだろうか。リモートワークを実現するアメリカの企業、37シグナルズがその働き方を語る。
リモートワークの良さを語るだけではなく、現状のオフィスで働くことのデメリットを多く挙げている点が面白い。確かに、僕らは集中して仕事をしたいとき、平日のオフィスで仕事をしたりなんかしない。わざと人のいなくなった残業時間や休日を選んだりしているのが実情だ。なぜならオフィスではいろんな人が重要だろうと重要でなかろうと話しかけてくるため、長い間集中して作業する事ができないのだ。
オフィスワークの支持者達は、きっと見ていないと社員が働かなくなることを恐れているのだろう。そしてそれは、リモートワークが普及しない大きな理由の一つなのだ。しかし、本書ではそれを、「そもそも監視していなければ働かない社員を雇うな」と一蹴する。オフィスでもFacebookやYoutubeを見ている人はたくさんいるのだ。本書で書かれていることは誰もが経験からうなずける事ばかり、考えれば考えるほどいまのオフィスワークがばからしく見えてくる。
リモートワークを利用して、国境をまたいだオフィスを必要としない企業を作りたいと思わせてくれる。また、本書で紹介されているインターネットツールも参考になる。今後の働き方を考えるうえで抑えておきたい。
【楽天ブックス】「強いチームはオフィスを捨てる」

「たのしいインフォグラフィック入門」櫻田潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スマートフォンが一般普及して誰もがその場でインターネットに接続でき、調べる事ができるということになった。つまりそれは情報を記憶していることは重要ではなくなってきているということ、むしろ重要なのは情報をどのように伝えるか、効果的な情報の伝達方法である。そのような理由から、今後ますます情報の効果的な伝達手段であるインフォグラフィックは注目されていくだろう。
本書はそんな情報の視覚化をピクトグラムとインフォグラフィックで分けて説明している。前半部分は特に印象的な説明はなかったが、後半になると覚えておきたい考え方がいくつか出てきた。特に12の図解タイプ(サテライト型、ベン図、蜂の巣型、ツリー型、マトリクス型、2軸マップ型、テーブル型、チャート型、プロセス型、サイクル型、ピラミッド型、ドーナツ型)は図表を作るときには常に意識できるようにしておきたい。
また終盤では実際に著者がインフォグラフィックを制作する過程が描かれており、どのような考え方を経てすぐれたインフォグラフィックが作られるのかがよくわかるだろう。本書では良いインフォグラフィックの条件として次の5つを挙げている。

1.意味のある視覚要素を用いること
2.簡潔で、親しみやすく、わかりやすいこと
3.インパクトを与え、目を惹くこと
4.内容に価値があり、資料として保存しておきたいこと
5.見た人に考えるきっかけを与えること

こちらもぜひ覚えておきたい。さらに、グラフィックツールを使わずにインフォグラフィックを制作できるサイトなども紹介している。1つの制作手法として覚えておきたい。

参考サイト
Piktochart
easel.ly

【楽天ブックス】「たのしいインフォグラフィック入門」

「An Incomplete Revenge」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある田舎町の不動産の購入を考えているJames Comptonはその周辺で起きている不審火を懸念して、Maisieにその物件の調査を依頼する。そこは毎年都会から多くの人がHopの栽培に訪れ、ジプシー達も住む、地元民とそれ以外の人との不和を抱えた町だった。
Maisie Dobbsシリーズの第5弾である。ロンドンに拠点をすえて活動する女性探偵Maisieを描いており、毎回物語のなかで戦争の悲惨さを訴える点が本シリーズの特徴である。今回は田舎町を舞台としており、この町も多くの若者を戦争で失った悲しい町である。この町で、毎年同じ時期に発生する不審火をMaisieが調査することによって、少しずつ町の抱える秘密が明らかになっていくのである。
興味深いのは、Maisieが町のはずれに住んでいるジプシーたちと関わりを持つ点である。やがてMaisieの祖母も同じジプシーの出であることが明らかになる。ジプシー達から「救世主」とされたMaisie。1人のジプシーの奏でる美しい音色に触れて、Maisie自身も新たな方向に感覚を育んでいくのである。
また、植物人間となってしまったかつての恋人で死期が迫っていることを知り、ずっと避けていたその母親との再会を決意する事になる。5作目となる本作品だが、いまだに物語が力は健在である。本書が第1弾以外、日本語化されていないのが本当に残念である。

「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン

「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
小さなチームで大きな成果を上げる方法や利点について解説する。
インターネットが普及し、便利なインターネットツールが広まった今、それを利用すればもっと効率よく働けるはずなのに、多くの企業は同じ場所に集まって朝から晩まで仕事をすることを続けている。会社にいる時間が長いことが、会社に貢献している、とみなされる。そんな考え方に違和感を感じている人にとっては本書はぴったりだろう。
いくつか今の職場の人に聞かせたい内容もあったので印象的な言葉をあげると、

仕事依存症はバカげている
無用な人は雇わない
履歴書はばかばかしい
従業員はガキではない

などである。
僕自身も先日面接に行った企業には履歴書を持っていってしまったので、意味のない習慣にとらわれてしまっているのかもしれない。また、人数が多いほど優良企業という考えに縛られて、むやみに人を増やし、人がいるからしなくてもいい仕事を増やす、という悪循環も非常に思い当たることが多い。人を増やすより減らす方が大変だから、ベストな人数を常に意識すべき、と本書は語る。
いつかそんな会社を作ってみたい、と思わせてくれる。
【楽天ブックス】「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」

「ダライ・ラマ こころの育て方」ハワード・C・カトラー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
精神科医であるカトラー博士が、ダライラマと対談を繰り返すなかで「人間の幸せ」について語り合う。
「あなたは幸福ですか?」という質問に迷う事なく「ええ、間違いなく」と答えるダライ・ラマに、カトラー博士は人間が幸福を求めて生きていくなかで遭遇するさまざまな障害について質問をぶつけていき、それぞれの質問に真剣にわかりやすくこたえようと努めるダライ・ラマの言葉から、読者自身も幸福になるための多くを学ぶ事ができるだろう。

例えば、誰かに対して怒りを感じた時、その人は100パーセント否定的な性質の人物だと考えがちです。それは、誰かに強くひかれた時、その人を100パーセント肯定的な性質をもつ人物だと考えたがるのと同じです。しかし、こういう認識のしかたは現実に即したものではないのです。
敵は忍耐を実践するために必要な条件です。敵の行動がなければ、忍耐や寛容が育まれる可能性もないことになります。

また、本書のなかでダライ・ラマとカトラー博士の話し合いの様子を知るなかでダライ・ラマ自身の人間性も見えてくる。その場にいるだけで人を引き寄せ、言葉をかわした人間に涙させるようなダライ・ラマという人間やその成長の過程にも興味を持った。
あまり読みやすい本ではなかったが、本書を読んだ後、きっと読者は少し幸福に近づくことだろう。
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「究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる」ジョフ・コルヴァン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
タイガーウッズもモーツァルトのように、世の中に「天才」として語られる人たちは決して生まれながらにして天才だった訳ではなく、それに見合う努力をしてきた。それではそんな「天才」を作りあげる方法、つまり「究極の鍛錬」はどのようにして成し遂げられるのだろうか。
生まれつきの才能というのが過大評価されるなかで、本書では「天才」と呼ばれるまでに一つの分野でたぐいまれなる能力を伸ばす方法についていくつかの例を交えながら説明する。その方法「究極の鍛錬」に必要な要素として以下の要素を挙げている。

(1)しばしば教師の手を借り、実績向上のため特別に考案されている。
(2)何度も繰り返すことができる。
(3)結果に関し継続的にフィードバックを受けることができる。
(4)精神的にはとてもつらい。
(5)あまりおもしろくもない。

基本的には「天才」は努力によって作られるという内容なので、「自分には才能がない」と諦めていた人にとっても希望を持てる内容と言えるだろう。また、身体能力に依存するスポーツや音楽の分野ではかなり若い時期に始める必要があるとはいえ、ビジネスなどの分野では年齢に関わらず一生能力を伸ばすことができるという点も僕らの将来を明るくしてくれる。
しかし、本書は興味深いことにこんな警告も与えている。「究極の鍛錬」によって「天才」と言われるほどの技術を身につけるためには、人間関係などの人生における多くのものを犠牲にし、しばしば周囲の怒りを買う事も多いのだという。そこまでしてそれほどの能力を身につける事が果たして幸せな人生と呼べるのだろうか。
また、忘れてはならないのが、本書は決して「生まれつきの才能」の存在を完全否定しているわけではないのだということ。例えば体格のように「究極の鍛錬」においてもどうしようもない要素が技術を左右することは往々にしてあるのだという。「究極の鍛錬」によってある分野における能力を伸ばすために多くの時間を費やそうとしても、その分野で「天才」になるために必要な「生まれつきの才能」が欠けているかもしれないという可能性は考慮する必要があり、もしかしたら、成し遂げる事のできないことのための「究極の鍛錬」によって人生を無駄に費やす事になるかもしれないのだ。そのリスクを冒してでも自分をひたすら信じて「究極の鍛錬」をすることができるのだろうか。
自分自身の仕事の時間や趣味の時間の過ごし方を改めて考えさせてくれる1冊。僕は常に「究極の鍛錬」ができる環境に身を置いているだろうか。
【楽天ブックス】「究極の鍛錬 天才はこうしてつくられる」

「日本人のここがカッコイイ!」加藤恭子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本に滞在する36人の外国人に日本が日本について語る。
日本が賞賛されるようになったのはいつからだろう。本書では日本の文化や人や教育について日本に長く済む外国人が語る。日本の個性として僕らが簡単に思いつくものもあれば、考えもしなかったものまで外国人目線ゆえの驚きを与えてくれる。世界の常識を知るのにも、日本の文化を知るのにも役立つことだろう。
本書を通じて多くの外国人が語っているのが東日本大震災の後の日本人の様子である。混乱のなか暴動や略奪を起こす事もなく列を作って秩序を持って行動するところが外国の人にとっては驚きなのだという。また、日本人のおもてなしの心や物事に対するこだわりを賞賛する人も多い。
一方で、働き過ぎや、家族で過ごす時間の少なさ、妻が財布のひもを握っている点についての違和感についても語っており、生き方や家族との触れ合いかたを考え直すきっかけになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「日本人のここがカッコイイ!」

「「やればできる!」の研究」キャロル・S・ドゥエック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
すべての人間の能力は持っている信念に大きく依存する。本書はそんな前提に立って能力を伸ばすための心の持ち方を語る。
子供たちを教室に集めてまずは易しい問題を解かせる。続いて難しい問題を解かせようとすると子供によってその反応は異なるのだと言う。すぐには解けない難しい問題を楽しむ子供もいれば、難しいとわかった瞬間に取り組む事をやめる子供もいる。本書では前者の子供が持っているような考えを「しなやかマインドセット」と呼び、「人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念」とする一方で、後者の子供たちの持つ信念を「こちこちマインドセット」と呼び、「自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらない」と信じているのだと言う。基本的には本書はその2つのタイプの信念の利点と欠点を実例を交えながら説明していく。
もちろん本書は「しなやかマインドセット」こそ成長するために必要な信念であるという立場をとっているが、本書が興味深いのは、どのような成長環境が「こちこちマインドセット」や「しなやかマインドセット」の信念を人の中に育むかという部分を示している点である。自分自身の生き方を向上させるだけでなく、部下や娘や息子たちの人生にも、本書の内容を知っているという事でいい影響を与えられるようになることだことだろう。
僕自身はどちらかといえば「しなやかマインドセット」の側にいると思っているが、本書では同じ人間の中にも分野によって、「しなやかマインドセット」と「こちこちマインドセット」が共存している事が多いという話は非常に面白く、夫婦関係も双方「しなやかマインドセット」を持っていてこそ長続きするという部分はぜひしっかり覚えておきたいと思った。
普段からプラス思考で、「しなやかマインドセット」の人にとってもいい刺激になる一冊。今自分自身をチャレンジしなければならない環境に置けているだろうか、本書を読めばきっと自分の人生を見直すことだろう。

今日は、私にとって、周囲の人たちにとって、どんな学習と成長のチャンスがあるだろうか。

【楽天ブックス】「「やればできる!」の研究」

「ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」クリス・アンダーソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットの普及によって、ニッチ商品の集積が、メガヒットに匹敵する利益を上げる時代がやってきた。本書はそんな「ロングテール」について語る。
ロングテールという言葉を説明するときに必ずといっていいほど一緒に語られるのはオンラインショップamazonだろう。amazonは実際の店舗を持たないからこそ、限られたスペースに何の本を置くべきか、という一般の書店が常に考えなければならない問題に悩まされることがない。その結果amazonでしか販売されないニッチな商品は、それぞれは小さな売り上げでしかないが、全体ではヒット商品に匹敵するほどの利益になるのだ。
これは単にオンラインショップによって販売スペースを考える必要がなくなったからできることではなく、購入者側にもニッチな商品についての情報を得られる手段があってこそ実現できる。過去そのような情報は専門誌や知人からの紹介で得るしかなかったが、専門誌もある程度の専門性までしか扱わないし、ニッチな共通趣味を持つ知人を見つけるのも難しかった。しかし、この点でも、インターネットがSNSやブログなどを通じてその手段を提供してくれるのだ。
この「ロングテール」の減少はもちろん本の販売だけでなく様々な分野で起きているという。働き方や、時間の使い方、服装や住む場所など。ここ数年のCDの販売量やテレビの視聴率を過去と比較すればわかるように、インターネットが実現した多様化によって、「ヒットを狙う」という考え方がすでに機能しない世の中になっているのだ。
僕らは多様化を受け入れる方向に生き方を改めるべきなのだろう。世の中の多くの人や企業がロングテールに適応できていないことを毎日感じている僕の考えをより明確にしてくれる内容だった。
【楽天ブックス】「ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」

「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ポンペイウスと敵対したユリウス・カエサルがルビコン川を越える紀元前49年から、カエサルの暗殺の後の紀元前30年までを描く。
「ブルータス、お前もか」というセリフでカエサルがブルータスによって殺されるということを一般的な知識として持っている人は多いだろう。しかしカエサルやブルータスがどのような人物で、どのような経緯でそこに至ったかを知る人は少ないのではないだろうか。
本書を読み終わった時の率直な感想は、「カエサルは偉大な人間だった」ということである。先の時代を見る能力と、人を操る能力を見事に備えていて、それ故に戦いにも政治の能力にも長けていたのである。同時期の他の権力者と比較して抜きん出ているだけでなく、現代においてもこれほど能力のある人にはそうそう出会えるとは思えない。
本書で扱っているのはすべて紀元前の出来事である。僕らはなぜか、「紀元前」と聞くと大昔の印象を持つが、本書で描かれているローマの実情を見ると、すでに社会がある程度出来上がっていたことがわかる。「社会」という言葉は非常に曖昧だが、政治や裁判やコミュニティとするとわかりやすいかもしれない。ちなみに、現在の前の暦であるユリウス暦もカエサルの命によって作られ、その時代ですでに11分程度の誤差しかなく、ユリウス歴は1582年にグレゴリウス暦にとって変わられるまで1500年以上も使われたというから驚きである。
また、もう一人の誰もが聞いた事のある有名な人物としてクレオパトラも登場する。美人としては有名だが、彼女がどのような存在だったのか本書を読むまでまったく知らなかった。
このカエサルの時代はローマのもっとも面白い部分なのではないだろうか。カエサル自身が書いたという「ガリア戦記」もぜひ読んだみたい。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(上)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(中)」「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後(下)」