「The Danish Way of Parenting」Jessica Joelle Alexander, Iben Dissing Sandahl

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界一幸福な国と言われるデンマークの子育てを、アメリカの子育てと比較しながら説明する。

デンマークの子育ての鍵となる行動をPARENTの頭文字を使って6つ紹介している。

  • Play
  • Authenticity
  • Reframing
  • Empathy
  • No Ultimatum
  • Togetherness and Hygge

アメリカでは個人主義を尊重するあまり、近年自分勝手な人間が増えているようだが、本書では共感量を高めるために「私」よりも「私たち」の利益を考えるように教えることを勧めている。

When You Substitute "We" for "I", Even "Illness" Becomes "Wellness"

本書ではデンマークの子育てと比較しながら、アメリカの親の振る舞いや子育てを嘆いている点が多いが、現在の日本の子育てはそこまで卑下するほどデンマークの子育ての考え方と変わらない印象を受けた。しかし、日本はアメリカに20年ほど遅れて追随しているので、今のまま個人を尊重しすぎることで思いやりの欠けた自己中心的な人をたくさん生み出さないかと懸念してしまった。

世の中の母親たちについたえたいと思ったのは次の言葉である。

You lose control, and yet we expect out children not to.
自分は子供にブチ切れるくせに、子供には自制心を求めている。

本書のなかで意識的に取り入れたいと思ったのはReframingとTogetherness and Hyggeである。Reframingとは、物事の悪い面ばかりにとらわれるのではなく、良い面を見つめるための考え方である。ポジティブな考え方は両親の言動からも伝わるだろうが、その考え方を言葉にして伝えることでより確実に、次の世代に受け継がれるのだと感じた。

日本語版はこちら

翻訳を与える日本語タイトルだが、本書は子供を誉めることを否定していない。過剰に誉めることがよくないと書いているだけである。

英語慣用句
look high and low 注意欠陥障害
attention deficit disorder 注意欠陥障害
at one's wit's end 途方に暮れて、困り果てて
corporal punishment 体罰
pit people one another 人々を競わせる
health boundary 健全な境界線

「色鉛筆で写真のような絵が描けるようになる本」慧人

★★★★☆ 4/5
色鉛筆を得意とするイラストレーターの著者がその制作過程を語る。

僕自身色鉛筆で絵を描くようになって2年ほど経ち、いろいろ限界を感じ始めたのでなにかヒントを期待し、本書を手に取った。

著者の興味深いところはその描く対象の選択である。著者はコーラやグラスやニンテンドーDSなど身の回りにあるものを主に描くのである。しかも立体絵、つまりただ描くだけではなく斜めから見た時に実際にそこに存在するかのようにリアルに描くことを得意としている。

本書ではそんな立体絵を描く筆者の制作過程を詳細に説明している。軽く塗り重ねる事で塗りムラを少なくできるということと、異なる硬さの色鉛筆を塗り重ねる事でより滑らかでリアルな表現が可能になることがなどがわかった。また、立体絵の制作過程の説明もあり、今までどちらかというと人物画や風景画を描くことが多かったがぜひ周囲の物を立体絵で描いてみたいと思った。単純な物を描く方が濃淡の微妙な色の濃淡を身につけるためには効果的なことだろう。

全体的にまだまだ僕自身伸びしろがあることを思い知ったし、良い刺激を与えてもらった。

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「フランス人はボンジュールと言いません」Bebechan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランス人でYouTubeでフランス語を教える著者がフランス語とフランス文化について語る。

細々とフランス語を勉強している中で、単純に文法やフランス語会話だけでなく、文化など言語学習とは少し異なる視点でフランス語に触れたいと思い本書に辿り着いた。

本書はフランス人の著者が初心者向けにフランス語やフランスの文化を説明する。すでにフランス語を数年学んでいる僕にとってもいくつか新しい発見があった。
フランス語の数字の読み方は非常に特殊だが、改めて本書でおさらいさせてもらった。

マドモアゼルというフランス語では誰でも一度は聞いたことがある単語が、今は使われなくなったというのを知らなかった。また日本語の「だよね」や英語の「don’t you?」のような使い方ができるフランス語、heinの使い方も本書を読んで初めて知った。このような単語は普通に文法書を読んでいるだけでは気づけないのでありがたい。

PACSという結婚に代わる制度や、恋人との付き合い方の考え方など日本とは異なる文化も紹介されており楽しめた。もう少し細かく調べて知りたいと思った。

著者のYouTubeでもぜひ見てみたいと思った。改めてフランス語学習のモチベーションを高めてもらった。

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「スモールワールズ」一穂ミキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第43回吉川英治文学新人賞受賞作品。6つの物語を収録した短編集である。

短編集というと作者にとって実験的な物語も多く、なかなか全体として印象に残りにくいのだが、本作品は3編ほど印象に残る作品があり、短編集としてはかなり打率が高い。特に2作品目の「魔王の帰還」、そして最後の2作品「愛を適量」「式日」である。

いずれの物語も、家族に問題を抱えている人々の揺れ動く心情を描いている。何が正しくて何が正しくないのか、そんな答えのない出来事に度々遭遇する。そんな人生のやりきれなさを存分に味わわせてくれる。

一穂ミキという著者に触れるのは今回が初めてだが、長編などにも触れたいと思った。

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「空の模様の描き方」クメキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Clip Studio Paintでよる空をメインとした5つの絵の描き方を解説している。

晴天の空、夕焼けの空、星空、雨天の空など5つの絵をラフ作成から順を追って詳細に解説しているので、非常にわかりやすく、また絵を描くためのアイデアとしても刺激になった。

本書は基本的にはClip Studio Paint(以下クリスタ)による操作を解説しているが、Procreate、Photoshopさらにいえば実際のアナログ絵画にも十分応用可能である。

改めて空と雲のレイヤーを分けることは効率よく絵画作成を進める上で重要だと思ったし、筆者が多用しているメッシュ変形による空の効果はぜひ取り入れてみたいと思った。

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「塞王の楯」今村翔吾

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第166回直木賞受賞作品。戦国時代の戦乱の中、親を失い、石垣造りを生業とする飛田屋の頭源斎(げんさい)に拾われた匡介(きょうすけ)が飛田屋の頭として成長していく様子を描く。

何よりもまず、石垣造りという職業に魅了される。戦乱の時代だからこそニーズがあったその職業と、石を積むという作業の深さを味わえる。石垣造り職人は、積方、山方、荷方の3つに分けられ、それぞれ、石を積む人、切り出す人、運ぶ人としてそれぞれの分野で技術を磨き、共同して石垣造りをするのである。

豊臣家によって世の平穏が訪れ、戦国時代の終わりを感じさせる中、源斎(げんさい)がその立場を匡介(きょうすけ)に譲りわたしていく過程を描く。飛田屋の家に生まれながらも匡介(きょうすけ)に立場を譲った玲次(れいじ)の存在も面白い。匡介(きょうすけ)と玲次(れいじ)は互いの技術を尊重しながら共に飛田屋に尽くすのである。

物語は大津城の城主、京極家からの依頼によって大津城と京極家と飛田屋は関わっていくこととなる。また、鉄砲作りの彦九郎(ひこくろう)の存在も物語を面白くしている。石垣造りに飛田屋が頑丈な石垣を作ることで世の中の平和に貢献できると信じる一方、鉄砲造りに賭ける彦九郎(ひこくろう)は、強い武器をつくってこそ、人は戦いをやめると信じている点が面白い。

物語はやがて大津城を舞台に東西の決戦の時を迎える。そしてそこは、石垣、鉄砲と手段は異なれど自分達の仕事を通じて平和な世界を作ろうとする匡介(きょうすけ)と彦九郎(ひこくろう)の一騎討ちの場ともなるのである。

非常に楽しめた。現代は失われた石垣造りや鉄砲造りという職業を、当時の人々の葛藤を巧みに絡めて素敵な物語に仕上げている。

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「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」エイミー・C・エドモントン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織における心理的安全性の重要性とその実現の方法について語る。

心理的安全性という言葉を聞くようになってしばらく経つ。VUCA(Volatility, Undertainty, Ambiauity)と呼ばれる現代においてすべての立場の人間が思っていることを発言する環境をどのように作り上げるのか、が組織の生き残りの鍵となる。本書は多くの例を交えながら心理的安全性を説明する。

まず心理的安全性という言葉の定義がわかりにくいと感じているのは僕だけではないと思うが、その言葉の解釈に対するよくある誤解として次の5つに触れている

  • 心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない
  • 心理的安全性は、性格の問題ではない
  • 心理的安全性は、信頼の別名ではない
  • 心理的安全性は、目標達成基準を下げることではない

つまり、心理的安全性の実現を努力しない理由はないということである。

本書を手に取る人間にとって重要なのは、どうやって心理的安全性を実現するかであろう。本書ではその手順を土台をつくる、参加を求める、生産的に対応するの3つに分けて次のように説明している。

土台をつくる
・仕事をフレーミングする
・目的を際立たせる
参加を求める
・状況的謙虚さ
・発言を引き出す問い
・システムと仕組み
生産的に対応する
・感謝を表す
・失敗を恥ずかしいものではないとする
・明確な違反について処罰する

要所要所に差し込まれる物語も面白い。スペースシャトルのコロンビア号やチャレンジャー号の事故はそこら中で触れられているのでそれほど新鮮ではないが、映画にもなったハドソン川着陸のパイロットたちの物語や全員が協力してメルトダウンを防いだ福島第二号原子力発電所の話は本書で初めて知った。

心理的安全性はリーダーだけが実現に努めることではない。組織のすべての人間が日々努めることなのだと改めて感じだ。また、心理的安全性は会社などの組織においてのみ重要なのではなく、同じ考えは家庭にも適用できると感じた。さっそく今日から意識して行動したい。

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「The Wish」Nicholas Sparks

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2019年写真家として名声を得たMaggie Dawesは癌で余命が限られたものとなった。そんなおり、アルバイトのMarkに請われて若い頃の恋愛の話を聞かせることとした。それはMaggieがノースカロライナの島Ocracokeで過ごした十代のときの話である。

物語は2019年の、写真家としてニューヨークで共同ギャラリーを経営するMaggieの様子と、Markに生涯最高の恋愛として十代の頃の恋愛を語って聞かせる1996年の物語が交互に展開する。

2019年の物語では、余命わずかとなったMaggieが自らの終活を始めると共に、その頃アルバイトとしてギャラリーで働き始めたMarkの優秀さ優しさによって、少しずつ家族のことや人生のことを打ち明け始める様子が描かれる。

一方で、1996年の物語は、高校生にも関わらず一夜の過ちから妊娠してしまったMaggieが、周囲に知られずに子供を出産し養子に出すために、叔母のLindaの住むノースカロライナの離島Ocracokeで過ごす様子を描く。Ocracokeにいる間に家庭教師としてMaggieの元に訪れたBryceと、Maggieは妊娠中であるという事実にもかかわらず距離を近づけていくのである。

物語として大きな驚きはないが、それでも最後は涙してしまった。死期を知ったMaggieがそれを家族に知らせるためにクリスマスを避けようとしたり、それまで不仲だった人々にも感謝を伝える点が印象的である。こんな生き方をしてみたいと思った。

著者Nicholas Sparksの本を読むのは本書が初めてであるが、映画化された作品のなかには「メッセージ・イン・ア・ボトル」や「君に読む物語」のように名作といえる恋愛物語が多い。ありがちな若い男女の恋愛物語の印象を持っていたが、死を目の前にしたMaggieの生き方に感銘を受けた。

英語慣用句
hit it off 意気投合する
Ferris wheel 観覧車
mobility assistance dog 移動補助犬
seeing-eye dog 盲導犬
have a second helping おかわりをする
with flying colors 見事に
measure up to 応える

「平場の月」朝倉かすみ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
50代になった青砥(あおと)は高校時代の同級生の須藤(すとう)と出会う。二人は少しずつ距離を縮めていく。

序盤にすでに須藤(すとう)が亡くなったことを知った青砥(あおと)が、須藤(すとう)との出会いを回想する形で物語は進んでいく。どちらも一度の結婚と離婚をしたあとに出会ったから、学生のようにキラキラしていない感じがありそうな雰囲気を醸し出している。恋愛に無鉄砲になれないために、なかなか前進しない関係や周囲にいる人の噂を話す人たちの存在を描いているところが面白い。

50代の男女の物語というのが新鮮である。若い頃はは50代といえば、すでに人生の晩年のような印象を持っていたが、自分自身アラフィスに近づいた今、50代でも生き方次第でいくらでも青春できることを知っている。そういう意味ではもっと50代の青春を描いた物語が増えてきても良いだろう。

似た物語が一切思い付かないぐらい、新鮮さを感じさせてくれる物語である。

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「六人の嘘つきな大学生」浅倉秋成

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人気企業の内定のための最終選考で6人の大学生が残った。採用担当者はその6人に、グループディスカッションで内定者を1名決めるように伝える。

序盤は6人のなかの一人波多野翔吾(はたのしょうご)目線で物語が進む。指定された日時に6人は、その企業の会議室に集まって内定者を決めるディスカッションを始めるのである。隣室で採用担当者がカメラで観察しているので、自分勝手なふるまいをするわけにもいかないが、内定を勝ち取るために自己主張もしていかなければならない。

そんなディスカッションは、会議室の入り口脇にあった封筒が見つかったことで大きく動き出す。その封筒には参加者6人のそれぞれの過去の犯罪や愚かな行為が告発されていたのである。

後半はその数年後の物語。6人のうちの1人が、当時のグループディスカッションの真実を探ろうと当時の関係者に話を聞いて回るる。採用担当者の意見が面白い。

『落とした学生の中に、もっと優秀なやつがいたんじゃないか?』保証しますけどね、一万パーセント、いましたよ。絶対にいました。

グーグルの人事について扱った「ワーク・ルールズ!」でもの採用の難しさについて書いてあったが、今の形の企業側も死亡者側にも膨大な時間を要する就職・採用活動はいつ今の形をだっするんだろう、と考えさせられた。

アニメ「デスノート」やドラマ「ライアーゲーム」のような一時期流行った心理戦を描いた物語と予想していたが、そんな空気を感じさせたのは序盤だけで、中盤以降からは、現在の就職活動の問題人間の二面性を取り入れた、深みを感じさせる内容だった。

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「Tomorrow, and Tomorrow, and Tomorrow」Gabrielle Zevin

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Samは大学のキャンパスで、小学生の頃一緒にゲームを楽しんだSadieと再会する。やがて二人はゲーム作りに夢中になっていく。

序盤はSadieとSamの再会と出会いのシーンから始まる。出会いは小学生の時、母を交通事故で失って言葉を失ったSamは、入院していた病院でSadieとゲームを通じで出会ったことによりに救われるのである。再会は二人の大学生時代である。Samは恋人と別れて落ち込んでいるSadieをゲーム作りに誘うことですこしずつゲーム作りに情熱を注ぐこととなる。

もう一人の主要な登場人物は、SamのルームメイトであるMarksである。Marksはさまざまな人から好かれる人物で、主張が強く他人を遠ざけがちなSamやSadieとは異なる存在である。当初はゲーム開発用に部屋を貸してくれるだけの存在だったMarkは、少しずつゲーム作りのプロデューサーとしての役割を担っていく。

その3人がゲーム作りや、会社を経ちあげるなかで、時には分裂したり衝突しながら物作りに打ち込んでいく。

SamとMarksはそれぞれ韓国人と日本人の血をひいているし、Sadieも白人ではないとうい点も面白い。アメリカという国で少数派として暮らすがゆえに見えてくる悩みにもところどころで触れられている。そして彼らが作るゲームも日本やアジアの文化を大きく反映する点も面白い

終盤、ある不幸からSadieは共同のゲーム作りから離れていく。それでも必死にSamはSadieにもう一度一緒にゲームを作ろうと声をかけ続ける。SadieがSamに語った言葉が印象的である。

There's no point in making something, if you don't think it could be great.
良いものができると思わないで、何かを作ることに何の意味もない。

物作りに関わる人間としては耳の痛いことがである。

僕自身はゲーマーといえるほどゲームにのめり込んではいないが、ゲームを愛する人の気持ちが伝わってくる。物語中に多くの名作ゲームの名前が唐書酢売るのでもう一度ゲームをやりたくなった。

英語慣用句
remission rate 寛解率
candy striper ボランティア看護助手
distinguish oneself 他者より抜きん出る
keep it close to the vest 手の内を見せない
at each other's throat お互いに攻撃し合う
swing for the fences 大きな目標を狙う
sun oneself 日に当たる
take it in stride 冷静に受け止める
take a gander at 見る、一瞥する

「リニューアル版 7つの習慣 ティーンズ」ショーン・コヴィー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7つの習慣を十代の若者向けの例をとともに説明する。

結局人生を幸せに生きるために必要なのはモノや人ではなくマインドセットである。その点では7つの習慣も「4つの約束」も「嫌われる勇気」も「前向き質問」も、どれも本質的な部分では変わらない。すでに理解しているつもりでいるが、このような考え方はただ一度知識として知っておくだけでなく、繰り返し染み込ませてこそ悪い方向に傾かないための予防策となるのだ。そのような理由から、今回、本書を読むに至った。

7つの習慣自体はすでに何度も触れてきて繰り返しになるが、改めて書くとつぎの7つである。

  • 主体的になる
  • 終わりを考えてから始める
  • 一番大切なことを優先する
  • Win-Winを考える
  • まずは相手を理解してから、次に理解される
  • シナジーを創り出す
  • 自分を磨く

翻訳のせいか、若干分かりにくい表現もあるが、本書では不幸せになる7つの悪習慣としてそれぞれの真逆の項目を描いているのでそれを読むと理解の助けになるだろう。

  • 人のせいにする
  • 行き当たりばったりで始める
  • 大切なことは後まわし
  • 人生は勝ち負けだ
  • まずは自分が話し、それから聞くふりをする
  • 頼れるのは自分だけ
  • 自分をすり減らす

そのほかにも原則中心の話が印象的だった。本書では原則として、愛、勤勉、尊敬、感謝、節度、公平、誠実、忠誠、責任を挙げている。一方で若者たちが陥りがちな間違ったものを中心にする例として次の5つの例を挙げている。

  • 友だち中心
  • 物中心
  • ボーイフレンド/ガールフレンド中心
  • 学校中心
  • 両親中心

どのタイプの人間も世の中にたくさんいるし、いずれの人もあまり幸せに見えないので今後もそちらに傾かないように注意したい。

改めて、子供がもう少し大きくなった時、また親として自分自身も繰り返し読み返せるように常に手元に置いておきたいと思った。

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「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」鈴木忠平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2004年から2011年まで中日ドラゴンズの監督を務め4度のリーグ優勝と1度53年ぶりの日本一に導いた落合博満を、当時のスポーツ新聞の担当記者が語る。

全12章のそれぞれの章で、著者である担当記者から見た落合と、落合が監督になったことによって変化を余儀なくされた選手目線で描かれている。

2000年以降プロ野球を見る機会がほとんどなかったため、落合といえば中日の主砲という印象が強い。しかし、本書を読むと非常に観察眼の優れた人間で、その能力によって常識や周囲の意見にブレることなく、その結果打者としても監督としても成功したのだとわかる。

それぞれの章の選手目線の物語はどれも面白い。落合の意見から新たな気づきを得てさらに優れた選手になる者もいれば、生き残りをかけて投げ方や打ち方をを大きく変える者もいる。落合自身は打者なので打者に与える影響が大きいようだ。打者目線から描いた福留孝介、和田一浩の章が面白かった。

この世界に好きとか嫌いを持ち込んだら、損するだけだよ

福留孝介のこの言葉には真のプロフェッショナルを感じる。

それはひとつのスイングを構成する一から十までの手順、すべてを繋げていくような作業だった。落合の言葉を耳にしていると、あの不思議なスイング動作の一つ一つに根拠があることがわかった。

和田一浩の気づきからは、どんな技術も終わりがなく、その道を突き詰めることの面白さを思い出させてくれる。

そんほかにも、日本シリーズでパーフェクト直前でピッチャーを変えたエピソードや、ヤクルトからの移籍後に怪我によって本来の力を発揮できなくなった川崎憲次郎を開幕投手にした際のやりとりなど、スポーツ好きなら間違いなく楽しめるであろう内容が溢れている。

報道が与える印象からは、どちらかというと冷徹な監督という印象があるが、本書を読むと、思っていた以上に感情に左右されて決断してきたことも伝わってくる。そして、改めて、先入観にとらわれず観察することの重要性を再認識させられた。

中日ファンでなくても、野球ファンでなくても、スポーツが好きでなくても、間違いなく気づきを得られるであろう一冊。

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「ユートピア」湊かなえ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第29回(2016年)山本周五郎賞受賞作品。海沿いの田舎町鼻崎町で暮らす3人の女性すみれ、菜々子(ななこ)、光稀(みつき)をそれぞれの立場から描いていく。

それぞれの地元への関わり方の異なる3人の女性の視点が面白い。菜々子(ななこ)は鼻崎町で生まれ育ち、交通事故で車椅子生活となった娘久美香(くみか)を抱えている。陶芸家のすみれは元恋人の誘いで鼻崎町に移り住み芸術家仲間とともに、鼻崎町の景色や人を利用して自分の陶芸家としてのブランドを育てようとする。光稀(みつき)は夫の仕事の都合で鼻崎町に住むことになり、いつか再び都会で生活することを望んでいる。

やがて、光稀(みつき)の娘彩也子が車椅子生活の久美香(くみか)について描いた感想文を、すみれが自分の芸術家としての宣伝のために使ったことで、3人の日常に変化をもたらすのである。

どんな人間関係の中でも生まれそうな、気遣い、嫉妬、見栄、野心など様々な感情が自然な形で描かれる点が面白い。自分だったらどうするだろう、という本人としてのふるまいだけでなく、自分が親だったら子供にどう伝えるだろう、というような子供に見せる親としてのふるまいについてもいろいろ考えさせられた。

著者湊かなえ作品は本書で「告白」以来2作品目で、「告白」は個人的には本屋大賞受賞作品の割に不自然さが際立っていたことを考えると、しばらく読まない間にずいぶん作家としての技術が上がった印象を受けた。

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「El silencio de la ciudad blanca」Eva García Sáenz de Urturi

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
20年前に起こった連続殺人事件と同じ手口の事件が発生する。Vitoria署の新しい副署長の指揮のもAyalaは相棒のEstíbalizともに事件解決に動き出す。

前回読んだ「El libro negro de las horas」が物語だけでなく舞台や、取り入れている題材も含めて面白かったので、同じ著者の代表作として本作品を読むに至った。

物語は20歳の男女を殺害しVitoriaの歴史的な建造物に放置するという手口の事件から始まる。20年前にも5歳の男女、10歳の男女、15歳の男女を連続して殺害する事件があり、その犯人としてすでにTasioという男が投獄されており仮釈放間際となっている。冤罪の可能性を考慮しながらKrakenとEstíbalizは捜査をすすめるが、その際にも25歳、30歳、35歳の男女が殺害が続くのである。

Krakenは犯人として投獄されているのはTasioに会いにいく、一方で当時事件操作に関わりTasioを犯人としたIgnasioにも話を聞きにいく。TasioとIgnasioは双子の兄弟であるため、二人の人間関係が事件に関わっていると考えられるのである。

事件の解決の一方で、新しく副署長として赴任してきたAlbaとAyalaの関係が面白い。Albaは最近子供を流産し、Ayalaは妻を交通事故で失っているという辛い過去を打ち明けたことをきっかけに二人は少しずつ距離を縮めていくのである。そんなつらい過去を抱えながらも現在の職業に向き合う二人の会話が印象的である。

¿Sabes lo que es la resiliencia?
La capacidad de algunas personas en saber sacar lo bueno de las malas experiencias.
回復力ってなんだと思う?
悪い体験から良いものを抜き出す能力のことさ

やがて、事件の被害者は30歳の男女、35歳の男女と続き、Krakenの身近な人も不安を募らせていく。

ÁlavaやVitoriaといったバスク地方の都市を中心に、歴史的建造物、お祭りが多数登場するため、スペインの文化を知りたい人におすすめできるシリーズである。引き続きシリーズを読み続けたいと思った。

スペイン語慣用句
dar la cara しっかり向き合う
de igual a igual 対等に
en ristre 準備ができている、構えている
no pegar ojos 一睡もできない
a la par 同時に
a tientas 手探りで

「ナイルパーチの女子会」柚木麻子


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第28回山本周五郎賞受賞作品。商社に勤めていて高給取りだが独身で友達のいないアラサーの栄利子(えりこ)が、同い年の主婦ブロガー翔子(しょうこ)と出会うことから始まる。最初は自分にないものを持っている相手に惹かれたものの、その人間関係はあっさり破綻に向かっていく。

そして二人の友情関係だけでなく、栄利子(えりこ)は会社での地位が、翔子は夫との関係が、その出来事によって雪崩のように崩れていくのである。そんななか、傷つきながら大事なことに気づいていく、翔子(しょうこ)と栄利子(えりこ)の変化が面白い。

正直、「女子会」というタイトルからは、もう少し優しい、ほんわかした女性の世界を描くのかと想像していたのだが、実際には友情とか家族といった人間関係をかなり厳しい視点で描いていく。そして、その厳しい描き方が強烈なのがまた新鮮である。

何故、そうやって武装する癖に、人を求めるんだ。ならば、一人で居なさい。人を信じられるようになるまで、ずっと一人で居ることだよ。少しも恥ずかしいことではないんだよ。
哀しいかな。人間は超能力者ではない。何も発そうとしない相手から、何かを読み取ることなど出来ないのだ。

考えてみれば、どんな人間関係も、適度な距離感と、適度な関心という、つまり近づきすぎてもダメ出し、離れすぎても維持できない、という微妙な技術を要求される。そういう意味では、それがうまくできない人が世の中にたくさんいるのは当たり前のこと。にもかかわらず友達が多いことを良い人間、優れた人間であることの証明のような風潮がまかり通っているから、人間関係に悩む人は多いことだろう。

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「女帝 小池百合子」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
都知事である小池百合子の子供時代から現在に至るまでを描く。

先日終わった都知事選の過程で都政についてもっと知りたくなって本書にたどり着いた。

本書では小池百合子の家庭環境から、学生時代、そしてエジプト滞在期間などを含めて現在に至るまでを詳細に描いている。その成長過程の中から、小池の容姿に対するコンプレックスと複雑な家庭環境の中で育ったが故に、少しでも人より上に立ちたいという強い意志が感じられる。

中盤以降は政治家になって主張や所属政党を臨機応変に変更しながら政治の世界を駆け登っていく様子が描かれている。正直ここ20年ほどの政治の細かい動きを把握していなかったが、そのなかで小池百合子がどのような役割をしたのかが見えてきた。

面白いのは、エジプト滞在時代のルームメイトの証言を多数引用している点だろう。そのルームメイトは当時、小池の乏しいアラビア語でカイロ大学に入学、卒業しようとしている浅はかな考えに驚きながらも年下の小池を応援していたという。しかし今、ま小池政治家になってしまったことによって、日本に対する危機感や、自分が当時厳しく指摘しなかった自分の責任として罪悪感まで抱えているのだという。

あまり期待していなかったが面白かった。もちろん本書の情報をすべて鵜呑みにするわけにはいかないが、実名を出している部分や調べればすぐにわかる部分も多いので、かなりの部分が真実なのだろう。改めてこんな人間に都知事をやらせておいて、さらに一時期は総理大臣になりそうな可能性まであったということで、日本は大丈夫なのかと不安になったし、こんな人間に利用されて切り捨てられ続けている日本の著名な政治家たちにも改めて失望した。

一方で、野心以外に信念も能力もないにもかかわらず、それをしっかり自分で理解してひたすら機会と立場を利用し、嘘で塗り固めながらも日本を代表する政治家まで上り詰めた小池百合子という女性に対して敬意さえ抱いてしまった。

その上で改めて考えてしまう。権力争いやパフォーマンスばかり気にかけている人ではなく、本当に能力がある人が政治を担うにはどんなシステムにすべきなのだろう。

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「ミニマムで学ぶスペイン語のことわざ」星野弥生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
100個のスペイン語のことわざを意味や使い方を交えて紹介する。

スペイン語をさらに向上させたいと思い本書にたどり着いた。

単にことわざを100個紹介するだけでなく、同じ意味の日本語のことわざや英語のことわざも紹介している。また実際にそのことわざを使用する場面をスペイン語の会話で紹介しているので、新しい表現や単語の使い方を知ることができる。

どんな言語の文化圏においてもことわざになる内容というのは似ていることと、スペイン語においても韻を踏むことを重視していることを知った。人々の叡智として広く広めるためには、その文化圏でよく知られた動物や物をことわざに用いるだけでなく、口にしやすい流れるようなリズム感も常に重要なのだろう。

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「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発」西村直人、永瀬美穂、吉羽龍太郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スクラムを導入することになった組織でスクラムマスターに任命されたボクを中心に、物語形式でスクラムの導入を説明する。

ここ10年ほど僕自身3つの組織でスクラムの導入を経験してきたが、デザインタスクをどう扱うか、見積もりに時間がかかりすぎる、などなかなか実際スクラムを体験してみると教科書通りにはいかないことは多々あり、そんなよく陥りがちな状況を解決するヒントがあるのではないかと期待して本書にたどり着いた。

書いてあることの多くはスクラムを経験のある人にとっては知っていることばかりだろう。それでも異なる説明に触れると違ったものが見えてくるもの。そんな中今まで比較的疎かにしていたと感じたのがインセプションデッキである。インセプションデッキとは10の質問という形でまとめられていり、その中でも本書では

  • 我々はなぜここにいるのか?
  • エレベーターピッチ
  • やらないことリスト

の3つに触れている。何事もそうだが、細かいところが気になると全体が見えなくなるもの。定期的にミッション等、一歩離れてプロジェクト全体を確認する機会が必要である。

そのほかに、これまた身に覚えのある長くなりがちなデイリースクラムについても繰り返し触れている。

デイリースクラムは、問題解決の場ではないことに注意してください。
デイリースクラムは、全員がその目的を理解していないとうまくいかない。たとえば、デイリースクラムが誰かへの進捗報告になっている場合だ。

全体的に実践形式で説明してくれている点がありがたい。明日からぜひこの新しい視点を持って関わっているプロジェクトを見てみたいと思った。

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「28歳で政治家になる方法」田村亮

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
選挙戦術研究科と名乗る著者が政治家になる方法を語る。

最近残りの人生を考えて、もう少し人生を楽しむために何をしようかと考えたときに、政治家も面白そうと思っている。そんなわけでより現実的に政治家ってどんなものだろうと知りたくなって、本書に辿り着いた。

序盤は、政治家のメリットや面白さ、そして、誰もが政治に関わっているということを説いている。限られた人しかなれないという印象の政治家という職業も、実際には全ての人に開けているという意味では他の職業よりもずっと公平で、また、全ての人が少なからず政治に関わっているという意味では身近な職業だと気づくだろう。

序盤では現実の数値とともに政治家の実態を見せてくれるので、政治家という職業も結構面白そうだと感じるだろう。

中盤以降はより具体的なプランを語っている。本書では繰り返し市議会議員を狙うことを勧めている。そして市議会議員のなかでも当選しやすい選挙区の探し方を具体的に説明している。つまり出馬する地域を選べば、当選するのは一般的に思われているほど難しくないということである。もちろん、本書では当選をより確実にするために心がけることやるべきことを書いている。

興味深いのは落選する人としてあげている次の4つのタイプである。

  • 選挙と政治を区別していない人
  • すぐにブレる人
  • 高齢者層をあなどっている人
  • 頭のいい人

一つ目の「選挙と政治を区別していない人」というのは、いろんな分野で似たようなことが言えるが非常に面白い。つまり、選挙は当選するためのベストを尽くし、政治は当選してから考えろ、ということなのだろう。

後半からは実際に立候補した後にやるべき行動を、さらに具体的に説明している。実際にやるべきことがより具体的にイメージできることだろう。

本書を読んで、政治家になることは難しくないし、面白そうだと思った。とはいえすぐに次のステップとして市議会議員に立候補は飛躍しすぎだが、選挙の手伝いなど、もう少し深く関わって近くで政治というものを感じてみたいと思った。

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