「21 Lessons」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
21のテーマについて今後の展望や考え方、問題について語る。

正直テーマによって僕自身関心が強いものと弱いものがあり、それは著者についても同じで、考え方が深いと感じられるテーマもあるが、表面をなぞっただけで新鮮さも内容なことしか書いてないこともあり、テーマによって面白いとつまらないが大きく分かれるだろう。

個人的に面白かったのは「自由」と「移民」の章である。

自由の章ではアルゴリズムの発展によって世界がどのように変わっていくかを語っている。特に医療の発展が想像を超えていたので新鮮だった。確かに医療のAIが発展するなら、簡単なスキャンで現在の不調の原因や将来に不調が起こりそうな箇所を指摘して改善に努めることができ、しかもそれが世界中の医療ネットワークに共有されたなら、世界中どこにいても格安でコンビニやスタバに行くような感覚で自分の健康チェックと食べるものやすべき運動習慣を確認できるようになることだろう。

移民については、日本は現在あまり移民を受け入れておらず、「日本ももっと移民を受け入れるべきだ」と言うのは簡単だが、政策以前に「移民を受け入れる」という行為の中にもいくつか考えるべきポイントがあることに気づかされた。

著者は次の議論ポイントを挙げている。

  • 移民の受け入れは義務なのか恩恵なのか。
  • 移民した人はどの程度までその国の文化に同化すべきなのか。
  • 移民した人がその国の正規の国民とみなされるまでどれくらいの時間の経過が必要なのか。

答えのない問題を突きつけられた気がする。今度ぜひ移民の話になったらこんな疑問をぶつけてみたいと思った。

著者はユダヤ人とのことだが、ユダヤ教の選民思想やイスラエルでの体験についても語っている点が面白い。ひょっとしたら他の作品でもっと多く語っているのかもしれない。

新たな視点をもたらしてくれることは間違いないのだが、すべての章が安定して面白いわけではなく、ついていきにくいと感じる箇所もいくつかあり、全体的に疲れる読書だった。この著者の他の作品も有名なので読んでみたいとは思うが、きっと同じように疲れる本で、エネルギーがないときに読むのはちょっとつらいかもしれない。時間をおいてまた挑戦したいと思った。

【楽天ブックス】「21 Lessons」

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵杉村三郎(すぎむらさぶろう)が行う3つの調査とそこで出会う人々を描く。

杉村三郎(すぎむらさぶろう)シリーズの第4弾である。本書では杉村三郎(すぎむらさぶろう)が探偵として扱った3つの物語を扱っている。結婚した娘に会うことを許されない母親、キャンセルされた結婚式、子供を理由にお金をむしりとろうとする母親など、そのどれもが世の中を騒がすほど大きな事件ではなく、どんな街にも起こりそうな出来事を扱っている点が面白い。

そして、物語全体の軽い展開の中に、人間の持つ本質的な醜さや強さを描いている点が宮部みゆきらしいと言えるだろう。

残念なのは他の著者の作品ほど深みを感じないため、続編を読む頃には前作の内容を忘れているということだ。それでも、深く考えすぎないで楽しめるところがこのシリーズのいいところかもしれない。

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「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」ミニマリストしぶ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミニマリストの著者がその生き方や考え方を語る。

僕自身も、捨てられるものはさっさと捨てたいし、広いよりも最低限の広さがあればむしろ狭い部屋に住みたい、と考えるミニマリスト思考の持ち主である。今回、何かしら人生をさらに豊かにするヒントに出会えればと思い本書にたどり着いた。

すでにミニマリストという言葉が一般的に世の中で通じるようになって数年が経ち、また断捨離も流行っていることから、その考え方はそれほど目新しいものはないだろう。すでに少しでも実践したり、実践してないまでも興味を持って調べたことのある人にとっては、本書で書いてあることも、特に驚きを与えるようなことではないだろう。例えば次のような内容である。

  • 冷蔵庫は持たない
  • テレビは持たない
  • 狭い家に引っ越す
  • 毎日同じ服を着る
  • 財布は持たない
  • 「限定物」ではなく「定番物」を買う
  • 「レンタル」「シェア」を使いこなす
  • 「出口戦略」を考えて増やす
  • 時間を生み出すツールに投資する

僕にとっても、新しい考え方に出会うというよりも、もともと持っていた考えを改めて再確認する機会となった。唯一「こんな考え方もあるのか」と思った点を上げるなら次の2つだろう。

「一日一食」で生活する

たしかに、食事に関して、僕らは三食食べるべきという考え方に固執しすぎているのかもしれない。1人のときなど二食生活や一食生活を取り入れてみたいと思った。

物が人生を豊かにする、という思考から離れられない人にとっては何かしら本書から学ぶ部分があるだろう。

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「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞作品。過去から逃れてキナコは大分の田舎町で1人で生きていくことを決める。

キナコは1人で生きていくと決意しながらも、口のきけない男の子と出会い、その恵まれない家庭環境に過去の自分を重ね合わせ、その子を救おうと行動を始める。 そして、そんな現在の様子と並行して、キナコの過去が明らかになっていく。うまくいかない家族との関係、そしてアンさんと呼ぶ人との出会いよってそんな家族のしがらみから救われたことなどがわかる。

最近、日本で評価される本の多くが、家族や恋人など狭い人間関係と小さな地域のなかで起きる出来事を描いているような印象を持っており、本作品も似たような印象を受けた。もちろん、人の幸せは、身近な人との関係による部分が大きいし、人生で起きる大きな出来事よりも、それぞれの人間が物事をどう受け止めるかが重要で、そういう物語が評価されるのもわからなくもないが、最近はちょっと似通いすぎていて新鮮さをあまり感じなかった。

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「All That Remains」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4組の男女のカップルが失踪し白骨死体で発見された。そして五組目のカップルが失踪する。

FBIの検死官Kay Scarpettaの物語の第3弾である。白骨死体として発見されたこれまでの被害者はいずれも靴を履いていなかったこと、トランプのカードが現場に残されていたことから同一犯とされており、失踪した五組目のカップルの女性は、権力者の娘であったことから、大きく報じられてFBIやCIAの上層部が絡んだ政治的な局面を強くしていくのである。

そして、そんななか、ワシントンから報道記者でありかつてはKayの天敵でありながらも、妹の殺害を機に友人となったAbbyも事件を探りやってくる。Abbyの話によると、事件を調べ始めてから、Abbyの周囲でも少しずつ不穏な動きが感じられるという。CIAやFBIは何を隠しているのかも犯人追跡と並行して大きな謎となっていく。

今回は現場にトランプが残されていたことから、スペードのエースに関するベトナム戦争における意味などの興味深い話に触れることができた。

相変わらず物語が描かれたのがすでに20年以上前とは思えないほど色褪せない物語で、今読んでも十分にその緊迫感が感じられる。実際、検死官である人物がここまで現場に足を運ぶものなのだろうか、という疑問は感じなくもないが、その辺は物語の都合上多少脚色があるのかもしれない。アメリカという国の司法やCIA、FBIなどの権力の構造や、地域や州の管轄についても好奇心を刺激してくれる点もありがたく、存分に楽しませてもらった。

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

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「ブレインメンタル強化大全」樺沢紫苑

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

精神科医の著者が、睡眠、食事、運動の人生のおける重要性と、より良い睡眠、食事、運動の仕方を語る。

著者自身多くの本を読んでいるようで、それぞれについて様々な研究結果を引用している。どこかで聞いたような話や、別の本で読んだ話も多く、「〜のようだ」「〜の研究もあります」など、自分自身は読んだだけで実験したわけでもなく、ただ著者自身が気に入った情報を切り貼りしただけという印象が拭えない。

著者自身かなりの健康マニアだということがひしひしと伝わってくるが、人間何かを信じ始めると欲しい情報ばかりが見えてくるもの。そんな傾向を警戒した上で、話半分に本書を読むのがちょうどいいかもしれない。

参考文献が末尾にしっかり書かれているので、興味を持った分野はオリジナルの本を読むのがいいだろう。

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「習慣が10割」吉井雅之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
習慣の持つ力と、習慣の続け方を語る。

僕自身習慣化を得意としており、それによって自分のなりたい自分になれている気がするが、さらに精度を上げるヒントに出会えればと思い本書を手に取った。

序盤は習慣の重要性を語っており、世の中のすごい人たちは才能に恵まれたわけではなく、単に習慣を味方につけただけでそれは誰にでもできることだと語り、中盤以降は習慣をつくるための心がけについて語っている。

  • とにかく「ハードル」を下げる
  • ゲーム感覚でやる
  • 「仕組み」を作る

どれも習慣の得意な人はすでにやっていることだろうが、こうやって言葉として並べてみると、習慣化できない人の問題点が見えてくる。

また、面白いなと思ったのが本書で紹介している「クリアリング」という習慣で、自分の1日の行動を振り返る行為である。落ち込んだ日や、物事がうまくいってない時などは取り入れてみると面白いかもしれない。

メルマガやブログ、貯金など、若干考え方が古いなと感じる部分もあったが、その辺は著者がかなり年配な方のようなので仕方がないだろう。すでに習慣を実践できている人にとってはあまり学ぶ部分はないかもしれない。ただ、これから習慣をつくろうと本気で考えている人には、本書に大部分の習慣化に必要な考え方は書かれているので、きっと役に立つことだろう。

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「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」小出義雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高橋尚子の指導者として有名な著者がその練習法を語る。

最近膝の調子が良く、また定期的にジョギングができるようになったので、そのジョギングの時間の密度を向上したく思い、マラソン関係の本を漁る中で本書にたどりついた。

本書は大きくサブ4向けとサブ3向けの練習メニューや考え方が書かれている。なかでも特徴的なのがすべての練習において後半にペースを上げることを重視している点である。サブ4は足づくりだけで達成できて、「心肺の強化」は必要ないとしている。練習はジョギング 、ビルドアップ、タイムトライアル、長く走るの4つの練習を繰り返し、基本的な考えは次の内容になる。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち2日はジョギングで、2日は休み。
2.平日の練習時間はだいたい60分で。うち1日はポイント練習日にする。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

一方でサブ3を目標とした場合、インターバル走やペース走を含めた構成としてしており、次のような考え方で練習メニューを組むのを進めている。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち3日はジョギングで、1日は休み。
2.平日でも、場合によっては練習時間が2時間ぐらいかかる日がある。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

最近いろんなところで議論が起きるLSDについては、著者はLSDという言葉は使っているが、単に長く走ることを指しており、一般的に言われるLSDのようにゆっくり走ることは意図していないようである。

具体的な練習メニューのほかに、オリンピックメダリストの有森裕子や高橋尚子とのエピソード、それ以外にも小出道場の練習生のレース完走記を紹介している点が面白い

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「短くても伝わる文章のコツ」ひきたよしあき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
博報堂スピーチライターの著者がわかりやすい文章を書く秘訣を語る。

印象的だったのは文章のエッセンスを読み取る力を養う

1ページ1ライン法

というもので、そもそも文章の中にそれほど多く重要な要素はなく、1ページに1箇所ていどなのだというのである。また、わかりやすい文章を書くためのコツとして挙げているのが

「接続詞」をうまく使うコツは「“が”禁止」と「定型文」

というものである。著者は接続詞を文章の方向指示器としてその重要性を強調しており、「が」という曖昧な接続詞は極力避け、「でも」「だから」「それゆえ」などの接続詞を使用することで、前後の関係を明確になるのだという。

中盤からは敬語や習慣の話に焦点が移っていく。敬語の話はすでに文章のコツではないと思うが、興味深かったのはら抜き言葉の判断のしかたの考え方である。

命令形にしたときに「ろ」で終わる言葉は、「見られる」となります。つまり「ら抜き言葉」にしてはいけません。

前半はともかく、中盤以降は著者の習慣やこだわりなど、ただページを増やすだけを目的に語っているだけの印象を受けが、前半に出てきたいくつかの考え方は早速取り入れたいと思った。

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「The Girl Who Lives Twice」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Salanderは妹Camillaとの対立を激化させていく。一方でBlomkvistは自分の電話番号を持ったまま亡くなった、不可解のホームレスの死の謎に惹かれていく。

ミレニアムの第6弾である。最初の3作品の面白さゆえに著者が変わっても続編ということで読み続けている。

BlomkvistはSalanderの力を借りて、亡くなったホームレスは特別な遺伝子を持ったネパール生まれのシェルパであることを突き止める。彼はなぜスウェーデンの地に現れたのか。そして、彼が死の間際に口にしていた言葉の意味とはなんなのか。やがて、Blomkvistはやがて世間を騒がせたエベレストの事件にたどり着くのである。

一方でSalanderは妹Camillaの動向を常に観察し、Camillaもまた、Salanderを見つけるために躍起になり、まさに殺すか殺されるかという状況に陥っていく。

エベレスト登山の過酷さを扱った物語は、実際に起こった第遭難事故を暑かった映画「エベレスト」や「淳子のてっぺん」などでこれまでにそのいくつかに触れているため知識としては知っていたが、本作品はそこに改めてシェルパとしての立場からの視点をもたらしてくれた。

ただ、それ以外には特に新鮮さや際立った驚きはなく、特に、SalanderとCamillaの追跡劇は、ようやく向かい合った因縁の対決にしては、古いアクション映画のような展開の薄っぺらさや稚拙さを感じてしまった。

このシリーズは最初の著者Stieg Larssonからに引き継がれて3作品目になるが、全体的にも、展開が安っぽくなったという印象は否めない。むしろ人の作り出した世界観に習ってここまで3作品書いてきた著者David Lagercrantzを評価すべきなのだろう。Stieg Larssonの作り出した世界観を壊してはならない一方で、作家として生きる以上自分の個性を出していきたい、など、いろんな葛藤があったに違いないが、そろそろ潮時なのかもしれない。

「The Burial Hour」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカで発生した誘拐犯がイタリアで新たに活動を開始した。Rhyme、Amelia、Thomはイタリアに降り立ち、現地の警察とともに誘拐犯Composerを追い詰めていく。

Lioncoln Rhymeシリーズの13弾である。さすがに13弾目となると、犯人の手口もこれ以上新しくしようと思っても難しいだろうし、登場人物を増やすにも限界がありどうしても展開がマンネリ化してくる。しかし、今回は舞台を初めてアメリカ以外の国、イタリアに移して展開するという点で新しさを演出している。そして、それによってイタリアの警察関係者が多数登場するのも面白く、特に、トリュフなどの密輸入を管理する仕事をしながらも刑事になることに憧れていたErcoleがRhymeの捜査にへの知識からComposer追跡チームへと加わり、不器用ながらも成長していく様子や、イタリアの警察組織の仕組みを描いているあたりが新鮮である。

今回の犯人であるComposerは音に非常にこだわりがある点が新しい。拉致した人間の鼓動や息遣いに病的なこだわりを見せるのである。Composerはどのような基準で拉致する人間を選んでいるのか、なぜイタリアを選んだのか、などが今回の大きな謎となる。

ただ、追跡自体はいつものように現場に残されていたわずかな痕跡を辿りながら薦められていく。この過程においてはシリーズを読み続けている人にとっては特に目新しさはないだろう。ただし人間関係においては一捻りもふたひねりもある展開になっていく。

最後はついにAmeliaとRhymeの待ちに待った幸せな時間が訪れる。2人の結婚式である。おそらくシリーズの中でも結婚式を描くのは本作品だけだろう。そういう意味においてはシリーズを語る上で読まなければならない一冊かもしれない。

「ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質」ナシーム・ニコラス・タレブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
黒い白鳥と呼んでいる不確実な出来事について、それとどのように向き合っていけばいいのかを語る。

本書で黒い白鳥と呼んでいる事象は次のようなことを3つの特徴を備えている事象のことである。

1.以上であること。つまり過去に照らせば、そんなことが起きるかも知れないとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること。
2.とても大きな衝撃があること。
3.以上であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて、筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。

そして、そのような黒い白鳥が起きる可能性を、「拡張不可能な月並みの国」と「拡張可能な果ての国」と、世の中を大きく2つに分けて説明している。

果ての国は格差が大きい。データ一つが集計量や全体に、圧倒的に大きな影響を及ぼす。

月並みの国風のランダム性なら、一つの出来事にすぎないのに全体の流れを左右するような黒い白鳥が起こって驚かされることはありえない。

今の世の中では、果ての国に属する事象のほうがはるかに多く、だからこそ黒い白鳥が現れるのだという。そして、残念ながら著者は終始、予測というのは限界があり、黒い白鳥は予測できないと強調している。

本書の大部分は予測できないことを説明する話が繰り返されていく。そんななかでも面白かったのが、物言わぬ証拠の問題についての話である。「ビギナーズ・ラック」や「水泳選手の肉体」の話は、世の中が物言わぬ証拠を軽視するせいで、世の中を正しく見ることのできないわかりやすい逸話である。

インターネットの普及やアウトソーシングなど、グローバリゼーションによって果ての国の領域は今後さらに広がっていくだろう。そんな現代において本書が語る不果実性にどのように備えるかは間違いなく大きな鍵となる。そんなことを改めて感ん替えさせてくれた。

ただ、言っていることの重要性はわかるのだが、話が難しくなりすぎていて、もう少し単純にして読みやすく説明できないいものかと感じてしまった。世の中の本書に対する評価は非常に高いのだが、必ずしも人にはお勧めできないと感じた。

【楽天ブックス】「ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質(上)」「ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質(下)」

「星の子」今村夏子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
林ちひろは幼い頃体が弱く、そのため両親はちひろのためにある水の力を信じるようになる。そんな家族の中で生きる中学生のちひろを描く。

両親が信じる宗教とともに生きるちひろを描く。普通の中学生として、普通に友達を作り、普通に恋愛もしながらも、自分の家族が少し普通と違うこともわかってるし、水の力を信じる両親のことを恥ずかしく思う気持ちも持っている。それでも家を出るという大きな決断を下すことができずに、流されながら中学校生活を送っている。

大きな展開が起こりそうで起きないあたりが少し不思議な少し不思議な物語である。特に新鮮さは感じなかったが、この作品が本屋大賞にノミネートされているということは、もっと異なる解釈があるのかもしれない。

【楽天ブックス】「星の子」

「Found」Erin Kinsley

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イギリスの町で少年Evanがラグビーの練習の帰り道、バス停で友人と別れたのを最後に行方がわからなくなる。

事件発生当初の家族や、友人たちの様子が生々しい、また、あわせて事件の発生から時間が経つとともに、世間や周囲の関心はより新しい事件や、自分たちの周囲の出来事に移っていき、少しずつ忘れられていく点も実際にありそうな話である。

物語は事件解決の謎解きの物語というよりも、息子の失踪によって苦しむEvanの両親ClaireとMattや祖父のJackとなど、家族の戸惑いや葛藤の様子をより鮮明に描いている点が新鮮である。また、警察のHagenやNaylorも限られて人員と絶え間なく発生する事件のために、Evanの発見に全力を傾けられないで苛立つ様子を描いている点も面白い。

また、物語の舞台がイギリスなので、イギリスの文化やイギリス英語特有の表現が多々出現する点が面白い。捜査官Naylorの様子は私生活や仕事場の恋愛模様も含めて描かれているので、ひょっとしたら著者の他の作品にも登場するのかもしれない。

しかし、残念ながら物語としてとりたてて強調するような面白さがあったわけではない。今後もこの著者の本を改めて手にとるかは怪しいところである。

「新装版 話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
男と女の違いを面白おかしく説明する。

タイトルのインパクトで名前だけは聞いたことあったが読んでいなかった本書。先日「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」という同じ著者夫婦による素晴らしい本に触れたことにより、この本が生まれた時の話なども書かれていたため、せっかくなんで読んでみようと思い手に取った。

本書は新装版となっているが、本書のオリジナルが出版されたのは20年近く前になる。本書の当時の人気もあって、おそらく本書で書かれているようなことはその後多くのその後のメディアが似たようなことを語り、そのいくつかばすでに一般的な考え方になってしまったのだろう。残念ながら今読むと特に目新しさは感じなかった。

もっとも印象的だったのは、世の中、性別、人種を問わず人々を平等に扱おうという風潮だったため、このような男女の違いについた本を出すのは当時新しかったということ。今は平等よりも個性の尊重の方に重みが置かれていると感じるので、20年の間にたしかに時代は変わったなと感じた。

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「オムニバス」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトに始まる姫川玲子(ひめかわれいこ)のシリーズで7つの短編から構成される。

本書の面白いところは姫川玲子(ひめかわれいこ)やその姫川の近くにいるその同僚の視線で様々な事件とそれに対応するの様子が描かれることである。

姫川(ひめかわ)は直感的に事件に向き合い、時に姫川自身も理由を説明できない直感によって、捜査をする。それが結果として事件解決に結びつくことも多いため、警察のなかでも姫川(ひめかわ)を高く評価したり、憧れを抱いたりする人がいる一方、論理的な捜査をこのむ刑事のなかにはその存在を疎ましく思うものいるのである。

7つの物語はどれも犯人が早い段階で拘束されるが動機がわからないというもの。事件が解決される流れを見る中で、様々な境遇で生きている人々の生き方が見えてくるだろう。

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「フーガはユーガ」伊坂幸太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
不思議な力を身につけた双子の兄弟の優我(ゆうが)は弟の風我(ふうが)との物語を語る。

正直伊坂幸太郎の作品は、その人気のわりにあまり面白いと思える作品がなく、自分には合わないと感じていたので敬遠していた。にもかかわらず今回は本屋大賞ノミネート作品ということとその魅力的なタイトルに惹かれて読むに至った。

物語は優我(ゆうが)が、とあるフリーのディレクターにその不思議な力とこれまでの出来事を語る形で進んでいく。なんと優我(ゆうが)と双子の弟風我(ふうが)は毎年誕生日になると2時間おきにお互いが入れ替わるというのである。その力を持った故に起こった学生時代のエピソードを語る中で、また同時に近所で続いていた幼い子を狙った殺人事件にも触れていく。

そしてやがて優我(ゆうが)と(ふうが)は少しずつその殺人事件に関わっていくこととなる。

作家として良いことなのかはわからないが、伊坂幸太郎の他の作品に比べてずいぶん読みやすく感じた。ただ、物語として特別何か新しさや学ぶ点があったかというとそんなことはない。空いた時間に適度に楽しむには悪くないかもしれない。

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「韓国人のボクが「反日洗脳」から解放された理由」ウォーク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本語で韓国に関することを語るYouTuberの著者が日本と韓国について語る。

僕自身日本人の父と韓国人の母の家庭で育ったために、普通の日本人より多く日韓の問題に触れてきた。そんななか著者のYouTubeチャネルで語られている、どちらかというと日本寄りの韓国人(現在は帰化申請が通って日本人。)の意見に惹かれて本書を手に取った。

若い人はそうでなくなったというが、一般的には韓国人の日本嫌いはまだ多く存在し、義務教育の中でもそのような考えを植え付ける教育が今も行われているというのが僕ら日本人が持っている印象だろう。本書によると、最近では年配の人の中にもそのような考えや教育に不満を持っている人が多いのだという。しかし、法律や世間の目があってなかなかそれを公に言えないのだという。実際著者自身も韓国人からこれまでなんども脅迫を受けたことを告白している。

面白かったのは本当に著者が日本を好きで、日本のことを普通の日本人の何倍も調べて理解しているという点である。そんななか韓国について語る点からは、日本から見ると韓国も、ドラマや音楽の影響で、同じように発展した国に見えるが、まだまだ日本に比べると遅れている点が多いということである。

著者は過去の韓国と日本の間の出来事に触れながら、日本の政府はもっと韓国に対する自分たちの正当性を世界に強く伝えるべきである。と繰り返す。確かに、日本の慎ましい外交が日本を応援したいという著者にとってはもどかしいのかもしれないし、実際に外交という側面から見ると控えめでいることは正しくないのかもしれない。

日韓の関係に対して今まで知らなかったことまで教えてくれて、日本と韓国という国に対して新たな視点をもたらしてくれた。

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「The President is Missing」James Patterson, Bill Clinton

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカ合衆国大統領Duncanがイスラム組織Sons of Jihadの脅威や様々な問題に刺さされながらも国民や国を守るために奮闘する様子を描く。

元大統領ビル・クリントンが共著者に名前を連ねていることから興味を持って本書を手に取った。

物語はあるDark Agesというウィルスが政府のコンピューターに現れたことから始まる。イスラム過激派組織Sons of Jihadの仕業なのか、それともロシアなどアメリカの転覆をもくろむ国によって行われたのか。そんな脅威を取り除こうとするなかで、多くの命が関わる中でそんな決断を繰り返す大統領の様子が見て取れる。側近達は意見は言いつつも、すべての決断は大統領によって行われ、テロリストの命も国民の命もその決断1つで救われたり失われたりするのである。自らの職務を全うしようとする大統領はもちろん、Carolyn Brockなどの側近達の仕事ぶりがなんともかっこいい。

やがて、2人の男女が大統領に接してきたことから物語は国を滅ぼしかねないサイバーテロへと発展していくのである。

全体的にはコンピューターウィルスを題材としたパニック物語という印象で、展開自体に特に目新しさは感じないが、大統領をとても忠実に(と思われる)描いているところが本書の魅力だろう。

アメリカの大統領や政府は日本のそれほどくだらないことに時間を費やさない印象を持っていたが、どこの国にも国や国民の利益よりも自分の立場を優先する人はいるもので、本書でもそんな様子が垣間見えた。