「The Push」Ashley Audrain

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
BlytheはFoxと結婚して娘が生まれるが、やがて娘と打ち解けられない自分に気づいていく。

Blytheの母としての苦悩を描く。興味深いのは、並行して時代を遡ってBlytheの母Ceciliaとその母Ettaの、親子の様子や、Blytheの子供時代、つまりBlytheとCeciliaの親子の様子も明らかになっていく点だろう。Ceciliaを愛することができないEttaはやがて別の人生を選ぶし、母から愛されなかったCeciliaもBlytheに対して良い母でいることができないのである。

そして現代に戻り、Violetとの仲がうまくいかないと感じるBlytheだったが、2人目のSamが生まれたことで人生が好転していくのである。

正直、なかなか受け取り方が難しい内容である。親から愛されなかった子供は、親になった時に子供をうまく愛することができない、とはたびたび聞く話ではあるが、必ずそう言う悪循環が続くわけでもないだろう。また、Blytheは娘のVioletとは難しい時期もあったが、息子のSamに対しては最初から愛情を持っており、性別によって感じる行動が異なることもあるのかもしれないと感じた。

むしろ母を経験した女性の意見を聞いてみたいと思った。男性にはなかなか面白さがわからないかもしれない。

「税金を払うやつはバカ!」大村大次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国税局で10年間働いてきた著者が税金について語る。

昨今、自身の収入が少しずつではあるが増えてきたせいか、税金を意識する機会が多くなった。そんななか少しでも節税ができればと本書にたどり着いた。

面白いのは、国税局で働いてきた経歴を持ちながらも、税金をできるかぎり払わないことを推奨している点である。本書では個人事業主から会社員まで、支払う税金を少なくするための様々な方法を説明している。また、あわせて、日本の税金の制度のよくない点も説明している。

残念ながら会社員の僕がすぐに適用で起用できそうな方法は、せいぜい医療費控除に適用できる出費を知っただけで大きなものはなかった。むしろ節税の方法よりも、税金の制度について新たな視点をもたらしてくれた。例えば、消費税が公平な制度ではない、というのはよく耳にするが、消費税が格差社会を作るとまでは思っておらず、本書を読むまでしっかり理解していなかった。また、同様に消費税が非正規雇用を増やすことに貢献しているという視点も新鮮だった。

節税対策としてすぐに行動できる内容は少なかったが、税制度に対して新たな視点をもたらしてくれた。

【楽天ブックス】「税金を払うやつはバカ!」

「三体」劉慈欣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
各地で科学者たちの自殺が相次いでいる知った、ナノテク素材の研究者である汪森(ワン・ミャオ)だが、ある日自身も目の前にカウントダウンの数字が見えるようになる。

汪森(ワン・ミャオ)のカウントダウンから逃れようとする現代の様子に先んじて、文化大革命で科学者の父を亡くした葉文潔(イエ・ウェンジエ)が描かれ、時代を超えた大きな陰謀が陰謀が少しずつ形になっていくことを感じさせる。そんななか、汪森(ワン・ミャオ)は「三体」という仮想空間を舞台にしたゲームに魅せられていく。そこでは太陽が3つ存在し、その太陽の動きによって文明は何度も滅亡を繰り返すのである。

やがて、謎のカウントダウンから逃れようと奮闘する汪森(ワン・ミャオ)は、文潔(イエ・ウェンジエ)の存在を知り、そ少しずつ中国の田舎にある秘密の施設で過ごした文潔(ウェンジエ)の日々が明らかになっていく。

印象としては、本作品はまだ序章といった感じで、大きな展開はほとんどない。評価があまりにも高いためにちょっと拍子抜けした感じである。もちろん続編を読まなければ「三体」という作品自体の評価はできないが、長ければ良いと言うものでもなく、どの程度描きどの程度を読者に委ねるかと言うバランスが重要で、もう少しコンパクトに書けるのではないかと感じてしまった。

もし「三体」こそ最高のSFと思っているなら、個人的には鈴木光司の「ループ」をオススメしたい。「リング」「らせん」があまりにもホラーとして一人歩きしてしまったが、その完結編の「ループ」こそ日本の最高のSFである。

【楽天ブックス】「三体」

「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホモ・サピエンス、つまり人類の進化の歴史を詳細に説明する。

人類の進化の歴史を詳細に説明するなかで、ホモ・サピエンスが現代のように地球の支配者となった主な要因について説明している。

例えば初期の大きな変化は農業革命である。農業革命によって、狩猟から農耕へと移ったことにより、人々は定住化し、住居を持ち、その住居や土地に愛着を持つようになったという。著者は本当にそれが良かったかどうかについては疑問を投げかけているが、種としての進歩の過程で、その中の一個体、または特定の集団が、狩猟と農耕の生活の違いを比較して良い方を選択するということができないと結論づけている点が面白い。

もっとも興味深かったのは、ホモ・サピエンスの想像上の秩序によって一緒に行動することができるという特性であり、その特性によって、ホモ・サピエンスは他の種を圧倒することができたという主張である。例えば、チンパンジーやクジラなどの哺乳類も、どこに天敵がいるなどの簡単な会話はかわすことができるが、一般的なコミュニケーションで行動を共にできるのはせいぜい150個体程度の集団であり、それ以上の個体数、1万、10万という個体が共通の目的を持って行動するためには、宗教や神話など想像上の秩序を共通認識として持つ必要があるというのである。

キリスト教やアメリカの独立宣言など例をあげればきりがないほどさまざまな形でホモ・サピエンスはそれをこれまでにやってきて、今この時点でも様々な想像上の秩序に依存した関係のなかで生きていることは間違いのない事実である。

悲しいことに、多くの絶滅が、ホモ・サピエンスがその大陸に到達した時期と重なっているという。これはホモ・サピエンスの一個体として真実として受け入れるしか無いだろう。

学生時代に歴史の授業で学んだより時から、20年以上経って、現在はるかに多くのホモ・サピエンスの歴史が判明されていることに驚かされた。このような本でも読まない限りなかなか目を向ける機会のない分野なので、新たに知ったことがたくさんあった。ただ、前回読んだ「21Lesson」でも感じたことだが、若干冗長な語りが多く全体的に読みにくい。読もうと思った時にはある程度の覚悟が必要である。まだ未読の「ホモデウス」も名前はよく聞く作品なのでぜひ読みたいとは思っているが、しばらく間を置きたいと思った。

【楽天ブックス】「サピエンス全史(上)」「サピエンス全史(下)」

「ひと」小野寺史宣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学生の柏木聖輔(かしわぎせいすけ)は、親が急死したために、大学を辞めて、偶然立ち寄った惣菜屋で働き始める。そんな聖輔(せいすけ)を描く。

聖輔(せいすけ)は高校生のときに交通事故で父親を失い、大学生になって母を突然死で失ったことで人生を大きく考え直さなければならなくなる。正直僕自身、両親に早くに先立たれる人の苦労を知らずにいた。しかし、実際にはそれほど珍しくない話で今回はそんな人生に触れることができた。

やがて聖輔(せいすけ)は親切な惣菜屋の店主や店員の助けを借りて、独り立ちしていく。物語を通じて感じるのは、なによりも聖輔(せいすけ)自身の真面目さが、多くの人の信用を集めているということである。

この惣菜屋の店主などのように、困っている人に機会を差し出せる人間になりたいと思った。また、本書の聖輔(せいすけ)のような、若い人間目線としては、約束を守ること、誠実でいることで多くの人の優しさを引き寄せるのだと感じた。子供達にはそのことを伝えていきたいと思った。

物語を読み終わってもう一度タイトルを見ると、そこに深い意味が感じられる。

【楽天ブックス】「ひと」

「世界一やさしい問題解決の授業」渡辺健介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
経営コンサルティング会社マッキンゼーで活用している問題解決の手法を子供向けに語る。

本書では、小学生や中学生の日常生活で起こりそうな問題を例にとってその解決の手順を一つ一つ説明している。具体的には次の方法である。

  • 目標を設置する
  • 目標と現状のギャップを明確にする
  • 仮説を立てる
  • 情報を集める
  • アイデアを出す
  • 最適な打ち手を選択する
  • 実行する

一方で、よくある3つのタイプをよくない例として出している

  • どうせどうせ子ちゃん
  • 評論家くん
  • 気合いでゴーくん

ここまで子供向けの内容とは思っていなかったが、たしかに、これが自然とできる人とそうでない人がいて、できない人にはこうやって教えて、人生の早い段階で学ぶことができれば大きく人生を好転させることができるだろう。子供のために一冊あってもいいのかもしれない。

【楽天ブックス】「世界一やさしい問題解決の授業」

「マーケット感覚を身につけよう」ちきりん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーケット感覚の重要性を語る。

インターネットの発展によって距離や文化の垣根が少しずつ取り払われ、すべての物やサービスが自由に取引されるようになった。そんな時代だからこそ売れるものを見つけ、売れる値段で売る、というマーケット感覚が重要なのである。本書はそれをいくつかの章に分けて説明している。

本書では、そんなインターネットによる変化を、相対取引から市場取引と語り、物の販売だけでなく、就職活動や婚活も以前は相対取引だったが今では市場取引になってきているとしている。

そんな時代に生き残るためには、価値をみつけることがなにより重要である。そのためには人が何に価値を感じるのかに敏感になる必要がある。本を選ぶサービス、骨董品の目利きサービス、服を選ぶサービス、不満を買い取るサービスなど、本書では、今までは価値としてみなされなかったものが、最近になって価値として認識され始めた例、つまり非伝統的価値について例をあげている。

そして、見つけた価値を売るために、つぎの5つの能力の重要性を説いている。

  • 1 プライシング能力を身につける
  • 2 インセンティブシステムを理解する
  • 3 市場に評価される方法を学ぶ
  • 4 失敗と成功の関係を理解する
  • 5 市場性の高い環境に身を置く

コスト意識ではなく、マーケット意識で物事を考えることの重要性は、言われてみればもっともだが、僕も含めコスト意識が先行してしまう人は多いはず。この辺は少しずつマーケット意識で考える癖をつけていきたいと思った。

【楽天ブックス】「マーケット感覚を身につけよう」

「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界各国からの乗客が集まるオリエント急行で殺人が起こり、偶然乗り合わせた名探偵ポアロは真実の解明を依頼される。

アガサ・クリスティーの作品を読むのは大学生の時以来20年ぶりである。本作品はそもそも物語の展開自体がすでに知ってないと話が通じない人というぐらいまで多くの場所で引用されているのを眼にする。これは読んでおかなければ、と思いようやく今回読むに至った。

1933年に書かれた作品ということで、やはり稚拙さや心情描写の浅さを感じなくはない。小さな驚きではあるが、1930年代にすでにアメリカやイスタンブールという国を超えた行き来がここまで一般的だったことに驚かされた。海外旅行はここ20年ぐらいで一般的になってきたものという認識なのだ、それはあくまでも飛行機による旅の話で、電車や船による移動、特に大陸間ではもっとずっと前から一般的だったのだろう。

感想としては、確かに予想外といった印象で、当時としては新鮮だっただろうと感じた。他にも「アクロイド殺し」も名作とよく聞くのでどこかのタイミングで読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「オリエント急行の殺人」

「ユダヤ人大富豪の教え」本田健

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1年間アメリカに滞在した著者はそこでユダヤ人の大富豪であるゲラー氏と出会う。その後の著者の人生に大きく影響を与えたゲラー氏の教えを描く。

さまざまな場所で本書の名前を耳にしながらも読んだことがなかったので今回手に取った。

ゲラー氏は著者に、世の中で生きる人を自由人と不自由人という2つの種類に分けて説明している。自由人になるためには、目の前にあることを好きになるべきで、好きであれば、どれだけ時間を費やしても楽しく、その楽しさは人に伝染すると語っている。

またお金の原則としてつぎの5つを語っている。

  • 1.たくさん稼ぐ
  • 2.賢く使う
  • 3.がっちり守る
  • 4.投資する
  • 5.分かち合う

好きなことに時間を費やすことの力や、投資の話に特に驚きはなかった。本書を読んで改めて思ったこととしては、僕自身人脈への意識が薄いということである。本書の「多くの人に気持ちよく助けてもらう」「人脈を使いこなす」に書かれていることは少しでも実践していきたいと思った。

偉い人には、あたかも彼がえらくないかのように接しなさい。そして、えらくない人には、あたかもその人が偉い人のように接しなさい。

もし自分でできたとしても、できるだけ多くの人を巻き込んで助けてもらうことだ。そしてその人たちに感謝して喜んでもらうことが君の成功のスピードを速めるのだよ。

人脈の大切さやお金の投資の重要性はそこら中で語られているので、本書で書かれていることは特に新鮮というわけではない。例えば「夢を叶える像」なども同じようなことを言っている。しかし、このような生きる上での大事なことは、繰り返し触れてなんども思い出し自分の人生の軌道修正をするのに必要であり、そういう意味では本書もまた有益なのだと感じた。

【楽天ブックス】「ユダヤ人大富豪の教え」

「21 Lessons」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
21のテーマについて今後の展望や考え方、問題について語る。

正直テーマによって僕自身関心が強いものと弱いものがあり、それは著者についても同じで、考え方が深いと感じられるテーマもあるが、表面をなぞっただけで新鮮さも内容なことしか書いてないこともあり、テーマによって面白いとつまらないが大きく分かれるだろう。

個人的に面白かったのは「自由」と「移民」の章である。

自由の章ではアルゴリズムの発展によって世界がどのように変わっていくかを語っている。特に医療の発展が想像を超えていたので新鮮だった。確かに医療のAIが発展するなら、簡単なスキャンで現在の不調の原因や将来に不調が起こりそうな箇所を指摘して改善に努めることができ、しかもそれが世界中の医療ネットワークに共有されたなら、世界中どこにいても格安でコンビニやスタバに行くような感覚で自分の健康チェックと食べるものやすべき運動習慣を確認できるようになることだろう。

移民については、日本は現在あまり移民を受け入れておらず、「日本ももっと移民を受け入れるべきだ」と言うのは簡単だが、政策以前に「移民を受け入れる」という行為の中にもいくつか考えるべきポイントがあることに気づかされた。

著者は次の議論ポイントを挙げている。

  • 移民の受け入れは義務なのか恩恵なのか。
  • 移民した人はどの程度までその国の文化に同化すべきなのか。
  • 移民した人がその国の正規の国民とみなされるまでどれくらいの時間の経過が必要なの
  • か。

答えのない問題を突きつけられた気がする。今度ぜひ移民の話になったらこんな疑問をぶつけてみたいと思った。

著者はユダヤ人とのことだが、ユダヤ教の選民思想やイスラエルでの体験についても語っている点が面白い。ひょっとしたら他の作品でもっと多く語っているのかもしれない。

新たな視点をもたらしてくれることは間違いないのだが、すべての章が安定して面白いわけではなく、ついていきにくいと感じる箇所もいくつかあり、全体的に疲れる読書だった。この著者の他の作品も有名なので読んでみたいとは思うが、きっと同じように疲れる本で、エネルギーがないときに読むのはちょっとつらいかもしれない。時間をおいてまた挑戦したいと思った。

【楽天ブックス】「21 Lessons」

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵杉村三郎(すぎむらさぶろう)が行う3つの調査とそこで出会う人々を描く。

杉村三郎(すぎむらさぶろう)シリーズの第4弾である。本書では杉村三郎(すぎむらさぶろう)が探偵として扱った3つの物語を扱っている。結婚した娘に会うことを許されない母親、キャンセルされた結婚式、子供を理由にお金をむしりとろうとする母親など、そのどれもが世の中を騒がすほど大きな事件ではなく、どんな街にも起こりそうな出来事を扱っている点が面白い。

そして、物語全体の軽い展開の中に、人間の持つ本質的な醜さや強さを描いている点が宮部みゆきらしいと言えるだろう。

残念なのは他の著者の作品ほど深みを感じないため、続編を読む頃には前作の内容を忘れているということだ。それでも、深く考えすぎないで楽しめるところがこのシリーズのいいところかもしれない。

【楽天ブックス】「昨日がなければ明日もない」

「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」ミニマリストしぶ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミニマリストの著者がその生き方や考え方を語る。

僕自身も、捨てられるものはさっさと捨てたいし、広いよりも最低限の広さがあればむしろ狭い部屋に住みたい、と考えるミニマリスト思考の持ち主である。今回、何かしら人生をさらに豊かにするヒントに出会えればと思い本書にたどり着いた。

すでにミニマリストという言葉が一般的に世の中で通じるようになって数年が経ち、また断捨離も流行っていることから、その考え方はそれほど目新しいものはないだろう。すでに少しでも実践したり、実践してないまでも興味を持って調べたことのある人にとっては、本書で書いてあることも、特に驚きを与えるようなことではないだろう。例えば次のような内容である。

  • 冷蔵庫は持たない
  • テレビは持たない
  • 狭い家に引っ越す
  • 毎日同じ服を着る
  • 財布は持たない
  • 「限定物」ではなく「定番物」を買う
  • 「レンタル」「シェア」を使いこなす
  • 「出口戦略」を考えて増やす
  • 時間を生み出すツールに投資する

僕にとっても、新しい考え方に出会うというよりも、もともと持っていた考えを改めて再確認する機会となった。唯一「こんな考え方もあるのか」と思った点を上げるなら次の2つだろう。

「一日一食」で生活する

たしかに、食事に関して、僕らは三食食べるべきという考え方に固執しすぎているのかもしれない。1人のときなど二食生活や一食生活を取り入れてみたいと思った。

物が人生を豊かにする、という思考から離れられない人にとっては何かしら本書から学ぶ部分があるだろう。

【楽天ブックス】「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」

「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞作品。過去から逃れてキナコは大分の田舎町で1人で生きていくことを決める。

キナコは1人で生きていくと決意しながらも、口のきけない男の子と出会い、その恵まれない家庭環境に過去の自分を重ね合わせ、その子を救おうと行動を始める。 そして、そんな現在の様子と並行して、キナコの過去が明らかになっていく。うまくいかない家族との関係、そしてアンさんと呼ぶ人との出会いよってそんな家族のしがらみから救われたことなどがわかる。

最近、日本で評価される本の多くが、家族や恋人など狭い人間関係と小さな地域のなかで起きる出来事を描いているような印象を持っており、本作品も似たような印象を受けた。もちろん、人の幸せは、身近な人との関係による部分が大きいし、人生で起きる大きな出来事よりも、それぞれの人間が物事をどう受け止めるかが重要で、そういう物語が評価されるのもわからなくもないが、最近はちょっと似通いすぎていて新鮮さをあまり感じなかった。

【楽天ブックス】「52ヘルツのクジラたち」

「All That Remains」Patricia Cornwell

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4組の男女のカップルが失踪し白骨死体で発見された。そして五組目のカップルが失踪する。

FBIの検死官Kay Scarpettaの物語の第3弾である。白骨死体として発見されたこれまでの被害者はいずれも靴を履いていなかったこと、トランプのカードが現場に残されていたことから同一犯とされており、失踪した五組目のカップルの女性は、権力者の娘であったことから、大きく報じられてFBIやCIAの上層部が絡んだ政治的な局面を強くしていくのである。

そして、そんななか、ワシントンから報道記者でありかつてはKayの天敵でありながらも、妹の殺害を機に友人となったAbbyも事件を探りやってくる。Abbyの話によると、事件を調べ始めてから、Abbyの周囲でも少しずつ不穏な動きが感じられるという。CIAやFBIは何を隠しているのかも犯人追跡と並行して大きな謎となっていく。

今回は現場にトランプが残されていたことから、スペードのエースに関するベトナム戦争における意味などの興味深い話に触れることができた。

相変わらず物語が描かれたのがすでに20年以上前とは思えないほど色褪せない物語で、今読んでも十分にその緊迫感が感じられる。実際、検死官である人物がここまで現場に足を運ぶものなのだろうか、という疑問は感じなくもないが、その辺は物語の都合上多少脚色があるのかもしれない。アメリカという国の司法やCIA、FBIなどの権力の構造や、地域や州の管轄についても好奇心を刺激してくれる点もありがたく、存分に楽しませてもらった。

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

【楽天ブックス】「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」

「ブレインメンタル強化大全」樺沢紫苑

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

精神科医の著者が、睡眠、食事、運動の人生のおける重要性と、より良い睡眠、食事、運動の仕方を語る。

著者自身多くの本を読んでいるようで、それぞれについて様々な研究結果を引用している。どこかで聞いたような話や、別の本で読んだ話も多く、「〜のようだ」「〜の研究もあります」など、自分自身は読んだだけで実験したわけでもなく、ただ著者自身が気に入った情報を切り貼りしただけという印象が拭えない。

著者自身かなりの健康マニアだということがひしひしと伝わってくるが、人間何かを信じ始めると欲しい情報ばかりが見えてくるもの。そんな傾向を警戒した上で、話半分に本書を読むのがちょうどいいかもしれない。

参考文献が末尾にしっかり書かれているので、興味を持った分野はオリジナルの本を読むのがいいだろう。

【楽天ブックス】「ブレインメンタル強化大全」

「習慣が10割」吉井雅之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
習慣の持つ力と、習慣の続け方を語る。

僕自身習慣化を得意としており、それによって自分のなりたい自分になれている気がするが、さらに精度を上げるヒントに出会えればと思い本書を手に取った。

序盤は習慣の重要性を語っており、世の中のすごい人たちは才能に恵まれたわけではなく、単に習慣を味方につけただけでそれは誰にでもできることだと語り、中盤以降は習慣をつくるための心がけについて語っている。

  • とにかく「ハードル」を下げる
  • ゲーム感覚でやる
  • 「仕組み」を作る

どれも習慣の得意な人はすでにやっていることだろうが、こうやって言葉として並べてみると、習慣化できない人の問題点が見えてくる気がする。

また、面白いなと思ったのが本書で紹介している「クリアリング」という習慣で、自分の1日の行動を振り返る行為である。落ち込んだ日や、物事がうまくいってない時などは取り入れてみると面白いかもしれない。

メルマガやブログ、貯金など、若干考え方が古いなと感じる部分もあったが、その辺は著者がかなり年配な方のようなので仕方がないだろう。すでに習慣を実践できている人にとってはあまり学ぶ部分はないかもしれない。ただ、これから習慣をつくろうと本気で考えている人には、本書に大部分の習慣化に必要な考え方は書かれているので、きっと役に立つことだろう。

【楽天ブックス】「習慣が10割」

「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」小出義雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高橋尚子の指導者として有名な著者がその練習法を語る。

最近膝の調子が良く、また定期的にジョギングができるようになったので、そのジョギングの時間の密度を向上したく思い、マラソン関係の本を漁る中で本書にたどりついた。

本書は大きくサブ4向けとサブ3向けの練習メニューや考え方が書かれている。なかでも特徴的なのがすべての練習において後半にペースを上げることを重視している点である。サブ4は足づくりだけで達成できて、「心肺の強化」は必要ないとしている。練習はジョギング 、ビルドアップ、タイムトライアル、長く走るの4つの練習を繰り返し、基本的な考えは次の内容になる。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち2日はジョギングで、2日は休み。
2.平日の練習時間はだいたい60分で。うち1日はポイント練習日にする。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

一方でサブ3を目標とした場合、インターバル走やペース走を含めた構成としてしており、次のような考え方で練習メニューを組むのを進めている。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち3日はジョギングで、1日は休み。
2.平日でも、場合によっては練習時間が2時間ぐらいかかる日がある。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

最近いろんなところで議論が起きるLSDについては、著者はLSDという言葉は使っているが、単に長く走ることを指しており、一般的に言われるLSDのようにゆっくり走ることは意図していないようである。

具体的な練習メニューのほかに、オリンピックメダリストの有森裕子や高橋尚子とのエピソード、それ以外にも小出道場の練習生のレース完走記を紹介している点が面白い

【楽天ブックス】「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」

「短くても伝わる文章のコツ」ひきたよしあき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
博報堂スピーチライターの著者がわかりやすい文章を書く秘訣を語る。

印象的だったのは文章のエッセンスを読み取る力を養う

1ページ1ライン法

というもので、そもそも文章の中にそれほど多く重要な要素はなく、1ページに1箇所ていどなのだというのである。また、わかりやすい文章を書くためのコツとして挙げているのが

「接続詞」をうまく使うコツは「“が”禁止」と「定型文」

というものである。著者は接続詞を文章の方向指示器としてその重要性を強調しており、「が」という曖昧な接続詞は極力避け、「でも」「だから」「それゆえ」などの接続詞を使用することで、前後の関係を明確になるのだという。

中盤からは敬語や習慣の話に焦点が移っていく。敬語の話はすでに文章のコツではないと思うが、興味深かったのはら抜き言葉の判断のしかたの考え方である。

命令形にしたときに「ろ」で終わる言葉は、「見られる」となります。つまり「ら抜き言葉」にしてはいけません。

前半はともかく、中盤以降は著者の習慣やこだわりなど、ただページを増やすだけを目的に語っているだけの印象を受けが、前半に出てきたいくつかの考え方は早速取り入れたいと思った。

【楽天ブックス】「短くても伝わる文章のコツ」

「The Girl Who Lives Twice」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Salanderは妹Camillaとの対立を激化させていく。一方でBlomkvistは自分の電話番号を持ったまま亡くなった、不可解のホームレスの死の謎に惹かれていく。

ミレニアムの第6弾である。最初の3作品の面白さゆえに著者が変わっても続編ということで読み続けている。

BlomkvistはSalanderの力を借りて、亡くなったホームレスは特別な遺伝子を持ったネパール生まれのシェルパであることを突き止める。彼はなぜスウェーデンの地に現れたのか。そして、彼が死の間際に口にしていた言葉の意味とはなんなのか。やがて、Blomkvistはやがて世間を騒がせたエベレストの事件にたどり着くのである。

一方でSalanderは妹Camillaの動向を常に観察し、Camillaもまた、Salanderを見つけるために躍起になり、まさに殺すか殺されるかという状況に陥っていく。

エベレスト登山の過酷さを扱った物語は、実際に起こった第遭難事故を暑かった映画「エベレスト」や「淳子のてっぺん」などでこれまでにそのいくつかに触れているため知識としては知っていたが、本作品はそこに改めてシェルパとしての立場からの視点をもたらしてくれた。

ただ、それ以外には特に新鮮さや際立った驚きはなく、特に、SalanderとCamillaの追跡劇は、ようやく向かい合った因縁の対決にしては、古いアクション映画のような展開の薄っぺらさや稚拙さを感じてしまった。

このシリーズは最初の著者Stieg Larssonからに引き継がれて3作品目になるが、全体的にも、展開が安っぽくなったという印象は否めない。むしろ人の作り出した世界観に習ってここまで3作品書いてきた著者David Lagercrantzを評価すべきなのだろう。Stieg Larssonの作り出した世界観を壊してはならない一方で、作家として生きる以上自分の個性を出していきたい、など、いろんな葛藤があったに違いないが、そろそろ潮時なのかもしれない。