オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
末期がんを宣告された「僕」の目の前に悪魔が現れた。世界から1つづつ何かを消す代わりに寿命を一日延ばしてくれるという。
主人公の「僕」が死と向き合う物語ではあるが、軽い気持ちで読む事ができる。目の前に現れた悪魔によって「僕」は1つづつ何かが世界から消えていくことを目にすることで、何が本当に大切かを改めて考える事になる。
わかりやすいところだと、第二章の「世界から電話が消えたらなら」である。僕らが学生の頃はまだ携帯電話は出回っていなくて、待ち合わせの場所で電話をして連絡をするということができなかったし、そのせいで結局会えなかったなんて事もあったように思う。それが携帯電話の普及から15年ほどが経過した今、多くの人にとってないと不安になるような存在になってしまった。携帯電話は人を幸せにしたのだろうか。
もう1つ印象的だったのは時計を消す章。そもそも時間とは人間が勝手に決めた感覚に過ぎず、時間がなくなれば1日もなくなるし、時間をつぶす必要もなくなるのだ。時間の概念を考え出した事で人間は幸せになったのだろうか。
「僕」はそうやって世界からいくつかの物を消す決断をしながら自らの過去と向き合っていく。ほのぼのとしたちょっと考えさせられる一冊。
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カテゴリー: ★3つ
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」塩野七生
ローマ人の物語。この3冊はユリウス・カエサルが主な登場人物となり、ローマ帝国を一気に拡大させる。カエサルは40代になるまで大した偉業を成し遂げなかった遅咲きの英雄であり、序盤は政治的な内容や多くの人名が登場するためなかなかわかりにくいかもしれない。しかし、後半はカエサルの著書「ガリア戦記」の内容を交えながら、ガリア地方へローマ帝国が拡大していく様子が面白く描かれている。
カエサルだけでなく、ガリア地方の多くの部族を束ねてカエサルに挑んだヴェルチンチェトリックスの勇敢な生き方も印象的である。
実は「ガリア戦記」というタイトルは聞いた事があったのだが、それがユリウス・カエサルによる2000年も前に書かれたものだったとは、本書を読んで初めて知った。読まなければいけない本がまた増えた気がする。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)」、「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)」、「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)」
「優良企業の人事・労務管理 「10の仕組み」で組織は強くなる!」下田直人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本来は会社の総務などに勤める人が読む本だとは思うが、最近組織のありかたについて興味があるので読む事にした。
基本的には会社目線で、社員とのトラブルを避けるためにすべきこと、気をつける事として例を交えて説明している。例えば、秘密保持などの誓約書の作成や就業規則や休日の制度などの整備の必要性などである。どれも会社目線ではあるが、一起業の一社員にとっても、会社のルールや規則、いろんな手続きが何のためにあるかを理解するための助けになるだろう。
また、悪い見方にはなるが、本書に書かれていたような事をしっかりやってない会社は、その部分が弱点であり、トラブルが会った際に、従業員にとってつけ込む事のできる場所でもある。
【楽天ブックス】「優良企業の人事・労務管理 「10の仕組み」で組織は強くなる!」
「スタンフォードの自分を変える教室」ケニー・マクゴニカル
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心理学者である著者が「意思力」について語る。
読み終わって思うのは、本書のタイトルの「スタンフォード」と「教室」がかなり売り上げに貢献しているだろうということ、英語のタイトルの「The Willpower Instinct」が示すように、本書にはスタンフォードも教室もほとんどでてこない。単に意思力の話だと思って問題ない。ただ、タイトルがそうだから内容が読む価値がないというわけではない。
本書では人が何かを決意し、その決意がやがて失敗に終わりやすい理由を示してくれる。そして、それを回避する方法の例も教えてくれる。意思力を必要とする際の例として喫煙やダイエットを取り上げているが、その力はさまざまな場所で応用できるだろう。
僕自身はタバコも吸わないし、ダイエットも必要としないのだが、それでも意思力の弱さを感じる部分はあり、本書を読み終わってから早速いくつかの方法を実践させてもらっている。まだ大して日が経ってないから、成功しているのか失敗しているのかを現段階で判断する事はできないが、本書を読む前よりかは成功に近いような気がする。
【楽天ブックス】「スタンフォードの自分を変える教室」
「伝説なき地」船戸与一
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ベネズエラの荒れ果てた地でレアアースが見つかった。その採掘権で儲けようとするエリゾンド家。一方で、丹波春明(たんばはるあき)と鍛冶司郎(かじしろう)は二千万ドルを求めて危険な旅を続ける。
コロンビア、ベネズエラという麻薬や過激派などがはびこる、政府の支配の及ばない国を舞台にした物語。南米という社会としてはいまだ発展途上の地域の文化や人についての理解には役立つだろう。物語中で触れられている出来事のいくつかは実話に基づくものなのだろう。そのいくつかはとても印象的にも関わらず、聞いたこともないことなので、そのような記述に出会うたびに南米が僕らに日本人にとって地理的にも心理的にも遠い場所なのだと思い知らされる。
残念ながら主要な登場人物はみんな人の死をなんとも思わないような行動を繰り返すので、その行動やふるまいにいい刺激を受ける部分はない。著者船戸与一はどうしてもイランイラク戦争を扱った「砂のクロニクル」の印象が強く、あの世界観に再び触れたくて読み続けている気がする。その点で本作品は期待に応えてくれたとは言えない。もし南米の物語をもっと読みたいという人がいたのなら垣根涼介の「ワイルド・ソウル」をお勧めするだろう。
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「古本屋開業入門 古本商売ウラオモテ」喜田村拓
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長年古本屋を営む著者が古本屋の開業について語る。
別に古本屋になろうとしているわけではないが最近流行の「ビブリア古書堂の事件手帖」のシリーズを繰り返し読むうちに、古本屋の内情について知りたくなって本書に出会った。
もちろん本書の主な内容は、古本屋を営む上での心構えや店の構造やインターネットの利用方法などであって、単純に古本業への興味を持って読む人にとっては必要ない内容ばかりではあるが、それでもいろいろ今まで知らなかった事が見えてくる。
例えば、古本屋というのは、普通の本屋とは違って、扱っている本と出て行く本が巧くまわって初めてうまく機能するのだそうだ。そのためには、売る事よりも買い取りなど、本を巧く手に入れる事の方がはるかに重要だと言う。そして、人気のあった本ほど世の中に溢れてしまって古本としては価値が下がるのも当たり前のことではあるが面白い。
本書からはっきりと伝わってくるのは、本当に古本屋というのは本が好きでなければ勤まらない職業だと言う事である。
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「シヴェルニーの食卓」原田マハ
印象派の画家たちを扱った4つの物語。
「楽園のカンヴァス」と同様に、著者原田マハのキュレーターとしての知識を活かした作品。4つの物語はいずれも印象派の画家達を扱っている。クロード・モネ、メアリー・カサット、エドガー・ドガ、ポール・セザンヌ、ゴッホなどである。(この画家達を「印象派」とひとくくりにしてしまうことには議論があるだろうが)。ある程度西洋絵画に興味を持っている人なら誰でも名前ぐらいは聞いた事があるだろうし、どんな絵画なのかすぐに頭に浮かぶかもしれない。
本書が描く4つの物語はいずれもそんな画家達の日常を描いている。そこには絵を見ただけではわからないいろいろなものが見えてくる。ドガの踊り子に対する執着。セザンヌの貧乏生活。女性でありながらもすべてを捨てて画家を目ざしたメアリー・カサット。
今まで絵画に親しんできた人はさらに興味をかきたてられるだろうし、そうじゃない人は美術館に行きたくなるかもしれない。
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「蒼穹の昴」浅田次郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西太后(シータイホウ)の支配する清。貧しい少年春児(チュンル)は幼なじみの文秀(ウェンシウ)とともに都へ向かう。
清朝の末期を描く。偉くなるためには科挙の試験を受けなければならない中国という国で、文秀(ウェンシウ)はそんな過酷な試験に挑もうとする。その一方で文秀(ウェンシウ)の幼なじみの春児(チュンル)は自ら性器を切り取って宦官(かんがん)となり、貧しい生活から脱しようとする。
同じアジアの国の出来事にも関わらず、あまりにも知らない事が多い事に驚かされた。冒頭では、文秀(ウェンシウ)が挑んだ科挙というし試験の過酷さと、虚勢を施す刀子匠(タオズチャン)という職業とその処置の方法に驚かされる。どちらも同じ東アジアの国に長い間文化として根付いていたものなのである。
やがて、文秀(ウェンシウ)は科挙の試験で素晴らしい成績をおさめて地位を向上させていく。また一方で、春児(チュンル)も方法こそ違えど、自らの力で少しずつ都への道を切り開いていくのである。文秀(ウェンシウ)と春児(チュンル)を中心に物語は展開していくが、その過程で西太后(シータイホウ)や、中国を守ろうとする人々の苦悩や駆け引きが見て取れる。また、中国国内だけでなく、中国という大きな土地を巡るイギリスやフランス、日本の利権争いも興味深い。
登場人物が多いので、なかなか本書だけでこの当時中国で起こった事の全体像を理解するのは難しい。どこまでが歴史上実際に存在した人物で、どこまでが物語中の架空の人物や出来事なのかをしっかり理解してもう一度読んでみたいと思った。
「ビブリア古書堂の事件手帖4 栞子さんと二つの顔」三上延
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビブリア古書堂シリーズの第4弾。毎回本を絡めた興味深い物語を展開してくれる。今回は江戸川乱歩のコレクターが遺した謎に栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は挑む。
本シリーズは今まで多くの有名な本を扱ってきたが、今回扱う江戸川乱歩シリーズはまさに僕自身が小学生の頃親しんできたシリーズで、物語中で触れられるタイトルの数々に懐かしさを感じてしまった。
また、そんな本に絡めた謎やそれぞれの本や作家が持つ深い歴史だけでなく、栞子(しおりこ)への五浦(ごうら)の想いもまたほのぼのと描かれている。そして、本書で何よりも注目すべきなのは失踪していた栞子(しおりこ)の母、篠川智恵子(しのかわちえこ)が登場する点だろう。栞子(しおりこ)よりもさらに深い本に対する知識と行動力のある智恵子(ちえこ)に対して、栞子(しおりこ)と五浦(ごうら)は謎解きで挑むのである。
まだまだこの先一波乱ありそうな流れである。
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「はじめてのトポロジー つながり方の幾何学」瀬山士郎
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ポアンカレ予想を理解するためにはやはりトポロジーを理解する必要があり、その入門書として手に取った。
トポロジーの考え方では球も立方体も直方体も同じ形として扱われる点は、1度考え方を受け入れれば非常にわかりやすく興味深い。また、メビウスの輪の考え方の延長でクラインの管ができることも理解できた。また、4次元空間の数学的考え方の一端にも触れる事が出来た。
ホモローグやホモトープなど、覚えにくい言葉も多々登場したが、トポロジーの最初の一冊としては悪くないだろう。
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「The Light Between Oceans」M L Stedman
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Tomとその妻Isabelはオーストラリアの無人島で灯台の光を維持することを仕事としていた。ある日その島にボートが流れ着く。そのボートにはすでに息を引き取った男と赤子が乗っていた。
戦争でのつらい経験を引きずって生きていたTomは、人のいない島で灯台の光を管理するという仕事を選ぶ。そんな折に出会ったIsabelと結婚し、2人で家族を作ろうとするがIsabelは3人の子供を流産してしまうのだ。そして、そんな失意の2人のもとに赤子を乗せたボートが流れ着く。
戦争中の自らの行いによって良心の呵責に苦しむTom。そんなTomの過去に対する言動や、自らの正義感や信念を反映した生き方が印象的である。
1920年代を舞台にした物語という事でおそらく今とはかなり異なるのだろうが、灯台を管理するという仕事やその役割、そして灯台そのものについても興味をかき立ててくれる。また、オーストラリアを舞台としている事からその時代の人々の言動に触れるうちに、オーストラリアのこの時代の歴史をほとんど知らない事に気づかされた。
「日本語から考える!スペイン語の表現」長谷川信弥/山田敏弘
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自然な日本語の持つ微妙なニュアンスをスペイン語でどのように表現するかを説明している。
自然な日本語というのは必ずしも、主語や目的語が含まれていない事も多い。そんな日本語をスペイン語で表現しようとしたときにどのように表現すべきか、という視点で書かれている。たとえば「私は」と「私は」の違いや、「しか」と「も」の違いなどである。もちろんスペイン語の方が表現しやすい表現や、日本語の方が表現しやすい表現などあり、本書を通じて、いろいろスペイン語の表現の幅が広がるだろう。
【楽天ブックス】「日本語から考える!スペイン語の表現」
「宮本武蔵(八)」吉川英治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の最終巻。武蔵は小次郎との決闘へ向かう。
8冊にわたって続いた宮本武蔵の物語も本書で完結する。伊織やお通、お杉や又八などが武蔵のもとに集まるのである。それぞれがすでにその道で有名になっており、世間も2人の決闘への関心が高い。決闘当日までの周囲の七人の行動や、武蔵の態度が読みどころと言えるだろう。
個人的には小次郎との決闘の後の武蔵の人生にも触れて欲しかったがそのあたりは他の作家や漫画家に譲って、これを1つの有名な武蔵の物語として受け入れるべきなのだろう。
1つの有名な小説をようやく読み終える事ができた。個人的には武蔵が伊織と出会う5巻あたりが好きである。
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「ローマ人の物語 勝者の混迷」塩野七生
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
カルタゴが滅亡して大国となったローマ。しかし領土が増えて人が増えれば様々な問題が噴出する。タイトルが「勝者の混迷」と付けられていることからも想像できるように、とりたてて大きな出来事があるわけでもないが、平和ゆえに噴出する多くの問題が見えてくる。
ローマは領土が拡大する過程で、すべての市民に平等な市民権を与えれば旧市民の反感を招き、平等な市民権を与えなければ新しく支配下に入った領土の人々に不信感を与える。というジレンマに陥るのである。また、世界を完全に制覇しない限り常に隣国は存在し、隣国との関係や争いは常に発生するのである。この「勝者の混迷」で見せてくれるのは、まさにそんな組織を維持する事の難しさである。
投票権や税金は言うまでもなく、新しい制度への段階的移行など、現在僕らが生きているこの社会が、過去の何千年もの人類の試行錯誤の結果などだと思い知る。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 勝者の混迷(上)、「ローマ人の物語 勝者の混迷(下)
「宮本武蔵(七)」吉川英治
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
宮本武蔵の物語の第7巻。全8巻のこの物語もいよいよ終盤に近づいていく。
過去の登場人物が勢揃いするような一冊。武蔵と別れた城太郎(じょうたろう)は立派な青年となって、現在の武蔵の弟子である伊織(いおり)と遭遇する。そしてかつて武蔵と勝負した夢想権之助(むそうごんのすけ)は伊織(いおり)とともに旅することとなる。
特に際立った大きな動きはないが、物語が終わりに向かっている事を感じさせる。
【楽天ブックス】「宮本武蔵(七)」
「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
懸賞金のかけられたミレニアム問題の1つポアンカレ予想が2003年にロシアの数学者によって証明された。しかし彼は懸賞金を受け取る事を拒否して行方をくらました。彼はどのような理由からそのような行動をとったのだろうか。
ポアンカレ予想に関連する本を読もうと思って本書に出会った。残念ながらポアンカレ予想についてはあまり多く触れられておらず、むしろそれを証明した数学者ペレルマンの生い立ちや、証明を発表したときの彼の言動について書かれている。彼がロシア人という事で、むしろ数学よりもペレルマンやその周囲の人々が育った時代の厳しいロシア社会が印象的である。言いたいことを言う事ができず、海外に出るためのパスポートを手に入れる事さえ難しい時代、あらゆる学問や教育がその体制ゆえに被害を被ったという。
本書にはペレルマン自身へのインタビューなどは一切掲載されていない。そういう意味では読者の予想を裏切る事が多いのかもしれない。個人的にはそれでもいろいろ学ぶ部分はあったと感じるし、さらにポアンカレ予想や位相幾何学というものを理解してみたくなった。
【楽天ブックス】「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」
「ドルチェ」誉田哲也
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警視庁練馬警察署の巡査部長である魚住久江(うおずみひさえ)の関わる6つの事件を描く。
40歳を超えた女性目線ということで、警察小説といえども、本書で扱われる事件は、殺人といった派手なものではなく暴行、傷害、虐待などである。事件自体は些細な物に見えるが、それゆえにその事件を通じて見えてくる、いろんな人間の側面は他人事とは思えないものを感じる。
多くの登場人物が30代以降であるのも興味深い。希望を持って生きている20代に対して、未来の可能性が急激に狭まっていく30代は、世の中に絶望して犯罪に走りやすい傾向があるのだろうか。人生をやり直すのに遅いならば、人生自体を壊してしまう事をためらわないのだろうか。
「ストロベリーナイト」シリーズや「ジウ」で派手な警察小説を描いている著者誉田哲也があえてこういう質素な物語を描くと、ここから何を伝えようとしているのだろう、と必要以上に考えてしまう。
【楽天ブックス】「ドルチェ」
「図解 橋の科学」田中輝彦/渡邊英一他
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
橋についてわかりやすく語る。
先日、日本の明石海峡大橋がどうやらすごいらしいことを知った。急に橋とはどのように作れるのか知りたくなった。対岸にどうやって最初の一本の板を渡すのか、海や河の中にどうやってあの大きな橋桁を作るのか。そうして本書に行き着いた。
本書ではまずさまざまな橋の形状について語っている。わかりやすいものだと吊橋(つりばし)や桁橋(けたばし)、そして他にはトラス橋、斜張橋、ラーメン橋、アーチ橋で、それぞれの簡単な構造や世界の例について書いている。
また、中盤では橋の建築方法、そして後半では過去の橋の崩落事故や、橋を長く維持するための方法について触れている。本書自体が橋に興味を持った中学生や高校生に向けて書かれているので、本当にわかりやすく基本的な内容にとどまっているが、橋についてちょっと知りたい、といった人にはちょうどいいだろう。
個人的にはレインボーブリッジはずっと吊橋だと思っていたのでようやく斜張橋と吊橋の区別がつくようになった。世界にはいろんな橋があることがわかったし、また行きたい場所が増えた。普段生活している町のなかにまた1つ興味を持って見ることのできる対象が増えた気がする。
【楽天ブックス】「図解 橋の科学」
「モルフェウスの領域」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日比野涼子(ひびのりょうこ)は未来医学探究センターの唯一の職員。彼女の仕事は世界初の人工冬眠について少年モルフェウスを維持する事だった。そしてやがてモルフェウスが冬眠から目覚める時が近づいてくる。
人口冬眠、コールドスリープなど言葉の使い方はいろいろあるけれども、人が眠りについて未来にそのままの姿で生き返る、というのは過去多くのSF作品で使われてきたできごと。本書は医療を専門としている著者海堂尊(かいどうたける)が描く事で、より現実世界に関連した内容に仕上がっている。
これまで同じ著者の物語に多く触れてきたなかでは、現実的な医療技術を物語に取り込んでいるという印象を持っていた。そのため、ひょっとしたらコールドスリープもすでに実現可能な技術なのかもと検索したが、どうやらそのような事実はまだないようである。
本書では、目を摘出しなければならなくなった少年が、その治療薬の開発・認可を待つためにコールドスリープを選択する、という過程をとっている。関係者や政治家がコールドスリープをした対象の人権をどのように守るかという議論や、その技術をどのように維持するかの駆け引きが面白い。むしろ過去さまざまなSF作品に描かれていたような、コールドスリープをする前とした後での時代の間の文化の違いやその人やその人に接する人々が感じる違和感などは本書でほとんど描かれていない。
またほかのシリーズ作品同様、東城医大の高階医院長や田口先生など本書にもたくさん別シリーズの主要人物が登場する。海堂尊(かいどうたける)作品に多く触れている人はそういう意味ではさらに楽しめるのではないだろうか。近いうちに続編が出るようなのでそちらも楽しみにしたい。
【楽天ブックス】「モルフェウスの領域」
「Song of Susannah」Stephen King
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Callaの町でWolves達との勝利にわくRoland一行だが、妊娠したSussannahが行方をくらました。Roland、Eddie、Jakeそして神父のCallahanがSusannahを追ってニューヨークに向かう。
多重人格者のSusannahが行方をくらましたことで、それぞれが別の世界へのドアをくぐる。EddieとRolandは1977年のメーン州、JakeとCallahanは1999年のニューヨークだった。それぞれの登場人物が別々に行動するため、今までのようなそれぞれの個性が団結した展開を見る事はできないが、それぞれまた違った側面が見えてくる。
子供を産んで育てようとするSusannahの中の人格Miaと、後から追ってくる救いを待つために少しでも時間を延ばそうとするSusannah。2人が1つの体のなかで駆け引きを繰り返すのが面白い。そしてそんななかにもう1つの人格Odettaが割り込んでいくのだ。
一方で、鍵となる駐車場を管理している本屋のオーナーを追うEddieとRolandは、やがてその近所にある小説家が住んでいることを知る。その小説家はStephen Kingというそうだ。現実世界がKingの小説のなかに取り込まれたのか、それともRolandやEddieが現実世界にでてきたのか、Stephen Kingのそんな試みが見られるのが本書の一番の山場かもしれない。
長く続いたシリーズの最後に繋がる一冊。これまでのシリーズと比較すると面白さとしてはやや不足しているかもしれないが、その後の展開には必要な一冊なのだろう。