オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
富士の樹海に絡んだ6つの物語。
印象的だったのは最初の物語である。人生に絶望して樹海で命を断った男性は、死んでからも意識を失う事なく、自らが首を吊った木に憑依し、自らの肉体が月日の流れとともに腐敗し、やがて骨となる様子を見ることとなる。死んだ後の世界が実際どのようなものなのかわからないが、一カ所で何もできずに固定され、意識だけ永遠に持ち続ける以上に苦痛な状態などあるだろうか。そんな今までにない恐怖を味わえるのは鈴木光司らしく、僕が彼の作品が出るたびに読む理由でもある。
本書はそれ以外にも5つの短編が含まれており、それおれが微妙に関連している。世代を超えた不幸の連鎖や希望が感じられるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「樹海」
カテゴリー: ★3つ
「盲目的な恋と友情」辻村深月
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京の大学の管弦楽団に参加する学生達の物語。大学が指揮者として迎えたプロ、茂実(しげみ)とバイオリン奏者として参加していた蘭花(らんか)は恋愛関係になる。
前半は蘭花(らんか)目線で物語が進む。将来を有望視される指揮者の茂実(しげみ)と付き合い始め、茂実(しげみ)の元彼女や、周囲の女性との関係に嫉妬する様子などとともに、同じオケの友人である留利絵(るりえ)や美波(みなみ)との人間関係を描く。美人な蘭花(らんか)の学生生活は少女マンガのようだが、やがて茂実(しげみ)との関係は悪化していく。
後半は蘭花(らんか)の友人である留利絵(るりえ)目線で進む。幼い頃から誰もがうらやむような美人の姉を持ち、自分自身はニキビを気にしてコンプレックスを抱えて生きる。やがて、留利絵(るりえ)は友人である蘭花(らんか)に固執していく。
個人的には前半の蘭花(らんか)の物語よりも、嫉妬やコンプレックスに苦しみながらも自分の存在意義を見いだそうとする留利絵(るりえ)目線の方が印象に残った。若くて未熟な心の動きを描くという意味では辻村深月作品らしいといえるが、いい作品の印象が強いため、少し物足りなさを感じてしまった。
【楽天ブックス】「盲目的な恋と友情」
「世界で一番いのちの短い国」山本敏晴
オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
アフリカのシエラレオネで、国境なき医師団の一員として働く著者がその日々の生活の様子を語る。
シエラレオネとはどんな国なのか。日本人にとっては、エジプトと南アフリカ以外のアフリカの国はどこも貧しいというイメージで同じなのかもしれない。しかし、本書によると、そのタイトルにもあるように、平均寿命最短、乳児死亡率最悪、妊産婦死亡率最悪など世界一悪い医療統計記録を多数保持しているという。
そんな貧しい国で、毎日人々を救っていると聞くと、ものすごくかっこいい話のようにも聞こえるが、本書で描かれる著者の日常の様子は本当に命がけである。HIV感染者や多くの伝染病が蔓延しているにも関わらず、手を洗うための水さえ手に入れることが難しいのである。
中途半端な気持ちで、「いつか発展途上国で医者として活躍したい」などと思っている人は、実際に行動を起こす前に本書を読んで観た方がいいかもしれない。
【楽天ブックス】「世界で一番いのちの短い国」
「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の起業で、著者が世の中に必要と思う企業を取り上げる。
著者は多くの企業は被害使者意識に凝り固まっていると言う。そんな企業は5つの言い訳「景気や政策が悪い」「業種・業態が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「大企業・大型店が悪い」を繰り返して、変わろうとしないのだそうだ。それに対して、いい企業があるべき次のように表現する。
顧客が3番目に来ている点に多くの人は驚くかもしれない。しかし、今世の中の多くの会社が「経営者」や「顧客」を一番上に持ってきているために、人々の幸せを損なっているように見える。社員が仕合せになることで、顧客や地域にその幸せを共有しようとするのが本来のあるべき流れなのだろう。
中盤以降はそんな著者の目に止まったすばらしい企業を5つ紹介する。紹介される企業は例外なく、顧客よりもまず社員を大切にする点に注目すべきだろう。読者はこんな会社で働いてみたい、と思うのではないだろうか。素敵な会社を作りたいと感じさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「日本でいちばん大切にしたい会社」
「ワールド・カフェをやろう! 会話がつながり、世界がつながる」香取一昭、大川恒
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ワールド・カフェの効用とその方法について説明する。
ワールド・カフェという言葉を知ったのは本当に最近のことである。会社で毎日繰り返されるミーティングのように、人々が協力して物事の解決策や新しいアイデアを生み出すというのは多くの場所で行われていることではあるが、残念ながらそれはなかなか旨く機能しない。多くの場合、上司や部下がいて、立場を気にしたり、同じ職場やコミュニティの人間が集まっていて最初から考え方に偏りがあったりするからである。ワールド・カフェというシステムはそれにたいする一つの解決策とも言える。
本書はそんなワールド・カフェの手法とそれぞれの参加者が意識すべき考え方が説明されている。ワールドカフェで行うべきなのは「ディスカッション」ではなく「ダイアログ」である、とする点が印象的である。この考え方は、世の中の多くの企業で行われているミーティングなどでも取り入れられるべきだと感じた。「ディスカッション」と「ダイアログ」の違いのいくつかを挙げると次のようなものだ。
ワールド・カフェそのもの運営に興味がなくても、本書は話し合いに対する考え方に新たな視点をもたらせてくれるだろう。
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「ブータンの笑顔」関健作
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者はあるテレビ番組を見てブータンに魅せられた。それから必死で勉強し、青年海外協力隊としてブータンで3年間体育を教えることになった。そんな著者がブータンでの出来事を彼自身が撮った写真を交えて語る。
体育の授業の重要性が認識されていないブータンで、体育の楽しさを教えようとするのだが、多くの困難にぶつかる。例えば、体育着はもちろんないし、生徒によっては運動用の服を買うお金もない。また、低学年はそもそも英語を話せない。そして時間に対する感覚も日本人とは大きく異なるのだ。それでも時間をかけて著者は少しずつ、現地の言葉を学び、体育の楽しさを生徒達に伝えていく。
授業や学校の話だけでなく、著者がブータンで体験した驚きのエピソードもたくさん語っている。しかし、そんなエピソードだけでなく本書の半分ほどを占める写真も素敵である。きっと写真を見ただけでも何か感じ入るものがあるのではないだろうか。
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「Naked Statistics: Stripping the Dread from the Data」Charles Wheelan
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計が世の中に役立てられる箇所が溢れているかを語る。
情報をしっかりと正確に把握するためには、その情報の裏に潜む意図を見抜く能力も磨かなければならない。本書では多くの例をあげているが、なかでも印象的だったのがとある2つの携帯電話会社AT&TとVerisonの広告である。AT&Tが「アメリカ人口の97%をカバーしている」とそのネットワークの広さをアピールしたのに対して、VersionはAT&Tの地域カバー率の低さを示して対抗したのである。確かに数字だけ見ると97%というのは高い数字に見えるが、携帯電話という商品を考えると、人が集中している大都市だけで使えても便利とは言えないだろう。数字以外のものを見る目を養う事が大切なのだ。
著者は多くの例を交えながら、統計の基本的なことから語っていく。例えば標準偏差やばらつきなど、言葉だけは知っていた言葉についても、それらの言葉の実際に示す意味が理解できるようにだろう。インターネットを経由して多くの情報にアクセスできる今、標準偏差やばらつきな、平均値や中央値などは、すぐに計算できるようにしておきたい。
本書を読んで感じるのは、物事の真偽を統計的に判断することは本当に難しいということだ。素人がその辺の数値から出してきたグラフにはまず疑いを持ってみるようにしたほうがいいかもしれない。素人どころか専門家が過去何度もそのような大きな統計的誤解を招いている例を本書ではいくつも紹介している。
サンプリング一つとっても、偏りのないサンプリング手法がどれほど大切で、それがどれほど難しいかがわかるだろう。例えば、無作為な電話によるアンケートを行うとしても、何も考えずに行えば回答者は電話に出やすい人間や家にいる時間の長い人間に偏ってしまう。著者が言うには、携帯電話の出現がさらにそれを難しくしたのだそうだ。
また、警官の人数と犯罪数の因果関係を証明しようとしても、犯罪が多いから警官を増やした、という事実もあるため、僕らが思っているほど数値だけで簡単に証明できるわけではないのである。
冗長に感じる部分もいくつかあったが統計に関しては間違いなく理解を深められる。本書を読めば、世の中のデータの裏側や、落とし穴が見えてくるだろう。
「ダライ・ラマ自伝」ダライ・ラマ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
5歳のときにダライ・ラマとして即位しその後中国の侵略によってインドに亡命しながらも祖国チベットの平和のために尽くすダライ・ラマ14世がこれまでの生涯を語る。
インドに亡命してから、多くの国の著名人達と出会って、祖国の平和のために尽くすダライ・ラマの姿からは、僕ら日本人が普段意識しない何か大切なものの存在を感じられるのではないだろうか。本書を読もうと思ったきっかけは、チベットを扱った映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のなかの、神の化身ように人々から扱われているダライ・ラマと、最近メディアで見かける人のいいおじさんのようなダライ・ラマの間の隔たりに興味を持ったからである。本書を読んでその隔たりがすべて埋まったわけではないが、ダライ・ラマが仏教やチベットの伝統を変えてまでそこくに尽くそうとした結果なのだろう。僕らは、仏教に限らず、宗教における地位の高い人の人柄を想像するとき、考え方の偏った人間を想像してしまうが、少なくともダライ・ラマ14世に関しては、新しい考え方を偏見なく受け入れようという姿勢を持っているように見える。
また本書では繰り返し、中国のチベットに対する行いの非道な行いについて触れられている。近隣の国で起こったことにも関わらず、あまり自分が知らなかった事にも驚かされた。
そして、ダライ・ラマのこんな言葉に未来への希望を感じた。
あまりページを先へ先へとめくりたくなるような文章ではなく、多少読み進めるのに根気がいるが、ダライ・ラマという人間を知るのには大いに役立つだろう。
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「セブンイヤーズ・イン・チベット チベットの7年」ハインリヒ・ハラー
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オーストラリア人の登山家がチベットにたどり着く。そこでの生活からチベットの魅力に取り憑かれていく。
ブラッドピット主演で映画になった「セブンイヤーズ・イン・チベット」の原作である。冒頭で著者自身も「わたしには文才がない」と述べているように、映画のように面白く読者を飽きさせないような展開や描写ではなく、むしろ著者自身の体験をひたすら単調に綴った形になっている。そのため、冒険物語を期待して本書を手に取った人にとってはやや期待はずれかもしれないが、それでも著者の体験を通じてチベットという土地の魅力は伝わってくるだろう。
本書を読んで改めて興味を持ったのが、ダライ・ラマ14世の生き方である。最近ではテレビ出演までしているのダライ・ラマは、著者がチベットを訪れた1940年代には、チベットの人はダライ・ラマを直接見ることさえしなかったのである。チベットの平和や世界の平和を守るためにダライ・ラマが伝統よりも重要なこと、として決断した結果なのだろうか。
また、ダライ・ラマ14世の誕生の話を知ると、世の中には本当に「輪廻」というものはあるのかもしれない、と感じる。チベットや、ダライ・ラマについてもっと知りたいと思わせてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「セブンイヤーズ・イン・チベット チベットの7年」
「ランウェイ・ビート 」maha
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
青々山学園高校に転校してきた背の低い生徒ビート。おしゃれが好きでかっこいい服を作ってクラス全体を巻き込んでいく。
高校を舞台とした青春物語、コンピューターオタクだったワンダやモデルをしていたミキなど、次々とビートの力に巻き込まれていくなか、やがて一つのブランドを立ち上げようとする。ちなみに、著者はmahaとなっているが、美術を題材とした小説でも有名な原田マハである。しかし、残念ながらほかの原田マハ作品にあるように、美術に関する深い知識のようなものを感じさせてくれる内容ではない。
一気読みしてすっきりしたい人向けの物語。
【楽天ブックス】「ランウェイ・ビート 」
「あるロマ家族の遍歴 生まれながらのさすらい人」ミショ・ニコリッチ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロマとして生きるミショ・ニコリッチがその人生を語る。
人生のあり方について考えるうちに、イタリア旅行に行った際のジプリーの姿が蘇った。通常の文明社会からは距離をとりながら、移動を繰り返し生活するジプシーの生き方とはどんなものなのだろうか。何に価値を見いだしてそのような生き方をするのだろうか、と。
本書はそんなジプシーとして生きる一人の男性によって書かれたものである。父親と母親との出会いから、著者自身が大人になって多くの人間と関係を築き、また戦争という大きな動きのなかで生き抜いていく様子が描かれている。ジプシーに限らずこの時代は誰にとっても困難なものだっただろうから、ジプシーとそれ以外の人の生活の違い、というのは見えにくい。むしろ、家に住んだり、車に乗ったりと、予想以上に通常の生活をしていることに驚かされた。
本書で描かれる程通常の生活を彼らがするのであれば、疑問はむしろ、なぜ彼らは差別を受けるのだろうか、ということであるが、本書ではそのようなことには触れられていない。それでも動乱の時代を生きた一人の人間の物語としては楽しめるだろう。
【楽天ブックス】「あるロマ家族の遍歴 生まれながらのさすらい人」
「シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる」ディエゴ・シメオネ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
それまでFCバルセロナやレアル・マドリートの影に甘んじていたアトレティコマドリートを強豪チームに作り替えたシメオネ。その考え方を語る。
最近サッカーから離れていために、あまり意識していなかったのだが、確かに最近のアトレティコ・マドリートの飛躍は驚くほどである。以前は数あるチームのなかの一つに過ぎなかったのが、昨年にはヨーロッパチャンピオンズリーグの決勝まで進んでいたのである。残念ながら選手としてのシメオネは、アルゼンチンの代表ではありながらも、特に僕にとって目立った印象を残すほどではなかったが、このような現在の成功を考えると、見えない部分でチームの重要な役割を担っていたのだろう。
本書ではシメオネがチームを導く際に、常に意識している信念などについて語る。その内容の多くは、ほかの成功物語やリーダーシップについて語られた本と共通する部分もあるが、ところどころでシメオネという人間の個性が見えてくる。
本書だけでなく、多国籍のチームを一つにまとめあげる監督の物語は、人を率いる立場の多くの人に読んで欲しい。
【楽天ブックス】「シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる」
「さようならオレンジ」岩城けい
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第29回太宰治賞受賞作品。
アフリカから日本に移り住んだサリマとその同じような境遇の外国人が、学び、働き、子供を育てながら新しい文化に溶け込もうとする様子を描く。
後半まで、物語の舞台がどこだかわからなかったが、最終的には日本なのだろうという結論に至った。というのも本書では何度もサリマや、その友人のハリネズミが英語を学んでいる様子が描かれるのである。英語を学んでいるのだからそこはアメリカなどの英語圏なのだろう、と思ってしまったのだ。本書はこの点について、つまりなぜ日本語ではなく英語を学んでいるのかという点には触れていないが、僕自身がこのような境遇の人々の生活の苦しさを普段意識していない事に気付かせてくれた。
言語の問題だけでなく、サリマたちは子供を育てるために劣悪な環境で働くことになる。それでも少しずつそんな生活に適応していくのだ。最初は自分を受け入れてくれない周囲の人々に不満を抱いていたサリマが、少しずつ勉強や仕事に生き甲斐を見いだして、周囲の人々の親切や温かさにも触れていく。そんな様子は心を和ませてくれるだろう。
今まで以上に異文化に目を向けようと思わせる温かい一冊。
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「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」大田英明
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
IMFについて語る。
誰もが一度は耳にしたことがあるであろうIMFという組織。ところが実際その目的は何でどのような活動をしているかというとほとんどの人は知らないのではないだろうか。本書ではその発足の経緯と役割や実例について示している。簡単に書かれているとはされているが、僕も含めて外交や経済のある程度の知識がないとすべてを理解するのは難しいだろう。
個人的にはIMFや国際機関の役割の重要性を漠然と理解させてくれるとともに、経済的分野においてもっと知識を深めたいという良い刺激を与えてくれた。
【楽天ブックス】「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」
「Messgenger of Truth」Jacqueline Winspear
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
展覧会の準備中に組み立ててあった足場から落ちて亡くなった期待の芸術家Nick。双子の姉であるGeorginaがその死に他殺の疑いを抱いて、Maisieに調査を依頼する。
Maisie Dobbsシリーズの第4弾。探偵物語というだけではもはやありふれたものになってしまうだろう今、本シリーズは戦争の悲惨さをその物語のなかで常に訴える点が面白い。本作品はある芸術家Nickの死の謎を解くことが調査の目的であるが、彼は戦争から戻ってきた後にその悲惨な体験を絵に描くことで芸術家として開花する事となったし、依頼主でありNickの双子の姉であるGeorginaは文章を描くことに才能を持ち、戦争を描写することで評価をあげたのだった。また、NickとGeorginaの姉であるNollyも夫を戦争で失っているという過去を持つ。そして、Maisieが少しずつ真実に近づいていくに従って、各々が戦時中に受けたつらい経験や過去、知りたくなかった出来事が見えてくる事になる。
また、調査だけでなくMaisieのアシスタントのBillyの生活や、Maisieに想いを寄せる医者Andrew Deneとの関係にも変化が起きる。心に傷を抱えながらもそれぞれが少しずつ人生を歩んでいく様子が印象的である。また、一方で、ドイツでヒトラーが勢いを増しているという。今後どのように展開していくのだろうか。
「目標達成の技術」青木仁志
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目標達成に必要な考え方や心構えを語る。
著者は都内で繰り返しセミナーを開催しており、その内容の多くも含まれている。基本的には自身が元々もっていた考えに近い物だが、印象的だったのは人生において明確な目的を持つべきという点で、自分の人生にの目標についてもっと具体的にイメージしないといけないと思った。しかし、全体的には世の中には溢れ返っている自己啓発本とあまり変わらない印象を受けた。ベースとなっている「選択理論」の考え方自体は非常に好きなものではあるが、本として強い印象を残すほどではなかった。
【楽天ブックス】「目標達成の技術 」
「Indemnity Only」Sara Paretsky
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
有名銀行の幹部と名乗る男からその息子の恋人を探して欲しいという依頼を受ける。しかし、調査を始めたV.I. Warshwskiが最初に見つけたのはその息子の死体であった。
V.I. Warshwskiシリーズの第1弾。V.I. Warshwskiという名前から日本人の僕にはそれが男性だか女性だか判断できなかったのだが、女性である。
行方不明の若い女性の捜索という簡単な仕事のはずが、マフィアや巨大な組織犯罪と関わっていく事となる。シカゴを舞台としており、シカゴを本拠地とするメジャーリーグチームの動向など、アメリカ人の生活も伺える点が面白い。本書の事件はややありきたりではあるが今後どう物語が広がっていくのか、このシリーズをもう少し読んで善し悪しを判断してみたいと思った。
「断捨離 私らしい生き方のすすめ」川畑のぶこ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ものを捨てる事による人生への効用を語る。
断捨離について書いた本の2冊目であるが、本書はどちらかというとすでに断捨離を始めた人向けである。断捨離の方法だけでなく、それによってぶつかろうであろう障壁や、それによって変わる考え方にまで触れている点が、1回目に読んだ断捨離の本とは異なる。最後の章のタイトルとなっている「モノより経験を」はまさに僕自身が思っているだ。むしろそういう考えを持てずにモノに執着している人が読むべき本なのかもしれない。
【楽天ブックス】「断捨離 私らしい生き方のすすめ」
「月は怒らない」垣根涼介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
借金の清算を請け負う仕事をする梶原(かじわら)。大学生の弘樹(ひろき)、警察官の和田(わだ)。お互いに接点のない3人はいずれも市役所で働く三谷恭子(みたにきょうこ)という女性と不思議な関係を持つ。1人の女性と3人の男性の不思議な関係を描く物語。
物語は25歳の三谷恭子(みたにきょうこ)を中心とした、それぞれの男性との関係と、その発端となったできごとを描く。三谷恭子(みたにきょうこ)自身、特に美人でもなければ派手な服装をすることもなく、男性に誘いをかけることもない。それでも3人の男性は彼女に惹かれて、繰り返し合ってくれる事を求めるのである。彼女の持つその魅力は一体何なのか、また、その年齢の割に、地味で目立たないように生きようとする三谷恭子(みたにきょうこ)の目的は何なのか。それが物語の面白さとなっている。
やがて、三谷恭子(みたにきょうこ)がたびたびある公園に訪れてそこで短期記憶しか持つ事のできない男性と話すことがわかる。毎回初対面を装ってその男性に話しかける三谷恭子(みたにきょうこ)は人生に何を求めているのだろう。次第にその形が明らかになっていく。
誰もが「満たされたい」と思いながら、異性やモノや権力でその隙間を埋めようとするが、永遠に「満たされない」。人によってはそれを知りその努力すらすることをしない。人間の生きる意味とは一体なんなんだろうか。そんなことを考えさせる作品。
【楽天ブックス】「月は怒らない」
「断捨離アンになろう! モノを捨てれば福が来る」鈴木淳子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「断捨離」という言葉はすでに5年ほど前から聞かれるようになったが、本書はそのブームを作ったなかの1冊。モノを捨てることの効用を語る。
もともと僕自身モノに執着する方ではないが、ここ数年その傾向に一段と拍車がかかった気がする。海外でも「ミニマリスト」「ミニマリズム」という言葉で語られることだが、「断捨離」とは単純に「モノを捨てる」行為ではなくて、自分の周囲にあるモノ、人、時間などを、「本当に自分に必要か?」と改めて問いかける行為であり、その結果として、必要のないと判断したものを捨てることになるのである。
本書に書かれていることは、基本的に僕自身が元々持っていた考え方に似ていて特に目新しい考え方はなかったのだが、いくつか元々の考え方の助けになりそうな表現に出会えた。
【楽天ブックス】「断捨離アンになろう! モノを捨てれば福が来る」