オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ケースワーカーとして市役所に勤める聡美(さとみ)。受給者を訪問するという気が重い作業を行うなか、先輩社員が同じく受給者訪問中に殺されるという事件が起きる。
受給者の訪問をする聡美(さとみ)と同僚の小野寺(おのでら)は生活保護として受給したお金をギャンブルに使う人にいらだちを隠せない。そんななか、そんな受給者達の訪問によって、彼らの支えになろうと、仕事に誇りを持って取り組んでいた先輩社員の山川(やまかわ)が殺害されるのである。真実を知ろうと調査するうちに、聡美(さとみ)自信にも危険が及んでいくのだ。
生活保護という議論の多い領域を扱った物語なので、物語の流れとしてはそれほど予想を超える内容ではなかった。もう一捻りあっても良かったような気がする。個人的に今注目の作家だけにありふれた物語に終わってしまっている点が残念である。
【楽天ブックス】「パレートの誤算」
カテゴリー: ★3つ
「統計学入門」盛山和夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計学の基本的な部分を説明している。
学生時代に習った期待値や最小二乗法などの意味がより深く理解できた気がする。また、検定という考えについてもようやく少し分かってきた。しかし、やはり鉛筆と紙を用いて書かれている内容を繰り返し使用してみないと本当の理解には到達しないというのが身にしみてわかった気がする。読書時間ではなく勉強時間を別に設ける必要があるのだろう。
【楽天ブックス】「統計学入門」
「「学力」の経済学」中室牧子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の教育のあるべき姿について、データを元に説明していく。
例えば、「本を与えれば成績がよくなる」とか「ゲームをさせると成績が下がる」とか、世の中でよく言われることを科学的に説明しようと試みていく。その過程で、日本の教育がどれほど証拠もなしに、先入観によって構築されているかに気付かされるだろう。
また、著者はそれ以外にも教育システムの向上のために多くの内容に触れているが、なかでも印象的だったのは計る事のできない「非認知能力」つまり「やりぬく力」の重要性である。教育に関心のある多くの人が中学や高校での教育の重要だと思う一方で、本当に人生を変えるほど重要なのは、小学校に入るまでに培われた自らを律する「やりぬく力」だというのである。「自制心」とも呼ばれるこの力は、若い頃のしつけや部活などの活動を通じで培われていくものだそうだ。
目の前の定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには身長であるべきかもしれません。学力をわずかに上げるために、長い目でみて子どもたちを助けてくれるであろう「非認知能力」を培う貴重な機会を奪ってしまうことになりかねないからです。
また、後半で著者が語っている、教員免許の弊害についての考え方も新鮮で面白かった。教育に対して新たな考え方をもたらしてくれる一冊である。
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「JavaScript:The Good Parts」ダグラス・クロフォード
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ここ数年で一気に需要が高まっているJavaScript。しかしそれは多くのプログラマーを悩ませる仕様が詰まっている。JavaScriptの性質を知り尽くした著者が、JavaScriptで「良いパーツ」を作るための方法をまとめている。
若干僕のJavaScriptの知識レベルには早すぎたという印象もあり、理解できない箇所も多々あったが、いいJavaScriptを書くためにやったほうがいいことと、やらないほうがいいことはいくつか知る事ができたし、なによりも本書によって癖のあるJavaScriptという言語に魅力を感じてしまった。
おそらく本書によってJavaScriptという言語の不完全さを知って嫌いになる人もいるだろうが、僕のように逆にその深さに魅了されてしまう人もいるだろう。本書には、もう少し知識を貯えてきてからまた戻ってきたいと思った。
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「破門」黒川博行
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第151回直木賞受賞作品。
小さな建設コンサルタントを営む二宮(にのみや)は知り合いの暴力団の桑原(くわばら)によって暴力団同士の詐欺に巻き込まれていく。
二宮(にのみや)と桑原(くわばら)を中心に、関西圏を中心とした多くの暴力団と喧嘩、駆け引きを繰り返しながら、物事をなんとか丸く収めようと奔走する様子が描かれている。面白いのは二宮(にのみや)の微妙な立ち位置である。堅気でありながらもお金欲しさに桑原(くわばら)と関わり、諍いの渦中にどんどん引き込まれていくのだが、暴力に怯えながらもお金は欲しいため桑原(くわばら)にお金を要求していくのである。
二宮(にのみや)が飼っているインコや、従姉妹の悠紀(ゆうき)の存在が物語に彩りを添えている。
物語の全体の流れが特別印象的というわけではないが、二宮(にのみや)と(くわばら)の会話の独特のテンポが印象的だった。
【楽天ブックス】「破門」
「Under The Dome」Stephan King
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
メーン州にある町Chester’s Millをある日突然取り囲んだ巨大なドーム。生き物の出入りはできなくなり陸の孤島と化す。有限となった電気や食糧を求めて混乱がはじまる。
設定が変わっているが、ドラマ「Lost」などと多くの物語と同様に、秩序を保とうとするもの、権力を手に入れようとするもの、などを描いた物語である。ドームの発生によってChester’s Millは2つに別れる、一方は、政治家であり、自動車販売も手がけながら裏では麻薬の密売を行っていたBig Jimを中心とする人々である。彼らは麻薬の密売の事実が表沙汰になることを恐れ、ドームの混乱を利用して、その罪を人に着せようとする。
もう一方はアフガニスタンで兵士として勤めた経験を持つBarbie。Chester’s Millの外の人間であるため、何人かの人間ともめ事を起こした経験を持つが、その経験から、政府から孤立状態となったChester’s Millを率いる立場に任命されるが、それがさらに周囲との軋轢を生む事になる。
Chester’s Millのなかではそのような権力争いが進む中、外からは政府がなんとかしてドームを破壊しようとする。そもそもドームを生み出したのは一体誰なのんか、何なのか。次第に秩序のなくなっていくChester’s Millでそれぞれが生き、大切な物を守ろうとする。
状況としては変わっていて面白いが、ただ単に規模の大きなサスペンス物語という印象で、過去のキング作品にあるような深さや描写の巧さのようなものは感じられい点が残念だった。
「天空の犬」樋口明雄
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警察官の夏実(なつみ)は救助犬のメイとともに南アルプス山岳救助隊に参加することとなる。夏実(なつみ)とメイが仲間達と一緒に、人命救助に奔走する様子を描く。
序盤は少しずつ夏実(なつみ)が南アルプスの救助に慣れていく様子や、仲間と打ち解けていく様子が描かれる。興味深いのは、夏実(なつみ)が共感覚の持ち主ということ。つまり、夏実(なつみ)は人の感情を色としてみることができるのである。その能力によって夏実(なつみ)は救助犬メイと心を通わせることができるが、一方で、友人や同僚にはその能力を隠しているために生きづらさを感じるのだ。
同じ救助隊のメンバーも個性的な人で構成されている。同じ女性隊員で完璧主義者の静奈(せいな)は夏実(なつみ)の存在を好意的に受け入れようとしない、また、深町(ふかまち)は過去の出来事によってすでに辞める事を決めている。それでも全員で協力していくうちに人命救助を繰り返していくのである。そして、物語後半はある有名な政治家が山に登ることからいろいろな人を巻き込んだ大きな出来事へと発展していく。
「ドッグテールズ」という短編集が期待以上に良かったため、こちらの長編はもっと期待してしまった。期待値が高すぎたせいでややがっかりした部分もあるが、信頼し合った動物と人間の感動的な物語である。
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「スマートフォンのためのUIデザイン」池田拓司
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2013年に発行された本という事でiOS7のフラットデザインの流れは反映されてはいないがiOSアプリとAndroidアプリの基本的な違いや、アプリの様々な名称や呼び方の違いなどが網羅されている。特に新しい知識を与えてくれるわけではないが、UIについていくつかの気付きを与えてくれる。
本書だけでUIの十分な知識を得るということはないが、助けにはなるだろう。
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「本日は大安なり」辻村深月
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大安のその日、とある結婚式場では4組のカップルが結婚式を挙げようとしていた。それぞれの式がそれぞれの問題を抱えたまま行われようとしている。
4組のなかでもっとも印象的なのは、双子の姉妹の妹である妃美佳(きみか)の結婚式である。双子として生まれ、常に姉の鞠香(まりか)と比較されて育ってきたからこそとも思える想いが詰まっている。妃美佳(きみか)は同じ顔をした鞠香(まりか)に花嫁を変わってもらって、夫が本当に2人の違いに気付くかを試そうとするのである。
その他のカップルも、いろんな事情を抱えて結婚式にこぎつけているので、そこにはいろいろなドラマが溢れている。それでも最後は人間の温かさを感じられるだろう。辻村深月の作品のなかでははかなり爽やかな物語である
【楽天ブックス】「本日は大安なり」
「統計学が最強の学問である」西内啓
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の統計学の重要性を説く。
実際には19世紀の中程にはその重要性を認識されていたにも関わらず、それを実現するためのツールが整ったのは最近である。コンピューターやインターネットが発展したことによって、多くのデータの収集や分析が個人レベルでも可能になった今、統計学はもっとも先見性のある分野と言えるだろう。
一般的な数学教育を受けた人ならば、序盤の平均や中央値を利用してデータを解説する部分には特に新しさを感じないだろう。基本的な統計に関する考え方から入っているが、むしろ本書の興味深い点は、統計学をどうやって実際の方針の決定に使用するか、という統計学の応用のためのヒントが書かれている点だろう。
著者は言う。取得したデータの結果によって何をするかを決めないと、取得するべきデータの粒度が決まらないのだと。どんなデータもサンプル数を多くする事によって精度をあげることはできるが、その先の行動を決めなければ、どれほど高い精度のデータが必要なのかを決めることができずに、無駄に情報集めや分析の時間を消費する事になるのである。現在多くの企業がそうやって無駄にデータ分析にコストをかけているのだという。
本書で述べられているように、データ分析を行動を決めるための指針と考えると、「標準誤差」という考え方の重要性がわかってくる。残念ながら、本書に書かれているその計算式だけではその背後にある考え方を理解できなかったが、その重要性は十分に伝わってくる。
後半はかなり素人の僕には難しくなってしまったし、実際には紙と鉛筆で実際に計算しながらでないと理解できない物なのだろう。本書中で出てきた「回帰分析」「t検定」「標準誤差」などの新しい言葉はしっかり理解したいと思った。
【楽天ブックス】「統計学が最強の学問である」
「自覚 隠蔽捜査5.5」今野敏
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
しがらみや上下の階級意識の強い警察組織において、合理的に物事を解決しようとする大森署署長の竜崎伸也(りゅうざきしんや)の物語。
「隠蔽捜査5.5」という副題が小数点をつけているのは、本書が短編集という意味である。同じ警察組織の中の、竜崎(りゅうざき)の周辺の人々が、日々起きる事件や問題を対処していく様子を描く。一歩判断を間違えれば大きな問題になりかねない状況を、竜崎(りゅうざき)が解決していく様子が爽快である。
本書ではシリーズ全体を通じてたびたび登場する戸高(とだか)の活躍もいくつか見られる。彼は優れた捜査官でありながらその勤務態度ゆえに問題視されているのであるが、仲間からの信頼は厚い。竜崎(りゅうざき)と戸高(とだか)の不思議な信頼関係は本シリーズの魅力の一つでもある。
このシリーズを読むといつも思う事であるが、自分自身も人間として竜崎(りゅうざき)のように、常に冷静で、平等かつ合理的に行動したいと思わせてくれる。
【楽天ブックス】「自覚 隠蔽捜査5.5」
「盗まれた顔」羽田圭介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人の多い町に出て、記憶した顔と一致する顔がないかを探し続ける見当たり捜査員である、白戸(しらと)は同僚の安藤(あんどう)、谷(たに)とともに毎日犯罪者の顔を探す事を仕事とする。
テレビ番組などで聞いたことのある見当たり捜査であるが、このように小説となってその捜査を見るとその厳しさに驚くだろう。通常でも1ヶ月に1人か2人の犯罪者を見つけられる程度なのだと言う。つまり1ヶ月のうちの大部分は、ただ町に出てなんの成果も挙げられない日々なのである。
実際、本書では白戸(しらと)の同僚の谷(たに)が何ヶ月も成果を挙げられずに憔悴する様子が描かれている。また、逆に白戸(しらと)の、すでに逮捕した犯罪者の顔が忘れられずに苦しむ様子も興味深い。実際の見当たり捜査員にしかわからないであろう悩みや葛藤が描かれている点が面白い。
さて、ある日の捜査の際に、白戸(しらと)が既に死んだと思っていた男の顔を見かけてから物語は大きく動き出す。白戸(しらと)は大きな陰謀に挑んでいく事となるのである。
警察物語としては、組織内の陰謀などはもはや新しくもないが、やはり見当たり捜査員という、見ることのできない人生を見せてくれるという点で興味深い。本書を書くために多くの調査をしたと思われる著者羽田圭介(はだけいすけ)という著者にも好感が持てたので、別の作品も読んでみたいと思った。
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「光る牙」吉村龍一
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北海道日高山脈で熊によって一人のカメラマンが犠牲となった。森林保護官を勤める樋口孝也(ひぐちたかや)は上司の山崎(やまざき)とともに熊を追う。
本書では、樋口孝也(ひぐちたかや)とその上司の山崎(やまざき)が冬眠できずに人の味を覚えたヒグマを退治するために奔走するのだが、その過程で見えてくるのはヒグマの恐ろしさだけでなく、それが利己的な人間によって生じた事であり、自然界の復讐のように描かれている点が印象的である。
さて、そんな凶暴な熊を追うなかで、樋口孝也(ひぐちたかや)は自らの不甲斐なさと向き合い、また、尊敬する上司である山崎(やまざき)に少しでも近づくために成長していく。物語の展開としてはそれほど新しくはないが、それをどう描くか、という部分がこのような物語では重要なのだろう。ただ単に動物によってパニックに陥るだけでなく、何かを読者に訴えかける物語であった欲しいものだ。
動物による人間への復讐をテーマにした物語としては「シャトゥーン ヒグマの森」や「約束の地」などが思い浮かぶ。比較して読んでみるのも面白いかもしれない。
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「衛星を使い、私に」結城充孝
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自動車警邏隊の女性警官クロハの日々を描く短編集。
本書は「プラ・バロック」「エコイック・メモリ」に続く第3弾であるが、時間としてはそれ以前ということで、クロハがまだ未熟な時代を描いている。短編集という事で6つの物語に別れているが、どれも読み応えがあり、また根底には一つの共通した問題があり、全体として一つの物語としても捉える事ができる。
さて、このシリーズでいつも印象的なのは、著者が現代のIT技術をうまく物語に組み込む点である。本書でも撮影された画像の位置情報や、交通事故のシミュレーションが捜査に大きく影響を与えるため、新しい知識も得る事ができる。
個人的には第二編の「二つからなる銃弾」が印象的である。射撃の優れた腕を持つクロハが射撃競技に出場する様子を描く。あまり見る機会のない射撃という競技の様子を感じる事ができるだろう。
引き続き本シリーズの続編を楽しみにしたい。
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「手足のないチアリーダー」佐野有美
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生まれつき手足のなかった著者、そんな著者が高校を卒業するまでを語る。
手足のない子供が生まれてきた時の両親の驚きや、障害を持った人の周囲で生きる人間の戸惑いが見えてくる。
印象的だったのは著者が小学校高学年だったときの話、障害にも関わらずその明るい性格から人気者になり、やがてそれが傲慢に変わってしまうという話。障害者とはいえ、友人の気持ちを考えずに行動すれば、結果として友人から孤立してしまうのである。僕らは障害者がイジメを受ける、と聞くとその障害が原因かと思うが、本書の場合は、むしろその障害が明るくクラスの人気者にして、それが結果として傲慢な態度を生み、その結果孤立したというのだから驚きである。
また、周囲の人々の温かさも本書を通じて感じることができる。障害を持った人に取っては、哀れみを受けるよりも、普通の人間として厳しく、優しく接してもらえる事が何よりも嬉しいのだということを改めて知る事が出来た。
【楽天ブックス】「手足のないチアリーダー」
「Among the Mad」Jacqueline Winspear
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
クリスマスの夜、足の不自由な一人の男性が、人通りの多い通りで爆弾を使って自殺した。同じ頃、脅迫の手紙が政府のもとに届き、Maisieは協力を求められる。
脅迫の手紙ではしきりに、国のために戦争に行って、大きな障害を負って働けなくなってしまった人々の救済を求める。実際、第一次大戦から数年経ったこの時代、多くの人が戦争の被害を抱えていたのである。Maisieはそんな犯人の正体を突き止めるために、多くの人と言葉を交わすなかで、自らの恵まれている状況を知るのである。
そんななか、部下のBobbyの妻Doreenは最愛の娘を失ってから行動に支障を来たし、入院することとなる。父や友人緒Prisilaなど、周囲の人と支え合いながら混沌とした時代を生きていく様子が見て取れる。
本書は、Masieが警察と協力して捜査にあたる初めての作品ではないだろうか。Misieは捜査の協力のために、意味がないと思いながらも指示された場所を捜査したりもするのである。しかし、やがてMasieの見つけた手がかりから、戦争中に毒ガスを扱った一人の男性が容疑者として浮かび上がってくるのである。
本書の舞台はイギリスであるが、世界のどこでも戦争が不幸しか生まないことを教えてくれる。
「ぼくはお金を使わずに生きることにした」マーク・ボイル
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金の存在の矛盾と世の中に存在する物の大切さを感じ、著者は1年間、お金を使わずに過ごす事を決意する。
無料でトレーラーハウスを手に入れ、住む場所も確保した著者だが、1年を通じていろいろな困難に出会う。何より大変なのが移動である。自転車のパンクに悩まされたり、ヒッチハイクを繰り返して長い時間をかけて移動する様子から、現代の交通の便利さを思い知ると同時に、それを無意識に受け入れていることに疑問を感じるだろう。
著者は現代社会の問題点をこのように指摘する。お金を使う事によって欲しい物は手に入る。それはとても便利で現代の生活には欠かせないシステムではあるが、物を作っている生活者やそれを育む自然からどんどん僕らを遠ざけているのだと。
本書の多くはお金を使わないことを自らに課した著者が四苦八苦する様子であるが、その合間に綴られている現代の社会の問題点はどれも心に響くものばかりだ。
また、無償で他人に親切するからこそ、自分も困ったときに誰かに親切にしてもらえるということを、自らの行動で示し、人と人との繋がりの重要性も語っている。
本書を読み終わってから、スーパーでレジ袋をもらうのを躊躇(ためら)ったり、お弁当屋さんで割り箸を付けてもらうかを一瞬悩むようになったのだから、著者の行動は人々に少なからず影響を与えているのだろう。生き方や社会のあり方について考えさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「ぼくはお金を使わずに生きることにした」
「クリエイティブ・シンキング入門」マイケル・マルハコ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
物事をクリエイティブに考える方法について語っている。
物事の見方や、考え方を変えれば今までとは異なったアイデアが生まれるという例を多く載せている。僕にとっては、正直あまり印象に残らなかったが、あまりアイデアを出すのが得意ではないと思っている人が読んだら、ひょっとしたら何か刺激になる内容があるかもしれない。
個人的には、本書のなかにいくつか出てきた絵が印象的だった。誰もが知っている有名な、見方によっておばあさんに見えたり、若い女性の後ろ顔に見えたりする絵や、ウサギに見えたり鳥に見えたりする絵。また、「Good」と「Evil」という相反する意味を同時に含んでいる絵など、本の内容よりも個人的には印象的だった。
【楽天ブックス】「クリエイティブ・シンキング入門」
「ちょっと今から仕事やめてくる」北川恵海
オススメ度 ★★★★☆ 3/5
ブラック企業で働き疲弊した隆(たかし)だったが、あるとき小学校時代の友人「ヤマモト」と出会って変わっていく。
昨今の「ブラック企業」という言葉の認知度や、働き過ぎと言われる日本の現状を考えると他人事とは思えない。本書で、隆(たかし)と「ヤマモト」の生き方を見る中で、人生のおいて本当に大切なものは何なのかを改めて考えさせれくれるだろう。終盤で隆(たかし)が、働きすぎに疲れて自殺してしまった人間の母親と放すシーンが印象的である。
この本を読んで欲しい人をたくさん知っている。放り出してもいい。逃げてもいい。もっと簡単にそう言えるようになって欲しいと思った。
【楽天ブックス】「ちょっと今から仕事やめてくる」
「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」ゲーリー・クライン
オススメ度 ★★★★☆ 3/5
優れた意思決定に関して調べ、その内容をまとめている。
本書では著者とその仲間達が多くの意思決定の現場に実際に行ってその場を観察するとともに、すぐれた意思決定者からも意見を求め、意思決定の法則をまとめている。
救急や戦場で行われた優れた意思決定は、その意思決定者さえも「直感」として、その決定の理由を説明できないことが多い。本書ではそんな直感によってされた意思決定がどのようにして導き出されたのかを探っていく、そんなエピソードはどれも興味深いと同時に、短時間で行われた本当にすぐれた意思決定のための技術は、経験によってしか得られない、と思わせる。
後半は意思決定を分析する話が多くて若干退屈だったが、困難にぶつかったときに、どのように考えればいいか、という参考にはなるだろう
【楽天ブックス】「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」