「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」松浦晋也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人を宇宙に運ぶという輝かしい使命よりも、むしろコロンビア空中分解事故、チャレンジャー爆発事故で印象的なスペースシャトル。そもそもスペースシャトルという計画はどのような目的でどのようにして始まったのか知りたくて本書を手に取った。
面白いのはスペースシャトルを思い描く時誰もが最初に思い描くであろうあの大きな翼は、実はほとんど意味がないということ。言われてみれば確かに、宇宙は無重力空間だからもちろん翼による揚力は発生するはずもない。地球に帰還するときに少しだけ役に立つのだという。むしろその翼がスペースシャトルを設計する上で一つの大きな足かせになっているのだという。人を運ぶのに必要な設備と、物を運ぶのに必要な設備は大きく異なり、その2つを同時に詰め込もうとしたために困難になってしまったのだ。
ちなみに、報道でスペースシャトルのことを聞いていると、チャレンジャーやコロンビアなどいろんな名前があるけど見た目的な区別がつかないと思っていたが、どうやら機体は同じで名前だけが異なるということ。
本書を読んでスペースシャトルは、そもそもの設計として大きく間違っていたことや、政府や地方経済に大きく影響を与えるほどの巨大プロジェクトは、大きな政治的圧力がかかるゆえになかなかうまく進まないことがわかった。しかし、月面着陸を果たしたアポロ11号や奇跡の生還で知られるアポロ13号に代表されるアポロ計画はどのようにすすめられたのだろう。次はアポロ計画について知りたいと思った。
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「The Girl Who Takes an Eye for an Eye」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
刑務所に服役中のSalanderに会いに行った際、BlomkvistはLeo Mannheimerという36歳の男性について調べるように言われる。Blomkvistが調べたところ、ある日を境にLeo Mannheimerが左利きから右利きになったという。

Stieg Larssonの「The Girl with the Dragon Tattoo」に始まる物語の5作目。著者がDavid Lagercrantzへ変わってから2作目にあたる。前作「The Girl in the Spider’s Web」で法律に反する行為を行なったSalanderが刑務所で服役している状態で本作品は始まる。

その刑務所のなかでさえ、すべての権力を掌握し、艦種でさえ逆らうことのできない囚人Benitoや同じ刑務所にいるバングラデシュ出身の美しい女性Fariaの存在など、最初から問題山積みであるが、物語は、助けを申し出たBlomkvistに対してSalanderがLeo Mannheimerという男性の名を挙げたことで始まるのだ。

そして、いろんな情報源を頼りに少しずつLeo Mannheimerの真実に迫るうちに、Salanderの過去と大きくつながっていることが明らかになっていくのである。

シリーズ全体を通じて言えることだが今回も、普段なじみのないストックホルム周辺の地名が多く出てきて、遠い異国の地の人生を感じることができる。そして、人当たりは悪いながらも、正義感に突き進むSalanderの冷静な行動は爽快である。ただ、残念ながら、前作までにはあった一日中読んでいたくなるような勢いが今回は感じられなかった。著者が変わったせいなのか、物語の展開ゆえにそうなったのかはなんとも判断できない。

また、物語の過程で、「人の人格を決めるのは、才能なのか環境なのか」という研究結果に触れている部分があり、過去何度も議論が重ねられたこの問題について改めて考えさせられた。また、過去関連する多くの実験が試みられたこともわかり、その実験の内容や結果をもっと知りたくなった。
シリーズとしてはまだまだ続きそうなので、続巻が出る限り読み続けたいと思った。

「LIFE SHIFT」リンダ・グラッドソン/アンドリュー・スコット

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の寿命は過去から現在に至るまで伸び続け、現在もその勢いは続いている。2007年生まれの先進国の人の50%は107歳まで生きるのだという。そんな100歳まで生きることが普通となっていくなかで、人はどのように生きるべきかを語る。

何よりも100歳まで生きるということは65歳で引退するという選択をすると、その先35年もの引退期間を生きることとなり、必要な貯金の額も想定と大きくことなるという。なによりも、学生として勉強する時代と、社会にでて働く時代と、引退後の生活という3つの人生のステージの生き方が今後大きく変わっていくという。

個人として考えていかなければいけないのは、20代前半までで身につけた技術や知識だけで、その先100歳までの人生のための十分なお金を稼ぐのは難しいということ。学生を終えて社会に出た後も、仕事をする時期と、学んで新たな知識を身につける時期を送ったり、働きながら新たな知識を身につける必要がある。本書ではそんな寿命の変化が各世代に生きる人々にどのような影響を与えるのかを、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンという架空の人物で説明している。

仕事や学びだけでなく、結婚やパートナーとの関係も変わってくるという。人生が長くなれば女性の出産による仕事から離れる期間もそれほど大きな問題ではなくなるために、女性と男性の関係が対等に近づいていくという。女性の出産期間にパートナーである夫がその生活を支えるように、男性の学びの期間に、そのパートナーの女性が生活費を補うような、それぞれの生活を経済的に支えあうようなパートナー関係が多くなるという。

個人的には僕自身が働くIT系の会社では多くの人がすでに考えている内容であるため、それほど大きな驚きはなかった。むしろ転職等をせずに1つの会社でずっと働き続けている人にこそ役立つのかもしれない。そんな人は本書を読んで、これからの時代の変化に対応できるような柔軟性を育む準備をしたほうがいいのではないだろうか。65歳まで1つの会社で生きてしまうと、その後他の生き方や働き方をするのはかなり難しくなってしまうだろう。
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「まんがでわかる7つの習慣」小山鹿梨子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
思想家スティーブン・R・コヴィーの7つの習慣をまんがで説明している。どれも社会に出て20年近く経っている人間にとっては当たり前なことばかりではあるが、このような考えかたに繰り返し触れる事にはそれなりに意味があるのだろう。
本書で描いている7つの習慣は以下の7つである。

主体的である
終わりを思い描くことから始める
最優先事項を優先する
WinWinを考える
まず理解に徹し、そして理解される
シナジーを創り出す
刃を研ぐ

このなかで改めて大事にしたいと思ったのは、5番目の「まず理解に徹し、そして理解される」である。人の話を聞く時、ついうっかりと自分の立場に置き換えてその良し悪しを判断してしまいがちだが、実際にはその人の能力や容姿や年齢なども含めて、相手の気持ちに立とうとすると、いろいろ違った部分が見えてくるもの。もちろん、そこまで人を深く理解するためには、それなりに時間と真剣に聞く姿勢が必要ではあるが、表面的に理解したふりをしてアドバイスしても決して聞き入れられることはないだろう。
まんがなので2時間ほどで一気に読むことができたが、どちらかというとまだどのように生きていいか見えていない、20代の社会人向けの内容のような印象である。
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「It」Stephen King

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

アメリカのメーン州のデリーという町で何年かごとに起きる子供を連続して殺害する事件、1958年当時11歳だったBill,Ben,Eddie,Richie,Beverly,Mike,StanはItと対決した。1985年、また「It」が動き出し、デリーに残ったMikeの呼びかけによって再び彼らはデリーに集まることとなった。
Stephen Kingの名作中の名作ということで、いつか読みたかった一冊。英語で1370ページという大作で、言い回しもスラングなどが多く、さらに物語中にはアメリカの文化や娯楽に絡めたネタがたくさん散りばめられており、物語を読み進めながら当時のアメリカの子供達の流行の映画や音楽やテレビ番組が見えてくる点が面白い。
物語は11歳のときのItとの対決の詳細を忘れてしまった彼らが、現在のItとの遭遇や思い出話によって少しずつ当時の対決の様子、当時の恐怖を思い出していく。そんな当時と現代を交互に行き来しながら物語は展開していく。
個人的に好きなのは、11歳当時の彼らが川でダムを作ったり秘密基地を作ってそこで過ごす場面だろう。幼い頃を思い出しただけでなく、お金がなくても何か楽しい事を見つけて楽しむという子供時代は、どの国でも共通なのだと感じた。
そして彼らは少しずつ11歳児の記憶を鮮明にし、再び動き出したItとの対決に向かっていく。読み終わってみれば同じことを訴えるのに、これほどまでのページ数を必要とするのかという疑問はあるし、読み終わるまでに長く時間がかかりすぎて物語に入り込みきれなかったような思いもあり、物語の面白さよりも、読み終わった事による達成感の方を感じた。

「My Brilliant Friend」Elena Ferrante

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イタリアの田舎町で育ったLilaとElenaの物語。
Elenaというポーターの娘が、Lilaという名の靴屋の娘との出会いから、十代後半までの2人の様子を描く。最初はお互いに会話もしなかったLilaとElenaだが、学ぶことを通じて少しずつお互いを認め合っていく。女性の友情物語としては新しいのではないだろうか。
それでも1950年代のイタリアでは、生活の役に立たない学業を続けることは女性には難しく、やがてLilaは家業の靴屋に兄のRinoとともに入れ込んでいく。その一方でElenaは多くの支援を受け学業を続けていくのだが、一緒に学ぶ相手としてLilaがいないことに寂しさを感じるのである。
10代の女性らしく、恋愛や嫉妬などの様子も多く描かれているが、物語の後半に近づくにつれて、2人の離れようのない友情が見えてくる点が面白い。
続編につづくためかなり中途半端なとこで本書は終わってしまうが、イタリアを舞台にした物語に触れる機会はなかなか少ないだけに、書かれていることに新鮮さを感じる。

「たった1日で声まで良くなる話し方の教科書」魚住りえ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
滑舌の悪さを治したくて本書を手に取った。
本書を読んでわかったのは、滑舌の悪さは直せるということ、そして、腹式呼吸がいいということである。どうやらそれぞれの人間には声の響きやすい高さというのがあるようで、声をしっかり出すためには自分にとって適切な声の高さを理解することが必要なのだそうだ。
シャドウィングという英語の練習方法はよくやっているにもかかわらず、英語よりも何倍も日常生活において使うだろう日本語では一切練習をしないということがおかしな話だと思ってしまった。
とりあえず腹式呼吸を意識しながら話すことを習慣にしてみたいと思った。
【楽天ブックス】「たった1日で声まで良くなる話し方の教科書」

「ローマ人の物語 危機と克服」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悪名高き皇帝ネロの後のローマ帝国の物語で、紀元69年から98年までを描いている。
ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミニティアヌスと皇帝が次々と変わる時代だが、ローマ帝国自体は比較的安定していたようである。首相が次々と変わる日本のように国民がどこか政治に無関心な様子である。それは見方を変えると、すでに国自体がそう簡単に不安定な状態にならないという確信が国民のなかにあったのだろう。
次々変わる皇帝のその政策やふるまいをここまで連続して見せられると、どのような人間が信用を失いやすく、どのような人間が長く信頼を勝ち取れるかという傾向が見えてくるようだ。「歴史から学ぶことは多い」と言葉としては多くの人が知っていて、使ったりもするが、ローマ帝国の皇帝たちから学べることは、企業の経営者たちにも共通している気がする。まだローマ帝国の歴史なかばではあるが、結局カエサルとオクタビアヌスに勝る皇帝はいないのではないかと思えてくる。
本書のもう一つの個人的な見所はポンペイで有名なヴォスヴィオ火山の噴火である。当時ヴォスヴィオ火山の麓の町で生きていた男性がタキトゥスという当時の作家に送った手紙の全訳はそれが確かに現実に存在した悲劇であることを伝えてくれる。
トライアヌスが皇帝になったことで終わる本書。ローマ帝国はこの後「五賢帝時代」と呼ばれる時代に入っていくのである。
【楽天ブックス】「ローマ人の物語 危機と克服(上)」「ローマ人の物語 危機と克服(中)」「ローマ人の物語 危機と克服(下)」

「自律神経が整う時間コントロール術」小林弘幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自律神経を整えるための生活方法を書いている。
正直僕自身も人生の効率化はかなり強く意識していて、本書に書いてある多くのこと、例えばミニマリズムや早起きや整理整頓、毎日の同じことを繰り返す、などはすでに生活に取り入れている。そんな僕でもいくつか現在できてなくて取り入れたいなと思えることがいくつかあった。

カバンの整理
朝はメールを見ない
スマホの通知機能はオフ
夕食は就寝の3時間前までに
記念日を大切に

どれも説明するまでもないかもしれないが、なかなかわかっていてもできないものだ。また、著者がロンドンの病院で働いていたときに出会った尊敬できる人の考え方が印象に残った。

I don’t believe anybody.

一見冷たく寂しく聞こえる言葉だが、人のせいにしないで常に冷静にいるために、また人の励ましや行為に心から感謝できる心構えなのだと、語っている。僕自身の普段の心構えと似ている部分もあるが、人へのアドバイスとして心に留めておきたいと思った。
全体的にはものすごい特別な内容が書かれているわけではない。試行錯誤をして生きてきた人がある程度の年齢に達すれば誰しもそれなりに独自の生き方や習慣を身につけており、そんななかの1人がそれを本にしてシェアしてくれたという印象である。もちろん上に書いたようにそのなかからも得られるものはあるが特別、知人にお勧めするほどの内容ではない。
【楽天ブックス】「自律神経が整う時間コントロール術」

「「引きずらない」人の習慣 怒り、悲しみ、不安のワナにハマらない」西多昌規

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生において、怒りや悲しみを引きずるのは悪い事ではないが、早く立ち直って前向きに冷静に生きることができれば人生はきっと良くなるはず。僕自身、どちらかというとまさに「引きずらない人」なのだが、「引きずる人」に今以上にいいアドバイスを与えられたらと考え、本書を手に取った。
気になったのは次の項目。

引きずる人は興味を持てるものが少ない、引きずらない人は好奇心が強い
引きずる人は白黒二択で考える、引きずらない人はグレーでも納得できる
引きずる人はまず言い訳をする、引きずらない人はまず素直に謝る
いい汗をかくことは、メンタルにもプラスの効果がある

どれも思い当たることばかり、引きずるか引きずらないかという性格と直接関連性があるとは思っていなかったが、どれも「引きずらない」自分自身に当てはまることばかり。周囲を見渡しても「引きずらない」人は往々にして、多趣味で忙しく、運動をしていることが多いように感じる。
前半は日常的な出来事に対して「引きずらない」ための方法を書いているが、後半では、身近な人の死や、失恋など、引きずらないわけにはいかないような大きな悲しみに対する方法としても触れている。僕自身それほど大きな悲しみにはまだ出会っていないがぜひ次のことはぜひ覚えておきたいと思った。

自分と同じ経験をした人を探す

思ったのは、こういう本を読む人も大部分は「引きずらない人」なのではないかということ。
【楽天ブックス】「「引きずらない」人の習慣 怒り、悲しみ、不安のワナにハマらない」

「Justin Bieber: First Step 2 Forever: My Story」Justin Bieber

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

ジャスティンビーバーのことは正直、その名前と、YouTubeから火が点いて人気が出たということしか知らなかったが、若くても違う国の話でも、違う分野の話でも、サクセスストーリーのなかには学ぶ部分があり、本書も目についたのは偶然だが、何か学ぶ部分があるのではないかと思って手に取った。
やはりジャスティンが音楽に興味を抱いたときに、周囲の人間が誰も止めずにむしろサポートしたことが、子育てに関心のある僕にとっては印象的だった。モノをドラム代わりにスティックでたたいて壊すジャスティンをきっと家族や周囲の人間は暖かく見守ったのだろう。同じようにジャスティン自身も家族やファンの大切さを何度も繰り返しているのが素敵だった。このような本を読むといつも感じることだが、成功している人ほど周囲の人間のありがたみをしっかり認識しているという点は、見習うべきことなのだろう。
その若さゆえに、さすがにアラフォーの僕の心に響くような言葉は多くはなかったが、カナダという遠い地の一つの素敵な家族の形を垣間見ることができたきがする。もちろん、本書を読んでから、いろんなジャスティンの音楽をYouTubeで検索してみてみたし、ジャスティンが本書の中で触れている、ジャスティンの憧れのアーティストたちにも改めて興味を持った。YouTubeで一度ずつチェックして自分の視野の範囲を音楽の範囲にも広げていきたいと思った。

「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」橋本幸士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数学関連の書籍というとだいたい途中からついていけなくなるもの。それでも部分的にで新しい考え方に触れられたり、新しい方面に好奇心をかきたてることができればいいと思って本書も読み始めた。
超ひも理論とはなんだろう。一時期ポアンカレ予想を理解しようとした時も似たような話が出てきたが、どうやらこの話はそれとは別物で、どうやら次元の話のようだ。
僕の理解した範囲で説明すると、陽子は3つのクオークから成り立ち、そのクオークを説明するのに異次元の存在を考えたほうが都合いいということなのだとか。そして超ひも理論はその次元の存在を根底から覆すものなのだそうで、本書はそこに至るまでを高校生にもわかるように説明している。
個人的には、高次元の存在が低次元の世界に存在したときには、消えることが可能という考え方はすごく印象に残ったが、納得するほど理解できたとはとても言えないので、いくつか気になる単語や参考文献を残しておいて今後の読書につなげたい。
本書はタイトルからもわかるように、物理学者のパパが娘に超ひも理論を少しずつ説明していくという体裁をとっているが、パパが「娘に仕事を説明できることができて幸せだった。」と書いている点が印象的だった。やはり父親は、自分が人生で大きな時間を費やす分野を娘に理解してほしいんだろうなと感じた。

新語
クオーク
グルーオン
ファインマン図
マルダセナ予想
ヤンミルズ理論

関連書籍
「大栗先生の超弦理論入門」

【楽天ブックス】「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」

「暗幕のゲルニカ」原田マハ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イラクへの武力行使を発表された国連安保理ロビーにあるゲルニカには暗幕がかけられていた。戦争の悲惨さを訴えるゲルニカに武力行使を発表する場で暗幕をかけた理由が何なのか。ピカソに人生をかけたMomaのキュレーター八神瑤子(やがみようこ)はそんなピカソ騒動に巻き込まれていく。

まず自分の無知さを知ったのが、ピカソが作成したゲルニカは、絵画の他に3つのタペストリーがあり、その1つがニューヨークの国際連合本部にあるのだという。本書はそんな「もう一つのゲルニカ」と、ピカソ自身がゲルニカを描く様子とそのときの世界の情勢を描いている。

本書は2001年の同時多発テロ直後の現代と、1937年のゲルニカ爆撃時のピカソとその周囲の人々を交互に描いている。1937年の場面ではパリ博覧会のための絵画を依頼されたピカソが、描く絵画の題材に悩む様子からゲルニカができるまで、そしてゲルニカがアメリカに渡るまでを描いており、現代の場面では同時多発テロからアメリカのイラク侵攻を描いている。

ゲルニカがゲルニカという町で起きた惨劇の様子を描いているということは知っていたが、その惨劇がどのような状況のもとで起こったのかは本書を読むまで漠然としか知らなかった。本書によって、ヒトラー、ムッソリーニ、フランコの独裁政治という歴史とあわせてゲルニカを理解する事ができた。

また、ゲルニカという絵画が公開当初から大きな物議を引き起こし、混乱する世界状況の中で秘密裏にアメリカに渡ったというのも今回始めて知った事実である。

1937年を場面としたゲルニカとピカソにまつわる物語はとても印象的だったが、現代の物語の描き方は若干安っぽい印象を受けた。必ずしも現代と絡めて物語を構成しなくてもよかったのはないだろうか。一つの有名な絵画を生み出すまでの画家の苦悩や当時の状況を描くだけでも十分魅力的な物語になるのではないかと感じた。
【楽天ブックス】「暗幕のゲルニカ」

「星野リゾートの教科書 サービスと利益両立の法則」中沢康彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

星野社長がどれほど教科書を重視しているかを語っている。
古い旅館を再生する際に、星野社長がどれほど、過去に書かれた教科書となる本を重視してきたかを描いている。個々の再生エピソードも含まれているが、基本的には本に書かれた内容をどのようにしっかりと実践してきたかである。
印象的だったのは、本で読んだ内容を中途半端に実践するのではなく、しっかり書かれた通りに実践することが大切、という部分である。賛否両論あるかもしれないが、確かに部分的にだけ取り入れて満足してしまうことも往々にあるだろう。
内容はそれほど印書的なものではなかったが、これまで星野社長が読んで実際に役立った多くの本を紹介している。今後の読書の幅を広げるという意味では意義のある内容である。ぜひ読みたいと思った本を挙げておく。

「イノベーターの条件」 ピーター・F・ドラッガー
「エクセレント・カンパニー」
「柔らかい心で生きる」矢代静一
「1分間エンパワーメント」
「1分間顧客サービス」
「サービス・リーダーシプトは何か」ベッツィ・サンダース
「顧客ロイヤルティの時代」内田和成、嶋口充輝
「経験価値マーケティング」バーンド・H・シュミット
「ブランディング22の法則」アル・ライズ、ローラ・ライズ
「ニューポジショニングの法則」
「ブランド・エクイティ戦略」デービッド・A・アーカー
「ONE to ONEマーケティング」
「競争の戦略」マイケル・E・ポーター
「The Myth of Excellence」Fred Crawford, Ryan Mathews
「ストラテジック・マインド」大前研一
「戦略サファリ」ヘンリー・ミンツバーグ

【楽天ブックス】「星野リゾートの教科書 サービスと利益両立の法則」

「サラリ-マンでも勝てる!年利400%「スイングトレ-ド」術」大橋幸司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スイングトレードで年利400%を稼ぐ著者が、その手法を語る。
ここ数年の目標は、給料以外の収入を少しずつ増やしていくことである。そのうちの一つが株式投資を含む資産運用で、その手法の一つとして本書を手に取った。
序盤はスイングトレードを、デイトレード等と比較してどのようなメリットがあるのかを説明し、同様にテクニカル分析とファンダメンタル分析を比較してそれぞれのメリットデメリットを語っている。もちろんタイトルが示すように本書はテクニカル分析のスイングトレードを推しており、序盤は、すでにスイングトレードをメインに行っている人にとってはそれほど新しい情報はないかもしれない。
むしろ著者の手法について触れている中盤にいくつか自分の取引にも取り入れたいと思える内容があった。それは本書の中で「Uターン注文」として書かれている注文方である。すでに10年以上前に書かれた書籍なので、おそらく「Uターン注文」と同様の機能は現在多くの証券会社で取り入れているのではないだろうか。
この一冊でスイングトレードがうまくいくとは思わないが、スイングトレードを勉強している人が読む本の中の一冊として含めておいても損にはならないだろう。
【楽天ブックス】「サラリ-マンでも勝てる!年利400%「スイングトレ-ド」術」

「The Trapped Girl」Robert Dugoni

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
湖の底で身元不明の女性が見つかった。Tracyは事件の捜査に向かう。
通常の事件解決の物語に見えたが、一人の引っ込み思案な読書女性の物語が並行して進む。その女性はやがて男性と出会い結婚して幸せな生活を築き始める。この女性がどのように事件と関係するのか、そして湖の底で見つかった女性がこの女性なのかを考えながら読み進めることになるだろう。
物語は事件解決だけの様子でなく、Tracyと恋人のDanの様子も描いている。どちらも40歳を過ぎており一度結婚を経験しているカップルということで、今後の展開は事件解決と同じぐらい気になる部分である。
残念ながら第1作目の「My Sister’s Grave」や第3作目の「The Clearing」ほど印象的な展開ではなかった。シリーズ全体として楽しむためには本書も読まなければならないが、もしTracyシリーズを読んだのが本書が初めてなのであれば上に挙げた2作品を読んだ上で判断してほしい。

「鉄道員」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
もう10年以上も前に映画になった作品で、一度読んでみたいと思いながらようやく今回手に取った。
映画になった印象から、長くしっかりとした物語という印象を持っていたが、実際には本書は表題作である「鉄道員」を含む8つの短編からなる短編集である。
いずれも、少し不思議な奇跡を描いているように感じる。残念ながらそれほど強く印象に残ったわけではないが、どの物語も30代、40代もしくはそれ以上の人生のもっとも華やかなときを過ぎた人物を中心に描いており、それぞれの物語のなかでそれぞれの境遇で生きるその人物の心のうちを読み進める中で、読者の心になにか残すものがあるのではないだろうか。
誰しも人生思った通りには進まないけれど、心の持ちようによっては幸せと思える部分もあり、楽しむことができるのだと、感じられるのではないだろうか。そういう意味では、10代20代ではなく、もっと年上の人に向けられた本のように感じた。
【楽天ブックス】「鉄道員」

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4人の銀行強盗を描いた物語。
物語の中心となる4人の銀行強盗は、演説が得意な響野(きょうの)、体内に正確な時計を持つ雪子(ゆきこ)、スリの久遠(くおん)、人の嘘を見破るのが得意な成瀬(なるせ)と個性的なメンバーで構成されている。いつものように銀行の襲撃を終えたところで別の窃盗団と鉢合わせたところから物語は動き出す。
大人がただ単に走り回るだけでなく、雪子(ゆきこ)の息子である慎一(しんいち)の友人との問題などが盛り込まれている点が面白い。それ以外の大部分は予想通り展開されてとくに驚く部分はなかった。
他の伊坂幸太郎作品に比べると読みやすく、理解のできない話や登場人物もいないため、力を抜いて読むことができた。ただ、複数の個性的で特技を持った人物がチームを組んで大きなことをする、というのはよく使われる手法なので特に新しさは感じず、正直この作品がなぜそこまで有名かは理解できなかった。この辺りは僕には理解できない良さがあるのかもしれない。
【楽天ブックス】「陽気なギャングが地球を回す」

「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」山本純子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
KickstarterやCampfireなど、クラウドファンディングという言葉が世に広まってすでに5年ほど経つが、僕自身クラウドファンディングによって資金を調達したことも、投資したこともない。何か大きなことをやろうと思って資金が足りないとなったときに、クラウドファンディングというものをどのように利用できるのか知りたくて今回本書にたどり着いた。
序盤は、クラウドファンディングというものがオンラインを通じてできるようになり、その資金調達の額が次第に大きくなっていく様子を、いくつかの事例を交えて説明している。すでにクラウドファンディングという手段が特殊なものではないということがわかるだろう。
面白かったのは中盤で描かれている、参加者の心理である。「なぜクラウドファンディングで資金調達に協力するのか?」。きっと世の中にはその心理がまったく理解できない人もいるのではないだろうか。もちろんクラウドファンディングには資金調達が成功した暁には「リワード」として、完成した製品や記念品などを資金提供者に送るというのは一般的なので、そのリワードを求めて資金を提供してくれる人も多いが、もう一つの要素を忘れてしまうと、そのクラウドファンディングは失敗に終わることが多いという。それは「仲間になりたい」という心理である。したがって、クラウドファンディングによって資金を調達する側は、常にプロジェクトの進行具合を報告し、参加者とのコミュニケーションを重視する必要がるのだ。
だからこそ、本書の最後を締めくくっているこの言葉が響いた。

「資金提供者に対し永久的な負債を抱える覚悟があるか」。このことは、クラウドファンディングにおいて決して忘れてはいけない問いかけなのです。

ただでお金が手にはいる、というのは非常に便利に聞こえるが、そのために費やさなければいけない誠意、態度などは、中途半端な覚悟でできることではないのだろう。
【楽天ブックス】「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」」

「Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness」Richard H. Thaler, Cass R. Sunstein

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中はほんの少しの変更で劇的に変わる。本書はそんな世の中の人々の傾向について語る。このような知識を持って入れば、わずかな変更で世の中を求める方向に導くことができるかもしれない。
保険、住宅ローン、学費ローンなど、しっかり考えれば自らの選択がベストではないことは明らかなのに、複雑かつ多すぎる選択肢のせいで多くの人々は深く考えもせずに選択しており、それによって人々は本来受けるべき幸せを手にすることができていない。なぜなら僕らは忙しいし、考えたり分析をするために大量の時間を費したくなどないからだ。
そんな過剰な選択をせまられてベストな選択をできない人々に、適切な選択をさせるために知っておかなければならない人間の傾向は次のようなものだ。

Anchoring

僕らは知っている情報を元に別の情報を判断しようとする。

Availability

何かが起きる可能性を、どれだけ身近にその事例があるかで判断する傾向がある。例えば近いうちに大きな地震が起きる可能性を考えた時、大きな地震を経験したことがある人とない人ではその想定する可能性に違いがある。

Representatives

AがBに所属するかを判断する際に、AがどれだけBのイメージに近いかで判断する傾向がある。

Optimism and Overconfidence

人々は自分のことを平均以上だとみなす傾向がある。

Gain and losses

同じ物でも、得ることきより失うときのほうがその損失を高く見積もる傾向がある。

Status Quo Bias

人は現在の状況に固執する傾向がある。

Framing

人はどのように表現をするかに影響を受ける。例えば人は「この手術で10人に9人が生き延びる。」の方が「10人に1人が死ぬ」よりも手術を前向きに捉える傾向がある。
後半は上の傾向をどのように実際に生かすかを年配者の薬、臓器提供をどのように増やすかなどについて書いている。それぞれのNudgeを用いた例が細かすぎてあまり読みやすいとは言えない。もっと例を増やしながらも重要なポイントだけ整理したほうがわかりやすく読みやすく仕上がったのではないだろうか。