「エンジニアリング組織論への招待」広木大地

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロジェクトにおいて不確実性をなくしていくための考え方を書いている。
日々アジャイルをベースとしてプロジェクトに関わる中で、さらにより良いマネジメントの方法はないものかとヒントを探して本書にたどり着いた。
読みにくい本ではあるが、いくつものヒントが散りばめられていた。よくある問題の一つとして作業にかかる時間の見積もりの精度があがっていかないという問題があるが、それについて本書では、2点見積もり、3点見積もりといった多点見積もりを紹介している。将来的に多点見積もりの理解も深めたいと思った。
また、印象深かったのがアジャイルとウォーターフォールの比較の話である。よく議論になる話ではあるが、アジャイルはチームマネジメントもその流れのなかに含んでいるため、アジャイルとウォーターフォールはそもそも範囲が異なるので比較すること自体がおかしいとしている。
後半に出てきた7段階の権限移譲は組織において誤解が発生しやすい部分であるので頭のなかにしっかり刻んでおきたいと思った。

命令する
説得する
相談する
合意する
助言する
尋ねる
委任する

である。
正直、期待したほどのインパクトのある内容ではなかったが、それでも新たな学びはあったと感じる。
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「UX Research: Practical Techniques for Designing Better Products」Brad Nunnally, David Farkas

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UX調査について語る。
例えば、定量調査、定性調査について詳しく説明しているだけでなく、どんなときにその調査方法を用いてどんなときにもちいるべきでないのか、等を説明している。また、調査のやり方だけでなく、調査結果からどのように組織を動かしていくかなど、なかなか他のUX関連の書籍では扱っていない点に触れているのも新鮮である。また、たくさんの調査方法を紹介している。それぞれの手法については概要程度の記述しかなかったが、今まで知らなかったいくつかの方法を知ることができた。それぞれの方法については今後さらに深めていきたいと思った。
また、ところどころに実際にUXリサーチャーのインタビューを交えている点が面白い。海外では「UXリサーチャー」という職種がここまで普及していることに驚かされる。
後半では、リクルーティングや調査のファシリテートの仕方について書いている。ユーザーの表情や姿勢でその発言からは見えない心理を読み取る方法などについても描かれており、なかなか一度読んだだけで実現できそうもないが、UXについてたくさん勉強している人に取っても、新しい発見がたくさんあるのではないだろうか。非常に細かい部分にまで触れているため、組織によっては、ここまで調査に時間や人を避けないというところもあるかもしれないが、知識として持っておいたり、「ここにこの情報がある」と知っておくことはいつか役に立つことだろう。
調査の結果の報告のなかでWord Cloudsで表現している場面があり印象に残った。今まで使ったことのない方向9手法だったので、機会があれば使ってみたいと思った。これからUXリサーチをするなかで読み返したいと思えるほど内容の濃い1冊。

「億を稼ぐ東大卒トレーダーが教えるおひとりさまの「肉食」投資術」村田美夏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東大卒のトレーダーとして有名な著者がその投資に対する考え方を語る。
タイトルだけ読むと、株式投資の方法について書かれていそうな印象を受けたが、実際には、時間の使い方や、人間関係の作り方など広い意味での「投資」について書かれている。
やはり特殊な生き方をしている人の考え方は、僕のような一般の考え方(?)を持っている人間からすると斬新である。個人的に印象に残ったのは

友だち5人の平均年収が自分の年収になる

レイヤーの高い人に会いに行こう

である。
どちらも人間関係の考え方であり、人間関係が変わればお金の流れも変わるのは、言われてみれば当たり前ではある。ただ、僕自身あまり普段こういう努力をしていないので、これを期に少し考え方を微調整してみようと思った。
残念ながらそれほどオススメという内容ではないが、保守的な生き方をしている人にとっては、目の覚めるような内容なのかもしれない。
【楽天ブックス】「億を稼ぐ東大卒トレーダーが教えるおひとりさまの「肉食」投資術」

「Measure What Matters」John Doerr

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグルやゲイツ財団がOKRを利用してどのように現在あるような偉業を成し遂げたのかを語る。
OKRの仕組みを理解するのは簡単だが、導入の過程では組織に合わせた多くの微調整が必要である。本書はGoogle, YouTube、Adobe,ピザチェーンなどいくつかの組織がOKRsの導入を試みてから、OKRsが組織のなかで機能するまでを描く。OKRの仕組みを理解しただけでは不十分な知識を補ってくれるだろう。
本書で新しいのはOKRsとは別にCFRsという考えを取り入れていることである。CFRsとはConversations, Feedback, Recognitionのことで、マネージャーとの会話、チームメイトの間における進捗の評価と発展の案内、および達成した成果に対する賞賛の重要性を示している。OKRsに関わる人々の間でのコミュニケーションを活性化し、そのメリットを最大限に活用するためにCFRsは役立つという。
今後OKRsの導入に実際に関わっていくなかで繰り返し読む必要があると感じた。

関連書籍
High Output Management by Dov Seidman
Lean In Sheryl by Sandberg

「ブロックチェーンの衝撃」ビットバンク株式会社&『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ブロックチェーンについて語る。
ブロックチェーン関連の本を読むのは本書で5冊目になるが、これまでのなかで本書第1章がもっとも面白かった。ブロックチェーンや仮想通貨が世の中にもたらす変化についての考察は特に珍しくはないが、現在のビットコイン関連の状況を、グラフや表を交えて非常にわかりやすく説明している。
本書を読むまでフィジカルビットコインの存在を知らなかったし、ビットコインのATMが存在することも知らなかった。また、ビットコインのマイナーでは大部分を中国の企業が占めていることに加え、取引通貨でも人民元が94.5%を占めているというビットコインの世界的な偏りも本書によって初めて知ることができた。
残念ながら中盤以降は、法律や技術的な内容に偏っており難しかった。ブロックチェーンの概要を知るためというより、まさにこれからブロックチェーン関連の仕事を始めよとしている人向けの内容である。
【楽天ブックス】「ブロックチェーンの衝撃」

「フィンテック」柏木亮二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

昨今よく耳にする「フィンテック」という言葉に対して、金融とIT技術を結びつけた革新的なサービス、という漠然としたイメージを持っていながらも、そこにどのような可能性があるのかをもっと具体的に知りたいと思い本書を手に取った。
序盤ではアメリカでフィンテックが普及した経緯について説明している。その理由の一つとしてリーマンショックが挙げられている。リーマンショックによって、それまでの金融機関に対する不信感が増大したことと、職を失った優れた金融関係者たちがフィンテックという分野で知見を生かすことを選択した結果なのだという。一方で日本においてフィンテックがどのように進化していくかも持論を述べている。日本では貯蓄の多くはITリテラシーの低い年配者に偏っており、ITに抵抗の低い若者の貯蓄額が少ないいので、海外のようにスムーズにフィンテックの文化が浸透する可能性は少ないとしている。
本書ではさまざまなフィンテックを分類して紹介しているが、気になったのはソーシャルレンディングである。すでに世界ではレンディングクラブというソーシャルレンディングが拡大しているにもかかわらず、日本で普及しない理由として法律の問題があるのだそうだ。今ある世界を保護することは確かに重要だが、少しずつ人も法律も変化に適用していかなければならない。そういう意味で今後、ソーシャルレンディング関連の動きに注目したいと思った。
中盤では「イノベーションのジレンマ」について触れている。なぜ優秀な巨大企業が、破壊的なイノベーションに
対応できないのか。そして「イノベーションの解」にあるように、どのように対応するべきなのか。どちらの本も読んだはずなのだが、本書の説明が一番簡潔でわかりやすかった。
全体的にフィンテックの内容が盛りだくさんの一冊。理解できるかは別にして内容としては十分だと感じた。
【楽天ブックス】「フィンテック」

「医療再生 日本とアメリカの現場から」大木隆生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本とアメリカで医師として働いた経歴を持つ著者が、日本とアメリカの医療の現場を語る。
序盤ではまず、アメリカの医療現場について語っている。アメリカでは病院に対して、各々の診療科がテナントのような形で入っているのだそうだ、そのため診療科ごとに採算が求められると同時に、診療科で医師の採用を行うのだとか。また、アメリカの医師が直面している訴訟リスクの大きさと保険に入らない故に、病気になったら自己破産するしかないのだそうだ。そんな低所得者層を中心としたアメリカの社会問題などについても触れている。
アメリカの医療が取り上げられるときは、日本の医療との比較でいい部分ばかりが強調される傾向があるが、医療業界全体として見たときにはそれぞれに長所短所があることがわかる。どれも日本に住んでいるとなかなか知ることのできない医療事情なので興味を持って読み進めることができた。
そんなアメリカと日本の医療だけでなく、アメリカと日本で医師として働いた著者のキャリアも非常に興味深い。著者がキャリアの選択する際に拠り所としている言葉で、本書のなかでも繰り返す言葉。

衣食足りたらトキメキを求めよ

には非常に共感できる。言い換えるなら、必要最低限の生活費が稼げるようになったら、その先はお金ではなくて自分がやりたいことを選んで人生を洗濯していけ、ということだろう。著者はそんな視点でキャリアを選択しながらアメリカでは1億に届くほどの収入を得ていたというのだから驚きである。
全体的には非常に読みやすく、アメリカの医療をさらっとなめるにはちょうどいい内容だった。
【楽天ブックス】「医療再生 日本とアメリカの現場から」

「取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」尾木直樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
教育評論家の著者が、現在の日本の教育の問題点を語る。
どの話も面白かったが、印象的だったものをいくつか挙げると次のような内容である。

競争が生むのは格差だけ

こちらはフィンランドの教育を例に挙げて説明している。フィンランドでは通知表を生徒にわたすことはなく、評価も、他社と比較した相対評価ではなく、絶対評価なのだという。また、驚いたのは、大学進学にかかる費用を家計がメインで担っている国が実は多くないということ。日本、韓国、イギリスが大学進学の費用の50%以上を家計が担っているのに対して、ヨーロッパの大部分では30%以下の国が多いのだという。家計の負担率が高ければ高いほど、家庭の収入がそのまま進学に反映することとなり、教育格差が世代を超えて引き継がれることにつながるだろう。

「ゆとり」は間違いではなかった

こちらも非常に興味深く、著者は、大谷翔平や羽生結弦などのゆとり教育の世代の著名人をを例に出して、ゆとり教育が必ずしも失敗ではなかった、と主張する。確かに振り返ってみると判断が早すぎた可能性はあり、メディアがゆとり教育を早々に失敗扱いした結果、そのような考え方が定着してしまったようにも思える。教育というものを本気になって変えて行くためには、正しい政策をするたけでなく、テレビや新聞などのメディアとの協力も必要なのだと感じた。
後半では、子供の教育だけでなく、大人の教育にまでその範囲を広げて考えを書いている。そのなかで「30歳以上の成人の通学率」のグラフが示されている。日本はわずか1.6%と非常に低いのが驚きであった。日本は成人してから学習することに対して、社会のサポートが少ないんだと感じた。100年時代が語られる今、大学を一度卒業したのちの学ぶ機会の少なさは、日本の競争力を維持する上で大きな課題なのだろう。
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「どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール」尾原和啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マッキンゼー・アンド・カンパニー、Google、楽天など合計12の会社で働いた経歴を持つ著者が、タイトルにあるようにどこでも、誰とでも働けるために心がけるべきことをまとめている。
全体的にどれも同意できることばかり、特に転職について語っているうちの次の二点。「異動・転職では「業界」「業種」を交互にスライドさせてみる」と「大きい会社と小さい会社を交互に経験する方法もある」は、転職をこれまで7回している僕も実感として持っている部分である。業種や職種を変えると知識や経験の幅が広がるが、あまり変えすぎると減給は避けられない、だからこそ業種を変えるけど職種は変えない、とか業種は変えないけど職種は変えない、というのを繰り返していくのが程よい方法なのである。
新鮮だったのは「「始まりの場所」にいる大切さ」である。著者自身ドコモのiモードという、携帯端末のインターネット接続のはじまりの場所にいた経験からその貴重さを語っているのだろう。今だったらフィンテックやブロックチェーンなどだろうか。「始まりの場所」、そんな視点を今後のキャリアを考える上で意識していきたいと思った。
途中で気づいたのだが、この著者は「モチベーション革命」の著者なのだそうだ。残念ながら「モチベーション革命」はあまりいいと萌えなかったが、本書は興味深く読むことができた。
【楽天ブックス】「どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール」

「ノンデザイナーズ・デザインブック」ロビン・ウィリアムズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの本としては非常に有名ではあるが「ノンデザイナーズ」とついているため、デザイナーの僕は今まで大して気にも留めな方。しかし、先日、この本が1998年に日本語版初版発行20周年ということで話題になっていたためようやく読む気になった。
全体的には「近接」「整列」「反復」「コントラスト」というデザインにおいては本当に基本的なことで占められている。「基本的なこと」とはいえ、どれも、どんなデザインにも応用できる大事なこと。デザイナーとは言え自分の知識を確認する意味で読んで見るといいのではないだろうか。
個人的には大部分が普段から意識していることではあったが、「反復」の最初に書かれていた。「人間の目は同じものを探す」という特徴を活かして名刺の最後の電話番号を見終えた視線を再度上部の名前へと導く技術は今まで意識したことのないもので、新鮮だった。非常に言葉では説明しにくいので是非読んで確かめてもらいたい。
【楽天ブックス】「ノンデザイナーズ・デザインブック」

「Caraval」Stephanie Garber

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年本屋大賞翻訳小説部門。
ScarlettとDonatellaという姉妹の元に魔法の島、Caravalで行われるゲームへの招待状が届いた。結婚を目前に控えたScarlettとDoantellaは、迷いながらもCarabalへ向かうこととなる。
地元の権力者で2人の娘に厳しい父の教えを守って生きるScarlettと、外の世界に飛び出したい妹のDonatella、そんな対象的な2人を中心に物語は展開していく。
島にたどりついたScarlettを含む、ゲームの参加者すべてに課せられたのはScarlettの妹Donatellaを探すこと。そのためにScarlettは島まで案内してくれた船乗りの男性Julianと協力して行動することとなる。不思議な魔法を体験しながらScarlettはゲームに勝ち、妹のDonatellaを取り戻そうとする。
その過程で出会う多くの人々。Julianの本当の狙いは何なのか。2人に招待状を送ったCarabalの主Legendは善人なのか悪人なのか。Scarlettが少しずつ成長していく様子が面白い。
カテゴリとしてはファンタジーになるのだろうが、なかなか触れることない類の作品。好みの好き嫌いはあるだろうが、一読の価値ありである。

「鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療」高尾洋之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ICTにより進歩しつつある医療の現状を慈恵医科大学の准教授である著者が説明する。
教育と同じように医療も、政治的な問題のせいか変化の遅い分野。逆にいえばまだまだ伸び代のある分野と言えるだろう。そんな医療現場の現状を知りたくて本書を手に取った。
個人の医療記録を病院が保持するのではなく、共有すればいいというのは、誰でも思いつく医療の未来ではないだろうか。本書によると、その考え方はPHR(パーソナルヘルスレコード)と呼ばれ、考え方としてはすでに一般的ではあるものの、その普及のためにはまだまだ課題が多いのだという。それでもアルムという会社の提供するMySOSおよびJOINというスマホアプリがそれを実現する方向に動いているのだろうだ。
PHRの話以外はそれほど印象的な話はなかったが、大雑把にではあるが現状の医療の状況を把握することができた。今後もしっかり医療業界へのICTの浸透具合にはアンテナをはっておきたい。
【楽天ブックス】「鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療」

「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」クリスティーナ・ウォドキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目標を達成する方法として最近よく聞くようになったOKRという手法が、どんなものでどのように取り入れるかを語る。
序盤は、上質なお茶を届けることをミッションとした架空のスタートアップを題材として、スタートアップ企業が陥りやすい状況を説明し、中盤以降ではOKRをその解決策として物語と絡めながら紹介している。
OKRの個人的な印象としては、もっと複雑なシステムなのかと思っていたが、むしろ拍子抜けするほど単純なものだということだ。特に「目標を50%の確率で達成できそうなものにする」というところは、なぜこの考えが今まで広まっていなかったのだろう、というぐらい単純で誰でも思いつきそうな内容である。とはいえOKRの手法自体を軽んじているわけではない。単純なものほど機能するというのはよくあることだ。また、単純な手法であるからこそ、組織や状況に応じてカスタマイズする必要があり、多くの試行錯誤が必要なんだと感じた。
OKRのもっとも注目すべき点は、本書でも書いているように

ゴールを、「パフォーマンスを評価するしくみ」から、「人を鼓舞し、能力を高めるしくみ」に切り替えよう。

という点だろう。今まで世の中にあった多くの評価システムが、結果的に会社の目的と結びつかなかったのは、その社員の評価につながっていたからである。評価と目標を分離することではじめて目標らしい目標を立てることが現実的になるのである。
一方で本書は一切評価方法については触れていない。OKRを採用するにあたって、企業は社員の評価方法は別に考え出さなければならないのである。
【楽天ブックス】「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」

「Camino Island」John Grisham

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プリンストン大学の図書館から盗まれた5つの有名作家のオリジナル原稿は、Camino islandにある本屋のオーナーが所持しているとの疑いを持った保険会社は、Camino島で生まれ育った女性作家Mercerに本屋のオーナーBruce Cableに近づいて調査をすることを依頼するのである。
Mercerが執筆作業という名目でCamino等に滞在し、本屋のオーナーであるBruceや、Camino島にいるたくさんの作家と知り合いになるなかで、本屋や多くの作家事情が描かれている点が面白い。また、有名作家の初版本やサイン本、オリジナル原稿などが取引される闇マーケットについても描かれており、作家である著者の専門分野だけに真実に近い部分も多く含まれていることだろう。
普段あまり関わりのない世界に触れさせてもらえたという意味では新しいが、物語の内容としては特に驚くような展開もなく特別進めるような部分はない。
本書が初めて読んだJohn Grisham作品だが、他にも映画化された名作がたくさんなるので、少しずつ読んでいきたい。

「Don’t Tell a Soul」D. K. Hood

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
田舎町に赴任した警察官のKaneはその街の保安官代理
Jennaとともに、街で行方不明になった人々の捜索を続ける。真実に少しずつその町の大きな犯罪が明らかになっていく
よくあるアメリカ警察物語という印象。シリーズのなかでこれから面白くなるのかもしれないが、本作品に関しては特に驚くようなことはなかった。暗い過去を持っているらしいKaneとJennaの関係が今後どのように発展していくのかが唯一気になる部分である。
DeputyやSherifなど、アメリカにおける保安官と警察官の役割の違いなどを自分がよくわかってないことを知った。
シリーズの続編を読むことはしばらくないと感じた。

「どこへ行く!?介護難民」稲葉敬子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フィリピン人の日本の介護事情について語る。
知り合いにフィリピン人の介護師がいるので、その仕事の状況や日本におけるフィリピン人介護師の立場を知りたくて本書にたどり着いた。
序盤は、フィリピン人を介護してとして受け入れるまでの、日本とフィリピン外交的経緯から日本で介護士として働くまでのフィリピン人が受けなければいけない教育過程など、現在の介護の状況を説明している。フィリピン人というと風俗などのイメージが付きまとってしまうが、本書を読んでフィリピン人が介護士としては非常に優秀であることがわかった。中盤からは現在日本で介護士として働くフィリピン女性たちの生活やそれぞれの持つ悩みについて書いている。彼女たちにとって介護士として働くために問題なのは、漢字の読み書きや職場の人間関係なのだという。
人材不足の日本の介護事情を解決するための手段として期待されるフィリピン人介護士ではあるが、僕らの持つ印象とは違って、問題となるのは彼女たちの教育よりもむしろ、受け入れる側の環境の問題なのだとわかった。日本人介護士に起こりがちな職場問題が、南の国で育った彼女たちには受け入れがたいのだろう。
後半はフィリピンで老後を過ごす日本人たちを紹介している。彼らの日本を出るという決断までの経緯と、現在の状況を読むと、フィリピンで過ごすのも悪くない気がしてきた。
本書は現在のフィリピン人による介護状況の概要を知りたいとう要求にはしっかり答えてくれた。
【楽天ブックス】「どこへ行く!?介護難民」

「Extreme Programming Pocket Guide: Team-Based Software Development」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
効率の用意プログラミング業務の進め方を「Extreme Programming」として紹介する。
XPは次の4つのことを重視している

コミュニケーション
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シンプルであること
勇敢さ

である。最初の3つに多くの人は異論ないだろう。しかし最後の「勇敢さ」は普段意識指定なのではないだろうか。Exreme Programmingが重視する「勇敢さ」とは「ミスを認める勇気」である。ミスを認めるのが遅ければ遅いほど、そこからフックするのに時間がかかるのである。
後半で書いてあった

機能するもっとも単純な実装をする

は、エンジニアではなくPOやCOに知ってほしいと思った。デザインやコードをシンプルに実装することでどれほど将来的な柔軟性があがるかを組織においてどれほどの人が理解しているかどうかが大きな鍵だと感じた。

将来的に必要かもしれない機能に時間をかけることは、今必要な機能にかける時間を削るリスクを伴う。

シンプルであるために、デザイナーやエンジニアはもっとPOや顧客に対して声を上げることが、組織を効率的に動かすための近道なのだと感じた。エンジニア向けの本ではあるが、組織を動かす立場の人には誰にでも役立つ内容と言えるだろう。

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」山田真哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
誰も買っているところを見たことないにもかかわらず、定期的に街をまわってくるさおだけ屋や、ベッドタウンにあるフランス料理店など、身近に存在する不思議な例で好奇心を刺激して、その流れで会計を説明する。
非常に有名な本ではあるが、今まで読んだことがなく、今回妻との会話のなかから「そういえばさおだけ屋ってなんで潰れないんだっけ?」という会話の流れで読むことになった。全体的には楽しく読むことができたし、雑談に使えそうなネタがいくつか増えたきがする。
もちろん会計について理解するには本書だけでは不十分で、そこは本書で著者も述べているように、他の専門書に譲っているということだ。そんな著者の狙い通り、会計学についてもっと詳細を勉強したいと思った。そういう意味では「難しくない会計学」という、本書が目指していた目的は達成できたのではないだろうか。
【楽天ブックス】「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」

「Mapping Experiences: A Guide to Creating Value Through Journeys, Blueprints, and Diagrams」Jim Kalbach

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
多くの企業が様々な局面で非効率な業務フローを採用していたり、不必要なものを生産していたりする。その多くは視覚化することによって解決が容易になるのだ。本書はそんな視覚化の手法を「Alignment Diagram」として紹介している。
カスタマージャーニーマップやエクスペリエンスマップなどのUXデザインにおいて有名なものから、サービスブループリントやメンタルモデルダイアグラムとあまり知られていないものまでを、企業が陥りそうな状況を例としてその使い方を説明している。
本書ではたくさんの視覚化の手法をその名前とともに紹介しているが、実際には名前は重要ではない。状況に従って、紹介された手法を組み合わせることも必要である。大切なのは、状況に応じて的確な視覚化を行うことなのだ。
読むだけで身につくということはないので、必要なときに何度も読み直したいと思った。各章の末尾に掲載されているオススメの書籍、記事も少しずつ読んでいきたいと思った。

「Vanishing Girls」Lisa Regan

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性警察官Josieはなかなか進まない女性の行方不明者の捜査にいらだち、謹慎処分中にも拘らず自ら捜査に動き出す。
Josieは謹慎中という身にもかかわらず、被害者や生存者が口にする「Ramona」という謎の言葉の正体を追って、真実に迫っていく。そんななかJosieの人としての葛藤や人間関係も多く描かれている。離婚届に判を押さない前の夫のRayや、現在の恋人のLukeは、物語のなかでも重要な役割を果たす。また報道者として第一線に戻ろうとするあまりJosieとたびたび衝突するTrinity Payneの存在も面白い。
暇つぶしには悪くないが、よくある警察小説の範囲を出ていない。この本でなければ知ることのできない何かを教えてくれることはなかった。