「プロデューサーシップ 創造する人の条件」山下勝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
良いプロデューサーとはなんなのか。そんな視点でプロデューサーについて語る。
そもそも「プロデューサー」とはどんな人を指すのか。実は僕らはこの「プロデューサー」という言葉を曖昧なまま使っている。多くの人が一昔前に「プロデューサー」という言葉で共通して持っていたのは小室哲哉のような音楽プロデューサーであろう。本書では「Shall We Dance」などのヒット映画を生み出した映画プロデューサー等を例にとってそのプロデューサー像を説明する。
中盤以降ではプロデューサー型人材の持つ能力や、そんな人材を育むための環境について語っている。
正直、あまりわかりやすい内容とは言えないのだが、ここまでプロデューサーという役割に焦点を絞った書籍は珍しく。企業に利益をもたらすような人材を育てるための環境作りに役立つヒントがたくさんつまっているのではないだろうか。
【楽天ブックス】「プロデューサーシップ 創造する人の条件」

「歌舞伎町セブン」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
歌舞伎町で町会長の高山和義(たかやまかずよし)が遺体となって発見された。自分の父も同じように歌舞伎町で突然心不全として亡くなった経験を持つ新宿署地域課の小川幸彦(おがわゆきひこ)は、独自に事件の調査を始める。
やがて小川は、歌舞伎町を中心に活動するジャーナリスト上岡(かみおか)と知り合い、「歌舞伎町セブン」という存在を耳にする。
一方、歌舞伎町で小さな居酒屋を経営する陣内陽一(じんないよういち)は、かつては「あくびのリュウ」と呼ばれた歌舞伎町セブンのメンバーの1人。現在はささやかな生活を送りながらも、高山和義(たかやまかずよし)の死を機にかつての仲間から歌舞伎町セブンとしての復帰を求められる。
誉田哲也の警察物語の中で、歌舞伎町セブンを題材とした物語の第1弾であるが、「ジウ」シリーズで起こった歌舞伎町封鎖事件などとも繋がりがあり、誉田哲也の物語をすべてたのしもうと思ったらはずせない一冊である。
誉田哲也のもう一つの警察物語であるストロベリーナイトシリーズとのコラボとなった「ガラスの太陽 ノワール」を、先に読んでしまっていたため、前後の繋がりが把握できていなかった歌舞伎町セブン関連の謎は、本書を通じて解決するかと思ったがそんなことはなく、「歌舞伎町ダムド」および、「国境事変」も読む必要があると感じた。
【楽天ブックス】「歌舞伎町セブン」

「また、同じ夢を見ていた」住野よる

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小学生の小柳奈ノ花(こやなぎなのか)は、年齢の割に賢く読書が好きだったためか、学校にはあまり仲の良い友達がいなかった。その代わり、放課後は近所に住む高校生の南(みなみ)さん、社会人のアバズレさん、そして、年配のおばあちゃんとの時間を楽しんでいた。そんな奈ノ花(なのか)の日々を描く。
小学生の女の子を扱ったほのぼのとした雰囲気で物語が始まるが、少しずつ小学校の教室での彼女の立ち位置が見えてくる。決してイジメられっ子というわけでも、弱虫というわけでもないが、奈ノ花(なのか)の毎日の行動から、その苦悩が伝わってくるのではないだろうか。
それでも、少しずつ、奈ノ花(なのか)の周囲の大人たちによって、奈ノ花(なのか)の世界は開けていく。もう何年も前に当たり前だった教室という逃げ場のない小さな世界と、そんなわずか40人程度の集団が、世界のすべてだった頃を思い出させてくれる、ほっこりさせてくれる作品。
【楽天ブックス】「また、同じ夢を見ていた」

「ノワール 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ストロベリーナイトシリーズの「ルージュ 硝子の太陽」の裏の物語。同じ時期に起こったもう一つの事件を描く。
この物語への入りは、「ストロベリーナイト」シリーズの延長からであるが、本書は、ストロベリーナイトシリーズではないので、「ストロベリーナイト」シリーズのヒロイン姫川はほとんど出てこない。むしろ本書は、誉田哲也の「歌舞伎町セブン」のシリーズと位置付けられるようだ。
物語は、沖縄基地問題の重要人物を公務執行妨害によって勇み足で逮捕してしまい、その取り調べ担当として東(あずま)刑事が任命されることから始まる。しかし、同じタイミングで、沖縄基地問題を調べていた知り合いのフリーライターである上岡慎介(かみおかしんすけ)が殺害される。上岡(かみおか)が歌舞伎町セブンのメンバーではないかと疑いを持っていた東(あずま)は歌舞伎町セブンのメンバーと思われる人間に接触を試みる。
法律を無視して、自分たちで世の悪党と思われる人々に制裁を与える「歌舞伎町セブン」の面々と、警察組織に所属しながらも、歌舞伎町セブンの行動を止めることもできずに共存しようとする東(あずま)のやりとりが面白い。ただ、誉田哲也の今まで読んでいなかったシリーズ、もしくは読んだけど忘れてしまっているシリーズの物語との関連性が強く、本書の面白さを味わい切れていないとも感じた。
「ジウ」を読み直して、「歌舞伎町セブン」のシリーズを一通り読んでから、もう一度読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「ノワール 硝子の太陽」

「ルージュ 硝子の太陽」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世田谷で起きた一家惨殺事件を捜査することとなっった姫川玲子は、やがて28年前の類似事件の存在に気づくのである。
「ストロベリーナイト」に始まる姫川玲子のシリーズの第6弾である。シリーズには短編集も長編もあるが、本書は長編ということで、一家惨殺事件という凶悪事件に姫川は関わることとなる。
警察の捜査の様子とは別に、本書では、ベトナム戦争の後遺症に悩むアメリカ人男性の描写が間に差し込まれていく。戦時中に経験した残酷な命のやりとりの悪夢から逃れられない彼は、日本人の家族を惨殺した夢を頻繁に見るのである。読者は、このアメリカ人を犯人と予想しながら、少しずつ真実に迫っていく姫川とそのほかの警察関係者の様子を楽しむこととなるだろう。
おそらく本書のモデルとなっているのは2000年に起こった未解決事件である、世田谷一家殺害事件なのだろう。本書を読むなかで興味をかきたてられ、事件の詳細を調べたくなった。また、本書はほかのシリーズ作品と異なり、「ノワール 硝子の太陽」という別の物語と表裏一体になっているという。いくつか未解決のまま終わった消化不良の部分もあるが、きっとそのへんは「ノワール」の方で解決するのだろう。物語自体の面白さに加え、そんな2面構成もあわせて楽しめるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「ルージュ 硝子の太陽」

「A Dangerous Place」Jacqueline Winspear

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Maisie Dobbsの第11弾。時代は1934年、時代はまさに第二次世界大戦へと突入しようとしている。それまで探偵業を営んでいたMaisieは前作で新しい生活を始める決意をし、本作品はそのあとの物語である。
まず驚かされるのは、前作までの間に時間的な隔たりがあり、Maisieの夫であるJamesが事故死している点であろう。友人や親の心配を感じながらも、その悲しみと向き合うためにジブラルタルに降り立ったMaisieはそこで暴行に襲われた写真家の死と遭遇するのである。失意の底にありながらも自らの存在意義を確認するかのようにMaisieはその真実を解明しようと動き出すのである。
亡くなった写真家の捜査をするなかで、ジブラルタルの多くの人と出会う。そしてそんななか少しずつMaisieは過去と向き合って夫を失った自分の今後の行き方を模索する。それでも戦況は悪化する一方で、やがてゲルニカ爆撃が起きるのである。
全体的には、登場人物など、過去の作品と繋がったエピソードが多く、本書だけで楽しむのは難しい印象を受けた。ここまでシリーズのすべてお読んでいる僕にとっても、すべてを理解したとは言えないだろう。本シリーズが残りどれほどあるのかわからないが、Maisieにとって前向きな終わり方をしてほしいと思った。

「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外と役だった」堀江貴文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2年半の刑期のなかで大量の本を読み、そのなかで良いと思ったものを勧めている。
正直このような本だとは思っていないで手にとったのだが、新たにたくさんの読みたい本に出会えた。それぞれの本を紹介する中で著者自身の考え方も書いているが、すでに堀江貴文という人物を知っていて、その著作に何度か触れたことある人にとっては特に新しいものではないだろう。
著者が挙げるリストのなかには有名にもかかわらず、今まで僕が読んでいなかったものなどもあり、これを機会に読んでみたいと思った。

・「グラゼニ」森高夕次
・「JIN 仁」村上もとか
・「東京タワー」リリー・フランキー
・「五体不満足」乙武洋匡
・「A3」森達也
・「こんな僕でも社長になれた」家入一真
・「理系の子」ジュディ・ダットン
・「とんび」重松清

【楽天ブックス】「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外と役だった」

「心と身体のパフォーマンスを最大化する「氣」の力」藤平信一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
心身統一合気道会長の著者が、氣と、メジャーリーグで行なった氣のトレーニングについて語る。
著者の父であり、心身統一合気道の創設者である藤平光一の「氣の威力」はどちらかというと氣の話以外に藤平光一自身の物語であったが、本書は日常生活にも役立つであろう氣の基本的な部分の実践方法を解説している。また、あわせてメジャーリーグでの氣のトレーニングのエピソードを交えることで、その効果の有用性を伝えている。
合気道の経験のない人は、信じられないような話なのかもしれないが、本書を読めば、メジャーリーグや日本のプロ野球など多くの場所で実績を残した理論であることがわかるだろう。
人生がなかなかうまくいかないと感じている人は、ぜひ一度時間を割いて読んでみるといいだろう。
【楽天ブックス】「心と身体のパフォーマンスを最大化する「氣」の力」

「十二人の死にたい子どもたち」冲方丁

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自殺を志願する十代の子供たち12人が、使われなくなった病院の地下室に集まった。採決をとって、全員の意見が一致したら集団自殺を実行に移すのだという。
最初の採決で、参加者の1人が室内の環境の不自然さを解決するために、話し合いを求めたことから集団自殺の決行が30分先送りになる。そして、話し合いはさらなる謎を呼び、その謎がさらに話し合いへと繋がっていく。死ぬことを決意して集まった子供たちであったが、違和感を解決した上で綺麗に死にたい人や、一方で、死ぬことができれば室内の違和感など小さな問題と、割り切った人間などさまざまであるが、話し合いが少しずつ子供たちの心の中を明らかにしていくのである。
冲方丁は「天地明察」や「光圀殿」の印象が強いが、そのような念入りな下調べの上にできあがった物語を期待して本書を手に取ると大きく予想を裏切られるだろう。むしろ冲方丁らしくない作品で、石持浅海の推理小説のような物語の展開する空間が非常に狭く限られていて、大きな動きもほとんどなく、子供たちの会話をベースに進んで行く。
著者冲方丁にとっても本書は新しい挑戦なのかもしれない。
【楽天ブックス】「十二人の死にたい子どもたち」

「わが心のジェニファー」浅田次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30歳を過ぎたラリーは、恋人で日本を愛するジェニファーにプロポーズをしようとする。ところが、ジェニファーからプロポーズをする前に日本を見てくるようにお願いされたため、ラリーは休暇を取って日本へ行くことを決める。
日本を訪れたラリーを描いている。東京、京都、大阪と訪れるうちに、少しずつ日本の文化にラリーは魅了されて行くのである。興味深いのはラリーが祖父に育てられたところだろう。ラリーはその訪問の最中たびたび祖父や両親のことを思い返すのだ。特にラリーが、両親に育てられた友人たちと、祖父に育てられた自分を比較して、育て方の違いが現在の自分の性格に影響を与えていると考える部分が印象的である。

父親は息子の失敗をフォローすることができるが、祖父には孫にそうするだけの時間も体力も残されていないから、勇敢であることより堅実であることを求めるのは当然だからだ。

自国の文化を賞賛するだけの物語かと思ったが、最後はちょっと感動できる。
【楽天ブックス】「わが心のジェニファー」

「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」中原淳/金井壽宏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
企業・組織の学習・成長を研究する著者が企業の「学び」について語る。
序盤では、課長という中間管理職の地位の低下について触れ、過去数十年で複雑になってきた中間管理職の業務と求められている高度な能力について説明している。その後中盤からは、どのように組織の進歩を支えていくかについて説明している。
学びというのを考えた時、重要なのは「実践」か「座学」か、で考えがちだが、著者はもっとも大切なのはそのどちらでもなく「内省」だと言う。そして、内省とは別の人間がいて、その人のために自らの行為をアウトプットすることによって効果的に行われるのだと言う。
本書の言葉を借りるなら、僕自身はどちらかというと「経験主義」だったわけだが、確かに自身の過去を振り返って見ると、忙殺されていた時代(実践の時代よりも)よりも、程よい忙しさのなかに自身の行為を振り返る時間があったときのほうが成長した気がする。
今後部下を持ったり、社内の学びの強化に関わることも増えてくると思うが、そんな折はしっかりと「内省」という要素について考えたいと思った。

「一斉講義はすべて忘れさられる運命にある」。教える側は、人は、言えば聞き、聞けば理解し、理解すれば納得し、納得すれば行動するものだと思いがちだが、それはまったくの思い込みでしかない。

【楽天ブックス】「リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する」

「エンジニアリング組織論への招待」広木大地

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロジェクトにおいて不確実性をなくしていくための考え方を書いている。
日々アジャイルをベースとしてプロジェクトに関わる中で、さらにより良いマネジメントの方法はないものかとヒントを探して本書にたどり着いた。
読みにくい本ではあるが、いくつものヒントが散りばめられていた。よくある問題の一つとして作業にかかる時間の見積もりの精度があがっていかないという問題があるが、それについて本書では、2点見積もり、3点見積もりといった多点見積もりを紹介している。将来的に多点見積もりの理解も深めたいと思った。
また、印象深かったのがアジャイルとウォーターフォールの比較の話である。よく議論になる話ではあるが、アジャイルはチームマネジメントもその流れのなかに含んでいるため、アジャイルとウォーターフォールはそもそも範囲が異なるので比較すること自体がおかしいとしている。
後半に出てきた7段階の権限移譲は組織において誤解が発生しやすい部分であるので頭のなかにしっかり刻んでおきたいと思った。

命令する
説得する
相談する
合意する
助言する
尋ねる
委任する

である。
正直、期待したほどのインパクトのある内容ではなかったが、それでも新たな学びはあったと感じる。
【楽天ブックス】「エンジニアリング組織論への招待」

「UX Research: Practical Techniques for Designing Better Products」Brad Nunnally, David Farkas

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
UX調査について語る。
例えば、定量調査、定性調査について詳しく説明しているだけでなく、どんなときにその調査方法を用いてどんなときにもちいるべきでないのか、等を説明している。また、調査のやり方だけでなく、調査結果からどのように組織を動かしていくかなど、なかなか他のUX関連の書籍では扱っていない点に触れているのも新鮮である。また、たくさんの調査方法を紹介している。それぞれの手法については概要程度の記述しかなかったが、今まで知らなかったいくつかの方法を知ることができた。それぞれの方法については今後さらに深めていきたいと思った。
また、ところどころに実際にUXリサーチャーのインタビューを交えている点が面白い。海外では「UXリサーチャー」という職種がここまで普及していることに驚かされる。
後半では、リクルーティングや調査のファシリテートの仕方について書いている。ユーザーの表情や姿勢でその発言からは見えない心理を読み取る方法などについても描かれており、なかなか一度読んだだけで実現できそうもないが、UXについてたくさん勉強している人に取っても、新しい発見がたくさんあるのではないだろうか。非常に細かい部分にまで触れているため、組織によっては、ここまで調査に時間や人を避けないというところもあるかもしれないが、知識として持っておいたり、「ここにこの情報がある」と知っておくことはいつか役に立つことだろう。
調査の結果の報告のなかでWord Cloudsで表現している場面があり印象に残った。今まで使ったことのない方向9手法だったので、機会があれば使ってみたいと思った。これからUXリサーチをするなかで読み返したいと思えるほど内容の濃い1冊。

「億を稼ぐ東大卒トレーダーが教えるおひとりさまの「肉食」投資術」村田美夏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東大卒のトレーダーとして有名な著者がその投資に対する考え方を語る。
タイトルだけ読むと、株式投資の方法について書かれていそうな印象を受けたが、実際には、時間の使い方や、人間関係の作り方など広い意味での「投資」について書かれている。
やはり特殊な生き方をしている人の考え方は、僕のような一般の考え方(?)を持っている人間からすると斬新である。個人的に印象に残ったのは

友だち5人の平均年収が自分の年収になる

レイヤーの高い人に会いに行こう

である。
どちらも人間関係の考え方であり、人間関係が変わればお金の流れも変わるのは、言われてみれば当たり前ではある。ただ、僕自身あまり普段こういう努力をしていないので、これを期に少し考え方を微調整してみようと思った。
残念ながらそれほどオススメという内容ではないが、保守的な生き方をしている人にとっては、目の覚めるような内容なのかもしれない。
【楽天ブックス】「億を稼ぐ東大卒トレーダーが教えるおひとりさまの「肉食」投資術」

「Measure What Matters」John Doerr

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグルやゲイツ財団がOKRを利用してどのように現在あるような偉業を成し遂げたのかを語る。
OKRの仕組みを理解するのは簡単だが、導入の過程では組織に合わせた多くの微調整が必要である。本書はGoogle, YouTube、Adobe,ピザチェーンなどいくつかの組織がOKRsの導入を試みてから、OKRsが組織のなかで機能するまでを描く。OKRの仕組みを理解しただけでは不十分な知識を補ってくれるだろう。
本書で新しいのはOKRsとは別にCFRsという考えを取り入れていることである。CFRsとはConversations, Feedback, Recognitionのことで、マネージャーとの会話、チームメイトの間における進捗の評価と発展の案内、および達成した成果に対する賞賛の重要性を示している。OKRsに関わる人々の間でのコミュニケーションを活性化し、そのメリットを最大限に活用するためにCFRsは役立つという。
今後OKRsの導入に実際に関わっていくなかで繰り返し読む必要があると感じた。

関連書籍
High Output Management by Dov Seidman
Lean In Sheryl by Sandberg

「ブロックチェーンの衝撃」ビットバンク株式会社&『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ブロックチェーンについて語る。

ブロックチェーン関連の本を読むのは本書で5冊目になるが、これまでのなかで本書第1章がもっとも面白かった。ブロックチェーンや仮想通貨が世の中にもたらす変化についての考察は特に珍しくはないが、現在のビットコイン関連の状況を、グラフや表を交えて非常にわかりやすく説明している。

本書を読むまでフィジカルビットコインの存在を知らなかったし、ビットコインのATMが存在することも知らなかった。また、ビットコインのマイナーでは大部分を中国の企業が占めていることに加え、取引通貨でも人民元が94.5%を占めているというビットコインの世界的な偏りも本書によって初めて知ることができた。

残念ながら中盤以降は、法律や技術的な内容に偏っており難しかった。ブロックチェーンの概要を知るためというより、まさにこれからブロックチェーン関連の仕事を始めよとしている人向けの内容である。
【楽天ブックス】「ブロックチェーンの衝撃」

「フィンテック」柏木亮二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

昨今よく耳にする「フィンテック」という言葉に対して、金融とIT技術を結びつけた革新的なサービス、という漠然としたイメージを持っていながらも、そこにどのような可能性があるのかをもっと具体的に知りたいと思い本書を手に取った。
序盤ではアメリカでフィンテックが普及した経緯について説明している。その理由の一つとしてリーマンショックが挙げられている。リーマンショックによって、それまでの金融機関に対する不信感が増大したことと、職を失った優れた金融関係者たちがフィンテックという分野で知見を生かすことを選択した結果なのだという。一方で日本においてフィンテックがどのように進化していくかも持論を述べている。日本では貯蓄の多くはITリテラシーの低い年配者に偏っており、ITに抵抗の低い若者の貯蓄額が少ないいので、海外のようにスムーズにフィンテックの文化が浸透する可能性は少ないとしている。
本書ではさまざまなフィンテックを分類して紹介しているが、気になったのはソーシャルレンディングである。すでに世界ではレンディングクラブというソーシャルレンディングが拡大しているにもかかわらず、日本で普及しない理由として法律の問題があるのだそうだ。今ある世界を保護することは確かに重要だが、少しずつ人も法律も変化に適用していかなければならない。そういう意味で今後、ソーシャルレンディング関連の動きに注目したいと思った。
中盤では「イノベーションのジレンマ」について触れている。なぜ優秀な巨大企業が、破壊的なイノベーションに
対応できないのか。そして「イノベーションの解」にあるように、どのように対応するべきなのか。どちらの本も読んだはずなのだが、本書の説明が一番簡潔でわかりやすかった。
全体的にフィンテックの内容が盛りだくさんの一冊。理解できるかは別にして内容としては十分だと感じた。
【楽天ブックス】「フィンテック」

「医療再生 日本とアメリカの現場から」大木隆生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本とアメリカで医師として働いた経歴を持つ著者が、日本とアメリカの医療の現場を語る。
序盤ではまず、アメリカの医療現場について語っている。アメリカでは病院に対して、各々の診療科がテナントのような形で入っているのだそうだ、そのため診療科ごとに採算が求められると同時に、診療科で医師の採用を行うのだとか。また、アメリカの医師が直面している訴訟リスクの大きさと保険に入らない故に、病気になったら自己破産するしかないのだそうだ。そんな低所得者層を中心としたアメリカの社会問題などについても触れている。
アメリカの医療が取り上げられるときは、日本の医療との比較でいい部分ばかりが強調される傾向があるが、医療業界全体として見たときにはそれぞれに長所短所があることがわかる。どれも日本に住んでいるとなかなか知ることのできない医療事情なので興味を持って読み進めることができた。
そんなアメリカと日本の医療だけでなく、アメリカと日本で医師として働いた著者のキャリアも非常に興味深い。著者がキャリアの選択する際に拠り所としている言葉で、本書のなかでも繰り返す言葉。

衣食足りたらトキメキを求めよ

には非常に共感できる。言い換えるなら、必要最低限の生活費が稼げるようになったら、その先はお金ではなくて自分がやりたいことを選んで人生を洗濯していけ、ということだろう。著者はそんな視点でキャリアを選択しながらアメリカでは1億に届くほどの収入を得ていたというのだから驚きである。
全体的には非常に読みやすく、アメリカの医療をさらっとなめるにはちょうどいい内容だった。
【楽天ブックス】「医療再生 日本とアメリカの現場から」

「取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」尾木直樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
教育評論家の著者が、現在の日本の教育の問題点を語る。
どの話も面白かったが、印象的だったものをいくつか挙げると次のような内容である。

競争が生むのは格差だけ

こちらはフィンランドの教育を例に挙げて説明している。フィンランドでは通知表を生徒にわたすことはなく、評価も、他社と比較した相対評価ではなく、絶対評価なのだという。また、驚いたのは、大学進学にかかる費用を家計がメインで担っている国が実は多くないということ。日本、韓国、イギリスが大学進学の費用の50%以上を家計が担っているのに対して、ヨーロッパの大部分では30%以下の国が多いのだという。家計の負担率が高ければ高いほど、家庭の収入がそのまま進学に反映することとなり、教育格差が世代を超えて引き継がれることにつながるだろう。

「ゆとり」は間違いではなかった

こちらも非常に興味深く、著者は、大谷翔平や羽生結弦などのゆとり教育の世代の著名人をを例に出して、ゆとり教育が必ずしも失敗ではなかった、と主張する。確かに振り返ってみると判断が早すぎた可能性はあり、メディアがゆとり教育を早々に失敗扱いした結果、そのような考え方が定着してしまったようにも思える。教育というものを本気になって変えて行くためには、正しい政策をするたけでなく、テレビや新聞などのメディアとの協力も必要なのだと感じた。
後半では、子供の教育だけでなく、大人の教育にまでその範囲を広げて考えを書いている。そのなかで「30歳以上の成人の通学率」のグラフが示されている。日本はわずか1.6%と非常に低いのが驚きであった。日本は成人してから学習することに対して、社会のサポートが少ないんだと感じた。100年時代が語られる今、大学を一度卒業したのちの学ぶ機会の少なさは、日本の競争力を維持する上で大きな課題なのだろう。
【楽天ブックス】「取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」

「どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール」尾原和啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マッキンゼー・アンド・カンパニー、Google、楽天など合計12の会社で働いた経歴を持つ著者が、タイトルにあるようにどこでも、誰とでも働けるために心がけるべきことをまとめている。

全体的にどれも同意できることばかり、特に転職について語っているうちの次の二点。「異動・転職では「業界」「業種」を交互にスライドさせてみる」と「大きい会社と小さい会社を交互に経験する方法もある」は、転職をこれまで7回している僕も実感として持っている部分である。業種や職種を変えると知識や経験の幅が広がるが、あまり変えすぎると減給は避けられない、だからこそ業種を変えるけど職種は変えない、とか業種は変えないけど職種は変えない、というのを繰り返していくのが程よい方法なのである。

新鮮だったのは「「始まりの場所」にいる大切さ」である。著者自身ドコモのiモードという、携帯端末のインターネット接続のはじまりの場所にいた経験からその貴重さを語っているのだろう。今だったらフィンテックやブロックチェーンなどだろうか。「始まりの場所」、そんな視点を今後のキャリアを考える上で意識していきたいと思った。

著者は「モチベーション革命」の著者なのだそうだ。残念ながら「モチベーション革命」はあまりいいと萌えなかったが、本書は興味深く読むことができた。

【楽天ブックス】「どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール」