「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」ウジトモコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

デザイナーの著者がいいデザインをするためのルールを説明する。

僕自身も20年以上デザイナーとして生きている人間なので、本書に書いてあることの多くが、毎日取り組んでいる考え方ばかりである。しあし、それでも改めて「この考え方は重要だ」と再認識したことや、今まで考えてもいなかったこと、無意識に実践していたことを言語化した表現に出会うことができた。

「良い」「悪い」≠「好き」「嫌い」
共感するから心が動く

デザイナー向けというよりも、いいプレゼン資料を作りたいビジネスマンや、デザイナーと関わる非デザイナーのための本であるが、デザイナーが読んでも、新たな気づきがあるだろう。

【楽天ブックス】「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」

「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

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「Grid Systems」Kimberly Elam

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グリッドシステムについて知りたくて、グリッドシステムの世界的に有名な著書の一つである本書にたどりついた。

多くのデザイナーが無意識のうちに綺麗にレイアウトするために身につけていることだろう。しかし、デザイナーには美しいものをデザインするだけでなく、周囲の関係者たちを納得させることも必要なのである。本書は良いデザインを言語化する手がかりにあふれている。

The Law of Thirds
3×3のグリッドシステムでは、4つのグリッドが交差するポイントが視覚的な焦点となる。
The Circle and Composition
ワイルドカード要素として、円はレイアウト上のどこにでもおくことができる。テキストの近くにおけばそのテキストへ注意をひきつけられる。テキストの間に配置すれば、その情報を分けることができる。テキストから遠くに配置すれば、注意をひきつけ、視線のフローを操作できるし、全体のバランスを整えることにも使える。

最近ではあまりグリッドシステムを用いたデザインというのは少ないのかもしれないが、知識として知っておくとデザイン作業よりむしろデザインの意図を伝えるに当たって大いに役に立つと感じた。

「人は見た目が9割「超」実践編」竹内一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「人は見た目が9割」の著者が、「人は見た目が9割」に書けなかったことなどをまとめている。

実はあの有名な「人は見た目が9割」を読んだことがなく、ふとした機械から読んでみようと思い立って探したところ、同じ著者の本書にたどり着いた。

「人は中身の方がずっと大切でしょう?」という反論をさせるための若干挑戦的なタイトルではあるが、多くの人は見た目の重要性を知っていることだろう。美しい人に魅力を感じたり、第一印象で人を判断しているからだ。したがって、本書の内容もそのような見た目の重要性を語る内容だと予想していたのだが、実際はそこからさらにもう一歩深い内容だった。

とりとめもなく著者が考えていることを小さな章に分けて書いているので、読みやすくはないかもしれないが、印象的だったのは

「整形手術と痛々しい中年」「共働きと子供の表情」の章である。

「整形手術と痛々しい中年」では、若いころに美人だったりイケメンだったがゆえに、中年になってもそんな表面的な美しさにしがみついている人々を嘆き、むしろ生き方や表情、立ち振る舞いといった見た目を人生をかけて磨いていくべきだと説いている。

私は自分の“見た目”を30年かけて磨こうではないか、といいたいのである。

「共働きと子供の表情」では、共働きで母親も仕事に忙しくなり、子供にたくさんの表情を見せる機会が少なくなることで、少しずつ子供の表情も失われているのだと、警告している。

「子供によい表情を見せる」という心がけは、つまるところ“余裕”のなせる業である。

ぜひ、今後常に意識していきたいと思った。

【楽天ブックス】「人は見た目が9割「超」実践編」

「A/BTesting:Practical Insights and Common Pitfalls」Divakar Gupta

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ABテストの手法、ツールについて語っている。

序盤は簡単なABテストの説明をしており、中盤からはABテストで起こりがちな落とし穴、またABテストのためのツールなどを紹介している。大部分はABテストの15の落とし穴にページを割いており、いくつか興味深いものがあった。いつでも言及できるように覚えておきたい。

Running an A/B test without thinking about statistical confidence is worse than not running a test at all — it gives you false confidence that you know what works for your site when the truth is that you don’t know any better than if you hadn’t run the test

平均値のみを気にする


例えば新しいUIをリリースして、次の一週間のアクセス数が大きく伸びたとしても、日別に伸びているかを確認すべき。一日だけ極端に伸びた結果全体の数値を上げているのだとしたらそれは別の要因によるものだからだ。

「なぜ」を知ろうとしない

例えばABテストが失敗した場合、機能が良いものであるにも関わらず、デザインがよくなかったり説明が悪かったりする。単純に失敗した、だけでなく、「なぜ」失敗したかを知ることは、さらなる成功へ近づくのである。

正直、あまり順序立てた書き方をしておらず、よくあるABテストの落とし穴を思いつくまま羅列しているような内容なので退屈で頭に入りにくいが、もう一度じっくり読み直してみたいと感じた

「遊びある真剣、真剣な遊び、私の人生 改題:美学としてのグリッドシステム」ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第二次世界大戦後のグラフィックデザインをリードした著者がその生涯を語る。

グリッドシステムを学びたくてグリッドシステムの提唱者である著者の名前で検索したところ本書に出会った。デザインに情熱を注いた人の人生は、自分のデザイナーとしての考え方になにかしらプラスな部分があるだろうと考えて手に取った。

1914年に生まれた著者は、授業中にノートに描いていた落書きを褒められたことによって、少しずつデザインの世界に傾倒していく。少しずつ仕事を手にして有名になっていった著者は、1960年には日本でもデザインの教育に関わる。20年間連れ添った妻を交通事故で亡くした後、日本人の吉川静子(よしかわしずこ)と結婚する。

戦時中にすでに海外のデザイン教育はここまで進んでいたことに驚く。タイポグラフィの行間をひたすら研究する著者のこだわりに触れると、現在のデザイナーたちが簡単に行なっているグラフィックデザインが、ずいぶん表面的だけのことのように思えてくる。また、日本での教育や、妻が日本人であるこということで、グリッドシステムの著者が日本と大きなつながりを持っていることにも驚かされた。

その後著者はIBMのデザイン顧問に任命され、グリッドシステムを確立する。

グリッドシステムは完璧な秩序をもたらすシステムとして価値があるばかりでなく、与えられた仕事を計画し構成するために必要な情報や指示を、あらかじめすべて含んでいる。

終盤では軽くグリッドシステムについて触れているが、とても満足の行く内容ではなかったので、改めて「グリッドシステム」を読んでみたい。

著者のグラフィックデザインにかけた人生はデザイナーとして大きな刺激となった。

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「Google Analyticsで集客・売上をアップする方法」玉井昇

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Google Analyticsで取得できる数値からどのようにWebサイトを改善するかを説明している。

Google Analyticsを導入するとそのたくさんの数値に驚くが、結局その数値をどのようにWebサイトの改善につなげたらいいかわからない人も多いだろう。今回は僕自身が久しぶりに仕事でGoogle Analyticsの数値からアクションプランを考えることになったので、本書を手に取った。

一番わかりやすく使えそうなアクションの方法は、たどり着いた検索キーワードによって、滞在時間、直帰率を見る方法である。もし、あるキーワードから一定数のアクセスがあるにも関わらず、滞在時間が短い、または直帰率が高いというような現象が観察できたなら、そのキーワードの記事をもっと増やすべき、ということである。

ほかにも知らなかったGoogle Analyticsの機能についていくつか触れられているが、実際に動かしながらやらないと身につかないだろう。また、GoogleAnalyticsの現状のバージョンとの違いからか、すでにない機能について語られている部分もあったので注意が必要である。

もう一度分析をしながら読みすすめてみたい。

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「月の影 影の海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女子高生の陽子の元に突然不思議な男が現れ、陽子を別の世界へと連れさった。

十二国記の始まりの物語。すでに「魔性の子」という章を読み終えて本書にたどり着いたが、物語的な繋がりはほとんどない。高校生陽子が十二国に連れて行かれ、十二国の東にある巧(こう)、雁(えん)、慶(けい)の3つの国で繰り広げられる物語を描いている。全体としては、それほど大きな動きはなく、陽子が旅する中で、少しずつ十二国の仕組みが明らかになっていく。麒麟と王の関係や陽子(ようこ)がなぜ十二国に連れてこられたか、などである。

僕自身は物書きではないが、ファンタジーをもっとも安っぽく感じさせる瞬間は、著者自身の想像力が読者よりも劣っていることが明らかになるときである。空想世界なのだからそこの生き物は、現実世界とは異なる考え方や行動をするはずなのに、著者が現実世界の常識から離れることができず、異世界の生き物に現実世界の生き物のような行動をさせてしまう。それが繰り返されると、読者は物語に入り込む前に違和感ばかりが気になってしまうのだ。

本書に関してはいまのところそこまでの違和感は感じなかった。設定を複雑にすれば複雑にするほど、(つまり現実世界と違うものにすれば違うものにするほど)その違和感は露呈しやすいだろう。例えば十二国では人間は母親からではなく木の実から生まれるのだという。それによって親子の関係はどのように現実世界と異なるかを考えると面白いが、著者が描くそれがあまりにも想像力なく現実世界のままであればきっと違和感を感じることだろう。

おそらく今後、他の十二国にも物語が広がっていくことだろう。少しずつ世界が広がる中で、違和感を感じさせずに面白さが優って世界を作り上げられるなら優れたファンタジーになるだろう。2冊を読み終えた現段階ではまだ面白いともありきたりとも判断ができないので引き続き読み進めていきたい。

【楽天ブックス】「月の影 影の海(上)」「月の影 影の海(下)」

「続・インターフェースデザインの心理学」 Susan Weinschenk

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ユーザーがWebやアプリのデザインに対してどのように行動するかを、科学的に検証し、それを説明している。

科学的な検証結果を説明している一方で、作業工数などは一切考えていないので、実践的ではないという批判もあるかもしれないが、知識と知っているだけで多少役に立つこともあるのではないだろうか。

いくつか本書の中で今後のデザイン業務に活かせそうだと思った事柄をあげると次の2点である。

人は左右対称を好む


これはすべて左右対称にするべきということではなくて、非対称のデザインはむしろ人の注意をひくために効果的な場合もあるということなので、安心感を与えたいか、注目させたいかを判断して状況に応じて使い分けるべきなのである。

感情と視線の戦いでは感情が勝利する


デザインに人の画像を入れる場合、その視線をユーザーは追うからその視線の先にボタンなどを配置する、というのは多くのデザイナーが実践している手法だが、本書の実験結果では、単に視線が向いているだけでなく、表情に感情が現れている方が効果的という。今後写真素材を選ぶ際は感情も含めて考えたい。

デザイナーは美しいものをデザインするだけでなく、周囲の非デザイナーを説得する必要性も日常的に発生する。そのようなときにこのような話ができるとより説得力が上がり、信頼できるデザイナーになるかもしれない。

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「Graphic Recording 議論を可視化するグレフィックレコーディングの教科書」清水淳子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

会議のファシリテーションの手法として注目されるグラフィックレコーディングについて説明している。

昨今、「グラレコ」という表現でよく耳にするグラフィックレコーディング。正直なところ本当にそこまで注目されるほど効果があるのかどうかが疑わしく、さらに理解するためにと思って本書にたどり着いた。

序盤はグラフィックレコーディングによってどのような効果が期待できるかを説明しており、中盤以降は、実際に会議でありそうな発言や内容をグラフィックで表現する方法を説明している。

全体的な感想は、グラフィックレコーディングといっても世の中で騒がれているほど特別なものではなく、ファシリテーションの助けとなる一つの手法に過ぎないということ。発言や会議のアジェンダを共通認識させることは必ずしもグラフィックである必要もなく、文字を色分けしたり大きさを変えたりしてわかりやすく書くこともそのうちの一つである。

グラレコの練習は、普段の会話のなかでノートを使用したりして、意識次第でいくらでもできることがわかった。今後は会議などの際は積極的にホワイトボードなどを利用し、必要であれば絵など、一般的にグラレコと思われている要素を入れていきたいと思った。

【楽天ブックス】「Graphic Recording 議論を可視化するグレフィックレコーディングの教科書」

「魔性の子」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記のはじまりの物語。

「十二国記」という名前だけは聞いていたが、今まで読まずにいた。今回ひさしぶりにファンタジーの世界に浸りたくなって本書にたどりついた。

物語は卒業して教育実習生として母校に戻った広瀬(ひろせ)が、担当教師の受け持つクラスにいた高里(たかさと)という不思議なオーラをまとった生徒と出会うことから始まる。高里(たかさと)には生徒の間でも噂が尽きず、小学校の時に神隠しにあって1年間行方不明だった経験を持ち、さらに彼の周囲では不思議な怪我や死が続いているという。その高里の周囲で起きる不思議な出来事は少しずつ加速していくのである。

予想以上に現実の世界を舞台としていた。物語が進むにつれてタイトルが示す「十二国」の世界に移っていくのかもしれないが、本書ではまだまだ多くの謎が残ったままである。続編である「風の海 迷宮の岸」も近いうちに読んでみたいと思った。

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「歌舞伎町ゲノム」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「歌舞伎町セブン」「歌舞伎町ダムド」に続く歌舞伎町セブンのシリーズ第3弾。今回は短編集として5つの物語を収録している。

最初の2編は過去の物語に似た、悪者制裁の物語。そして後半3編はややイレギュラーなドタバタ劇。最後の1編は過去の歌舞伎町セブンやほかの誉田哲也の物語に絡む物語なのでシリーズのファンには欠かせないだろう。

この物語はやはり、悪者制裁のスッキリ感がいいのだろう。世の中では必ずしも悪者が報いを受けるとは限らない。だから人は、遠山の金さんとか、必殺仕事人とか、水戸黄門に惹かれるのであり、歌舞伎町シリーズもまさにそんなニーズに応えているのだ。そういう意味では、今回のように複雑な人間模様が描かれて悪者制裁が行われない物語というのはニーズとは違うのかもしれないと感じた。僕自身読んでいて、単純な前半の2編の方が楽しめた気がする。

とはいえ、著者としては単純な物語はよりも、入り組んだ人間関係やにしたり複雑な心情描写を入れ込んだりするほうが描きごたえがあるのだろう。

【楽天ブックス】「歌舞伎町ゲノム」

「チーズはどこへ消えた?」スペンサー・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ネズミのスニフとスカリー、小人のヘムとホーの2匹と2人は迷路のなかでチーズを探している。チーズを見つけたり失う中で、それぞれの異なる行動をする

彼らのチーズに対する行動のしかたから世の中の変化に対する心構えを教えてくれる。もっとも、教訓となるのは小人で、チーズがなくなったときに今までいた場所に固執し、新たな挑戦をしようとしなかったヘムだろう。

世の中は常に変化し、それにあわせて自分も変化していかなければならない。そんなことを2匹と2人のキャラクターの小さな物語で教えてくれる作品。誰しも多少なりともヘムの要素は持っており、はっとさせられる部分はあるかもしれない。

本書は、同窓会で集まった一人がこの話を他の同窓生に語るという内容だが、印象的だったのは、「変化恐れている人?」と聞いた時にほとんどの人はそれを認めようとしなかったことだ。自分自身も、変化を恐れたヘムのようになっていないか、常に意識して生きていきたいと思った。

【楽天ブックス】「チーズはどこへ消えた?」

「Sworn to Silence」Linda Castillo

オススメ度 ★★★★☆ 3/5

オハイオ州で質素な生活を営むアーミッシュの村で虐殺された少女の死体が発見された。アーミッシュの村で育ったKateは誰にも言えない過去を隠しながらも、捜査を指揮することとなる。

本書の魅力はなんといってもアーミッシュという民族を、ミステリーに絡めているところだろう。映画などで登場することもあり、観光にもなっているぐらい有名なアーミッシュという民族であるが、実際にはまだまだ誤解されている部分も多いらしく、本書はそんなアーミッシュの生活を理解する上でも大いに役立つのではないだろうか

物語は、胸にローマ数字を描いた死体の発見から始まる。10年以上前にもその村では同じように胸にローマ数字を描いた惨殺事件が続いており、Kateは自分と兄と父の3人で10代のときにその犯人を殺したために、その惨殺事件が終わったと信じていた。同じ手法の事件がこうして十数年の時を経て再び発生したために、Kateは実際には自分が犯人と思った人間は生き延びていたのではないかと信じ、過去に再び向き合うこととなるのである。

多少のひねりとアーミッシュの村が舞台、という以外は、すでにあふれている刑事ミステリーの一つと言える。残念ながら大きな驚きはないだろう。

「The Steel Kiss」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
Lincoln Rhymeシリーズである。AmeliaとRhymeはは電子機器のリモートコントロール機能を利用して殺人を起こす人物の捜査に乗り出す。

一方Pulaskiは過去の事件によって引退を決意したLincoln Rhymeを再び第一線の捜査に復帰してもらうために、その事件を独自に調べ始める。また、Ameliaの前には、昔の恋人Nickが出所し「自分の無実をはらすために手伝って欲しい」と告げる。Lincolnは自らが行う講義の生徒として参加していて同じく車椅子のJuliette Archerをインターンとして迎え入れる。

それぞれの登場人物が犯人の操作とは別に、それぞれの抱えている問題に取り組んでいく。

事件の捜査はこのシリーズでおなじみ現場に残された物質を細かく分析してそのソースを特定しながら犯人に迫っていくとく流れなので説明するまでもないが、新しい登場人物や新しい犯人の指向性がシリーズを面白くしている。今回はJuliette Archerの存在だろう。同じように車椅子での生活になったArcherに対して、これから迎えるであろう人生のしょうがいの多くを想像し同情するRhymeの気遣いが興味深い。

間が空くと前のシリーズの内容が思い出せないので、なぜLincolnが事件の捜査からの引退を決意したのかわからないのだが、機会があったら前作品も読み直してみたいと思った。

「高校事変II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
平成最後のテロリストの次女、優莉結衣(ゆうりゆい)が生活する養護施設で同じ高校に通う高校生奈々美(ななみ)が行方不明になった。奈々美の妹の理恵(りえ)に頼まれ、奈々美の捜索に乗り出す。

いきなり第二弾から読み始めてしまったが物語時代はそれなりに楽しむことができる。おそらく第一弾を読んでいるともっと全体の流れがわかるのだろう。物語は女子高生の売春組織に関わった奈々美(ななみ)の失踪から大きな連続殺人事件へと発展していく。最新のIT事情などの技術的題材が随所に散りばめられているところが松岡圭祐らしいが、物語から何か刺激を受ける部分があるかと聞かれると少ないかもしれない。むしろ登場人物と同世代の高校生向けの内容にも思える。

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「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その喫茶店のある椅子にすわると過去に戻ることができるという、しかしそこには守らなければいけないルールがある。そのルールが多くて複雑なゆえにあまり利用する人はいないのだが、それでも利用した4人の物語を扱っている。

時間旅行をテーマにした4つの暖かい物語。一時期中吊り広告など見かけたので手に取った。

時間旅行をテーマにした物語はすでに世の中に溢れかえっているので、そのなかでどうやって独自性を出すか、というのが時間旅行を題材とした作品にとっては常に課題となるだろう。本作品は過去に戻る際に守らなければならない多くの複雑なルールによってそこに対処している。

その複雑なルール、時間旅行しても意味がないんではないかというルールによって、その喫茶店を知る多くの人が、試すことすらしないなかで、それでも過去に戻る、未来に行く、という選択をした4人の人間の物語を扱っている。正直、物語として何が新しいかというと、それだけなのだが、軽く暖かい気持ちになりたい人には悪くないのではないだろうか。

【楽天ブックス】「コーヒーが冷めないうちに」

「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人


「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

著者はあるとき、仕事における生産性の高い人に共通する行動について気づいた。それは「イシューからはじめる」ということ。本書はそんな「イシューから始める」」という考え方を順を追って説明している。

まず、本書で触れているのはイシューの見つけ方。ここで陥りやすい失敗例を語っている。それは、答えの出ない問題に取り組んでしまうということである。本書では「悩む」と「考える」という言葉の違いを、「悩む」は答えのないものに時間を費やすこと、「考える」は答えのあるものの答えを出すために時間を費やすこととして、答えの出ない問題に取り組んでしまうことの危険性を説いている。

良いイシューの条件として次のように語っている。

1.本質的な選択肢である
2.深い仮説がある
3.答えを出せる

また、イシューを特定するための情報収拾の方法も次のようにしている。

1.一次情報に触れる
2.基本情報をスキャンする
3.集めすぎない・知りすぎない

またイシューを特定するための5つのアプローチは次の5つである。。

変数を削る
視覚化する
最終形からたどる
「so what?」を繰り返す
極端な事例を考える。

後半では、分析の仕方、分析結果の伝え方についても触れているが、本書の重要な部分はイシュー特定の前半部分に凝縮されていると感じた。実際の現場での課題解決の場においても、間違った課題に取り組んでしまうとその後のフローにおける無駄な時間が膨大になることを考えると、イシュー特定がどれほど重要かわかるだろう。

全体的には、この本の評判の高さに比べると若干期待はずれだったかもしれないが、自分の毎日の仕事のやり方に対して改めて考えてみるきっかけにはなった。

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「Dancing with the Sun」Kay Bratt

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
過去に悲劇に引きずられながらも人生の決意を新たにした母Sadieは、それを伝えるため娘のLaurenを訪問するが、帰り道に太一よったハイキングの最中に道に迷う。荒野の中で2人で過ごすことにより今まで見えなかったものが見えてくる。

ヨセミテ国立公園のハイキング中に道に迷った母娘の様子から始まり、徐々にその過去が明らかになっていく。Sadieは数年前に長男を失っており、Laurenはその後引き取られた養子だということが明らかになる。失った長男の悲しみから抜け出せないSadieと、失ったみたこともない兄の幻影を感じながら成長した娘Lauren、そして、同じように長男を失った悲しみを経験しながらも違う生き方を選んだ父親の温かく優しい物語。

遭難中の場面ではややスピード感に欠ける部分もあるが、最後は感動する家族の物語。どちらかというと女性の読者に好まれる内容なのではないだろうか。

「かがみの孤城」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年本屋大賞受賞作品。いじめられて学校にいけなくなった中学生の小川こころはある日、部屋の鏡が光っていることに気づく。鏡の中には、城がありそこには同じ世代の7人の男女が集まっていた。

鏡の中に集まった7人の中学生は、1年間の期限のなかで城のなかに隠された鍵をさがすことを依頼される。その鍵を見つけると一つだけ願いが叶うという。

なぜこの7人が選ばれたのか、城はなんのために作られたのか、さまざまな疑問を持ちながらも、城での時間を楽しむ中で少しずつ7人は秘密や悩みを共有し、親密になっていく。すでに辻村作品を読み慣れている人であれば早い段階で仕掛けに気づくかもしれない。それでも最後は優しい感動を感じることだろう。

【楽天ブックス】「かがみの孤城」