「Salvage the Bones」Jesmyn Ward

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2011年全米図書賞受賞作品。ミシシッピ州に住むEschと3人の兄弟はハリケーンカトリーナの上陸に備える。

母を失った家庭で父と3人の兄弟と生きる女の子Eschの視点で描く。一番上の兄Randallはバスケットに情熱を注ぎ、二番目の兄Skeetahは闘犬に入れ込む。物語はSkeetahのお気に入りの闘犬のChinaが子供を産むシーンから始まる。

弟のJuniorの面倒を見ながらもSkeetahとともに犬の世話をしながら日々を送るEschは、自分の体調の変化から、妊娠に気づくのである。弟のJuniorの誕生とともに母を失った家族の中で唯一の女性であるEschは戸惑いながらも日々を送る。1人秘密を抱えながら生きるEschからは男の中で強く生きなければいけない女性の葛藤が見えてくる。

After Mama died, Daddy said, What are you crying for? Stop crying. Crying ain't going to change anything. We never stopped crying. We just did it quieter. We hid it.
ママが死んでからパパは言った
「泣いてどうするんだ? 泣くな、泣いたって何も変わらないぞ」
でも人はなくのをやめない。静かに泣くようになるだけ。隠れて泣くようになるだけ。

そして、少しずつハリケーンカトリーナの上陸が近づいてくるのである。大きな台風を話でしか聞いたことのないEschやその兄弟は、台風に備える父をどこか冷めた目でその様子を眺めるのである。

アメリカ南部の裕福とは言えない黒人の家族の様子を見せてくれる点が新鮮である。また、ハリケーンカトリーナという出来事を当事者の目線で伝えたものに触れたのが今回初めてだったので、ニュースで触れるのとはまた違った視点で大きなハリケーンの様子を知ることができた。

英語慣用句
cuss 悪口を言う
fishing pole 釣竿
concession stand 売店
lead sinker (釣りの)おもり

「The Friend」Sigrid Nunez

オススメ度 ★★★☆☆ 2/5
2018年全米図書賞受賞作品。自殺した友人が遺した犬Apolloを飼うこととなった女性の日々を描く。

物語は、自殺した友人の過去の妻と話したり、友人が遺した犬と過ごす中で彼女が考えることを書いている。彼女自身も作家であり、作家志望の人々向けにワークショップを開催しているため、小説を書くという生き方についてのさまざまな、考えが書かれている。

But remember, there is at least one book in you that cannot be written by anyone but you.
My advice is to dig deep and find it.

その一方で、さまざまな文学作品や著名な作家が引用されるので、世界の文学作品に普段からどっぷりつかっているような人にはもっと楽しめるのかもしれない。

作家という独自の視点からの面白い考えもあったが、物語としては大きな動きもなく、文体自体もかなり読みにくい。正直な感想として同じ作家の本を読みたいとは思わなかった。本書が全米図書賞受賞ということでかなり玄人受けする作品なのかもしれない。

英語慣用句
john sting 性犯罪利用者を対象とした囮捜査
sting operation 囮捜査
gang up on 団体で攻撃する