オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第34回柴田錬三郎賞受賞作品。水に魅力を感じる人々、自分の性癖がおかしいと知りながらも悩みながら生きていく様子を描く。
さまざまな性癖を持つ人物を並行して描いていく。水に魅力を感じる桐生夏月(きりゅうなつき)男性に恐怖心を抱く八重子(やえこ)を中心に、物語が進むに従って、同じように水に魅力を感じる人たちが描かれる。そんななか唯一、一般人の目線として描かれる検事寺井啓喜(てらいひろき)は、本書では理解力のない頑固な父親として描かれている部分もあるが、非常に論理的でありわかりやすいと感じた。
どんなに満たされない欲求を抱えていたって、法律が定めたラインを越えたのならば、それは、罰せられなければならない。
子となる性癖や価値観の存在を理解しようと努めることは大事だし、ネットによる晒しの私刑など社会的制裁は否定されるべきである。しかし法治国家として機能するためには結局これが許容範囲と犯罪を分ける境界線なのだろう。世の中はそれができているだろうか。不必要に非難したりしていないだろうか。
僕自身LGBTQの人々に理解がある方だと感じているが、では児童性愛者に対してはどうかというと自信を持って答えられない。しかし、好みは人の自由であり、法律を逸脱しない限り尊重されて良いのだと感じた。
凪良ゆうの本屋大賞受賞作品「流浪の月」が児童性愛者を描いていて評価されたときに驚かされたが、本書も性癖の特殊性を物語にした点が似ているなと感じた。世の中が、このようなテーマを受け入れて世の中に出そうという風潮がになってきたのだろう。