「幸福の意外な正体」ダニエル・ネトル

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幸福について研究した著者がその結果と結論を語る。

タイトルからもっと自己啓発的な本を想像していたが、思った以上に科学的なアプローチをしている。そのためやや小難しく読みにくい。

面白かったのは人間の6つの感情、恐れ、悲しみ、嫌悪、怒り驚き、喜びのうちプラスの感情は喜びの一つだけだという点である。著者の理解によると喜びの状態においては何も変える必要がないのに対して、その他の状態では現状を変えて改善する必要があるためだという。また、喜びは一瞬で飽きてしまうために幸せであり続けることが難しい、というのも興味深い指摘である。

結局のところ、幸せになるためのさまざまな要素を検証しているだけにすぎず、具体的に幸せになる方法をはっきりと語ってない点が残念である。唯一の幸せになるしさは次の言葉だろう。

あなた自身が何か、価値がある、挑戦しがいがある、大切である、と思えるものに意識を集中させていればいいのです。

間違えやすい幸せな方向についての指摘は知っているだけでも有用だが、もう少し面白く、もう少し人生に有用な形でかけたのではないだろうか、と感じてしまった。

【楽天ブックス】「幸福の意外な正体」

「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」ミニマリストしぶ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミニマリストの著者がその生き方や考え方を語る。

僕自身も、捨てられるものはさっさと捨てたいし、広いよりも最低限の広さがあればむしろ狭い部屋に住みたい、と考えるミニマリスト思考の持ち主である。今回、何かしら人生をさらに豊かにするヒントに出会えればと思い本書にたどり着いた。

すでにミニマリストという言葉が一般的に世の中で通じるようになって数年が経ち、また断捨離も流行っていることから、その考え方はそれほど目新しいものはないだろう。すでに少しでも実践したり、実践してないまでも興味を持って調べたことのある人にとっては、本書で書いてあることも、特に驚きを与えるようなことではないだろう。例えば次のような内容である。

  • 冷蔵庫は持たない
  • テレビは持たない
  • 狭い家に引っ越す
  • 毎日同じ服を着る
  • 財布は持たない
  • 「限定物」ではなく「定番物」を買う
  • 「レンタル」「シェア」を使いこなす
  • 「出口戦略」を考えて増やす
  • 時間を生み出すツールに投資する

僕にとっても、新しい考え方に出会うというよりも、もともと持っていた考えを改めて再確認する機会となった。唯一「こんな考え方もあるのか」と思った点を上げるなら次の2つだろう。

「一日一食」で生活する

たしかに、食事に関して、僕らは三食食べるべきという考え方に固執しすぎているのかもしれない。1人のときなど二食生活や一食生活を取り入れてみたいと思った。

物が人生を豊かにする、という思考から離れられない人にとっては何かしら本書から学ぶ部分があるだろう。

【楽天ブックス】「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」

「熱源」川越宗一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第162回直木三十五賞受賞作品。樺太で生きるアイヌの人々と、その生活に魅了されたポーランド人を描く。

1800年代後半から日本やロシアなどの大国が戦争へと突き進む中、樺太で生きるアイヌの人々を描く。特に、アイヌの男性ヤヨマネクフとブロニスワフ・ピウスツキという、リトアニア生まれのロシア人を中心に物語が進む。 ヤヨマネクフは日本とロシアの領土問題で所属する国が変わる中、アイヌの文化や存在価値を認めてもらおうと苦悩する中で、ロシアや日本を行き来する。一方ブロニスワフは、リトアニアという地域に生まれ、自らの祖国をロシアという大国に取り込まれ、母国語を強制的に奪われたことで、まさに同じような境遇に向き合っているアイヌの人々に惹かれていくのである。

アイヌを題材に扱った作品だと、漫画の「ゴールデンカムイ」が最近では有名である。「ゴールデンカムイ」はどちらかというと、物語のなかの登場人物として、アイヌの優れた文化などを紹介しているが、本書はむしろ日本とロシアの領土問題に翻弄され、文明化が進む世界のなかでアイヌの文化をどのように存続させていくかの苦悩を中心に描かれている。

知識としてアイヌという民族の存在は知っていたが、北海道に住む民族という印象しかこれまで持ってなかった。もちろんロシアと日本という領土の問題と絡めてその存在を考えてみたことがなかったので、本書では初めてそのつらい歴史に目を向けさせてもらった、また、熊送りや女性が口に施す刺青など、これまで知らなかったアイヌの文化を知ることができた。

狩猟最終民族としてのアイヌの文化を維持することはつまり、文明化の流れにのらないこと、それは世界から孤立、民族の衰退である。そんな文化の維持と民族の存続という両立ならぬアイヌの葛藤が物語から感じられるのである。

しかし、その一方でこんなことも感じた。交通手段や情報の障壁が少しずつなか、人類の歴史において消えてった民族や言語、文化は数知れず、それに抵抗して自分たちの民族を残そうとすることはそこまで重要なのだろうか。もちろん今日明日、急に日本がなくなる、日本語を話すのは禁止と言われれば大きな抵抗はあるだろうが、100年200年単位で民族や文化が消滅したり他の民族と混ざり合ったりして個性が失われていくのは、人類の発展の中で避けられないことなのではないだろうか。

アイヌの歴史や苦悩だけでなく、文化や民族のありかたに目を向けさせてくれた。日本からロシアまで壮大なスケールと詳細に調べたであろう歴史を見事に融合したすばらしい物語。

【楽天ブックス】「熱源」

「A/B Testing:The Most Powerful Way to Turn Clicks Into Customers」Pete Koomen, Dan Siroker

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ABテストプラットフォームの先駆者であるOptimizelyのCEOである著者が、そのサービスやクライアントを通じて得られたABテストの知見を語る。

最近我が社でもまたABテスト熱が再燃しており、少しでも組織として意味のあるABテストができるようにと思い本書にたどり着いた。

ABテストを専門的に取り上げた書籍を読むのは本書で3冊目になるが、ABテストのプラットフォーマーとしての視点で書かれたものに触れたのは本書が初めてである。 序盤はオバマ大統領の大統領選におけるABテストの貢献の大きさなど、さまざまな形のABテストによる改善例を示している。

そんななか本書ではABテストの流れを次の5つのステップとしている。

1.Define Success
2.Identify bottlenecks
3.Construct a hypothesis
4.Prioritize
5.Test

1の成功の定義は必ず言われることで(とはいえ抜けがち)特に新しくはないが、2のIdentify bottlenecksという考え方は他のABテスト関連の書籍にはなかったので新鮮に感じた。向上などの生産効率を上げるためにはボトルネックという考え方は一般的だが、より良いサイト制作においても、目的のコンバージョンに対して、トラフィックがどこで止まっているのか、そんなボトルネックにもっと意識を向けるべきなのだろう。

またMicroconversionとMacroconversionというように、コンバージョンを二つに分けて考えている点も興味深い。3のConstruct a hypothesisでは、単純に思う仮説ではなく、ユザーインタビューやご意見フォーム、フォーカスグループなどを通じてより精度の高い仮説を挙げることを推奨している。この辺はかけられる工数によって実践していきたいと思った。

中盤以降では、実際に組織にABテストの文化を組織に浸透させる方法について、外部のサービスを利用する方法や新たにエンジニアを雇って組織内にテストチームを作る方法など、それぞれのメリットやデメリットを書いている。

全体のなかで特に印象的だったのは次の言葉。

A question worth asking about every test is, "Would you be happy showing the winning variation to all of your traffic" 
「勝ったテストパターンをすべてのユーザーに喜んで見せられますか?」と尋ねてみるべきです。

つまり、結果が良かったテストパターンが必ずしも正解というわけではなく、例えばユーザーがクリックするボタンが絶対的に正しければ、世の中のボタンはすべて女性の裸になってしまうということである。組織として、ブランドとして、そのテストパターンを世の中に自信をもって出せるのか。それを考えずに思いつくままテストをしてしまうと、ただ時間や労力の無駄になりかねないのである。

また次の冗談も、いきすぎたABテスト主義を抑制するために使えることだろう。

 There's a joke among A/B testing veterans that almost any variation of a button loses to a button that says "Free Beer." ABテスト業界にはこんな冗談があります。どんなボタンバリエーションも「無料ビール」というボタンには叶わないと。 

ABテストの方法にさらなる理解を与えてくれる内容である。本書の上の言葉に出会って、早速醜い見た目、誤解を招きかねないABテストパターンを実践している自社のABテストを改善したくなった。

「まだ「会社」にいるの? 「独立前夜」にしておきたいこと」」山口揚平

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
数々の企業再生に関わったあとに独立・起業したした著者が、会社を辞めて独立する際の心構えを語る。

文字とスペースが大きく、明らかに内容が薄い本で必死にページ数を稼いでいるという印象である。順序立てて書いているわけでもなく、思いついたことをただひたすら見出しをつけて書き綴っている。 唯一印象的だったのは、メンターと、自分がメンターする相手を持つ、メンターラインおよび技術についての師匠と弟子を持つ、マスターラインという二つの人間関係の軸を持つことを重視している点である。もちろん、分野によっては自分にあった師匠やメンターを、および弟子や後輩を持つことは難しいこともあるだろうが、そんな機会がないか探してみたいと思った。

なぜ、この本にたどり着いたかはもはや覚えていないが、自分のようにすでに複数回転職をして、楽しめる仕事を毎日している人間が読む本ではないと感じた。会社を辞めたいと思っているが辞められない人に、ひょっとしたら多少背中を押すような内容になっているのかもしれない。

【楽天ブックス】「まだ「会社」にいるの? 「独立前夜」にしておきたいこと」

「一流のランナーは必ずやっている!最高のランニングケア」佐藤基之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなストレッチや筋トレの方法を、ランニングで痛みが発生しやすい場所に応じて書いている。

僕自身も長く膝の外側の痛みに悩まされてランニングできない期間があったので、同じことを繰り返さないようにと、体のケアに関心が高まっており、そんななか本書に出会った。

なにより故障の発生しやすい場所別にストレッチや筋トレ方法を紹介している点がありがたい。早速、膝の痛みの解決策として紹介されているストレッチを取り入れたいと思った。

また、現在は特に痛みがなくても、長くマラソンを続けるとこんな痛みが発生する可能性がある、ということを知るきっかけにもなった。膝以外に痛みが出た際には改めて本書に戻ってきたいと思った。

【楽天ブックス】「一流ランナーは必ずやっている!最高のランニングケア 悩み別予防ストレッチ&トレーニング」

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

【楽天ブックス】「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」

「ブレインメンタル強化大全」樺沢紫苑

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

精神科医の著者が、睡眠、食事、運動の人生のおける重要性と、より良い睡眠、食事、運動の仕方を語る。

著者自身多くの本を読んでいるようで、それぞれについて様々な研究結果を引用している。どこかで聞いたような話や、別の本で読んだ話も多く、「〜のようだ」「〜の研究もあります」など、自分自身は読んだだけで実験したわけでもなく、ただ著者自身が気に入った情報を切り貼りしただけという印象が拭えない。

著者自身かなりの健康マニアだということがひしひしと伝わってくるが、人間何かを信じ始めると欲しい情報ばかりが見えてくるもの。そんな傾向を警戒した上で、話半分に本書を読むのがちょうどいいかもしれない。

参考文献が末尾にしっかり書かれているので、興味を持った分野はオリジナルの本を読むのがいいだろう。

【楽天ブックス】「ブレインメンタル強化大全」

「レンジ 知識の「幅」が最強の武器になる」デイビッド・エプスタイン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

世の中には早くから専門分野を決めてその分野で一流になった人と、いろんな分野を試してから一つの分野にたどり着き遅咲きながら一流になる人がいる。どちらのタイプが今後必要とされ、親として子供を育てる場合どちらのタイプを目指すべきなのか、様々な事象から語る。

本書で語っているのは、個人でも組織でも専門に特化することで起こりうる危険性である。様々な分野が確立され、その分野で研究し議論しその分野のなかで考えることに慣れて過ぎてしまうことで、別の視点に立てば簡単に解決することができるの気付かない、ということが起こるのである。 著者は、専門家と多様な知識を持った人間のバランスこそが、新しい分野を切り開いたり、これまで未解決な問題を解決するのに必要なのだという。

そして、インターネットによる誰でも情報に簡単にアクセスできるようになった今、専門家のニーズは以前より少なくなっていると語っている。

組織だけではなく、個人の技術やモチベーションについても同じことが言える。最近10000時間の法則などがあらゆる場所で語られており、それによって、早期教育への関心が高まっているが、本書の主張はそんな流れを考えすのに良いきっかけになるだろう。

早く分野を決めて取り組めば、たしかに人より先んじてリードすることはできるが、様々な分野を体験しないで決めた分野はモチベーションが保ちづらく、いろんな体験をしてからその分野に参加した人にやがて追い抜かれていくのである。

本書の魅力はその話を展開するなかで引き合いに出されるさまざまな話である。タイガーウッズとフェデラーに始まり、任天堂のゲームウォッチや、スペースシャトルチャレンジャーの話など、興味深い話があふれている。本書の語っている、知識の「幅」の重要性が理解できる人なら、そんな様々な実話や逸話もしっかりと楽しんで、自分の知識の「幅」の一部にしたいと感じるに違いない。

【楽天ブックス】「レンジ 知識の「幅」が最強の武器になる」

「習慣が10割」吉井雅之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
習慣の持つ力と、習慣の続け方を語る。

僕自身習慣化を得意としており、それによって自分のなりたい自分になれている気がするが、さらに精度を上げるヒントに出会えればと思い本書を手に取った。

序盤は習慣の重要性を語っており、世の中のすごい人たちは才能に恵まれたわけではなく、単に習慣を味方につけただけでそれは誰にでもできることだと語り、中盤以降は習慣をつくるための心がけについて語っている。

  • とにかく「ハードル」を下げる
  • ゲーム感覚でやる
  • 「仕組み」を作る

どれも習慣の得意な人はすでにやっていることだろうが、こうやって言葉として並べてみると、習慣化できない人の問題点が見えてくる。

また、面白いなと思ったのが本書で紹介している「クリアリング」という習慣で、自分の1日の行動を振り返る行為である。落ち込んだ日や、物事がうまくいってない時などは取り入れてみると面白いかもしれない。

メルマガやブログ、貯金など、若干考え方が古いなと感じる部分もあったが、その辺は著者がかなり年配な方のようなので仕方がないだろう。すでに習慣を実践できている人にとってはあまり学ぶ部分はないかもしれない。ただ、これから習慣をつくろうと本気で考えている人には、本書に大部分の習慣化に必要な考え方は書かれているので、きっと役に立つことだろう。

【楽天ブックス】「習慣が10割」

「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」小出義雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高橋尚子の指導者として有名な著者がその練習法を語る。

最近膝の調子が良く、また定期的にジョギングができるようになったので、そのジョギングの時間の密度を向上したく思い、マラソン関係の本を漁る中で本書にたどりついた。

本書は大きくサブ4向けとサブ3向けの練習メニューや考え方が書かれている。なかでも特徴的なのがすべての練習において後半にペースを上げることを重視している点である。サブ4は足づくりだけで達成できて、「心肺の強化」は必要ないとしている。練習はジョギング 、ビルドアップ、タイムトライアル、長く走るの4つの練習を繰り返し、基本的な考えは次の内容になる。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち2日はジョギングで、2日は休み。
2.平日の練習時間はだいたい60分で。うち1日はポイント練習日にする。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

一方でサブ3を目標とした場合、インターバル走やペース走を含めた構成としてしており、次のような考え方で練習メニューを組むのを進めている。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち3日はジョギングで、1日は休み。
2.平日でも、場合によっては練習時間が2時間ぐらいかかる日がある。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

最近いろんなところで議論が起きるLSDについては、著者はLSDという言葉は使っているが、単に長く走ることを指しており、一般的に言われるLSDのようにゆっくり走ることは意図していないようである。

具体的な練習メニューのほかに、オリンピックメダリストの有森裕子や高橋尚子とのエピソード、それ以外にも小出道場の練習生のレース完走記を紹介している点が面白い

【楽天ブックス】「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」

「How to Win Friends and Influence People」Dale Carnegie

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

人にどのように好意的な印象を与え、自分の求めている人間関係を作り出すのか、そんな方法について書いている。 なんといっても驚くのは、本書の初版が1937年に書かれているということ。その後の改定では、書かれている例などを時代の変化に合うように、また新たな年代の人にもわかりやすいように書き換えただけと言うこと。つまり、人間の本質は時代を経てもほとんど変化がないということである。しかし、人に怒りをぶつけたり嫉妬に狂って物事をまっすぐ考えられない人はいつの世の中にもたくさん存在するのである。

基本的にどのように人に好印象を与えるか、どのように自分の意見を相手が受け入れやすい形で伝えるか、という点が多く書かれている。 昨今コーチングなどの書籍も多く、ただ叱るだけでは何も解決しないことを認識している人も多いだろう。そんなわけで本書に書かれているすべてが新鮮だというわけではなかったが、ぜひ今後実践したいと思ったのが次の項目である。

Techniques in Handling people 人をうまく扱うには
3.Arouse in the other person an eager want. 相手の中に欲求を起こせ

Make People Like You 人に自分を好きにさせるには
2.Smaile 笑顔でいなさい。
6.Make the other person feel important and do it sincerely. 相手に自分が大事にされていると思わせ、それを誠実に行いなさい。

Win People to Your Way of Thinking 人に自分の考え方を伝えるには
5.Get the other person saying “yes, yes” immediately. まずは相手にはいと言わせなさい。
7.Let the other person feel that the idea is his or hers. 相手にそのアイデアは彼のものだと思わせなさい。
10.Appeal to the nobler motives. さらに崇高な目的のためだと主張しなさい。

Be a Leader リーダーになるためには
4.Ask questions instead of giving direct orders. 直接の命令をするのではなく、問いをなげかけなさい。

すべての考え方が新鮮だったわけではなかったが、本書には多数の歴史的事実が例として含まれており、それらはどれも面白く好奇心を刺激してくれた。こうして事実を話として聞くと、単にフレーズを聞くよりもはるかに記憶に残る。その点でも本書は評価が高いのだと感じた。時々読み返したいと思える一冊である。

「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー vs 人類最強の“走る民族”」クリストファー・マクドゥーガル

★★★★☆ 4/5
怪我に悩まされてきた著者が、メキシコの奥地に住む走る民族タラウマラ族を探しの旅に出たことをきっかけに、改めて走ることに魅了され歴史的なレースに巻き込まれていく様子を描く。

タラウマラ族という走ることを得意としながらも人前に出ることを嫌った民族の話。人間は走ることに向いているのかそれとも向いていないのか、ランニングシューズは人間の走る能力を向上させているのかそれともダメにしているのか、など、走ることに関連した様々なテーマを取り上げて説明していく。

そして同時に著者は、カバーヨ・ブランコという名の男に出会ったことで、若くて勢いに乗っている女性ランナーや、過去の伝説的なランナーなど、様々なランナーたちと出会い、やがて一つの歴史的なレースへと巻き込まれていくのである。

序盤は話が行ったり来たりして最初は本書の焦点がどこにあるのかわかりにくく、翻訳せいもあってお世辞にも読みやすくはない。しかし、流れがつかめてくると、本書が伝えようとしている、人間の進化と走ることの深い関わり合いや、走ることの魅力に魅了されるだろう。本書を読み終えたらきっとみんな広い大地を思いっきり走りたくなるに違いない。

【楽天ブックス】「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー vs 人類最強の“走る民族”」

「短くても伝わる文章のコツ」ひきたよしあき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
博報堂スピーチライターの著者がわかりやすい文章を書く秘訣を語る。

印象的だったのは文章のエッセンスを読み取る力を養う

1ページ1ライン法

というもので、そもそも文章の中にそれほど多く重要な要素はなく、1ページに1箇所ていどなのだというのである。また、わかりやすい文章を書くためのコツとして挙げているのが

「接続詞」をうまく使うコツは「“が”禁止」と「定型文」

というものである。著者は接続詞を文章の方向指示器としてその重要性を強調しており、「が」という曖昧な接続詞は極力避け、「でも」「だから」「それゆえ」などの接続詞を使用することで、前後の関係を明確になるのだという。

中盤からは敬語や習慣の話に焦点が移っていく。敬語の話はすでに文章のコツではないと思うが、興味深かったのはら抜き言葉の判断のしかたの考え方である。

命令形にしたときに「ろ」で終わる言葉は、「見られる」となります。つまり「ら抜き言葉」にしてはいけません。

前半はともかく、中盤以降は著者の習慣やこだわりなど、ただページを増やすだけを目的に語っているだけの印象を受けが、前半に出てきたいくつかの考え方は早速取り入れたいと思った。

【楽天ブックス】「短くても伝わる文章のコツ」

「The Girl Who Lives Twice」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Salanderは妹Camillaとの対立を激化させていく。一方でBlomkvistは自分の電話番号を持ったまま亡くなった、不可解のホームレスの死の謎に惹かれていく。

ミレニアムの第6弾である。最初の3作品の面白さゆえに著者が変わっても続編ということで読み続けている。

BlomkvistはSalanderの力を借りて、亡くなったホームレスは特別な遺伝子を持ったネパール生まれのシェルパであることを突き止める。彼はなぜスウェーデンの地に現れたのか。そして、彼が死の間際に口にしていた言葉の意味とはなんなのか。やがて、Blomkvistはやがて世間を騒がせたエベレストの事件にたどり着くのである。

一方でSalanderは妹Camillaの動向を常に観察し、Camillaもまた、Salanderを見つけるために躍起になり、まさに殺すか殺されるかという状況に陥っていく。

エベレスト登山の過酷さを扱った物語は、実際に起こった第遭難事故を暑かった映画「エベレスト」や「淳子のてっぺん」などでこれまでにそのいくつかに触れているため知識としては知っていたが、本作品はそこに改めてシェルパとしての立場からの視点をもたらしてくれた。

ただ、それ以外には特に新鮮さや際立った驚きはなく、特に、SalanderとCamillaの追跡劇は、ようやく向かい合った因縁の対決にしては、古いアクション映画のような展開の薄っぺらさや稚拙さを感じてしまった。

このシリーズは最初の著者Stieg Larssonからに引き継がれて3作品目になるが、全体的にも、展開が安っぽくなったという印象は否めない。むしろ人の作り出した世界観に習ってここまで3作品書いてきた著者David Lagercrantzを評価すべきなのだろう。Stieg Larssonの作り出した世界観を壊してはならない一方で、作家として生きる以上自分の個性を出していきたい、など、いろんな葛藤があったに違いないが、そろそろ潮時なのかもしれない。

「GACKTの勝ち方」GACKT

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな能力を身につけているGACKTがその生き方を語る。

テレビやメディアなどでは、語学やポーカーなどさまざまな能力を身につけている印象がある。僕自身GACKTのファンという訳では特にないが、その生き方や考え方に何かしら参考になる部分があることを期待して本書を手に取った。

本書によると、それ以外にもさまざまなビジネスを手がけており、自らのブランディングを非常に住してしているという。本書ではGACKT自身が持っているさまざな考え方を書いているが、もっとも印象的だったのが次の考え方である。

一般的には

知・覚・考・動

という言葉の、最後の2つを入れ替えて、

知・覚・動・考

とし、「ともかくうごこう」と読むことで、行動することの大切さを強調しているのである。

またそれ以外にも多くの印象的な言葉が引用されておりそのいくつかは覚えておきたいと思った。読む前は、そもそもタレントの出している本にそこまで期待するべきではない、と期待値は低かったが、予想以上に楽しむことができた。GACKTに限らず、成功している人は行動の重要性を熟知しており、ポジティブな考え方をしており、失敗も大きな学びの機会と捉えているという点は共通している。今回も改めてそんな生き方の重要性を感じた。

文字が少なく1時間ほどで読めてしまう内容なので値段ほど価値があるかは読み手次第ではあるが、個人的には悪くなかったと感じた。

【楽天ブックス】「GACKTの勝ち方」

「ここで差がつく!英文ライティングの技術 英語はIで始めるな!」鈴木健士

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
英文のライティングについて説明する。

日本人が英語を書こうとすると、どうしてもIで始めたり、soでつなげたりしがちである。話し言葉でならそれは許容できても、書き言葉でそのような書き方をすると、文章自体の密度も薄れて稚拙に聞こえてしまう。本書はそんな日本人がやりがちな英文ライティングの改善方法を説明している。

第一章では文章をカタマリにする方法を説明している。カタマリにすることでより洗練された文章になるのである。

(改善前)I deeply loved her, so I was able to oercome all the obstacles.
(改善後)My deep love for her enable me to overcome all the obstacle.

いくつかよくあるパターンを知っているだけで応用の効く考え方である。本書における重要なことは第一章でほとんどすべて語られているが、第二章では実際の日本人ば書きがちなエッセイを例にとって、第一章の考え方を利用して改善していく。カタマリ化だけでなく、importantやgood、badという言葉を使いがちな箇所も

play an important role

have a positive effect, have a negative effect

で置き換えると一気に英語らしくなる。

コンマやwhich、〜ingによる並列の書き方、そして「一生懸命〜したので・・・」を「My commitment/dedication/devotion」で言い換えるのも非常に便利だと感じた。同じように「もし〜が増えたら」「もし〜が減ったら」「もし〜があったら」「もし〜がなかったら」なども日本語から英語を構成しようと考えると長くなりである。しかし、「More…」「Fewer…/Less…」「With…」「Without…」で始めることで、短い文章で表現できるのであるどれも、なかなか慣れていないとできないことなので、ライティングに限らず、会話でも自然に出てくるようになるまで意識して使っていきたいと思った。

世の中には英語学習の本は溢れており、残念ながら英語学習の表面をなぞっただけのような本が多い。しかし、本書はそんななかでも非常に密度が濃くさらに読みやすいく、手元においておきたいと思える数少ない英語学習書籍の一冊である。早速英文のブログやCVに活かしてみたい。

【楽天ブックス】「ここで差がつく!英文ライティングの技術 英語はIで始めるな!」

「超訳 ニーチェの言葉」フリードヒ・ニーチェ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツの哲学者ニーチェの言葉をまとめている。

ニーチェという哲学者の名前は、おそらく多くの人が聞いたことぐらいはあるだろう。僕自身もそんなニーチェを名前だけ知っている一人だったが、今回同僚から薦められたこともあり、いい機会だと思って入りやすそうな本書にたどり着いた。

本書は1ページに満たないニーチェの短文を集めたもの。人間のあるべき生き方や愛や成長や心構えを語っている。何よりも驚いたのは、その一つ一つの考え方が現代でもまったく違和感なく伝わってくるというもの。「ニーチェって最近の人だったっけ?」と途中でニーチェが確かに100年以上前に生きた人であることを確認してしまったぐらい、まるで現代の人々を見て語っているような表現が多いのに驚かされた。

いくつか印象的だったもののタイトルだけ挙げると次のような内容である。

  • 脱皮して生きていく
  • 組織をはみ出す人
  • 所有の奴隷
  • そのままの相手を愛する
  • 愛と尊敬は同時にはもらえない
  • 読むべき書物
  • 真の教育者は解放する

タイトルを聞いただけでも現代の人間が見つめ直さなければならないものに合致しているのがわかるのではないだろうか。

ひょっとしたら人間関係に悩んでいる人、成長に悩んでいる人、愛に悩んでいる人は読んでみると何か気づきがあるかもしれない。

【楽天ブックス】「超訳 ニーチェの言葉」

「The Burial Hour」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アメリカで発生した誘拐犯がイタリアで新たに活動を開始した。Rhyme、Amelia、Thomはイタリアに降り立ち、現地の警察とともに誘拐犯Composerを追い詰めていく。

Lioncoln Rhymeシリーズの13弾である。さすがに13弾目となると、犯人の手口もこれ以上新しくしようと思っても難しいだろうし、登場人物を増やすにも限界がありどうしても展開がマンネリ化してくる。しかし、今回は舞台を初めてアメリカ以外の国、イタリアに移して展開するという点で新しさを演出している。そして、それによってイタリアの警察関係者が多数登場するのも面白く、特に、トリュフなどの密輸入を管理する仕事をしながらも刑事になることに憧れていたErcoleがRhymeの捜査にへの知識からComposer追跡チームへと加わり、不器用ながらも成長していく様子や、イタリアの警察組織の仕組みを描いているあたりが新鮮である。

今回の犯人であるComposerは音に非常にこだわりがある点が新しい。拉致した人間の鼓動や息遣いに病的なこだわりを見せるのである。Composerはどのような基準で拉致する人間を選んでいるのか、なぜイタリアを選んだのか、などが今回の大きな謎となる。

ただ、追跡自体はいつものように現場に残されていたわずかな痕跡を辿りながら薦められていく。この過程においてはシリーズを読み続けている人にとっては特に目新しさはないだろう。ただし人間関係においては一捻りもふたひねりもある展開になっていく。

最後はついにAmeliaとRhymeの待ちに待った幸せな時間が訪れる。2人の結婚式である。おそらくシリーズの中でも結婚式を描くのは本作品だけだろう。そういう意味においてはシリーズを語る上で読まなければならない一冊かもしれない。

「教養としての投資」奥野一成

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
投資会社を運営する著者が、投資について語る。

短期で株を売買することを投機、買うべき株を見極めて長く持つことを投資として分けており、投機をギャンブルとして、長く持つ投資を勧めており、投資のメリットデメリットを語っている。特に株を選択する際に、参入障壁があるかないかを重視するという点が印象的だったが、現在の状況でETFやインデックスファンドをメインに考えないで企業の株を買うことを重視するのは若干不自然に感じた。

日本人全体を投資嫌いと一括りにしているあたりも残念で、投資に関してふわっと全体的にさわっただけという印象である。世の中に投資の本が溢れていることを考えると、本書を読む特別な理由はないと感じた。むしろ複利の力を利用して豊かな人生を送ることを学ぶなら有名な書籍「FIRE」などが深く掘り下げているし、本書は読者のターゲットが定まらないまま、特に整理せずに著者が思っていることを羅列しただけという印象で、ただ本を出すために書いた著者のため本といった印象で、誇張表現も多く、誰かを幸せにすることを目的に書いていないのが伝わってくる内容だった。

【楽天ブックス】「教養としての投資」