「amazon 世界最先端の戦略がわかる」成毛眞

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな業界の勢力図を塗り替えて巨大な帝国を築きつつあるアマゾンのすごさとその戦略を語る。

GAFAとして、アップル、フェイスブック、グーグルと比較されることはあるが、そんななかでもアマゾンのすごいところは、業務の範囲を限定せずに手当たり次第に拡大している点だろう。そして不利と判断するとすぐに撤退し、有利と見ると資金力を活かして容赦無く拡大していくことが、本書を読むとよくわかる。

なかでも面白かったのは、楽天とアマゾンを比較する点である。企業の世界的なサイズは大きく違えと、日本では似た印象を持つこの二者であるが、著者はそのコンセプトには大きな違いがあるという。楽天のビジネスモデルは場所貸しなので、お客さんは出店してくれる企業だが、アマゾンにとってはお客さんはあくまでも消費者なのだという。そのため、初期は楽天が拡大しやすい一方、アマゾンは在庫管理や物流を整備しなければならない分時間がかかったというのである。言い換えれば、在庫管理と物流が整備されたら、楽天に勝ち目はないということだ。海外の本だとなかなか楽天とアマゾンを比較することはと思うだけに、この日本人目線の考察はありがたい。

知っていると思っている以上にアマゾンについて知ることができた。また、アマゾンの未来はそのまま世の中の未来になる点がおそろしくもあり、また楽しみである。全体的にアマゾンが今後つくっていく近い未来にさらに期待を抱かせる内容だった。特にAmazon Goの普及は楽しみである。

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「たのしごとデザイン論」カイシトモヤ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
アートディレクターである著者がデザインの仕事の仕方について語る。

少しでもデザイン力を向上させるてがかりになればと本書を読むに至った。

おそらく長年デザインをやっている人は同じような考え方にたどり着くのだろう。言語化の重要性とか、揃えるところとあえて崩すところを考えるなど、言っていることはどれももっともで、僕自身激しく同意することばかりで、今まさにデザイナーとしての道を歩き始めた人にとっては学ぶところがあるかもしれない。

ただ、残念ながら、書き方がダラダラと言いたいことをただ書き連ねるので読みにくい。デザイナーであるなら、無駄をそぎ落とすことの重要性をわかっているはずなのに、書籍においてそれをやらないというのがなんとも残念である。

ページ数を増やすという出版社側の意図かもしれないが、文字も大きく、ひょっとしたら「完全版」ではない前作の方がコアとなる部分だけにしぼった良い本なのかもしれない。

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「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある」山口真由

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
東大卒の著者がその学習方法を語る。

学習メソッド系の書的の多くに言えることで、読者として気をつけなければいけないのは、単にある程度成功した地位をたどり着いた著者が、自分がやってきた方法を紹介しているだけで、必ずしも、他のさまざまな方法と比較して確かにこの方法が効果があることを検証した結果、採用しているわけではないということである。

本書でも、著者がとってきた様々な方法を紹介しているが、紹介されているのは、効率を考えずにひたすら時間を費やす方法で、方法もサボらないための工夫といった感じである。著者は運動が苦手だとのことだが、確かにこの努力の仕方では、体力的に費やす時間の限られる(そうしないと怪我をする)運動はうまくならないだろうなと感じた。

一般的な人から見て、「並外れた努力」と見えるものも、実際に本人にとっては日々の考え抜かれたルーティンに従っているだけ、つまり方法論があるというのは同意である。ただ、その根本にある考え方はかなり僕自身とは異なると感じた。

特に自分とは大きく異なると思ったのは、著者のつぎの方法である。

「自分との戦い」に持っていかない
努力はまわりに見せること!

つまり、著者は常に周囲の目を意識しており、それを原動力にしてきたのだと感じる。本書全体から伝わってくる著者の努力が、結構つらそうで、楽しそうな感じをあまり感じられなかった。僕は、人と比較せずに昨日の自分とだけ比較し、そのもの自体を楽しむことを毎日繰り返せば、時間の経過とともに自然と技術や能力は向上できる、と考えており、かなり考えが異なると感じた。

また、この著者の例がすべてではないだろうが、勉強量だけ増やして、効率や楽しさを考えない人が、東大行ったり弁護士になって世の中を動かしていて、日本は大丈夫なんだろうか、と思ったりもしてしまった。もし、努力できずに困って本書を読むのであれば、あまり鵜呑みにせずに一つの考え方として受け取ってもらえればいいなと思った。

正直「方法論」と語りながらも、効率の悪さの目立つ根性論が多かった。いくつかアイデアとして面白いと思えるものもあったが、後半に進むに従って内容が薄くなりで、必死で本の厚みを増やそうとしているのが伝わってきた。

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「スタンフォード式疲れない体」山田知生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スタンフォード大学のトレーナーである著者が疲れない体づくりを語る。

スタンフォード大学は学業で有名な印象があったが、本書によるとスポーツでも長年目覚ましい成績をあげているという。本書はそんなスタンフォード大学で実践されている疲れの予防法について語っており、僕自身最近マッサージやストレッチなどコンディションづくりや体のケアに対して関心が高まっており、本書にたどり着いた。

まず、自らのコンディションを知ることの重要性を説いている。脈拍を定期的に測ることに「疲れ」を具体的な数値として計測できるようになるというのである。

そして、本書でもっとも印象的だったのはIAP呼吸法である。それはIntra Abdominal Pressureの略で「腹圧呼吸」とも書いており、簡単に言うと

息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法

である。つまり、腹式呼吸とも異なり、これによって体幹が安定し正しい姿勢になり、無駄な動きがなくなるというのである。どちらかというと腹式呼吸が理想の呼吸という印象を持っていたためIAP呼吸法の考え方は新鮮だった。

ダメージ療法として「アイス・ヒート」メソッドも紹介している。簡単にいうと怪我をして24時間までは冷やし、24時間以降は温めるという方法で、注意しなければならないのは、怪我をした翌日だろうと24時間経つまでは冷やすということである。

終盤d根は睡眠と食事の重要性について語っている。睡眠は最低でも7時間、週末も平日も同じ時間に寝ることを勧めている。食事については、他の書籍でも触れていることと特に大きな違いはなく、日本人は炭水化物を摂りすぎなので、タンパク質の割合を増やすことを意識しなければならないという。ただ、本書でも言っているように、食事は厳しくしすぎると続かないので、できる範囲で徐々に習慣づけていきたい。

呼吸法、脈拍の定期的な測定、アイス・ヒートメソッドは早速取り入れていきたいと思った。

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「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ノートルダム清心学園理事長の著者が生き方を語る。

前向きな人生を送るための考え方を語った本は、昨今世の中にあふれており、本書もそんななかの一つである。したがって、読むことに意味はないとは言わないが、この手の本をたくさん読む人にとってはそれほど印象的な言葉はないかもしれない。ただ、すでに出版時点で80歳を超えていることから、人間の晩年になってこそ見える考え方が伝わってくる。

老いるということにおいて、一番大切な仕事は、ふがいなくなった自分を受け入れて、いつくしむということだと気付きました。
一生の終わりに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ

ときどきその職業的背景ゆえか、キリスト教や神を引用して語ることで、無心論者には受け入れがたく感じるかもしれない。

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「Building a storybrand」Donald Miller

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ブランディングの手法について語る。

映画に必要な要素とブランディングに必要な要素は基本的には同じで、次の7つの要素だという。

1.登場人物 Character
2.問題 Problem
3.案内役 Guide
4.計画 Plan
5.行動 Calls Them to Action
6.失敗 Failure
7.成功 Success

次の3つの質問に答えられるだろうか。

1.What does the hero want? ヒーローは何を求めているのか
2.Who or what is opposing the hero getting what she wants? 誰がまたは何がヒーローがそれを手にすることを妨げているのか
3.What will the hero’s life look like if she does(or does not)get what she wants? ヒーローがそれを手にした時、ヒーローの人生はどうなるべきか

そしてユーザーが疑問に思うであろう、次の点が明確だろうか。

1.What do you offer? あなたは何を提供しているのか?
2.How will it make my life better? 私の人生をどのようによくするのか
3.What do I need to do to buy it. それを買うために私は何をする必要があるのか

改めて、本書に書いてあることを考えながら、僕が仕事で取り組んでいるサービスを考えた時に、ユーザーへのその成功をはっきりと見せられていないと感じた。

ヒーローの問題を外面的、内面的、哲学的と3つの領域に分けている点も印象的である。それぞれをよりわかりやすくすると次のようになる。

外面的… 目の前にある問題を解決したい
内面的… こんな人間になりたい
哲学的… 世の中に貢献したい

僕自身が関わっている仕事やサービスなど、様々なものについて、改めてその価値をうまく見せられているか考え直すきっかけとなった。

「ドローイングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

先日読んだ、「ペインティングレッスン」の同じシリーズのドローイング版である。「ペインティングレッスン」が新たな視点をもたらしてくれたので、本作にも期待して手に取った。

本書はデザイン、ライン、明度、フォルムの4つの視点でドローイングを解説する。その過程で、さまざまな歴史的な美術の背景や、作品を紹介している。デザインの章では黄金比について多くの例を交えて解説しており、改めて黄金比の重要性を感じた。ちなみにフォルムとは3次元の錯覚を作り出すことで、写実主義の芸術家がたちが没頭した、絵に説得力を持たせるためには不可欠な技術なのだという。

測定法についても3つの測定法、サイトサイズ法、関係法、比較法を語っており、度々出てくるブロックインという手法ともに、長所と短所に、軽く触れているだけで、正確な解説には至ってないので、別の書籍などで理解できるまで調べてみたいと思った。

ペインティングレッスンと同様に明度の重要性を改めて感じるとともに、絵画とはいえ、不要なものを削ぎ落とし、意図した通りの再構成することが良い作品を作るためには重要で、ただみたものを写し取るだけではなくデザインと非常に似たものだと感じた。

「ペインティングレッスン」と同様に、人生をすべて費やしても足りないのではないかと思わせるぐらい、絵画の深さを感じさせてくれる一冊である。

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「ネオ・ヒューマン 究極の自由を得る未来」ピーター・スコット・モーガン

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
2017年に運動ニューロン疾患(ALS)と診断された著者は自らを実験台として少しずつ自分の体を機械に置き換えていく。

読みはじめてそういえばどこかで聞いたことある話だと気付いた。本書に限らずさまざまなメディアに取り上げられているという。

本書では、著者の人生の転機となった出来事や、大きな決断の過程を描いている。問題の多くはは、正常な器官を手術するために医師を説得することや、保険の適用だったりと、著者自身よりも周囲の人間に起因する点が面白い。本書でも行っていることではあるが、体の大部分を置き換えてまで生き続けることは、すでに技術的な問題ではなく人間の心理的な抵抗感による問題なのだろう。ちなみに著者はイギリスの最初の合法的なゲイカップルという点も興味深い。ゲイカップルやALSに限らず、先駆者は後続の人々に勇気や希望を与えることを改めて感じた。

著者のやっていることはものすごく斬新で、しかもそれは病気で少しずつ自由を失っていく人に希望を与えるものである。著者の試みに対しては人類の新たな一歩として賞賛しかない。

ただ、残念ながら本書は本としてはかなりつまらない。おそらくALSと戦う様子の間に、自身のゲイとしての人生も伝えようとしている点にあるのだろう。間に学生時代や病気になる前のエピソードを挟み込むから、章が変わるたびに文脈を把握するのに時間がかかるなど、読みにくくてたまらなく、なんども途中で本を置こうと思ってしまった。

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「直感と論理をつなぐ思考」佐宗邦威

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
PDCAによる改善の流れは今後ますます自動化され、正解がないものに取り組む直感的な発想法がより必要になるという。本書では直感的な考え方の必要性とそれを生み出す手法を語る。

本書ではこれから社会が向き合う2つの危機をオートメーションの波とVUCAの霧としている。VUCAとはVolattility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)である。そしてそんななか、論理的、戦略的思考ではいずれ限界がくると説いている。つまり、ゲームに勝つことよりも、ゲームを作り出すことこそた重要なのだという。「自分モード」から「他人モード」、「1→∞」から「0→1」、「Vision-Driven」とから「Issue-Driven」など様々な言い回しを使っているが言っていることは基本的に同じである。

「いかに答えを探すか」ではなく、「そもそも答えなどない」という前提で動くことが、大半の人・組織に求められるようになったわけだ。

そして、後半では「0→1で発想する様々な手法を紹介している。プロトタイピングメソッドによって早く作って早めに失敗することの重要性や、広く全体を見る鳥の目と狭く集中して物事を見つめる虫の目を使い分ける方法や、「画像」と「言葉」を往復する思考法を紹介している。

なかでも手書きと絵の重要性を説いている点が印象的である。どんなにアプリなどのデジタルツールが進歩したとしてもアプリの立ち上げまでの時間を考えると、すぐに開けてかけるノートとペンにはかなわないと著者は主張するのである。

僕自身もすでにコンセプトが出来上がっているものを作り上げるよりも、コンセプト自体を創造することに価値があると考えているので、本書で行っていることには共感する。アイデアの出し方についても、僕自身デザイナーとして、デザイン案を構築する中で、言葉とイメージを往復しながらアイデアを少しずつ固めていく手法をよく使う。本書で書かれている内容は、その手法の効果を裏付ける形となった。

ツールについては、iPadのApplePencilの登場でかなりアナログの感覚をデジテルツールでも再現できるようになったと感じているが、確かにアクセスや、アプリを開くまでの時間を考えると、本書で言っているようなこともあるのかもしれないと感じた。ノートを一冊常に持ち歩くように習慣づけることは間違い無く良いことだろう。さっそく素敵なノートを一冊購入しようと思った。

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「配色の設計 色の知識と相互作用」ジョセフ・アルバース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
少しずつでも色彩や形に対しての感覚を向上し、またそれを説明する言葉を積み重ねたいと考えており、本書もそんな過程の中でたどり着いた。

書籍自体比較的新しいのだが、海外で初版が発行されたのは1963年と約50年前ということだから驚きである。本書には色の感覚や相互作用について理解を深めるためのさまざまな学習法が掲載されており、なかなか読んだだけではわからず、しっかり理解するためには手を動かしたり、カラーペーパーをつかったりしないとならないだろう。

それでも、図を見たり説明を読んだりするだけでいくつか新しい考え方を身につけることができた。例えば、グラデーションスケールはある色に比率1234の濃さの黒を加えるよりも、1248の比率で加える方が自然になることや、正三角形を9等分したカラーシステムなど、いずれも実践に使用していきたいと思った。

現段階ですべての学習法を試す気にはなれないが、このような本があることを知り必要な時にまた手に取れるようにしておくだけでも大きいと感じた。デザイナーコミュニティなどの演習として取り入れるのも面白いかもしれない。

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「ペインティングレッスン」ジュリエット・アリスティデス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
有名な絵画の解説とともに、著者がその生徒たちに実践させている練習方法を紹介する。

上手なアーティストと自分の絵を比べると、今更ながらに技術にかなりの差があるのと感じ、その差を埋めるためにどのようなことをすればいいのかを知りたくて本書にたどり着いた。

本書では、構図、明度、色について説明しながら、有名な美術作品を紹介している、また、それとあわせて7つの練習の手法と実際の生徒たちのその練習の様子を紹介している。

  • モノクロの模写
  • モノクロのキャストペインティング
  • 明度を基調にした静物画
  • 暖色と寒色によるキャストペインティング
  • カラーの模写
  • カラーの静物画
  • 人物画

1つの絵を白黒に変換するときに、明暗をどのように解釈するかにも何通りものパターンがある。そのパターンを検討した上でベストなものを選択するという考えを今まで持っていなかったことに気づかされた。美大等でデッサンにかける時間を考えると当たり前なことかもしれないが、改めて、実際のものを見てそれを白黒に変化するデッサンの重要さを知ったので早速毎日の習慣に取り入れたい。

また、拭き取り技法、キャストペインティング、サイトサイズ法など、わからない用語がいくつかあった。おそらく美術を専門的に学んだ人にとっては常識だと思うので、しっかり調べて理解したいと思った。同じ著者の作品に「ドローイングレッスン」というのもあるので本書に続いて読んでみたい。

【楽天ブックス】「ペインティングレッスン」

「ヨハネス・イッテン 色彩論」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

僕自身デザイナーとして生きているので、色や形の感覚を深められる練習や知識はは徹底的に取り入れていこうと考えていて、そんななか本書に出会った。

世の中様々な色環が語られているが、本書の12色環は赤、青、黄の純色を基準にして分割していくもので、非常にわかりやすく、再現しやすいものである。また、レッド・オレンジとブルー・グリーンの第3次色をそれぞれ暖色と寒色の頂点とする点もわかりやすい。

7つの色彩対比について扱っている。色の多少の知識がある人なら色の対比が絵画やデザインにおいて重要なことはすでに知っていることだろう。しかし、7つもの対比を挙げることができるだろうか。本書では次の7つの対比について扱っており、それぞれに対して有名なアート作品も紹介している。

  • 色相対比 例)「聖母マリアの戴冠式」アンゲラン・シャロントン
  • 明暗対比 例)「レモン、オレンジとバラ」フランシスコ・デ・スルバラン、「黄金のヘルメットをかぶった人」レンブラント
  • 寒暖対比
  • 補色対比 例)「サン・ヴィクトワール山」ポール・セザンヌ
  • 同時対比 例)「衣服を剥ぎ取られるキリスト」エル・グレコ、「夜のカフェ」ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
  • 彩度対比 例)「不思議な魚」パウル・クレー
  • 面積対比 例)「イカルスの堕落」ピーターブリューゲルI世

あまりいままで意識してこなかったのは同時対比である。参考に挙げられているアート作品を見て理解し、自分でも同時対比を利用した作品を作ってみにつけようと思った。

また、純度の明るさについての話も印象的だった。明るさを12段階に分けた時、純色の黄色は明るい方から4番目にくるが、青は9段目、赤は8段目にくるという。つまり、青、赤、黄を明るさで揃えるような場合には純色を使うことはできないのである。なんとなく体験から知っていることをこうして明確に言語化してもらうとさらに理解が深まる気がする。また、補食に対する調和のとれる比率についても紹介している。

  • イエローとヴァイオレットは1:3
  • オレンジとブルーは1:2
  • レッドとグリーンは1:1

もちろんこの辺は多少考案者の主観が入っていることは否めないが、スタート地点として知っておくことは役に立つだろう。

すでに出版から50年経っている本だが、いろいろ新たな視点をもたらしてくれた。

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「税金を払うやつはバカ!」大村大次郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国税局で10年間働いてきた著者が税金について語る。

昨今、自身の収入が少しずつではあるが増えてきたせいか、税金を意識する機会が多くなった。そんななか少しでも節税ができればと本書にたどり着いた。

面白いのは、国税局で働いてきた経歴を持ちながらも、税金をできるかぎり払わないことを推奨している点である。本書では個人事業主から会社員まで、支払う税金を少なくするための様々な方法を説明している。また、あわせて、日本の税金の制度のよくない点も説明している。

残念ながら会社員の僕がすぐに適用で起用できそうな方法は、せいぜい医療費控除に適用できる出費を知っただけで大きなものはなかった。むしろ節税の方法よりも、税金の制度について新たな視点をもたらしてくれた。例えば、消費税が公平な制度ではない、というのはよく耳にするが、消費税が格差社会を作るとまでは思っておらず、本書を読むまでしっかり理解していなかった。また、同様に消費税が非正規雇用を増やすことに貢献しているという視点も新鮮だった。

節税対策としてすぐに行動できる内容は少なかったが、税制度に対して新たな視点をもたらしてくれた。

【楽天ブックス】「税金を払うやつはバカ!」

「みるみる理解できる相対性理論」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ホモ・サピエンス、つまり人類の進化の歴史を詳細に説明する。

先日「Project Hail Mary」という久しぶりに面白いSFに出会い、相対性理論を理解したいと思って、本書にたどり着いた。

光速に近い速度で宇宙旅行をした結果、2者の経験した時間が異なるというよくSFで使われる事象がある。その理由とどれぐらいの速度でどれぐらい時間が変わるのかを漠然としてでも理解することが目的の一つだったが、本書によって実は簡単な三平方の定理で計算することができると理解できた。難しいことを理解するには、それを発見した人の思考の過程を追うのが受け入れやすく、本書はそういう点でこれまでいくつか試した相対性理論関連の書籍のなかではもっとも理解しやすかった。

一方で、今更言うまでもないことかもしれないが、これを解明したアインシュタインの頭の構造に改めて驚かされた。

しかし、特殊相対性理論はまだしも、一般相対性理論はやはりまだ理解が難しく、特に

質量が空間を曲げ、空間の曲がりが重力を引き起こす

という点が、結果としては理解できても、どのようにしてその結論に至ったのかが受け入れがたく、引き続き機会を見つけて理解を試みたいと思った。

【楽天ブックス】「みるみる理解できる相対性理論改訂版」

「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホモ・サピエンス、つまり人類の進化の歴史を詳細に説明する。

人類の進化の歴史を詳細に説明するなかで、ホモ・サピエンスが現代のように地球の支配者となった主な要因について説明している。

例えば初期の大きな変化は農業革命である。農業革命によって、狩猟から農耕へと移ったことにより、人々は定住化し、住居を持ち、その住居や土地に愛着を持つようになったという。著者は本当にそれが良かったかどうかについては疑問を投げかけているが、種としての進歩の過程で、その中の一個体、または特定の集団が、狩猟と農耕の生活の違いを比較して良い方を選択するということができないと結論づけている点が面白い。

もっとも興味深かったのは、ホモ・サピエンスの想像上の秩序によって一緒に行動することができるという特性であり、その特性によって、ホモ・サピエンスは他の種を圧倒することができたという主張である。例えば、チンパンジーやクジラなどの哺乳類も、どこに天敵がいるなどの簡単な会話はかわすことができるが、一般的なコミュニケーションで行動を共にできるのはせいぜい150個体程度の集団であり、それ以上の個体数、1万、10万という個体が共通の目的を持って行動するためには、宗教や神話など想像上の秩序を共通認識として持つ必要があるというのである。

キリスト教やアメリカの独立宣言など例をあげればきりがないほどさまざまな形でホモ・サピエンスはそれをこれまでにやってきて、今この時点でも様々な想像上の秩序に依存した関係のなかで生きていることは間違いのない事実である。

悲しいことに、多くの絶滅が、ホモ・サピエンスがその大陸に到達した時期と重なっているという。これはホモ・サピエンスの一個体として真実として受け入れるしか無いだろう。

学生時代に歴史の授業で学んだより時から、20年以上経って、現在はるかに多くのホモ・サピエンスの歴史が判明されていることに驚かされた。このような本でも読まない限りなかなか目を向ける機会のない分野なので、新たに知ったことがたくさんあった。ただ、前回読んだ「21Lesson」でも感じたことだが、若干冗長な語りが多く全体的に読みにくい。読もうと思った時にはある程度の覚悟が必要である。まだ未読の「ホモデウス」も名前はよく聞く作品なのでぜひ読みたいとは思っているが、しばらく間を置きたいと思った。

【楽天ブックス】「サピエンス全史(上)」「サピエンス全史(下)」

「道具としてのベイズ統計」涌井良幸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ベイズ統計についてわかりやすく説明している。

本書でベイズ統計については3冊目である。概念的なところから入り少しずつ細かいことまで理解したいと考え、数式などを極力省略しないで実践的に説明している書籍をと思い本書にたどりついた。

これまでによんだベイズ統計の本のなかでもっともわかりやすかった。ベイズの定理の事前確立や事後確立を、事前分布、事後分布と確立分布という分布という考え方にも適用し、確立の総和が1であることを利用して、単純でかつ汎用性が高い考え方になることをわかりやすく説明している。

また、自然な共益分布を用いることによって計算が簡単になり、事象によって適した共益分布があるということも理解できた。二項分布ならベータ分布が適しているのということである。

一方で、分散が未知の場合の考え方あたりから、着いていくのが難しくなった。この辺はまたモチベーションの高い時にさらに繰り返し読んでしっかり身に付けたいと思った。以降は様々な手法についてExcelによる実際の実行方法なども含めて触れている。

理系の人間には問題ないだろうが、若干省略されていると感じる部分もあった。とはいえベイズ統計についてわかりやすくまとまっていて、初めて不足なくベイズ統計について知りたい人には最適と言えるだろう。

【楽天ブックス】「道具としてのベイズ統計」

「世界一やさしい問題解決の授業」渡辺健介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
経営コンサルティング会社マッキンゼーで活用している問題解決の手法を子供向けに語る。

本書では、小学生や中学生の日常生活で起こりそうな問題を例にとってその解決の手順を一つ一つ説明している。具体的には次の方法である。

  • 目標を設置する
  • 目標と現状のギャップを明確にする
  • 仮説を立てる
  • 情報を集める
  • アイデアを出す
  • 最適な打ち手を選択する
  • 実行する

一方で、よくある3つのタイプをよくない例として出している

  • どうせどうせ子ちゃん
  • 評論家くん
  • 気合いでゴーくん

ここまで子供向けの内容とは思っていなかったが、たしかに、これが自然とできる人とそうでない人がいて、できない人にはこうやって教えて、人生の早い段階で学ぶことができれば大きく人生を好転させることができるだろう。子供のために一冊あってもいいのかもしれない。

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「マーケット感覚を身につけよう」ちきりん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーケット感覚の重要性を語る。

インターネットの発展によって距離や文化の垣根が少しずつ取り払われ、すべての物やサービスが自由に取引されるようになった。そんな時代だからこそ売れるものを見つけ、売れる値段で売る、というマーケット感覚が重要なのである。本書はそれをいくつかの章に分けて説明している。

本書では、そんなインターネットによる変化を、相対取引から市場取引と語り、物の販売だけでなく、就職活動や婚活も以前は相対取引だったが今では市場取引になってきているとしている。

そんな時代に生き残るためには、価値をみつけることがなにより重要である。そのためには人が何に価値を感じるのかに敏感になる必要がある。本を選ぶサービス、骨董品の目利きサービス、服を選ぶサービス、不満を買い取るサービスなど、本書では、今までは価値としてみなされなかったものが、最近になって価値として認識され始めた例、つまり非伝統的価値について例をあげている。

そして、見つけた価値を売るために、つぎの5つの能力の重要性を説いている。

  • 1 プライシング能力を身につける
  • 2 インセンティブシステムを理解する
  • 3 市場に評価される方法を学ぶ
  • 4 失敗と成功の関係を理解する
  • 5 市場性の高い環境に身を置く

コスト意識ではなく、マーケット意識で物事を考えることの重要性は、言われてみればもっともだが、僕も含めコスト意識が先行してしまう人は多いはず。この辺は少しずつマーケット意識で考える癖をつけていきたいと思った。

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「マネジャーの最も大切な仕事」テレサ・アマビール/スティーブン・クレイマー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インナーワークライフを向上するためにマネジャーができることはなんなのか。様々な企業のチームから7ヶ月にわたって日誌を提出してもらい分析した結果を説明する。

インナーワークライフとは個人的職務体験としており、次の3つの要素で構成される。

認識・・・職場での出来事に対する状況認識
感情・・・職場での出来事に対する反応
モチベーション・・・その仕事への熱意

なぜインナーワークライフが組織において重要かと言うと、それがパフォーマンスに大きな影響を与えるからである。そしてモチベーションのために重要な要素として、見過ごしがちな進捗の法則を含む次の3つの要素を説明している。

進捗の法則
触媒ファクター
栄養ファクター

七大触媒ファクターと四大栄養源を次のように説明している。

  • 明確な目標を設定する
  • 自主性を与える
  • リソースを提供する
  • 十分な時間を与える(しかし与えすぎてはいけない)
  • 仕事をサポートする
  • 問題と成功から学ぶ
  • 自由活発な意見交換

四大栄養源

  • 尊重
  • 励まし
  • 感情的サポート
  • 友好関係

このようなマネジメント関連の本は、どうしても机上の空論のようで現実感に乏しく感じてしまうのだが、本書は実際の現場からあがってきた日誌とともに紹介している(もちろん個人が特定できないように名前や地名などは変えてある)ので説得力が感じられる。

僕自身、小さな進捗のサポートできているだろうか。良い触媒ファクター、栄養ファクターを与えられているだろうか。そんなことを考えさせられ、マネジメントにうまくいかない時などに、なんども戻ってきたいと思える内容である。

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「図解・ベイズ統計「超」入門 あいまいなデータから未来を予測する技術」涌井貞美

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ベイズ統計についてわかりやすく解説する。

昨今ベイズ統計について触れる機会があり、ベイズ統計の本を読み漁っている。本書もそんななかで出会った。

本書では、トランプや天気予報を例に、乗法定理、加法定理、ベイズの定理を説明している。大まかなベイズ統計の考え方は理解できる。ベイズ更新よって、常にデータを更新できる点が実践的であるという印象を受けた。感覚的に受け入れるのが難しいのが「理由不十分の原則」であるが、ここにかんしてはそういうものとして受け入れるしかないのだろう。

また、ベイズとかベイジアンという言葉をよく見るが、ベイズ確率論やベイズ統計論などベイズという言葉を使った学問も多岐に渡ることを知った。

今まで読んだベイズ統計の本のなかでもっともわかりやすかった。とはいえ手順を手取り足とり示してもらってようやく付いて行ける程度で、まだ、理解が漠然としているので、引き続き繰り返して理解を深めたいと思った。

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