「その英語、ネイティブは笑ってます」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
どんなに英単語を覚えても、会話のなかでは自分のなかではいいたいことを言えずにときどきストレスを感じる。わずかな言葉で、同意や感嘆を示すことは、かならずしも必要のなきことなのかもしれないが、会話を盛り上げる上では大きな意味を持つ。
そして、会話のなかでそんなタイミングを逃さずに適切な反応を示すためには、その言葉は短くなければならない。僕らはその英語学習のせいで、いいたいことを英語にするとどうしても長くなりがちだが、実際にネイティブスピーカーたちはいいたいことを実に少ない単語で表現する。
本書はそんな視点にたって、会話によく使われる短い表現を集めている。その多くがなかなか辞書から探そうと思っても見つけにくいものばかり。
おもしろいのは、そんな便利表現を
「◯◯」と2単語で表現するには?
といういふうに問題形式で展開される点だろう。例えば「そんなことにならなければいいけど」と2語で表現するには?というように。そのほかにも目からウロコの表現で溢れている。

彼は頭痛のタネだ。
He’s a headache.

また、いままで間違って使っていたのは表現もいくつか発見させてもらった。
とりあえずこれからはThey say〜とかWe have〜をもっと効果的に使いたいものだ。そのほかにも

No sweat.
I´m game.
I´m in.

などを自分お口から自然と出るようにしたいものだ。あと新しかったのは「beat」と「hurt」の使い方だろうか。

Nothing beats a cold beer in a hoy day.
暑い日は冷たいビールに勝るものはない。
Lying will hurt your reputation.
嘘はあなたの評判を落とします。

【楽天ブックス】「その英語、ネイティブは笑ってます」

「ネイティブはこの「5単語」で会話する」晴山陽一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
have、take、get、give、makeの5つの動詞でどれだけ多くの表現ができるか、ということに焦点をあてて英語表現を解説している。
僕らはどうしてもその学習の過程のせいで、「have」=「持つ」や、「give」=「与える」のように覚えており、その覚え方のせいで、この5つの動詞の表現の幅をせばめている。多くの例文や会話例の中でそれぞれの動詞の意味の「捕まえ方」について解説している。
英語の表現を増やすうえで、使える単語量を増やすのはもちろん大切だが、すでに知っている単語の用法を増やすこともまた大きく会話力の向上に役立つだろう。
本書で取り上げている5つの動詞のなかでも、特に「take」と「make」には使えていない表現があることを改めて認識させてもらった。

I take it as a compliment.
私はそれをお世辞だと思います。
I take him to be a honest man.
彼は正直な男だと思います。
This made the third time he’s said it.
彼がそう言ったのはこれで3度目です。
She made the dead line.
彼女は締め切りに間に合いました。
She made the Olympic team.
彼女はオリンピックチームのメンバーになりました。

意識して使ってこそ自らの表現となるのだろう。
【楽天ブックス】「ネイティブはこの「5単語」で会話する。」

「世界を変えたアップルの発想力」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松下電器からアップルに転職した著者目線で、アップルという会社を主要人物が語った明言を引用しながら説明していく。典型的な日本企業である松下とアップルを比較することで、アップルのその異質な社風が見えてくる。
アップルがどれだけ偉大なことを成し遂げてきたか、ということを考えると、誰もがそんなプロジェクトに関わりたいと思うだろう。しかし、偉大な商品をつくったからといって、その会社が誰にとっても魅力的な労働環境を提供しているとは限らないのだ。よくも悪くもアップルという会社がユニークな会社であることが見えてくる。また同時に、僕らが「会社はこうあるべきだ」と考えているもののいくつかが、必ずしも会社に必要でないものであることも気づくだろう。
それでも思うのだ、アップルで働いたら、きっと何時間でも働かなければならないだろうし、仕事以外のことを一切放棄しなければならないときもあるだろう。それでもここまで熱意を注いで仕事ができることは幸せなんだろう、と。

真似はマイクロソフトにやらせておけばいい

本書で挙げられている歴史をつくったアップルの偉人たちの名言の中の、いくつかが胸に刺さるのかもしれない。
【楽天ブックス】「世界を変えたアップルの発想力」

「ファーストクラスの英会話」荒井弥栄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元国際線のCAがその経験から、日本人が間違えやすい表現を、「ビジネスクラス」「ファーストクラス」とその丁寧さを2段階に分けて説明する。僕らは英語と日本語の違いを、「英語は直接的で日本語は遠まわし」などと漠然と思っているかもしれないが、どんな言語においても、相手に反対したりするときは、相手に不愉快な思いをさせないような遠まわしな言い方が必要なのである。
「英語で言いたいことを言う」の次のステップ、「英語で気持ちよくコミュニケーションをとる」の段階に移ろうとしている人には非常に役に立つだろう。
一般的な丁寧表現の「Could you?」「Would you mind if?」のほかにも、ビジネスシーンに使えそうな、丁寧表現が満載である。「add up」「up to scratch」「be snowed under」「under the weather」などはぜひ覚えておきたい表現である。
【楽天ブックス】「ファーストクラスの英会話」

「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西洋絵画を楽しむ上で、宗教とギリシア神話は欠かせないもの。本書はギリシア神話のエピソードとともに、その場面を描いた絵画を紹介している。
僕自身西洋絵画とギリシア神話はもともと好きなので多くの物語は知っているものばかりだったが、それでもいくつかの知らなかった逸話や、ギリシア神話の一場面と知らずに見ていた絵画、そして見たこともない絵画に触れることができた。
面白いのは神話上の人物が、絵で描かれる際の特長に触れている点だろう。アットリビュートと呼ばれるその人物の象徴となる持ち物を知ることで、より絵画のなかの人物を特定しやすくなるのということだ。
たとえばよく知られているものだと、エロス(キューピッド)の弓、ヴィーナス(アフロディーテ)の貝といったところだ。残念ながらアットリビュートの説明は文章だけで、資料となる絵画が載っていない点がやや物足りなかった。
絵画としてはピエロ・ディ・コジモ「アンドロメダを救うペルセウス」など、ペルセウス好きにはたまらない。ジュール・ルフェーブルの「パンドラ」も印象的である。どちらも今まで知らなかった画家なので、ぜひ覚えておきたいものだ

【楽天ブックス】「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」

「世界は日本サッカーをどう報じたか」木崎伸也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ワールドカップが終わってすでに一ヶ月。期待以上の結果に日本は熱狂したが世界はそれをどのように見たのだろう。日本の4試合は、それが自分の国であるということそ除いて考えると、普段世界のサッカーを見慣れたファンにとっては退屈の試合だったに違いない。そして、それは世界各国が日本の試合に対して抱いた感想とそう大きくは違わない。
本書は、世界各国、特にサッカー大国と呼ばれる国々の紙面や解説者のコメントを通じて日本のサッカーの長所や短所を客観的に見せてくれる。
今の問題点や今後日本サッカーのレベルの向上のために取り組むべきことを知ることができるとともに、各国の評価の違いから、それぞれのサッカー大国が何を重んじてサッカーを見ているか、という文化的な違いまでも楽しめるだろう。

「オランダのGKに、ほとんどボールが飛んでません」
「日本は何もしたくないチームのようです。」

【楽天ブックス】「世界は日本サッカーをどう報じたか」

「ひかりの剣」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
医学部剣道部の大会で、今年も東城大と帝華大は優勝を狙う。東城大の主将は速水(はやみ)。帝華大の主将は清川(きよかわ)である。

チームバチスタの栄光」などの作品からなる世界の物語のひとつ。東城大の速水(はやみ)は後に「ジェネラルルージュの凱旋」で天才外科医となって活躍する。また清川(きよかわ)は「ジーン・ワルツ」で産婦人科医師として登場する。どちらも後に優れた医師となる。そんな2人がまだ学生で医者になるための勉強をしていたころ、物語としては「ブラックペアン1983」と時期を同じくしている。

そういった意味では、剣道を題材とした青春物語としても楽しめるが、海堂尊のほかの作品を読んでいればさらに楽しめるだろう。剣道部の顧問として速水(はやみ)や清川(きよかわ)とかかわる後の院長の高階(たかしな)先生の行動の理由も「ブラックペアン」を読んでいれば理解できるだろう。

さて、それにしても最近映画化された誉田哲也の「武士道シックスティーン」といい本作品といい、世の中は剣道ブームなのだろうか。実際に経験したことはないが、本作品の描写を素直に受け取ると、なんとも剣道というスポーツが魅力的に見えてしまう。そしてそんな剣道物語につきものなのが、すぐれた女性剣士の存在ではないだろうか。本作品でも帝華大にひかりという剣士が登場する。

また、本作品で面白いのは、数十年前を物語の舞台としているにもかかわらず、そこで活躍する剣道を愛した青年たちは、決して古い青春ドラマに出てくるような、頭の固い努力家ではない点ではないだろうか。清川(きよかわ)などは常に手を抜こうと考えている点が面白い。

そしてもうひとつ顧問の高階(たかしな)先生の言葉の奥深さも本作品の魅力である。

今の君は自分の才能を持て余し、その重さに押し潰されている。大きな才能は祝福ではない。呪いだよ。

余計なことを考えずに一気に読書の世界に没頭したい人にお勧めである。
【楽天ブックス】「ひかりの剣」

「英語で自分をアピールできますか?」アンディ・バーバー、長尾和夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
よくある自己紹介を例にとって解説している。辞書で英単語の意味から調べても文章の中でのその単語の使い方がわからない。英語の文章の意味が理解できても実際の会話で使うタイミングがわからない、というのは英語を勉強しているとしばしば感じることだが、「社内の人間関係」「自分の趣味について」など、自己紹介で話されると思われる40のテーマについて、それぞれ10?20程度の文章で構成された自己紹介を掲載しているので、丸暗記してしまえばかなり応用の利く内容だろう。
中には目からウロコの表現も多々あった。

I wanted my apartment to be on the same train line as my office.
(わたしはアパートは会社と同じ路線であってほしかった)
It’s important to see things from their point of view.
(彼らの目線で物事をみつめることが大切である)
Catty-corner from the police box is a bakery.
(交番の斜向かいはパン屋です)

また、それぞれのあとには、自己紹介を順序だてたりわかりやすく説明するためによく使われる表現も解説している。一度読んだだけですべてを覚えられるものではないが、しばらく繰り返し読むことになりそうだ。
【楽天ブックス】「英語で自分をアピールできますか?」

「The Girl who Played with Fire」Stieg Larsson

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Lisbeth SalanderはBlomkvistと距離を置くことを決めて海外に旅に出る。一方Blomkvistは、新たな2人のパートナーと共にスウェーデンの裏に広がる性売買の実態を暴こうと動き出す。
Stieg Larsson三部作の第二作である。前半は前作「The Girl Who has The Dragon Tatoo」の後のSalander、Blomkvistとその周辺の様子が描かれて、ややスピード感に懸ける部分があるが、3つの殺人事件を機に、Salanderが追われる身となって、物語は一気に加速する。
面白いのは、事件を巡って3つの方向から真相を究明しようとする動きがあることだろう。一つは警察であり、残りの2つは、Salanderの無実を信じる、Blomkvistと、Salanderの職場である、警備会社である。
一見ただの殺人事件に見えていたものが、次第にSalanderの過去と深く関わっていることが明らかになってくる。「All The Evil」と呼ばれた日、Salanderに何が起こったのか、すべての公式な記録から抹消されたその出来事。その結末はまたしても想像を超えてくれた。
また、凶暴な売春婦と一般的に忌み嫌われているSalanderを、わずかであるが信頼している数人の人間がいて、彼らが必死になってその無実を証明しようとする姿がなんとも温かい。特に、彼女の保護者であり理解者であったPalmgrenとチェスをするシーンなどでは、彼女の中の優しさのようなものも感じさせてくれる。
物語としては文句なし。個人的にはもう少しスウェーデン語やスウェーデンの地名を知っておいたほうが楽しめるだろう、と思った。

Presbyterianism
キリスト教プロテスタント教会の中で、カルビン派を崇拝する派のこと。
GRU
ロシア連邦軍における情報機関。参謀本部情報総局を略してGRUと呼ばれる。旧ソ連時代から存続している組織である。(Wikipedia「ロシア連邦軍参謀本部情報総局」
Minsk
ベラルーシ共和国の首都。
アスペルガー症候群
興味・関心やコミュニケーションについて特異であるものの、知的障害がみられない発達障害のことである。「知的障害がない自閉症」として扱われることも多いが、公的な文書においては、自閉症とは区分して取り扱われていることが多い。(Wikipedia「アスペルガー症候群」

「武士道シックスティーン」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
幼い頃から剣道で強くなるためだけを目標に生きてきた香織(かおり)と、日本舞踊から剣道の道に入った勝ち負けにこだわらない早苗は高校で同じ剣道部に所属することとなる。

基本的に物語は、香織(かおり)と早苗(さなえ)という、同じ剣道部に所属しながらもまったく正反対の取り組み方をする二人の目線で交互に展開していく。最初はやはり香織(かおり)の異様なまでの勝負へのこだわり方が面白いだろう。そして、その剣道に対する姿勢は当然のように他の部員や顧問の先生との摩擦を生む。

「お前には、負ける者の気持ちが、分かるか」 
「・・・・・・わかりますよ。人並みになら」
「どう分かる。どう思った。負けたとき。」
「・・・・・・次は斬る。ただそれだけです。」

一方で早苗(さなえ)は勝ち負けよりも、自分の剣道を少しでもいいものにしようと心がける。序盤はそんな張り詰めた香織(かおり)目線と、のほほんとした早苗(さなえ)目線がなんともリズミカルに進んでいく。

次第に今までの自分の剣道への取り組み方に疑問を抱き始める香織(かおり)。そして早苗(さなえ)もまた香織(かおり)に影響されていろんなことを考えるようになる。
違ったタイプの人間が出会ってお互い刺激を受け合い、少しずつ人間として成長していく。

そんなありがちの物語なのだが、それでも自信を持ってお勧めできるのは、誉田哲也らしい独特の会話のテンポと、登場人物それぞれが持っているしっかりした個性のせいだろうか。香織(かおり)には優しい兄と厳しい父が、早苗(さなえ)には、情けない父と自分勝手な姉が、それぞれ物語にとってもいい味を出しており、香織(かおり)、早苗(さなえ)の生きかたにも大きく影響を与えていることがわかる。

すがすがしい読み心地の青春小説。新しい何かを始めたくなる4月。こんな時期に読むのにまさにぴったりの作品。といってもいまさら剣道はさすがに始められないが。
【楽天ブックス】「武士道シックスティーン」

「Child44」Tom Rob Smith

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2009年このミステリーがすごい!第1位。
時代は1953年のソビエト。大戦の英雄でありMGB(国家保安省)のLeoは内部の諍いから、妻と友にモスクワから遠い東の地に送られる。そこでLeoは子供を狙った連続殺人事件に出会う。
本作品から面白い部分を挙げればいくらでもあるが、まずは、戦後の混乱のソビエトの社会であろう。未完成な社会ゆえに、未完成な正義が幅を利かせている。KGBがその間違った正義であり、彼らに嫌われたらどんなに誠実な人間さえも容疑者にされる。そして人々は自らが密告されることを恐れるがあまり、ひたすら目立つことを恐れて生きていくのである。このような魔女狩りのような世界がわずか数十年前に隣国で存在していたことに驚いた。
さて、本作品では、そんな権力の象徴的存在であるMGBであるLeoが、その権力を失っていく。そして権力を失ったことによって正直な意見を妻のRaisaから聞かされ、そこから見えてくる真実がさらにLeoを苦しめるのである。Leoの妻、Raisaが語った言葉などはまさにどんな社会にも通じる真実を表現しているだろう。権力を持った人の周囲では人は正直ではいられないのである。

私があなたと結婚したのは怖かったから。もし拒絶したらいつか私も逮捕されるって思って、嫌々了解したのよ。つまり私たちの関係は恐怖の上に成り立っていたの…。もしこれからも一緒に過ごすのなら、今から本当のことを話すようにするわ。気持ちのいい嘘じゃなくて。

やがてLeoとRaisaは協力して連続殺人事件を解決しようとする。そんな協力関係の中で少しずつ変化していく二人の関係が大きな見所の一つである。そして、連続殺人事件の謎。何故、事件はいつも線路の近くで起きているのか、何故子供ばかりが狙われるのか。何が犯人を残酷な殺人へと突き動かすのか。
揺れ動く登場人物の心の動き、作品中から教えられる悲劇の歴史、物語展開も最後まで予想を巧に裏切ってくれた。この完成度は誰にでもオススメできる。

ウラジーミル・レーニン
ロシア出身の革命家、政治家、法律家。優れた演説家として帝政ロシア内の革命勢力を纏め上げ、世界で最初に成功した社会主義革命であるロシア革命の成立に主導的な役割を果たし、ソビエト社会主義共和国連邦及びソビエト連邦共産党(ボリシェヴィキ)の初代指導者に就任、世界史上に多大な影響を残した。(Wikipedia「ウラジーミル・レーニン」
チェーカー
レーニンによりロシア革命直後の1917年12月20日に人民委員会議直属の機関として設立された秘密警察組織の通称である。(Wikipedia「チェーカー」
フェリックス・ジェルジンスキー
ポーランドの貴族階級出身の革命家で、後にソ連邦の政治家に転じた。革命直後の混乱期において誕生間もない秘密警察を指揮し、その冷厳な行動から「鉄人」「労働者の騎士」「革命の剣」など数多くの異名で呼ばれた。(Wikipedia「フェリックス・ジェルジンスキー」

「日本人の英語」マーク・ピーターセン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本人が間違えがちな単語の使い方を分かりやすく解説している。
冠詞の「a」と「the」と「my」の使い方や、副詞(off、out、over、around)などのニュアンスの説明はどれも目からうろこである。
中でも印象的だったのが「over」と「around」の違いである。本書ではこういっている、「over」も「around」も回転を表す副詞だが「over」はその回転軸が水平で「around」はその回転軸が垂直だというのである。
なるほど、だから人が「turn around」したらスピンだし、「turn over」なら「寝返りを打つ」なのか、「get over」なら「乗り越える」だし「get around」なら「回避する」なのだ。
副詞と組み合わさった慣用句をすべて日本語の意味とつなげようとするのではなく、副詞の意味を直感的に理解して全体をイメージするほうがずっと早いに違いない。
同じように「車に乗る」は「get in the car」なのに「電車に乗る」は「get on the train」。こんな違いの理由についても解説している。
「この一冊を読めばもう完璧」などということは決してないが、今までの理解度を50%増しぐらいにはしてくれるだろう。
【楽天ブックス】「日本人の英語」

「ブラックペアン1988」海堂尊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1988年。世良正志(せらまさし)は研修医として東城大学医学部付属病院で外科としての第一歩を踏み出す。そこで初めて見る現実や、常識はずれな医師たちに出会う。

海堂尊作品ということで、過去の経験から、他の海堂作品と繋がっているのだろうと思いながら読み進めていたがなかなかつながらない。何人かの登場人物の名に聞き覚えを感じながらもなかなか繋がらない。そう思いながら上巻の中盤に差し掛かったところで、研修医として、田口、速水、島津という3人が登場。どうやら「チームバチスタの栄光」の数年前を描いたものらしい。そこでようやくタイトルの1988の意味に気付くに至った。

つまり生意気で破天荒な振る舞いをする医師高階(たかしな)は将来、「チームバチスタの栄光」で東城する病院長ということになるのだ。世良を驚かせた医師は高階(たかしな)だけでなく、昇進を拒みながらも技術の向上にこだわる渡海(とかい)もまたその一人である。

物語前半は対照的な考え方をする高階(たかしな)と渡海(とかい)のやりとりが面白い。

どんなに綺麗ごとを言っても、技術が伴わない医療は質が低い医療だ。いくら心を磨いても、患者は治せない。
心無き医療では高みには辿りつけません。患者を治すのは医師の技術ではない。患者自身が自分の身体を治していくんだ。医者はそのお手伝いをするだけ。手術手技を磨き上げるのも大切だが、患者自身の回復力を高めてやることも同じくらい重要なことだ。<

そして、その2人の間に挟まれながらもいい刺激を受けて成長していく世良(せら)が前半の見所といえるだろう。

一見いがみ合っているように見えながらもこんな個性的な医師たちが、最終的に見事な化学反応を起こし病院という巨大組織を機能させていくところが面白い。「ジェネラル・ルージュの凱旋」でも感じたことだが、お互いの力を認め合うこんなシーンを見ると、かっこよさよりもそんな環境で仕事ができることに対する嫉妬を覚えてしまう。

そして終盤は、教授である佐伯(さえき)に焦点があてられる。物語序盤は医療の脚を引っ張る癌細胞のような存在に見えていた佐伯(さえき)も、その本音を知ればかっこよく見えてくることだろう。

私が病院長を目指す理由は、てっぺんに近づけば近づくほど自由度が上がるからだ。自由度が上がれば、自分より能力が低い連中にとやかく指図されなくなる。

そして最期は佐伯(さえき)が執刀するときのみに使用するという黒いペアン(医療器具)の存在理由が明らかになる。

かっこよく、すがすがしく、そして医療の在り方、医師の在り方について考えさせてくれる作品である。

ウィルヒョウ
ドイツ人の医師、病理学者、先史学者、生物学者、政治家。白血病の発見者として知られる。(Wikipedia「ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョー」

【楽天ブックス】「ブラックペアン1988(上)」「ブラックペアン1988(下)」

「日本人の英語力」マーシャ・クラッカワー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
近年、インターネットの普及によって生の英語に触れられる機会が増えてきて、それは、英語を学習する人にとっては決して悪い環境ではないのだが、多くの人がアメリカ人を含むネイティブスピーカーのしゃべり方を疑いも持たずに真似してしまうことを懸念しているのである。
日本の若者たちが使う「…みたいな」「…な感じ」のように、アメリカでも「kind of」「sort of」「like」などのあいまい表現が浸透してきていて、実際に多くのアメリカ人がそのような話し方をするのだが、それを「正しい英語」と信じている日本人の英語学習者が多く見られるのだとか。英語のあいまい表現は日本語のあいまい表現と同じように、決して知的には聞こえず、どちらかというとはっきりとした信念や考えを持っていない、自分の考えに自信を持たないように聞こえ、ビジネスの場だけでなくプライベートな場でさえも高く評価されないだろう、というのだ。
また、「let me know」「I mean」「you know」などのような、隙間を埋める言葉を多用するのもそのような人の悪い傾向だという。考える必要があるならば、その旨を相手に伝えてしっかり時間をおいてから意見を言うべきだと。
僕たちは日本人なのだから、日本人の美学があり、ぼくらが話すべき英語のスタイルがあるはず。英語を話すからと言って、美学や文化までアメリカになる必要はないということだ。
考えてみれば僕自身も、たとえ日本語でも決して多くを語る方ではなく、「しっかりと考えたうえで言葉を発する」という生き方をしてきたはず。英語を話している最中とてそれは変わらないはず。

「Run!Run!Run!」桂望実

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
岡崎優(おかざきゆう)の夢はオリンピックマラソンで金メダルを獲ること。幼いころから毎日のジョギングを欠かさなかった。彼にとっては箱根駅伝も通過点にすぎない。大学の陸上部へ入部したあとも優(ゆう)の考え方は変わらなかった…。

よくある青春小説だと思って手に取った。何人かの平凡な集まりの平凡な部が、誰かの登場によって少しずつ意識改革を伴いながら遠かった目標に近づいていく…。そんな物語を想像していたので、優(ゆう)の自分を特別視し、他人を蔑む態度はずいぶん新鮮に映った。

仲間と慰め合うのは勝手だけど、そういうのに僕を巻き込まないでくれる?

僕自身も努力とか根性という根拠のないものよりも、科学や理論的な考え方で向上に努める人間だから、彼のそんな自己本位な考え方や歯に絹着せぬ物言いも、どこか共感できてしまう部分があるのであった。それでも優(ゆう)は「自分は特別な人間だから特別扱いされるのが当然」ということまで公言してしまうから、次第に部の中でも孤立していく。

いろんな物語を読みなれている読者なら、ああ、これから彼はどこかで妥協し、仲間の大切さに気づいていくのだろう。と予想するのだろう。しかしなかなかそうならず、さらにいうなら、彼の自信も日々の積み重ねによるものである点が使い古されたスポ魂物語と違う点かもしれない。

また、物語の舞台となっている大学の部活のパソコンなどの技術を駆使し、練習中の血液検査から適度な練習量を測る科学的な取り組み方にも大いに刺激を受けた。
僕自身もうある程度成熟して、人間関係の大切さもわかったつもりでいるが、優(ゆう)のようにわき目も振らずひとつことに一直線に向かう生き方に読みながら、憧れを抱いてしまった。それができるのは、その間に生じる数々の障害を乗り越えられる強い気持ちを持ったものだけなのだろう。

そして物語はそんな優と陸上部の部員たちとのやりとりだけでなく、優(ゆう)の母や父、兄との関係にも及んでいく。

結構、読み始める前の印象以上に心に深い作品であった。

ほかの価値観を知らないから、自分の価値観をたった一つの正解だと思ってしまう。普通は友人や先輩や、そういった自分と違う考え方をもった人と接していくうちに、自分が絶対じゃないってことを学んでいくものなんだ。
CPK(クレアチンホスホキナーゼ)
動物が持つ酵素で、筋肉の収縮の際にエネルギー代謝に関与している。

【楽天ブックス】「Run!Run!Run!」

「1985年の奇跡」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校の弱小野球部にすごいピッチャー沢渡(さわたり)がやってきた。勝利の味と悔しさを知った野球ことで部員達とその周囲に少しずつ変化が起こり始める。
舞台となっているのは1985年である。「キャプテン翼」によってサッカーの人気が出てきたあの時代。弱小野球部の野球部員はおニャン子倶楽部に夢中だった。そんな、僕自身よりも10歳ほど上の世代の青春時代を描いた作品。
この時代に対する僕らのイメージは、この時代に世にでていた漫画やドラマのせいだろうか、「根性」とか「青春」とか、なんかどこか敬遠してしまうようなイメージばかり抱いてしまうが、時代は違えど、高校生などどの時代も似たようなものなのだろう。手を抜くことと女の子と仲良くなることばかり考えていたのかもしれない。
本作品で描かれる野球部員達も、そんな種類の人間。「努力」と「根性」はせずに目の前の人生を楽しく生きたいという考え方。それでもそんな彼らが、野球とその仲間を通じて、少しずつ変化していく様子を描いている。

ただ、あいつが見せてくれた夢があまりに美しかったから、それがやっぱり夢だとわかった瞬間、どうしていいのかわからなくなっただけなのだ。

夏休みのこの時期にぴったりな爽快な物語。
【楽天ブックス】「1985年の奇跡」