オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの名著。世の中のデザインのあるべき姿について認知科学者である著者が語る。
初版の発行は1988年ということですでに30年近く前の本である。それでもデザインの名著としてなんども改変を繰り返し今でもしばしば触れられる書籍なので、デザインに関わる仕事をしている僕としてはいつか読まなければならない本として常に頭の中に存在していおり、今回ようやくその重い腰をあげるに至った。
さて、本書が伝えようとしていることは端的に言うと、「人が道具の使い方を間違ったり、わからなかったりするとき、その人を責めるのではなく、その道具のデザインが適切であるかを考えてみるべきである。」ということだろう。周囲の人を見ればそんな状況に気がつくことはたくさんなるだろう。例えば僕の母はまさに道具を使いこなすのが苦手な人であるが、母1人とっても、ビデオの録画の仕方、コンビニのおにぎりの海苔の巻き方、インターネットのつなぎ方、などデザインの課題がたくさん思い浮かぶ。
本書が出てすでに30年も経過しているにもかかわらず、世の中には今でもたくさんの人が、道具を使いこなせない時に、それを自らの落ち度とみなす人が多いのが残念である。もしそのように、道具を使いこなせない時、自分を責めて終わるのではなく、デザインの改善策を考える文化が根付いていたら、世の中はもっとよくなるのに、と思うのだ。
それでも、著者が30年前に考えたことのいくつかが、現在、スマートフォンなどの形で実現していることが嬉しい。世界は悲しいほどゆっくりだが、それでも確実に進歩しているのである。
【楽天ブックス】「誰のためのデザイン?認知科学者のためのデザイン原論」
カテゴリー: 趣味/関心事
「傍若無人なアメリカ経済 アメリカの中央銀行・FRBの正体」中島精成
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
経済にあまり詳しいわけではないが、やはり株価の動きや為替の動きを毎日眺めるうちに、もう少し深く知りたいと思い本書を手に取った。
リーマンショック、バブルの崩壊、プラザ合意、変動相場制、住専ん問題、山一証券など、それぞれの出来事やそれぞれの言葉の意味はなんとなく理解しているつもりでいたが、本書は、それらを大きな流れの中で説明しているため、経済に疎い僕にとっても面白く飽きずに読むことができた。
例えば、アメリカの双子の赤字(貿易赤字、財政赤字が並存すること)を発端とし、プラザ合意、ルーブル合意からドイツ、日本ともに内需を拡大することを求められ、その圧力ゆえに金融引き締め政策が遅れバブルへと突き進んでいく、という流れや、アメリカのITバブルの崩壊後の金融緩和がサブプライムローン問題、リーマンショックへと進んで行く流れである。
実際に著者が言いたかったのはタイトルにもあるように、どれほど世界がアメリカの経済に振り回されているか、ということなのだろうが、自分にとっては今まで点としてしか理解できていなかった経済の大きな出来事が線として繋がって見えてきた点の方が印象的だった。
なかなかすべて理解できたとは言えないが、非常に読みやすく経済に詳しくない人でも興味を持って読み進めることができるのではないだろうか。同じ著者の書いた経済の本をもっと読んでみたいと思った。
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「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」山本純子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
KickstarterやCampfireなど、クラウドファンディングという言葉が世に広まってすでに5年ほど経つが、僕自身クラウドファンディングによって資金を調達したことも、投資したこともない。何か大きなことをやろうと思って資金が足りないとなったときに、クラウドファンディングというものをどのように利用できるのか知りたくて今回本書にたどり着いた。
序盤は、クラウドファンディングというものがオンラインを通じてできるようになり、その資金調達の額が次第に大きくなっていく様子を、いくつかの事例を交えて説明している。すでにクラウドファンディングという手段が特殊なものではないということがわかるだろう。
面白かったのは中盤で描かれている、参加者の心理である。「なぜクラウドファンディングで資金調達に協力するのか?」。きっと世の中にはその心理がまったく理解できない人もいるのではないだろうか。もちろんクラウドファンディングには資金調達が成功した暁には「リワード」として、完成した製品や記念品などを資金提供者に送るというのは一般的なので、そのリワードを求めて資金を提供してくれる人も多いが、もう一つの要素を忘れてしまうと、そのクラウドファンディングは失敗に終わることが多いという。それは「仲間になりたい」という心理である。したがって、クラウドファンディングによって資金を調達する側は、常にプロジェクトの進行具合を報告し、参加者とのコミュニケーションを重視する必要がるのだ。
だからこそ、本書の最後を締めくくっているこの言葉が響いた。
ただでお金が手にはいる、というのは非常に便利に聞こえるが、そのために費やさなければいけない誠意、態度などは、中途半端な覚悟でできることではないのだろう。
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「デザインのデザイン」原研哉
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本デザインセンター代表の著者がデザインについて語る。
個人的には第2章の「リ・デザイン」が面白かった。著者は、2000年に身近なもののデザインを考え直す「リデザイン」というプロジェクトを主催し、日本のクリエイターに日常にあるものの再デザインを依頼したのだという。そのデザインの結果として上がってきたものが紹介されているが、もっとも印象に残ったのは、丸ではなく四角くしたトイレットペーパーの芯である。四角いことでトイレットペーペーを使う際に引っかかりができて使う量が少なくなるというエコ効果があるうえに、トイレットペーパーが巻かれても四角さは維持されるから収納しやすいという意図である。このような日常品のリデザインがほかにも幾つか紹介されている。
後半には著者が関わったいくつかのプロジェクトが紹介されている。田中一光から引き継いだ無印良品のプロジェクトはそのコンセプトの成り立ちから現在の問題点までとても興味深い。コンセプトがしっかりしているからこそ西友のコーポレートブランドが世界的なブランドにまで成長したのだろう。
2003年という今から15年も前に書かれた本にもかかわらず、世の中のデザインという舞台に現在起こっていることを語っていることに驚いた。著者は当時からすでにデザインの本質に目を向けていたか、将来のデザインの流れが見えていたのだと感じた。
19世紀イギリス・ヴィクトリア時代を代表する評論家・美術評論家である。(Wikipedia「ジョン・ラスキン」)
ダダイズム
1910年代半ばに起こった芸術思想・芸術運動のことである。ダダイズム、あるいは単にダダとも呼ばれる。第一次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底に持っており、既成の秩序や常識に対する、否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする。(Wikipedia「ダダイズム」)
ウィーン分離派
1897年にウィーンで画家グスタフ・クリムトを中心に結成された芸術家のグループ。セセッション、ゼツェッシオンともいう。(Wikipedia「ウィーン分離派)
未来派
過去の芸術の徹底破壊と、機械化によって実現された近代社会の速さを称えるもので、20世紀初頭にイタリアを中心として起こった前衛芸術運動。この運動は文学、美術、建築、音楽と広範な分野で展開されたが、1920年代からは、イタリア・ファシズムに受け入れられ[1]、戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」として賛美した。(Wikipedia「未来派」)
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「デザインの次に来るもの」八重樫文
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
イタリアでデザインをしていた著者が、グローバルな視点からこれからのデザインを語る。
前半では、「デザイン」という言葉について触れている。日本に限らず世界では「デザイン」という言葉は視覚的な「スタイリング」を指して使われることが多く、一握りの最先端の企業だけが、プロセスや戦略に「デザイン」という言葉を用いているのだという。本書はそんな「デザイン」の捉え方の違いを「大きなデザイン」「小さなデザイン」と呼んでいる。そして、これからの時代の変化に対応するために「プロセス」や「戦略」にまでデザインの考え方を適用するためにすべきことを事例を交えて語っている。
基本的に自分が今世の中に憂いている点と重なる部分が多かった。本書を読んで思ったのは、今、世の中には多くのデザイナーが存在し、その多くはスタイリングだけを考える「小さなデザイナー」であり、自分自身が「大きなデザイナー」であることを示すためには「デザイナー」という肩書きはあまり適切でないのではないかということ。本書では「クリエイティブディレクター」という言葉を例に挙げているが、肩書き自体を考え直すきっかけになった。
正直読み易い書き方がされているとは言いがたく、言いたいことも漠然としか伝わってこなかった。とはいえ、いくつかのことを考え直すきっかけにはなったがあまり人に勧められる本ではない。
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「日本のデザイン 美意識がつくる未来」原研哉
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本らしいこれからのデザインについて著者が見解を語っている。
「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」という日本独自の価値観と、ミニマリズムという世の中の流れを重ね合わせて考えている点が興味深い。
そして、持論を語るだけでなく、多くのデザイン事例を引き合いにだしており、どれもすぐれたデザイナーのものの見方を知ることができるだろう。デザイナーとして長く生きた著者だからこそ、かっこいいデザインではなく、世の中をよくするデザインに目を向けている点が、自分の考えと重なる部分があり興味深く読むことができた。
印象的だったのは、いいデザインは万国共通ではなく、その場所や文化を生かしたものであるという点である。言って見ればあたりまえなのかもしれないが、日本にいながらアメリカやヨーロッパのデザインを何も考えずに真似してしまうのは、ついやってしまうことである。
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「氣の威力」藤平光一
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長く続けられる新しい趣味をと思って合気道を始めることにした。本書は入会の際にいただいたものである。
「氣」とは、本当に存在するものなのだろうか。漫画などではよく出てくる言葉ではありながらも、それを実感することなく今まで生きてきた。ということは「氣」とは誰かの作り出した幻想なのか。それにしても誰かの作り出した幻想であれば、今も昔も「氣」という言葉で語られているのは出来過ぎな氣がする。そんな「氣」についてまさに本書は語ってくれる。
前半は、そんな「氣」についての説明と、「氣」をうまく使うことで成功した人や、「氣」にまつわるエピソードを紹介している。王貞治や、西武ライオンズの黄金時代も登場するから面白い。
そして、後半は著者自身が、病気がちな幼少期から強い人間へと変わっていく様子を語っている。ただ単に一人の物語とみても、戦時中に生きた著者のさまざまなエピソードは面白い。
残念ながら、本書を読んでも結局「氣」の使い方はわからないだろうが、「氣」というのもの存在を信じ、それをうまく使うことが人生にどれほど役立つかは伝わってくるだろう。
毎日の歩き方や姿勢や気持ちの持ち方を変えてくれる一冊。
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「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「キャリア磨きの達人」である秋山ゆかり氏が自身のキャリアについて語る。
正直、もっと順風満帆ななかでキャリアを築いてきたキャリアウーマンを思い描いていたが、新入社員の時はどちらかというと受身な働き方で、また途中かなり太っていた時期もあったようで、本書を読むと、見た目はどこにでもいそうな女性社員のであることがわかる。そういう意味では、決して能力的にまねできない人の話ではない点は希望が持てるかもしれない。
著者がそのキャリア形成のなかで学んだことなどを書いているので、新たに気づく部分もあれば、すでに取り入れている部分もあるだろう。ただ、読み終わってからタイトルを見直して、結局タイトルの「五つの力」とはなんだったのだろうというぐらい、書籍としてはまとまりのない本になってしまっているように思う。
また、著者の経歴だけ見ると誰もが認める「すごい人」なのだろうが、僕自身本書を読んで改めて考えてしまったのが、人は本当にここまで「社会で生き残ること」「年収を上げること」を望んでいるのだろうか、ということ。
また、著者自身「私は常に事業開発からブレていない」といっているが、世の中から求める人物を目指すあまり、自分自身が世の中をどうしたいか、自分自身がどうなりたいか、という視点があまり明確じゃないような印象も受けた。
一つの生き方を考えるきっかけにはなるかもしれない。
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「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」山口揚平
オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
ゴッホもピカソもどちらも現在では有名な画家でありながら、ゴッホが評価され絵が売れ始めたのは亡くなった後のこと。それに対してピカソはお金の作り方を心得ていた故にお金持ちだったという。そんな話から本書はお金だけでなく「価値の作り方」を語る。
本書によれば、これまで僕らは政府の発行する「お金」ばかりに価値を置いて生きてきたが、その形は崩れ始めているという。大企業の持つ仮想通貨の方が国の信用によって成り立つお金よりも安定していて価値がある場合もあるし、また信用のある個人の発言がお金以上の価値がある場合もあるというのだ。
ここで「価値」という言葉を使うと全体の意味がわかりにくくなるかもしれない。結局「お金」もどれほど社会や世の中に影響を与えるかを表したものである。例えば多くの読者を持つブログの著者は、その発言によって世の中に大きな影響を与えることがわかるだろう。さらに、お金がなくても信用力、発言力のある人が困っていれば、寄付などは簡単に集まるというのである。
つまり、本書では現代において、政府のお金を蓄えること、企業のお金を蓄えること、自分の価値を高めること、の3つの軸で自らの生活を考えることが必要だと語っているのである。本書は「お金」を貯めるよりも「信用」を貯めることの方がはるかに重要だというのだ。
それでは信用を貯めるにはどんな方法が有効なのだろう。本書ではこんな表現を用いている。
「専門性」は、ミッションや才能を価値に変換する能力
「確実度」は、約束を守るということ
「親密度」は、相手との精神的な距離の近さ
「利己心」は、自分の利益を重視すること
生き方に軌道修正をしなければならない気にさせてくれる一冊。
かなり納得する部分があり本書を読み終わって、いくつかのTwitterアカウントの解説と、LinkedInのプロフィールを見直した。忘れないようにこの考え方を繰り替えし見直したいと思った。
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「ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」エド・キャットムル
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「トイストーリー」等のアニメで有名なピクサーが成功するまでの様子をピクサーの創設者の一人である著者が語る。
ピクサーの歴史とはCGの歴史でもある。本書の冒頭で語られる1970年代のCGは、今見ると信じられないような品質のもので、この数十年間のCGの発展に改めて驚かされるだろう。そして、CGという新しい技術が広まる中で、古い手法に固執しようとするアニメーターたちがいる一方で、著者のように新しい技術を広めようとする人たちがいるのである。
ピクサーと言って僕らがすぐに思いつくのは、アップルの創設者でもあるスティーブジョブスではないだろうか。そして、スティーブ・ジョブスの果たした役割の大きさはすでにみんなも知っていることと思う。しかしピクサーにおいては、僕がアップルの印象として持っていたジョブスの自分の信じたものだけを、誰の意見にも耳を傾けずに追い求める、というような関わり方とは異なる関わり方をしたようだ。ジョブスは、自分のアニメーションに対する知識が足りてないことを早い段階で悟り、制作者たちの意見を尊重するのである。本書での描かれ方で、著者自身がどれほどスティーブジョブスを信頼しているのかがわかる。
本書はピクサーの成功を描いた作品でもあるが、その一方で、ディズニーという一時代を築いたアニメーション制作の会社が落ちてゆく様子も見えて来る気がする。また、ピクサー自体も順風満帆に成功の道を歩んできたわけではなく、数々の失敗を経て常にヒットを生み出す企業へと成長してきたのである。創造力を組織として維持することがどれがけ難しいかがわかるだろう。
本書の最後に書かれている「「創造する文化」の管理について思うところ」はそんなピクサーの考え方が詰まった4ページである。永久保存版にして何度でも読み返したくなる。なかでも印象的な言葉を挙げておく。
本書を読み終えた後、またピクサー映画が見たくなる。見ていないピクサー作品は片っ端から見ようと思ったし、すでに見た作品でさえも、そのできるまでのピクサー社員たちの奮闘の様子を知ると再度見たくなった。
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「新人コンサルタントが入社時に叩き込まれる「問題解決」基礎講座」 松浦剛志/中村一浩
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
社会で企業の一員となって生きる中で有効とも思える考え方をまとめてある。
僕自身の警官からも、多くの企業で非常に偏りのある考え方をする人々を多く見てきたので、このような実践的な考えかがを流布する有用性は感じるが、一方で常に合理的に考えて社会で生きてきた人間にとっては、どれも驚くような内容ではないように感じた。読者自身が毎日「問題解決」という状況にどのように向き合っているかによって、本書の受け取り方は大きく異なるだろう。
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「イエール+東大、国立医学部に2人息子を合格させた母が考える究極の育て方」小成富貴子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長男をイェール大と東大に、次男を国立大学医学部に合格させた母親が、その教育方法について語る。
僕自身の関心が向いているせいか、最近この手の教育方法を語った書籍が多いように感じる。このような本を読む時、気をつけなければならないのは、結果が良かったからと言って、その過程で行ったことのすべてがその成功に結びついているとは限らないということだ。
そんななかで、本書を読んでぜひ真似したいと思ったことは、「謝罪と感謝の際に理由をつけさせる」というものと「机ではなくリビングで勉強させる」というものである。ただただ「ありがとうと言いなさい」では考える力や表現力は育まれずただ機会的に「ありがとう」を繰り返すだけになってしまうだろう。またリビングで勉強することで、小学生の頃には子供にとってすぐに質問しフィードバックを受けることのできる環境となるし、中学生や高校生になればそれが適度な親子のコミュニケーションの機会になるのだろう。
また、家族会議を開いて、旅行先をみんなで決めながら歴史を学ぶという点も非常に面白いと思った。
その一方で、漫画やゲームやテレビを見せないという方針は、本当に正しい選択なのか疑問である。難関大学への合格というのが人生のゴールであれば問題ないかもしれないが、変化の激しい世の中に対応しどのような状況においても優れた能力を発揮できる人間を育てるのであれば、様々なものに早いうちから触れておく方がいいように個人的には感じた。
どの方法も大学合格のための方法としては納得感のあるものばかりだが、両親ともに多くの時間と情熱を注ぐ覚悟があってこそできることだと感じた。
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「UX Strategy: How to Devise Innovative Digital Products that People Want」Jaime Levy
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
革新的なデジタルプロダクトの先駆者として25年以上にわたって活躍している著者が本当に求められているユーザー体験を構築するための方法を語る。
非常に実践的で具体的な方法が書かれている点が予想とことなる部分だった。もう少し概念的な部分を知りたい人にとっては、具体的にすぎて自分たちのケースへの適用が難しいと感じるかもしれない。
僕自身最近何度かユーザーインタビューをする機会があったので、ユーザーインタビューの方法を細かく解説している部分を面白く読むことができた。カフェでやるときには店員に見えない席で行う、とか、インタビューを受ける人が気が散らないように壁に向かうようにする、とか、チップを弾む、など、笑い事ではないけどなんだか妙に現実的な方法が溢れている。
もっとも印象的だったのが、昨今Design Sprintという手法のなかで推奨されているユーザージャーニーマップを否定している点である。
もし、あなたがその戦略過程において、より経験に基づいた進め方をしたいなら、この方法をもっと発展させ、制作物を検証可能な開発の流れを作り、そのアイデア出しや発展のサイクルのなかで常に改善していく必要がある。
スタートアップにおいて、どのように新しい考えを生み出し、どのように無駄なコストをかけるリスクを最小限に抑えて製品を大きくしていくかは、重要な問題である。だからこそ本書で推奨されているFunnel Matrixという手法もしっかり理解したいと思った。
最後の章では、UX戦略の舞台で活躍する人々に著者自身が10の質問をぶつけた内容が含まれている。それによって著者の考えだけでなく、多くのUXの最先端で働く人たちの考え方が見えてくるだろう。
「ありえないデザイン」梅原真
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高知県で活躍するデザイナーの著者が仕事の取り組み方、考え方について語る。
「デザイナー」という名前でその肩書きを語っているが、その仕事の内容を見るとむしろ「プロデューサー」に近い。それでも著者が自らを「デザイナー」と呼び続ける気持ちは理解出来る。僕自身「デザイナー」とも呼べる職業で何年も生活していると、その言葉の持つ範囲が少しずつ広くなっていくのを感じるのだ。実際には「デザイン」という言葉は、視覚的な何かをつくることをさすだけではなく、新しく何かを作ることすべてに、例えばそれが、仕組みや人間関係やルールを作り出すことだったとしても、使えるのである。
本書では、高知県を中心にそのコミュニティをその企画力とセンスで活性化させていく著者の仕事の様子が描かれている。誰もがこんな生き方してみたいって思うのではないだろうか。
ただ「ありえないデザイン」というタイトルにはやはり違和感が残る。このタイトルが指しているような内容は含まれていなかったし、むしろ著者のすばらしい仕事の様子が描かれていたにもかかわらずデザインを学びたい人が間違って手に取ることを期待したようなタイトルのつけ方が非常に残念である。
本書でもっとも印象的だったのは、「ありのままの良さを伝えるデザインをする」という著者のポリシーである。世の中のいろんな商品をみれば、中身はたいしたものではなくても、美しくデザインされたパッケージに惹かれて買ってしまう、というのはよくあること。そしてそんな仕事を実際デザイナーは求められていたりもいるのだが、著者はそんな人を騙すようなデザインを否定しているのである。だからこそ、本書のタイトルは残念である。
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「アートディレクションの「型」」水口克夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数々の有名広告を手がけた実績を持つ著者がアートディレクションの心がけを語る。
本書では「つくる」「かたる」「すすめる」と、大きく3つに分けてアートディレクションの「型」を語っているのが、印象的だったのは「つくる」の章。そんななかでも今後意識したいと重っったのは。
というもの。単純に綺麗なものをつくるだけでなく、見た人がまず「ん?」となり、そして、「あ、そういうことか!」となるような広告はいい広告だというのである。言われてみればそれほど驚くことではないかもしれないが、これを常に頭においてデザインができているかというと疑問である。
もうひとつが
である。これもそこらじゅうで語られることであって、シンプルなものがもっともわかりやすく使いやすく、理解しやすい、と誰もが分かっていながらも、世の中には複雑なものが増えていってしまう。ある程度の経験を積んだデザイナーなら誰しもこの意識はもっているだろうが、本書で取り上げる実例を見るとその「捨て方」のバッサリ具合が徹底していて驚かされる。こちらもぜひ改めて意識したい。
残念ながら実例が20年以上前のものばかりで、リアルタイムに見た記憶のある広告が少なかった。本書のターゲット層はきっともっと下の世代であろうことを考えると、その違和感は他の読者にはもっと激しいのではないだろうか。
上でも語っているが、とりたてて新しいことを語っているわけではないので、多くのデザイン関連書籍の一冊として読むべきなのだろう。
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「英EU離脱の衝撃」菅野幹夫
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イギリスのEU離脱の背景や今後の課題などについて語る。
2006年6月のイギリスの国民投票によるEU離脱は大きなニュースとなった。あるイギリス人の友人はFacebook上で友人に謝っていた。「これは僕らが望んだことではない」と。起きたことはニュースで知ることができるが、その裏にある理由についてもっと知りたいと思って本書を手に取った。
今回の国民投票によって、北部と南部、年配者と若者の考え方が大きく分かれた理由だけでなく、EUという組織の歴史的系などについても今まで知らなかったことを知ることができた。考えてみれば当たり前なことなのかもしれないが、国民投票で離脱という結果になったからといってすぐに離脱と決まるわけではなく、その後イギリスがEUに離脱の意思を伝えて初めて手続きが始まる、という事実も本書を読むまで知らなかった。また、イギリスが島国ゆえに他のEU諸国とは少し異なるスタンスを持ってEUに接していたという事実も印象的だった。
離脱推進派の政治家たちが自らの責任を取ることもない状態で、EU離脱という事実に向き合わなければならないテリーザ・メイ首相の苦悩は想像に難くない。本書でも今後の課題として語られている部分ではあるが、イギリスが今後どのようにEUと向き合っていくのか注目したい。
実際以前にもEUについて詳しく知りたくて本を買ったことがあったのだが、その本はデータなどの数字が多くて、あまり読みやすいとはいえなかった。それに比べて本書はとても読みやすく、内容も細かすぎず、まさに「イギリスのEU離脱について知りたい」という人にぴったりの内容である。
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「グラフィック・デザインの歴史」アラン・ヴェイユ
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アールデコの代表的なグラフィックデザイナーであるカッサンドルの展覧会を訪れる機会があり、その今見ても斬新と思えるデザインに惹かれ、グラフィックデザインの歴史を改めて知りたくなり本書を手に取った。
アールヌーボーやアールデコなど19世紀後半から現代までのグラフィックデザインの流れを、代表的な作品とともに紹介している。グラフィックデザインは芸術ではない。それゆえに、ただ単に美しいだけではなく、どうやって人々の注目を集めるか、試行錯誤してきた歴史が見えてくる。
ミュシャやカッサンドルなど、すでに知っているデザイナーの歴史的な位置を知ることができただけでなく、今まで知らなかったデザイナーの作品をたくさん見ることができた。経済と商業とともに発展してきたグラフィックデザインの流れに触れることで、ただ単に美しいものだけを作って満足していないか、自分自身のデザインのスタンスを改めて考え直すきっかけになった。
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「Front Rowアナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録」ジェリー・オッペンハイマー
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「プラダを着た悪魔」のモデルになったと言われる実在する女性編集者アナ・ウィンターを描いた作品。
映画の印象だと、部下を育てようという、厳しさの裏にある優しさのようなものを感じた。しかし、本書を読むと、ただひたすら能力のある人間だけで周囲を固めて、自らがのし上がっていくのに手段を選ばず必死な印象を受けた。どちらかというとこのような人間がどうして周囲から認められて世界的なファッション誌のトップにまで上りつめたのか不思議な気がしたが、それは実力主義のアメリカと礼儀を重んじる日本の文化の違いからくる違和感かもしれない。
ファッション誌というと、流行を記事にするという印書を持っていたが、本書で描かれているヴォーグなどの雑誌はむしろ「流行を作り出す」という感じである。アナによって認められたデザイナーたちは、それによって流行となり成功するのであるから、大きな権力となるのも納得できる話である。
本書でもっとも印象的だったのは、アナのファッションに対するこだわりの強さである。もちろん立場的にはアナは世界で最もファッションに精通している人間なので当たり前かもしれないが、それでもそのファッションに対する姿勢には驚かされる。人間、誰しも外見も大事だということはわかっていながらもなかなか毎日細かい身だしなみにこだわりつづけることはできないもの。本書を通じて改めて自分の普段の身だしなみも見つめ直してしまった。
普段接することのない世界で、情熱を注いで生きている人間の考え方は、視野を広げてくれる気がする。
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「同時通訳者の頭の中 あなたの英語勉強法がガラリと変わる」関谷英里子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
同時通訳者が英語の勉強方法を語る。
著者自身、主に日本でその英語力を身につけたゆえに、その勉強方法はとても参考になる。著者が特に強調するのは「イメージ力」と「レスポンス力」である。そして、その能力の向上のための方法として、パラフレージング、シャドーイングを挙げており、その理由とその方法を解説している。
シャドーイングについてはすでに多くの本で触れられていて、実際やっているひとも多いのでその効果は疑う理由もないが、パラフレージングについては今まであまり取り組んでこなかった。本書を読んで改めてその効果を実感したのでぜひ自分の勉強のなかに取り入れたいと思った。
もっとも印象的だったのが、著者がお気に入りの映画「ビフォア・サンライズ」を見ていたときの話。そのなかで、著者は、主人公のセリーヌのフランス訛りの英語を素敵だと思ったと書いているのである。僕らはいつも、英語らしい英語を話そうとし、日本語っぽいカタカナ英語を恥ずかしいと思う傾向がある。しかし、見方を変えれば日本語訛りの英語を誇らしく思う、という方向もあるのではないかと思った。
全体的には、ページ増しのための内容のように思える部分や、まとまりや内容の流れに違和感を感じる部分もあった。そこらじゅうの英語教材に書いてあるような学習方法や学習教材、言葉の意味にページを割かずに、著者自身の考え方や勉強方法に絞ったらさらに濃い内容になったのではないだろうか。それでも、英語学習者にとっては参考になる内容が多く書かれていると感じた。
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「シューマンの指」奥泉光
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
語り手「私」は、古い友人から指を失ったはずの天才ピアニストの長嶺修人(ながみねまさと)が復活したことを聞く。信じられない思いから、長嶺修人(ながみねまさと)が指を失うまでの出来事を振り返る。
物語は、音楽に青春をかけた3人の男子高校生、語り手である「私」、長嶺修人(ながみねまさと)と鹿内堅一郎(しかうちけんいちろう)を中心に進む。圧倒的に音楽的能力の高い長嶺修人(ながみねまさと)が2人に持論を語るなかで、音楽には僕ら一般の人間が理解できないような、音楽家だけがわかる世界があることが伝わって来る。シューマンを中心に作曲家のことを語るシーンが多く、音楽の知識が少ないことを残念に思う一方で、実際に作曲家やその音楽について知識を持っている人ならどの程度本書で長嶺修人(ながみねまさと)が語っていることに共感するのだろうかと興味を持った。
そして、ある春休みの夜、3人が目撃した殺人事件を機に物語は動き出すこととなる。
音楽という要素を多く含む点は新しく、いろんなクラシック音楽を聴いてみたいと思わせてくれたが、結末はありがちな展開に感じてしまった。
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