「楽園のカンヴァス」原田マハ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第25回(2012年)山本周五郎賞受賞作品。早川織絵とニューヨークのアシスタントキュレーターのティムブラウンは伝説の富豪の基に招かれる。まだ世に出ていないルソーの絵画を鑑定するためである。

ルソーの絵画の真偽を判定するために、ルソーの研究家として著名な早川織絵(はやかわおりえ)とティム・ブラウンはスイスに招かれる。絵の真偽の判定と平行して、2人はある古い本を読むことも支持される。その本は作者はわからないがルソーの当時の様子を描いているのである。

早川織絵(はやかわおりえ)とティム・ブラウンは絵画の真偽判定の敵としてその場にいながらも、同じルソーの作品を愛する人間んとしてやがて打ち解けていく。その一方で、2人は世に出ていないルソーの作品を守るためになんとしてでも勝負に勝とうとするのである。

著者原田マハの作品に触れるのは本書で2冊目となるが、どうやらフリーのキュレーターでもあるらしく、本作品はそんな著者の持っている知識を見事に活かした作品となっている。ルソーの作品についてはもちろん多く触れているが、特に2人が読む事になった本の描写からは、ルソーの当時の生活が見て取れる。絵を描き始めるのが遅かったことや、ピカソとの交流など、また違った目でルソー作品を見れるようになるだろう。また当時の芸術家達がどのような姿勢で絵画に向かっていたかも感じる事が出来るだろう。

新しい何かを創造するためには、古い何かを破壊しなければならない。他者がなんと言おうと、自分にとって、これが最高にすばらしいと思えるものを作り出すには、そのくらいの覚悟が必要なんだ。他人の絵を蹂躙してでも、世界を敵に回しても、自分を信じる。それこそが新時代の芸術家のあるべき姿なんだ。
死海文書
1947年以降死海の北西にある遺跡ヒルベト・クムラン周辺で発見された972の写本群の総称。(Wikipedia「死海文書」

【楽天ブックス】「楽園のカンヴァス」

「「書」を書く愉しみ」武田双雲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
書道家である著者が「書」について語る。
コンピューターが世の中に浸透し、文字を書く機会は本当に少なくなった。そのせいか、文字を書く事が嫌いな人は多い。実際、自分の書く文字が嫌いな人も多いという。僕自身もそんな一人で、特に字が汚いわけでもなく、むしろ「字がキレイ」と言われる事のほうが多いのだが、どうしても自分の書く字が好きになれない。本書はそんな人に、字に対して新しい考え方を与えてくれるだろう。
字がうまくなる方法として「下手な字競争」を紹介している。その名のとおり下手な字を書こうと努めるのだが、どうやったら下手に見えるか、という視点に立って字を眺める事に良って、より深い考察をすることができるという。また、お手本通りに書くという学校での書道の授業に異を唱えている。なぜなら同じ人物が書いたとしても二度と同じ文字は書けないのだそうだ。
その他にも中国や日本の歴史的な書を紹介している。有名な書のなかにも読みやすいものもあれば読みにくいものもあり、そこから伝わってくるのは、文字に正解はないということ。服装や姿勢や髪型などと同じように、文字もその人の個性を表すものなのだろう。
改めて文字というものと向き合ってみたくさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「「書」を書く愉しみ」

「ガウディの伝言」外尾悦郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スペインのサグラダファミリアの建築に関わる日本人外尾悦郎(そとおえつろう)がサグラダファミリアやガウディ、そしてその仕事の内容について語る。
未だ建築中のサグラダファミリア。最近になって2026年に完成するとされているが、その長い間どのようにその建築は進められているのだろうか。もともとガウディは設計図を書いたりせずに建築を進めることが多かったという。サグラダファミリアも例外ではなく、建築家や彫刻家たちはガウディの思いを汲み取って建築を進めなければならない。序盤では著者がそのような過程を経てガウディの思いを形にするまでのエピソードが綴られている。
その中で著者が繰り返し語っているのが、機能と装飾が互いに補い合うガウディの建築の理念である。サグラダファミリアの装飾は単純に装飾としての意味だけでなく、建物の弱い構造を補う意味ももっているのだという。この考え方は建築だけでなく、機能と美しさを同時に考えなければならないデザインのすべてにおいて重視すべき事なのだろう。
また、ガウディの生涯が語られる中で思ったのは、大富豪エウセビオ・グエルとの出会いがどれほど大きかったかということ。天才は努力だけでなく多くの運に恵まれているのだと改めて思い知った。グエルとの出会いがなければガウディは誰の記憶にも残らずに歴史に埋もれていった事だろう。
さて、これだけ長い間建築が続けられていくと、なかには建築開始当初の理念から逸脱する部分もあるようで、後半ではそのいくつかが語られている。本来石で作られるはずだったものが途中からコンクリートになってしまったのもその1つである。確かに実際僕が訪れた際にどこか期待した重厚さが感じられずハリボテのような印象を受けてしまったのもそのせいかもしれない。
今や世界でもっとも有名な建物の1つ、サグラダファミリアについて理解するのに最適な一冊。

今日、一人の若者に建築家としての資格を与えた。彼の中に宿っているのは天才だろうか、狂気だろうか。それはまだわからない。しかし、時間が答えを出すだろう。

【楽天ブックス】「ガウディの伝言」

「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」小林章

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツで活躍する日本人の書体デザイナー小林章(こばやしあきら)が外国語のフォントについて独自の切り口で語る。
サブタイトルの「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」にあるように。普段フォントというものに関心を持っていない人にとっても興味をひく切り口で始めている。LOUIS VUITTON、GODIVAなど、フォント単体で見ると普通に見えるのに、なぜ高級感が感じられるのか。
そんな出だしで始まって、海外のフォントの文化や手書き文字の文化の違いについても触れている。日本語でも同じだが、印刷につかわれるフォントと手書き文字ではその見え方や書き方は異なる。外国でもそれは同じで、特に手書き文字にはその国独自の文化が根付いているらしい。数字の「1」の書き方がこんなにも国によって違う事に驚かされた。何も知らずに海外にいったら、僕らは手書きの「1」という文字すら識別できないだろう。
そして、フォントに関する使えそうなトリビアも満載。フォント好きにはおすすめである。世の中のそこらじゅうにあふれているフォント。それを知れば普段の生活はもっと楽しくなるはず。
【楽天ブックス】「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」

「女の子のための現代アート入門」長谷川祐子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
20年間展覧会やプロジェクトで現代アートを紹介してきた著者が現代アートについて語る。
同じ著者の別の作品「「なぜ?から始める現代アート」がいろいろな側面から現代アートの楽しみ方を語っているのに比べると、こちらはひたすら現代アートを紹介している。重なる部分も多く、どちらか迷っtている人がいるなら僕は、「「なぜ?から始める現代アート」の方をお勧めする。
もちろん、本作品からもいろいろな興味深いアーティストを知ることができた。黄色の顔を描くオスジェメオスなどはまさにその一つである。

登場人物たちの顔が黄色いのは黒人でもアジア人でも白人でもない、人種が特定できない顔にしたかったからだ。

終わりに著者が書いたこんな言葉が印象に残った。

考えることは、見聞きしたものをフレームに入れてあなたの体のなかにしまっておくプロセスです。起きている間に見たものの97パーセントは、眠っている間に記憶をつかさどる脳の海馬という場所で選別され、捨てられます。

アンテナを常に張って、感性を刺激し続けたいものである。
【楽天ブックス】「女の子のための現代アート入門」

「「なぜ?から始める現代アート」長谷川祐子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東京現代美術館のチーフ・キュレーターである著者が現代アートについてわかりやすく語る。
現代アートというと、西洋絵画や日本画と比べるとどうしても「わかりにくい」というイメージがあるが、著者は多くの現代アートを例にとって、それが制作された考え方などをわかりやすく語ってくれるので初心者にとっても非常にわかりやすい。現代アートというと「アートとは何か?」という定義への挑戦、的なイメージを僕は持っているのだが、そんなアートの定義として本書で著者が書いている次の言葉が印象に残った。

アートは、時を越えて生き残る「通時性」と、共有する現在をときめかせる「共時性」の、二つの力をあわせもっている。

いろんなアートやその考え方を説明する過程で出てくる作品やそのアーティストの考え方に魅了されてしまうだろう。「政治性」を持ったアートを説明している章では、「ゲルニカ」や「お腹が痛くなった原発くん」を例に挙げている。
アートを見る目を少し肥えさせてくれる一冊

フランク・ステラ
戦後アメリカの抽象絵画を代表する作家の1人。マサチューセッツ州、ボストン郊外モールデンに生まれ、プリンストン大学で美術史を学ぶ。(Wikipedia「フランク・ステラ」
ドナルド・ジャッド
20世紀のアメリカ合衆国の画家、彫刻家、美術家、美術評論家。当初は画家・版画家であり美術評論でも高い評価を受けたが、次第に立体作品の制作に移った。箱型など純粋な形態の立体作品は多くの美術家や建築家、デザイナーらに影響を与えている。抽象表現主義の情念の混沌とした世界の表現に反対し、その対極をめざすミニマル・アートを代表するアーティストの1人。(Wikipedia「ドナルド・ジャッド」
エルネスト・ネト
ブラジルを代表する現代美術家の一人で、布や香辛料など自然の素材を用いた作品で知られるアーティスト。2001年のヴェネチア・ビエンナーレではブラジル館の代表となるなど、既に世界的な評価は高く、出身地であるリオ・デ・ジャネイロを拠点にしながら、多くの展覧会、プロジェクトに参加している。(はてなキーワード「エルネスト・ネト」
マシュー・バーニー
アメリカの現代美術家。現在はニューヨーク在住。コンテポラリー・アートを代表する作家のひとりとして近年、台頭してきた。
フランシス・アリス
1959年ベルギー、アントワープ生まれ。メキシコシティ在住。社会的危機を抱いた都市空間を舞台にヴィデオや抽象絵画によって世間を挑発し続けるアーティスト。(はてなキーワード「フランシス・アリス」
SANAA
妹島和世(せじまかずよ)と西沢立衛(にしざわりゅうえ)による日本の建築家ユニット。プリツカー賞、日本建築学会賞2度、金獅子賞他多数受賞。(Wikipedia「SANAA」

【楽天ブックス】「「なぜ?」から始める現代アート」

「現代アートビジネス」小山登美夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ギャラリストである著者がその経験のなかから得た知識をもとに、現代アートについて語る。アーティストたちはどうやって有名になっていくのか、展覧会はどうやって開かれるのか、アートの値段はどうやって決まるのか、など、どこか敷居の高い世界、として距離を置いてしまうような空気のある現代アートについて、非常にわかりやすく解説している。
個人的に面白かったのは第3章の「アートの価値はどう決まる」である。世の中に最初に出たときの値段であるプライマリープライス、そしてオークションや売買などを経て変化するセカンダリープライス。と、アートの値段の決まり方を示してくれる。
そのほかにも、村上隆と奈良美智とのエピソードや海外のアート事情など、どれも興味を掻き立ててくれるだろう。そして、全体を通じて、現代アートをビジネスとしてだけでなく、作品、アーティスト、業界全体含めて「温かく育てていこう」という著者のアートに対する思いが伝わってくる。

アートは「商品」である前に、「作品」です。世界に一点しか存在しない。工業製品のように大量生産ができるわけでもないのです。作品には生身の人間が関わっているからこそ、アートは高額商品となり得るのです。

「ちょっとギャラリーを訪れてみようかな」と思わせる一冊である。

サザビーズ
現在も操業する世界最古の国際競売会社。インターネット上でオークションを開催した世界初の美術品オークションハウスでもある。(Wikipedia「サザビーズ」
クリスティーズ
世界中で知られているオークションハウス(競売会社)。ライバル社であるサザビーズと比べ、より大きな市場占有率を幾年にも渡って保持してきており、収益からみるとクリスティーズ社は現在、世界で最も規模の大きいオークションハウスである。(Wikipedia「クリスティーズ」
ジュリアン・オピー
イギリスの現代美術家である。シンプルな点と線による独特な顔を生み出し、世界の名だたる美術館に作品が貯蔵されている。(Wikipedia「ジュリアン・オピー」
キース・へリング
ストリートアートの先駆者とも呼べる画家で、1980年代アメリカの代表的芸術家として知られる。シンプルな線と色とで構成された彼の絵は日本でも人気があり、キースの作品をプリントしたTシャツがユニクロなどから販売されるなど広く知られている。(Wikipedia「キース・ヘリング」
ジャン=ミッシェル・バスキア
ニューヨーク市ブルックリンで生まれたアメリカの画家。1983年にはアンディ・ウォーホールと知り合い、作品を共同制作するようにもなる。(Wikipedia「ジャン=ミシェル・バスキア」
参考サイト
Julian Opie |
Keith Haring
Tomio Koyama Gallery 小山登美夫ギャラリー

【楽天ブックス】「現代アートビジネス」

「現代アート、超入門!」藤田令伊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
西洋絵画の良さはわかるが現代アートは何がいいのかさっぱりわからない。という人は多いだろう。実際僕もそんななかの一人。一体現代アートはどうやって楽しめばいいのか?そんな人にまさにうってつけの一冊。
著者は元々は普通のサラリーマンだったという経歴ゆえに、普通の人の目線に立って解説を進めていくため、難しい話は一切ない。ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」、デュシャンの「泉」、アンディ・ウォーホルの「ブリロボックス」など節目となった作品や、マグリットの「光の帝国」やマーク・ロスコの作品のように意味不明なものまで、その楽しみ方を非常にわかりやすく解説している。
すでに現代アートを楽しめている人にはほとんど意味のない内容だが、現代アートに興味を持ちつつも「さっぱりわからない」という人が一皮向けるのにはちょうどいい一冊。個人的に本書を読んで思ったのは、もはや現代アートにおいては「アート」=「美術」という等式は成り立たないということ。

史上初のキュビズム絵画とされ、アートの歴史に名を刻んだ「アヴィニョンの娘たち」は必ずしも「美しい」絵ではない。実際、ピカソ自身、美しく描こうとしたわけでもない。そして、「美」を求めない作家や作品は、現代アートにはゴロゴロしている。

個人的には現代アートとは、常に人々の既成概念を破壊しようとして進化しているように感じた。できるだけ現代アートの動向にもアンテナを張っておきたいと思う。

あれこれと思い巡らせた結果、「わかった!」という答えが得られなくてもかまわない。アート鑑賞は、必ずしも「わからあんければならないもの」ではないし、「わからないことがわかる」のも収穫となる場合がある。

複雑なことを考えずに現代アートを楽しもう、と思えるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「現代アート、超入門!」

「聖書の名画はなぜこんなにおもしろいのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
聖書の内容を知っていれば西洋絵画はもっと楽しめるはず。そういう考えでよく絵画に扱われるエピソードや、有名な絵画を例にとって解説している。
旧約聖書を中心に解説し、それぞれのエピソードで有名な絵、そしてその絵の登場人物の判断の仕方を解説している。当たり前のことであるが、各々のエピソードに登場する人物に対して、それぞれの画家の持つ印象は異なる。それゆえにその人物はそれを描く画家によって風貌が異なる。そういったなかで、どうやってその人物をそれと判断するか、と考えたときに、「アットリビュート」という物の存在が重要になる。
「アットリビュート」とは「○○を持っているのは○○だ」という考え方である。必ずしもそれは物ではなく時にはその風貌。例えば年老いているはず、とか若いはず。という要素として現れてくる。驚いたのは、絵画のなかに善と悪が存在する場合、右に位置するものが正しいということ。それゆえに「右(right)」=「正しい(right)」なんだそうだ。
本書で初めて知った印象的な画家は、アンドレア・マンティーニャ。ぜひ今後もしっかりとチェックしたい。
いずれにしても聖書の物語をしっかりと把握しておかないと理解しにくいものばかりで、まだまだ学ぶことは一杯あり先は長い、と感じさせてくれる一冊であった。

ユダはキリストが大好きだった。しかし、その何倍もキリストが妬ましかったのだろう。

【楽天ブックス】「聖書の名画はなぜこんなに面白いのか」

「怖い絵」中島京子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
タイトルのとおり、西洋絵画を「怖い絵」という視点で見つめなおす。「怖い絵」と言っても「怖い」の種類にはいくつかあり、単純に絵自体がグロテスクだったり残虐なシーンを描いたものを語ることもあれば、その時代の背景を知って初めてその絵が怖くなる場合や、その絵の描かれた前後に起こったことを含めて恐ろしかったりと、読者を飽きさせない。
確かに僕らはどうしても今の時代の常識をもって絵を鑑賞してしまう。たとえばドガはバレリーナを数多く描いたことで有名だが、現代のバレリーナと当時のバレリーナの持つ地位はまったく異なるもので、それを理解することで初めてこの絵の持つ意味が理解できる、と著者は書いている。
そうやって著者は多くの絵画のその背景に潜む意味を解説していくのだが、好感がもてるのは、いずれも断定せずに「?をあらわしているのではないだろうか」「?はなぜだろう」という表現を使用している点だろう。結局その絵が何を示そうとして描かれたのかは画家本人にしかわからない。鑑賞者はあくまでもそれを推測することで楽しむ、それが絵画の楽しみ方なのだろう。
本書を読んでまた少し絵画の見かたが変わった気がする。またいくつかの歴史的事実や神話のエピソードを知るきっかけになった。

ティントレット
師匠のティツィアーノとともにルネサンス期のヴェネツィア派を代表する画家。ティツィアーノの色彩とミケランジェロの形体を結びつけ、情熱的な宗教画を描いた。(Wikipedia「ティントレット」
サトゥルヌス
ローマ神話に登場する農耕神。英語ではサターン。ギリシア神話のクロノスと同一視され、土星の守護神ともされる。(Wikipedia「サートゥルヌス」
アルテミジア・ジェンティレスキ
17世紀イタリア、カラヴァッジオ派の女性画家。(Wikipedia「アルテミジア・ジェンティレスキ」
ガニュメデス
ギリシア神話の登場人物である。イーリオス(トロイア)の王子で、美しい少年だったとされる。オリュンポス十二神に不死の酒ネクタルを給仕するとも、ゼウスの杯を奉げ持つともいわれる。(Wikipedia「ガニュメーデース」
メデゥース号
フランス海軍のパラス級40門帆走フリゲート。1810年進水、就役。ナポレオン戦争後期、1809年から1811年にかけてのモーリシャス侵攻に参加し、またカリブ海でも活動した。メデュース号、メデューサ号などと表記されることもある。(Wikipedia「メデューズ (帆走フリゲート)」

【楽天ブックス】「怖い絵」

「誰も知らない「名画の見方」」高階秀爾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「絵の見方」と称して、さまざまな西洋絵画を時代背景や画家の気持ちの変化などとともに解説している。
どうやら世の中には、「絵画の見方がわからない」と言って、それを避けてしまう人がいるようだ。考えて見れば僕の友人にもそんなようなことを言っていた人がいる。個人的には、絵画などというのは、何度も見ていれば、それなりにその画家の個性が見えてくるものだと思うし、その画家の絵のタッチや絵のテーマに興味を持てば、自然と宗教や神話や歴史にも興味が広がっていき理解が深まるもの。絵を見る前に「絵の見方」を学ばなければならないなんてものでは決してないと思っている。
本書の「はじめに」で著者が言っているものまさに僕の考えと一致している。著者のそんなスタンスがなによりも気に入った。
さて、本書はそうやって今まで気にしてなかった絵画の見えなかった部分を教えてくれる。たとえばモナリザについての興味深い説明はこうである。

モナ・リザが座っているのは、腰壁に囲まれたテラスである。つまり室内から外部へと続いていく空間のはざまであると同時に、自然と人工物ののはざまでもある。つぎに時間はどうだろう。どうやら夕暮れ時の光のなかのようだ。つまり、昼から夜へと変化していく時間のはざまだ。さらに季節は秋だ。これも暑い夏から寒い冬への変わり目であり、やはり、はざまといえる。

あれほど見慣れているモナ・リザにもこんな見方があったということに驚かされる。
さて、本書はまた、僕自身のお気に入りの画家について書かれている部分が思いのほか多かったのもうれしい。たとえば、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・モロー、ヒエロニムス・ボス、ビーテル・ブリューゲルなどがそれである。
絵画好きだけでなく、興味はあるけどいまいちわからない、などと思っている人にもオススメである。

ファン・エイク
兄のフーベルト(ヒューベルト)・ファン・エイクとともに油彩技法の大成者として知られる。フィリップ2世(豪胆公)の宮廷で活躍した。フーベルトの事績は不詳で、確実な作品もないが、現存のヤンの作例は兄との合作も含まれている。(Wikipedia「ヤン・ファン・エイク」

【楽天ブックス】「誰も知らない「名画の見方」」

「ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか」井出洋一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
西洋絵画を楽しむ上で、宗教とギリシア神話は欠かせないもの。本書はギリシア神話のエピソードとともに、その場面を描いた絵画を紹介している。
僕自身西洋絵画とギリシア神話はもともと好きなので多くの物語は知っているものばかりだったが、それでもいくつかの知らなかった逸話や、ギリシア神話の一場面と知らずに見ていた絵画、そして見たこともない絵画に触れることができた。
面白いのは神話上の人物が、絵で描かれる際の特長に触れている点だろう。アットリビュートと呼ばれるその人物の象徴となる持ち物を知ることで、より絵画のなかの人物を特定しやすくなるのということだ。
たとえばよく知られているものだと、エロス(キューピッド)の弓、ヴィーナス(アフロディーテ)の貝といったところだ。残念ながらアットリビュートの説明は文章だけで、資料となる絵画が載っていない点がやや物足りなかった。
絵画としてはピエロ・ディ・コジモ「アンドロメダを救うペルセウス」など、ペルセウス好きにはたまらない。ジュール・ルフェーブルの「パンドラ」も印象的である。どちらも今まで知らなかった画家なので、ぜひ覚えておきたいものだ

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