オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する人とそうでない人の差はなんなのか。それは社会的知性(SQ)でもなければ、知能指数(IQ)でもなくでも、GRITという呼ばれる力なのだという。本書はそんな成功するための力「GRIT」について語っている。
序盤ではこれまで考えられていたIQの重要性を否定してからGRITに語っていく。GRITとは度胸(Guts)、復元力(Resillience)、自発性(Initiative)、執念(Tenacity)という4つの力で、多くの実例を交えて説明している。
まず印象的だったのは「夢を捨てされ」の章である。僕らは「夢を持つこと」はいいことだと教わってきた。それは確かに目標に向かう原動力となり得るのだが、夢を語ってばかりで実際にその1歩を踏み出さない人も多くいるのだという。夢想している暇があったら「今日できることをする」という考え方が重要なのだという。
また、拒絶されても立ち直る力を身につけるために、ある男性が行なったリジェクションセラピーの話も面白かった。投資家からの資金提要を断られたことがショックだった彼は立ち直る力を身につけるために、100日間連続で人に断られることを目標にしたのだ。断られるための無茶な要望にもかかわらず、受け入れてくれた人がいたことから、男性は自分の望みを叶えるためには拒絶を恐れずに、頼んでみることが重要なのだと知るのである。拒絶は人間の否定ではなく、ただ単にあなたの要求が相手の求めているものにマッチしなかったというだけなのだ。
終盤の「期限は無限」の章で紹介されていた、92歳の時にアルファベットを学び始め、98歳のときにベストセラーを書いた男性の話は、多くの読者へ、将来への希望を与えてくれるだろう。
多くの例は触れられているものの、実際にどのような方法をとればGRITが身に付けられるのかはわかりにくい。それでも「忍耐力」、「楽観主義」、「固定思考」よりも「成長思考」と、いくつかの鍵となる考え方を知れば今後の生き方のヒントとなるのではないだろうか。何よりもいい話に溢れているので一読の価値ありである。
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カテゴリー: 趣味/関心事_仕事・キャリア
「LIFE SHIFT」リンダ・グラッドソン/アンドリュー・スコット
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の寿命は過去から現在に至るまで伸び続け、現在もその勢いは続いている。2007年生まれの先進国の人の50%は107歳まで生きるのだという。そんな100歳まで生きることが普通となっていくなかで、人はどのように生きるべきかを語る。
何よりも100歳まで生きるということは65歳で引退するという選択をすると、その先35年もの引退期間を生きることとなり、必要な貯金の額も想定と大きくことなるという。なによりも、学生として勉強する時代と、社会にでて働く時代と、引退後の生活という3つの人生のステージの生き方が今後大きく変わっていくという。
個人として考えていかなければいけないのは、20代前半までで身につけた技術や知識だけで、その先100歳までの人生のための十分なお金を稼ぐのは難しいということ。学生を終えて社会に出た後も、仕事をする時期と、学んで新たな知識を身につける時期を送ったり、働きながら新たな知識を身につける必要がある。本書ではそんな寿命の変化は、各世代に生きる人々にどのような影響を与えるのかを、1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンという架空の人物で説明している。
仕事や学びだけでなく、結婚やパートナーとの関係も変わってくるという。人生が長くなれば女性の出産による仕事から離れる期間もそれほど大きな問題ではなくなるために、女性と男性の関係が対等に近づいていくという。女性の出産期間にパートナーである夫がその生活を支えるように、男性の学びの期間に、そのパートナーの女性が生活費を補うような、それぞれの生活を経済的に支えあうようなパートナー関係が多くなるという。
個人的には僕自身が働くIT系の会社では多くの人がすでに考えている内容であるため、それほど大きな驚きはなかった。むしろ転職等をせずに1つの会社でずっと働き続けている人にこそ役立つのかもしれない。そんな人は本書を読んで、これからの時代の変化に対応できるような柔軟性を育む準備をしたほうがいいのではないだろうか。65歳まで1つの会社で生きてしまうと、その後他の生き方や働き方をするのはかなり難しくなってしまうだろう。
【楽天ブックス】「LIFE SHIFT」
「美術館で働くということ」オノユウリ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東京都現代美術館の仕事の様子を描いた漫画である。
先日読んだ原田マハの「弾幕のゲルニカ」が以前か気になっていた学芸員という仕事に再び
目を向けた。
本書を読み始めて知ったのだが、どうやら展覧会などで美術館に訪れたときに、部屋の隅に座っている黒い服を着た女性は学芸員ではないらしい。学芸員という職業の名前を最初に知ったのが、美術館で座っている人を指してのことだっただけにこれには驚かされた。実際には、美術館にのんびり座っている暇もないほど、毎日忙しく、好きな画家や好きな美術に本当に深く関われる仕事だとわかった。
前半は展覧会などを企画する学芸員の仕事の様子が描かれており、美術館に所属する学芸員たちは自分のすすめる作家の展覧会を提案し、企画し、作家と一緒になって展覧会を開催するのだという。だから、ときには学芸員の意見が作家の作品に影響を与えることもあるのだという。そう考えると、決してただ美術を展示するだけの受け身な仕事でないことがわかる。人生で経験できる仕事はわずかだけど、こんな生き方もしてみたかったと思わせてくれるだろう。
後半のコレクション担当もとても面白かった。コレクション担当とは美術館の所蔵する作品を決定、管理する仕事で美術館が所蔵する作品を決める際には、何を後世に伝えるべきかを職員の間で議論して決めていくのだそうだ。そうやって議論のすでに決定された所蔵された作品が貸し出されたりする際には我が子を送り出す親のような気持ちになるのだという。
学芸員という仕事について知りたくて手に取った本ではあるが、むしろ美術の奥深さ、展覧会、美術館など、美術に対する考え方もさらに深めてくれた気がする。
【楽天ブックス】「美術館で働くということ」
「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「キャリア磨きの達人」である秋山ゆかり氏が自身のキャリアについて語る。
正直、もっと順風満帆ななかでキャリアを築いてきたキャリアウーマンを思い描いていたが、新入社員の時はどちらかというと受身な働き方で、また途中かなり太っていた時期もあったようで、本書を読むと、見た目はどこにでもいそうな女性社員のであることがわかる。そういう意味では、決して能力的にまねできない人の話ではない点は希望が持てるかもしれない。
著者がそのキャリア形成のなかで学んだことなどを書いているので、新たに気づく部分もあれば、すでに取り入れている部分もあるだろう。ただ、読み終わってからタイトルを見直して、結局タイトルの「五つの力」とはなんだったのだろうというぐらい、書籍としてはまとまりのない本になってしまっているように思う。
また、著者の経歴だけ見ると誰もが認める「すごい人」なのだろうが、僕自身本書を読んで改めて考えてしまったのが、人は本当にここまで「社会で生き残ること」「年収を上げること」を望んでいるのだろうか、ということ。
また、著者自身「私は常に事業開発からブレていない」といっているが、世の中から求める人物を目指すあまり、自分自身が世の中をどうしたいか、自分自身がどうなりたいか、という視点があまり明確じゃないような印象も受けた。
一つの生き方を考えるきっかけにはなるかもしれない。
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「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」山口揚平
オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
ゴッホもピカソもどちらも現在では有名な画家でありながら、ゴッホが評価され絵が売れ始めたのは亡くなった後のこと。それに対してピカソはお金の作り方を心得ていた故にお金持ちだったという。そんな話から本書はお金だけでなく「価値の作り方」を語る。
本書によれば、これまで僕らは政府の発行する「お金」ばかりに価値を置いて生きてきたが、その形は崩れ始めているという。大企業の持つ仮想通貨の方が国の信用によって成り立つお金よりも安定していて価値がある場合もあるし、また信用のある個人の発言がお金以上の価値がある場合もあるというのだ。
ここで「価値」という言葉を使うと全体の意味がわかりにくくなるかもしれない。結局「お金」もどれほど社会や世の中に影響を与えるかを表したものである。例えば多くの読者を持つブログの著者は、その発言によって世の中に大きな影響を与えることがわかるだろう。さらに、お金がなくても信用力、発言力のある人が困っていれば、寄付などは簡単に集まるというのである。
つまり、本書では現代において、政府のお金を蓄えること、企業のお金を蓄えること、自分の価値を高めること、の3つの軸で自らの生活を考えることが必要だと語っているのである。本書は「お金」を貯めるよりも「信用」を貯めることの方がはるかに重要だというのだ。
それでは信用を貯めるにはどんな方法が有効なのだろう。本書ではこんな表現を用いている。
「専門性」は、ミッションや才能を価値に変換する能力
「確実度」は、約束を守るということ
「親密度」は、相手との精神的な距離の近さ
「利己心」は、自分の利益を重視すること
生き方に軌道修正をしなければならない気にさせてくれる一冊。
かなり納得する部分があり本書を読み終わって、いくつかのTwitterアカウントの解説と、LinkedInのプロフィールを見直した。忘れないようにこの考え方を繰り替えし見直したいと思った。
【楽天ブックス】「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」
「ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」エド・キャットムル
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「トイストーリー」等のアニメで有名なピクサーが成功するまでの様子をピクサーの創設者の一人である著者が語る。
ピクサーの歴史とはCGの歴史でもある。本書の冒頭で語られる1970年代のCGは、今見ると信じられないような品質のもので、この数十年間のCGの発展に改めて驚かされるだろう。そして、CGという新しい技術が広まる中で、古い手法に固執しようとするアニメーターたちがいる一方で、著者のように新しい技術を広めようとする人たちがいるのである。
ピクサーと言って僕らがすぐに思いつくのは、アップルの創設者でもあるスティーブジョブスではないだろうか。そして、スティーブ・ジョブスの果たした役割の大きさはすでにみんなも知っていることと思う。しかしピクサーにおいては、僕がアップルの印象として持っていたジョブスの自分の信じたものだけを、誰の意見にも耳を傾けずに追い求める、というような関わり方とは異なる関わり方をしたようだ。ジョブスは、自分のアニメーションに対する知識が足りてないことを早い段階で悟り、制作者たちの意見を尊重するのである。本書での描かれ方で、著者自身がどれほどスティーブジョブスを信頼しているのかがわかる。
本書はピクサーの成功を描いた作品でもあるが、その一方で、ディズニーという一時代を築いたアニメーション制作の会社が落ちてゆく様子も見えて来る気がする。また、ピクサー自体も順風満帆に成功の道を歩んできたわけではなく、数々の失敗を経て常にヒットを生み出す企業へと成長してきたのである。創造力を組織として維持することがどれがけ難しいかがわかるだろう。
本書の最後に書かれている「「創造する文化」の管理について思うところ」はそんなピクサーの考え方が詰まった4ページである。永久保存版にして何度でも読み返したくなる。なかでも印象的な言葉を挙げておく。
本書を読み終えた後、またピクサー映画が見たくなる。見ていないピクサー作品は片っ端から見ようと思ったし、すでに見た作品でさえも、そのできるまでのピクサー社員たちの奮闘の様子を知ると再度見たくなった。
【楽天ブックス】「ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」
「新人コンサルタントが入社時に叩き込まれる「問題解決」基礎講座」 松浦剛志/中村一浩
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
社会で企業の一員となって生きる中で有効とも思える考え方をまとめてある。
僕自身の警官からも、多くの企業で非常に偏りのある考え方をする人々を多く見てきたので、このような実践的な考えかがを流布する有用性は感じるが、一方で常に合理的に考えて社会で生きてきた人間にとっては、どれも驚くような内容ではないように感じた。読者自身が毎日「問題解決」という状況にどのように向き合っているかによって、本書の受け取り方は大きく異なるだろう。
【楽天ブックス】「新人コンサルタントが入社時に叩き込まれる「問題解決」基礎講座」
「UX Strategy: How to Devise Innovative Digital Products that People Want」Jaime Levy
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
革新的なデジタルプロダクトの先駆者として25年以上にわたって活躍している著者が本当に求められているユーザー体験を構築するための方法を語る。
非常に実践的で具体的な方法が書かれている点が予想とことなる部分だった。もう少し概念的な部分を知りたい人にとっては、具体的にすぎて自分たちのケースへの適用が難しいと感じるかもしれない。
僕自身最近何度かユーザーインタビューをする機会があったので、ユーザーインタビューの方法を細かく解説している部分を面白く読むことができた。カフェでやるときには店員に見えない席で行う、とか、インタビューを受ける人が気が散らないように壁に向かうようにする、とか、チップを弾む、など、笑い事ではないけどなんだか妙に現実的な方法が溢れている。
もっとも印象的だったのが、昨今Design Sprintという手法のなかで推奨されているユーザージャーニーマップを否定している点である。
もし、あなたがその戦略過程において、より経験に基づいた進め方をしたいなら、この方法をもっと発展させ、制作物を検証可能な開発の流れを作り、そのアイデア出しや発展のサイクルのなかで常に改善していく必要がある。
スタートアップにおいて、どのように新しい考えを生み出し、どのように無駄なコストをかけるリスクを最小限に抑えて製品を大きくしていくかは、重要な問題である。だからこそ本書で推奨されているFunnel Matrixという手法もしっかり理解したいと思った。
最後の章では、UX戦略の舞台で活躍する人々に著者自身が10の質問をぶつけた内容が含まれている。それによって著者の考えだけでなく、多くのUXの最先端で働く人たちの考え方が見えてくるだろう。
「アートディレクションの「型」」水口克夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数々の有名広告を手がけた実績を持つ著者がアートディレクションの心がけを語る。
本書では「つくる」「かたる」「すすめる」と、大きく3つに分けてアートディレクションの「型」を語っているのが、印象的だったのは「つくる」の章。そんななかでも今後意識したいと重っったのは。
というもの。単純に綺麗なものをつくるだけでなく、見た人がまず「ん?」となり、そして、「あ、そういうことか!」となるような広告はいい広告だというのである。言われてみればそれほど驚くことではないかもしれないが、これを常に頭においてデザインができているかというと疑問である。
もうひとつが
である。これもそこらじゅうで語られることであって、シンプルなものがもっともわかりやすく使いやすく、理解しやすい、と誰もが分かっていながらも、世の中には複雑なものが増えていってしまう。ある程度の経験を積んだデザイナーなら誰しもこの意識はもっているだろうが、本書で取り上げる実例を見るとその「捨て方」のバッサリ具合が徹底していて驚かされる。こちらもぜひ改めて意識したい。
残念ながら実例が20年以上前のものばかりで、リアルタイムに見た記憶のある広告が少なかった。本書のターゲット層はきっともっと下の世代であろうことを考えると、その違和感は他の読者にはもっと激しいのではないだろうか。
上でも語っているが、とりたてて新しいことを語っているわけではないので、多くのデザイン関連書籍の一冊として読むべきなのだろう。
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「大事なことに集中する 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」カル・ニューポート
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ディープワークをするための方法について語る。
本書ではディープワークを「あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。」と定義し、その時間を多く作り出すことこそ質の高い仕事に繋がるとしている。
きっと誰もが、仕事に「没頭」してしまったことがあるのではないだろうか。本書でいう「ディープワーク」とはまさにそんな仕事への「没頭」状態のことである。しかし、誰もが経験から知っている通り、残念ながらそんな「没頭」状態は頻繁に起きることではないし、起きたとしても長く続くものではない。どのような環境が整えばそのような状態になるのかを、本書はいろいろな例を交えて説明している。
多くの人がディープワークの真逆であるシャローワークに多くの時間を奪われているのは誰もが経験的に知っていることだろう。シャローワークの代表的な例はもちろんメールのチェックである。インターネットの普及により、大量のメールが毎日送信されるのが日常的なこととなり、毎日すべてのメールをチェックするだけでもかなりの時間がかかってしまうのである。
本書が語っている興味深いことの1つは、過去に行われた実験によると、シャローワークは世間一般に人々が思っているほど重要ではないということである。シャローワークを減らすことで、労働時間を減らしながらもディープワークの時間を増やして成果を出している企業の例は非常に興味深い。
全体的には、僕自身が普段仕事の質を上げるために行っていることや、経験から感じていることを裏付ける内容であった。
読者にとって仕事の質をあげるためのヒントになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「大事なことに集中する」
「A Win Without Pitching Manifesto」Blair Enns
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザイナーとして他のデザイナーやデザイン企業と差別化を図る方法について語る。
本書で繰り返し主張していることはタイトルにあるように「Win Without Pitching Manifesto」である。クリエイティブな業界で仕事をする人は、仕事を得るためにコンペに参加して、無料で提案内容を披露したり、値段を安くすることで、勝負するデザイナーや企業を見たことがあるだろう。ひょっとしたら自分自身がそのようにして仕事を取ってきているかもしれない。
しかし、値段を安くすることをしている限り、クライアントを完全に満足する仕事はできないというのである。そして、一度値段を安くすると、その負のスパイラルから永遠に抜けられないというのだ。「楽しい仕事をしているから、忙しくても満足」では続かない。本書はそんなクリエイティブ業界のよくある状況から抜け出すための次の12の話を語っている。
We Will Replace Presentations With Conversations
We Will Diagnose Before We Prescribe
We Will Rethink What It Means to Sell
We Will Do With Words What We Used to Do With Paper
We Will Be Selective
We Will Build Expertise Rapidly
We Will Not Solve Problems Before We Are Paid
We Will Address Issues of Money Early
We Will Refuse to Work at a Loss
We Will Charge More
We Will Hold Our Heads High
印象的だったのは、コンペでプレゼンをすることを、医者に例えてさとしている点である。「医者は診察をしないうちに薬を処方したりしない」と。つまり、クライアントの問題点をしっかり調査しないうちに提案をするのは間違っているというのである。
読み終えて思ったことだが、本書はクリエイティブな仕事の仕方について書いているが、自らの価値を少しずつ高めていく考え方としては、必ずしも仕事に限ったことではなく、人間関係にも適用できるかもしれないと感じた。
「ダメだ!この会社 わが社も他社も丸裸 」山崎元/倉田真由美
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
11回の転職をした著者が自らの経験を基に、いい会社や悪い会社の傾向について、会社勤めをしたことのない漫画家倉田真由美と共に語る。
「こんな会社はだめだ」と端的に言い切るところが面白い。いくつか挙げると次のようなものだ
役員フロアがゴージャスすぎる会社
上司・同僚を肩書きで呼び合う会社に未来なし
そんな表面的なことばかり書かれているかというとそんなことはない。本書で語られていることのなかで印象的だったのは、悪い会社も務める人の心の持ちようによってはいい会社になり、またその逆もありえるというところ。結局大事なのは自分の価値観に見合う会社を選ぶということなのだろう。こうやって書いてみると当たり前のようのことのように思えるのかもしれないが、しっかりと自らの価値観を見極めるまでにはある程度の年月を、価値観の合わない会社で働く必要があるのだ。
本書で書かれていることの多くが真実であったとしても、自ら経験するからこそしっかり理解できることなのだろう。それでも知識として持っておいて損はない。
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「コンサル一年目が学ぶこと」大石哲之
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
外資系のコンサルティング会社出身者はその後さまざまな分野で活躍している。そんな彼らが1年目に学ぶ、その後の人生にずっと影響を及ぼすような内容とは何なのかを語る。
本書は4つの章に分かれている。「話す技術」「思考術」「デスクワーク術」「ビジネスマインド」である。どれも非常に論理的な考え方なので、普段から論理的な考え方をしている人にとっては、当たり前のことばかりなのかもしれないが、改めて自分の行動を見直し、それをさらに磨くためには本書はいいきっかけになるのではないだろうか。
話す技術のなかで、「PREPの型に従って話す」というのがある。PREPとはPoint、Reason、Example、Pointで、まず結論を話し、その理由を説明し、具体例を語った上で再度結論を繰り返す、という流れである。「結論を先に話す」というのはよく言われることではあるが、改めて自分自身の本日、昨日の職場での言動を振り返ってみるとすべてにおいてそのように実行できていたかは怪しい。
また「Quick and dirty」という考え方も、常にできているとは言い難い。「Quick and dirty」とは完璧ではないものでも早く人に精査させることによって軌道修正を行うということである。必要以上に間違ったものを作り込んで無駄な時間とエネルギーを使うことを避けるために非常に有効な考え方で、アジャイル開発などでも取り入れられている考え方だが、人の目を考えるとついつい作り込んでしまいがちである。
コンサルタントがなぜあれほど高い給料をもらえるのだろうか、というところに興味を持って本書を手に取ったのだが、彼らも特別なことをやっているわけではないということがわかった。本書では多くの参考図書が紹介されていたのであわせて読んでみたい。
「まだ「会社」にいるの?」山口揚平
「得点力を鍛える」牧田幸裕
「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」秋山ゆかり
「なぜゴッホは貧乏でピカソは金持ちにだったのか?」山口揚平
「観想力・空気はなぜ透明か」三谷宏治
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「リーンスタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す」エリック・リース
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
いくつかの事例を交えてリーン・スタートアップについて説明する。改めて実例と共にそのコンセプトを読み進めると理解が深まる。
特に印象的だったのがMVP(Minimum Viable Product)の重要性である。制作に関わる人間はどうしても、「できるかぎりいいものを世の中に出したい」と思って作りこむことに時間をかけてしまうが、実際に作っているものが世の中の求めているものとは限らないのである。実用に耐えうる最低限のものを、アーリーアダプターに提供することによって世の中でどんなものが求められているかを早く知り、早く軌道修正することができるのである。
もう一つ印象に残ったのがバッチサイズの縮小のメリットである。バッチサイズとは繰り返しの作業による1つの工程から次の工程への作業量の大きさである。例えば100通の手紙を用意するのに、100枚の手紙をまず折って、その後100枚の手紙を封筒に入れる、という作業の流れだとパッチサイズ100となる。これに対して手紙を1枚ずつ仕上げる方法がパッチサイズ1である。僕らは、作業は繰り返すほどに習熟するという思い込みがあるため、バッチサイズが大きいほど効率的という思い込みがあるが、バッチサイズが小さい方が問題が早く浮上し、すばやく修正を反映することができるのである。
非常に読みやすく、リーン・スタートアップについて理解するのに非常にわかりやすい本である。
「イノベーションへの解 利益ある成長に向けて」
「製品開発フローの原則 第2世代リーン製品開発」ドナルド・G・レイナーツェン
「教育 × 破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する」
「ザ・トヨタウェイ」ジェフリー・ライカー
「トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして」大野耐一
「プランB 破壊的イノベーションの戦略」ジョン・マリンズ、ランディ・コミサー
「リーン・シンキング改訂増補版」ジェームズ・P・ウォーマック、ダニエル・T・ジョーンズ
「It’s not how good you are, it’s how good you want to be.」Paul Arden
「スピーチライター 言葉で世界を変える仕事」蔭山洋介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スピーチライターについてその仕事の内容と進め方について書いている。
スピーチライターという言葉が有名になったのは、やはりオバマ大統領の「Yes, we can.」に代表される魅力的なスピーチの数々による功績が大きいだろう。序盤はスピーチが歴史の重要な局面で重要な役割を果たしたいくつかの例を語り、スピーチライターが世の中に認められるまでの過程や、日本とアメリカのスピーチライターに関する意識の違い等を語っている。
中盤以降は実際のその仕事の流れを語っているが、その内容は必ずしも大それたスピーチやプレゼンの場だけでなく、日常の会話で役に立ちそうなものも含まれている。特に「共感を積み上げる」「反感は共感に変えることができる」というのは非常に興味深く、すぐにでも実行したいと思った。
終盤は実際に著者がプロジェクトでスピーチしている様子を詳細に描いている。もちろん、実際の企業などがわからないように多少言葉等は変えられているが、クライアントの気持ちや話し方にあわせて言葉を決めて行く過程や、実際に話す人と、スピーチ決定の担当者との意見の違いによって、内容を変えなければ行けないその過程は興味深い。言葉が持つ華やかさよりもずっと地味で根気を求められる仕事なのだとわかるだろう。
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「働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。」戸田 智弘
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者自身大学卒業と同時に会社で働き始めて3年後に会社を辞めている。その後本当に面白いと思える仕事を探しつづけるなかで出会った人や言葉や彼自身が至った考えを紹介している。
まず印象的だったのは、好きなことを仕事にしようと考えるとき、自分の好きな事が「趣味」なのか「娯楽」なのかをはっきりさせる、ということ。「趣味」ならばそれがやがて「特技」になる可能性があるが、「娯楽」は発展性のないただの息抜き、というのである。確かにこの考え方は「好きな事を仕事にすべき」と「好きな事は仕事にしないほうがいい」という2つのよく聞く意見があり、どちらの意見もそれなりに理解できる部分がある中で、「娯楽」という考え方を取り入れる事によって考えやすくなるのではないだろうか。
また、「いい我慢」と「悪い我慢」の話も悩める人にとっては有益な考え方だと感じた。
僕自身今好きな仕事ができているので、人生を変えるような言葉に出会えた訳ではないが、今も悩んでいる人にアドバイスに使えそうな表現や、これから悩んだときに手がかりにできそうな言葉に出会う事ができた。
【楽天ブックス】「働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。」
「リーン顧客開発 「売れないリスク」を極小化する技術」シンディ・アルバレス
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本当に顧客が求めているものは何なのか知るための、顧客インタビューの方法について語る。
本書ではまずこう語る。僕らが「いい製品」だと思っているのが顧客にとって「いい製品」とは限らない。本当の「いい製品」は顧客にしかわからないのだ。インタビューに数週間費やしたとしても、エンジニア達が開発に費やす数ヶ月が本当に意味のあるものなのか判断する事が非常に重要なのである。恐らく誰もがこれを事実だと認めることだろう。しかしどのようにそれを調べればいいかがわからない、というのが多くの人が感じている事ではないだろうか。
本書ではそれを実現するためのインタビューの技術や進め方について理由や著者の経験を交えて語っている。ユーザビリティテストなどを扱った他の書籍でも説明されている内容などと重なる部分もあるが、インタビューで起こりがちな失敗や、回答から学べる事、などインタビューに対して深い洞察を示してくれる。
印象的だったのは次の質問。
2つめの質問で、制作者側の考えているターゲットと異なる場合、なぜそのギャップが生まれるのかを理解する事が重要になるという。また、顧客が別の人に説明する言葉こそ、顧客への宣伝の言葉になるのだそうだ。
役に立ちそうなインタビューの質問が多く含まれていたが、アメリカの製品開発を基に書かれていたものなので、海外の製品を例にとって説明している場面が多く、日本人の僕に取ってはやや理解しにくいと感じる部分もあった。同じように、インタビュー用のスクリプトも英語から翻訳されたもののためか、若干不自然に感じたり、日本の文化にはあわないのではないかという感じる部分もあった。
それでも、全体的には顧客インタビューの重要性とその進め方が見えてくるだろう。
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「アジャイルサムライ 達人開発者への道」Jonathan Rasmusson
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルという言葉をよく耳にするようになってすでに数年が経った。言葉としては何度もその説明を聞くことはあっても、なかなか実際の進め方がわからない。本書はそんな人がさらに深くアジャイルな開発を理解するのに役立つだろう。
アジャイル開発の手法がいくつかあるなかで、本書はエクストリーム・プログラミングに焦点をあてて書いている。正直、まだスクラムやリーンとの詳細な違いがわからないが、よく使用される言葉はスクラムでは次のように対応するということだ。
- イテレーション(スプリント)
- マスターストーリーリスト(プロダクトバックログ)
- 顧客(プロダクトオーナー)
全体を通じで感じるのは、結局臨機応変にプロジェクトを走らせることを突き詰めた結果がアジャイルという手法だということで、正確に定義された枠組みはないし、まだまだ発展の余地はあるということ。むしろアジャイル開発との比較で描かれる、アジャイルではない開発手法の無駄の多さに驚かされる。
また本書ではアジャイルなメンバーとしてゼネラリストが求められていると書いているが、デザイナーとプログラマーの垣根を維持している点が興味深い。デザイナーもプログラムを、プログラマーもデザインをできることこそゼネラリストの理想形だと思った。
後半では著者自身それぞれの項目だけで1冊の本が書けるというユニットテスト、リファクタリング、テスト駆動開発にも軽く説明している。その内容よりもそれに抵抗する人の考えや、それによって説得方法が見えてくる点の方がありがたい。
現在僕の会社ではアジャイルコーチを迎えてアジャイル開発を少しずつ取り入れているが、そこで話している内容をさらに理解するのに役立った。
【楽天ブックス】「アジャイルサムライ 達人開発者への道」
「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」沼上幹
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織というのは大きくなるに従って昨日しなくなって行く。無駄なミーティングに費やす時間が多くなり、忙殺される人がいる一方で、暇な人もいる。本書は組織が陥りがちなこととその改善方法や予防を著者の経験から説明する。
「組織戦略」という言葉からは、むしろ企業などの組織を競合とどのように渡り合って行くか、を描いたような印象を受けたが、本書で描かれているのは、むしろ組織内部が機能するための方法である。
まずは組織を単純なヒエラルキーと捕らえる事から説明する。組織とは、業務をプログラム化し、そのプログラムで対応できない状況のみを管理者・経営者が判断するという形を基本としているのだ。この状況が機能しなくなるのは、例外処理が増えすぎて管理者・経営者が忙殺されてしまうことから起こるのだそうだ。本書はこんな状況に対して5つの解決策を挙げて説明している。
中盤では、事業部制、職能性、マトリクス組織という3つの代表的な組織構造についてメリットとデメリットを説明している。
また、マズローの欲求階層説を挙げて、日本の多くの企業が「自己実現欲求」を過信していると語る。
本書の多くは僕自身が過去企業に属していて感じた事を再確認させてくれた。今後組織作りに携わる事が会ったら繰り返し読み直したいと思えるほど内容の濃さを感じた。
【楽天ブックス】「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」