「WHYから始めよ!」サイモン・シネック

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
WHYを中心としてWHAT、HOWと外に向かう図をゴールデンサークルと呼び、WHYの重要性を語る。

TEDトークで、WHYの重要性を語る、有名な著者サイモン・シネックのプレゼンテーションを見たことがあったので、そのコンセプト自体は理解しているつもりでいたが、初めて動画を見てから数年経ち、改めてその世界に触れたいと思って書籍を手に取った。

WHYの重要性をさまざまな角度から例を交えて解説している。興味深かったのはのイノベーションの普及を示した図として有名な鐘形曲線で説明している章である。図の右側にいるレイト・レイトマジョリティ(後期多数派)やラガード(出遅れ)は値段、つまりWHATしか気にしないために、この層をターゲットにすると企業として低価格競争に巻き込まれてしまうのだ。つまり図の左側の層の、イノベーター(導入者)、アーリーアダプター(初期採用者)、アーリー・マジョリティ(初期多数派)や忠誠心を抱いてもらうことこそ成功への近道で、そのためにWHATではなくWHYを広めるべきだと語る。

いくつかの企業の例を交えて説明している。サウスウェスト航空、マイクロソフト、ウォルマート、アップル、どれも興味深い話ばかりである。面白いのはWHYは重要だがWHYだけでも組織は動かないとしている点である。例えばアップルは常に企業の成功物語で名前の上がる企業であるが、著者はWHY型のスティーブ・ジョブズと、WHAT型のスティーブ・ウォズニアックの組み合わさったことが成功の大きな要因だとしている。アップルの成功の話を「Quiet」では、外向型人間と内向型人間が組み合わさったことを成功の要因として語っていたので、いろんな見方があるのだと感じた。

全体的に、本書の内容には自分の経験からも思い当たるふしが多々ある。常々多くの企業がWHYを明確にしないことでブランディングに失敗していると感じるし、株主の圧力ゆえにか、売上至上主義のなかでABテストなどでデータを重視しすぎた結果、WHYを見失ったWHAT型になっていると感じる。

例えば、Photoshopなどのクリエイティブツールを生み出したAdobeは、すでに当初の創造力を広める哲学を見失い、現在は詐欺まがいの手法で短期的な売り上げを上げることしか考えていない。iPhone以降10年以上革新的な製品を生み出していないアップルもAdobeほど惨憺とした例ではないが、WHYを失いかけている企業と言えるだろう。

昨今安定した売り上げを目指してサブスクリプション型のサービスを提供する企業が多く見られるが、WHYに共感できない企業のサブスクリプションサービスを利用しても、最終的にお金をむしり取られるだけである。著者が言うように、企業が本当に相手にすべき相手は低価格につられて簡単に動く人間ではなく、WHYを重視している人なのである。

当たり前ではあるが、動画で見ただけではわからない深みとともに著者の言いたいことが理解できた気がする。多くの企業のマーケター、ブランドデザイナーの必読の本とであろう。

【楽天ブックス】「WHYから始めよ!」
【amazon】「WHYから始めよ!」

「Quiet: The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking」Susan Cain


オススメ度 ★★★★☆ 4/5
学校や企業は過渡に外交的な人向けに作られている。本書では自身も内向的という著者が、内向的な人の生き方、内向的な人との付き合い方などについて語る。

世の中には内向的な人と外交的な人がいるのに、現在、学校や会社は外交的な人向けに合うように作れられている。しかし、アメリカの公民権運動やGoogleの創業やニュートンやアインシュタインなどを例に、世の中の多くの転機になった出来事は、内向的な人によって作られたと語り、過渡に外交的な人にあった学校や会社の作り方に警鐘を鳴らす

そんななか、アップルの創業者でもあるスティーブ・ウォズニアックの言葉が印象的である。

And artists work best alone where they can control an invention's design without a lot of other people designing it for marketing or some other committee.
芸術家は、発明の設計に集中できる環境で1人で働いてこそ最高の仕事をする。どうやって売るかばかり考えている人や会議があってはそれができないのである。

組織などで生きる人は、声の大きくて中身のない意見に知らず知らずに振り回されることをどのように避けるべきか、そろそろ真剣に考えるべきだろう。

また、ローザ・パークスの行動がマーティン・ルーサー・キング・ジュニアによって公民権運動となったことや、アップルのスティーブ・ウォズニアックがスティーブ・ジョブズと一緒になったことによってパソコンの歴史を変えたことなどを挙げ、内向的な人は外交的な人とタッグを組むことで大きな力が発揮されると主張している。

そして、地理的な傾向についても触れ、中国、韓国、日本などのアジアの国はより内向的な人を育てる文化が出来上がっているという。

本書は、学生時代など外交的な人をもてはやす文化のなかで居場所を見出せなかった多くの人に勇気を与えるだろう。僕自身も、基本的に表面的な会話が嫌いで、内容の薄い大人数の会話がほとんど楽しめず、むしろ1対1の深い会話を楽しむところなど、読めば読むほど、外交的なふりのできる内向的な人間だということに気付かされた。

また、子育てという面においても多くの人が知るべきだと感じた。特に、親は自分の考えを子供に押し付けがちである。外交的な親が、内向的な親にその生き方を知らず知らずのうちに押し付けてしまうほど不幸なことはないだろう。

子供を育てる親、会社の環境を作る経営者など、多くの人に必須の本と言える。

和訳版はこちら。

【楽天ブックス】「内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法」
【amazon】「内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法」

「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

【楽天ブックス】「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」

「僕がアップルで学んだこと」松井博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Windowsに押されて停滞していた時代と、iPhoneによって世界一の企業へと返り咲いた時代の両方を
経験した著者が、理想の職場と、仕事に対する姿勢について語る。
アップルに返り咲いたスティーブ・ジョブスが行なった改善は、一般的に言われる「割れ窓理論」というもので、細かいことまで徹底的に管理することで会社の文化を改善していくというものである。本書ではそんなジョブスの改革を現場にいた著者の視点から語っている。
また、後半では「社内政治と賢く付き合う方法」についても語っている。アメリカの企業というと、実力主義という印象を持っていたので、社内政治について書いてあるのは意外だった。
あまり秩序立った描き方がされているわけではなく、どちらかというと著者のアップル在籍時代の思い出、といった印象だが、組織を大きくするなかで活かせそうなヒントが詰まっている気がする。
【楽天ブックス】「僕がアップルで学んだこと」

「スティーブ・ジョブズ」ウォルター・アイザックソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アップルを創り、マッキントッシュ、iPod、iPhoneを生み出して世界を大きく変えたスティーブ・ジョブズを描く。

もはや本書を読まなくても、誰もが聞いたことあるほどの有名な世界を変えたエピソードである。アップルが取り入れたコンピューターのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)に始まり、その後ジョブズがアップルを離れた後のアップルの低迷。そしてアップルに戻ってからのiPodによる音楽革命やiPhoneの登場などである。

なぜこれほど多くの画期的な製品をアップルは生み出せたのか。本書はその答えを知るための大きな手がかりとなるだろう。やはりアップルのトップであるステーブ・ジョブズが自分たちの作り出すものに対して並々ならぬこだわりを持ったためだろう。誰もがシンプルなものがいいとわかっていながらも世の中には複雑な製品が溢れているのである。アップルのこだわりである

洗練を突きつめると簡潔になる

というのがどれほど難しいことか、組織でものづくりに関わったことがある人ならわかるだろう。それに加えて、ジョブズが重視したのはいつだって「利益を出す」ことではなく「世界を変えるような新しいものを生み出す」ことだったのも大きいだろう。

世の中に「利益を出す」こと以外の目的を優先して動いている会社がどれほどあるんだろうか。もちろん、会社の創設時にはそのような熱い思いを持っている会社はあることだろう。それを持続することがどれほど難しいことか、多くの社員を抱え、多くの生活が会社の存続に委ねられてきたときに、「利益を出す」ことを優先してしまうことが、多くの企業にとってどれほど避けがたいものなのか、よくわかるのではないかろうか。

そんな多くの素晴らしい製品を生み出したジョブズだが、人間的にはかなり偏った性格だったようだ。もちろんそれも話には聞いていたが、本書を読むと改めてその偏りがわかる。家族や身近な人に対する接し方はとても普通の人が耐えられるものではなく、それによってジョブズも多くの困難にぶつかったようにも感じる。

本書でそのようなジョブズの性格を深く知ると、一般的に「普通」の人間性を持った人間が革新的な製品を生み出すことはできないのだろうか、とさえ思ってしまう。
さて、ジョブズ

なきアップルは今後どうなっていくのか、その動向に今後も注目したいと思った。
【楽天ブックス】「スティーブ・ジョブズ(1)」「スティーブ・ジョブズ(2)」

「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」ケン・シーガル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズと12年に渡って一緒に働いてきたクリエイティブディレクターの著者が、アップルやジョブズのエピソードを中心に、シンプルであることの重要性を語る。
スティーブ・ジョブズはいろんな話を聞く過程で、独裁的なイメージを持っていた。しかし、本書のなかで描かれる印象は必ずしもそんなことはなく、むしろ自分の気持ちに素直で、しっかりと人の話に耳を傾けることができる人間だったということがわかる。
印象的だったのは、著者が繰り返し、シンプルであることの難しさを説いている点だろう。今やだれもがアップルの偉業を認めており、そのシンプルを貫くポリシーをまねようとするが、ことごとく失敗している。著者は言うのだ、シンプルは0か100かなのだと。中途半端なシンプルさなら必要ない。実際、本書で著者は、シンプルさを中途半端に採用しようとした多くの企業の失敗例を挙げている。
また、これまでにアップルのやってきたことについて語っているので、いくつか新しいことなども発見できた。過去の有名なCMなどは本書を読んだ後につい見返してしまった。本書ではシンプルさを、アップルを支えている哲学として説明しているが、人生のさまざまな場面にも適用できるような気がした。
【楽天ブックス】「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」

「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン 人々を惹きつける18の法則」カーマイン・ガロ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アップル製品に興味のある人や、IT業界の動向に関心のある人は誰でも一度は彼のプレゼンを見たことがあるのではないだろうか。本書は、スティーブ・ジョブズのその魅力的なプレゼンテーションを分析し、聴衆を魅了するテクニックの数々を明らかにしていく。
僕自身はプレゼンなどほとんど縁のない仕事をしているが、それでも興味を持って読むことができた。魅力的なプレゼンをするための手法として印象的で僕らが陥りがちな手法は本書でたくさん触れられているが、パワーポイントの箇条書きの部分が一番耳が痛い。同じように感じる人は多いはずだ。

パワーポイントも上手に使えばプレゼンテーションをひきたてることができる。パワーポイントを捨てろというわけではない。用意されている箇条書き「だらけ」のテンプレートを捨てろと言うのだ。

そのほかにも「3点ルール」や「敵役の導入」「数字のドレスアップ」などは面白く読ませてもらった。

普通なら市場シェア5%は少ないと思うだろうが、ジョブズは別の見方を提示した。
「アップルの市場シェアは自動車業界におけるBMWやメルセデスよりも大きい。だからといって、BMWやメルセデスが消える運命にあると思う人はいないし、シェアが小さくて不利だと思う人もいない。

読めば誰もがプレゼンをしたくなるだろう。必ずしも大勢の人の前でのプレゼンだけでなく、コミュニケーションの根本にあるあり方について考えさせられる内容である。

スティーブ・バルマー
アメリカ合衆国の実業家、マイクロソフト社最高経営責任者(2000年1月 – )。(Wikipedia「スティーブ・バルマー」)
ジャック・ウェルチ
アメリカ合衆国の実業家。1981年から2001年にかけて、ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者を務め、そこでの経営手腕から「伝説の経営者」と呼ばれた。(Wikipedia「ジャック・ウェルチ」)
YouTube「Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address」
YouTube「iPhone を発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕)」
YouTube「スティーブジョブズによるiPodプレゼン(2001)」
YouTube「MacBook Air 」
YouTube「The Lost 1984 Video: young Steve Jobs introduces the Macintosh」
YouTube「The First iMac Introduction」

【楽天ブックス】「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン 人々を惹きつける18の法則」

「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」岡嶋裕史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「クラウド」とはなんなのか。人々が漠然と受け入れているその言葉の意味とその有効性を、アップル、グーグル、マイクロソフトというIT界の巨人たちの動向をふまえて説明していく。
本書によると「クラウド」という言葉のブームは2006年に続いて2度目なのだそうだ。しかし一体、世の中のどれほどの人が「クラウド」という言葉の意味を言葉にすることができるのだろうか。実際僕も「Saas」と「クラウド」を同じものとして今まで受け止めてきた。本書ではまずはそんな言葉の意味から説明していく。
決してわかりやすいとは言いがたく、どこか教科書的になってしまう1章、2章は正直やや退屈だったが、「クラウド」「Saas」「Paas」「Iaas」という鍵となる言葉を理解するうえではおおいに役立つだろう。そして各社がどのような戦略をとっているのか、という視点にたってクラウド解説している後半は世の中に対する新しい見方を提供してくれる。
現在3社がそれぞれクラウドに向かって進んでいるが、それぞれの歩んできた道は異なる。印象的だったのが、マイクロソフトのとってきた戦略とグーグルのとってきた戦略が真逆だという考え方である。

マイクロソフトは既存のパソコンに多くの資産を持ち、クラウドを取り込もうとしているが、グーグルはクラウドに莫大な資産を抱え、次は人とクラウドの接点たるパソコンに入り込もうとしている。

そんなふうに中ほどまではマイクロソフトとグーグルの比較に多くのページが割かれるが、その後は、アップルやアマゾンの手法にも触れられる。この手の多くの著者同様、本書もアップルびいきが感じられるが、世の中の状況を見ると、今のアップルの手法を賞賛せずにはいられないのだろう。アップルの賢さ、(したたかさ?)ばかりが印象に残ってしまった。
スマートフォンや電子書籍など、今後のIT界の動向を見つめるのを少し楽しくさせてくれる一冊となるだろう。
【楽天ブックス】「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」

「アップルvs.グーグル」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
iPhoneとアンドロイドで世の騒がせるアップルとグーグル。IT業界の2大巨人の動向を説明している。
まずは、当然のように世の中のスマートフォンの話題をさらっているiPhoneとアンドロイド携帯について話から入る。世の中では出荷量や販売台数など、多くのデータによって優劣がつけられているが、では実際はどうなのか。そして、それぞれの戦略や過去の発展の経緯についても語っている。
また世の中では一般的にアップルとグーグルは敵対しているように語っているが、実際にはどうなのか、そもそもアップルとグーグルのサービスは共存し得ないものなのか、など。そして、アップルとグーグルだけでなく、明らかに後手にまわっているマイクロソフトや、日本企業は今後どうあるべきか、なども含めて語られている。
僕らが、iPodやGoogleMapなど、すでに日常の中に自然と溶け込んでいる両者のサービスを使う中で、感じ取っているアップルとグーグルのベクトル違い理解するのに大いに役立つだろう。同時に本書によって今後の動向にもさらに関心を持つことになるだろう。

グーグルによる革命は、それまで敷居が高く、一部の人にしか手に入らなかった情報も、グーグルの側でお金をかけて敷居を下げ、誰にでも仕えてしまうようにするインスタントなチープ化革命だ。
アップルのやり方を見て、ただハードやソフトの見てくれを気にしているだけで、大したことないと思っている人もいるかもしれない。だが、見てくれや操作のしやすさは、それを使ってものをつくり出す人に大きな違いを生み出す。

【楽天ブックス】「アップルvs.グーグル」