「具体と抽象」細谷功

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
具体と抽象について語る。

人間は動物に比べてずっと抽象的な概念の扱いに長けている。本書ではさまざまな事例を交えて、具体と抽象について語っている。例えば、人間同士の会話などで問題となる、物事の伝わりやすさは、想定している抽象度が語り手と受け手の間で異なることによって起きる。

最も印象的だったのは抽象と具体の世界をマジックミラーに例えた章である。

上(抽象側)の世界が見えている人には下(具体側)の世界は見えるが、具体レベルしか見えない人には、上(抽象側)は見えないということです。

基本的に具体側に近づけば近づくほど、誰でも理解できるようになっていく。逆に言えば、抽象側を広く理解できる人ほど、多くの視点を持っている賢い、時には変人と呼ばれる人間なのだろう。本書では相対性理論のアインシュタインを挙げているが、一般の人には問題の意味すら理解できない数学の問題なども、それのわかりやすい例である。

結局、多くの人が知りたいのは次の2点である。抽象寄りの人が、自分の立ち位置ほど抽象化した事象を理解できない人にどう対応すべきか抽象的思考能力を向上させるためにはどうすれば良いのか。しかし、残念ながら本書では、さまざまん経験を積むこととしか書いてない。実際、その答え以外ないだろう。

書いてあることはいずれももっともで、むしろ当たり前すぎる。しかし、当たり前にもかかわらず、この具体度と抽象度のずれが多くのコミュニケーションのずれを日常で気に生みながら、人はそれに対応する手段も持たず、また改善に努めようとさえしていないのである。

読後の感想としては、こんな当たり前のことをダラダラ書き連ねて、特に具体的な行動提案ももない残念な本という感じだったのだ。ちょっと時間が経ってみると、ここまで世の中の真理をしっかり語った本もなかったと、本書の斬新さに気づき始めた。つまり評価の難しい本である。ぜひ、自ら手に取って判断していただきたい。

【楽天ブックス】「具体と抽象」
【amazon】「具体と抽象」

「マルセイユ・ルーレット」本城雅人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元サッカー選手の村野隼介(むらのしゅんすけ)はユーロポールの捜査員としてサッカー賭博の取り締まりに加わることとなる。

タイトルのマルセイユ・ルーレットとはフランスサッカーの英雄ジダンが好んで使っていた技であり、サッカーを好きなら人ならだれでも一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。著者は「スカウト・デイズ」でプロ野球のスカウトの物語を描いていたので、今回も同じように普通にスポーツを楽しんでいる上では見ることのできない視点からサッカーを描いていることを期待して手に取った。

物語はフランスを中心としたサッカー賭博を題材としており、異国の地でサッカーに関わる3人の日本人の視点で描く。サッカー賭博を捜査するユーロポールの村野隼介(むらのしゅんすけ)、父親が遺したフランスで子供向けのサッカー教室の運営に奮闘する平井美帆(ひらいみほ)、そして、フランスでプロのサッカー選手として生きる水野弘臣(みずのひろおみ)である。

もっとも印象的なのは水野弘臣(みずのひろおみ)である。大きな夢を追ってフランスの地にやってきたにもかかわらず、少しずつサッカー賭博の罠に嵌まり込んでいくのである。きっかけは試合後の仲間と気晴らしで、カジノに行ったことだった。そして、気がついたときには大きなサッカー賭博の組織のために八百長をせざるを得ない状況に陥っているのである。

一般の人ば持つ、八百長に関わるサッカー選手に対するイメージは、お酒や麻薬に溺れる人のような自制心のない人間だろう。しかし、実際にはサッカー賭博の組織は、普通のサッカー選手でさえも陥るように巧妙に罠を張り巡らしているのである。改めてサッカー選手に限らず、多くの注目を集めるプロ選手は、私生活さえも質素に送るべきだと感じた。

サッカー賭博が世の中に多く存在するのはサッカーファンとしては残念なことであるが、大きなお金の動くところには、そこで儲けようとする人々が集まってくるのは当然の流れで、それは現実として受け入れなければならないだろう。本書はサッカーにそんな新たな視点をもたらせてくれた。

著者の作品には他にもスポーツを題材にしたものがいくつかあるようなので、他の作品も読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「マルセイユ・ルーレット」
【amazon】「マルセイユ・ルーレット」

「サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話 」山口芳生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
安さと品質で大衆の心を掴んで発展を続けるサイゼリヤの根本にある考え方を語る。

本書を読んでみると、サイゼリアの企業の本質が世の中の幸せであることが伝わってくる。昨今世の中に溢れかえっている利益や株主のご機嫌取りしか考えてない企業の方々にぜひ見習ってほしい。

そんななかもっとも印象的だったのは、サイゼリヤの味に関する考え方である。

たまに来てもらうのであれば、インパクトのある味にしたほうがいいのは当然だ。何かの機会にふと思い出して「あれが食べたい」とたまらなくなる….
 だが、サイゼリヤはおいしさを「毎日食べても味わいがあり、いつまでも食べ続けたくなる味」ととらえた。

これは食べ物に関する事業だけでなくあらゆる面について言えることなのではないだろうか。最近はオンラインでのサービスが増え、クリック率やCV率が簡単に数値化できるようになったからこそ、その副作用としてインパクトばかりを求め過ぎている気がするからこそ、なおさらそう感じた。

後半は、サイゼリアの初期の奮闘の様子なども描かれており、大いに刺激を与えてくれる内容だった。なんといっても、味で世の中を幸せにするだけでなく、その過程で、日本の地方や海外にまで多くの雇用を生み出していることに大きく感銘を受けた。引き続き、世の中を良くするための取り組みを続けてほしいと思った。

【楽天ブックス】「サイゼリヤ革命」
【amazon】「サイゼリヤ革命」

「ドーナツ経済学が世界を救う」ケイト・ラワース

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
これまでの経済学とは考え方の異なるドーナツ経済学の概要と、その基準に従って世の中を良くする方法を提案する。

序盤では経済学の歴史と、これまでの経済学が主にGDPの向上を目指していたため、必ずしも人々の幸せや環境の維持といった、現代の人々が「良い」と感じる世界にはつながっていないことを説明する。そして、その後に本書のドーナツ経済学の基本的な考え方と、これまでの経済学との異なる次の7つの考え方を語っている。

  • 1.目標を変える
  • 2.全体を見る
  • 3.人間性を育む
  • 4.システムに精通する
  • 5.分配を設計する
  • 6.環境を創造する
  • 7.成長にこだわらない

経済学の歴史や現代社会との矛盾についての話は非常に面白い。経済学が面白そうだと思って本書に至ったのだが、過去の経済学のGDP重視の考え方を知ると、少なくとも今での経済学は趣味としてしか役に立たないだろうと感じた。

その一方で、環境的に安全社会的に公正な範囲にすべての人を入れるということを念頭においたドーナツ経済学の考え方はまさに今の世の中が目指すべきものと言えるだろう。中盤以降、ドーナツ経済学の観点から著者はさまざまな提案をするのだが、中でも特に再分配の手段として世界中で考えたり部分的に実行されている方法が興味深かった。バングラディシュのバングラペサやスイスのツァイトフォアゾルゲなどそれぞれ個別に調べてみたいと思った。

付録として社会的な土台の指標、環境的な上限の指標を書いてあるので項目だけでもしっかり頭に入れて、今後機会があれば詳しく調べてみたい。

社会的土台の12の分野
食料
健康
教育
所得と仕事
水と衛生
エネルギー
ネットワーク
住居
男女の平等
社会的な平等
政治的発言力
平和と正義
環境的な9の許容限界
気候変動
海洋酸性化
化学物質汚染
窒素及び燐酸肥料の投与
取水
土地転換
生物多様性の喪失
大気汚染
オゾン層の減少

経済学を学んだことがない人間にとっては理解するのが難しい箇所も多々あったが、全体的に興味深く読むことができた。

【楽天ブックス】「ドーナツ経済学が世界を救う」
【amazon】「ドーナツ経済学が世界を救う」

「Whistleblower: My Unlikely Journey to Silicon Valley and Speaking Out Against Injustice」Susan J. Fowler

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Uberで日常的に起こっていた女性差別を世の中に公表した著者が、その生い立ちや公表に至るまでの経緯や心のうちを語る。

Uberでの出来事が中心と思っていたが、その生い立ちや大学時代の出来事、Uberに転職するまでの社会人としての様子についても詳細に語っている。

小学校時代は学校に行かずにクリスチャンの両親の元て家庭で教育を受けていたために、なかなか他の生徒と打ち解けられずにいる様子が描かれている。そんな、どちらかというと一般的な生徒に対して遅れをとっていた著者のキャリアは、目標を持ったことで、主体的な生き方に目覚めてから一気に動き出す。そこからの著者の行動力には驚かされることばかりである。

中盤からは大学での生活に触れている。大学では自殺願望の強い同僚の存在によって、研究者としての道を諦めざるを得なくなり、スタートアップで働くことを決意するのである。最初はなかなか良い会社に恵まれず、そんな経緯も含めて最終的なUberでの大きな行動につながっていくのだとわかる。

そして後半はUberに入社してからの様子と、組織の中で少しでも会社の文化を良い方向に変えようと奮闘する様子や、退職を決意してからから内部に蔓延っていた差別を公表するまでの経緯や葛藤を描いている。これほど行動力や信念を持った人間でも、正しさと、その行動が自分や友人家族へもたらすだろう影響の大きさの間で悩みながら行動に至ったことが伝わってくる

どちらかというとスタートアップは新しい文化を体現していることが多い印象を持っていたので、Uberでここまで女性差別が行われていたと言う事実に驚かされた。また、そんななかある程度のところで妥協点を見つけて組織の中で止まる人々の行動も理解できるからこそ、著者のように頑なに理想を追い求めて戦う姿は新鮮である。女性ではないので、残念ながら著者の行動に共感できるわけではないが、その信念に従った行動には大いに刺激を受けた。

英語慣用句
forced arbitration 強制仲裁
amicas curiae brief 裁判所に対する意見書
in the hot seat 厳しい立場にいる
blow the whistle 暴露する
take them up on their offer 申し出に応じる、お言葉に甘える
smear campaign 組織的中傷
gag order 発言禁止命令、報道禁止命令
turn the other cheek 甘んじて受け入れる

「De Ninguna Parte」Julia Navarro

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
幼い頃にイスラエルの軍事作戦によって両親を目の前で殺されたAbir Nasrと、その作戦に参加していたユダヤ人のJacob Baudinの二人の人生を描く。

Abir Nasrは両親を失ったために、弟ととともに親戚夫妻JamalとFátimaのもとに引き取られ、パリという自由の国で思春期を過ごす。やがて過激なイスラム思想を持つ団体Círculoに属して、イスラム教の過激な教育を受けることとなる。

一方、ユダヤ人のJacobは自らが参加したイスラエル軍の作戦が原因で、当時少年だったAbirの両親が亡くなる。その際、AbirがJacobに向かって叫んだ「いつか復讐してやる」という言葉を忘れることができず、罪悪感を抱えたまま生きていくのである。

やがてアフガニスタンで特殊な教育を受けたAbirは、テレビ局への手紙を通じて世の中に警告を出すのである。囚われているイスラムの重要人物たちを解放しなければ民間人を殺していくと。長年Abirの夢に悩まされていたJacobはすぐにその人物がAbirであると気づき、Abirを確保するためにCIAや警察や各国の諜報機関が協力して動き出すのである。

イスラムの過激派やその近くの人々の視点で描かれる物語にこれまで触れたことがなかったので全体的に新鮮である。なかでも過激な思想を持つ父Jamalと兄Faridの元で生活する二人の女性が印象的である。母親のFátimaは複雑な思いを抱えながらもイスラム世界で良い妻の模範とされるように、ひたすら夫の言うことに従順にふるまう一方で、娘のNoraはイスラム教のしきたりのもとで生きることを拒み、やがて家を離れていく。

その他にも、Abirの初体験の相手であるMarionや、テロリストの要求を世界に発信し、その後はテロリストのターゲットとなったニュース番組で、報道を使命とするニュースキャスターHelenなど、それぞれが確固たる信念を持つ人間として描かれていて興味深い。

全体的にイスラム世界やイスラエルに対して新たな視点を与えてもらった。イスラム過激派のテロリストというと危険な思想を持った人々という印象を抱きがちがが、他の多くの場合と同様に、過激派の中にもいろんな温度感の人がいるのだと伝わってきた。

スペイン語慣用句
dar marcha atrás やりなおす、後戻りする
un campo de exterminio 強制収容所
un pirata informático ハッカー
cumplir con … …に敬意を払う
darse de bruces con … …と出会う

「THINK BIGGER「最高の発想」を生み出す方法」シーナ・アイエンガー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
発想を生み出す方法THNK BIGGERについて説明している。

序盤はニュートン、ピカソ、ヘンリー・フォードなど過去の著名な人物の発明を例にとって基盤となる考えを説明する。それは、過去の斬新な発明や考えは、すでに知られていた技術や考えを単に組み合わせただけで、ゼロから何かを生み出そうとするのではなく、最適な組み合わせを考えることこそ重要、と言う考えである。

その後THINK BIGGERを6つのステップに分けて解説していく。

1.課題を選ぶ
2.課題を分解する
3.望みを比較する
4.箱の中と外を探す
5.選択マップ
6.第三の眼テスト

昨今多くの組織でブレインストーミングの文化が取り入れられているが、その効果が疑わしいのは実際に経験したことのある人なら薄々察していることだろう。

集団力学が個人の創造性を大きく妨げることも明らかになっている。人はさまざまなかたちで周りに忖度し、アイデアを間引いたり、最初や最後に提示されたアイデアに過度に影響されたり、最も都合のいいアイデアを選んだりする傾向がある。

もっとも印象的だったのは「課題の定義」を怠らないという言葉である。

複雑な課題に関しては、正しい課題を正しいレベルで特定しなければ、混乱し、労力を無駄にし、不本意な結果に終わるのは目に見えている。…
Think Biggerでは、意味がるほどには大きいが、解決できるほどには小さい課題を特定する。

それぞれの章で説明していることは納得のいくことばかりだが、全体の手法事態は組織のサイズなどによってカスタマイズする必要があるだろう。今後デザインスプリント等組織全体でアイデアを出す機会があったら本書で紹介されている考え方を部分的にでも取り入れてみたいと思った。

【楽天ブックス】「THINK BIGGER「最高の発想」を生み出す方法」
【amazon】「THINK BIGGER「最高の発想」を生み出す方法」

「すべては「好き嫌い」から始まる」楠木建

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
良い悪いではなく好き嫌いについて語る。

基本的には僕の読書のスタイルは、フィクションで広げノンフィクションで掘り下げる、というイメージなのだが、本書はノンフィクションでありながらテーマの定まらない珍しい本である。したがって数ページ読んで、最後まで読むかどうか悩んだのだが、頑張って読んでみた。

大部分がどうでもいいことを呟いているだけではあるものの、いくつか目新しい表現や視点をもたらしてくれた。

服に凝るよりも、まずは姿勢を整えた方がよい。姿勢を整えるよりも、まずは体型を整えた方がよい。プレゼンテーションのテクニックを習得するよりも、まずは言葉を豊かにした方がよい。言葉を豊かにするよりも、まずは人に語りかけるべき内容を豊かにした方がよい。
「多様性が大切!」と言うくせに、通り一遍の労働条件しか認めない。いかにも矛盾している。

正直、テーマがはっきりしない独り言のような内容なので、人に勧められる本ではないが、こんな読書もたまには悪くないなと思った。

【楽天ブックス】「すべては「好き嫌い」から始まる」
【amazon】「すべては「好き嫌い」から始まる」

「スカウト・デイズ」本城雅人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロ野球選手からスカウトに転向した久米純哉(くめじゅんや)はスカウトの伝説的な存在である先輩の堂神(どうがみ)とチームとしてスカウトとしての生き方を学んでいく。

先日読んだ同著者の「ミッドナイト・ジャーナル」が報道についてのこれまで知らなかった視点をもたらしてくれたので、著者の他の作品も読んでみたいと思いこちらに辿り着いた。タイトルからスカウトの生き方を扱った作品だとはわかるので、映画にもなった「マネーボール」のような話を想像していたりもしたが、実際にはもっと古く泥臭い人間同士の駆け引きを描いている。

スカウトの目的はドラフトでいい選手を獲得すること、と一般の人は思いがちであるし、実際その通りである。しかし本書を読むと、その先まで考えて自分達のチームが強くなること、少しでも優勝に近づくことを考えて選択をするスカウトがいることがわかる。例えば、選手の実力よりも同じ大学の後輩との人脈を考慮して獲得したり、故障持ちとわかっている選手を情報操作でライバルチームにドラフト一位で獲得させる、などである。

本書はスカウト1年目の久米純哉(くめじゅんや)がスカウトとして成長していく様子を描くと共に、純哉(じゅんや)の上司であり、スカウト界でも有名な堂神(どうがみ)の予想もつかないスカウトの手法を描いていく。

スカウトという普通に生きていると関わることのない世界を、見事に描いた作品。他にも著者の作品を見ると面白そうなタイトルのものが並んでいるのでぜひ引き続き読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「スカウト・デイズ」
【amazon】「スカウト・デイズ」

「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」Eiko

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
開脚するストレッチの方法を物語を交えて説明している。

最近、改めて体の柔軟性が大きく怪我のリスクを減らすことに考えが至り、毎日時間をとって柔軟性を向上させるよう努めている。そんななか一昔前に騒がれた本書を読んでみようと思い至った。

本書で紹介しているストレッチ方法はわずか6つのみ。ストレッチ方法だけだと20ページも必要ないので、本の厚みを増すために、小さな物語を追加したと言う印象である。

正直、本書の評価は、その情報に価値があるか、つまりそのストレッチ方法でどれだけ効果が出るかによるべきだろう。現在のところそれほど変化はないのでなんとも言えない。読み物として面白いか、という点では良くも悪くもなくほどほどである。まさにほんの一時期トレンドになった程度の本という印象で、同程度の情報としては今であればYouTubeを見れば十分である。

【楽天ブックス】「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」
【amazon】「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」

「へたっぴさんのための背景の描き方入門」森永めぐ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パースの使い方を中心として背景の描き方を説明する。

一点透視、二点透視、三点透視とパースの基本から説明し、その後実際の絵の中でパースを活かす方法を語っている。

パースの基本は知っているつもりでいたが、消失点の位置や視線の高さなど、今までぼんやりとしか意識していなかったことをおさらいすることができた。パースを知らない人にはさらに役に立つだろう。ちなみに、本書はあくまでもパースを利用した背景のシェイプの描き方であって、色の塗り方には一切ふれていない。

【楽天ブックス】「へたっぴさんのための背景の描き方入門」
【amazon】「へたっぴさんのための背景の描き方入門」

「プロの画家になる!絵で生きていくための142条」佐々木豊

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
画家の佐々木豊氏が、画家に対して一般の人が抱きがちな142の質問に答えていく。

自分みたいな祖神者にとって、美大に行くのはどれほど絵の上達に意味があるのかは、常に関心のあるところだろう。著者は次のように質問に答えている。

Q8 美大で学べるものはなんですか?
芸大で学ぶものは何もない。食堂の安いめしと青春があるだけだ…
美大は貸アトリエと思えばいいのだ。それは今も、そんなに変わりはない。

改めて、画家という生き方は、表面的な部分を楽しんでいる自分の想像以上に深いものだと思い知った。すぐに起こせる具体的な行動としては、著者の行っている絵の土台作りを真似したいと思ったし、近所で参加できそうな画家コミュニティを見つけて、定期的に刺激を受ける環境を作りたいと思った。

【楽天ブックス】「プロの画家になる!絵で生きていくための142条」
【amazon】「プロの画家になる!絵で生きていくための142条」

「The Danish Way of Parenting」Jessica Joelle Alexander, Iben Dissing Sandahl

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界一幸福な国と言われるデンマークの子育てを、アメリカの子育てと比較しながら説明する。

デンマークの子育ての鍵となる行動をPARENTの頭文字を使って6つ紹介している。

  • Play
  • Authenticity
  • Reframing
  • Empathy
  • No Ultimatum
  • Togetherness and Hygge

アメリカでは個人主義を尊重するあまり、近年自分勝手な人間が増えているようだが、本書では共感量を高めるために「私」よりも「私たち」の利益を考えるように教えることを勧めている。

When You Substitute "We" for "I", Even "Illness" Becomes "Wellness"

本書ではデンマークの子育てと比較しながら、アメリカの親の振る舞いや子育てを嘆いている点が多いが、現在の日本の子育てはそこまで卑下するほどデンマークの子育ての考え方と変わらない印象を受けた。しかし、日本はアメリカに20年ほど遅れて追随しているので、今のまま個人を尊重しすぎることで思いやりの欠けた自己中心的な人をたくさん生み出さないかと懸念してしまった。

世の中の母親たちについたえたいと思ったのは次の言葉である。

You lose control, and yet we expect our children not to.
自分は子供にブチ切れるくせに、子供には自制心を求めている。

本書のなかで意識的に取り入れたいと思ったのはReframingとTogetherness and Hyggeである。Reframingとは、物事の悪い面ばかりにとらわれるのではなく、良い面を見つめるための考え方である。ポジティブな考え方は両親の言動からも伝わるだろうが、その考え方を言葉にして伝えることでより確実に、次の世代に受け継がれるのだと感じた。

日本語版はこちら

誤解を与える日本語タイトルなので一言添えておくが、本書は子供を誉めることを否定していない。過剰に誉めることがよくないと書いているだけである。

英語慣用句
attention deficit disorder 注意欠陥障害
at one's wit's end 途方に暮れて、困り果てて
corporal punishment 体罰
pit people one another 人々を競わせる
health boundary 健全な境界線

「絵画の教科書 アクリル画編」古山浩一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アクリル画家の著者がアクリル画の描き方を解説する。

アクリル絵の具で描く絵の上達のヒントがあるのではないかと思い本書に辿り着いた。

本書は次の6つの章に分かれている。

  • さまざまな下地を使いこなす
  • 明暗法を使いこなす
  • 画材道具を使いこなす
  • 人物を描く
  • 静物を描く
  • アクリル画表現の可能性

1章を丸々下地造りの説明をしており、著者自信下地づくりに大きな時間を割いている点が印象的だった。

明暗法についての説明でも学ぶ部分があった。光の当たり方によって明暗を使い分ける、近い場所のコントラストは強く、遠い場所のコントラストは弱い。このような説明を聞くとひどく当たり前のことのように聞こえるが、本書で立方体を明暗法で再現している手順を読むと、優れた画家は、今まで自分が意識していた以上に細かい部分まで考慮していることがわかった。

アクリル画について学ぶ本であるが、各ページに差し込まれている著者の作品や有名画家の作品もすばらしく大いに刺激になった。

【楽天ブックス】「絵画の教科書 アクリル画編」
【amazon】「絵画の教科書 アクリル画編」

「La novia gitana」Carmen Mola

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ジプシーの血を引く父と普通の家庭に育った母の元に生まれた娘Susana Macayaが、結婚式を目前に殺害された事件をElena Blancoがスペイン警察特殊分析班(BAC)のメンバーと共に解決に挑む。

物語はスペイン警察特殊分析班(BAC)のリーダーである警部とElena Blancoと、部外者でありながらも事件の捜査に関わることとなった若手警部補でありのÁngel Zárateを中心に、事件の真相に近づいていく様子を描く。

殺害されたSusanaの姉のLaraも6年前の結婚式直前に殺害されており犯罪手口が酷似していることから、容疑は父親に向けられる。父親がジプシーの血をひいておりジプシー社会と現在も深いつながりを持っている。その描写からはスペイン内における、ジプシーに対する偏見やジプシーの家に生まれた家庭の親たちの娘に対する複雑な思いが伝わってくる。

また、姉のLaraの事件で犯人とされた人物が現在も服役中であることから、無実の人物が服役していて真犯人はいまだ捕まっていないのではないかという不安が警察内に浮かび上がることから、警察の信用など対面を重んじる上司と、事件の解決を最優先に考えるElenaたちの思いの違いが面白い。

一方で、捜査と並行して警部Elenaの過去も少しずつ明らかになっていく。Elenaはマドリードの広場の近くに住み、広場を常に監視カメラで撮影し毎晩その動画を見ながら記憶にある男を探し続けるのである。次第に、それが行方不明になった息子を探すための行為であることが明らかになっていく。

また、Ángel Zárateも事件解決の中で葛藤を抱える。6年前のLaraの事件を捜査したのが、Ángel Zárateの上司だったからである。真相を解決し真犯人を見つけることが自分の恩師の経歴に傷をつけることなのではないかと考え、真相を調べることを最優先するスペイン警察特殊分析班(BAC)のメンバーたちと衝突することとなる。

事件の犯人や被害者だけでなく、捜査関係者の人生も描かれている点が面白かった。残念だったのは、最後の真犯人との対面から解決までの流れである。あまりにもありがちな展開でもう少し違った結末を描けないものかなと感じた。

日本語版はこちら

スペイン語慣用句
por lo bajo 小声で
cumplir la condena 刑に服す
cerrarse en banda 自分の意見をゆずらない
a ratos… y a ratos… …したり…したりする
echar la bronca 叱りつける
de par en par いっぱいに開けて

「色鉛筆で写真のような絵が描けるようになる本」慧人

★★★★☆ 4/5
色鉛筆を得意とするイラストレーターの著者がその制作過程を語る。

僕自身色鉛筆で絵を描くようになって2年ほど経ち、いろいろ限界を感じ始めたのでなにかヒントを期待し、本書を手に取った。

著者の興味深いところはその描く対象の選択である。著者はコーラやグラスやニンテンドーDSなど身の回りにあるものを主に描くのである。しかも立体絵、つまりただ描くだけではなく斜めから見た時に実際にそこに存在するかのようにリアルに描くことを得意としている。

本書ではそんな立体絵を描く筆者の制作過程を詳細に説明している。軽く塗り重ねる事で塗りムラを少なくできるということと、異なる硬さの色鉛筆を塗り重ねる事でより滑らかでリアルな表現が可能になることがなどがわかった。また、立体絵の制作過程の説明もあり、今までどちらかというと人物画や風景画を描くことが多かったがぜひ周囲の物を立体絵で描いてみたいと思った。単純な物を描く方が濃淡の微妙な色の濃淡を身につけるためには効果的なことだろう。

全体的にまだまだ僕自身伸びしろがあることを思い知ったし、良い刺激を与えてもらった。

【楽天ブックス】「色鉛筆で写真のような絵が描けるようになる本」
【amazon】「色鉛筆で写真のような絵が描けるようになる本」

「フランス人はボンジュールと言いません」Bebechan

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
フランス人でYouTubeでフランス語を教える著者がフランス語とフランス文化について語る。

細々とフランス語を勉強している中で、単純に文法やフランス語会話だけでなく、文化など言語学習とは少し異なる視点でフランス語に触れたいと思い本書に辿り着いた。

本書はフランス人の著者が初心者向けにフランス語やフランスの文化を説明する。すでにフランス語を数年学んでいる僕にとってもいくつか新しい発見があった。
フランス語の数字の読み方は非常に特殊だが、改めて本書でおさらいさせてもらった。

マドモアゼルというフランス語では誰でも一度は聞いたことがある単語が、今は使われなくなったというのを知らなかった。また日本語の「だよね」や英語の「don’t you?」のような使い方ができるフランス語、heinの使い方も本書を読んで初めて知った。このような単語は普通に文法書を読んでいるだけでは気づけないのでありがたい。

PACSという結婚に代わる制度や、恋人との付き合い方の考え方など日本とは異なる文化も紹介されており楽しめた。もう少し細かく調べて知りたいと思った。

著者のYouTubeでもぜひ見てみたいと思った。改めてフランス語学習のモチベーションを高めてもらった。

【楽天ブックス】「フランス人はボンジュールと言いません」
【amazon】「フランス人はボンジュールと言いません」

「限界を越えるピアノ演奏法」川上昌裕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
音楽家であり指導者でもある著者がピアノの学び方について語る。

大人の趣味としてピアノを練習している中で、ピアノに関する視点を少しでも多く取り入れられればと思い本書を手に取った。

読み始めて気づいたのだが、著者は盲目のピアニストとして有名な辻井伸行氏を指導した先生でもあるという事で、辻井伸行氏とのエピソードも含まれている。そんほかにもピアノ学習方法や、さまざまなジャンルの音楽を身につけるための考え方などを語っている。そのいくつかは他の分野の上達にも適応できそうなものである。

特に

  • インプットとアウトプットのバランス
  • クリエイティブとはゼロから作り出すことではない

の章などはデザイナー視点からも大いに共感できる。

残念ながら、タイトルにある限界を超えるピアノの演奏法らしきものは一切書いてなかった。ピアノの演奏を必ずしも知りたくて本書に辿り着いたわけではないが、いいことを語っている部分もあるだけに、商業主義のなかで内容と一致しないタイトルをつけている点が残念である。

【楽天ブックス】「限界を越えるピアノ演奏法」
【amazon】「限界を越えるピアノ演奏法」

「空の模様の描き方」クメキ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Clip Studio Paintでよる空をメインとした5つの絵の描き方を解説している。

晴天の空、夕焼けの空、星空、雨天の空など5つの絵をラフ作成から順を追って詳細に解説しているので、非常にわかりやすく、また絵を描くためのアイデアとしても刺激になった。

本書は基本的にはClip Studio Paint(以下クリスタ)による操作を解説しているが、Procreate、Photoshopさらにいえば実際のアナログ絵画にも十分応用可能である。

改めて空と雲のレイヤーを分けることは効率よく絵画作成を進める上で重要だと思ったし、筆者が多用しているメッシュ変形による空の効果はぜひ取り入れてみたいと思った。

【楽天ブックス】「空の模様の描き方」
【amazon】「空の模様の描き方」

「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」エイミー・C・エドモントン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織における心理的安全性の重要性とその実現の方法について語る。

心理的安全性という言葉を聞くようになってしばらく経つ。VUCA(Volatility, Undertainty, Ambiauity)と呼ばれる現代においてすべての立場の人間が思っていることを発言する環境をどのように作り上げるのか、が組織の生き残りの鍵となる。本書は多くの例を交えながら心理的安全性を説明する。

まず心理的安全性という言葉の定義がわかりにくいと感じているのは僕だけではないと思うが、その言葉の解釈に対するよくある誤解として次の5つに触れている

  • 心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない
  • 心理的安全性は、性格の問題ではない
  • 心理的安全性は、信頼の別名ではない
  • 心理的安全性は、目標達成基準を下げることではない

つまり、心理的安全性の実現を努力しない理由はないということである。

本書を手に取る人間にとって重要なのは、どうやって心理的安全性を実現するかであろう。本書ではその手順を土台をつくる、参加を求める、生産的に対応するの3つに分けて次のように説明している。

土台をつくる
・仕事をフレーミングする
・目的を際立たせる
参加を求める
・状況的謙虚さ
・発言を引き出す問い
・システムと仕組み
生産的に対応する
・感謝を表す
・失敗を恥ずかしいものではないとする
・明確な違反について処罰する

要所要所に差し込まれる物語も面白い。スペースシャトルのコロンビア号やチャレンジャー号の事故はそこら中で触れられているのでそれほど新鮮ではないが、映画にもなったハドソン川着陸のパイロットたちの物語や全員が協力してメルトダウンを防いだ福島第二号原子力発電所の話は本書で初めて知った。

心理的安全性はリーダーだけが実現に努めることではない。組織のすべての人間が日々努めることなのだと改めて感じだ。また、心理的安全性は会社などの組織においてのみ重要なのではなく、同じ考えは家庭にも適用できると感じた。さっそく今日から意識して行動したい。

【楽天ブックス】「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」
【amazon】「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」