「El silencio de la ciudad blanca」Eva García Sáenz de Urturi

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
20年前に起こった連続殺人事件と同じ手口の事件が発生する。Vitoria署の新しい副署長の指揮のもAyalaは相棒のEstíbalizともに事件解決に動き出す。

前回読んだ「El libro negro de las horas」が物語だけでなく舞台や、取り入れている題材も含めて面白かったので、同じ著者の代表作として本作品を読むに至った。

物語は20歳の男女を殺害しVitoriaの歴史的な建造物に放置するという手口の事件から始まる。20年前にも5歳の男女、10歳の男女、15歳の男女を連続して殺害する事件があり、その犯人としてすでにTasioという男が投獄されており仮釈放間際となっている。冤罪の可能性を考慮しながらKrakenとEstíbalizは捜査をすすめるが、その際にも25歳、30歳、35歳の男女が殺害が続くのである。

Krakenは犯人として投獄されているのはTasioに会いにいく、一方で当時事件操作に関わりTasioを犯人としたIgnasioにも話を聞きにいく。TasioとIgnasioは双子の兄弟であるため、二人の人間関係が事件に関わっていると考えられるのである。

事件の解決の一方で、新しく副署長として赴任してきたAlbaとAyalaの関係が面白い。Albaは最近子供を流産し、Ayalaは妻を交通事故で失っているという辛い過去を打ち明けたことをきっかけに二人は少しずつ距離を縮めていくのである。そんなつらい過去を抱えながらも現在の職業に向き合う二人の会話が印象的である。

¿Sabes lo que es la resiliencia?
La capacidad de algunas personas en saber sacar lo bueno de las malas experiencias.
回復力ってなんだと思う?
悪い体験から良いものを抜き出す能力のことさ

やがて、事件の被害者は30歳の男女、35歳の男女と続き、Krakenの身近な人も不安を募らせていく。

ÁlavaやVitoriaといったバスク地方の都市を中心に、歴史的建造物、お祭りが多数登場するため、スペインの文化を知りたい人におすすめできるシリーズである。引き続きシリーズを読み続けたいと思った。

スペイン語慣用句
dar la cara しっかり向き合う
de igual a igual 対等に
en ristre 準備ができている、構えている
no pegar ojos 一睡もできない
a la par 同時に
a tientas 手探りで

「El libro negro de las horas」Eva García Sáenz de Urturi

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40年前に死んだはずの母親を、ある本と引き換えに返すという電話を受けたKrakenは、母と言われる人を救うためにその本を探すこととなる。

物語は、本と真実の追求に奔走する現代のKrakenが様子と、1970年代に孤児として育てられたItacaという女の子が成長していく様子を描く。

現代の物語では、Krakenの周囲に、古本屋を営んでいた人々の周りで不審死の報告が届く。Karakenは自らの出自を確認するために、祖父と共に亡き父の遺品を確認し始める。一方で70年代のItacaは捨てられたベラクルス学校でその美術の才能を発揮し始め、教師であるAquilinaにその才能を見出されて古書の複製の世界へと入り込んでいく。

なんといっても古書の複製という世界に引き入れてくれる点が面白い。世の中には本のコレクターという人々が存在し、本に大金を払う人がいるから、価値のある本を複製しようとする人たちもいるのである。しかし、そこにはさまざまなジレンマも同時に存在する。真実を知るためにKrakenは古書についての知識も得ていく。

そんななか古本屋から通常の本屋に転向したAlistairの言葉が深い。

¿Por qué lo dejó?
Porque amo los libros, pero los amo por su contenido, por las letras, por las palabras, por las historias que cuentan, por la que hacen sentir a un lector. Esa es la ecencia de los libros.
なぜ古本屋をやめたんですか?
なぜなら僕は本が好きだから、でもその内容が好きだからです。文字や言葉や本が語る物語や、本が読者に伝える感情が好きだからです。それこそが本の本質です。

En cuanto un coleccionista me dice que tiene más de cinco mil ejemplares en su bibliotecas, le perdo el respeto. Sé que es un fraude como lector un impostor un simple acumulador, un poseedor.
コレクターが本棚に5,000冊以上の本を持っていると聞いた途端にその人への敬意を失ってしまう。その人は偽の読書家で、詐欺師か、収集家か提供者です。

やがて現代ではKrakenは自らの実の母に近づいて行き、70年代のÍtacaは古書の複製の世界にどっぷりつかりながらも、愛する人と出会って、自らの人生を見つけようと動き出すのである。古書を扱った物語なだけにそこでさまざまな美しい言葉が登場する点が印象的である。

Hogar no es donde naciste, hogar es el lugar donde tus intentos de escapar cesan.
我が家とは生まれた場所ではない、我が家とは、逃れようという思いが消えた場所である。
Ese es el poder de la historias: advertirnos.Todo está en libros. Todo está ya escrito.
それが物語の力です。すべては本の中にあります。すべてはすでに書かれています。

Krakenシリーズの中途半端な作品から読み始めてしまったようだ。物語を楽しめるだけではなくまざまなスペインの文化を知ることができるので今後もこの著者の本を読んでみたいと思った。

スペイン語慣用句
a lo sumo 多くても
de bruces 腹這いに
hacer tiempo 時間を潰す

「El árbol de la diana」Mercedes Guerrero

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
スペインで祖父母と生活していたElenaに、祖父は病床と死の直前に本当の母親がメキシコに住んでいることを伝える。Elenaは母親や兄と手紙のやり取りをしたのち二人に会いにメキシコへ向かう。

母親や兄がElenaに会うことを拒んでいたにもかかわらず、Elenaはメキシコの生まれ故郷を訪れることを決意する。しかし、母親の住所となっていた場所を訪れた際に、その場所の主であるAntonioの部下たちに監禁されてしまうのである。兄だと思っていた男は、Antonioの父親を殺害して逃走中なのだという。

AntonioはElenaが潔白であるということを知るうちに少しずつElenaに惹かれていく。一方で、すでにスペインに家族のいないElenaもAntonioに心を開いていく。そんな中、生まれ育ったメキシコに滞在したことで少しずつElenaに悪夢と共に、幼い頃の記憶が蘇っていく。

正直、裕福な権力者の元に生まれたAntonioの傲慢で嫉妬深い考え方が受け付けない。登場人物を考えるときに完璧な人間よりも共感できる人間にするというのは基本的なことだろうが、本書のAntonioはその裕福な過程環境だけではなく、その傲慢さなどの人間性も含めて全く共感できない。ElenaがAntonioに向ける言葉の数々は真理に違いないのだが、母親が共感力の乏しい小学生の子供に語っているようなやりとりに感じてしまった。

あくまでも著者の描写力の問題で、実際にメキシコの男たちの考え方がここまで共感力に乏しいとは思いたくない。

スペイン語慣用句
estar de paso ついでに立ち寄る
hacer memoria 思い出そうとする
montar el cólera 激怒する
con uñas y dientes 必死に
cielo y tierra あらゆる場所を、徹底的に
alta hora 深夜
bella durmiente 眠れる森の美女
a cal y canto 厳重に
de golpe 突然に
ponerse el mundo por montera 世間の反応を気にしない
restar importancia 軽視する
a juego con … …と合った、…と調和した

「Mala Reputación」Osiris M. Villalaz De La Cruz

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
同性愛者であることを明らかにして以来、両親や兄弟と多くの諍いや辛い思い出を抱えるLucianaは、ある日、Elenaという女性と出会い再び恋をする。

LucianaがElenaと出会い少しずつ心を開いていく様子と。Lucianaに対して多くの悪い噂があり、そのことに躊躇しながらもElenaもLucianaに近づいていく様子が描かれる。

最初は女性同士の会話が多く退屈で、人間関係も兄弟が多かったり過去の恋人が多く一気に登場してきたりと、かなり状況を理解するのに時間がかかった。しかし少しずつLucianaの過去や家族とのこと、過去の恋人のCamillaやRebeccaとの関係が明らかになっていくなかで、同性愛者に対する世間の目の厳しさと、Lucianaの強い生き方が明らかになっていく。

正直あまり期待していなかったが楽しめた。物語後半に進むに従って、家族の中でLucianaが自らの地位を取り戻していく様子は爽快だった。

スペイン語慣用句
entre la espada y la pared 窮地に陥っている
guardar las apariencias 体裁を守る