「シン・ニホン」安宅和人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
これから迎えるデータ×AI時代に日本はどのように備えるべきなのかを、経済、教育、医療などさまざまな視点から語る。

日本だけでなく、世界の様々な国の考え方や事情を知っているからこその考え方が詰まっている。

AIに対して、多くは「AIに仕事が奪われるという」と言うが、本書ではそんな「人間vsAI」という議論は意味がないと切り捨てている。実際には「AIを使わない人」と「AIを使える人」に分かれていくのだと言う、だからこそ、AI時代に対応できる知識を身につける必要があり、そのための教育の必要性を強調している。そんなAI時代に備えて次の3つのスキルの重要性を語っている。

  • ビジネス力
    課題背景を理解した上でビジネス課題を整理し、解決する力
  • データエンジニアリング力
    データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力
  • データサイエンス力
    統計数理、分析的な素養の上、情報処理、人工知能などの情報科学系の知恵を理解し、使う力

教育について語っている章では、日本と海外の大学の(特にアメリカの)システムの違いについて触れている。日本ではどんどん予算が削られ、教員の給料が頭打ちになっているために、優秀な教員が海外に奪われる自体が起きているだけでなく、卒業生からの寄付も少ないのでどんどん海外の大学に置いていかれているという。

医療や高齢化社会という問題については、老人ではなく若い人に投資する社会にすべきと語り、また尊厳死の合法化にまで触れている点が面白い。

さまざまなデータから日本が進むべき未来を提言している。圧倒的なデータ量とその知識に驚かされるだろう。僕自身AI時代に備えるとともに、子供を持つ親として、どのような教育を子供に与えるべきかを考えさせられる内容である。

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「キネマの神様」原田マハ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
幼い頃から、父の影響で映画を愛する歩(あゆみ)は、40歳を目前に転職して伝統ある映画雑誌の会社に勤めることなる。

大企業のキャリアを捨てて、老舗だが潰れかけの映画雑誌の会社で働き始めた歩(あゆみ)は、やがて、同僚とともに父を巻き込んでインターネット上に映画のレビューサイトを立ち上げる。また、それを英語版でもリリースしたことから、ローズ・バッドという謎の外国人が書き込むことから国境を超えた映画愛好家同士の書評バトルが繰り広げられていくのである。

まずは、歩(あゆみ)の父とローズ・バッドの書く映画のレビューが本書の魅力の一つである。普段映画を見ない人にはどう感じるかわからないが、どれも有名作品ばかりなので映画好きにはたまらなく、みてない作品はみたくなるだろう。歩(あゆみ)の父とローズ・バッドの映画に対する向き合い方の違いから、レビューというものの奥深さを感じさせる。

「ここがいい」と言ってしまったら、作り手の思う壺だ、ってね。日の当たる部分を注意深く避けながら、自分の論拠で映画を包囲してしまう。それが私の手法だった。

やがて、物語はお互いあったことのない歩(あゆみ)の父とローズ・バッドという海を隔てた友情へと発展していく。

物語の軽快さのなかに、適度な深みを感じさせるとともに、物事の見方に新たな視点を与えてくれる作品。原田マハという作家はそのキュレーターとしての経歴からか、絵画に造詣が深いという印象があるが、言葉や文字の一つ一つの選び方について特別な感覚を持っているのだと感じた。「本日はお日柄もよく」ではスピーチを題材にして読者を楽しませてくれたが、今回は映画のレビューで楽しませてくれた。僕自身もこうして読んだ本について言葉にしている身としては、本書のなかに登場する映画レビューから感じられる熱量を少しでも取り入れたいと思った。

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「マネジャーの最も大切な仕事」テレサ・アマビール/スティーブン・クレイマー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インナーワークライフを向上するためにマネジャーができることはなんなのか。様々な企業のチームから7ヶ月にわたって日誌を提出してもらい分析した結果を説明する。

インナーワークライフとは個人的職務体験としており、次の3つの要素で構成される。

認識・・・職場での出来事に対する状況認識
感情・・・職場での出来事に対する反応
モチベーション・・・その仕事への熱意

なぜインナーワークライフが組織において重要かと言うと、それがパフォーマンスに大きな影響を与えるからである。そしてモチベーションのために重要な要素として、見過ごしがちな進捗の法則を含む次の3つの要素を説明している。

進捗の法則
触媒ファクター
栄養ファクター

七大触媒ファクターと四大栄養源を次のように説明している。

  • 明確な目標を設定する
  • 自主性を与える
  • リソースを提供する
  • 十分な時間を与える(しかし与えすぎてはいけない)
  • 仕事をサポートする
  • 問題と成功から学ぶ
  • 自由活発な意見交換

四大栄養源

  • 尊重
  • 励まし
  • 感情的サポート
  • 友好関係

このようなマネジメント関連の本は、どうしても机上の空論のようで現実感に乏しく感じてしまうのだが、本書は実際の現場からあがってきた日誌とともに紹介している(もちろん個人が特定できないように名前や地名などは変えてある)ので説得力が感じられる。

僕自身、小さな進捗のサポートできているだろうか。良い触媒ファクター、栄養ファクターを与えられているだろうか。そんなことを考えさせられ、マネジメントにうまくいかない時などに、なんども戻ってきたいと思える内容である。

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「図解・ベイズ統計「超」入門 あいまいなデータから未来を予測する技術」涌井貞美

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ベイズ統計についてわかりやすく解説する。

昨今ベイズ統計について触れる機会があり、ベイズ統計の本を読み漁っている。本書もそんななかで出会った。

本書では、トランプや天気予報を例に、乗法定理、加法定理、ベイズの定理を説明している。大まかなベイズ統計の考え方は理解できる。ベイズ更新よって、常にデータを更新できる点が実践的であるという印象を受けた。感覚的に受け入れるのが難しいのが「理由不十分の原則」であるが、ここにかんしてはそういうものとして受け入れるしかないのだろう。

また、ベイズとかベイジアンという言葉をよく見るが、ベイズ確率論やベイズ統計論などベイズという言葉を使った学問も多岐に渡ることを知った。

今まで読んだベイズ統計の本のなかでもっともわかりやすかった。とはいえ手順を手取り足とり示してもらってようやく付いて行ける程度で、まだ、理解が漠然としているので、引き続き繰り返して理解を深めたいと思った。

【楽天ブックス】「図解・ベイズ統計「超」入門 あいまいなデータから未来を予測する技術」

「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界各国からの乗客が集まるオリエント急行で殺人が起こり、偶然乗り合わせた名探偵ポアロは真実の解明を依頼される。

アガサ・クリスティーの作品を読むのは大学生の時以来20年ぶりである。本作品はそもそも物語の展開自体がすでに知ってないと話が通じない人というぐらいまで多くの場所で引用されているのを眼にする。これは読んでおかなければ、と思いようやく今回読むに至った。

1933年に書かれた作品ということで、やはり稚拙さや心情描写の浅さを感じなくはない。小さな驚きではあるが、1930年代にすでにアメリカやイスタンブールという国を超えた行き来がここまで一般的だったことに驚かされた。海外旅行はここ20年ぐらいで一般的になってきたものという認識なのだ、それはあくまでも飛行機による旅の話で、電車や船による移動、特に大陸間ではもっとずっと前から一般的だったのだろう。

感想としては、確かに予想外といった印象で、当時としては新鮮だっただろうと感じた。他にも「アクロイド殺し」も名作とよく聞くのでどこかのタイミングで読んでみたいと思った。

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「ユダヤ人大富豪の教え」本田健

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1年間アメリカに滞在した著者はそこでユダヤ人の大富豪であるゲラー氏と出会う。その後の著者の人生に大きく影響を与えたゲラー氏の教えを描く。

さまざまな場所で本書の名前を耳にしながらも読んだことがなかったので今回手に取った。

ゲラー氏は著者に、世の中で生きる人を自由人と不自由人という2つの種類に分けて説明している。自由人になるためには、目の前にあることを好きになるべきで、好きであれば、どれだけ時間を費やしても楽しく、その楽しさは人に伝染すると語っている。

またお金の原則としてつぎの5つを語っている。

  • 1.たくさん稼ぐ
  • 2.賢く使う
  • 3.がっちり守る
  • 4.投資する
  • 5.分かち合う

好きなことに時間を費やすことの力や、投資の話に特に驚きはなかった。本書を読んで改めて思ったこととしては、僕自身人脈への意識が薄いということである。本書の「多くの人に気持ちよく助けてもらう」「人脈を使いこなす」に書かれていることは少しでも実践していきたいと思った。

偉い人には、あたかも彼がえらくないかのように接しなさい。そして、えらくない人には、あたかもその人が偉い人のように接しなさい。

もし自分でできたとしても、できるだけ多くの人を巻き込んで助けてもらうことだ。そしてその人たちに感謝して喜んでもらうことが君の成功のスピードを速めるのだよ。

人脈の大切さやお金の投資の重要性はそこら中で語られているので、本書で書かれていることは特に新鮮というわけではない。例えば「夢を叶える像」なども同じようなことを言っている。しかし、このような生きる上での大事なことは、繰り返し触れてなんども思い出し自分の人生の軌道修正をするのに必要であり、そういう意味では本書もまた有益なのだと感じた。

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「ベイズ推定入門」大関真之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ベイズ推定について初心者にもわかりやすく説明している。

仕事で使用するABテストでベイズ推定の考え方が用いられていることを知り、よく聞くベイズ推定を深く知りたいと思ってその一歩目として本書にたどりついた。

かなり簡単に書かれているとは言え、簡単に書くために必要以上に省略していると思われる部分が多く、逆にわかりにくく感じた。また、本書は別冊の「機械学習入門」の続編と位置付けられているようで、あくまでも機械学習のためのベイズ推定という内容で、一般的なベイズ推定の範囲とは少し異なるようにも感じた。

とりあえず、本書で出会った最尤推定、最尤法などの詳細な方法、事前分布から事後確率分布の更新方法などはもう少ししっかりと理解したいと感じた。

【楽天ブックス】「ベイズ推定入門」

「21 Lessons」ユヴァル・ノア・ハラリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
21のテーマについて今後の展望や考え方、問題について語る。

正直テーマによって僕自身関心が強いものと弱いものがあり、それは著者についても同じで、考え方が深いと感じられるテーマもあるが、表面をなぞっただけで新鮮さも内容なことしか書いてないこともあり、テーマによって面白いとつまらないが大きく分かれるだろう。

個人的に面白かったのは「自由」と「移民」の章である。

自由の章ではアルゴリズムの発展によって世界がどのように変わっていくかを語っている。特に医療の発展が想像を超えていたので新鮮だった。確かに医療のAIが発展するなら、簡単なスキャンで現在の不調の原因や将来に不調が起こりそうな箇所を指摘して改善に努めることができ、しかもそれが世界中の医療ネットワークに共有されたなら、世界中どこにいても格安でコンビニやスタバに行くような感覚で自分の健康チェックと食べるものやすべき運動習慣を確認できるようになることだろう。

移民については、日本は現在あまり移民を受け入れておらず、「日本ももっと移民を受け入れるべきだ」と言うのは簡単だが、政策以前に「移民を受け入れる」という行為の中にもいくつか考えるべきポイントがあることに気づかされた。

著者は次の議論ポイントを挙げている。

  • 移民の受け入れは義務なのか恩恵なのか。
  • 移民した人はどの程度までその国の文化に同化すべきなのか。
  • 移民した人がその国の正規の国民とみなされるまでどれくらいの時間の経過が必要なの
  • か。

答えのない問題を突きつけられた気がする。今度ぜひ移民の話になったらこんな疑問をぶつけてみたいと思った。

著者はユダヤ人とのことだが、ユダヤ教の選民思想やイスラエルでの体験についても語っている点が面白い。ひょっとしたら他の作品でもっと多く語っているのかもしれない。

新たな視点をもたらしてくれることは間違いないのだが、すべての章が安定して面白いわけではなく、ついていきにくいと感じる箇所もいくつかあり、全体的に疲れる読書だった。この著者の他の作品も有名なので読んでみたいとは思うが、きっと同じように疲れる本で、エネルギーがないときに読むのはちょっとつらいかもしれない。時間をおいてまた挑戦したいと思った。

【楽天ブックス】「21 Lessons」

「自転しながら公転する」山本文緒

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
茨城で実家暮らしをしながらモールのアパレルスタッフとして働く三十代の与野都(よのみやこ)の悩みながら生きていく様子を描く。

一時期は都内で最先端のアパレルショップで店長として働いていたものの、家庭の都合から実家に戻って、地元のモールで働く都(みやこ)は、家庭に縛られて結婚も独立もできない日々を送っている。

そんななか、物語は、都(みやこ)がモールの中の回転寿司で働く貫一と出会うことで動き出す。このままよくある恋愛小説家の流れになるかと思いきや、勘一の中卒という経歴や収入の少なさに結婚へ踏み切れない都(みやこ)は思い悩むのである。

恋愛だけではなく現実も考えなければならない、現実に起こりがちなリアルな恋愛模様を描いているように感じた。希望に満ちていた20代が終わり、人生の可能性が狭まっていく30代を描いている点で、共感する部分があるのではないだろうか。また、一方で全体的に自分のやりたいことや人生で重要なものを自分自身でわかっていない都(みやこ)にイライラしながら読み進める人が多いのではないかとも感じた。

一般の恋愛小説なら登場人物の感情の表面を軽くなぞって終わるところを、一歩踏み込んで、人間の嫌な感情や葛藤まで見せてくれる点が、本書を他の恋愛小説よりも際立たせている点だろう。個人的には久しぶりに恋愛小説で楽しませてもらったという印象である。

【楽天ブックス】「自転しながら公転する」

「瞬読」山中恵美子

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
本を早く読む方法を語る。

僕自身本を一般の人よりは早く読む方ではあるが、最近この時間を少しでも内容の濃いものにしたいと考え、速読に関する本や、くだらない本を選ばないようにするなど試みている。そんななか本書に出会った。

悲しいことに、前半部分は本を読むことの大切さと、この本によってどれだけ本が早く読めるようなことを長々と書いており、なかなかその「瞬読」のないように入らない。よくある本の厚みを増やすためのページという印象であり、前半はまさに「瞬読」技術のない人でも「瞬読」すべきパートなのだろう。

本書のエッセンスは第2章の、わずか30ページほどに含まれていることが全てで次の3つに集約される。

  • 読むのではなく見る
  • 見たものをイメージに変換する
  • 手書きでアウトプットをする

本書の表紙に書いているように、「1冊3分で読めて99%忘れない」というのはかなり誇張な気がするが、記憶に止めるためには読むだけではなくアウトプットをすべきとい点や、一字一句すべてを読まなくても、(音読などしなくても)知っていることなら、何を言いたいかがわかる、という点もまさにその通りと感じた。

一般の人と比べて読む速度が遅いと感じている人にはヒントになるのかもしれない。僕自身もこのようなデジタルのアウトプットだけでなく手書きのアウトプットも考えるべきなのかもしれない。

【楽天ブックス】「瞬読」

「最高のランニングのための科学 ケガしない走り方、歩き方」マーク・ククゼラ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生におけるランニングの重要性を説く著者が、長くランニングを続けるために必要なことを語る。

最近、改めて走るという行為を再確認しており、ランニング関連の書籍を読み漁るなか本書に出会った。

本書はマラソンのための本ではなく、ランニングのための本である。したがって、マラソンに役にたつことはあるが、マラソンのトレーニングに焦点を書いている本ではない。むしろ、人生において運動をすることの重要性を説いておりそのもっとも簡単な運動として、歩くこと、走ることを勧めているだけである。

なにより、昨今座ったまま仕事をすることが多くなったせいで、人間は体を動かすことが少なくなり、人間はかつてないほど老いていると主張する。言い換えるなら、平均寿命は伸びていても平均活動寿命は短くなっているのだというのである。そして、そんな平均活動時妙を伸ばすためにランニングを進めているのである。

長くランニングを続けるために、怪我の予防や回復など、さまざまな面で語っているが、なかでももっとも印象的だったのは食事についてだろう。砂糖が健康に良くない話はよく聞くはなしであるが、本書では炭水化物(精製炭水化物と呼んでいる)も糖尿病への発生につながるとして、炭水化物耐性、インスリン感受性の高い体づくりを推奨している。

本書を呼んで、長く健康な人生を楽しむためには食事を見直していかないとならないと感じた。若い時に大丈夫だったとはいえ、年齢を重ねるごとに大丈夫ではなくなっていくのである。

また、足本来の機能を活かして走ることを推奨しており、ベアフットラニンニングやミニマリストシューズに触れている。このあたりは「Born to Run」にも書かれていたことで、少しずつ考えてみたいと思った。

ランニングを中心として、運動や食事について新たな視点をもたらしてくれる一冊である

【楽天ブックス】「最高のランニングのための科学」

「1兆ドルコーチ」エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズやラリーペイジなど、AppleやGoogleの創業者や幹部にコーチングをすることで大きな影響を与えたビル・キャンベルのコーチングについて語る。

GoogleやFacebook、アップルなどシリコンバレーの成功物語を読んだことがある人ならビル・キャンベルという名前を耳にしたことがあるのではないだろうか。しかし、名前は聞いたことがあるが何をやっている人かどうかはわからない、というのが正直なところだろう。

そもそもAppleやGoogleの創業者や幹部たちといえば一般的には天才と呼ばれる人達。そのような人たちにコーチングが必要なのだろうか。そしてどのような人間ならばそこまで多くの人から感謝されるコーチとなれるのか。

本書でビルの周囲の人の言葉から、その率直な物言いと情熱的な振る舞いが見えてくる。また、ビル自身自分がコーチングする人の選別をしっかり行っていたことや、自分自身のなかに人生の達成したいものの尺度があったことが見えてくる。

ビル、肩書きがあれば誰でもマネジャーになれるけど、リーダーをつくるのは部下よ

利口ぶるやつはコーチできない

ビルはコーチャブルな資質として次の4つが挙げられている

  • 正直さ
  • 謙虚さ
  • あきらめずに努力を厭わない姿勢
  • つねに学ぼうとする意欲

僕自身人の役に立ちたいという思いを持ちながらも、1人の人間が影響を与えられる人の数というのは、妻や家族など、せいぜい10人程度だと考えていた。そのsため、本書でビルが数百人という人たちに影響を与えたことを知って驚かされ、もっとできることがあるのではないかと考えるきっかけになった。

何よりも本書で感じたのは率直さの重要性である。結局、人を傷つけることを恐れて、遠回しな物言いばかり繰り返しても深い人間関係は築けないし、人の人生に影響を与えることもできないのだと改めて感じた。

いきなりすべてを真似することはできないが、少なくとも同じ会社の人々の家族構成ぐらいは覚えていこうと思った。

【楽天ブックス】「1兆ドルコーチ」

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
探偵杉村三郎(すぎむらさぶろう)が行う3つの調査とそこで出会う人々を描く。

杉村三郎(すぎむらさぶろう)シリーズの第4弾である。本書では杉村三郎(すぎむらさぶろう)が探偵として扱った3つの物語を扱っている。結婚した娘に会うことを許されない母親、キャンセルされた結婚式、子供を理由にお金をむしりとろうとする母親など、そのどれもが世の中を騒がすほど大きな事件ではなく、どんな街にも起こりそうな出来事を扱っている点が面白い。

そして、物語全体の軽い展開の中に、人間の持つ本質的な醜さや強さを描いている点が宮部みゆきらしいと言えるだろう。

残念なのは他の著者の作品ほど深みを感じないため、続編を読む頃には前作の内容を忘れているということだ。それでも、深く考えすぎないで楽しめるところがこのシリーズのいいところかもしれない。

【楽天ブックス】「昨日がなければ明日もない」

「幸福の意外な正体」ダニエル・ネトル

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幸福について研究した著者がその結果と結論を語る。

タイトルからもっと自己啓発的な本を想像していたが、思った以上に科学的なアプローチをしている。そのためやや小難しく読みにくい。

面白かったのは人間の6つの感情、恐れ、悲しみ、嫌悪、怒り驚き、喜びのうちプラスの感情は喜びの一つだけだという点である。著者の理解によると喜びの状態においては何も変える必要がないのに対して、その他の状態では現状を変えて改善する必要があるためだという。また、喜びは一瞬で飽きてしまうために幸せであり続けることが難しい、というのも興味深い指摘である。

結局のところ、幸せになるためのさまざまな要素を検証しているだけにすぎず、具体的に幸せになる方法をはっきりと語ってない点が残念である。唯一の幸せになるしさは次の言葉だろう。

あなた自身が何か、価値がある、挑戦しがいがある、大切である、と思えるものに意識を集中させていればいいのです。

間違えやすい幸せな方向についての指摘は知っているだけでも有用だが、もう少し面白く、もう少し人生に有用な形でかけたのではないだろうか、と感じてしまった。

【楽天ブックス】「幸福の意外な正体」

「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」ミニマリストしぶ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ミニマリストの著者がその生き方や考え方を語る。

僕自身も、捨てられるものはさっさと捨てたいし、広いよりも最低限の広さがあればむしろ狭い部屋に住みたい、と考えるミニマリスト思考の持ち主である。今回、何かしら人生をさらに豊かにするヒントに出会えればと思い本書にたどり着いた。

すでにミニマリストという言葉が一般的に世の中で通じるようになって数年が経ち、また断捨離も流行っていることから、その考え方はそれほど目新しいものはないだろう。すでに少しでも実践したり、実践してないまでも興味を持って調べたことのある人にとっては、本書で書いてあることも、特に驚きを与えるようなことではないだろう。例えば次のような内容である。

  • 冷蔵庫は持たない
  • テレビは持たない
  • 狭い家に引っ越す
  • 毎日同じ服を着る
  • 財布は持たない
  • 「限定物」ではなく「定番物」を買う
  • 「レンタル」「シェア」を使いこなす
  • 「出口戦略」を考えて増やす
  • 時間を生み出すツールに投資する

僕にとっても、新しい考え方に出会うというよりも、もともと持っていた考えを改めて再確認する機会となった。唯一「こんな考え方もあるのか」と思った点を上げるなら次の2つだろう。

「一日一食」で生活する

たしかに、食事に関して、僕らは三食食べるべきという考え方に固執しすぎているのかもしれない。1人のときなど二食生活や一食生活を取り入れてみたいと思った。

物が人生を豊かにする、という思考から離れられない人にとっては何かしら本書から学ぶ部分があるだろう。

【楽天ブックス】「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」

「熱源」川越宗一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第162回直木三十五賞受賞作品。樺太で生きるアイヌの人々と、その生活に魅了されたポーランド人を描く。

1800年代後半から日本やロシアなどの大国が戦争へと突き進む中、樺太で生きるアイヌの人々を描く。特に、アイヌの男性ヤヨマネクフとブロニスワフ・ピウスツキという、リトアニア生まれのロシア人を中心に物語が進む。 ヤヨマネクフは日本とロシアの領土問題で所属する国が変わる中、アイヌの文化や存在価値を認めてもらおうと苦悩する中で、ロシアや日本を行き来する。一方ブロニスワフは、リトアニアという地域に生まれ、自らの祖国をロシアという大国に取り込まれ、母国語を強制的に奪われたことで、まさに同じような境遇に向き合っているアイヌの人々に惹かれていくのである。

アイヌを題材に扱った作品だと、漫画の「ゴールデンカムイ」が最近では有名である。「ゴールデンカムイ」はどちらかというと、物語のなかの登場人物として、アイヌの優れた文化などを紹介しているが、本書はむしろ日本とロシアの領土問題に翻弄され、文明化が進む世界のなかでアイヌの文化をどのように存続させていくかの苦悩を中心に描かれている。

知識としてアイヌという民族の存在は知っていたが、北海道に住む民族という印象しかこれまで持ってなかった。もちろんロシアと日本という領土の問題と絡めてその存在を考えてみたことがなかったので、本書では初めてそのつらい歴史に目を向けさせてもらった、また、熊送りや女性が口に施す刺青など、これまで知らなかったアイヌの文化を知ることができた。

狩猟最終民族としてのアイヌの文化を維持することはつまり、文明化の流れにのらないこと、それは世界から孤立、民族の衰退である。そんな文化の維持と民族の存続という両立ならぬアイヌの葛藤が物語から感じられるのである。

しかし、その一方でこんなことも感じた。交通手段や情報の障壁が少しずつなか、人類の歴史において消えてった民族や言語、文化は数知れず、それに抵抗して自分たちの民族を残そうとすることはそこまで重要なのだろうか。もちろん今日明日、急に日本がなくなる、日本語を話すのは禁止と言われれば大きな抵抗はあるだろうが、100年200年単位で民族や文化が消滅したり他の民族と混ざり合ったりして個性が失われていくのは、人類の発展の中で避けられないことなのではないだろうか。

アイヌの歴史や苦悩だけでなく、文化や民族のありかたに目を向けさせてくれた。日本からロシアまで壮大なスケールと詳細に調べたであろう歴史を見事に融合したすばらしい物語。

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「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞作品。過去から逃れてキナコは大分の田舎町で1人で生きていくことを決める。

キナコは1人で生きていくと決意しながらも、口のきけない男の子と出会い、その恵まれない家庭環境に過去の自分を重ね合わせ、その子を救おうと行動を始める。 そして、そんな現在の様子と並行して、キナコの過去が明らかになっていく。うまくいかない家族との関係、そしてアンさんと呼ぶ人との出会いよってそんな家族のしがらみから救われたことなどがわかる。

最近、日本で評価される本の多くが、家族や恋人など狭い人間関係と小さな地域のなかで起きる出来事を描いているような印象を持っており、本作品も似たような印象を受けた。もちろん、人の幸せは、身近な人との関係による部分が大きいし、人生で起きる大きな出来事よりも、それぞれの人間が物事をどう受け止めるかが重要で、そういう物語が評価されるのもわからなくもないが、最近はちょっと似通いすぎていて新鮮さをあまり感じなかった。

【楽天ブックス】「52ヘルツのクジラたち」

「まだ「会社」にいるの? 「独立前夜」にしておきたいこと」」山口揚平

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
数々の企業再生に関わったあとに独立・起業したした著者が、会社を辞めて独立する際の心構えを語る。

文字とスペースが大きく、明らかに内容が薄い本で必死にページ数を稼いでいるという印象である。順序立てて書いているわけでもなく、思いついたことをただひたすら見出しをつけて書き綴っている。 唯一印象的だったのは、メンターと、自分がメンターする相手を持つ、メンターラインおよび技術についての師匠と弟子を持つ、マスターラインという二つの人間関係の軸を持つことを重視している点である。もちろん、分野によっては自分にあった師匠やメンターを、および弟子や後輩を持つことは難しいこともあるだろうが、そんな機会がないか探してみたいと思った。

なぜ、この本にたどり着いたかはもはや覚えていないが、自分のようにすでに複数回転職をして、楽しめる仕事を毎日している人間が読む本ではないと感じた。会社を辞めたいと思っているが辞められない人に、ひょっとしたら多少背中を押すような内容になっているのかもしれない。

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「一流のランナーは必ずやっている!最高のランニングケア」佐藤基之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなストレッチや筋トレの方法を、ランニングで痛みが発生しやすい場所に応じて書いている。

僕自身も長く膝の外側の痛みに悩まされてランニングできない期間があったので、同じことを繰り返さないようにと、体のケアに関心が高まっており、そんななか本書に出会った。

なにより故障の発生しやすい場所別にストレッチや筋トレ方法を紹介している点がありがたい。早速、膝の痛みの解決策として紹介されているストレッチを取り入れたいと思った。

また、現在は特に痛みがなくても、長くマラソンを続けるとこんな痛みが発生する可能性がある、ということを知るきっかけにもなった。膝以外に痛みが出た際には改めて本書に戻ってきたいと思った。

【楽天ブックス】「一流ランナーは必ずやっている!最高のランニングケア 悩み別予防ストレッチ&トレーニング」

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

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