「自分の中に毒を持て」岡本太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
岡本太郎が自らの生きる考え方を語る。

基本的に著者が、日本人にありがちな保守的な生き方を批判し続けていくという内容である。出版はすでに30年以上前ということで、随所に時代を感じる。また、僕らの時代から見ると彼のもっとも有名な作品である「太陽の塔」はその有名さゆえに自然に受け入れられたものであるが、当時はその斬新さから反対の声もあったのだと知った。

全体的に、多少の個性わあれども、ただの年寄りの自慢話に聞こえなくもないが、個性によって有名になり仕事をもらう立場である以上、ここまで尖る必要があったのだろう。結婚という考えについてもいろいろ語っているが、多くの結婚しなかった年配の男性が語るであろう。過去の女性との自慢話がかなり続く。ここは別に相手がフランス人だった以外は岡本太郎でなくても同じように語れそうな気もする。

今でこそ、転職が当たり前になりつつあり、個性を出すことが認められているからそれほど本書に新しさを感じないが、
刊行当時に読んだらもっと衝撃的だったのかもしれない。そういう意味では、本書の本来の目的よりも、日本の社会の時代の変化の大きさを感じさせてくれた。

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「続・インターフェースデザインの心理学」 Susan Weinschenk

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ユーザーがWebやアプリのデザインに対してどのように行動するかを、科学的に検証し、それを説明している。

科学的な検証結果を説明している一方で、作業工数などは一切考えていないので、実践的ではないという批判もあるかもしれないが、知識と知っているだけで多少役に立つこともあるのではないだろうか。

いくつか本書の中で今後のデザイン業務に活かせそうだと思った事柄をあげると次の2点である。

人は左右対称を好む


これはすべて左右対称にするべきということではなくて、非対称のデザインはむしろ人の注意をひくために効果的な場合もあるということなので、安心感を与えたいか、注目させたいかを判断して状況に応じて使い分けるべきなのである。

感情と視線の戦いでは感情が勝利する


デザインに人の画像を入れる場合、その視線をユーザーは追うからその視線の先にボタンなどを配置する、というのは多くのデザイナーが実践している手法だが、本書の実験結果では、単に視線が向いているだけでなく、表情に感情が現れている方が効果的という。今後写真素材を選ぶ際は感情も含めて考えたい。

デザイナーは美しいものをデザインするだけでなく、周囲の非デザイナーを説得する必要性も日常的に発生する。そのようなときにこのような話ができるとより説得力が上がり、信頼できるデザイナーになるかもしれない。

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「Graphic Recording 議論を可視化するグレフィックレコーディングの教科書」清水淳子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

会議のファシリテーションの手法として注目されるグラフィックレコーディングについて説明している。

昨今、「グラレコ」という表現でよく耳にするグラフィックレコーディング。正直なところ本当にそこまで注目されるほど効果があるのかどうかが疑わしく、さらに理解するためにと思って本書にたどり着いた。

序盤はグラフィックレコーディングによってどのような効果が期待できるかを説明しており、中盤以降は、実際に会議でありそうな発言や内容をグラフィックで表現する方法を説明している。

全体的な感想は、グラフィックレコーディングといっても世の中で騒がれているほど特別なものではなく、ファシリテーションの助けとなる一つの手法に過ぎないということ。発言や会議のアジェンダを共通認識させることは必ずしもグラフィックである必要もなく、文字を色分けしたり大きさを変えたりしてわかりやすく書くこともそのうちの一つである。

グラレコの練習は、普段の会話のなかでノートを使用したりして、意識次第でいくらでもできることがわかった。今後は会議などの際は積極的にホワイトボードなどを利用し、必要であれば絵など、一般的にグラレコと思われている要素を入れていきたいと思った。

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「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」越前敏弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
学習塾や予備校の講師などの経歴を持ち「ダヴィンチコード」などを訳した経歴を持つ翻訳家としても活躍する著者が、日本人が間違いがちの英語を集めてそれを解説する。

英語の勉強も英検1級を取得したあたりでひと段落した感じだが、学べば学ぶほどネイティブとの語彙力の差は感じるばかり。定期的に英語力のさらなる向上に努めているなかで本書に出会った。

結構な英語上級者でも序盤のいくつかの例文を見ただけで自信が吹き飛ぶだろう。まったく意味がとれなかったり、完全に意味を真逆にとらえてしまう例文がいくつも含まれているのである。著者の詳細な解説によって、本書を一回じっくり読むだけでも英語力は一段階レベルアップすることだろう。

章と章の間に含まれている著者の対談の様子も面白い。印象的だったのは著者が日本語訳の重要性を強調している点だろう。昨今、英語教育は文法や日本語訳から、よりコミュニケーションという方向にシフトしているが、それによって「なんとなくわかった」気になってしまうのが危険だという。自分の理解したことが本当に正しかったかは日本語訳にして確認することで初めてわかるというのである。

続編があるならえひそれも読んでみたい。この著者の英語の書籍を全部読んでみたいと感じた。

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「慈雨」柚月裕子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
警察を引退したことをきっかけに妻と四国遍路の旅に出た神馬(じんば)。しかし、時を同じくして発生し世間を騒がせた少女誘拐事件は、16年前に神馬(じんば)が関わった少女誘拐事件に酷似していた。

なによりもまず、引退した警察官を主人公にした作品というのは事件解決の物語ではかなり珍しいのではないだろうか。そして、四国遍路の旅を警察物語でありながらここまで詳細に描写している点も印象的で、著者の緻密な調査を感じる。

さて、すでに警察官を引退しながらも、発生した事件が気になって、現職で娘の恋人でもある警察官緒方(おがた)と逐一連絡をとり、捜査状況を知るという流れで物語は進む。過去の事件を悔やみながら現在の捜査状況が常に気になり、同時に引退したということで妻と一緒の時間を大事にしたいという思いと、大人になった娘とその交際関係も気になるという、年配の男の葛藤の描き方がすばらしい。

後半は、娘との複雑な関係も明らかになっていく。

派手ではなく、警察の事件解決物語という使い古された手法でありながらも、描き方に今までにない新鮮さを持たせ、非常に深みを感じさせる作品。評価が高いことも納得である。何よりもお遍路巡りの旅に興味を持った。いつか体験してみたいと思った。警察物語など読み飽きたという読者に薦めたい。一読の価値ありの一冊である。

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「朝が来る」辻村深月

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40を過ぎて一人の子供を育てる栗原清和(くりはらきよかず)、佐都子(さとこ)夫妻はときには近所づきあいでトラブルをかかえながらも幸せな生活を送っていた。そこにある日「子供を返して欲しい」と連絡が入る。

序盤は子育てと近所づきあいで悩む一般的な家庭の夫婦の物語だったが、一本の電話によって、実は子供の朝斗(あさと)は特別養子縁組によって授かった子供だと言うことが明らかになる。中盤以降は、栗原清和(くりはらきよかず)と佐都子(さとこ)が子供を切望して、朝斗(あさと)を授かるまでを描いいる。

そして、後半は、朝斗(あさと)をお腹に宿して、養子に出すと言う決断をするまでの母ひかりの様子が描かれている。子供のためを思いながらも、無力なひかりにできることは限られていて、少しずつ子供に誇りを持って向き合うことのできない大人になっていくひかりの様子がもっとも印象的である。一方で、そのような一般的には世の中から軽蔑されがちな立場にいる女性の
描写の仕方に、著者のやさしさを感じる。

あまり似た作品を思いつかない、一読の価値ありの一冊である。

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「魔性の子」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記のはじまりの物語。

「十二国記」という名前だけは聞いていたが、今まで読まずにいた。今回ひさしぶりにファンタジーの世界に浸りたくなって本書にたどりついた。

物語は卒業して教育実習生として母校に戻った広瀬(ひろせ)が、担当教師の受け持つクラスにいた高里(たかさと)という不思議なオーラをまとった生徒と出会うことから始まる。高里(たかさと)には生徒の間でも噂が尽きず、小学校の時に神隠しにあって1年間行方不明だった経験を持ち、さらに彼の周囲では不思議な怪我や死が続いているという。その高里の周囲で起きる不思議な出来事は少しずつ加速していくのである。

予想以上に現実の世界を舞台としていた。物語が進むにつれてタイトルが示す「十二国」の世界に移っていくのかもしれないが、本書ではまだまだ多くの謎が残ったままである。続編である「風の海 迷宮の岸」も近いうちに読んでみたいと思った。

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「歌舞伎町ゲノム」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「歌舞伎町セブン」「歌舞伎町ダムド」に続く歌舞伎町セブンのシリーズ第3弾。今回は短編集として5つの物語を収録している。

最初の2編は過去の物語に似た、悪者制裁の物語。そして後半3編はややイレギュラーなドタバタ劇。最後の1編は過去の歌舞伎町セブンやほかの誉田哲也の物語に絡む物語なのでシリーズのファンには欠かせないだろう。

この物語はやはり、悪者制裁のスッキリ感がいいのだろう。世の中では必ずしも悪者が報いを受けるとは限らない。だから人は、遠山の金さんとか、必殺仕事人とか、水戸黄門に惹かれるのであり、歌舞伎町シリーズもまさにそんなニーズに応えているのだ。そういう意味では、今回のように複雑な人間模様が描かれて悪者制裁が行われない物語というのはニーズとは違うのかもしれないと感じた。僕自身読んでいて、単純な前半の2編の方が楽しめた気がする。

とはいえ、著者としては単純な物語はよりも、入り組んだ人間関係やにしたり複雑な心情描写を入れ込んだりするほうが描きごたえがあるのだろう。

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「アマゾンのすごいルール」佐藤将之

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

アマゾンジャパンの立ち上げ当初にアマゾンに参加した著者がアマゾンの文化について語る。

著者がアマゾンについて思うことや、著者のアマゾン人生のなかでの印象的な出来事をほとんどランダムに書き連ねているので、読みたい場所から読むことができるといえば聞こえがいいが、物語も筋もないので記憶に残りにくい。

それでも、自分の働いている会社でも取り入れたいなと思ったものは、「1ページか6ページでまとめる」という制度。提案資料を長々と書くのではなく、誰でも簡潔に要点を把握できるようにページ数をルール化しているのである。これによって提案者は高い文章作成能力を求められるのだという。確かに過去を振り返ってみれば、仕事のなかでたくさんしゃべることはしゃべるが結局何が言いたいのかわからない、という人はたくさん存在し、積み重なればそういう人の意見を聞く時間も組織にとっては無視できない大きさであることを考えると、このアマゾンの1ページルールはぜひ真似したい制度である。

そのほかにもほかの企業にはないような制度があふれている。あまり知らなかったアマゾンという企業の文化に少し触れられた気がする。

全体的にはもう少し内容の濃いものを期待していたし、物語的な要素も欲しかった。

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「チーズはどこへ消えた?」スペンサー・ジョンソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ネズミのスニフとスカリー、小人のヘムとホーの2匹と2人は迷路のなかでチーズを探している。チーズを見つけたり失う中で、それぞれの異なる行動をする

彼らのチーズに対する行動のしかたから世の中の変化に対する心構えを教えてくれる。もっとも、教訓となるのは小人で、チーズがなくなったときに今までいた場所に固執し、新たな挑戦をしようとしなかったヘムだろう。

世の中は常に変化し、それにあわせて自分も変化していかなければならない。そんなことを2匹と2人のキャラクターの小さな物語で教えてくれる作品。誰しも多少なりともヘムの要素は持っており、はっとさせられる部分はあるかもしれない。

本書は、同窓会で集まった一人がこの話を他の同窓生に語るという内容だが、印象的だったのは、「変化恐れている人?」と聞いた時にほとんどの人はそれを認めようとしなかったことだ。自分自身も、変化を恐れたヘムのようになっていないか、常に意識して生きていきたいと思った。

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「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

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「高校事変II」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
平成最後のテロリストの次女、優莉結衣(ゆうりゆい)が生活する養護施設で同じ高校に通う高校生奈々美(ななみ)が行方不明になった。奈々美の妹の理恵(りえ)に頼まれ、奈々美の捜索に乗り出す。

いきなり第二弾から読み始めてしまったが物語時代はそれなりに楽しむことができる。おそらく第一弾を読んでいるともっと全体の流れがわかるのだろう。物語は女子高生の売春組織に関わった奈々美(ななみ)の失踪から大きな連続殺人事件へと発展していく。最新のIT事情などの技術的題材が随所に散りばめられているところが松岡圭祐らしいが、物語から何か刺激を受ける部分があるかと聞かれると少ないかもしれない。むしろ登場人物と同世代の高校生向けの内容にも思える。

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「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その喫茶店のある椅子にすわると過去に戻ることができるという、しかしそこには守らなければいけないルールがある。そのルールが多くて複雑なゆえにあまり利用する人はいないのだが、それでも利用した4人の物語を扱っている。

時間旅行をテーマにした4つの暖かい物語。一時期中吊り広告など見かけたので手に取った。

時間旅行をテーマにした物語はすでに世の中に溢れかえっているので、そのなかでどうやって独自性を出すか、というのが時間旅行を題材とした作品にとっては常に課題となるだろう。本作品は過去に戻る際に守らなければならない多くの複雑なルールによってそこに対処している。

その複雑なルール、時間旅行しても意味がないんではないかというルールによって、その喫茶店を知る多くの人が、試すことすらしないなかで、それでも過去に戻る、未来に行く、という選択をした4人の人間の物語を扱っている。正直、物語として何が新しいかというと、それだけなのだが、軽く暖かい気持ちになりたい人には悪くないのではないだろうか。

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「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人


「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」安宅和人
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

著者はあるとき、仕事における生産性の高い人に共通する行動について気づいた。それは「イシューからはじめる」ということ。本書はそんな「イシューから始める」」という考え方を順を追って説明している。

まず、本書で触れているのはイシューの見つけ方。ここで陥りやすい失敗例を語っている。それは、答えの出ない問題に取り組んでしまうということである。本書では「悩む」と「考える」という言葉の違いを、「悩む」は答えのないものに時間を費やすこと、「考える」は答えのあるものの答えを出すために時間を費やすこととして、答えの出ない問題に取り組んでしまうことの危険性を説いている。

良いイシューの条件として次のように語っている。

1.本質的な選択肢である
2.深い仮説がある
3.答えを出せる

また、イシューを特定するための情報収拾の方法も次のようにしている。

1.一次情報に触れる
2.基本情報をスキャンする
3.集めすぎない・知りすぎない

またイシューを特定するための5つのアプローチは次の5つである。。

変数を削る
視覚化する
最終形からたどる
「so what?」を繰り返す
極端な事例を考える。

後半では、分析の仕方、分析結果の伝え方についても触れているが、本書の重要な部分はイシュー特定の前半部分に凝縮されていると感じた。実際の現場での課題解決の場においても、間違った課題に取り組んでしまうとその後のフローにおける無駄な時間が膨大になることを考えると、イシュー特定がどれほど重要かわかるだろう。

全体的には、この本の評判の高さに比べると若干期待はずれだったかもしれないが、自分の毎日の仕事のやり方に対して改めて考えてみるきっかけにはなった。

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「かがみの孤城」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年本屋大賞受賞作品。いじめられて学校にいけなくなった中学生の小川こころはある日、部屋の鏡が光っていることに気づく。鏡の中には、城がありそこには同じ世代の7人の男女が集まっていた。

鏡の中に集まった7人の中学生は、1年間の期限のなかで城のなかに隠された鍵をさがすことを依頼される。その鍵を見つけると一つだけ願いが叶うという。

なぜこの7人が選ばれたのか、城はなんのために作られたのか、さまざまな疑問を持ちながらも、城での時間を楽しむ中で少しずつ7人は秘密や悩みを共有し、親密になっていく。すでに辻村作品を読み慣れている人であれば早い段階で仕掛けに気づくかもしれない。それでも最後は優しい感動を感じることだろう。

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「グロースの時代」森岡康一

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
元フェイスブックジャパン副代表の著者が日本でフェイスブックをどのように広めていったのかを語る。

転職を繰り返してフェイスブックにたどり着いた著者が、その過程での大きな出来事や転機となった出会いなどについてカタッている。

グロースに関する技術や知識を求めて本書を手に取ったのだが、精神的な部分の重要性に多くページを割いている。情熱や根性は何かをやり遂げる上では無視できないことでしっかり覚えておきたいことだが、すぐに利用できるような知識を探している人にとっては期待外れに終わるだろう。しかし、実際に大きなグロースを経験したフェイスブックジャパンの様子からは何かヒントが得られるのではないだろうか。

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「いちばんやさしいグロースハックの教本」金山裕樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ヤフーなどでグロースハックの経験を持つ著者がグロースハックについて語る。

グロースハックというのはここ3年ぐらい急速に広まった言葉で、これまでにも何度か関連する講座や本にも触れてきて一通り知っている気でいたが、それでも本書でまたいくつか新しいことを学ぶことができた。

まず、興味深かったのは「グロース担当のチームは3人で構成する」ということ。たしかに3人から4人に増えると、情報を共有するためのコストが急激に高まるので、論理的に非常に理解できる話ではある。しっかり頭に置いておきたい。

本書では基本的にARRRAモデル、つまり(Activation, Retention, Referral, Revenue, Aquisition)を中心に語っている。全体的にファシリテーションやアイデアの選別の手法などの話が多い。そんななかでも覚えておきたいと思ったのは、解決策を不明度と前提が崩れた時のインパクトで解決法を分類するジャベリンボードという手法、そして大きな離脱を視覚的にわかりやすく描いたユーザーオンボーディングファネルである。

ほかにも、バイラル係数、バイラルサイクルタイム、LTV、4種類のレベニューモデルなど、知らなかった言葉や、知っていても曖昧に覚えていた言葉などを改めて学ぶことができた。「いちばんやさしい」と書いてあり表面的な内容かとも思ったが、読んだ印象としては、必要な事項は網羅されているような印象を受けた。グロースハックを考える上で効率よく学べる本としておすすめしたい。

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「GRIT やり抜く力」 アンジェラ・ダックワース

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人間の成功は才能よりもやり抜く力「GRIT」にかかっているという。そんなGRITについて研究した著者がGRITについて語る。

最近そこらじゅうで語られているように、才能よりも努力を褒めるべきというのは本書でも同じである。1万時間の法則や、意図的な練習の仕方にも触れているが、教育に関する本をすでに多く読んでいる人にとってはあまり目新しい情報は無いかもしれない。

個人的にもっとも印象に残ったのは、著者であり2人の女の子の母である著者が自分たちの考えを紹介した「おとなも子どもも「やり抜く力」が身につく4つのルール」である。

(1)家族全員(パパもママも)、ひとつはハードなことに挑戦しなければならない。
(2)やめてもよい
ただしやめるには条件があり、シーズンが終わるまで、たとえば授業料をすでに払った期間が終わるなど、区切りのよい時期がくるまでやめてはならない。始めたことは最後までやり通すべきであり、最低もある程度の期間は、一生懸命取り組む必要がある。言い換えれば、きょう先生に怒鳴られたから、競争で負けたから、明日は朝練があって寝坊できないのがつらいから、などという理由でやめてはならない。 (3)「ハードなこと」は自分で選ぶ (4)新しいことでも、いまやっていることでも構わないが、最低でもひとつのことを2年間は続けなければならない。

とくに(2)のやめてもよい、というのはぜひ参考にしたいと思った。もちろん無理強いするのを正しいと思っていたわけではないが、いつでもやめていいというのも「GRIT」を育てられないだろうと感じていたため、本書の指標はすっと納得できると感じた。

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「お金は寝かせて増やしなさい」水瀬ケンイチ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インデックス投資家である著者が、インデックス投資の賢い方法を説明している。

基本的に必要な情報は前半部分に詰まっていて、まずは、アクティブファンドの多くがインデックスファンドに勝てないということと、過去、リーマンショックや東日本大震災などの大きな出来事があっても、結局長い目で見れば世界の株価は右肩あがりだという事実である。この2つの事実によって、結局インデックス投資がもっとも手間なくリスクが少なく資産を増やせる方法と結論づけている。

本書で進めているインデックス投資は

・毎月一定額を買い足す
・世界市場のポートフォリオに従う

ということである。

まず、積立投資(毎月一定額を買い足す)ことによって、安いときに多く買い高い時に少なく買うという流れが自然に出来上がる。また、世界市場のポートフォリオ(国内株式:先進国株式:新興国株式=1:8:1)に従うことによって、一部分の国の経済に依存しないことができる。

本書ではあわせて、自分のリスクの許容度を知るということもページを割いて説明している。なんとなく「大丈夫だろう」から一つ上の視点を身につけるためにいいかもしれない。最後の章では、切り崩しについても触れている。斬り崩しは一定額ではなく、一定の率で売っていくことにより、高い時に多く売って、安い時に少なく売るという流れが出来上がる。

投資の本は世の中にあふれているが、そんななかではかなりの良書と感じた。本書の中で繰り返し触れている本「ウォール街のランダムウォーカー」もぜひ読んでみたいと思った。

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「八日目の蝉」角田光代

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
希和子(きわこ)は不倫相手の子供で、生まれたばかりの女の子を薫(かおる)と名付けて連れ去ってしまった。東京から名古屋、そして小豆島へと希和子(きわこ)の逃亡生活を描く。

有名な作品で名前は何度も聞きながらもこれまで読む機会がなかった作品。金銭目的ではなく、不倫相手への復讐からでもなく、母性によって引き起こされた誘拐と逃亡生活という点が、本作品のもっとも魅力的な部分であり大きなテーマなのだろう。そういう意味では、男性と女性とではかなり異なる印象を受けるのではないだろうか。

本書は大きく2つの章で構成されており、第2章では大人になった薫(かおる)である恵理菜(えりな)が、その逃亡生活や、家族の元に戻った後の様子について語っている。恵理菜(えりな)自身が、世間を騒がせた誘拐事件の被害者からなのか、もともと両親に問題があったのかはわからないが、不幸な家庭環境のなかで自らの境遇を悩みながら生き方を考える様子が興味深い。

個人的には母性に突き動かされた母親視点の奮闘よりも、複雑な愛に囲まれて育った恵理菜(えりな)の様子を描いた後半の方が印象的だったが、女性の感想も聞いてみたいところである。

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