「東の海神 西の滄海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の第4弾、東の(えん)の国の物語。

長い間前王の元で圧政に苦しんだ雁の国に、新しい王として期待されながらも、政務をほったらかしの尚隆(しょうりゅう)とその周囲の人々を描く。そんななか、東の(えん)の国の麒麟である六太(ろくた)が東の(えん)の国の州である元州に誘拐される。元州の反乱を抑え込もうとするなかで、すこしずつ、六太と尚隆(しょうりゅう)が王になるまでが明らかになる。

序盤は状況が見えずに読みにくかったが中盤以降は一気に読むことができた。ファンタジーにも関わらず、日本の歴史とも関連づけられていて、事実に基づいた歴史小説を読んでいるような印象を受けた。

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「劇場化社会 誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」櫻井秀勲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
80歳を超えて、今もなお複数のオンラインサロンを運営する著者が現代において「舞台に上がる」ことの重要性を語る。

オンラインサロンの運営方法が知りたくて、オンラインサロンの運営者である著者の本書に出会った。

とりとめもなく、著者の思うところを書いているが、いいたいのは「舞台に上がる」、つまり僕の理解したところでは、会社などの後ろ盾を持たずに自分自身で表に出て勝負するということである。100年時代の現代、一つの会社で一生を終えることももはやなくなり、一つの職種だけで生きていくことも難しくなる中で、自分の技術だけでなく、どのようじ自分を売っていくかが重要だと説明している。

たしかに、自分の経験からも感じることだが、技術力だけで年収1000万円を超えるのは、一部の有名企業に所属している人を除いては非常に難しく、持っている技術だけの価値では不十分で、どのようにして人間としての価値をわかってくれる人を増やすかが鍵だと感じる。

オンラインサロンなどのを作ってみたいと感じたし、なによりも80歳を超えてなおエネルギッシュに活動し、このような現代的な考え方ができる著者におどろかされた。

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「盤上の向日葵」柚月裕子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
埼玉で発見された男性の遺体は高価な将棋の駒とともに見つかった。かつて奨励会で棋士を目指していた刑事の佐野(さの)は将棋に詳しいが故に、石破(いしば)と組んで、将棋の駒の持ち主をたどることなる。

佐野と石破の将棋の駒の行方を追っていく様子と並行して、長野の諏訪湖のほとりで暮らす将棋の愛好家唐沢(からさわ)が、近所に住む少年上条桂介(かみじょうけいすけ)に将棋を教える様子が描かれる。恵まれない家庭に育った、上条桂介(かみじょうけいすけ)が、将棋を学びながら成長していく様子が描かれる。

貴重な将棋の駒が、なぜ遺体とともに発見されたのか、そして、上条桂介(かみじょうけいすけ)がどのように事件と関わっていたのかが、物語が進むにつれ明らかになっていく。

将棋の駒の魅力や、真剣師という生き方が描かれている。誰もが知っている日本の文化である将棋というものに、もう一度目を向けてみたくなる一冊。

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「40代ご無沙汰女子の、残念な婚活」浅見悦子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代女性の著者が実際に婚活した経験を語る。

婚活が少しずつ習慣になっていき、最初は男性とデートすることすら億劫だった著者が何度となく繰り返すうちに、「とりあえずデートの練習」という姿勢で積極的に人と会おうとする様子は、今婚活に悩んでいる人々に元気を与えるのではないだろうか。やがて、婚活パーティだけでなく婚活アプリにまで活動を広げていき、それぞれのデートの様子や相手の人の振る舞いを細かく書いている。

婚活する多くの人が経験するであろう態度、つまり、「自分のことを棚に上げて相手の嫌なところばかりに目がいってしまう」は、本書でも同様で、反面教師としていろいろ学ぶ部分はあるだろう。

僕自身婚活経験があり、一般的には几帳面な男である。そんな一人の男性の視点で見ると、著者が婚活で出会う男性たちの振る舞いを知ると、こんなにも世の中の男性は時間を守らなかったり、捨て台詞と吐いたりするのか、と唖然としてしまう。確かに、お金とエネルギーをかけて婚活した結果、こんな男性ばっかりだったら婚活疲れもするだろうなと思った。

婚活しているということをオープンにしてから、様々な誘いが舞い込んできた、という著者の経験談は非常に参考になる。何かをしようと思ったら一人でもくもくとやるよりも、公言することでいろんないい波を呼び込めるのだろう。

著者の理想の結婚像なども触れており、もっと薄っぺらな婚活本を想像していたが、予想以上に深かった。最後に著者が箇条書きでまとめている「婚活をやってわかったこと」だけでもぜひ婚活に悩んでいる人たちに読んでもらいたい。

うまくいかなくても自分を責めない。相手とご縁がなかったと思うこと
いろんな男性とデートをしたり会ったりすると、本当に好みな男性のタイプが明確になる
NGばかり並べちゃダメ。相手のいいところを見つければ、NGを凌駕することもある

結婚している人も、自分には無関係と思わないでほしい。本書の考えが適用できるのは婚活だけではなく、転職や引っ越しなど自分にあった場所や人を見つけるときにすべてに言えることである。

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「盤上に散る」塩田武士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
なくなった母の持ち物を整理していた明日香(あすか)は母から林鋭生(はやしえいせい)という男に宛てられた手紙と林鋭生(はやしえいせい)に関する新聞記事を見つける。母の手紙をを届けるために林鋭生(はやしえいせい)という男を探すことにし、やがて林鋭生(はやしえいせい)は賭け将棋で生きる真剣師であることを知る。

明日香はやがて、同じく林鋭生(はやしえいせい)を探すリーゼントの男性達也(たつや)と行動を共にすることとなる。いろんな将棋関係者に話を聞きながら、林鋭生(はやしえいせい)に近づいていく。そして、達也を使って鋭生(えいせい)を探す刑事の市松(いちまつ)もまた、鋭生(えいせい)を見つけなければならない深い理由を抱えており、少しずつ真実の明らかになっていく。

真剣師という生き方や、将棋の駒も作りがすごければ芸術となることを本書を読んで初めて知った。登場人物が多くて途中やや中だるみするが、謎が溶けていく後半は一気に読ませてくれる。真剣師という、プロの世界とはまた違った世界で将棋に命をかける人々を描いた作品。将棋がやりたくなっただけでなく、将棋の駒という芸術に関心を関心を抱かせてくれた。

著者塩田武士は本作品で初めて触れたが、どうやらほかにも将棋を題材とした作品を書いているようだ。ぜひ他の作品も呼んてみたいと思った。

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「淳子のてっぺん」唯川恵

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

子供の頃山登りが好きだった少女淳子(じゅんこ)が、やがて大学生、社会人となって思うようにいかない人生に嫌気がさしていたとき、ふたたび山登りに心身ともに救われる。それからというもの登山が生きがいになり、少しずつ登る山も高くなっていく。そんな淳子の挑戦を描く。

どうやら本書の主人公である淳子は、実在する人物田部井淳子をモデルにしているらしい。唯川恵というと、どちらかというと女性向けの恋愛小説というイメージがあったが、今回はそんなイメージを覆すような、実話に基づいた女性のすばらしい生き方をを描いている。

社会人になったあとの淳子は、それまで男性ばかりだった登山という文化の中で、女性だけの登山隊の実現をしようとして、女性だけの登山隊を組んでアンナプルナやエベレストといった世界最高峰へと挑戦していくのである。今更ではあるが、そもそもエベレストのような高い山にどのように挑戦するかを本書を読むまで知らなかった。ただ一直線に頂上を目指して登るのではなく、集団で、途中となんども行き来して荷物や食料をはこびながら少しずつキャンプの位置を上げていくのである。そして、最後の頂上アタックは、そのとき体調のいい人だけが決行する。という流れをとるのである。

海外に行くだけで膨大な費用が必要だった1970年代ゆえに、現地までいきながら頂上へ挑戦できなかった女性たちの憤慨は理解できるし、女性ゆえにその感情を表に出さないわけにはいかず、その結果、集団としては頭頂という目的を達成しながらも、やるせない気持ちで帰国せざるを得ないことは、本書を読まなければわからなかっただろう。

ただ単に、山登りの良い面だけでなく、人間同士の葛藤なども読み取れるのがいいところだろう。決して、命をかけて登山をしたいとは思わないが、エベレストやアンナプルナ、アイガー、マッターホルンといった有名な山々についてもっと知りたくなった。

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「この世の春」宮部みゆき

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
宝永7年(1710年)の初夏、各務多紀(かがみたき)と父各務で暮らしている家のもとに、ある晩、御用人となった伊藤成孝(いとうなりたか)の嫡男をかかえた女が駆け込んできた。自分の家が御用人である伊藤成孝(いとうなりたか)とどのようなつながりを持っているのか。そんな疑問を持つた多紀は少しずつ藩内の権力争いの秘密に関わることになる。

北見藩というのは架空の名前で下野内にある架空の藩を舞台としている。江戸時代を描いた多くの物語は、徳川家や江戸を扱ったものばかりのため、このように地方を舞台としたものは珍しく、当時の人々の様子を知ることができる。

やがて父の死を機に、多紀は北見家の別邸である五香苑へと連れられていく。そこには自害したはずの伊藤成孝(いとうなりたか)と元藩主である北見重興(きたみしげおき)が匿われていたのである。北見重興(きたみしげおき)は藩主の座を追われたのは、複数の人格を持っていたためである。多紀たちは重興(しげおき)のその病気の謎を解明を試み、やがて北見家にまつわるおおきな影と向き合うこととなる。

江戸の時代を扱ったものではあるが、人々の悩みや葛藤、立場の違いによる考え方の違いなど宮部みゆきらしい描写力で、現代の人々のようなリアルさを感じる。歴史の物語のなかでしか触れることのないような過去の話でも、人はいつも一生懸命悩みながら生きているのだと伝わってくる。

【楽天ブックス】「この世の春(上)」「この世の春(中)」「この世の春(下)」

「蜜蜂と遠雷」恩田陸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第156回直木三十五賞、2017年本屋大賞受賞作品。

ピアノコンクールに集まったピアニストたちの様子を描いている。

マラソン大会だけを描いて1冊を終える「夜のピクニック」も驚きだったが、本作品も、数日間にわたって行われるピアノコンクールのみを扱っており、その前後の物語はほとんどない。参加者の視点、審査員の視点、参加者の妻や友達の視点に切り替わりながら、文庫本にして2冊の量を読者を飽きさせずに読ませ続ける。それぐらいピアノコンクールという多くの人にとって未知なイベントを、ドラマチックに仕上げているのである。

物語は、ピアノに情熱を注ぐ4人の人を中心に描いている。かつては天才少女として活躍したにもかかわらずピアノをやめていた栄伝亜夜(えいでんあや)20歳、サラリーマンの高島明石(たかしまあかし)28歳、優勝候補のマサル19歳、自宅にピアノを持っていないという異色の環境の風間塵(かざまじん)16歳である。

1次予選、2次予選、3次予選とコンクールは進み、少しずつ調子をあげていく人もいれば、緊張で実力を発揮できない人もいる。間違いなくシビアな世界で、多くの人が報われずに終わるとわかっていても、そんな舞台に出て戦うことを選んだ人生を羨ましくも感じてしまう。

音楽を奏でるということをやってこなかった読者にも、音楽を奏でることの魅力が十分に伝わってくる。きっと多くの人が本書を読んだ後に、その音楽を聴こうとYouTubeを彷徨うだろう。直木賞、本屋大賞のダブル受賞も納得の一冊。

【楽天ブックス】「蜜蜂と遠雷(上)」「蜜蜂と遠雷(下)」

「みかづき」森絵都

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
昭和36年、小学校の用務員室で勉強についていけない子供達に勉強を教えていた大島吾郎(おおしまごろう)の元へ、生徒の母、赤坂千明(あかさかちあき)がやってくる。学習塾を一緒に作るためであった。戦後から平成まで、千葉で始まった学習塾の物語である。

物語は、大島吾郎(おおしまごろう)が赤坂千明(あかさかちあき)立ち上げた八千代塾が、時代の波に乗って大きくなる様子。そして、大島家の
家族の様子が描かれている。教え方や、補習塾と進学塾の方針の争い、学習塾の生き残りをかけたいやがらせ工作や合併など、今まで漠然としか知らなかった塾業界の様子がよくわかるだろう。

今でこそ学習塾の存在は当たり前で、むしろ塾に行ってない人のほうが珍しい時代だが、昭和30年代40年代は、塾に行っている生徒は白い目で見られたという、それが少しずつ変化し、平成に入ると塾に通ってない生徒の方が珍しい存在となっていく。また一方で、企業としての塾と、行政としての教育委員会の関係も少しずつ変化していくのである。

本書では、教育は常にどこかが足りないと感じながらも、それを補おうと努力するぐらいがちょうどいいと言っている。

欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない

描かれている時代も長く、登場人物も多く読み応えがある。教育に関心がある人にはぜひ読んでほしい一冊である。

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「風の海 迷宮の岸」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の戴(たい)の国の麒麟として生まれながらも、天変地異に巻き込まれ、日本で普通の男の子として生活していた泰麒(たいき)が、十二国に帰還し、すこしずつ麒麟としての生活に慣れ、力を発揮していく様子を描いている。

ここまで「魔性の子」「月の影 影の海」を読んでいる中で、少しずつ見えてきた十二国の仕組みが、今回は、麒麟という種族の目線で明らかになっていく。十二国における麒麟の役割とは、それぞれの国の王を選ぶことである。泰麒(たいき)は戴の国の麒麟なので戴王を決めることがその役割である。自らの能力に疑問を持ちながらも、王を選ぶという大きな役割の前に葛藤する様子が描かれる。

少しずつ十二国のドラマが本編に入っていく感じを受けるが、まだまだ、「十二国記」全体の感想を語るには早すぎるようだ。続けて読み進めていきたい。

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「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」ウジトモコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

デザイナーの著者がいいデザインをするためのルールを説明する。

僕自身も20年以上デザイナーとして生きている人間なので、本書に書いてあることの多くが、毎日取り組んでいる考え方ばかりである。しあし、それでも改めて「この考え方は重要だ」と再認識したことや、今まで考えてもいなかったこと、無意識に実践していたことを言語化した表現に出会うことができた。

「良い」「悪い」≠「好き」「嫌い」
共感するから心が動く

デザイナー向けというよりも、いいプレゼン資料を作りたいビジネスマンや、デザイナーと関わる非デザイナーのための本であるが、デザイナーが読んでも、新たな気づきがあるだろう。

【楽天ブックス】「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」

「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

【楽天ブックス】「サードドア 精神的資産の増やし方」

「人は見た目が9割「超」実践編」竹内一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「人は見た目が9割」の著者が、「人は見た目が9割」に書けなかったことなどをまとめている。

実はあの有名な「人は見た目が9割」を読んだことがなく、ふとした機械から読んでみようと思い立って探したところ、同じ著者の本書にたどり着いた。

「人は中身の方がずっと大切でしょう?」という反論をさせるための若干挑戦的なタイトルではあるが、多くの人は見た目の重要性を知っていることだろう。美しい人に魅力を感じたり、第一印象で人を判断しているからだ。したがって、本書の内容もそのような見た目の重要性を語る内容だと予想していたのだが、実際はそこからさらにもう一歩深い内容だった。

とりとめもなく著者が考えていることを小さな章に分けて書いているので、読みやすくはないかもしれないが、印象的だったのは

「整形手術と痛々しい中年」「共働きと子供の表情」の章である。

「整形手術と痛々しい中年」では、若いころに美人だったりイケメンだったがゆえに、中年になってもそんな表面的な美しさにしがみついている人々を嘆き、むしろ生き方や表情、立ち振る舞いといった見た目を人生をかけて磨いていくべきだと説いている。

私は自分の“見た目”を30年かけて磨こうではないか、といいたいのである。

「共働きと子供の表情」では、共働きで母親も仕事に忙しくなり、子供にたくさんの表情を見せる機会が少なくなることで、少しずつ子供の表情も失われているのだと、警告している。

「子供によい表情を見せる」という心がけは、つまるところ“余裕”のなせる業である。

ぜひ、今後常に意識していきたいと思った。

【楽天ブックス】「人は見た目が9割「超」実践編」

「A/BTesting:Practical Insights and Common Pitfalls」Divakar Gupta

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ABテストの手法、ツールについて語っている。

序盤は簡単なABテストの説明をしており、中盤からはABテストで起こりがちな落とし穴、またABテストのためのツールなどを紹介している。大部分はABテストの15の落とし穴にページを割いており、いくつか興味深いものがあった。いつでも言及できるように覚えておきたい。

Running an A/B test without thinking about statistical confidence is worse than not running a test at all — it gives you false confidence that you know what works for your site when the truth is that you don’t know any better than if you hadn’t run the test

平均値のみを気にする


例えば新しいUIをリリースして、次の一週間のアクセス数が大きく伸びたとしても、日別に伸びているかを確認すべき。一日だけ極端に伸びた結果全体の数値を上げているのだとしたらそれは別の要因によるものだからだ。

「なぜ」を知ろうとしない

例えばABテストが失敗した場合、機能が良いものであるにも関わらず、デザインがよくなかったり説明が悪かったりする。単純に失敗した、だけでなく、「なぜ」失敗したかを知ることは、さらなる成功へ近づくのである。

正直、あまり順序立てた書き方をしておらず、よくあるABテストの落とし穴を思いつくまま羅列しているような内容なので退屈で頭に入りにくいが、もう一度じっくり読み直してみたいと感じた

「遊びある真剣、真剣な遊び、私の人生 改題:美学としてのグリッドシステム」ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第二次世界大戦後のグラフィックデザインをリードした著者がその生涯を語る。

グリッドシステムを学びたくてグリッドシステムの提唱者である著者の名前で検索したところ本書に出会った。デザインに情熱を注いた人の人生は、自分のデザイナーとしての考え方になにかしらプラスな部分があるだろうと考えて手に取った。

1914年に生まれた著者は、授業中にノートに描いていた落書きを褒められたことによって、少しずつデザインの世界に傾倒していく。少しずつ仕事を手にして有名になっていった著者は、1960年には日本でもデザインの教育に関わる。20年間連れ添った妻を交通事故で亡くした後、日本人の吉川静子(よしかわしずこ)と結婚する。

戦時中にすでに海外のデザイン教育はここまで進んでいたことに驚く。タイポグラフィの行間をひたすら研究する著者のこだわりに触れると、現在のデザイナーたちが簡単に行なっているグラフィックデザインが、ずいぶん表面的だけのことのように思えてくる。また、日本での教育や、妻が日本人であるこということで、グリッドシステムの著者が日本と大きなつながりを持っていることにも驚かされた。

その後著者はIBMのデザイン顧問に任命され、グリッドシステムを確立する。

グリッドシステムは完璧な秩序をもたらすシステムとして価値があるばかりでなく、与えられた仕事を計画し構成するために必要な情報や指示を、あらかじめすべて含んでいる。

終盤では軽くグリッドシステムについて触れているが、とても満足の行く内容ではなかったので、改めて「グリッドシステム」を読んでみたい。

著者のグラフィックデザインにかけた人生はデザイナーとして大きな刺激となった。

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「Google Analyticsで集客・売上をアップする方法」玉井昇

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Google Analyticsで取得できる数値からどのようにWebサイトを改善するかを説明している。

Google Analyticsを導入するとそのたくさんの数値に驚くが、結局その数値をどのようにWebサイトの改善につなげたらいいかわからない人も多いだろう。今回は僕自身が久しぶりに仕事でGoogle Analyticsの数値からアクションプランを考えることになったので、本書を手に取った。

一番わかりやすく使えそうなアクションの方法は、たどり着いた検索キーワードによって、滞在時間、直帰率を見る方法である。もし、あるキーワードから一定数のアクセスがあるにも関わらず、滞在時間が短い、または直帰率が高いというような現象が観察できたなら、そのキーワードの記事をもっと増やすべき、ということである。

ほかにも知らなかったGoogle Analyticsの機能についていくつか触れられているが、実際に動かしながらやらないと身につかないだろう。また、GoogleAnalyticsの現状のバージョンとの違いからか、すでにない機能について語られている部分もあったので注意が必要である。

もう一度分析をしながら読みすすめてみたい。

【楽天ブックス】「Google Analyticsで集客・売上をアップする方法」

「ノースライト」横山秀夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
建築家の青瀬稔(あおせみのる)は自らが設計し、高い評価を受けた吉野邸に、現在誰も住んでいないことを知る。自らが建築家としての思いを込めて設計した家の持ち主はどこへ行ったのか、青瀬(あおせ)は調査を始める。

主人公の青瀬(あおせ)がバブル期に建築家になったといことで、建築家の生き方が見えてくる。どちらかというと華やかに見える建築家という職業であるが、バブル時代の絶頂の後にやってきた不況のなかで多くの人間が離脱していき、建築家として生き残った人たちも小さな設計事務所で多くない旧雨量をもらいながら続けるしかないのだという。

そんな人生の浮き沈みを経験した青瀬(あおせ)は、自らの渾身の家を長野に建てるのだが、その家が本書の中心となる。建築家はクライアントに家を引き渡してからは不必要な干渉は避ける一方、「いい家は住んで初めてわかる」という言葉が示すように、自分の家の出来がどうだったのか、住んだ人間の感想を聞きたいと思うのだという。そういう流れ渾身の家が無人であることに気づいた青瀬(あおせ)は失踪した吉野家族を探し始めるのである。

一方で、離婚して数年経った妻ゆかりと娘日向子(ひなこ)との関係も40を過ぎた建築家の人生に深みを与えている。無人になった吉野邸で唯一の手がかりはそこに置かれていた椅子であり、ブルーノ・タウトという建築家によって作られたものと酷似しているという同僚の証言からその手がかりを追っていく。

その過程で、日本に長く滞在したブルーノ・タウトという建築家についても多く書かれており、その建築物や設計したものを見てみたいと感じた。ブルーノ・タウトの生涯については時間をとって別に調べてみたい。

そして、やがて青瀬(あおせ)は真相に迫っていく、最後は家族の感動の結末。これまでの横山秀夫作品ほど、一気に読ませる感じはないが、それでも最後はさすがといった印象。建築家、仕事と家族、いろんなテーマが詰まった一冊。

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「たゆたえども沈まず」原田マハ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の美術を世界に広めるべくパリに渡った2人の日本人、林忠正(はやしただまさ)、重吉(じゅうきち)が、同じくパリで美術を生業とする2人のオランダ人と出会う。

2人のオランダ人とは、テオとフィンセント・ファン・ゴッホである。弟のテオは当時のフランスの主流派な絵画を扱う仕事をしながらも、浮世絵や印象派などの新しい芸術の流れに惹かれていく。一方で兄のフィンセントはテオの収入に頼って安定しない生活をしながらも、少しずつ絵描きとして生きることを目指していく。

今でこそ、印象派や浮世絵は絵画の一つの流れとして認知されているが、それまでの宗教画などの世界では当時異端として扱われ、よのなかに認められるまでに時間がかかったことがわかる。また1800年代には3回の万国博覧会が開かれるなど、パリが世界の文化の中心だったことが伝わってくる。本書に登場する林忠正(はやしただまさ)は実在の人物で、日本の文化や美術の普及に努めたことがわかった。本書の物語を通じて、世界的でもっとも有名な画家の一人であるゴッホの人生に、日本人や日本の文化が大きく影響を与えたことがわかる。日本人として誇らしさを感じさせてくれる。

ゴッホの狂気の人生は絵画に詳しくなくても知っている人は多いだろう。しかし、本書のように弟のテオとの関係のなかでその人生に触れるとまた違った面が見えてくる気がする。同じように、これまで美術の一派に過ぎなかった、印象派、浮世絵というものについても新たな視点を与えてくれる。

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「月の影 影の海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女子高生の陽子の元に突然不思議な男が現れ、陽子を別の世界へと連れさった。

十二国記の始まりの物語。すでに「魔性の子」という章を読み終えて本書にたどり着いたが、物語的な繋がりはほとんどない。高校生陽子が十二国に連れて行かれ、十二国の東にある巧(こう)、雁(えん)、慶(けい)の3つの国で繰り広げられる物語を描いている。全体としては、それほど大きな動きはなく、陽子が旅する中で、少しずつ十二国の仕組みが明らかになっていく。麒麟と王の関係や陽子(ようこ)がなぜ十二国に連れてこられたか、などである。

僕自身は物書きではないが、ファンタジーをもっとも安っぽく感じさせる瞬間は、著者自身の想像力が読者よりも劣っていることが明らかになるときである。空想世界なのだからそこの生き物は、現実世界とは異なる考え方や行動をするはずなのに、著者が現実世界の常識から離れることができず、異世界の生き物に現実世界の生き物のような行動をさせてしまう。それが繰り返されると、読者は物語に入り込む前に違和感ばかりが気になってしまうのだ。

本書に関してはいまのところそこまでの違和感は感じなかった。設定を複雑にすれば複雑にするほど、(つまり現実世界と違うものにすれば違うものにするほど)その違和感は露呈しやすいだろう。例えば十二国では人間は母親からではなく木の実から生まれるのだという。それによって親子の関係はどのように現実世界と異なるかを考えると面白いが、著者が描くそれがあまりにも想像力なく現実世界のままであればきっと違和感を感じることだろう。

おそらく今後、他の十二国にも物語が広がっていくことだろう。少しずつ世界が広がる中で、違和感を感じさせずに面白さが優って世界を作り上げられるなら優れたファンタジーになるだろう。2冊を読み終えた現段階ではまだ面白いともありきたりとも判断ができないので引き続き読み進めていきたい。

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「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」 森岡毅、今西聖貴

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ユニバーサルスタジオジャパン(以下USJ)躍動のきっかけとなったハリーポッターのオープンを決定づけた戦略的確率論について、2人の著者がそれぞれの手法を語る。

著者はどちらもP&G出身ということで、他にもストーリーを重視する文化などの本や戦略に関する本などP&G出身者による本をこれまでにも何度か読んでおりP&Gが優れた企業なんだと改めて感じた。

本書では、ハリーポッターをオープンしたことによる収益の増加の考え方を、丁寧に解説している。詳細な数学な計算方法はわからなくても、予測値の出し方の概要はつかめるだろう。一つ一つの考え方自体は特に複雑なことではないが、著者2人のすごいところは、それを突き詰めに精度をあげることに努めている点だろう。数学的に知りたい人用も、巻末に詳細の数式が書かれているので楽しめるのではないだろうか。

売り上げを規定する7つの基本的要素

認知率
配下率
過去購入率
エボークトセットに入る率
1年間に購入する率
平均購入金額

はぜひ覚えておきたい。

関東に住んでいるとUSJのことをほとんど知らないが、本書を読んで初めて興味を持った。ぜひ機会があれば行ってみたいと思った。

【楽天ブックス】「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」