オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パキスタンのスワート地区で育った女性、マララ・ユフザイがタリバンの圧力や不安定な国政のもとでの人々の生活の様子を描く。
2001年の9.11直後はタリバンという言葉を何度も耳にしたが最近はあまり耳にしなくなったように思う。しかしそれは9.11から時間が経って人々の関心が薄れたから、メディアも取り上げる回数が少なくなったというだけなのだろう。本書で描かれるパキスタンの人々の生活の様子は、タリバンの脅威が国内ではその後もずっと続いていたことを教えてくれる。
タリバンは、女性が教育を受けることや肌をさらすことをイスラムの教えに背いているとして強制的にやめさせたり、そのような行いをしている人やそれに貢献している人を殺害したりするのである。著者マララは、そんななか教育の重要性を認識して学校を運営する父親と、強い信念をもった母親のもとで育つ。しかし、タリバンへの恐怖から多くの人は行動を制限され、公に逆らったひとは次々と殺されていくのである。友人や知り合いが殺され、死体が町に放置されるという、僕ら日本人から見れば異常としか思えない出来事が、著者の周囲では日常だったことが伝わってくるだろう。日本という安定した国でしっかりとした教育を受け、自由に外出できるような環境で生きられることの幸せを改めて感じられることだろう。
そして後半はタリバンによって顔に弾丸を受け、生死の境をさまよう様子が描かれている。顔に弾丸を受けてもなお、タリバンの攻撃は私の声を世界に届けることにつながった、と考えることのできるマララの姿勢が印象的である。女性の地位の向上や教育の重要性を語る一方で、十代の女の子らしい振る舞いや想いが文中に散りばめられている点も印象深い。マララのように恵まれない者は、試練を経て強い信念を育む一方、僕らのように恵まれた者はその価値を見失い、信念を持たずにただ悶々と生きているのだ。自らを律したくなる一冊。
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