オススメ度 ★★★★☆ 4/5
宇宙はいつどのように始まったのか。この永遠の謎とも思えるこの問いに、人類は長い間かけて挑んできた。その奇跡をサイモン・シンが描く。
「フェルマーの最終定理」「暗号解読」で人々の知性が過去繰り広げてきた挑戦をわかりやすく、そして面白く見事に描いてきたサイモン・シン。そんな彼が今回選んだのが宇宙の物語である。
僕らは義務教育ゆえに地球は自転しながら太陽の周りを廻っていることを知っている。夜空の星が信じられないほど遠くにあることを知っている。しかし、人類がそれを常識として認識するまでには、何千年もの時が必要で、時には間違った方向に進んだりしたのである。
コペルニクスやガリレオ、誰でも知っている有名な物語からほとんど知られていないレアな物語まで、人類が地球の大きさ、月の大きさ、太陽の大きさ、夜空に見える星までの距離。最初は永遠に明らかになるはずがないと思われていた謎が、科学の発展と、天体に心を奪われた人々の執念深い観察と突飛な発想によって少しずつ明らかになっていく過程が描かれている。真実が真実として人々の中に定着するのに必要なのは論理的な推論と、観測によって裏付けられた事実だけでなく、政治的な問題や宗教的な問題も多くを占めることがわかるだろう。そのような問題をドラマチックに描いてくれるから本書は面白いのだ。
前半はどこかで聞いたような古代の人々の物語が中心で、しっかりと理解しながら読み進められるが、後半は次第に理解を超えた話になる点が面白い。僕が初めて宇宙の物語を知ったときから「ビッグバン」というものが常識のように語られていたので、僕が生まれる数年前まで宇宙創生に関して、ビッグバン理論だけでなく、定常宇宙理論も多くの科学者によって支持されていた事実には驚かされた。
登場人物の多さで混乱してしまう部分もあるが、人類が長年かけて明らかにした宇宙の仕組みを非常に面白く描いているお勧めの一冊。