
★★★★☆ 4/5
二次元の国フラットランド、三次元の国スペースランドなど異なる次元の世界を描く。
序盤は二次元の国フラットランドの様子を描いている。立体世界ではない、つまり高さのない世界なのですべての人間が線としてしか認識できず、色の濃淡でその形を判断し、その形から相手の地位を知る。
面白いのは中盤以降である。二次元の国の住人が、一次元の国ラインランドやゼロ次元の国ポイントランドの人と会話して、自分達の世界のことを伝えようとする。また、一方で二次元の国の住人が、三次元の国スペースランドからやってきた訪問者の説明に混乱する様子を描いている。次元の多い側の人間が次元の少ない側に自分達の世界の説明に四苦八苦する様子や、次元の少ない側が理解できなくて最後には怒り出す様子から、自分達の住む世界よりも多い次元の世界を理解することの難しさを感じる。
一方で、その異次元間の交流から、僕らが四次元世界を理解するための手がかりも含まれている。本書を読んだからと言って四次元より上の世界がすぐに理解できるわけではないが、考えやすくはなるだろう。他の本にはない不思議な感情を刺激する作品である。上から下は見えるが、下から上は見えない、という先日読んだ「具体と抽象」と共通するテーマを感じた。