オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長年デザイン批評に関わってきた著者がデザイン批評を機能させるための方法を語る。
デザインレビューを導入しようとしても、自己防衛に走る人が多くなかなかうまくいかないことが多い。そんな状態の解決策があるのではないかと思い本書に辿り着いた。
本書では、レビューで起こりがちな反応を次の3つに分類しており、必要なのは批評だけだと語る。
- 反応型
- 指示型
- 批評
批評のベストプラクティスとして次の6つを挙げており、それぞれについて詳細に語る。
- 質問で始める
- フィルターを通す
- 思い込みをしない
- 押し付けない
- 長所について話す
- 視点について話す
繰り返し触れているのは、批評とは常に目的に対しての分析であるべきだということと、目的とは次の四つの要素から構成されるということである
- ペルソナ
- シナリオ
- 目標
- 原則
全体的に翻訳よくなかったのでわかりにくいが、目標は目的、原則は仮説やデザインコンセプトという言葉のほうが日本のデザイン文化にしっくりくると感じた。
その他、批評でやってはいけないことなどについても触れている。
- フィードバックを依頼したのに、聴かない
- 賞賛や承認が欲しくてフィードバックを求める
- フィードバックをまったく求めない
批評をする側のベストプラクティス
- 目的を忘れない
- 聴いて、考えてから反応する
- 基本に戻る
- 参加する
シャレットやデザインスタジオなどの発想手法についても触れていたのでしっかり覚えておきたい。
全体的に、改めて批評を文化として取り入れるためには、良いファシリテーションが重要だと感じた。ファシリターターが覚えておくべき批評の4つのルールを挙げている。
- 誰もが平等
- 誰もが批評家
- 問題解決を避ける
- 変更についての決定を急がない
なかでも特に難しいのは、「問題解決を避ける」である。人間の脳は分析的思考と創造的思考を同時には行わないために、解決策を考え始めると分析的思考ができなくなるというのである。
デザイン・レビューに時間かける人は多く、デザイン・レビューは往々にして批評と同じと考えられている。だが、デザイン・レビューは批評ではない。デザイン・レビューはしばしば、プロセスを先に進める、あるいは実際に稼働させることを目指して、何らかの承認得るために計画される。
本書ではデザイン・レビューとデザイン批評を別物と考えており、どのように定義して分けて考えているのか曖昧だった。個人的には日本語で使われているデザイン・レビューとは必ずしも承認を求めるための場ではなく、本書の考え方はデザイン・レビューでも使えると感じた。ただ、建設的に批評の場と承認の場を混在すべきでないという考えは間違いないので、この辺を解決していきたい。
どの考えもさっそく実践に取り入れていきたい。また最後の章に扱いにくい人の対処方法があるので、必要になった時に戻ってきたい。
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