「ザ・ロイヤルファミリー」早見和真

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第33回(2020年)山本周五郎賞受賞作品。栗須栄治(くりすえいじ)は馬主の秘書となり、少しずつ競走馬の世界に入っていくこととなる。

前半は栗須(くりす)が雇い主であり馬主である山王構造(さんのうこうぞう)社長と共に競馬の世界で一喜一憂していく様子を描く。そんななか、大学時代の恋人が経営する牧場で育った馬ロイヤルホープが、調教師や騎手などとともに一つのチームとして実績を積み重ねながら人気を獲得していくのである。

その様子からは競馬が決して馬や騎手だけで成り立っているわけではなく、馬主や牧場や考え抜かれた交配など、さまざまな要素を持った文化だということがわかる。

中盤以降は、山王社長の亡くなった後の物語である。三頭の馬を受け継いだ山王社長の腹違いの子供で大学生の中条耕一(なかじょうこういち)は、若さゆえの未熟さを抱えながらも、最先端の技術や斬新な視点でチームに関わっていくのである。

僕自身は競馬をやったことがないが、そんな人にも競馬の魅力が十分に伝わってくる。正直競馬に縁のない人には即効性のある有益な内容は含まれていないが、未知の世界を見せてくれる作品。

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「店長がバカすぎて」早見和真

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内の書店で働く谷原京子(たにはらきょうこ)を描く。

タイトルのとおり、谷原京子(たにはらきょうこ)は店長の突飛な鼓動に悩まされ続ける。ただ、タイトルは「店長がバカすぎて」だが、内容はさらに「営業がバカすぎて」や「小説家がバカすぎて」と続き、つまり毎日周囲の言動に悩まされる書店員を描いているのである。

もはやインターネットによる販売によって、本屋の存在意義は薄れていくばかり。そんな本屋さんの悩みや葛藤が、谷原京子(たにはらきょうこ)の毎日を通じて伝わってくるだろう。

本書が本屋大賞にノミネートされた理由は、本書が本屋さんの日常を描いており、その描き方が、本屋で働く人々の共感を勝ち取ったからなのだろう。そういう意味では、本屋の日常を比較的リアルに描けているかもしれないが、一般の人の心に刺さるかはなんとも言えないところである。

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