「移民大国アメリカ」西山隆行

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカの移民問題についてこれまでの歴史から現在の状況まで詳細に説明する。

日本も高齢者社会となり、経済を維持するためには移民の受け入れは避けられないだろう。そんななかアメリカが現在直面している移民関連の問題は、日本が近い未来に遭遇する問題と考えて知りたいと思い本書に辿り着いた。

多くの知らない事実を知ることができた。まず、移民問題といっても、不法移民、合法移民などざまざまな視点があり、多くの人が混在した視点で移民問題を語っているということ。また、二大政党の共和党、民主党の基本的な考えとして、民主党の方が移民に肯定的と捉えられ、非白人からの支持を集めているとされているが、それぞれの党の中でも移民賛成派、反対派がおり、党をまたがった議論になっているということなどである。

移民への国としての対応方針を決定する連邦政府に対して、州内住み着いて移民を社会に溶け込ませるための教育や福祉等の対応を強いられる州政府の関係も興味深い。決めるだけの連邦政府と、負担を強いられる州政府という構図になってしまうのも仕方のない話である。

中盤以降、キューバ系、メキシコ系、日本系、中国系、韓国系、ユダヤ系などの視点で、アメリカの中での影響力とロビー活動について触れている。ある国の中で特定の文化の人々が生きやすい環境を作るには、その国の中で影響力を強める必要がある。そのためにはロビー活動が欠かせないのだという。以前は強かった日本系コミュニティのロビー活動が最近は下火で、一方で韓国系や中国系が影響力を強めているのだという。

海外で同じ国の人間同士でつるむことをどこか馬鹿にした見方をすることがあり、日本人街などを敬遠する人も多いが、そこにはメリットもあるのだと再認識させられた。

改めて、アメリカの移民問題は思っている以上に複雑な問題であることがわかった。移民の国という理念があり国自体も移民によって作られた国という認識があるから、移民を受け入れるのが当然という考えも未だ根強く、そしてすでに大量の移民を受け入れてきたから、移民や不法移民の労働力に依存した社会構造ができあがっているから複雑な問題となっているのである。

引き続き、アメリカだけではなく世界の移民問題を知りたいと思った。次はフランスやドイツ、イギリスの移民問題などヨーロッパの国の実情について知りたい。

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