オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
山梨の山林に住むカラスの胃から大量の人骨が発見された。同時期に姿を消した友人の真弓(まゆみ)を探し始めた享子(きょうこ)の周囲で不吉なことが重なって起きるようになる。
開始わずか数ページで、赤子の遺体を破砕機にかける、という、久しく味わっていなかったと思えるような怖いシーンから始まり、ひょっとしたら「リング」のようなホラーかも、と思わせてくれるが、その後は、失踪した友人を探す、享子(きょうこ)を中心とする物語に落ち着く。
失踪した真弓(まゆみ)が占星術などのスピリチュアルな分野を担当していたため、その足取りを追う過程で、チベットのダライラマや前世との因縁など、非科学的な分野へと物語は広がり、最初は抵抗を見せていた享子(きょうこ)自身も、霊能者などと言葉を交わすことで次第に、そんな不思議な物の存在を受け入れ始める。
いくつかの非科学的な話が語られる中で、本作品では「第三の眼」の存在が鍵となっている。見えないものを見る第三の眼。それは人間が進化した形なのか、それとも人間が進化する過程で捨てたものなのか。物語の本筋と関連して描かれる不思議な逸話が非常に面白い。
個人的には「2つの目で見る世界が3次元なら、3つの目では4次元の世界が見えるかも」という言葉が、明らかに飛躍しすげてはいるが印象的だった。
若干、物理的な展開を多くしすぎて、また登場人物も多くなりすぎた感があるが、昨今こういう現実の物語と、非現実の話をバランスよく盛り込んだ作品にはなかなか出会えないだけに新鮮さを感じた。物語のややわかりにくい部分は著者の経験不足ということとして受け止めると、今後の作品での成長に注目したいところだ。