「過労死ゼロの社会を 高橋まつりさんんはなぜ亡くなったのか」高橋幸美/川人博

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
新入社員で電通に勤務し、過労のため自殺した高橋まつりさんの事件について語る。

日本のテレビ、新聞に大きな影響力を持つ電通について知ることは、メディアを通じて流れこむ情報を補正し正しい真実を見極めるための助けになるだろう。そう考えて電通関連の書籍を読み漁っている中で本書にたどり着いた。

本書は、最初に高橋まつりさんの自殺の後に判明した事実、次に母の高橋幸美さんからみたまつりさんとの思い出や自殺が起きるまでの様子、そして最後に弁護を担当した川人博(かわひとひろし)さんの過労死やそれを生み出した企業に対しての思いの順番に書かれている。

事実に関しては、すでにネットで見聞きした情報以上のことはなかったが、むしろ印象的だったのは第2章の母親の当時の体験談である。

大学合格までの話は、むしろ子育てをする親目線でいろいろ考えさせられた。シングルマザーの母親の元で、都内で育ったわけでもないのに自ら勉強をして東大に合格するような人間が育つのだと驚かされた。しかし、一方でその何事にも一生懸命で混乱から逃げることをしない生き方が不幸な結果に繋がった一因とも考えられるのでなんともいえない。

この事件を聞いた人のなかには「自殺する前にどうして会社を辞めないんだ?」という感想を抱いた人も多いと思う。本書の幸美さんの手記を読むと高橋まつりさん本人も、幸美さん自身も、それを理解していたし、自殺する当日ですら幸美さんがまつりさんにで電話で語っていたことがわかる。

「死んじゃダメだよ。会社なんでやめてしまいなさい」と言うと、「うんうん」と聞いていました。

改めて、睡眠不足で神経が衰弱すると正常な判断ができなくなるのだと感じた。周囲の人間としてできることは言葉で正論をぶつけることではなく、強制的に会社を休ませたり辞めさせたりするなど、制約を与えることなのだと感じた。

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