オススメ度 ★★★★☆ 4/5
炭鉱で栄えた福岡県の大牟田市で、警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)の人生を描く。
大牟田市で警官の父親の元に生まれた猿渡鉄男(さるわたりてつお)は、やがて自分も警官として生きることとなる。大牟田市は炭鉱によって栄えたために、多くの人は旧労働組合組員、新燈籠組合組員、会社の人間と、炭鉱での立場で分かれており、それは小学校や中学校の子供たちのグループにまで影響を与えていた。それとあわせて昭和38年に起きた大規模な爆発事故によって障害を抱えた多くのCO2患者たちも街には多数住んでいた。
そんな街で警官として生きる猿渡鉄男(さるわたりてつお)はその職務の中で、人々の父親に対する尊敬の念を日々感じることとなる。父親は38年の爆発事故の混乱のなかでに何者かに殺害されており、その謎が鉄男(てつお)の心に何度も繰り返しやってくる。
また、鉄男(てつお)には中学生たちに友人たちと行った人には言えない過去があった。今では、その友人たちも大蔵省で働いていた理、検事になっていたりするので、過去の出来事を公に語ることはできなくなった。しかし、鉄男(てつお)は良心の呵責に苦しみ続けるのである。
大牟田市が炭鉱によって栄えた町だということも知らなかったし、昭和38年に起こった爆発事故についてもこの作品で初めて知った。石炭というエネルギーへの需要の大きさが大きな時代を作っていたことを伝えてくれる。著者はこの大牟田市で生まれ育ったというから、そんな著者の故郷の炭鉱の歴史を遺したいという強い思いが伝わってくる。
しかし、全体的に長すぎる印象は否めない。長い小説をすべて否定しているわけではない、実際、「白夜行」や「魍魎の匣」のように、その長さに必要性を感じる良い小説は存在する。しかし、本作品に関しては1400ページを超える長さが必要だったのかは疑問である。正直ページ数を3分の2程度に抑えたほうが書籍としての密度も上がるし、展開も読みやすくなるのではないかと感じた。
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