「ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質」ナシーム・ニコラス・タレブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
黒い白鳥と呼んでいる不確実な出来事について、それとどのように向き合っていけばいいのかを語る。

本書で黒い白鳥と呼んでいる事象は次のようなことを3つの特徴を備えている事象のことである。

1.以上であること。つまり過去に照らせば、そんなことが起きるかも知れないとはっきり示すものは何もなく、普通に考えられる範囲の外側にあること。
2.とても大きな衝撃があること。
3.以上であるにもかかわらず、私たち人間は、生まれついての性質で、それが起こってから適当な説明をでっち上げて、筋道をつけたり、予測が可能だったことにしてしまったりすること。

そして、そのような黒い白鳥が起きる可能性を、「拡張不可能な月並みの国」と「拡張可能な果ての国」と、世の中を大きく2つに分けて説明している。

果ての国は格差が大きい。データ一つが集計量や全体に、圧倒的に大きな影響を及ぼす。

月並みの国風のランダム性なら、一つの出来事にすぎないのに全体の流れを左右するような黒い白鳥が起こって驚かされることはありえない。

今の世の中では、果ての国に属する事象のほうがはるかに多く、だからこそ黒い白鳥が現れるのだという。そして、残念ながら著者は終始、予測というのは限界があり、黒い白鳥は予測できないと強調している。

本書の大部分は予測できないことを説明する話が繰り返されていく。そんななかでも面白かったのが、物言わぬ証拠の問題についての話である。「ビギナーズ・ラック」や「水泳選手の肉体」の話は、世の中が物言わぬ証拠を軽視するせいで、世の中を正しく見ることのできないわかりやすい逸話である。

インターネットの普及やアウトソーシングなど、グローバリゼーションによって果ての国の領域は今後さらに広がっていくだろう。そんな現代において本書が語る不果実性にどのように備えるかは間違いなく大きな鍵となる。そんなことを改めて感ん替えさせてくれた。

ただ、言っていることの重要性はわかるのだが、話が難しくなりすぎていて、もう少し単純にして読みやすく説明できないいものかと感じてしまった。世の中の本書に対する評価は非常に高いのだが、必ずしも人にはお勧めできないと感じた。

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「ファクトフルネス」ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界のことを知らなすぎる世間に懸念を抱いて、世界をありのままに見る方法を伝える。

2019年にもっとも話題になったといっていい本書。ようやく読むに至った。

本書では冒頭で印象的なクイズを読者に出し、現在の世の中の状況を説明する。世間の人々が世の中をただしく理解することのできない次の10の本能について説明する。

  • 分断本能
  • ネガティブ本能
  • 直線本能
  • 恐怖本能
  • 過大視本能
  • パターン化本能
  • 宿命本能
  • 単純化本能
  • 犯人探し本能
  • 焦り本能

簡単に総括してしまうと、僕らが思っているほど世界は悲観的ではないし、むしろ確実によくなっているということである。なかでも、もっとも印象的だったのは、これまで当然のように使ってきた「途上国」と「先進国」という世界を2つにグループ分けしてしまう言葉は、もはや世界の現状認識としては合ってないというもの。本書では次の4つのレベルに分けて世界の国を説明している。

  • レベル1…1日あたりの収入が1ドル
  • レベル2…1日あたりの収入が4ドル
  • レベル3…1日あたりの収入が16ドル
  • レベル4…1日あたりの収入が32ドル

また、レベルが同じ人たちは地域や宗教によらず似たような生活をしていることが多いのだという。

本書の狙い通り、世の中を見る目をもたらしてくれる一冊。何よりも本書を読んだことで世の中が少しずつよくなっていることを知れたのが嬉しい。父親の思いを、息子とその妻が書籍にした家族の魂を感じさせる本である。

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「ぼくたちは習慣で、できている。」佐々木典士

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
習慣の重要性と習慣を身につけるための方法について説明する。

どちらかというと一般の人に比べて、僕自身は、自分のやりたいことを習慣化するのが得意な方だと思うが、さらにその純度をあげたいと思い、本書を手に取った。

著者が見聞きした著名人の言葉や研究結果を引用し、著者自身の言葉や体験談で補足するという流れで、習慣の重要性や、習慣を身につける方法をひらすら説明していく。

決して、それぞれの章で語っていることが信憑性が薄いわけではないのだが、ひたすら著名人の言葉と自分の体験談を同じような流れで繰り返しており、残念ながら本全体から大きな流れや哲学が感じられない。また、特に著者自身が興味深い研究をしてその結果を共有しているわけでも、なにか偉大なことを成し遂げたわけでもなく、ただただ、僕らと同じように習慣を実践する一人の人間に過ぎず、著名人の引用を繰り返しているだけなので、あまり言葉に重みが感じられない。

著者自身、ヨガやジムへ行くこと、マラソンや、早起きの習慣があり、それ自体はいいことだと思うが、著者の体験談は同じ話の繰り返しで、もう少し一冊の本として、強弱や芯の通った構成にできないものかと感じた。

むしろ本書で語っているようなことは「脳を鍛えるには運動しかない」や「ファスト&スロー」「GRIT やり抜く力」などすでに世の中から認められたすばらしい書籍があるので、そちらを読むことをおすすめしたい。本書のように表面をなぞるだけでなく、その本質を理解できることだろうと感じた。

僕自身読みやすさやとっつきやすさを重視した本が溢れている昨今、このような表面をなでただけのような本に時間を費やすことを、どのように避けていくかは、しっかり考えるべき問題だと感じた。

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「フラット化する世界 普及版」トーマス・フリードマン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インドや中国の現状を元にフラット化していく世界について語る。

アメリカ企業によるアウトソーシングによって栄えるインドのバンガロールをきっかけとして、世界のフラット化について語る。国や地域だけでなく、YouTubeやウォルマート、グーグル、UPS、アパッチ、デルなどのサービスや有名企業などがどのようによってフラット化を進めたり、フラット化を利用しているかについて説明する。

そして著者はそんなフラット化が進む世界において、祖国アメリカの未来を嘆くのである。アメリカ国内の教育、成功願望、予算、インフラなど様々な面で、フラット化が進む世界において十分な備えができていないというのである。

決して読みやすい本ではないが、世界の見方に新たな視点をもたらせてくれる。フラット化(というより均一化だが)する世界のことを、例えば、賃金が安い方へ安い方へとインターネットの力を最大限に利用して仕事が流れていく、と説明してしまえば、なにを今更当然のことを、となるであろうが、本書はその世界のフラット化の様子を様々な興味深い事実とあわせて説明するから非常に説得力があり重い。

そんななか、もっとも印象的だったのは、インドとパキスタンの紛争がフラット化のせいで深刻な事態になることを避けられたという出来事と、著者が考えるフラット化による平和へ貢献、そして9.11が起こったことについての著者による考察である。

世界におけるアラブ・イスラム世界を見ると、さまざまな面で地球上のほかの地域より遅れているのが目に留まる。…若いアラブ・イスラム教徒は自問せざるをえない。われわれの宗教は、信仰、政治、経済まですべてを網羅する優れた教えであるはずなのに、なぜ異教徒のほうがずっといい暮らしをしているのか?
かつてイスラム教徒が支配していたキリスト教国スペインの現在のGDPが、アラブ諸国すべて合わせたより大きいとは何事か。…ビン・ラディンは侮辱されたと感じた。
9.11同時多発テロにまつわる国民感情を、ブッシュ大統領が破廉恥にも政治目的に悪用したことは、歴史がいずれ明らかにしてくれるだろう。

有名な本ですでに出版から10年以上が経っているが、素晴らしい本だと感じた。ベルリンの壁の崩壊や9.11の航空機作戦など、本書で触れられているフラット化の大きな出来事について、もっと知りたいと感じた。

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「新装版 話を聞かない男、地図が読めない女」アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
男と女の違いを面白おかしく説明する。

タイトルのインパクトで名前だけは聞いたことあったが読んでいなかった本書。先日「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」という同じ著者夫婦による素晴らしい本に触れたことにより、この本が生まれた時の話なども書かれていたため、せっかくなんで読んでみようと思い手に取った。

本書は新装版となっているが、本書のオリジナルが出版されたのは20年近く前になる。本書の当時の人気もあって、おそらく本書で書かれているようなことはその後多くのその後のメディアが似たようなことを語り、そのいくつかばすでに一般的な考え方になってしまったのだろう。残念ながら今読むと特に目新しさは感じなかった。

もっとも印象的だったのは、世の中、性別、人種を問わず人々を平等に扱おうという風潮だったため、このような男女の違いについた本を出すのは当時新しかったということ。今は平等よりも個性の尊重の方に重みが置かれていると感じるので、20年の間にたしかに時代は変わったなと感じた。

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「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」アダム・グラント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
オリジナルな人間になるための考え方を説明している。

メガネのネット販売でメガネ業界に大きな変革を起こしたワービー・パーカーの創業者たちの話をきっかけに、どのようにして大きなことを成し遂げるかを説明していく。

著者が繰り返し強調しているのは、世の中に大きな変化を起こすのは誰にでもできることで、人生の大きな決断など必要ないということである。例えば、スティーブ・ジョブスやビルゲイツは必ずしも若い時に人生の賭けに出たからその後の成功があるわけではない。同じようにマーチン・ルーサー・キングやイブラハム・リンカーンも僕らが思っているほど、人生において誰もまねできないような大胆な行動をとった結果、幸世に語り継がれる存在になったのではないのだという。偉大な人たちも人生のリスクヘッジをしながら自分の持つ新しいアイデアを少しずつ実行に移してきたのである。

では、どのようなことを日々意識して生きていけばそんな偉大なことを成し遂げられるのか。本書はそのために次のことを説明している。

  • アイデアの出し方
  • まわりの巻き込み方
  • 情熱の育み方
  • タイミングの撮り方
  • 誰と手を組むか
  • 組織のつくりかた
  • 困難への立ち向かい方

多くの人が思っていることと実際の成功者や成功しげ企業にはかなり乖離があると感じた。例えば、何事も先にやった人や企業が成功する可能性が高い印象があるが、必ずしもそんなことはない。またベートーベンは偉大な作曲家として有名だが、実際に評価されている曲は彼が作曲した650曲以上の曲のなかの一部でしかない。つまり、質の高いものは数が多ければ自然と生まれてくるのである。

ポラロイドの凋落や、公民権運動、婦人参政権運動、セグウェイの失敗など過去のさまざまな事象を例にとって説明する。本書が言おうとしている内容だけでなく引用されたそれぞれの出来事が興味深く、新たな好奇心を刺激してくれる。序盤で出たオンライン販売のワービー・パーカーだけでなく「となりのサインフェルド」などについても今回新しく知った。

良い刺激を与えてくれる非常に中身の濃い一冊である。

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「I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝」ズラタン・イブラヒモビッチ/ダビド・ラーゲルクランツ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スウェーデン代表のサッカー選手ズラタン・イブラヒモビッチがそのサッカー人生を語る。

アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、ミランなどの強豪チームで活躍し、母国スウェーデンでは英雄といえるほどの地位に上り詰めた著者のこれまでのサッカー人生を描いている。どちらかというと熱い選手なので、嫌いなサッカーファンも多いのではないだろうか。僕自身もどちらかというと冷静にプレーする選手に魅力を感じるほうで、試合中に熱くなりレッドカードをもらうような選手は好きではない。そんな見方もあって、今回こういうタイプの選手はどのように選手人生を歩んでいるんだろう、と興味を持った。

さて、本書ではサッカー選手として頭角を表すまでと、その後いくつかの有名サッカーチームで活躍する様子を描いている。なんといっても興味深いのは、どちらかというと著者にとっては失敗と言える移籍と言えるスペインのFCバルセロナ時代についての話である。監督グアルディオラとは著者をベンチに置いたまま使おうとしないで、しかおその理由を説明しようともしない。そんなグアルディオラに苛立ち、やがてクラブを去るという決断をするまでを著者目線で説明している。

FCバルセロナのしかもグアルディオラの時代はまさに黄金時代だったので、さぞかし選手の心を掴むのがうまい監督なんだと思っていたのだが、1選手からはここまで無能な監督として捕らえられている点が面白かった。

そのほかにもサッカー選手としてだけでなく、妻との出会いなどの人生の大きなイベントについている書いている。全体を通して読んでみると、世の中が思っているほど傲慢で独りよがりな人間ではなく、様々なプレッシャーや葛藤を力に変えて成功した人物だと言うことがわかる。

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「FIRE 最速で経済的自立を実現する方法」グラント・サバティエ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
FIREつまりFinancial Independence, Retire Early(経済的自立)を実現するために著者やそのブログの読者たちが実現した方法とその考え方を説明する。

Retire Earlyと言うとさっさと仕事をやめて悠々自適な人生を満喫することを思い浮かべるかもしれない。しかし、本書で言っているリタイアとは、必ずも仕事をしない状態を言っているのではない。著者自身も「仕事をする必要がなくても仕事をするだろう」と言っているように、仕事をしなければいけない状態から脱し、給料を気にせずに仕事を選べる状態としている。

本書ではそこに到達するまでのステップを次の7段階で説明している。

  • ステップ1 自分の目標とする数字を把握せよ。
  • ステップ2 いま持っている金額を計算せよ。
  • ステップ3 お金に対する考え方を根本的に改めよ。
  • ステップ4 予算を立てず、あなたの貯蓄に最も大きな影響を与えるものだけに集中せよ。
  • ステップ5 9時5時の仕事をハック(工夫、効率化)せよ。
  • ステップ6 儲かる副業を始め、収入源を複数持とう。
  • ステップ7 できるだけ多くのお金をできるだけ早く、できるだけ頻繁に投資せよ。

簡単にいうと、目的をはっきりさせ、そのために、余計な出費を減らし、収入を増やし、投資するという流れを効率よく行うと言うことである。前半の節約の方法では、ハウス・シッティング、ハウス・ハッキング、バータリングなどの手法を知ることができた。

驚いたのはリタイアは歳を取ってからするよりも若いうちにする方が効果的だという考え方である。それは投資による複利の効果を理解し、利用するからこそ可能になるのである。また、僕自身、お金を貯めるためにはお金は借りないで、全てキャッシュで支払った方がいいという考え方をしていた。しかし、複利の効果を考えると必ずしもそれが真実ではないことにも気付かされた。

そのほかにも人生で迷った際に問いかけたい言葉であふれていた。

この買い物はどれほど私を幸せにしてくれるのか?

これを買えるようになるために、人生の何時間を差し出しているのか?

毎年、もしくは亡くなるまでに、これにかかる費用はいくらか?

他人はあなたほどあなたの時間を大切にしない

今一度、自分が人生で本当に求めているものを見つめ直し、またそこに至るまでどれほどのお金が必要なのかを把握したいと思った。

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「メモの魔力」前田裕二

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
メモをとることを繰り返してきた著者が、そのメモの取り方とその効果について語る。

僕らがメモと聞くと、見たり聞いたりしたことを書き残すことのように考えるが、著者はメモの目的を「記録」ではなく「知的生産」としており、次の3つの要素で構成している。

  • ファクト
  • 抽象化
  • 転用

実際に起きたことをファクトとし、それを他のことに適用できるように抽象化する。そして、最後は転用として、自分にアクションを書くのである。そして、抽象化については、What型、How型、Why型の3つの型を説明している。

世の中で見聞きしたすべての出来事に対して、このサイクルを繰り返しているのだとしたら、著者の言うように、知的生産力が向上するのは納得である。

また、夢を書き出すことでそれが叶いやすくなるというRAS(網様体賦活系)の働きについても説明している。RASについては最近読んだ「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」の方で同じようなことより具体的に書かれているので、興味がある人はそちらも読むといいだろう。

後半では自己分析の重要性について書いている。確かに自分が何が好きで、何を大切にしているかを理解している人の方が、人生を脇道に逸れる可能性は低いだろう。

もちろん、ここまでメモに時間をかけることは時間がかかることだし、その執着的とも言える行為によって遠ざける人間関係もあるかもしれないが、早速できる範囲で始めてみたいと思った。

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「日本人の9割に英語はいらない英語業界のカモになるな!」成毛眞

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マイクロソフトで働いた経験を持つ著者が、日本の英語事情を嘆く。

そもそもほとんどの人が英語を使わない人生を送っているのに、なぜこれほど多くの日本人が英語を勉強し、英語学習に膨大なお金を支払っているのか、そんな日本の現状を著者は嘆く。

面白かったのはフランスの話。フランス人が英語を話さないのは有名な話だが、英語を話すことによって自分たちの文化が脅かされかねないという考えからくる行動だという話は印象的だった。また、発展途上国の人々が英語を話すのは他国に追いつくためだが、自分たちの文化がしっかり確立されていて、どちらかというと追いつかれる立場の日本の人々が英語を一生懸命勉強するのはばかげてい流という考えも面白い。そう考えると確かに日本人も「もっと英語を話せない」のではなく「英語は話さない」というスタンスもするべきかなと感じた。

また、社内公用語や英語スクール、早期英語教育をさんざんこき下ろすから面白い。「インターナショナルスクールを出て成功した人はいない」の章などは、子供の英語教育を考える1人の親として耳が痛い話である。

結局著者が言いたいのは、まずは核となる人間性や国民性を身に付けると同時に真の教養を身に付けることである。「本当の「学問」をしよう」と繰り返し、オススメの本を多数紹介している。誤解しないで欲しいのは、9割の日本人に英語は必要ないが、残りの1割は必要だと言っている点である。最後の章では著者の体験に基づく英語の勉強方法を説明している。

正直全体を通じて教養のための本だか英語の学習の本だかはっきりしないようないきあたりばったりな印象も受けたが、楽しく読ませてもらった。著者が紹介しているおすすめの本は早速読み進めていきたい。

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「アレックス・ファーガソン自伝」アレックス・ファーガソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界最高峰のサッカーチームであるイングランドのマンチェスター・ユナイテッドで27年間監督を務めた著者がその人生を振り返る。

アレックス・ファーガソンといえば、僕らサッカーファンのなかでは知らないもののいない名将中の名将である。単純に大きなタイトルを手にしただけでなく、デイヴィッド・ベッカムなどの若手の育成にも定評があり、むしろそここそがファーガソンの成功の大きな礎なのだろう。テレビの画面越しではどちらかというと怖い印象を持つ著者が、どのようなことを考えながら監督という仕事をしてきたのかを知りたくて本書を手に取った。

本書は多くの自伝とは異なり、時系列にはなっていない。著者の人生にとって印象に残っている人、出来事などをそれぞれの章で語っているのだ。

本書を読んで初めて知ったのは、著者はスコットランド人でありイングランド人ではないということと(日本から見るとどちらもイギリスだが、サッカー界では区別される)、チームを統率するために監督が最大権力を握ることを非常に重視しているという点である。

監督が支配力を失ったら、その瞬間にクラブはおしまいだ。選手がチームを牛耳るようになり、深刻な問題が起きる。

この辺は監督のスタイルには賛否両論あるだろうが、確かに絶対的な支配者として選手に接するか、友達のように接するかはどちらも一長一短あり、改めて監督業というのは難しいものだと感じた。

マンチェスター・ユナイテッドの躍進の大きな原動力となった92年組(つまりデイヴィッド・ベッカムやポール・スコールズ・ライアンギグスなどの世代)のなかでは、サッカーに集中しそのほかのことに気を散らさなかったライアン・ギグスやポール・スコールズを評価しているという点も興味深かった。どちらかというとベッカムは、元々は守備にも手を抜かない点が大きな長所だったのに、海外やセレブの世界に触れる中で少しずつサッカー選手として本来あるべき姿から外れていったと残念がっているのだ。

ベッカムの他にも、選手なら、ウェイン・ルーニー、ルート・ファン・ニステルローイ、クリスティアーノ・ロナウド、ロイ・キーン、リオ・ファーディナンド、監督ならジョゼ・モウリーニョ、アーセン・ベンゲルについて語っている。なかなか画面越しには見えない人間関係が見えてくるので、サッカーファンにはたまらないだろう。

人物や過去の有名な試合などがたびたび引用されるので、サッカーファンには間違いなく楽しめるが、サッカーを知らない人にはちょっと難しいかもしれない。サッカーの監督の物語はリーダーシップのすばらしい教本もなるので今後もどんどん触れていきたい。

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「韓国人のボクが「反日洗脳」から解放された理由」ウォーク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本語で韓国に関することを語るYouTuberの著者が日本と韓国について語る。

僕自身日本人の父と韓国人の母の家庭で育ったために、普通の日本人より多く日韓の問題に触れてきた。そんななか著者のYouTubeチャネルで語られている、どちらかというと日本寄りの韓国人(現在は帰化申請が通って日本人。)の意見に惹かれて本書を手に取った。

若い人はそうでなくなったというが、一般的には韓国人の日本嫌いはまだ多く存在し、義務教育の中でもそのような考えを植え付ける教育が今も行われているというのが僕ら日本人が持っている印象だろう。本書によると、最近では年配の人の中にもそのような考えや教育に不満を持っている人が多いのだという。しかし、法律や世間の目があってなかなかそれを公に言えないのだという。実際著者自身も韓国人からこれまでなんども脅迫を受けたことを告白している。

面白かったのは本当に著者が日本を好きで、日本のことを普通の日本人の何倍も調べて理解しているという点である。そんななか韓国について語る点からは、日本から見ると韓国も、ドラマや音楽の影響で、同じように発展した国に見えるが、まだまだ日本に比べると遅れている点が多いということである。

著者は過去の韓国と日本の間の出来事に触れながら、日本の政府はもっと韓国に対する自分たちの正当性を世界に強く伝えるべきである。と繰り返す。確かに、日本の慎ましい外交が日本を応援したいという著者にとってはもどかしいのかもしれないし、実際に外交という側面から見ると控えめでいることは正しくないのかもしれない。

日韓の関係に対して今まで知らなかったことまで教えてくれて、日本と韓国という国に対して新たな視点をもたらしてくれた。

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「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ジョン J. レイティ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
運動がどれだけより良い人生を送るために重要か、実験などの結果を交えながら説明する。

スポーツを日常的にしている人は感覚的にスポーツが心にも良いことはわかっているだろう。本書はそんななんとなくな良さをさまざまな研究結果を交えてわかりやすく解説している。

簡単に言うと運動は健康だけでなく、成績の向上、不安やストレスの解消、うつや加齢による認知症棟にも効果があるのだと言う。きになるのはどれぐらいの運動をするのがいいのかということだが、本書によると、心拍数が最大心拍数(220から年齢を引いた数が理論上の最大心拍数)の60%から70%を保ってを30分程度運動を行うのが良いとしている。それを週に5日というのが最低ラインということである。

どちらかというと、体育の授業などのこれまでの運動の機会にのなかで、自分は運動神経が鈍いと認識して運動を習慣化しなかった人こそ読むべきなのだろう。運動が得意不得意に関係なく、運動をするということは人生を豊かにするのである。

僕自身も現在はスカッシュや競技ダンス(社交ダンスの本気版)をできている。しかし、この先怪我や機会の喪失などでそれらのスポーツが習慣的にできなくなったときに、最低限良い人生を維持するために、本書で書いてあったことを考えて再び習慣にする運動を選びたいと思った。

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「自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング」アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ

オススメ度 ★★★★★ 5/5
夢を叶える方法を語る。

目標は紙に書くといい。というのはよく聞く話ではあるが、なぜそれがいいかということまで本書は説明している。それは脳のRASという仕組みによって、紙に目標を書くと、その情報に敏感になるのだという。本書ではこんな自己啓発本にありがちな夢を叶える方法を、多くの実例を交えて説明している。

簡単にいうと自分の目標を小さなものから大きなのまで思いつく限り書き出し、それをAリスト、Bリスト、Cリストに分類するのである。

Aリスト…今の自分にとってもっとも大事だと思えること
Bリスト…今の自分にとって大事だが、決断前にもう少し考える時間が欲しいもの
Cリスト…挑戦してみたいがまだわからない、できたら達成したいこと

重要なのはどうすれば達成できるのかは一切考えないということと、肯定的な表現をするということである。例えば「タバコをやめる」ではなく「健康的な生活をする」というように、否定文やタバコを吸うのをやめるというような表現だと「タバコを吸う」方のイメージがついてしまうのでうまく行かないのだという。

そして、Aリスト、Bリストには期限や、細かい達成目標を記入し、そのリストを常に自分が目にする場所に置いておくのだ(携帯の待ち受け画面など)

手法だけを聞くと、ありがちな自己啓発本の一つのように聞こえるかしれないが、本書は説得力のある説明が満載である。加えて、目標達成のための考え方や人生を前向きに生きるための様々な手法も共有してくれている。そして、なんといっても著者夫婦のマインドの強さに驚かされる。

何より面白かったのは著者自身も載せるか迷ったという最後の章である。家やお金を失った著者夫婦が再び裕福な生活を手に入れるまでに行ったのが、まさに本書で説明されている方法なのである。このような人生をよくする系の本で泣きそうになったのは初めてである。早速自分の目標を書き出して、見える位置に貼っておきたい。

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「死ぬ前の5つの後悔」ブロニー・ウェア

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
多くの人の人生の最期に立ち会った経験を持つ著者が、人々が死の前に感じる後悔について語る。

5つの後悔とあるが、本書で扱っているのは5人の死だけでなく、死を目の前にした人々の様子や家族の様子も合わせて伝えており、その後悔をまとめるとだいたい5つのパターンに収まるということである。著者ははつぎの5つをよくある後悔としている。

  • 1.自分に正直な人生を生きればよかった
  • 2.働きすぎなければよかった
  • 3.思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
  • 4.友人と連絡を取り続ければよかった
  • 5.幸せをあきらめなければよかった

特にこうして並べてみると特にそれほど大きな驚きはない。ああ、こういう人いるよな、と思う部分もある一方、自分のまわりではあまりこのような後悔をしそうな人が少ないのは、時代が多くの生き方を尊重する方向に変わってきたからかもしれない。

上に挙げた5つの後悔以外にも、人生の最期を迎えた人々の様子を本書を通じて知ることで、考えさせられる部分が多くあった。印象的だったのは周囲の人に酷い言葉を投げかけられた時の考え方である。

「誰かがあなたに贈り物をし、あなたがそれを受け取らなかった場合、その贈り物は誰のものですか?」…そもそも幸せな人の口からそういう言葉は出ない。

死の床で人生を振り返って、もっと物がほしかったとか、なにかを買えばよかったと言った人を私は一人も知らない。

また、死に直面した人の様子を描くのとあわせて、いろんな悩みを抱えながら生きている著者自身の破天荒な生き方も見せてくれるのが面白い。そして、様々な自らの死や、家族の死に直面して戸惑う人々をみて思うこととしての感想ももっともだと感じた。

これは我々の社会が死を人々の目から隠しているために怒る明らかな弊害の一つだ。死に直面すると、人は様々な疑問を持つ。自分もいつかか死ぬのを認識していたら、こうなるずっと前に納得のいく答えを見つけられるだろう。

さて、このように人生の後悔の代表例を知った僕たちは、これを避ける努力をすることができる。僕自身の人生は、今は比較的うまく行っているように思えるが、時々自分を振り返って、後悔をする生き方をしていないか確認するようにしたい。

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「デザインの基本ノート 仕事で使えるセンスと技術が一冊で身につく本」尾沢早飛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いつものようにデザイン関連の本はすべて読むつもりでいるので、本書にはそんな流れでたどり着いた。

本書の著者は紙媒体向けのデザインを多く手掛けているらしく、印刷に関する内容が多くて改めて学びになった。また、全体的に例として挙がっているデザインが非常に綺麗で洗練されており、何か作りたくさせてくれる良い刺激になった。

印象的だったのは、あまり他のデザイン書籍では取り上げていない、視線誘導の重要性とそのテクニックについている点である。日本のデザイン業界でもただ単にフォーカスだけでなく視線誘導の重要性をもっと語るべきだと考えている身としては、本書はかなりお勧めできる。久しぶりに出会った、手元に置いておきたいと思えるデザイン書籍である。

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「伝わるデザインの授業 一生使える8つの力が身につく」武田英志

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの8つの力にフォーカスして紹介している。

僕自身すでにデザイナーを初めて20年近く経っているので、本書のようなどちらかというと初心者デザイナー向けの書籍にはそこまで多く学ぶ部分があるわけではないが、そでも0.1%でも学びがあれば自分のデザイナーとしての力を向上させることができる、そんな思いで本書も手に取った。

本書でいう8つの力とは

  • かんんたんに見せる
  • 正しく伝える
  • フォーカスを当てる
  • 情報を可視化する
  • ストーリーを作る
  • 想像させる
  • アイデンティティを作る

の8つで、ある程度経験を積んだデザイナーであれば当然のように知っていることばかりだろう。そんななか印象に残ったのは「想像させる」の章にあった象徴化のプロセスである。本書では象徴化のプロセスとして

  • 言語化・・・コンセンプトやメッセージを書き出し、訴求したいメッセージを確認する
  • 抽象化・・・訴求したいメッセージの中から中心となるものを抜き出す。
  • 象徴化・・・概念やメッセージを具体的な形を持つ別のものに置き換える
  • 具現化・・・象徴化したビジュアルのディティールや配色を整え、実際のデザインに使用できるようにする。

という4つのステップを挙げている。僕自身が普段行う方法として、言語化から抽象化に向かう流れは少し異なる方法を取っていたのだが、無駄を削ぎ落として一文にまとめる本書の抽象化というステップは今後取り入れたいと感じた。

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「グラフィックの天才たち。」ペン編集部

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
過去の代表的なグラフィックデザインを紹介している。

亀倉雄策(かめくらゆうさく)やポール・ランドなどの有名なグラフィックデザイナーとその作品を、原研哉や佐藤可士和など現代のアートディレクターたちが言葉とともに紹介していく

亀倉雄策(かめくらゆうさく)は実は名前しか知らなかったのだが彼がTDKやNTTのロゴデザインをしたというのは本書を通じて初めて知った。パソコンが世に出ていない時代にどのようにデザインをするのか、インターネットがなかった時代にどのようにアイデアを生み出すか、それだけで想像を超えている。そしてそのロゴが今も変わらずに使われているというのが驚きである。

そんななか、もっとも印象的だったのがランス・ワイマンのメキシコオリンピックのロゴである。オリンピックの五輪と開催年の68を組み合わせたデザインは見事である。

デザインに関して大いに刺激をくれる一冊である。

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「デザインぺディア」佐藤可士和

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本を代表するアートディレクター佐藤可士和のデザインの考え方をまとめている。

すでに10年以上前の雑誌になるが、古くてもデザインの考え方は何かしら学ぶ部分があるだろうと思い手に取った。それなりにデザインについて熟知しているつもりでも、新たな視点や驚きを得ることができた。

そんななか佐藤可士和が以前言われたという言葉が面白い。

コレ、カッコつけてて、カッコ悪いなあ

どうしてもデザインというとカッコ良いものを作る、と思っている人はまだ多いようだが、実際には目的に応じてカッコ悪さを出すことも必要なのだ。そんなことを如実に表した一言だと感じた。また、これはデザインだけでなく人間においても言えることだと日々の感覚から思った。(カッコつけている奴が一番カッコ悪い)

そのほかにも、パスタのデザイン、レコードジャケットのデザインなど独自の視点でそのデザインの面白さを語る。そしてやがてAppleのデザインのすごさに至る。本書を読むまで、iPod Shuffleの画面をなくすという決断がすごかったという視点がなかったが、確かに組織として考えた時それはAppleという会社にしかできない大きな決断だったのだろう。

後半ではロシア・アバンギャルド、ロシア構成主義、バウハウスにも触れている。バウハウスはデザイン書籍の多くで取り上げられているので特に新鮮さはなかったが、ロシア構成主義、ロシア・アバンギャルドは本書で初めて知ったし、その印象的な写真と文字の使い方は、ぜひ仕事のなかにも機会を見つけて取り入れたら面白そうだと感じた。

冒頭でも語ったが、本書はすでに10年以上前に出版されたもの。しかし、今でも十分に役立つデザイン視点が詰まっていると感じた。

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「深い河」遠藤周作

「深い河」遠藤周作
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
様々な過去を抱えた人々がインドへ向かう。そんな人々の様子を描く。

生まれ変わるという妻の最期の言葉を信じる磯部(いそべ)、また人を愛することのできない美津子(みつこ)などがそれぞれがそれぞれの目的を持ってインド旅行で一緒になる。やがて一行はインドの文化やガンジス川に対する人々の様子に心を奪われる。あるものはそれに感動し、あるものはその文化を軽蔑するのである。

それぞれの人々の視点を移り変わりながら物語は進むので、誰が絶対的に主人公ということはないが、印象に残ったのは人を愛することができず打算的に生きてきながらも、キリスト教に傾倒していく友人の津川(つがわ)が気になってしかたがない美津子(みつこ)である。美津子(みつこ)の心にやがて少しずつ変化起きるのである。

遠藤周作作品は常にそのテーマにキリスト教が絡んでくるが本書では若干少なく、遠藤周作の代表作として期待値が高かっただけに、終わり方も含めて物足りなさを感じた。

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