「日本語から考える!スペイン語の表現」長谷川信弥/山田敏弘

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自然な日本語の持つ微妙なニュアンスをスペイン語でどのように表現するかを説明している。
自然な日本語というのは必ずしも、主語や目的語が含まれていない事も多い。そんな日本語をスペイン語で表現しようとしたときにどのように表現すべきか、という視点で書かれている。たとえば「私は」と「私は」の違いや、「しか」と「も」の違いなどである。もちろんスペイン語の方が表現しやすい表現や、日本語の方が表現しやすい表現などあり、本書を通じて、いろいろスペイン語の表現の幅が広がるだろう。
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「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
懸賞金のかけられたミレニアム問題の1つポアンカレ予想が2003年にロシアの数学者によって証明された。しかし彼は懸賞金を受け取る事を拒否して行方をくらました。彼はどのような理由からそのような行動をとったのだろうか。
ポアンカレ予想に関連する本を読もうと思って本書に出会った。残念ながらポアンカレ予想についてはあまり多く触れられておらず、むしろそれを証明した数学者ペレルマンの生い立ちや、証明を発表したときの彼の言動について書かれている。彼がロシア人という事で、むしろ数学よりもペレルマンやその周囲の人々が育った時代の厳しいロシア社会が印象的である。言いたいことを言う事ができず、海外に出るためのパスポートを手に入れる事さえ難しい時代、あらゆる学問や教育がその体制ゆえに被害を被ったという。
本書にはペレルマン自身へのインタビューなどは一切掲載されていない。そういう意味では読者の予想を裏切る事が多いのかもしれない。個人的にはそれでもいろいろ学ぶ部分はあったと感じるし、さらにポアンカレ予想や位相幾何学というものを理解してみたくなった。
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「四色問題」ロビン・ウィルソン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
すべての地図は4色で塗り分ける事ができる。経験的に受け入れられてきたこの事実の証明は何年も数学者達を苦しめてきた。そんな四色問題が証明されるまでを描く。
コンピュータを使った美しくない証明として議論を呼んだ証明として興味を持っていた。もちろん問題自体(つまり地図が4色で塗り分けられるという考え)がわかりやすいというのも理由の1つだろう。こういう本は数学者でもない限りすべてを理解するのは不可能なのだが、それでもその雰囲気や数学者達の努力が感じられれば僕にとっては十分なのである。
序盤は「四色問題」がどのように始まり、どのように数学界に広がっていったかを描き、中盤からは、簡単な塗り分けから考え方を説明し、四色問題が難しい理由などを説明する。その過程では11年間にわたって信じられてきた間違った証明も含まれている。
興味深いのは、この証明の「美しくなさ」である。証明をしたアッペルとハーケンは非難されてさえいるということである。

問題は、まったく不適切な方法で解かれてしまった。今後、一流の数学者がこの問題に関わることはないだろう。たとえ適切な方法で問題を解けたとしても、これを解いた最初の人間になることはできないのだから。

数学の証明の難しさ、あるべき姿、など考えさせられる一冊。
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「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ローマ人の物語の第二章である。紀元前264年から紀元前133年までの130年間を描く。
ハンニバル戦記と名付けられたこの章は、その名の通りカルタゴの名将ハンニバルによって大きな変化を強いられたローマを描いている。アフリカ大陸で栄えたカルタゴのハンニバルはスペインへ侵攻し、やがてローマへと向かうのである。
著者も冒頭で書いているが、学校の教科書ではこの時代をわずか5行程度で済ませてしまうという。しかし、それではわずかな事実が伝わるのみで、過程を知らずに、その時代に生きた人々は見えてこない。本書を読むと、祖国から遠くは慣れて孤立していくハンニバル。ハンニバルへの対抗手段をめぐって対立するローマ国内など、2000年以上も前に生きていた人々が信じられないほど現実感を伴って見えてくる。
実は僕自身本書を読むまで、カルタゴという国の場所や名前や、ハンニバルがどこの国の人物かすら知らなかった。当時の人々の崇高な生き方に触れるほどに、知るべき歴史を知らない自分の無知を感じてしまうのである。
さて、何度も戦いに勝利しながらもやがてハンニバルはローマを後にせざるを得なくなる。一方で、ハンニバルの引き起こしたポエニ戦役によってローマは一段と力を増し、一層帝国主義の傾向を強めていく。
なにより印象的なのは、700年も栄えたカルタゴの滅亡だろう。過去の歴史だけを見ると、それが必然だったように見えるが、歴史的事実のいくつかは偶然の重なりによって覆ったこと。著者はカルタゴの滅亡をまさにそんな一例と捉えている。栄枯盛衰を感じずにはいられない。
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「「書」を書く愉しみ」武田双雲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
書道家である著者が「書」について語る。
コンピューターが世の中に浸透し、文字を書く機会は本当に少なくなった。そのせいか、文字を書く事が嫌いな人は多い。実際、自分の書く文字が嫌いな人も多いという。僕自身もそんな一人で、特に字が汚いわけでもなく、むしろ「字がキレイ」と言われる事のほうが多いのだが、どうしても自分の書く字が好きになれない。本書はそんな人に、字に対して新しい考え方を与えてくれるだろう。
字がうまくなる方法として「下手な字競争」を紹介している。その名のとおり下手な字を書こうと努めるのだが、どうやったら下手に見えるか、という視点に立って字を眺める事に良って、より深い考察をすることができるという。また、お手本通りに書くという学校での書道の授業に異を唱えている。なぜなら同じ人物が書いたとしても二度と同じ文字は書けないのだそうだ。
その他にも中国や日本の歴史的な書を紹介している。有名な書のなかにも読みやすいものもあれば読みにくいものもあり、そこから伝わってくるのは、文字に正解はないということ。服装や姿勢や髪型などと同じように、文字もその人の個性を表すものなのだろう。
改めて文字というものと向き合ってみたくさせてくれる一冊。
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「富士見高原Iターン物語」村上方子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
横浜で編集者として働いていた著者が、結婚11年目の37歳のときに夫と長野県の富士見高原に移り住む。そのきっかけや苦労、新しい土地での生活を描く。
偶然にも著者がその決断をしたのは現在の僕と同じ年齢。多くの人にとって「どう生きるべきか」「幸せとは何か」自らに問いかけ、行動を起こそうと思う年齢なのかもしれない。それでも実際に行動が起こせる人はわずかなのだろう。本書はそんな迷っている人の背中を押してくれるかもしれない。

ここが終わり、ここからが始まり。毎日の暮らしの中でそんなふうに感じられる場面は滅多にない。でも、あの日の町の原っぱでのワンシーンは私たちのとって、確かに終わりであり、始まりであったと思う。

序盤では、著者と夫もが、2人の子供を抱えながらもその人生の一大決心をする過程が描かれている。もちろんそこには、仕事、住居、友達、両親、子供の学校など様々な問題が発生する。そんな問題をひとつづつ乗り越えていくのだ。その様子から、行動を起こすには、ある程度の決意と覚悟とある程度の無鉄砲さが必要だと思えてくる。

今の仕事は仮の姿と思いながら仕事をするのはもう嫌なんだ

印象的なのは、著者が何度も繰り返し言っているように、どこにいっても人間関係にわずらわされずに生きる事などできないということ。
後半はまさにそんな地域の人間関係に入り込んで地域に貢献しようと生き生きと毎日を送る著者の様子が描かれる。「こんな生き方もあるのだ」と改めて自分の生き方を見つめ直
す機会になるだろう。
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「本田式サバイバルキャリア術」本田直之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ハワイと日本の二重生活を送る著者がその経験を基に今の時代を生き抜く考え方を語る。
成功した人は、その成功の多くが偶然的要素に左右された結果であるにも関わらず、本を出してあたかも自分の視点が正しく世間一般的な視点が間違っているように語ることが多い。そういう意味で本書にもあまり期待していなかったのだが、むしろ予想外にまともなことを語っている点が驚いた。
実は、著者の経歴から「思い切って行動すればなんとかなる」的な内容を想像していた。しかし実際には、社内や社外の人脈の作り方や、転職エージェントの利用のすすめなど、今の時代を生き抜くために、リスクを最小限に抑えて、利用できる物はなんでも利用すべき、という考え方が本書のなかで一貫としている。
著者が繰り返し使うのが「サバイバビリティ」という言葉である。何が起きるかわからない今、1つの会社や1つのキャリアに依存する事こそリスクが高く、「シングルキャリア」から「マルチキャリア」へ、「雇われ型」から「スキル提供型」への移行こそ、生き抜くために必要なのだろう。
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「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」北健一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ガンバ大阪の遠藤保仁(えんどうやすひと)、FCバルセロナのシャビ。強いシュートを打つわけでもなく、驚くような鋭いパスを放つわけでもない彼らだがそれぞれのチームの中心人物と評価されている。彼らのどんなプレーがすごいのかを、彼らがときどき出す弱いパスを中心に解説する。
正直サッカーを何年もプレーした事がある人にとってはそんなに新しい内容ではないだろう。遠藤やシャビほど計算し尽くしてはいなくても無意識にやっていることかもしれない。それでもこうやって言葉にしていくつかの例とともに説明されると改めていろいろ戦術というものについて考えるだろう。
また、本書では遠藤(えんどう)のプレーに対して、一緒にプレーした事のある他のプレーヤーの意見も書かれている。そこで語られるのは意図を感じさせるパス。パスカットされる可能性があれば出さないという相手ゴール付近であっても出さないという選択、サイドチェンジの効果などである。いずれも賛否両論あるとはいえ、何事もそうだがパス一本とっても極めようとすればいくらでも上がある、ということを再認識させられる。
サッカーを知らない人にとっても、これからサッカーをテレビなどで観戦する際の助けとなるだろう。
【楽天ブックス】「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」

「ガウディの伝言」外尾悦郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スペインのサグラダファミリアの建築に関わる日本人外尾悦郎(そとおえつろう)がサグラダファミリアやガウディ、そしてその仕事の内容について語る。
未だ建築中のサグラダファミリア。最近になって2026年に完成するとされているが、その長い間どのようにその建築は進められているのだろうか。もともとガウディは設計図を書いたりせずに建築を進めることが多かったという。サグラダファミリアも例外ではなく、建築家や彫刻家たちはガウディの思いを汲み取って建築を進めなければならない。序盤では著者がそのような過程を経てガウディの思いを形にするまでのエピソードが綴られている。
その中で著者が繰り返し語っているのが、機能と装飾が互いに補い合うガウディの建築の理念である。サグラダファミリアの装飾は単純に装飾としての意味だけでなく、建物の弱い構造を補う意味ももっているのだという。この考え方は建築だけでなく、機能と美しさを同時に考えなければならないデザインのすべてにおいて重視すべき事なのだろう。
また、ガウディの生涯が語られる中で思ったのは、大富豪エウセビオ・グエルとの出会いがどれほど大きかったかということ。天才は努力だけでなく多くの運に恵まれているのだと改めて思い知った。グエルとの出会いがなければガウディは誰の記憶にも残らずに歴史に埋もれていった事だろう。
さて、これだけ長い間建築が続けられていくと、なかには建築開始当初の理念から逸脱する部分もあるようで、後半ではそのいくつかが語られている。本来石で作られるはずだったものが途中からコンクリートになってしまったのもその1つである。確かに実際僕が訪れた際にどこか期待した重厚さが感じられずハリボテのような印象を受けてしまったのもそのせいかもしれない。
今や世界でもっとも有名な建物の1つ、サグラダファミリアについて理解するのに最適な一冊。

今日、一人の若者に建築家としての資格を与えた。彼の中に宿っているのは天才だろうか、狂気だろうか。それはまだわからない。しかし、時間が答えを出すだろう。

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「まち文字 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」小林章

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フォントデザイナーの小林章が各国のフォントについて語る。
タイトルでは丸ゴシックをテーマに扱っているように聞こえるが、実際読んでみると丸ゴシックの話題は冒頭だけで、あとは著者が世界の各地で見るロゴで気づいた事をひたすら写真を織り交ぜて語っている。同じ著者の前作「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」と流れもあまり変わらない。むしろ同じ記事が使い回しされているような気さえする。
これだけ世の中に溢れているにも関わらず、普段フォントというものを意識することのない人にとっては、町を歩く際に新たな視点をもたらす内容だろう。一方で、普段からフォントに触れている人にとっては若干物足りないかもしれない。それでもさらっと気軽に読めて、周囲にあるいろんな文字を凝視したくなる気楽な空気感がいい。
【楽天ブックス】「まちモジ 日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?」

「恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?」イビチャ・オシム

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元日本代表監督のイビチャ・オシムが南アフリカワールドカップの日本代表を振り返る。
日本は南アフリカワールドカップの予選リーグでカメルーン、オランダ、デンマークと戦い、最終的に決勝トーナメント1回戦でパラグアイに破れて大会を後にした。今まで多くの雑誌やメディア、テレビ番組でこの4試合について語られてきたが、やはり経験豊かな監督の目線は異なる。負けた試合はもちろん、勝った試合についても良くなかった点や改善方法を示してくれる。
オシムに言わせると、パラグアイは決勝トーナメントに残った16チームのなかでもっとも勝ちやすい相手だったという。前回大会のトルコと動揺、相手にめぐまれたにも関わらずベスト8に進めなかった事を嘆く。孤立してしまった本田をどうすれば機能させることができたのか。選手の間に「引き分けでもいい」という考えがあったのではないか、などである。
そして日本代表だけでなくその他の印象に残ったチームや選手についても語っている。スペイン、オランダはもちろん、予想外に終わったブラジルやイタリア。すばらしい活躍をしたウルグアイのフォルランなどである。本書を読むと改めて、オシムの視点で試合を見直したくなる。
また、サッカー界の流れについても語る。スペインの優勝がサッカー界にもたらすもの。モウリーニョ主義への懸念、日本サッカーの向かうべき方向など、本書によってまたサッカーが1つ深く見れるようになるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?」

「グアルディオラのサッカー哲学 FCバルセロナを世界一に導いた監督術」フアン・カルロス・クベイロ/レオノール・カジャルド

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
サッカーファンでなくても現在のFCバルセロナが、世界でトップ3に入る強豪チームである事は知っているだろう。すでにその前任のライカールト監督時代に現在のようなスペクタクルなサッカーを展開するようにはなっていたが、それでも当時いくつかの問題を抱えていた。そんな中、下部チームを率いていたグァルディオラが一気にトップチームの監督へと引き上げられ、ロナウジーニョやデコなどの有名選手を戦力外にするのである。メディアから批判されたが勝利という結果が出るにつれて、批判は賞賛へと変わっていく。
世界のトップチームはいつも個性のある選手達で構成されている。そのためそのチームを率いて目標を成し遂げる監督の考え方や言動はいつも非常に参考になる。イビチャ・オシム、アーセン・ベンゲル、モウリーニョなどはその代表格であるが、本書からもグァルディオラの持つリーダーシップに重要な心構えが見えてくる。それは明確に意図を伝える能力と、常に物事を学ぼうとする真摯な姿勢である。
グァルディオラが監督として選出される際、すでにチェルシーやFCポルトで優れた結果を残していたモウリーニョも候補にあがったが、バルセロナの文化を熟知しているという点でグァルディオラが選出されたという。モウリーニョはその高慢な物言いから、メディアや他チームと敵対しがちであるのに対して、グァルディオラは何事にも敬意を払うという点が印象的である。
多くの人と関わって何かを成し遂げようとする際に参考になるだろう。
【楽天ブックス】「グアルディオラのサッカー哲学 FCバルセロナを世界一に導いた監督術」

「3時間台で完走するマラソン まずはウォーキングから」金哲彦

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンを走る上での準備や考え方について語る。
今年3回目のフルマラソン挑戦を決意し、何か新しいヒントが得られることを望んで本書を手に取った。著者は他にも数多くのマラソン関連書籍を出している金哲彦氏である。

腹式呼吸や胸式呼吸、有酸素運動や無酸素運動などの運動や筋肉に関する基本的な内容から、ペース走、ウインドスプリントなどマラソンを走る上で有効な練習方法について解説している。また、フルマラソンを走るための練習だけでなく、ダイエット目的の体重を落とすための正しい方法についても説明しているので、マラソンを日常的に行うすべての人に役立つ内容なのではないだろうか。

印象的なのは著者が走る事と同じくらい重要なこととして、生活習慣の改善を強調していることだろう。食生活、入浴、ストレッチなど生活を少しずつ改善する事でマラソンだけでなく、生活にハリが出てくるというのだ。

正しいフォームや怪我のケアなど、本書によってマラソンに関する新しい知識をまたいくつか得る事ができた。出来る範囲で反映していこうと思う。
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「社交ダンスはリズムで踊れ! 足型いらずのダンスレッスン」石場惇史

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダンス用の音楽制作を数多く手がける著者が社交ダンスの音楽について語る。
競技ダンスに励むと音がしっかりとれないことが時々悩みの種になる。そもそも音を正確にとるにはどうしたらいいのか。そんなことがきっかけで本書を読む事になった。
本書ではまずは音に合わせて歩く、というような基本的なことで音楽にあわせて身体を動かす事を解説している。その後は世の中にあふれる音楽の種類と、それぞれの特徴について説明している。本という媒体なので音なしのリズム譜での解説になるので正直わかりにくいが、多くの音楽が世の中には存在することがわかるだろう。
著者が言うには、世の中には「社交ダンス用」と書いてありながらも、単純にスピードだけ合わせてベース音がなかったりリズムが乱れていたりと質の悪いのが多く出回っているのだそうだ。国内の社交ダンス用CDの80%以上がそのようなものだというから驚きである。つまり音がとりにくければ自らのダンスの技術とあわせて音楽を疑ってみる必要があるというこである。
全体的な内容は、やや行き過ぎたダンスや音響についての解説があったりと一貫性に欠けていたのであまり読みやすいものではなかった。
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「旅が仕事 通訳ガイドの異文化ウォッチング」志緒野マリ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
18年のガイドの経験を持つ著者が、その仕事のなかで知った文化の違いや経験について語る。
通訳ガイドという資格について興味を持っていたため、その現場の様子を知りたくて本書を手に取った。もう20年近く前に書かれているためにおそらく現在の状況とは違う部分もあるだろうが、ガイドとして外国の人と触れ合う機会の多い著者が描く内容はどれも面白い。
海外旅行に何度か行った事がある人ならわかるだろうが、日本人の几帳面さは世界でも最高レベルである。だからこそガイドは日本人の害外旅行を案内する際と、外国人が日本を旅行する際の案内のしかたを大きく変えなければならない。また、各国の宗教による制約も常に意識しなければいけないことなど、知識として持ってはいても実際の経験者が語るとまた違って聞こえてくる。
広く視野を持つために様々な文化に触れることは重要なのだろう。改めてそんなことを感じさせてくれる一冊である。
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「ウルトラマラソン マン」ディーン・カーナゼス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
46時間で320km走り抜いた経験を持つ著者が、学生時代のマラソンの経験や、社会人になって再びマラソンにのめり込み、その中で経験したレースや生活について語る。

著者はいくつものマラソンレースに参加しているがなかでもウェスタンステーツ100、バッドウォーターウルトラマラソン、南極マラソンは面白い。僕らはマラソンというとせいぜい42kmの距離でしか考えないが、本書で語られるマラソンを知るとフルマラソンが可愛く思えてくる。距離が長いだけでなく標高差の激しいマラソンは、場所に寄っては冬のように寒くも夏のように暑くもなるのである。

バッドウォーターでは、高い気温で熱せられたアスファルトによってシューズが溶けてしまうというから驚きである。また、南極マラソンでは下手をすると気管支が凍ってしまうというのだから、そんな環境でマラソンをしようとすることがどれほどの挑戦か想像できるだろう。

きっと多くの人から変人扱いされているのだろうが、著者の人生はものすごい充実感あふれるものに違いない。
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「踊りませんか? 社交ダンスの世界」浅野素女

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
パリに移り住んで社交ダンスの魅力に取り憑かれた著者が、それぞれのダンスの起源や魅力について語る。
冒頭で語られていることではあるが、著者は別に社交ダンスの先生でも技術の優れたダンサーでもない。多くの人と同じように社交ダンスが好きな一人の女性である。本書には技術的なことはほとんど書かれていないのである。むしろだからこそ社交ダンスの本としては珍しいかもしれない。

モダンが重力から解き放たれ、天空を翔ることを目ざすなら、ラテンは大地の存在を呼び起こす。

僕自身社交ダンスをここ3年ほど楽しんではいるが、考えてみると10ダンスと言われるモダン5種目(ワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、ヴェニーズワルツ、クイックステップ)、ラテン5種目(ルンバ、チャチャチャ、サンバ、ジャイブ、パソドブレ)がどうやって生まれてどのように今の形になったのかまったく知らなかったのである。
例えば社交ダンスのなかでおそらく最初に習い、もっとも時間をかけて練習するだろうワルツについてさえも、きっと発祥はヨーロッパだろうと思いながらも正確なところは知らなかったのだ。本書が語るのはまさにそんな部分。どうやらワルツは多くの歴史を乗り越えて今の形になっていったのだという。
それぞれのダンスについて語る中で、著者のダンスについての考え方も見えてくる。

五十歳のカップルに、二十歳のカップルのダンスは踊れない。その反対も成り立つ。年齢に応じた味わいがニュアンスがあるということだ。肉体のはかなさや人の心の弱さを意識した時にしか醸し出せない味わいというものもあるだろう。

きっと本書を読む事でそれぞれのダンスにさらに深い姿勢で臨む事ができるようになるだろう。社交ダンスをしたことがなくて本書を読んだ人は社交ダンスを始めたくなるかもしれない。
【楽天ブックス】「踊りませんか? 社交ダンスの世界」

「Webライティング実践講座」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webに特化したライティングについて語る。
Webライティングの書籍はいくつか出回っているが、本書はいろいろな文章を実際に修正して見せてくれる点が新しい。文書を圧縮する手順として、「客観的事実でない行を削除」や「冗長な表現を削除」などいくつかの方法をあげている。この部分を実践するだけでも世の中の多くのWebは見違えるようなものになるだろう。
全体的には、添削部分で多くのページを費やしており、内容が深いとは残念ながら言えない。
ひょっとしたら鉛筆と実際の文章を校正しながら読み進めるともっと本書は違った印象を与えてくれたかもしれない。
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「職業は武装解除」瀬谷ルミ子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者は紛争地帯で平和のために武装解除の手助けをしている。本書ではそのきっかけと、これまでの仕事の内容やそこで直面する問題について語っている。

そもそも「武装解除」がなぜ職業になるのか、武装解除になぜ手助けが必要か、普通の生活をしている人にはその部分がわからないのではないだろうか。

紛争地帯だった場所では紛争が終わっても、長い間武装して戦争をしていた人たちは働くための知識や技術を持たないため生きる術がない。しかし手元には相変わらず武器が残っているから、彼らは再び武器を手に取ろうとする。そういう人々が大勢いる限りその国はいつまでたっても平和にならないというのである。著者が職業として言う「武装解除」はそんな長年戦闘に明け暮れて教育も受けてない人々に、武器と引き換えに教育や援助を与え平和な社会に適応させることなのである。

著者は高校のときに見た報道写真を見たことをきっかけに、世界を飛び回るようになったのだ。ルワンダ、アフガニスタン、コートジボアール、シエラネオネなどアフリカを中心に活動しており、本書ではそんななかでの経験の一部を紹介しているのだが、もちろん生死の境で生きてきた人々を、裕福な国から訪れた女性が簡単に説得できるはずもなく、そこでは多くの問題が生じる。

要は、若造の私には、彼らの問題を解決するスキルが何もなかったのだ。好奇心だけで人々の心のなかを土足で踏み荒らした挙げ句、「良いことをした」と自己満足して帰国しようとしていた。
皆が手を取り合って仲良しでなくても、殺し合わずに共存できている状態であれば、それもひとつの「平和」の形であり得る。
犯罪に問われる恐れがあるのに武装解除や和平に応じるお人好しはいない。和平合意の際は、武装勢力が武器を手放して兵士を辞めることと引き換えに無罪にすると明記される。平和とは、時に残酷なトレードオフのうえで成り立っている。
日本は、原爆まで落とされて、ボロボロになったんだろう?なのに、今は世界有数の経済大国で、この国にも日本車が溢れているし、高級な電化製品はすべて日本製だ。どうしたら、そうやって復興できるのか、教えてくれないか?

生死の危険に隣り合わせの場所で、著者の直面する現実や葛藤はどれも新鮮である。世界のありかただけでなく、著者の選んだ生き方と行動力に触れることで、自らの生き方まで見つめ直すきっかけになるだろう。

【楽天ブックス】「職業は武装解除」

「翻訳教室」柴田元幸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東大の文学部で行われた翻訳の授業をほとんどそのまま収録している。教師である著者と生徒、ときにはゲストを交えて翻訳について議論する。
英語にある程度自信がある人は、何度か翻訳まがいの事をやったことはあるだろう。わずかな英語の文を訳したり、時には長い文章を訳したりといった程度かもしれない。そんな人はすぐに気づくだろう。英語から日本語への翻訳に必要なのは英語の能力よりもむしろ日本語の能力なのである。そして僕自身たくさんの本を読む習慣があることから日本語の能力には自信を持っていたのだが、本書が描く授業の内容はさらにその上をいくもの。翻訳なんて意味が伝わればそれでいいと思うかもしれないが、もっと突き詰めて考えているひとたちがいるのである。

sheという言葉と「彼女は」という言葉では重さが違う。sheの方が軽い。sheを五回繰り返すのに対して「彼女は」は三回くらいで、ちょうど重さ的に同じくらいかな。

単に意味を知っていたり、辞書をひいたりするだけでは決してわからない言語と言語の差について考えさせられる。

不自然な英語を訳すときに、あまりに自然な日本語には直したくないわけだけど、こっちは工夫して不自然な日本語にしているつもりが、読者には単に下手な日本語に見えてしまうって可能性は大いにある。

中程に村上春樹をゲストとして迎えたときの授業の様子も収録されている。正直村上春樹の作品は僕の好みではなく理解の及ばないものだが、その話の内容は面白い。
また、翻訳の題材として採用されているヘミングウェイなどもぜひ読んでみたいと思った。
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