「成功のコンセプト」三木谷浩史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
楽天市場を立ち上げた三木谷浩史がその成功のコンセプトを語る。
成功者というのは、その成功はすべて自分の決断によって達成されたと語りがちだが、実際には幸運にも恵まれているのだ。そういう意味では本書のような成功者の本を読む際には多少傲慢な物言いも覚悟しているのだが、それほど悪い内容ではなかった。
本書で語られている5つのコンセプトのうち、最初の4つはいろんなところで語られることでそれほど新しい物ではないが、5つめのコンセプトとして「スピード!スピード!スピード!」というのは面白い。最近だらだらした会議が多くなってきた僕の会社の重役たちもぜひ本書を読んでスピードの重要性を理解して欲しいと思った。
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「深夜特急(4) シルクロード」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドを後にした著者は、パキスタン、アフガニスタンを経由してイランへ向かう。
毎回のごとくそれぞれの国の個性が面白い。特にパキスタンの長距離バスの運転手のその運転の様子が著者の興味をひいたようだ。旅が進むにしたがって、著者の視点が文化やその土地の人よりも、旅や自分と同じ旅人に向かっている気がする。

1日早く帰ったからといってそれが何になるだろう。むしろ、早ければ早いほど、青春そのものといった日々から足早に遠ざかってしまいそうな気がする。それらの日々は必ずしも自由で甘美なばかりではなく、多くは過酷ですらあったろうが、いざ失う日が近づいてくるとなると、たまらなく貴重なものに思えてくる。

4冊目を読み終わって思うのは、あまり沢木耕太郎という著者は観察力にすぐれた人間ではないということ。もちろん、「自ら経験しないとわからない」として、あえて細かい部分を書かないようにしているということも考えられるし、日本に帰ってきてから記憶をたよりに書いたため本当に印象に残ったことしか欠けなかったのかもしれないが、これだけの国を旅したらもっとたくさん書くことがあるのではないかと感じてしまう。
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「ルポMOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」金成隆一

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネットの発展と、スマートフォンの普及に伴い、Coursera、Udacity、Edxといったオンラインで大学の授業を受けられるMOOC(Massive Online Open Courses)プラットフォームが注目されるようになってきた。本書はそんなMOOCを含むオンラインエデュケーションの現状に様々な視点から迫る。
かなり前からオンラインエデュケーションには興味を持っていたが、どこか騒ぎすぎな印象も持っていた。一般の人にはどの程度認知されていて、実際にはどれほど人々の学習環境に根付く可能性があるのかいまいちつかめずにいたのだ。本書ではMOOCsで日常的に授業を受けている人々の感想や境遇を説明し、カーンアカデミーなどのMOOC以外のオンラインエデュケーションについても触れている。
序盤のMOOCで勉強をしている世界の人々のエピソードに触れると、自分が人生をさぼっているような気がしてくる。環境に恵まれない人こそ、オンラインエデュケーションの可能性に敏感なのだろう。環境に恵まれている日本人はいつになったら危機感を感じるのだろう。
後半は日本のオンラインエデュケーションの動きをいくつかのサイトと共に説明している。カーンアカデミーのことを知ったときにどうして日本でももっとこのように、学校の勉強についていけないような子供達を助けるための動きがないのだろうか、と思ったが、すでにそのような動きをしているサイトはいくつもあってそのことに驚かされた。
今後も引き続きオンラインエデュケーションの動向に注目していきたいと思った。
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「フラットデザインの基本ルール」佐藤好彦

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Windows8やiOS6で採用されたフラットデザイン。言葉にすると単に、今までの立体的なデザインからシャドウやグラデーションの少ないデザインへの移行、と認識されてしまうだろう。しかし、本書は世の中がフラットデザインに向かった背景やその原因について説明している。
人々がパソコン上で何ができるか想像できなかった時代は、現実の世界に存在するそのデザインをパソコン上でも再現する事で人々の抵抗感をなくしてきたが、もはやその必要はなくなった、という説明は非常に腑に落ちる物がある。本書を読んで改めて周囲の物を眺めてみると、いろいろ違った点が見えてくる。例えばパソコン上で「保存」を意味するアイコンがいまでもフロッピーディスクだったりするのだが、すでにフロッピーディスクは世の中から消え去って何年も経過しているのだ。
また、本書はフラットデザインの問題点やフラットデザインをするにあたって困難な点についても語っている。デザイナーにとっては、単純にボタンを立体にしてすませることができないため、今まで以上にスペースや色の使い方に慎重になる必要があるだろう。

色の境目やグラデーションというのは、デザイン的な「情報」になってしまう。情報は、意味を背負ってしまうことになる。意味のないところには、情報を巻き散らかさないというのが、フラットデザインに限らず、デザインとして、とても重要なことだ。

フラットデザインについてだけなく、デザインというものについて改めて考えさせてくれる一冊。

参考サイト
Squarespace
Dribble
Behance

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「パーソナルプロジェクトマネジメント」冨永章

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
プロジェクトマネジメントの内容を個人の目標の達成に活かす、というテーマで書かれている。プライベートな予定に対して、重要度や他人への影響度を考えて取り組むことはあまりないが、仕事で行っているプロジェクトと同様に期日やリスクを考えて取り組むことはできるのだろう。著者はまさにそんな人生を送っているようで、そのストイックな生き方は大いに刺激になった。
しかし、本書の内容が、常に仕事におけるプロジェクトマネジメントの話と、プレイベートにおけるそれとを行ったり来たりして非常に読みにくかった。その点が残念である。
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「深夜特急(3) インド・ネパール」沢木耕太郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マカオ、香港、マレーシアを経てついにインドに到達した著者。インドの生活に触れる。
前の2冊はどちらかというとややおおざっぱなアジアという感じがして、日本でも歌舞伎町や新大久保あたりで味わう事ができそうで、あまり興味がわかなかったが、本書のインドの様子は、どこか日本では決して経験できない雰囲気があって楽しんで読む事ができた。
インドにいくと人生観が変わる、とよく言われるが、本書はそんな様子の一部を見せてくれる。しかし、印象的だったのはむしろ、ここまで長く旅をしてきた著者が、旅というものに対して、どこか達観した見方をするようになった点である。

彼はただ通過するだけの人です。今日この国にいても明日にはもう隣の国に入ってしまうのです。どの国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることができてしまいます。

また、隣国のネパールの様子も描いている。若いうちにこの2つの国に行ってみたいと思った。
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「十字軍物語(1)」塩野七生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1095年11月のクレルモンの公会議でローマ方法ウルバン2世の呼びかけによって始まった十字軍。本書はその第一回十字軍について記述している。
学生時代の教科書ではわずか数行でおわってしまう程度の出来事ではあるが、キリスト世界のなかでは当時間違いなく大きな出来事だったであろう。当時のカトリック教会の状態や、イスラム世界など、教科書が伝える事実ではわからない、その当時の雰囲気が伝わってくる。
興味深かったのは、当時のイスラム世界の人々にとっては、十字軍が何を行っているのかわかっていなかった点である。イスラム世界の人々に彼らのエルサレム奪還という目的が知られたのはどうやらかなり後のことのようで、その進路の途中の国々の人にとっては十字軍はただの侵略者としか見えなかったのだ。
本書ではイスラム世界はセルジュークトルコの支配してい時代ではあるが、キリスト世界だけでなくイスラム世界の状況に着いても知りたくなった。
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「わかりやすく説明する練習をしよう。」リー・ラフィーヴァー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
わかりやすく説明する方法を、複雑な事柄を説明する動画を作成することをビジネスにしている著者が語る。
本書でも冒頭で語られているように、まず僕らは、説明するという行為が、ランニングのフォームのように練習に酔って改善できるものであるということに気づくべきなのだろう。そもそも世の中の多くの人は説明というものの重要性と改善の可能性を理解していないのだ。だから簡単に説明を人に委ねる事ができる。理解することと説明ができることとはまったく違うのである。
さて、本書では説明者が陥りやすい失敗についていくつか例をあげている。なかでも言葉として印象に残ったのは「知の呪縛」である。説明者はその内容にもっとも熟知した立場にいるため、その内容について知らないという立場に立って物事を考えるということができなくなるのである。また、大勢に対して説明する場合、いろんなレベルの知識を持った人が同じ場所に存在するはずである。そのようなときに、どのレベルをターゲットにして説明すべきか、ということにも触れている。
内容自体ものすごい新しいことを書いているわけではないのかもしれないが、改めて図などを交えて説明の持つ意味を示してくれるので、説明というものに対する考え方に新たな視点を与えてくれた気がする。
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「あたらしい働き方」本田直之

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ハワイと日本を行き来しながら生活する著者が、新しい働き方を提供する企業を取材し、自分の意見を織り交ぜながら語る。
複数の新しい働き方を提供する企業を紹介している。本書を読むといろいろ共感する部分が多い。なぜいろんな価値観を持った人がいるのに、朝の9時から夕方の18時といったように、同じ時間を会社に拘束されなければならないのか。もちろん同じ会社で働いていれば同じプロジェクトに関わることもあるため、顔を合わせる必要はあるだろう。それでも月曜日から金曜日に毎日同じ時間に8時間以上会社にいる、という必要はないのである。また同時に、なぜ会社とは行きたくない場所なのか。人生の大部分を過ごす場所なのだから、もっと心地よい場所であるべきだろう。
本書では6時間労働を実現した会社や有休日数に制限のない会社など、多くの新しい試みを実現させている会社を紹介している。休暇に旅行に行く事を推奨している制度などは面白い。何よりも経験を重視するその会社の姿勢が見える。
しかし著者は繰り返し述べている。例えば6時間労働で十分な利益をあげるためには、通常以上に効率性を追求し、集中力が必要になるのだと。魅力的に見える労働環境で意思の弱い人が働けば、単にさぼってしまうだけで、何が理想の労働環境かは、本人次第なのである。
僕自身物事を集中して効率よく行って、人生のなかでできるかぎり多くの経験を積みたいと思っている。それでも会社によって拘束される多くの時間に、人生ってそんなものなのかな、とやや諦め気味だったが、本書を読んで元気が出てきた。まだまだ理想の生活を追求することはできるかもしれない。
【楽天ブックス】「あたらしい働き方」

「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
グーグル・ジャパンで働く11人の日本人のこれまでの英語勉強方法やその体験をまとめている。
やはりすべての人に共通していたのが、英語を使わなければならない環境に自らの身を置くということだろう。日本の文法中心の英語教育に対して、意見が分かれている点は興味深い。また、各自が語る英語勉強法とあわせて、グーグルという社内環境がさらに羨ましくなってしまった。
【楽天ブックス】「グーグル・ジャパンで働く11人の英語勉強法」

「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」ケン・シーガル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スティーブ・ジョブズと12年に渡って一緒に働いてきたクリエイティブディレクターの著者が、アップルやジョブズのエピソードを中心に、シンプルであることの重要性を語る。
スティーブ・ジョブズはいろんな話を聞く過程で、独裁的なイメージを持っていた。しかし、本書のなかで描かれる印象は必ずしもそんなことはなく、むしろ自分の気持ちに素直で、しっかりと人の話に耳を傾けることができる人間だったということがわかる。
印象的だったのは、著者が繰り返し、シンプルであることの難しさを説いている点だろう。今やだれもがアップルの偉業を認めており、そのシンプルを貫くポリシーをまねようとするが、ことごとく失敗している。著者は言うのだ、シンプルは0か100かなのだと。中途半端なシンプルさなら必要ない。実際、本書で著者は、シンプルさを中途半端に採用しようとした多くの企業の失敗例を挙げている。
また、これまでにアップルのやってきたことについて語っているので、いくつか新しいことなども発見できた。過去の有名なCMなどは本書を読んだ後につい見返してしまった。本書ではシンプルさを、アップルを支えている哲学として説明しているが、人生のさまざまな場面にも適用できるような気がした。
【楽天ブックス】「Think Simpke アップルを生み出す熱狂的哲学」

「光秀の定理」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1560年。新九郎(しんくろう)は愚息(ぐそく)と名乗る坊主と出会い行動を共にすることとなる。そんな2人はある日、明智十兵衛光秀(あけちじゅうべえみつひで)と出会う。
本書を読むまであまり明智光秀(あけちみつひで)という人物についての知識を持っていなかった。織田信長(おだのぶなが)の最期となった本能寺の変の鍵となった人物という程度のものである。しかしどうやら明智光秀(あけちみつひで)については諸説あるようだ。本書はそんな1つの明智光秀像(あけちみつひで)を見せてくれる。
鍵と鳴るのは、剣士新九郎(しんくろう)と坊主愚息(ぐそく)である。新九郎(しんくろう)は最初ただひたすら剣を生業にしようとその腕を磨いていたが、愚息(ぐそく)との出会いによって物事を考える能力を身につけ、それが剣の技術にも活かされていく。また愚息(ぐそく)は世の中のルールには従わず自らの信念にしたがって生きている。そんな2人に魅了された光秀(みつひで)はその地位をあげていくなかでたびたび2人の元を訪れるのだ。
面白いのは愚息(ぐそく)がお金を稼ぐために行う博打の方法である。1見すると1対1の5分に思えるそれが物語を非常に面白くしている。
明智光秀(あけちみつひで)という人物についてもっと知りたくなった。また、新九郎(しんくろう)や愚息(ぐそく)の生き方にもなにか心地よさを感じた。
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「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
シリコンバレーで生活する著者がインターネットでおこっている大きな動きについて語る。
GoogleやWikipediaに代表されるインターネット上で起きている動きは一体どのようなものなのか。それは物や対面のサービスのなかで育ってきた人々にとってはなかなか理解しにくいものなのかもしれない。僕自身はむしろインターネットが十分に生活に根付いているのでそんなことは考えた事もなかったが、著者の意見から年配者が感じる困惑も少し理解できた気がする。
著者が持つ様々な人脈から得た意見などから現在のネット上の動きを説明してくれるため、もともと知識として持っていたことに対しても新たな視点を持つ事ができる。例えば、著者は「恐竜の首」と「ロングテール」という言葉を使ってamazonの強みを説明する。今まで、基本的に店舗は、多くの人に人気のある商品、つまり「恐竜の首」だけを扱ってきて利益を出してきたが、実際の店舗を持たないamazonは「ロングテール」から利益を出すことができる点が新しいというのだ。
また、同じようにGoogleについても触れている。Googleは世の中の本をすべてスキャンして無料で提供しようとしており、それが著作権の侵害とか出版社の利益を損ねるとか、多くの議論を呼んでいる。しかし、反対意見はいずれも「恐竜の首」部分の本を扱う人々の考えであって、「ロングテール」つまり非常にニッチな本の作者にとっては、無料とはいえ、まず人の目に触れてもらう機会があることこそ重要なのである。
本書自体が2006年に発売されたものであるがめ、例えばFacebookやTwitterに関する記述がないなど、現在のインターネットの流れからやや遅れている点は残念だが、それでもいくつか印象的な考え方を知る事ができた。同じ著者の続編、「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」と内容的にかぶる部分も多いので、そちらだけ読んでもいいのかもしれない。
【楽天ブックス】「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」

「深夜特急(2) マレー半島・シンガポール」沢木耕太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
著者はマレー半島を南下し、シンガポールへ向かう。
マカオに別れを告げて、著者はシンガポールへと向かう。第1弾のマカオの物語でもそうだが、著者がそこらじゅうで娼婦に声をかけられたり買春を勧められる点は、著者のような旅に憧れる人間として辟易させられる。
本書では著者が旅に出たきっかけについて触れられていて、それが本書でもっとも印象的である。むしろ旅の描写はあまりマカオや香港と変わらず、特に目新しく感じる部分はなかった。次のインドの章に期待したい。
【楽天ブックス】「深夜特急(2) マレー半島・シンガポール」

「深夜特急(1) 香港・マカオ」沢木耕太郎

デリーからロンドンまで乗り合いバスで行く、そう思い立った沢木耕太郎の旅を描く。
本書で中心と鳴るのは香港とマカオである。著者が少しずつその土地に慣れていく過程が面白い。後半の大部分はマカオのギャンブルの様子を描いている。特にギャンブルを面白いと思っていなかった著者が、少しずつギャンブルの面白さに魅了されていく。ギャンブルにもただお金をかけるだけでなく、店側の思惑やディーラーの技量、他のギャンブラーの様子など、いろいろな楽しみ方があることを教えてくれる。
まだ旅は始まったばかりである。
【楽天ブックス】「深夜特急(1) 香港・マカオ」

「もの食う人びと」辺見庸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の豊かな食生活に疑問を持った著者が世界を旅して現地での食生活を味わう。
世界各地の食生活について語っているが、その土地特有の食事だけでなく、その土地の文化や歴史も見えてくる。
バングラディシュで、著者はそうと知らずに残飯を食べる。バングラディシュでは豊かな人々が食べ残した残飯を売買する人々がいるのである。日本人の僕らには信じられない事だろう。また、フィリピンで著者は、戦時中に日本兵に家族を食べられたという人々と出会う。これも日本ではあまり公に語られない事実として、本書を通じて初めて知ったことである。
また、バンコクでは日本向けのペットフードの工場があり、そのペットフードの日本での値段と、その工場で働くタイ人の給料とを比較して、世界の貧富の格差を示してくれる。
従軍慰安婦としての過去に悩む韓国人女性達や、汚染されたチェルノブイリの周辺の村々の様子など、読み終えてみると、むしろ食生活の記述よりも歴史的悲劇や貧しさに焦点があてられている気がするが、いろいろ考えさせられる内容である。
【楽天ブックス】「もの食う人びと」

「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」斉藤ウィリアム浩幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日系人としてアメリカで成功した著者が、日本にはチームがないことに驚いた。チームの重要性について語る。
チームとグループは違うのだという。チームとはただの人の寄せ集めではなく異なる種類の人が同じ目的を持って集まった物を言う。それは1たす1が2となるのではなく3にも4にもなるようなものなのだと。
本書では著者の成功体験をもとにチームの重要性を訴えるが、どちらかというと著者の過去のエピソードの方が、ザッカーバーグやジョブスの物語のような面白さがあり、チームの話はあまり印象に残らなかった。
【楽天ブックス】「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」

「グローバルキャリア ユニークな自分の見つけ方」石倉洋子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代を生き抜くためのキャリアの築き方を著者が語る。
グローバルキャリアというだけあって、やはり日本だけにとらわれないキャリアの築き方をあげている。なかでも面白かったのは、著者の知り合いのなかで第一線で活躍している7人のキャリアとそのキャリア構築のなかでの考え方を語っている部分である。必ずしも高校生や大学生の頃から明確なビジョンを持っていたわけではなく、僕らが思っている以上に、行き当たりばったりで決めている人が多い事に驚いた。著者も本書で語っているように、重要なのは同じ場所にとどまらずに行動を起こす強い意思なのだろう。
30代でも40代でも行動を起こす事はできる。世界を狭めているのは強い意志の欠如なのだと、勇気をくれる一冊。
【楽天ブックス】「グローバルキャリア ユニークな自分の見つけ方」

「プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント」後藤年成

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者の長年にわたるプロジェクトマネジメントの経験から、プロジェクトの成功のために注意すべき点を100個にわけて解説している。
プロジェクトマネージャーだけでなく、PMO、つまりプロジェクトマネジメントオフィスの役割についても語っている。どの内容も言われてみればもっともなものばかりだが、実際の現場ではできていないものばかりで、プロジェクトマネジメントというものの深さや面白さを感じた。著者はPMBOKの重要性を認めながらも、世の中のほとんどすべてのプロジェクトはプロジェクトに応じて管理方法を変えなければならないと説明する。
本書で語られているのは本当に柔軟性を求められるないようばかり。例えば、プロジェクトメンバーの発言からモチベーションの低下を読み取る方法や、プロジェクトリーダーがやりがちでプロジェクトの悪循環を招く行動など、プロジェクトリーダーという視点ではなく、ただの後輩を持つ立場の人間としても良好な人間関係を築く上でのヒントがたくさん見つかった。
プロジェクトマネジメントは真剣にやればきっと面白い。そう思わせてくれる一冊。
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「トータル・リーダーシップ 世界最強ビジネススクール ウォートン校流「人生を変える授業」」スチュワート・D・フリードマン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールの内容を書籍化したもの。仕事だけではなく、家庭や自分やコミュニティも含めて人生を充実させるための方法について語っている。
仕事、家庭、自分自身、コミュニティという4つの分野に対する自分の重要度を出し、実際にそれに費やしている時間を出して比較すると多くの人が、その違いに驚くという。必ずしもそれぞれの分野に費やしている時間の比率が、それぞれの分野の重要度の比率と同じになる必要はないが、必然的に近くなるものだろう。冒頭部分ですでに自分の人生は改善が必要だと思い知らされる。
後半では、それぞれの分野におけるステークホルダーを洗い出してそれぞれの人が自分に求めているものと、自分がそれらの人に求めているものを整理していく、本書では何人かの経験談を載せているが、多くの場合、自分が求められていると思っているものと、実際に求められているものの間にはギャップがある事が多く、それを知ることで楽になれる部分もあり、そうして余った時間を別の分野に割り当てる事ができるのだ。
また、本書では分野をうまく統合していくことも勧めている。例えば家族と一緒に運動すれば、家庭と自分自身の2つの分野に同時に貢献できるのである。僕自身はどちらかというと仕事とプライベートの生活を完全に分けてしまっているので、色々自分の生き方について考え直す必要があると感じた。
【楽天ブックス】「トータル・リーダーシップ 世界最強ビジネススクール ウォートン校流「人生を変える授業」」