「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ライブドアの経営者として有名になった後、2年6ヶ月の実刑判決を受けてすべてを失った著者「ホリエモン」がその過去や働く事に対する考え方を語る。
目的を見つけるとひたすらそのために努力をするその姿勢は(本人は「努力」とすら思っていないでひたすら好きな事をやっているつもりだと思うが)、同じ種類の人間である僕にとっては特に新しいものではない。だからといって、普段努力をしない人が読めば良い影響を受けるかというとそんなこともない、そういう人はその感覚が理解できないだろう。
多くの自己啓発本と同様に本書は、挑戦することによって得られるスキルや、充実感などについて語られているので、内容についても新鮮なものはないだろう。
唯一、印象的だったのは、田原総一郎が著者に語ったという言葉

あなたはこの国を牛耳る年寄りたちから嫌われ、怖れられ、ついには逮捕され、実刑判決まで食らってしまった。なぜか?それは堀江さん、あなたがネクタイを締めなかったからだ。ちゃんとネクタイを締めて、年寄りにゴマをすっていれば、球団買収だって成功しただろうに…

大きな目標を達成しようとする目前で、小さな礼儀不足や身だしなみのせいで失敗することがある。信念も大切だが、多少の譲歩もやはり必要なのだ。
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「いつも「時間がない」あなたに」センディル・ムッライナタン/エルダー・シャフィール

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「時間がない」というのは僕自信つねに感じていること。世の中の多くの能力は、お金よりも時間によって獲得できる事が多い。そんな時間の必要性を常に感じている僕にとってなにかしらヒントになる内容が含まれていればいいと思い本書を手に取った。
残念ながら本書が扱っているのは「時間がない」人向けとは少々異なる。
序盤は欠乏が生み出すメリットとデメリットについて語る。メリットは恐らく誰しも身に覚えがあるだろう。本書で「集中ボーナス」と呼ばれる物である。人は時間が少なければ残された時間を最大限に使おうとするし、貧乏であれば買うものすべての高い安いを常に意識しながら買い物をするのである。その一方で欠乏にはデメリットもある。本書で「トンネリング」と読んでいるもので、目の前のもの以外に注意が向かなくなる視野狭窄のことである。
著者はこの欠乏が生み出す「集中ボーナス」と「トンネリング」によって世の中の多くのことを説明して行く。ローン地獄から抜け出せない貧しい人々の話がもっともわかりやすい例だろう。
そして、後半は、欠乏のデメリットに対処するための「スラック」の重要性である。「スラック」とは「余裕」というような言葉で表現されるもの。わかりやすい説明として、オフィスで1日の大部分をネットサーフィンを過ごしているアシスタントを挙げている。ここでよくやりがちな間違いは、その人物が1日忙しく働くように業務を割り振る事である。それによって、今までであれば周囲の人間はいざという時にその人物に仕事をふることができたのに、そのような突発的な業務を受け入れる先(つまりスラック)がなくなってしまったため、すべての人の業務が悪循環に陥っていくのである。

人がスラックをつくらないのは、いまやらなくてはならないことに集中し、将来起こりうるあらゆることを十分に考えないからだ。いま現在ははっきりと間近に迫っているが、将来の不足の事態は緊急度が低く、想像するのが難しい。漠然とした将来を目の前にある現在と突き合わせると、スラックはぜいたくに感じられる。

同じくスラックの考えを利用した事例として、30の手術室がフル稼働する病院を例にあげている。30の手術室は常に手術の予定でいっぱいなのだが、急患を受け入れなければならない。しかしそれを受け入れる事によってすべての手術の予定が崩れ、医師たちは深夜まで働く事を余儀なくされるのである。この問題を解決した手法は1つ手術室を常に開けておくこと、つまりスラックを作る事である。
本書を読むと、いつもひまそうにしている会社の事務員も、組織に必要なんだと思えてくる。
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「インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」スーザン・ワインチェンク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
後半はアプリにあまり関係ないような心理的な話も多かったが、それをどう応用するかはデザイナー次第なのだろう。
クリック数はあまり重要ではないということは本書で初めて知った。これからのUIデザインにおいては、「ユーザーを悩ませないこと」こそ優先し、むしろ選択肢を減らして決断しやすくして、選択の回数を増やす(つまりクリック数を増やす)という方向へ進むのが正しいと思った。
「データより物語」とか「目標に近づくほどやる気が出る」とか、いろんな書籍で触れられているような内容や、以前に聞いたことがあるような内容ばかりではあったし、必ずしもインターフェースデザインに関係がなく、むしろ心理学に近いような内容も多く含まれていたが、新鮮でなくても同じ考えに繰り返し注意を向けるという意味では、本書は悪くないと感じた。
【楽天ブックス】「インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」

「The Girl in the Spider’s Web」David Lagercrantz

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「ドラゴンタトゥーの女」という印象的なタイトルで、映画にもなったこのミレニアム3部作は、「面白い本」と聞かれたら必ずタイトルである。不幸にも著者のスティーグ・ラーションが亡くなったことで、続編を諦めていたのだが、本書によって別の著者による4作目がつくられたのである。

正直、著者が変わったことで本書は懐疑的に見ていた。実際序盤は描写がややしつこく、シリーズ三部作までに感じられたテンポの良さが失われてしまった印象を受けたが、中盤から物語が大きく動き出すとそんなことも気にならなくなり十分に楽しむ事ができた。

物語は、人工知能の第一人者であるBalderが殺害されることから始まる。しかし、幸か不幸かBalderの自閉症の息子Augustがその現場を目撃していたのである。それに気付いた犯人だが、その不自然な行動から自閉症と判断し、自閉症の子供であればわざわざ目撃者として殺す必要はないとその場を去る。実はAugustは自閉症でもサヴァン症候群という見た物を強烈に記憶し、写真のような絵を描く事のできる能力を持っていたのである。それを知ってAugustを殺そうとする犯罪集団とAugustを守ろうとするBlomkvistやSalanderを描く。

得意のハッキングで誰よりも早くAugustの危険を察知して救出するSalanderは、これまでの4作品のなかではもっともSalanderが優しくかっこいい人間として描かれている気がする。それはAugustという少年と行動することになったこの物語のせいなのか、著者が変わったせいなのかはわからないが、Salanderに対する見方が変わるかもしれない。

また、Augustの救出劇だけでなく、雑誌社ミレニアムの社員達も重要な活躍をする。特に若い優秀なAndrei Zanderは重要な役割を担う鵜。若く優秀でジャーナリズムを愛するAndrei Zanderの好きな映画、好きな小説が本書で触れられていたので挙げておく。

そして、やがて現れるSalanderの双子の姉妹Camilla Salanderの影。里親の証言からCamillaの歪んだ考え方が明らかになって行く。
今後も続編があることを感じさせる終わり方で、次回作品が楽しみである。

Elliptic Curve Method
The Lenstra elliptic curve factorization or the elliptic curve factorization method (ECM) is a fast, sub-exponential running time algorithm for integer factorization which employs elliptic curves.(Wikipedia「Lenstra elliptic curve factorization」)
レナード・ノーマン・コーエン
カナダのシンガーソングライター、詩人、小説家。日本では主にシンガーソングライターとして知られ、熱心なファンも多い。80歳を超える現在もアルバムをリリースするなど精力的に活動中。(Wikipedia「レナード・ノーマン・コーエン」
「供述によるとペレイラは… 」
ファシズムの影が忍びよるポルトガル。リスボンの小新聞社の中年文芸主任が、ひと組の若い男女との出会いによって、思いもかけぬ運命の変転に見舞われる。タブッキの最高傑作といわれる小説。
「Dark Eyes」ニキータ・ミハルコフ
1987年のイタリア語とロシア語の映画で、19世紀を舞台に、ロシア人と恋におちたイタリア人を描く。

「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」沼上幹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織というのは大きくなるに従って昨日しなくなって行く。無駄なミーティングに費やす時間が多くなり、忙殺される人がいる一方で、暇な人もいる。本書は組織が陥りがちなこととその改善方法や予防を著者の経験から説明する。
「組織戦略」という言葉からは、むしろ企業などの組織を競合とどのように渡り合って行くか、を描いたような印象を受けたが、本書で描かれているのは、むしろ組織内部が機能するための方法である。
まずは組織を単純なヒエラルキーと捕らえる事から説明する。組織とは、業務をプログラム化し、そのプログラムで対応できない状況のみを管理者・経営者が判断するという形を基本としているのだ。この状況が機能しなくなるのは、例外処理が増えすぎて管理者・経営者が忙殺されてしまうことから起こるのだそうだ。本書はこんな状況に対して5つの解決策を挙げて説明している。

(1)現場従業員の知的能力アップ
(2)情報技術の装備
(3)スタッフの創設
(4)事業部制
(5)水平関係の創設

中盤では、事業部制、職能性、マトリクス組織という3つの代表的な組織構造についてメリットとデメリットを説明している。

事業部制
各事業部の独立性を高めていくのならば、なにもひとつの企業としてまとまっている必要などないはずである。短期的な市場への適応には都合が良いのだが、効率性が低下してしまうといった問題が出て来やすい。

また、マズローの欲求階層説を挙げて、日本の多くの企業が「自己実現欲求」を過信していると語る。

マズローの欲求階層説
(1)生理欲求
(2)安全・安定性欲求
(3)所属・愛情欲求
(4)承認・尊厳欲求
(5)自己実現欲求
何かと言えば自己実現という言葉に酔いしれている会社は、承認・尊厳欲求について深く考える思考を止めてしまっている。承認・尊厳欲求を充足するためには、ポストとカネ以外にも多様な方法があることを考えなくなっていく。

本書の多くは僕自身が過去企業に属していて感じた事を再確認させてくれた。今後組織作りに携わる事が会ったら繰り返し読み直したいと思えるほど内容の濃さを感じた。
【楽天ブックス】「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」

「何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール」松橋良紀

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談が苦手な人というのは意外にも多いようで、本書はそんな人のために雑談を巧くこなすための方法を語っている。
僕自身もどちらかというと合理的な生き方をしている人間なので、「会話は「情報交換」」という意識が強い。そのせいか、共通の趣味を持っている人には聞きたい事が山ほど溢れてくるのだが、初対面の相手には「あまりプライバシーに踏み込んでは失礼」という思いも手伝って、すぐに話す事が尽きる。そんな僕みたいな人間にとって、本書は耳の痛くなるような内容のオンパレードである。

雑談を好まないという方は、人との関わりを避けているとも言えます。というのも、雑談をしないということには、あるメッセージを相手に与えている可能性があります。
「あなたとは深く付き合いたくない。損得だけの関係にしたいんです。」
目的や目標など、雑談には必要ありません。あるとすれば、相手と親密さを深めるということだけなのです。

後半は、よく言われるオープンクエスチョンや、話し相手を4つのタイプ(視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプ、理論タイプ)に分類して会話を組み立てる方法など、実践してみたいと思う内容がいくつか含まれていた。話を掘り下げるチャンクダウンや漠然とした方向へ展開するチャンクアップなども、意識して会話に臨んでみると面白いかもしれない。
【楽天ブックス】「何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール」

「蘇る教室」菊池省三/吉崎エイジーニョ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「学級方向立て直し請負人」という異名を持つ菊池省三の教育方針を、元生徒である著者が描く。
学級崩壊はなぜ起きるのか。序盤は現状の教育の現場と、菊池が立ち直らせた生徒達、立て直したクラスについてのエピソードとその方法について描いている。
まず印象的なのは本書のなかで「ほめ言葉のシャワー」と呼ばれる取り組みである。「ほめ言葉のシャワー」とは毎日帰りのホームルームで、その日の日直がみんなの前に立ち、生徒がそれぞれその人のいいところを褒めるのだ。いい行動を褒められる事で、引っ込み思案な生徒も、自分の存在価値を認識するのである。そして、普段素行の悪い生徒も、自分にもいいことができるということを学ぶのだそうだ。
その描写を見て思ったのは、両親に褒められることのない生徒というのが決して少なくないという点だろう。「ほめ言葉のシャワー」という取り組みによって変われる生徒がたくさんいるのは、その裏返しなのだ。
僕自身が比較的いい育てられ方をしたために、そのような状況で育てられる環境というのが想像しにくいのだが、教育というものを突き詰めるためには、多くの子供達がどのような環境で育てられているかを理解するのは大切だと思った。
菊池が生徒たちに教えようとするものの多くは、一生通じるような考え方ばかりである。

「怒る」と「叱る」の違い
怒るとは、「自分中心の感情で相手に接すること」。叱るとは、「相手の存在を認め成長を願って強く意見すること」。
「群れ」と「集団」の違い
個人が自分らしさを発揮して自立しているグループが「集団」。個人の考えよりもその場のなんとなく流れる空気、特にマイナスの空気が勝るのが「群れ」。

本書は教育に関する内容について書かれているが、大人になって誰もが一人前と認めて、自分を叱ってくれないと思う人は、菊池が生徒達に教えようとしていることに感じるものがあるだろう。

一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る

【楽天ブックス】「蘇る教室」

「42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」」NHKスペシャル取材班

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
年々高速化が進むマラソンについて語る。本書では特にエチオピアのゲブレシラシエ、ケニアのパトリック・マカウを取り上げている。日本人と比較した際のこの2人のマラソン体質(乳酸の量や赤血球の形)も興味深いが、後半に触れいている2人の走り方の違いも興味深い。

また、タイトルにもなっているように、本書では、「つま先で着地」するマカウとゲブレシラシエの走り方が、日本人に多い「かかと着地」よりも有効であると説明する。しかし、それではなぜ日本人ランナーも「つま先着地」をしないのか。実は「つま先着地」の走り方を身につけるためには、幼い頃から「つま先着地」を繰り返し、それに必要な筋肉やアキレス腱を身につける必要があるのだそうだ。

また、なぜアフリカの選手がマラソンで強いのか、彼らの生活を説明する事で、その勝利に対するハングリー精神を示してくれる。また、マラソンで成功して裕福になった例だけでなく、裕福になったが故に酒に溺れて堕落した例もあり、自らを律することがどれほど重要なことかを改めて感じるだろう。

本書では、近いうちに20年以内に2時間を切るという予想についても触れている。正直、趣味でマラソンをする人に役立つような内容ではなかったが、繰り返し繰り返しトレーニングすることで伸ばす事のできる、人間の無限の可能性を感じられるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」」

「イーロン・マスク 未来を創る男」アシュリー・バンス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アメリカの起業家であり、スペースXのCEOであるイーロン・マスクについて語る。
スティーブ・ジョブスの次に世界を変えるのはこの男、と言われるイーロン・マスク。正直、最近になって初めてイーロン・マスクという名前を知って興味を持ったのだが、本書はそんな興味をさらに大きくしてくれる。
彼のやってきたことのなかで最も印象的なのはスペースXの取り組みだろう。彼は、人類が宇宙を旅する事を本気で実現しようとしているのだ。宇宙に行く事は可能だとしても、それが一般の人間が楽しむレベルになることはないし、そもそもそこまで宇宙に行くことに魅力もメリットもない、と多くの人は考え、だからこそ、世の中の企業は宇宙という分野に注力する事はなかったのだろう。しかし、マスクはそんな常識を覆し、古い権力や考え方に振り回されないようにロケットに必要なすべてをスペースXで作ることを実現して行くのだ。
AppleのiPhoneなどのかつてのイノベーションは、今ある物を改善したり、今はある物の隙間に新たなチャンスを見い出すようなものだったが、スペースXの取り組みは、これまでのイノベーションとはまったく違った印象を与えてくれる。それは誰も目を向けていなかった先へ人類を導く取り組みなのだ。
また、マスクはスペースXだけでなくテスラという企業で今までにない車を作る事にも取り組む。こちらについても本書を読むまで知らなかったが、多くの失敗を経て完成したテスラのモデルSにとても興味をかき立てられてしまった。
マスクのように、何事に対しても情熱的に生きてみたいと思わせてくれる。
【楽天ブックス】「イーロン・マスク 未来を創る男」

「ラファエル・ナダル自伝」ラファエル・ナダル/ジョン・カーリン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
プロテニス選手のラファエル・ナダルがその人生を綴る。
ナダルと言えば、僕の中ではフェデラーに次ぐ存在で、どちらかというと華麗さや美しさよりも、力強さや泥臭さを印象として持っていた。その印象は本書を読んでも大きく変わることはなく、むしろ意外だったのは、控えめなその性格である。5歳年下の妹マリベルとは頻繁に連絡を取り合い、両親の住むマヨルカ意外では落ち着いて過ごす事もできないのだという。
2008年のウィンブルドンのフェデラー対ナダルの決勝はもはや伝説であるが、本人にとってもそうだったようで、本書では大部分をその試合の重要な場面とそれに関連する出来事を描くことによって占められている。ナダルが語るその試合の様子からは、世界のトップの選手がどれだけ多くのことを考えているかが窺い知れる。1つの試合のなかでも、重要な場面、諦めるべき場面、ひたすら我慢して好機を待つ場面、など、僕らが思っている以上に多くのことを考えながらプレーしているのだ。
また、本書からは、ナダルの成功は家族や周囲の人間達に支えられたものだとわかる。プロサッカー選手を叔父に持つナダルや家族は、トップ選手がどんな生活を送るかを前もって知っていたのである。また、叔父のトニーはナダルのコーチとして、自ら考えて行動する事とつらい練習や試合の厳しい状況に耐える忍耐力を植え付けた。時に理不尽と思えるトニーの言動がナダルの成功の大きな要因となっていることは間違いないだろう。
周囲の人間が、うぬぼれを恥ずかしいこととして行動する様子も印象的である。ナダルの母も、ナダルのガールフレンドもナダルの成功によって華やかな舞台に出たりは決してしないのである。
スポーツに限らず、自分が日々取り組んでいる事に対して、さらに深く考えようと思わせる一冊。
【楽天ブックス】「ラファエル・ナダル 自伝」

「野球ノートに書いた甲子園」高校野球ドットコム編集部

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校野球に打ち込んだ高校生のなかに野球ノートというものがある。単純に自分のことやプレーを綴るだけのものだったり、チームについて綴って監督とコメントを交換するものだったりと様々である。本書はそんな野球ノートを扱っている。
驚いたのは、強豪チームの選手達がつけていた野球ノートの内容である。強いチームの中心選手なのだから、ある程度野球について深く考えているのは当たり前なのかもしれないが、チームへの貢献のための目線や、家族や周囲の人々への感謝の気持ちなど、20歳になる前に彼らがこの精神状態に達していたということに驚かされ、また同時に、この経験は彼らのその後の人生に大きく役立つだろうと思った。

ノートを書く作業とは、目標に向かって正しい努力をするために、正しい考え方を養うためのものです。それは高校生活での野球が終わった後にも役立つことだと思うんです。実際に卒業生たちが就職して、仕事への取り組み方が、高校時代にノートで書いてきたことと全く同じだったと話していました。

書くという行為の意味をもう一度見直したくなる一冊。
【楽天ブックス】「野球ノートに書いた甲子園」

「頂点への道」錦織圭

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2015年世界ランキングを自己最高の4位まであげたプロテニスプレイヤーの錦織圭。彼が綴るブログを中心にその成長の経緯を描く。
基本的には錦織が普段綴っているブログと、その当時の戦績と、記者のコメントを並べているだけなので、読者はそれを読んで何かを感じるしかない。ラケット競技であるスカッシュを10年以上続けている僕にとっては、同じ相手と繰り返し戦い、その度に勝つために相手の弱点を分析して戦い方を変えていくという錦織のいるステージがとても羨ましくかんじた。また、そこまで突き詰めてスカッシュをやってこなかったことに考えが至り、1つの競技というものへの自分の取り組み方を改めて考えさせられた。
ブログの投稿はどれも錦織の生の声で、テニスの技術が優れている事をのぞけばどこにでもいる一人の青年だということが窺い知れる。特に何度も携帯をなくしたり、水没させたりする点にはとても親しみがわく。
錦織の今後の戦いに注目したい。
【楽天ブックス】「頂点への道」

「幸せの条件」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
24歳の梢恵(こずえ)は惰性でつとめていた会社から長野に行ってバイオエタノール用の米を作ってくれる農家を探すように命じられた。
渋々行った長野で梢恵(こずえ)はいくつかの農家を訪問した後、その地域の農業の発展に努める「あぐもぐ」という会社を経営する温かい家庭に迎えらる。会社のために農業を学ぶ、という目的で農家の仕事を手伝い始めた梢恵(こずえ)は、そこで農業と農業とともに生活することに魅力を感じていくのである。
単純な話ではあるが、最先端の農業について物語を通じで学べる点が面白い。若い人間は、農業と聞くと、効率の悪い地味な作業のような印象を持っているかもしれないが、本書で描いている最先端の農業は、非常に合理的な物である。物語中で、農業に関連する言葉に対して、質問する梢恵(こずえ)に、社長である茂樹(しげき)が丁寧に答えていく。どれも興味深い話ばかりで、農業という領域に読者の興味を向けてくれるだろう。特に食糧自給率の話は印象に残った。世の中は作為的な数字にだまされているのかもしれない。
また、物語は東北大震災と時期が重なっており、福島の原発の引き起こした出来事がどれほど農家に深刻な影響を与えたかが伝わってくる。
物語の面白さだけでなく、新たな分野に視野を広げてくれたという点でも評価できる一冊。
【楽天ブックス】「幸せの条件」

「統計学入門」盛山和夫

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計学の基本的な部分を説明している。
学生時代に習った期待値や最小二乗法などの意味がより深く理解できた気がする。また、検定という考えについてもようやく少し分かってきた。しかし、やはり鉛筆と紙を用いて書かれている内容を繰り返し使用してみないと本当の理解には到達しないというのが身にしみてわかった気がする。読書時間ではなく勉強時間を別に設ける必要があるのだろう。
【楽天ブックス】「統計学入門」

「「学力」の経済学」中室牧子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の教育のあるべき姿について、データを元に説明していく。
例えば、「本を与えれば成績がよくなる」とか「ゲームをさせると成績が下がる」とか、世の中でよく言われることを科学的に説明しようと試みていく。その過程で、日本の教育がどれほど証拠もなしに、先入観によって構築されているかに気付かされるだろう。
また、著者はそれ以外にも教育システムの向上のために多くの内容に触れているが、なかでも印象的だったのは計る事のできない「非認知能力」つまり「やりぬく力」の重要性である。教育に関心のある多くの人が中学や高校での教育の重要だと思う一方で、本当に人生を変えるほど重要なのは、小学校に入るまでに培われた自らを律する「やりぬく力」だというのである。「自制心」とも呼ばれるこの力は、若い頃のしつけや部活などの活動を通じで培われていくものだそうだ。
目の前の定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには身長であるべきかもしれません。学力をわずかに上げるために、長い目でみて子どもたちを助けてくれるであろう「非認知能力」を培う貴重な機会を奪ってしまうことになりかねないからです。
また、後半で著者が語っている、教員免許の弊害についての考え方も新鮮で面白かった。教育に対して新たな考え方をもたらしてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「「学力」の経済学」

「JavaScript:The Good Parts」ダグラス・クロフォード

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ここ数年で一気に需要が高まっているJavaScript。しかしそれは多くのプログラマーを悩ませる仕様が詰まっている。JavaScriptの性質を知り尽くした著者が、JavaScriptで「良いパーツ」を作るための方法をまとめている。
若干僕のJavaScriptの知識レベルには早すぎたという印象もあり、理解できない箇所も多々あったが、いいJavaScriptを書くためにやったほうがいいことと、やらないほうがいいことはいくつか知る事ができたし、なによりも本書によって癖のあるJavaScriptという言語に魅力を感じてしまった。
おそらく本書によってJavaScriptという言語の不完全さを知って嫌いになる人もいるだろうが、僕のように逆にその深さに魅了されてしまう人もいるだろう。本書には、もう少し知識を貯えてきてからまた戻ってきたいと思った。
【楽天ブックス】「JavaScript:The Good Parts」

「UI is Communication: How to Design Intuitive, User Centered Interfaces by Focusing on Effective Communication」Everett N McKay

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
UIについて語る。
タイトルも示しているように、本書がひたすら繰り返すのは、UIはコミュニケーションである、ということである。例えば、新宿駅で本屋の場所をたずねたときに、ニューヨークの本屋を紹介するというのは普通のコミュニケーションであればありえないことだが、世の中の多くのサイトはそのようなことを平然と行っているのだ。
同様に同じ事を繰り返したずねるのも普通のコミュニケーションであれば失礼で、相手を深井に感じさせることである。しかし、僕らは何度もメールアドレスを入力する事があるし、同じエラーメッセージが何度も表示される事がある。また、興味深いのは言葉の使い方である。「You failed….」(あなたは失敗した)のようにユーザーを避難する言葉ではなく「Something went wrong.」(異常が発生しました)のようにシステム側に問題があることを示唆する言葉を使うべきだというのである。
なぜこのようなことが起きるかというと、UIデザインは未だにシステム目線で行われているからなのだ。それを表すのに次のような印象的な言い方をしている。

すべてのUI要素はそこにあるべきだからそこにあるのであって、単に物理的にはまるからそこにあるのではない。僕らはUI要素でテトリスをやっているわけではないのだ。

上記のような内容を、徹底的に実際のサイトやアプリを例にとって解説してくれる。本書は世の中のすべての物の見方を変えてくれるだろう。UIデザインに関わる人は必読の一冊。

「新しいアナリティクスの教科書」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Webにおけるデータ分析の考え方を語る。
企業のデータ分析に対する取り組みを本書は4つのステージに分けている。

幼年期…ページビューの増減を観測
少年期…データをもとにサイトを改善
青年期…全社的な改善の取り組みに
成人期…分析が企業として根付く

技術の進歩によってデータ分析に力を入れる企業は増えてきたとはいえ、まだまだ幼年期や少年期どころかそれ以前の企業も多いことだろう。本書は、そんなこれからデータ分析に取りかかろうとしている企業だけではなく、すでにデータを集めてはいるが、それをどのように活用したらいいかわからない、といった少年期や青年期の企業にとっても役に立ちそうな考え方が詰まっている。
個人的に印象的だったのが、すべてのページをトラフィックと指標(滞在時間や遷移率)という2つの指標からマトリックス化して、次のように対応する考えである。

・トラフィックが多く、指標も高い
…強みを伸ばす形で改善する
・トラフィックが少なく、指標が高い
…ほかのページから大きく誘導するなどするとともに「表示する」を改善する
・トラフィックが多く、指標が低い
…「見る」「操作」するを意識した改善が有効。


・ラフィック少なく、指標も低い
…簡単には改善の効果が見込めないので放置する。
またABテストについても軽く触れられていて、これから取り組んでみたいことについて全体の概要をつかむのに非常に役に立った。
【楽天ブックス】「新しいアナリティクスの教科書」

「スマートフォンのためのUIデザイン」池田拓司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2013年に発行された本という事でiOS7のフラットデザインの流れは反映されてはいないがiOSアプリとAndroidアプリの基本的な違いや、アプリの様々な名称や呼び方の違いなどが網羅されている。特に新しい知識を与えてくれるわけではないが、UIについていくつかの気付きを与えてくれる。
本書だけでUIの十分な知識を得るということはないが、助けにはなるだろう。
【楽天ブックス】「スマートフォンのためのUIデザイン」

「統計学が最強の学問である」西内啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の統計学の重要性を説く。
実際には19世紀の中程にはその重要性を認識されていたにも関わらず、それを実現するためのツールが整ったのは最近である。コンピューターやインターネットが発展したことによって、多くのデータの収集や分析が個人レベルでも可能になった今、統計学はもっとも先見性のある分野と言えるだろう。
一般的な数学教育を受けた人ならば、序盤の平均や中央値を利用してデータを解説する部分には特に新しさを感じないだろう。基本的な統計に関する考え方から入っているが、むしろ本書の興味深い点は、統計学をどうやって実際の方針の決定に使用するか、という統計学の応用のためのヒントが書かれている点だろう。
著者は言う。取得したデータの結果によって何をするかを決めないと、取得するべきデータの粒度が決まらないのだと。どんなデータもサンプル数を多くする事によって精度をあげることはできるが、その先の行動を決めなければ、どれほど高い精度のデータが必要なのかを決めることができずに、無駄に情報集めや分析の時間を消費する事になるのである。現在多くの企業がそうやって無駄にデータ分析にコストをかけているのだという。
本書で述べられているように、データ分析を行動を決めるための指針と考えると、「標準誤差」という考え方の重要性がわかってくる。残念ながら、本書に書かれているその計算式だけではその背後にある考え方を理解できなかったが、その重要性は十分に伝わってくる。
後半はかなり素人の僕には難しくなってしまったし、実際には紙と鉛筆で実際に計算しながらでないと理解できない物なのだろう。本書中で出てきた「回帰分析」「t検定」「標準誤差」などの新しい言葉はしっかり理解したいと思った。
【楽天ブックス】「統計学が最強の学問である」